JP5164653B2 - 顔料分散用ポリマーの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、顔料分散用ポリマーの製造方法、顔料分散用ポリマー、その顔料分散用ポリマーと顔料とを含有する顔料水分散体、及びその顔料水分散体を含有するインクジェット記録用水系インクに関する。
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させて文字や画像を得る記録方式である。この方式によれば、使用する装置が低騒音で操作性がよいという利点を有するのみならず、カラー化が容易であり、かつ記録部材として普通紙を使用することができるという利点があるため、広く用いられている。インクジェットプリンターに使用されるインクには、耐水性や耐光性を向上させるため、近年、水系顔料インクが使用されている。
顔料インクでは、顔料を安定に分散させるため、顔料を高分子分散剤等とともに混合する方法、顔料に官能基を導入する方法、顔料微粒子をカプセル化する方法等が行われているが、吐出性の向上も求められている。
顔料インクの吐出性を改善するために、例えば、ポリマーエマルションを添加する方法(特許文献1)、プリンターからのインクの吐出量を制御する方法(特許文献2)、界面活性剤や保湿・浸透剤として有機溶剤を加える方法(特許文献3)等が提案されているが、なお一層の高速化や高画質化を達成する上では技術的に不十分である。
特許文献1の方法では、顔料粒子と添加エマルションとの相互作用により、長期保存した場合に分散安定性の低下、インク粘度や顔料粒子径の経時悪化が懸念される。
特許文献2の方法では、プリンターの吐出条件とインクの物性制御の合わせこみが必要となるため、性能の多様化、製品設計への制限が懸念される。
特許文献3の方法では、紙中への浸透促進や、顔料粒子と添加剤との相性により、画質性能や保存安定性が悪化するおそれがある。
上記の現状から、第三成分の添加やプリンターハードの条件によらずに、画質性能や保存安定性を損なわず、吐出安定性を達成しうる色材の提供が求められる。
また、特許文献4には、保存安定性に優れ、耐水性にも優れたインクジェット記録用水系インクを提供することを課題として、塩生成基含有モノマー、長鎖アルキル基含有モノマー、マクロマー、ポリオキシアルキレン基含有モノマー、及びそれらと共重合可能なモノマーを含有するモノマー混合物を共重合させてなる水不溶性ポリマー粒子に顔料を含有させたポリマー粒子を含む水系インクが開示されている。
特開2002−856184号公報 特開2002−856186号公報 特開2002−856187号公報 特開2004−217905号公報
本発明は、印刷画質等の基本性能を満足しつつ、インクジェット記録装置のインク吐出性を改善しうる顔料分散用ポリマー、その製造方法、その顔料分散用ポリマーと顔料とを含有する顔料水分散体、及びその顔料水分散体を含有するインクジェット記録用水系インクを提供することを課題とする。
本発明者は、インクジェット記録装置の吐出性が低下する原因として、ノズル内のインクの乾燥によってインク組成の水が減少し、溶剤比率が増大することによる顔料の不安定化に起因する凝集現象により、インク中の顔料が、吐出ノズルを閉塞することを見出した。そのため、顔料が溶剤中でも凝集しないようにすることができれば、ノズル閉塞を防止できると考えた。
顔料を分散させるためのポリマーは、水溶性有機溶媒での分散安定性に優れるモノマー(A)と、顔料への親和性の高いモノマー(B)とを用いて製造することが必要であるが、ポリマーがモノマー(A)及び(B)由来の構成単位を有していても、構成単位の比率が同一のポリマーばかり存在しているものでは吐出性の改善効果が充分に発揮できない。
そこで、本発明者らは、ポリマー中のモノマー(A)由来の構成単位の重量比率の分布の幅が広いポリマーによって分散した顔料を用いることで、高い溶媒親和性と顔料との吸着性を両立することを見出した。これは、モノマー(A)由来の構成単位を多く含むポリマーによる溶媒中での安定化と、モノマー(A)由来の構成単位が少なく含むポリマーによる顔料への親和性が同時に確保できるためであると考えられる。
更に、溶媒親和性の観点から、モノマー(A)由来の構成単位を多く含むポリマーは、顔料への親和性が高いモノマー(B)由来の構成単位が少ないことが好ましく、顔料の分散安定性の観点から、顔料のモノマー(A)由来の構成単位が少なく含むポリマーは、モノマー(B)由来の構成単位が多いことが好ましい。
本発明の顔料分散用ポリマーの製造方法は、異なる組成のポリマーを同時に同じ反応容器中で製造する方法であり、これにより、吐出性の改善がより優れたものとなる。
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔5〕を提供する。
〔1〕下記一般式(1)で表されるモノマー(A)と下記一般式(2)及び/又は(3)で表されるモノマー(B)とを共重合するポリマーの製造方法であって、反応系に供給するモノマー(A)及び(B)の合計量に対するモノマー(A)の重量分率を、反応系への供給過程において少なくとも1回、5重量%以上変化させる、顔料分散用ポリマーの製造方法。
モノマー(A):CH2=CR1(COO(AO)nR2) (1)
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は水素原子又は炭素数1〜22の炭化水素基、AOは炭素数3以上のアルカンジイルオキシ基を示し、nは平均付加モル数を示し、1〜30の数である。)
モノマー(B):CH2=CR13 (2)
CH2=CR1COOR4 (3)
(式中、R1は前記と同じであり、R3は、炭素数6〜22のアリール基又はアリールアルキル基を示し、R4は、官能基を有していてもよい、炭素数1〜22の炭化水素基、又はスチレン系マクロマーから(メタ)アリロイル基を除去した残基を示す。)
〔2〕前記〔1〕の製造方法により得られる顔料分散用ポリマー。
〔3〕前記一般式(1)で表されるモノマー(A)由来の構成単位と前記一般式(2)及び/又は(3)で表されるモノマー(B)由来の構成単位とを含有するポリマーであって、該モノマー(A)由来の構成単位を30重量%以上70重量%未満含有するポリマー成分(1)を15〜75重量%、及び該モノマー(A)由来の構成単位を0重量%以上20重量%未満含有するポリマー成分(2)を15〜75重量%を含有する、顔料分散用ポリマー。
〔4〕前記〔2〕又は〔3〕の顔料分散用ポリマーと顔料とを含有する顔料水分散体。
〔5〕前記〔4〕の顔料水分散体を含有するインクジェット記録用水系インク。
本発明によれば、印刷画質等の基本性能を満足しつつ、インクジェット記録装置のインク吐出性を改善しうる顔料分散用ポリマー、その製造方法、その顔料分散用ポリマーと顔料とを含有する顔料水分散体、及びその顔料水分散体を含有するインクジェット記録用水系インクを提供することができる。
本発明の顔料分散用ポリマーの製造方法は、一般式(1)で表されるモノマー(A)(以下、単に「モノマー(A)」ともいう)と一般式(2)及び/又は(3)で表されるモノマー(B)(以下、単に「モノマー(B)」ともいう)とを共重合するポリマーの製造方法であって、反応系に供給するモノマー(A)及び(B)の合計量に対するモノマー(A)の重量分率を、反応系への供給過程において少なくとも1回、5重量%以上変化させることを特徴とする。
〔ポリマー〕
本発明に用いられるポリマーは、印刷画質の観点、及び顔料との親和性を向上させて分散安定性を向上させる観点から、水不溶性ポリマーが好ましい。ここで、水不溶性ポリマーとは、ポリマーを105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10g以下、好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下であるポリマーをいう。溶解量は、ポリマーが塩生成基を有する場合は、その種類に応じて、ポリマーの塩生成基を酢酸又は水酸化ナトリウムで100%中和した時の最大溶解量である。
用いるポリマーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、ビニル系ポリマー等が挙げられるが、その保存安定性の観点から、ビニル単量体(ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物)の付加重合により得られるビニル系ポリマーが好ましい。
〔モノマー(A)〕
モノマー(A)は、水溶性有機溶媒と親和性が高く、水溶性有機溶媒への分散安定性を向上させるために用いられる。
モノマー(A)は、下記一般式(1)で表される。
CH2=CR1(COO(AO)nR2) (1)
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は水素原子又は炭素数1〜22の炭化水素基、AOは炭素数3以上のアルカンジイルオキシ基を示し、nは平均付加モル数を示し、1〜30の数である。)
2は、水溶性有機溶媒との親和性の観点から、好ましくは水素原子又は炭素数1〜18、更に好ましくは水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基であり、炭化水素基としては、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基であってもよい。
具体的には、フェニル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基が挙げられる。
nは平均付加モル数であり、1〜30であるが、2〜30が好ましく、2〜22が好ましく、2〜12更に好ましい。
AOは、水溶性有機溶媒との親和性の観点から、炭素数3〜6のアルカンジイルオキシ基が好ましく、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基、テトラメチレンオキシ基等が挙げられる。これらの中でもプロピレンオキシ基(プロパン−1,2−ジイルオキシ基)を含むことが好ましく、プロピレンオキシ基、プロピレンオキシ基とエチレンオキシ基、又はプロピレンオキシ基とブチレンオキシ基からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、プロピレンオキシ基がより好ましい。AOが2種以上である場合は、各AOは、ブロック付加物であっても、ランダム付加物であってもよい。
モノマー(A)の具体例としては、エチレングリコール・プロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート[エチレングリコールとプロピレングリコールがランダム結合している]、オクトキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールがブロック結合している。(メタ)アクリル基側からポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのブロック結合とその逆も含む。以下同じ。]、オクトキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール・テトラメチレングリコール)モノメタクリレート等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
商業的に入手しうるモノマーの具体例としては、日本油脂株式会社のブレンマーシリーズ、PP−500、同800、同1000、AP−150、同400、同550、同800、50PEP−300、50PPT−800、50POEP−800B等が挙げられる。
〔モノマー(B)〕
モノマー(B)は、顔料と親和性が高く、顔料を安定に分散させるために用いられる。
モノマー(B)は、下記一般式(2)及び/又は(3)で表される。
CH2=CR13 (2)
CH2=CR1COOR4 (3)
(式中、R1は前記と同じであり、R3は、炭素数6〜22のアリール基又はアリールアルキル基を示し、R4は、官能基を有していてもよい、炭素数1〜22の炭化水素基、又はスチレン系マクロマーから(メタ)アリロイル基を除去した残基を示す。)
3は、好ましくは炭素数6〜18のアリール基又は炭素数7〜18のアリールアルキル基であり、R4は、好ましくは官能基を有していてもよい、炭素数6〜18のアルキル(メタ)アクリレート、炭素数6〜18のアリール基又は炭素数7〜18のアリールアルキル基、又はスチレン系マクロマーから(メタ)アリロイル基を除去した残基である。
モノマー(B)のSP値は、顔料とモノマー(A)との親和性と分散安定性の観点から6〜12が好ましく、8〜11が更に好ましい。
本明細書にいう溶解パラメータ(SP値)とは、Fedorsの方法〔Robert F.Fedors, Polymer Engineering and Science, 14, 147-154 (1974)〕により、下記のFedorsの式に基づいて求められた値δ[(MPa)1/2]であり、化合物の化学構造の原子又は原子団の蒸発エネルギーの総和(Δei)とモル体積の総和(Δvi)の比の平方根から求められる。
Fedorsの式: δ=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2
(一般式(2)で表されるモノマー)
一般式(2)で表されるモノマーとしては、顔料との親和性と分散安定性の観点から、スチレン、ビニルナフタレン、α―メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、4−ビニルビフェニル、1,1−ジフェニルエチレンから選ばれる1種以上が好ましい。中でも、スチレン、α−メチルスチレン、及びビニルトルエンから選ばれる1種以上であることが好ましく、スチレンがより好ましい。
(一般式(3)で表されるモノマー)
一般式(3)で表されるモノマーとしては、顔料との親和性と分散安定性の観点から、官能基を有していてもよい、炭素数1〜22、好ましくは炭素数6〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル(メタ)アクリレート、炭素数6〜18のアリール基又は炭素数7〜18のアリールアルキル基を有するものが好ましい。官能基としては、ヒドロキシ基、ニトロ基等が挙げられる。
例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−フェニルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、1−ナフタリルアクリレート、2−ナフタリル(メタ)アクリレート、フタルイミドメチル(メタ)アクリレート、p−ニトロフェニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレートが挙げられる。
(一般式(3)で表されるスチレン系マクロマー)
一般式(3)で表されるスチレン系マクロマーとしては、片末端にアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有する、スチレン単独重合体及びスチレンと他のモノマーとの共重合体であるスチレン系マクロマーが挙げられる。
スチレン系マクロマーにおける、スチレン由来の構成単位の含有量は、顔料との親和性及び分散安定性の観点から、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上である。
スチレン系マクロマーの数平均分子量は、保存安定性を高めるために共重合比を高めつつ、粘度を低く抑えるという観点から、1000〜10000が好ましく、2000〜8000が更に好ましい。スチレン系マクロマーの数平均分子量は、標準物質としてポリスチレンを用い、溶媒として50mmol/Lの酢酸を含有するテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定したときの値である。
商業的に入手しうるスチレン系マクロマーとしては、例えば、東亜合成株式会社の商品名、AS−6(S)、AN−6(S)、HS−6(S)等が挙げられる。
モノマー(B)の中では、一般式(2)で表されるモノマーが、モノマー(A)の分布の幅を広げる観点、印字濃度の観点から好ましい。
(塩生成基含有モノマー)
本発明に用いられるポリマーは、分散性を向上させる観点から、更に、塩生成基含有モノマー由来の構成単位を含むことが好ましい。塩生成基含有モノマーに由来する構成単位は、塩生成基含有モノマーを重合することにより得ることができるが、ポリマーの重合後、ポリマー鎖に塩生成基(アニオン性基又はカチオン性基)を導入してもよい。塩生成基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等のアニオン性基、アミノ基、アンモニウム基等のカチオン性基が挙げられる。
塩生成基含有モノマーとしては、(a−1)アニオン性モノマー及び(a−2)カチオン性モノマーが好ましく、(a−1)アニオン性モノマーがより好ましい。
(a−1)アニオン性モノマーとしては、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー及び不飽和リン酸モノマーからなる群より選ばれた1種以上が挙げられる。
不飽和カルボン酸モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。
不飽和スルホン酸モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸エステル、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。
不飽和リン酸モノマーとしては、例えば、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記のアニオン性モノマーの中では、インク粘度及び分散安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
(a−2)カチオン性モノマーとしては、不飽和3級アミン含有ビニルモノマー及び不飽和アンモニウム塩含有ビニルモノマーからなる群より選ばれた1種以上が挙げられる。
不飽和3級アミン含有モノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−6−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジン等が挙げられる。
不飽和アンモニウム塩含有モノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級化物、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級化物、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート四級化物等が挙げられる。
上記のカチオン性モノマーの中では、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びビニルピロリドンが好ましい。
上記の塩生成基含有モノマーは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
(その他のモノマー)
その他のモノマーとして、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜30、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。以下同じ)(メタ)アクリレート等も挙げられる。
なお、本明細書において、「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、これらの基が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの基が存在しない場合には、ノルマルを示す。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート又はそれらの両方を示す。
本発明で用いられるポリマーの製造方法において、供給する全モノマー中の各モノマーの含有量、又は得られるポリマーにおける該モノマー由来の構成単位の平均含有量は、以下のとおりである。
供給する全モノマー中のモノマー(A)の含有量、又は得られるポリマーにおけるモノマー(A)由来の構成単位の平均含有量は、水系インクとした時の吐出性の観点から、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは20〜45重量%、更に好ましくは20〜40重量%である。
供給する全モノマー中のモノマー(B)の含有量、又は得られるポリマーにおけるモノマー(B)由来の構成単位の平均含有量は、水系インクとした時の分散安定性と吐出性の観点から、好ましくは30〜80重量%、より好ましくは40〜70重量%、更に好ましくは45〜70重量%である。
供給する全モノマー中の一般式(2)で表されるモノマーの含有量、又は得られるポリマーにおける一般式(2)で表されるモノマー由来の構成単位の平均含有量は、水系インクとした時の印字濃度、分散安定性の観点から、好ましくは30〜80重量%、より好ましくは40〜70重量%、更に好ましくは45〜70重量%である。
供給する全モノマー中のスチレン系マクロマーの含有量、又は得られるポリマーにおけるスチレン系マクロマー由来の構成単位の平均含有量は、水系インクとした時の吐出性、分散安定性の観点から、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは5〜30重量%、更に好ましくは5〜25重量%である。
供給する全モノマー中の塩生成基含有モノマーの含有量(未中和量としての含有量。以下、塩生成基含有モノマーについて未中和量として計算する。)、又は得られるポリマーにおける塩生成基含有モノマー由来の構成単位の平均含有量は、水系インクとした時の分散安定性の観点から、好ましくは3〜30重量%、より好ましくは5〜25重量%、更に好ましくは5〜20重量%である。
[供給する全モノマー(A)量/供給する全モノマー(B)量]又は[得られるポリマー中のモノマー(A)由来の構成単位の平均含有量/得られるポリマー中のモノマー(B)由来の構成単位の平均含有量]の重量比は、ビニルポリマーの分散性及び吐出性の観点から、好ましくは1/10〜1/1、より好ましくは1/8〜2/3であり、更に好ましくは1/6〜1/2である。
[(供給する全モノマー(A)量+供給する塩生成基含有モノマー量)/供給する全モノマー(B)量]又は[(得られるポリマー中のモノマー(A)由来の構成単位の平均含有量+得られるポリマー中の塩生成基含有モノマー由来の構成単位の平均含有量)/得られるポリマー中のモノマー(B)由来の構成単位の平均含有量]の重量比は、ビニルポリマーの分散性及び吐出性の観点から、好ましくは1/5〜3/1、より好ましくは1/4〜2/1であり、更に好ましくは1/3〜1/1である。
前記において、ポリマーにおける各モノマー由来の構成単位の含有量は、全ポリマー中の平均重量%である。
〔顔料分散用ポリマーの製造方法〕
本発明の製造方法は、前記一般式(1)で表されるモノマー(A)と前記一般式(2)及び/又は(3)で表されるモノマー(B)とを共重合するポリマーの製造方法であって、反応系に供給する、モノマー(A)及び(B)の合計量に対するモノマー(A)の重量分率を、反応系への供給過程において少なくとも1回、好ましくは1回又は2回、5重量%以上変化させる、顔料分散用ポリマーの製造方法である。
ポリマー中のモノマー(A)由来の構成単位の含有率の分布の幅を広げる観点とポリマー中のモノマー(A)由来の構成単位の含有量の観点から、モノマー(A)及び(B)の合計量に対するモノマー(A)の重量分率を変化させる量は、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%、更に好ましくは15〜40重量%である。
例えば、実施例1においてモノマー(A)の重量分率を、43重量%から23重量%に変化させており、この場合の変化させる量は20重量%となる。
ここで、反応系に供給するモノマー(A)の重量分率とは、単位時間(好ましくは1分)当たりのモノマー(A)及び(B)の合計供給量中に占めるモノマー(A)の重量分率〔[モノマー(A)/(モノマー(A)+モノマー(B))]×100〕を意味し、反応系に供給するモノマー(B)の重量分率とは、単位時間(好ましくは1分)当たりのモノマー(A)及び(B)の合計供給量中に占めるモノマー(B)の重量分率〔[モノマー(B)/(モノマー(A)+モノマー(B))]×100〕を意味する(以下同じである)。
反応系に供給するとは、重合反応開始前の供給と重合反応開始後の供給とを含み、重合反応開始前の供給は、仕込みとして予め反応槽に一定のモノマー組成で一定量供給することを含み、モノマー(A)の重量分率は、仕込み組成量中に占めるモノマー(A)の重量分率を意味する。また、重合反応停止後の供給は含まれない。
好ましくは、反応系に供給するモノマー(A)の重量分率が大きい値から該モノマー(A)の重量分率が小さい値に減少させることが、ポリマー中のモノマー(A)由来の構成単位の含有率の分布の幅を広げる観点から好ましい。モノマー(B)の反応性がモノマー(A)の反応性よりも低いことが好ましい。
具体的には、反応系に供給するモノマー(A)の重量分率を、好ましくは20〜75重量%、より好ましくは25〜65重量%から減少させて、好ましくは5〜55重量%、より好ましくは10〜40重量%にすることが好ましい。より好ましい具体例は、反応系に供給するモノマー(A)の重量分率を、好ましくは20〜75重量%から、5〜55重量%に減少させることであり、より好ましくは25〜65重量%から、10〜40重量%に減少させることである。
反応系に供給するモノマー(A)の重量分率が大きい場合、即ち、モノマー(A)の重量分率が好ましくは20〜75重量%、より好ましくは25〜65重量%である場合は、供給するモノマー(A)の量は、モノマー(A)の全供給量中、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは35〜80重量%である。
反応系に供給するモノマー(A)の重量分率が小さい場合、即ち、モノマー(A)の重量分率が好ましくは5〜55重量%、より好ましくは10〜40重量%である場合は、供給するモノマー(A)の量は、モノマー(A)の全供給量中、好ましくは10〜65重量%、より好ましくは15〜60重量%である。
反応系に供給するモノマー(A)の重量分率を減少させるに伴い、反応系に供給するモノマー(B)の重量分率を増加させることが、ポリマー中のモノマー(A)由来の構成単位とモノマー(B)由来の構成単位との重量比率の分布の幅を広げる観点から好ましい。
モノマー(A)及び(B)の合計量に対するモノマー(B)の重量分率を増加させる量は、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%、更に好ましくは15〜40重量%である。
反応系に供給するモノマー(B)の重量分率は、好ましくは20〜75重量%、より好ましくは25〜70重量%から増加させて、好ましくは40〜90重量%、より好ましくは45〜80重量%にすることが好ましい。より好ましい具体例は、反応系に供給するモノマー(B)の重量分率を、好ましくは20〜75重量%から、40〜90重量%に増加させることであり、より好ましくは25〜70重量%から、45〜80重量%に増加させることである。
反応系に供給するモノマー(B)の重量分率が小さい場合、即ち、モノマー(B)の重量分率が好ましくは20〜75重量%、より好ましくは25〜70重量%である場合は、供給するモノマー(B)の量は、モノマー(B)の全供給量中、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは2〜30重量%である。
反応系に供給するモノマー(B)の重量分率が大きい場合、即ち、モノマー(B)の重量分率が好ましくは40〜90重量%、より好ましくは45〜80重量%である場合は、供給するモノマー(B)の量は、モノマー(B)の全供給量中、好ましくは50〜95重量%、より好ましくは55〜90重量%である。
モノマー(A)、(B)は、それぞれ個別に供給してもよく、また予めモノマー(A)と(B)との重量分率が異なる2種以上のモノマー溶液を調製した後に、順次段階的に供給してもよい。予め反応槽に一定のモノマー組成で一定量、仕込みとして供給しておいてもよい。仕込みでの供給とは、反応温度への昇温開始前の添加を意味する。
モノマー(A)、(B)の供給方法としては、以下の(1)、(2)が挙げられる。
(1)モノマー(A)、(B)をそれぞれ個別に供給する場合
モノマー(A)、(B)を、それぞれ個別に供給する場合は、具体的には、モノマー(A)の反応系への滴下中に、モノマー(B)の反応系への滴下を行い、モノマー(A)の重量分率を、5重量%以上変化させるように、所定時間、滴下流量(重量部/分)を変化させる方法等が挙げられる。
モノマー(A)及び(B)の合計量に対するモノマー(A)及び(B)の重量分率を変化させる好ましい量は、前記のとおりである。
重量分率の変化は、供給するモノマー全ての供給速度を変えたり、供給モノマーの一部のみの供給速度を変えたりすることによって調整してもよい。また、モノマーの供給速度の変化は、連続的に行ってもよいし、段階的に行ってもよく、これらを組み合わせてもよい。更にその変化は、増加又は減少の一元的変化のみでなく、増加、減少を交互に含むものであってもよい。更にモノマー滴下槽を用いて添加するモノマーの一部を仕込み、他のモノマーを連続的に又は段階的に変化させモノマー滴下槽に添加しながら該モノマー混合溶液を滴下槽から反応槽に滴下する態様も含まれる。
モノマーの供給速度(添加量/分/全量)は、ポリマー中、モノマー(A)由来の構成単位の分布の幅を広げる観点から、単位時間(1分)当たり、好ましくは0.01〜5重量%、更に好ましくは0.1〜3重量%である。
モノマーの供給速度を変化させて反応系に連続して供給する場合、モノマー(A)の重量分率の変化の度合いは、ポリマー中、モノマー(A)由来の構成単位の分布の幅を広げる観点から、単位時間(1分)当たり、好ましくは0.001〜0.5重量%、更に好ましくは0.01〜0.5重量%である。
上記方法において、モル比や重量分率の変化の度合いは、供給するモノマーの流量を流量計や液面計等により測定し、調節する。
好ましい具体的態様としては、下記のものが挙げられる。
・モノマー(A)を反応槽に一部仕込んだ後、昇温し、重合温度付近で、モノマー(B)と残りのモノマー(A)とを個別に反応系に供給する方法。
・反応槽を昇温した後、重合温度付近で、モノマー(A)とモノマー(B)とを個別に反応系に供給する方法
(2)モノマー(A)と(B)との重量分率が異なる2種以上のモノマー溶液を供給する場合
予めモノマー(A)と(B)との重量分率が異なるモノマー溶液を2種以上調製した後に、段階的に添加する製法が、重量分率をコントロールし易く、製造上容易であるため好ましい。
具体的には、前記一般式(1)で表されるモノマー(A)と前記一般式(2)及び/又は(3)で表されるモノマー(B)との重量分率が異なる2種以上のモノマー溶液を順次反応槽に供給して共重合するポリマーの製造方法であって、モノマー(A)の重量分率〔[モノマー(A)/(モノマー(A)+モノマー(B))]×100〕が大きい(好ましくはモノマー(B)の重量分率が小さい)モノマー溶液(a)と、モノマー(A)の重量分率が小さい(好ましくはモノマー(B)の重量分率が大きい)モノマー溶液(b)とのモノマー(A)の重量分率の差が5重量%以上である、顔料分散用ポリマーの製造方法である。
ポリマー中のモノマー(A)由来の構成単位の含有率の分布の幅を広げる観点から、及びポリマー中のモノマー(A)由来の構成単位の含有量の観点から、前記モノマー溶液(a)中のモノマー(A)の重量分率は、前記モノマー溶液(b)中のモノマー(A)の重量分率より、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%、更に好ましくは15〜40重量%大きい。
モノマー(A)の重量分率を減少させるに伴い、モノマー(B)の重量分率を増加させることが、ポリマー中のモノマー(A)由来の構成単位とモノマー(B)由来の構成単位との重量比率の分布の幅を広げる観点から好ましい。
前記モノマー溶液(b)中のモノマー(B)の重量分率は、前記モノマー溶液(a)中のモノマー(B)の重量分率より、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%、更に好ましくは15〜40重量%大きい。
モノマー溶液(a)を添加した後、モノマー溶液(b)を添加することが、モノマー(A)由来の構成単位のポリマー分布の幅を広げるために好ましい。特に、特に、スチレン系モノマーのようにモノマー(B)の反応性がモノマー(A)よりも低い場合には、ポリマー中のモノマー(A)由来の構成単位の含有率の分布の幅を広げることができる観点から好ましい。また、第1段階の供給は反応槽への仕込みであってもよい。モノマー溶液は2種以上であればよく、3種以上でもよいが、製造上の観点から、2〜5種が好ましい。
ポリマー中のモノマー(A)由来の構成単位の含有率の分布の幅を広げ、吐出性を向上させる観点から、モノマー溶液(a)又は(b)中の各モノマー(A)又は(B)の重量分率は以下のとおりである。
モノマー溶液(a)中のモノマー(A)の重量分率〔[モノマー(A)/(モノマー(A)+モノマー(B))]×100〕は、20〜75重量%が好ましく、25〜65重量%がより好ましく、モノマー溶液(a)中のモノマー(B)の重量分率〔[モノマー(B)/(モノマー(A)+モノマー(B))]×100〕は、20〜75重量%が好ましく、25〜70重量%がより好ましい。
また、モノマー溶液(a)中の塩生成基含有モノマーの重量分率は、分散安定性の観点から、5〜30重量%が好ましく、10〜20重量%がより好ましい。
モノマー(A)の重量分率が大きい場合に供給するモノマー(A)の全供給量中の重量割合、モノマー(B)の重量分率が小さい場合に供給するモノマー(B)の全供給量中の重量割合は、前記のとおりである。
モノマー溶液(b)中のモノマー(A)の重量分率〔[モノマー(A)/(モノマー(A)+モノマー(B))]×100〕は、5〜55重量%が好ましく、10〜40重量%がより好ましく、モノマー溶液(b)中のモノマー(B)の重量分率〔[モノマー(B)/(モノマー(A)+モノマー(B))]×100〕は、40〜90重量%が好ましく、45〜80重量%がより好ましい。
また、モノマー溶液(b)中の塩生成基含有モノマーの重量分率は、分散安定性の観点から、5〜30重量%が好ましく、10〜20重量%がより好ましい。
モノマー溶液(a)と(b)との合計重量中、モノマー溶液(a)の重量分率は、好ましくは10〜70重量%、より好ましくは15〜60重量%であり、モノマー溶液(b)の重量分率は、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは40〜85重量%である。
モノマー(A)の重量分率が小さい場合に供給するモノマー(A)の全供給量中の重量割合、モノマー(B)の重量分率が大きい場合に供給するモノマー(B)の全供給量中の重量割合は、前記のとおりである。
モノマー溶液(a)及び/又は(b)の反応系への供給速度(添加量/分/溶液量)は、ポリマー中、モノマー(A)由来の構成単位の分布の幅を広げる観点から、単位時間(1分)当たり、好ましくは0.01〜5重量%、更に好ましくは0.1〜3重量%である。
好ましい具体的態様としては、下記のものが挙げられる。
・モノマー溶液(a)を反応槽に仕込んだ後、昇温し、重合温度付近で、モノマー溶液(b)を反応系に供給する方法。更にモノマー溶液(b)を供給した後、他の組成のモノマー溶液を、本発明を損なわない限り供給してもよい。
・反応槽を昇温した後、重合温度付近で、モノマー溶液(a)を反応系に供給し、その後、モノマー溶液(b)を反応系に供給する方法。更にモノマー溶液(b)を供給した後、他の組成のモノマー溶液を、本発明を損なわない限り供給してもよく、モノマー溶液(a)を供給するに前に、他の組成のモノマー溶液を、本発明を損なわない限り供給してもよい。
モノマー溶液(a)とモノマー溶液(b)とを供給する間に、本発明を損なわない限り他の組成のモノマー溶液を供給してもよい。
モノマー溶液(a)とモノマー溶液(b)との反応系への供給時期は、本発明を損なわない限り、一部重複してもよい。
(ポリマーの重合法)
本発明のポリマーは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により、モノマー(A)及び(B)を含むモノマー混合物を共重合させることによって製造される。本発明における重合は、主として均一状態における重合であるため、ポリマーの構成単位の組成分布の制御を容易とする観点、モノマー添加を簡便にする観点、分散プロセスにおいてポリマー溶液を用いるという観点から、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒としては、特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましい。また、極性有機溶媒を水と混合して用いることもできる。極性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン又はこれらと水との混合溶媒が好ましい。
重合の際には、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物や、t−ブチルペルオキシオクトエート、ジベンゾイルオキシド等の有機過酸化物等の公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤の量は、モノマー混合物1モルあたり、好ましくは0.0001〜0.5モル、より好ましくは0.001〜0.05モルである。
重合の際には、さらに、オクチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類、チウラムジスルフィド類等の公知の重合連鎖移動剤を添加してもよい。
モノマー混合物の重合条件は、使用するラジカル重合開始剤、モノマー、溶媒の種類等によって異なるので一概には決定することができない。通常、重合温度は、好ましくは30〜100℃、より好ましくは50〜80℃であり、重合時間は、好ましくは1〜20時間である。また、重合雰囲気は、窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
モノマー(A)及び(B)を添加する際の、添加時間、添加速度等の条件はモノマーの反応進行により消費される反応槽中の残存モノマーから決定することができる。残存モノマーの測定は、ガスクロマトグラフィー法、液体クロマトグラフィー法、NMRスペクトル法、IRスペクトル法等の各種定量分析法によって行うことができる。
モノマーの滴下時間及び重合時間は、添加(滴下)によるモノマー供給量と反応により消費されるモノマーの消費速度の観点から、1〜20時間が好ましく、2〜10時間がより好ましく、2〜5時間が更に好ましい。
得られたポリマーの組成分析は、例えばNMRスペクトル、UV−visスペクトル、IRスペクトル、アフィニティクロマトグラフィー等によって行うことができ、分子量はGPC法、動的光散乱法等によって測定することができる。
本発明で用いられるポリマーの重量平均分子量は、顔料の分散安定性、耐水性及び吐出性の観点から5,000〜500,000が好ましく、10,000〜300,000がさらに好ましく、10,000〜200,000が特に好ましい。ポリマーの重量平均分子量は、実施例記載の方法により測定することができる。
本発明のポリマーが塩生成基を有する場合は、塩生成基含有モノマー由来の塩生成基を、中和剤により中和して用いることが好ましい。中和剤としては、塩酸、酢酸、プロピオン酸、リン酸、硫酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、グリセリン酸等の等の酸、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の塩基が挙げられる。
塩生成基の中和度は、10〜200%であることが好ましく、さらに20〜150%、特に50〜150%であることが好ましい。
ここで中和度は、塩生成基がアニオン性基である場合、下記式によって求めることができる。
{[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[ポリマーの酸価 (KOHmg/g)×ポリマーの重量(g)/(56×1000)]}×100
塩生成基がカチオン性基である場合、下記式によって求めることができる。
[[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[ポリマーのアミン価 (HCLmg/g)×ポリマーの重量(g)/(36.5×1000)]]×100
酸価やアミン価は、ポリマーの構成単位から、計算で算出することができる。又は、適当な溶剤(例えばメチルエチルケトン)にポリマーを溶解して、滴定する方法でも求めることができる。
〔顔料分散用ポリマー〕
本発明の製造方法で得られる顔料分散用ポリマーは、全ポリマー中に均一に各モノマー由来の構成単位を有しているものではなく、モノマー(A)由来の構成単位を多く含むポリマー成分とモノマー(A)由来の構成単位を少なく含むポリマー成分とを含むことを特徴とする。すなわち、ポリマー中のモノマー(A)由来の構成単位を含むポリマーの組成分布が、シャープ(均一な1山分布)(図4(比較例1)参照)ではなく、ブロード(広い1山分布、又は2山以上の分布)であることを意味する(図2(実施例1)参照)。
吐出ノズル部に付着したインクは、水が蒸発した後に、インクに通常含まれている水溶性有機溶媒が主溶媒となりうる。本発明の顔料分散用ポリマーは、この水溶性有機溶媒に溶解性又は膨潤性を有するモノマー(A)由来の構成単位を多く含むポリマー成分(1)と、モノマー(A)由来の構成単位を少なく含むポリマー成分(又は顔料への親和性を有するモノマー(B)由来の構成単位を多く含むポリマー成分)(2)とを適当な組成割合で含むことにより、印刷画質等の基本性能を満足しつつ、吐出性に優れるものとなる。上記の本発明の効果を効率的に発揮するために、後述するように、顔料が顔料分散用ポリマーに含有されてなる、顔料含有ポリマー粒子の形態であることが好ましい。
本発明の顔料分散用ポリマーは、好ましくは、モノマー(A)由来の構成単位を30重量%以上70重量%未満含有するポリマー成分(1)を、好ましくは15〜75重量%、より好ましくは20〜60重量%、更に好ましくは20〜40重量%、及びモノマー(A)由来の構成単位を0重量%以上20重量%未満含有するポリマー成分(2)を、好ましくは15〜75重量%、より好ましくは20〜70重量%、更に好ましくは20〜65重量%を含有する。
ポリマー成分(1)中のモノマー(A)由来の構成単位が多すぎると、ポリマー自身の溶媒への溶解性が高くなり過ぎて分散安定性が低下し、逆に少な過ぎると溶媒との親和性が低下し、吐出改善効果が低下する。ポリマー成分(1)は、モノマー(B)由来の構成単位を、好ましくは20〜50重量%、より好ましくは20〜40重量%を含み、塩生成基由来の構成単位を好ましくは5〜30重量%含有する。
ポリマー(2)は、モノマー(B)由来の構成単位を、好ましくは30〜80重量%、より好ましくは50〜80重量%を含み、塩生成基由来の構成単位を好ましくは5〜30重量%含有する。
更に、本発明の顔料分散用ポリマーは、モノマー(A)由来の構成単位を20重量%以上30重量%未満であるポリマー成分(3)を含有することが吐出性向上の観点から好ましい。ポリマー成分(3)は、ポリマー成分(1)とポリマー成分(2)とのバインダーの働きをすると考えられ、本発明の顔料分散用ポリマーに、好ましくは5〜70重量%、より好ましくは5〜50重量%含有される。
なお、ポリマー中のモノマー組成は、実施例記載の方法により決定することができる。
なお、本発明の顔料分散体及び水系インクに含有される水溶性有機溶媒としては、水100gに対する溶解量が、25℃において50g以上であることが好ましく、60g以上であることがより好ましく、飽和蒸気圧(20℃)が0.001〜1kPaであることが好ましい。
水溶性有機溶媒としては、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される、好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜6の多価アルコール類;エチレングリコールモノアルキル(炭素数1〜6)エーテル、ジエチレングリコールモノアルキル(炭素数1〜6)エーテル、トリエチレングリコールモノアルキル(炭素数1〜6)エーテル等に代表される多価アルコールの低級アルキルエーテル類;2−ピロリドン、N−メチルー2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類;スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物;ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の多官能化合物が用いられる。
これらの中では、保湿性、浸透性の観点から、多価アルコール類、多価アルコールの低級アルキルエーテル類が好ましい。
上記の水溶性有機溶媒の含有量は、水系インク中で10重量%以上が好ましく、10〜50重量%がより好ましく、15〜40重量%が更に好ましい。
〔顔料〕
本発明で用いられる顔料は、有機顔料及び無機顔料のいずれであってもよい。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。好ましい有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー13、17、74、83、97、109、110、120、128、139、151、154、155、174、180;C.I.ピグメント・レッド48、57:1、122、146、176、184、185、188、202:C.I.ピグメント・バイオレット19、23;C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、60;C.I.ピグメント・グリーン7、36等が挙げられる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物等が挙げられる。これらの中では、特に黒色水系インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
〔顔料水分散体の製造方法〕
本発明の顔料水分散体の製造方法に特に限定はないが、例えば、次の工程(1)及び(2)を有する方法によれば効率的に製造することができる。
工程(1):ポリマー、有機溶媒、中和剤(ポリマーが塩生成基を有する場合)、顔料、及び水を含有する混合物を、分散処理する工程
工程(2):前記有機溶媒を除去する工程
工程(1)では、まず、前記ポリマーを有機溶媒に溶解させ、次に顔料、中和剤、水、及び必要に応じて界面活性剤等を、前記有機溶媒に加えて混合し、水中油型の分散体を得る。混合物中、顔料は、5〜50重量%が好ましく、有機溶媒は、10〜70重量%が好ましく、ポリマーは、1〜40重量%が好ましく、水は、10〜70重量%が好ましい。中和度には、特に限定がない。通常、最終的に得られる水分散体の液性が中性、例えば、pHが4.5〜10であることが好ましい。前記ポリマーの望まれる中和度により、pHを決めることもできる。
有機溶媒としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒及びエーテル系溶媒が好ましく挙げられ、水に対する溶解度が20℃において、10〜50重量%のものが好ましい。
アルコール系溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、第3級ブタノール、イソブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒の中では、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンが好ましく、特に、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンが好ましい。
中和剤としては、ポリマー中の塩生成基の種類に応じて、前記の酸又は塩基を使用することができる。
前記工程(1)における混合物の分散方法に特に制限はない。本分散だけでポリマー粒子の平均粒径を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、好ましくは予備分散させた後、さらに剪断応力を加えて本分散を行い、ポリマー粒子の平均粒径を所望の粒径とするよう制御することが好ましい。
混合物を予備分散させる際には、アンカー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができる。混合撹拌装置の中では、ウルトラディスパー〔浅田鉄工株式会社、商品名〕、エバラマイルダー〔株式会社荏原製作所、商品名〕、TKホモミクサー〔プライミクス株式会社、商品名〕等の高速攪拌混合装置が好ましい。
本分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ビーズミル、ニーダー、エクストルーダ等の混練機、高圧ホモゲナイザー〔株式会社イズミフードマシナリ、商品名〕、ミニラボ8.3H型〔Rannie社、商品名〕に代表されるホモバルブ式の高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー〔Microfluidics社、商品名〕、ナノマイザー〔ナノマイザー株式会社、商品名〕等のチャンバー式の高圧ホモジナイザー等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。これらの中では、混合物に含まれている顔料の小粒子径化の観点から、高圧ホモジナイザーが好ましい。
前記工程(2)では、前記工程(1)で得られた水分散体から有機溶媒を留去して水系にすることで、顔料を含有するポリマー粒子の水分散体を得る。水分散体に含まれる有機溶媒の除去は、減圧蒸留等による一般的な方法により行うことができる。得られたポリマー粒子を含む水分散体中の有機溶媒は実質的に除去されており、有機溶媒の量は0.1重量%以下、好ましくは0.01重量%以下である。
顔料を含有するポリマー粒子の水分散体は、顔料を含有するポリマーの固体分が水を主媒体とする中に分散しているものである。ここで、顔料を含むポリマー粒子の形態は特に制限はなく、少なくとも顔料とポリマーにより粒子が形成されていればよい。例えば、ポリマーに顔料が内包された粒子形態、ポリマー中に顔料が均一に分散された粒子形態、ポリマー粒子表面に顔料が露出された粒子形態等が含まれる。
〔水系インク〕
上記の顔料を含有するポリマー粒子の水分散体はそのまま水系インクとして用いてもよいが、インクジェット記録用水系インクに通常用いられる湿潤剤、浸透剤、分散剤、粘度調整剤、消泡剤、防黴剤、防錆剤等を添加してもよい。なお、水分散体とは水を主媒体とする分散体であり、水系インクとは水を主媒体とするインクであり、他の溶媒が含まれていてもよい。
得られる水分散体及び水系インクにおける、顔料を含有するポリマー粒子の平均粒径は、プリンターのノズルの目詰まり防止及び分散安定性の観点から、好ましくは0.01〜0.50μm、より好ましくは0.03〜0.30μm、更に好ましくは0.05〜0.20μmである。なお、平均粒径は、大塚電子株式会社のレーザー粒子解析システムELS−8000で測定することができる。
また、水分散体及び水系インク中、顔料を含有するポリマー粒子の含有量(固形分)は、印字濃度及び吐出安定性の観点から、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは1〜15重量%である。また、水分散体及び水系インク中の水の含有量は、好ましくは30〜90重量%,より好ましくは40〜80重量%である。
該水分散体及び水系インクの好ましい表面張力は、水分散体としては好ましくは40〜70mN/m、より好ましくは45〜65mN/mであり、水系インクとしては、好ましくは28〜50mN/m、より好ましくは30〜45mN/mである。
該水分散体の10重量%の粘度(20℃)は、水系インクとした時に好ましい粘度とするために、好ましくは2〜10mPa・s、より好ましくは2〜5mPa・sであり、水系インクの粘度(20℃)は、良好な吐出性を維持するために、好ましくは2〜30mPa・s、より好ましくは2〜15mPa・sである。
以下の実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「重量部」及び「重量%」である。なお、ポリマーの重量平均分子量の測定、及びポリマー中のモノマー組成の決定は以下のとおり行った。
(1)ポリマーの重量平均分子量の測定
溶媒として、60mmol/Lのリン酸と50mmol/Lのリチウムブロマイドを含有するN,N−ジメチルホルムアミドを用いたゲルクロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定した。使用カラム:東ソー株式会社製(TSK-GEL、α-M×2本)、本体:東ソー株式会社製(HLC−8120GPC)、流速:1mL/minを用いた。
(2)ポリマー中のモノマー組成の決定
反応槽中のモノマー溶液を経時でサンプリングし、ガスクロマトグラフィーで分析することにより、各モノマーの消費量(反応量)を算出した。サンプリングは、反応温度に達した時点から10分毎に行う。生成したポリマー量は合計のモノマーの消費量から計算することができる。なお、ガスクロマトグラフィーで検出できないモノマーについては、ポリマーの生成速度とモノマーの消費速度とが同じであるとして算出する。例えば、ポリマーの生成率が30重量%である時、そのモノマーの消費率が30重量%とする。
モノマー消費量とポリマー生成量との関係をグラフ化(図1(実施例1)、図3(比較例1)参照)し、生成したポリマー5重量%分の各モノマーの変化量から、ポリマー5重量%の各モノマーの組成(XからX+5重量%;Xは、5重量%刻みで0から95重量%までの20段階の値)を計算し、ポリマーの一般式(1)で表されるモノマー含有量の分布で表わした。
例えば、図1において、実施例1のポリマー量が70重量%から75重量%に変化した際に、スチレン(St)が5重量%、PP−1000(ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、日本油脂株式会社製、商品名:ブレンマーPP−1000)が2重量%、メタクリル酸モノマー(MAA)が1重量%消費されており、この割合から、スチレンが62.5重量%、PP−1000が25重量%、メタクリル酸が12.5重量%の組成でポリマーが生成していることになる。この組成は、5重量%刻みで表されたポリマー分布ではPP−1000含有量が25〜30重量%に該当し、生成したポリマー量は5重量%である。
横軸のX〜X+5重量%はX以上、X+5重量%未満である。縦軸はポリマー量で5重量%刻みである。但し、95〜100重量%は、95重量%以上100重量%以下である。
なお、ガスクロマトグラフィー測定は、下記の条件で行う。なお、予め各モノマー単独の検量線を作成して定量した。
・ガスクロマトグラフィー装置:Agilent Technologies社製、Agilent 6890
・検出器:FID
・カラム:HP−FFAP(Crosslinked FFAP)長さ30m、内径0.53mm、膜厚1μm
・キャリアガス:ヘリウム+空気
・昇温条件:初期40℃、3min保持、10℃/minで昇温、最高温度240℃で10min保持
・注入量:1μL ・希釈溶媒:メチルエチルケトン(サンプルを10重量倍希釈)
上記条件で行った時のモノマーのリテンションタイムは、例えば、スチレンでは9.0min、メタクリル酸では14.3min、PP−1000では14.8minと15.2minであり、PP−1000のような複数のピークを有するモノマーについては、検出されたピークの合計面積で計算し、検出量とした。
実施例1
(1)ポリマーの製造
反応容器内に、メチルエチルケトン100部、重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)0.5部、スチレン156部、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日本油脂株式会社製、商品名:ブレンマーPP−1000、(プロピレンオキシド平均付加モル数=5、末端:ヒドロキシ基)。以下、PP−1000という。)120部、及びメタクリル酸24部を混合し、窒素ガス置換を行った(第1段階)。
別に、メチルエチルケトン250部、前記重合連鎖移動剤1.5部、ラジカル重合開始剤(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、和光純薬工業株式会社製、商品名:V−65)7.5部、スチレン408部、PP−1000 120部、及びメタクリル酸72部の混合物(滴下液A)、及び、メチルエチルケトン150部、前記重合連鎖移動剤0.6部、前記ラジカル重合開始剤2.5部、スチレン46部、PP−1000 10部、及びメタクリル酸44部の混合物(滴下液B)を用意し、窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら75℃まで昇温した。まず、滴下ロートに滴下液Aを入れ、2時間かけて反応容器内に滴下(供給速度0.8重量%/分)した(第2段階)。滴下液Aの滴下完了後、引き続き、攪拌しながら75℃で、滴下液Bを別の滴下ロートに入れ、1時間かけて反応容器内に滴下(供給速度1.7重量%/分)した(第3段階)。
滴下液Bを滴下完了後、その反応容器内の液温を75℃で1時間維持し、さらに前記重合開始剤12部をメチルエチルケトン240部に溶解した溶液を反応容器に滴下し、その後75℃で3時間、更に85℃で1時間熟成させた。熟成後、冷却し、メチルエチルケトンを加えて濃度調整を行って固形分40%の塩生成基を有するポリマー溶液を得た。
得られたポリマーの重量平均分子量は44000であった。
(2)顔料分散体の製造
前記(1)で得られたポリマー溶液125g(有効分40%)に、5Nの水酸化ナトリウム水溶液15.2g、25%アンモニア水溶液1.2g、メチルエチルケトン68g及びイオン交換水420gを添加し、ディスパー槽内で20分間攪拌した。その後、攪拌しながらこれにカーボンブラック顔料(キャボット社製、商品名:モナーク880)150gを加えてさらに1時間混合した。
得られた分散体をマイクロフルイダイザー(マイクロフルイディックス社製)で150MPaの圧力で10パス分散処理を施し、顔料分散体を得た。
得られた顔料分散体にイオン交換水加えて固形分濃度が15重量%となるように希釈し攪拌した後、減圧下で60℃で有機溶媒と一部の水を除去し、遠心分離により粗大粒子を除去し、さらに平均孔径1.2μmのフィルター〔アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士フイルム株式会社製〕で濾過し、粗大粒子を除去し、固形分濃度が23%の顔料水分散体を得た。
(3)インクの製造
顔料分散体製造例で得られた顔料分散体46.4部にグリセリン10部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル4部、ノニオン系濡れ剤(日信化学工業株式会社、商品名:サーフィノール465)1部、防腐剤(アーチ・ケミカルズ・ジャパン株式会社、商品名:プロキセルXL2)0.09部、イオン交換水38.51部を加え、攪拌し1.2μmのフィルター(日本ポール株式会社製)で濾過し、粗大粒子を除去し、インクジェット用インクを得た。
実施例2及び比較例1〜2
(1)ポリマーの製造
実施例1(1)において、表1に示すモノマー及び量に変更した以外は、実施例1(1)と同様に行った。
(2)顔料分散体の製造
前記(1)で得られたポリマー溶液を用いて、実施例1(2)と同様にして、顔料分散体を製造した。
(3)インクの製造
前記(2)で得られた顔料分散体を用いて、実施例1(3)と同様にして、インクを製造した。
なお、表1に示す、PP−500はポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日本油脂株式会社製、商品名:ブレンマーPP−500、プロピレンオキシド平均付加モル数=9)、StMはスチレンマクロマー(東亜合成株式会社製、商品名:AS−6S、数平均分子量:6000)、SMAはステアリルメタクリレートを意味する。
次に、実施例及び比較例で得られた水系インクについて、連続吐出性を以下の方法により評価した。結果を表1に示す。
〔連続吐出性〕
市販のインクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製、型番:EM−930C、ピエゾ方式)を用いて、市販の普通紙(XEROX株式会社製、商品名:4024)に高温低湿条件(温度32℃、湿度20%)下、ファインモードの条件下で幅8mmの縦線1本(黒のみ)の印字パターンで連続500枚を印字した。
(評価基準)
4:500枚目まで「ぬけ」なし、「よれ」なし
3:500枚目まで「ぬけ」なし、「よれ」あり
2:100枚目から、500枚目までに「ぬけ」あり
1:100枚目未満で「ぬけ」あり
ここで、「ぬけ」とは、インクが吐出していないノズルがあり、太く白い筋が入る場合をいい、「よれ」とは、インクが吐出していないノズルはないが、細く白い筋が入る場合をいう。
Figure 0005164653
表1から、明らかなように、比較例1(第1段階の滴下組成と第2段階の滴下組成が同じである、公知の一般的な滴下重合法)では、連続吐出性が悪い。比較例2は、第1段階の滴下組成と第2段階の滴下組成が異なるが、モノマー(A)の重量分率の差が小さいため、連続吐出性の改善効果が低い。
これに対して、実施例の水系インクは、第1段階と第2段階のモノマー(A)の重量分率の差が5重量%以上であるため、連続吐出性に優れていることが分かる。
また、実施例の水系インクは、印刷画質等の基本性能を満足していた。
実施例1におけるモノマー消費量とポリマー生成量との関係を示すグラフである。 実施例1で得られたポリマーの組成分布を示すグラフである。 比較例1におけるモノマー消費量とポリマー生成量との関係を示すグラフである。 比較例1で得られたポリマーの組成分布を示すグラフである。

Claims (13)

  1. 下記一般式(1)で表されるモノマー(A)と下記一般式(2)及び/又は(3)で表されるモノマー(B)とを共重合するポリマーの製造方法であって、反応系への供給過程において、反応系に供給するモノマー(A)及び(B)の合計量に対するモノマー(A)の重量分率を、少なくとも2回、5重量%以上変化させる、顔料分散用ポリマーの製造方法。
    モノマー(A):CH2=CR1(COO(AO)nR2) (1)
    (式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は水素原子又は炭素数1〜22の炭化水素基、AOは炭素数3以上のアルカンジイルオキシ基を示し、nは平均付加モル数を示し、1〜30の数である。)
    モノマー(B):CH2=CR13 (2)
    CH2=CR1COOR4 (3)
    (式中、R1は前記と同じであり、R3は、炭素数6〜22のアリール基又はアリールアルキル基を示し、R4は、官能基を有していてもよい、炭素数1〜22の炭化水素基、又はスチレン系マクロマーから(メタ)アリロイル基を除去した残基を示す。)
  2. 反応系への供給過程において、反応系に供給するモノマー(A)及び(B)の合計量に対するモノマー(A)の重量分率を、20〜70重量%から5〜55重量%に減少させる、請求項1に記載の顔料分散用ポリマーの製造方法。
  3. 供給する全モノマー中のモノマー(A)の含有量が10〜50重量%である、請求項1又は2に記載の顔料分散用ポリマーの製造方法。
  4. 供給する全モノマー中のモノマー(B)の含有量が30〜80重量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の顔料分散用ポリマーの製造方法。
  5. [供給する全モノマー(A)量/供給する全モノマー(B)量]の重量比が1/10〜1/1である、請求項1〜4のいずれかに記載の顔料分散用ポリマーの製造方法。
  6. 一般式(1)で表されるモノマー(A)と前記一般式(2)及び/又は(3)で表されるモノマー(B)との重量分率が異なる2種以上のモノマー溶液を反応系に供給する、請求項1〜5のいずれかに記載の顔料分散用ポリマーの製造方法。
  7. 一般式(1)におけるAOがプロピレンオキシ基を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の顔料分散用ポリマーの製造方法。
  8. 更に反応系に供給するモノマーが塩生成基含有モノマーを含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の顔料分散用ポリマーの製造方法。
  9. 前記一般式(1)で表されるモノマー(A)由来の構成単位と前記一般式(2)及び/又は(3)で表されるモノマー(B)由来の構成単位とを含有する、請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法により得られるポリマーであって、該モノマー(A)由来の構成単位を30重量%以上70重量%未満含有するポリマー成分(1)を15〜75重量%、及び該モノマー(A)由来の構成単位を0重量%以上20重量%未満含有するポリマー成分(2)を15〜75重量%を含有する、顔料分散用ポリマー。
  10. ポリマー成分(1)及び(2)が、一般式(2)及び/又は(3)で表されるモノマー(B)由来の構成単位と塩生成基含有モノマー由来の構成単位とを含む、請求項に記載の顔料分散用ポリマー。
  11. 請求項9又は10に記載の顔料分散用ポリマーと顔料とを含有する、顔料水分散体。
  12. 顔料が、顔料分散用ポリマーに含有されてなる顔料含有ポリマー粒子の形態である、請求項11に記載の顔料水分散体。
  13. 請求項11又は12に記載の顔料水分散体を含有する、インクジェット記録用水系インク。
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