以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態の時計モジュールを示す正面図、図2は、その矢印A−A線断面図、図3は針を回転させる歯車を裏蓋側からみた背面図である。
この実施の形態の時計モジュール1は、例えば電子制御によって針を回転させる電子アナログ腕時計の本体となるものである。時計モジュール1の正面側には風防ガラスの下側に文字板5およびソーラーパネル9が設けられ、この文字板5とソーラーパネル9に正面側が覆われかつ周囲がケーシングTKに囲まれて内部機構が遮光されている。文字板5やソーラーパネル9の中央には、秒針軸20a、分針軸25a、時針軸27aを内部機構から前面側に通過させる貫通孔5a,9aが設けられ、これら軸20a,25a,27aの突出した部位に秒針2と分針3と時針4とがそれぞれ固定されている。そして、各軸20a,25a,27aが回転することで、文字板5上で秒針2と分針3と時針4とが回転し、時刻が表示されるようになっている。
図2に示すように、時針4が固定される時針軸27aと分針3が固定される分針軸25aとは、中空管状の軸であり、時針軸27aの中に分針軸25aが通され、分針軸25aの中に秒針軸20aが通されて、これら秒針軸20a、分針軸25aおよび時針軸27aが同一の回転軸を中心に回転可能な状態にされている。
これら秒針軸20a、分針軸25aおよび時針軸27aは、文字板5の背面側で互いに重なるように配置された移動部材としての3つの歯車、すなわち、秒針車20、分針車25および時針車27の回転中心位置にそれぞれ固着されている。これら秒針車20、分針車25および時針車27は、互いに同一の回転軸を中心に回転可能な状態にされている。図3において、分針車25と時針車27とは、秒針車20と同心の位置に重なった状態に配置されている。
また、図3に示すように、この時計モジュール1の駆動系は、秒針2を回転駆動する第1駆動系11と、時針4と分針3を連動させて回転駆動する第2駆動系12とに別れ、これら2系統の駆動系11,12がそれぞれ独立的に駆動可能にされている。第1駆動系11は、第1ステッピングモータ17と、五番車18と、秒針車20とからなり、第1ステッピングモータ17のロータ17cの運動がロータカナ17d、五番車18、五番車カナ18a、秒針車20と伝達されて、秒針車20および秒針2を回転するように構成されている。
第2駆動系12は、第2ステッピングモータ22、移動部材としての中間車23、三番車24、分針車25、図示略の日の裏車、時針車27等から構成され、第2ステッピングモータ22のロータ22cの運動がロータカナ22d、三番車24、三番車カナ24a、中間車23、中間車カナ23a、分針車25と伝達され、さらに、分針車25のカナ25bから日の裏車、日の裏車のカナ26a(図2参照)、時針車27と伝達されて、分針車25および分針3と時針車27および時針4とが連動して回転するようになっている。
なお、図2中、6は上部ハウジング、7は下部ハウジング、10は回路基板、14〜16は各歯車の軸を保持する軸受板、17aは第1ステッピングモータ17のコイルブロック、17bは第1ステッピングモータ17のステータ、22aは第2ステッピングモータ22のコイルブロック、22bは第2ステッピングモータ22のステータである。
また、この時計モジュール1の内部機構には、複数の歯車(時針車27、分針車25、秒針車20、中間車23)に設けられた透過孔の重なり状態を検出する検出部13が設けられている。検出部13は、電気的な駆動により光を発光する発光手段としての発光部31と、光を受光して検出信号を出力する受光手段としての受光部32とを備えている。詳細は後述するが、発光部31は例えば発光ダイオードなど有し、受光部32は例えばフォトトランジスタなどを有する構成である。この実施形態では、発光部31と受光部32とは、上記の複数の歯車を挟んで対向するように文字板5側と裏蓋側とに配置されている。そして、上記複数の歯車に形成された透過孔が検出位置Pで重なると、発光部31の光が透過孔を通過して受光部32に届いてそれが検出されるようになっている。また、歯車に形成された透過孔が検出位置Pで重なっていなければ、発光部31の光は歯車に遮られて受光部32へあまり届かず、それが検出されるようになっている。
図4〜図6には、秒針車20、分針車25および中間車23、時針車27に形成された透過孔を表わした正面図を示す。
図4に示すように、秒針車20には、例えば秒針2と重なる位置に円形の第1透過孔21aが形成され、この透過孔21aと同一半径上、周方向に沿って長い2つの第2長孔21bと第3長孔21cとが形成されている。第1透過孔21aと第2長孔21bとの間は第1遮光部21d、第1透過孔21aと第3長孔21cとの間は第2遮光部21eとなっており、これら第1遮光部21dと第2遮光部21eとは異なる長さに設定されている。また、第2長孔21bと第3長孔21cとの間の第3遮光部21fは、第1透過孔21aの位置から180度の位置に設定されている。
分針車25には、図5に示すように、例えば分針3と重なる位置に円形状の1個の第2透過孔28が形成されている。この第2透過孔28は、秒針車20の第1透過孔21aと同一半径上に形成されている。また、中間車23には円形状の1個の第4透過孔30が形成されている。この第4透過孔30は、分針車25の第2透過孔28の半径位置と重なる中間車23の半径位置に形成されている。
時針車27には、図6に示すように、例えば、時針4と重なる位置、および、これと同一半径上で30度ごとに分割された位置に11個の第3透過孔29が設けられている。第3透過孔29はそれぞれ円形孔である。時針4が11時を指し示すときに0時の位置に来る部位には、円形孔が設けられず、第4遮光部29aとなっている。これら第3透過孔29も、秒針車20の第1透過孔21a、分針車25の第2透過孔28と同一半径位置に形成されている。
上記のような第1〜第4透過孔21a,28,29,30の構成により、各時間の所定分のうち1時間分を除く所定分(例えば0時00分、1時00分、〜、10時00分)となったときに分針車25の第2透過孔28と、時針車27の第3透過孔29と、中間車23の第4透過孔30とが、検出位置Pにおいて重なるようになっている。また、残りの1時間の所定分(例えば11時00分)になったときには、時針車27の第4遮光部29aが検出位置Pに来て、透過孔が閉じた状態にされるようになっている。
上記のような各歯車(20,23,25,27)とその透過孔の構成により、秒針車20の長孔21b,21cを検出位置Pに配置した状態で、分針3と時針4とを12時間分回転させつつその回転量をカウントしながら検出部13で透過孔の開閉状態を判別していくことで、一時間の回転ごとに第2〜第4透過孔28,29,30の重なりが検出されて、それにより分針3の位置を検出できるようになっている。それとともに、そのうち一時間分だけ第2〜第4透過孔28,29,30の重なりが検出されず、それにより時針4の位置が検出できるようになっている。
また、第2〜第4透過孔28〜30を検出位置Pに重ねた状態にして、秒針2を60秒分回転させ、その回転量をカウントしながら検出部13で透過孔の開閉状態を判別していくことで、秒針車20の第1透過孔21a、第1遮光部21d、第2長孔21b、第3遮光部21f、第3長孔21c、第2遮光部21eの検出パターンを得ることができ、それにより秒針2の位置が検出できるようになっている。
図7は、時計モジュールの回路構成を示すブロック図である。
時計モジュール1には、次のような回路構成が備わっている。すなわち、上記の第1ステッピングモータ17と第2ステッピングモータ22とを含みアナログ表示部の針2〜4の駆動を行う時計ムーブメント8、歯車(秒針車20、分針車25、中間車23、時針車27)の透過孔の重なり状態を検出する上述した検出部13、受光部32の検出信号をデジタル化して取り込むADコンバータ34、CPU(中央演算処理装置)を内蔵し装置の全体的な制御を行うマイクロコンピュータ35、制御プログラムや制御データが格納される不揮発性メモリ36、CPUに作業用のメモリ空間を提供するRAM(Random Access Memory)37、時刻を計時するためのクロックを形成する発振回路38と分周回路39、電池電圧から各部の電源を生成し供給する電源部40、時刻コードの含まれる標準電波を受信して取り込むアンテナ41と検波回路42、時計表示部を照らす照明部43と照明駆動回路44、アラーム出力を行うスピーカ45とブザー回路46、複数の操作ボタンからなる操作部47等が設けられている。これらのうち、マイクロコンピュータ35、検出部13、ADコンバータ34、不揮発性メモリ36およびRAM37により、貫通状態判別装置が構成される。
マイクロコンピュータ35には、日付や時刻を計時する時刻カウンタが設けられ、この時刻カウンタが分周回路39からのクロックによりカウントアップされて現在日時の計時が行われていく。検波回路42により標準電波を受信した場合には、CPUが時刻カウンタの値を時刻コードにより表わされる値に修正することで、内部時刻が現在時刻に同期するようになっている。また、マイクロコンピュータ35には、時刻カウンタとは別に、秒針2、分針3、時針4の位置を計数する針位置カウンタが設けられ、時計ムーブメント8の第1ステッピングモータ17や第2ステッピングモータ22を作動させるごとに、この針位置カウンタの値がカウントアップされて、3つの針位置とその値とが同期するようになっている。また、時刻カウンタと針位置カウンタの値とが同期されるように時計ムーブメント8が制御されることで、現在時刻がアナログ表示部の針2〜4により表わされるようになっている。
時計モジュール1においては、時計モジュール1が強磁界に触れたときや強い衝撃が加わった場合に、駆動パルスが出力されているのにも拘らず、ステッピングモータ17,22のロータ17c,22cが回転しなかったり、駆動パルスの出力以上にロータ17c,22cが回転してしまったりして、実際の針位置と針位置カウンタの値とがずれてしまう場合がある。そこで、マイクロコンピュータ35のCPUは、検出部13によって所定時刻ごとに歯車(秒針車20、中間車23、分針車25、時針車27)の透過孔の重なり状態を検出して、針位置カウンタの値が間違ったものになっていないか確認する。そして、針位置カウンタの値が間違ったものになっていると判断した場合には、秒針2、分針3、時針4を高速回転させつつ検出部13によって連続的に第1〜第4透過孔21a,28〜30の重なり状態の検出を行うことで実際の針位置を検出し、それと針位置カウンタの値が等しくなるように修正処理を行うようになっている。
図8には、図7の検出部13とその周辺部分を詳細に表わした回路構成図を示す。
検出部13の発光部31は、駆動電流を受けて光を出力する発光ダイオードD1と、発光ダイオードD1に所定の電流を出力する定電流回路311と、電流制御用の検出抵抗R1等から構成される。そして、マイクロコンピュータ35から出力される電流スタート信号ISが有効値となった場合に、定電流回路311から電流が出力されて発光ダイオードD1が発光するようになっている。
受光部32は、光を受けてその強度に応じた電流を流すフォトトランジスタTr1と、この電流を電圧信号に変換する抵抗R2と、フォトトランジスタTr1に定電圧VCCを供給する定電圧回路321等から構成される。そして、マイクロコンピュータ35から出力される電圧スタート信号VSが有効値となったら、定電圧回路321から電圧出力がなされてフォトトランジスタTr1が駆動されるようになっている。
ADコンバータ34は、逐次比較タイプのもので、例えば、マイクロコンピュータ35に外付けされる形態で、アナログコンパレータ341と、例えば4ビットのDAコンバータ342とを有するものである。また、図示は省略するが、AD変換する際にコンパレータ341の出力の記憶を行う逐次比較レジスタや、DAコンバータ342の出力制御を行う論理回路等が、マイクロコンピュータ35の内部に設けられている。DAコンバータ342は、定電圧VCCを例えば4ビット諧調で分割し、そのうち論理回路の出力データDOに応じた電圧を比較参照電圧としてコンパレータ341の反転入力端子へ出力する。コンパレータ341はこの比較参照電圧と入力電圧とを比較して、その比較結果を示す出力結果DIを逐次比較レジスタに出力するようになっている。そして、このような比較を4回繰り返すことで、4ビット諧調のAD変換値が逐次比較レジスタに書き込まれるようになっている。
このADコンバータ34においては、上記の通常のAD変換処理に加えて、マイクロコンピュータ35のCPUの制御により論理回路や逐次比較レジスタの動作モードを切り換えることで、例えば、DAコンバータ342に任意のデジタルデータDOを出力して、CPUがコンパレータ341の比較参照電圧(反転入力端子の電圧)を制御できるようになっている。また、その際のコンパレータ341の出力結果DIを1ビットデータの状態でCPUが読み込めるようになっている。つまり、このような動作制御によって、ADコンバータ34により、受光部32の出力電圧とCPUにより制御された比較参照電圧(閾値電圧)との単独の比較処理(コンパレート)が実行可能になっている。
次に、この実施形態の時計モジュール1における制御動作について説明する。
図9には、電子時計のCPUにより実行されるメイン制御処理のフローチャートを示す。
この実施形態の時計モジュール1においては、マイクロコンピュータ35のCPUにより電源投入時から図9のメイン制御処理が開始され、その後、このメイン制御処理のステップS1〜S4のループ処理が繰り返し実行されるようになっている。すなわち、操作部47のスイッチ信号を入力してこの入力に応じて各種処理を行うSW処理(ステップS1)、計時カウンタを適宜更新する計時処理(ステップS2)、指針の位置(すなわち指針と連動する歯車の位置)が狂っていないか検出を行う歯車位置検出処理(ステップS3)、電波受信処理や各種エラー処理などのその他の機能処理(ステップS4)、これらからなるループ処理が繰り返し実行される。
図10には、図9のステップS3で実行される歯車位置検出処理のフローチャートを示す。
歯車位置検出処理は、複数の歯車(時針車27、分針車25、秒針車20、中間車23)に形成された第1〜第4の透過孔21a,28,29,30が所定時刻に重なった状態となっているか確認する処理である。また、所定時刻に孔の重なりが確認されない場合には、針位置がずれていると判断して針位置を正しい位置に修正する処理を行うものである。
この歯車位置検出処理に移行すると、図10に示すように、先ず、予め設定された孔検出時刻か判別し(ステップS11で)、検出時刻でなければそのままこの歯車位置検出処理を終了してメイン制御処理に戻るが、孔検出時刻(例えば、0時00分,1時00分〜10時00分など、第1〜第4透過孔21a,28〜29が検出位置Pで重なる時刻)であれば、検出部13を動作させて孔の有無を検出する孔有無検出処理を行う(ステップS12)。そして、この検出処理の結果を判別し(ステップS13)、孔有りと判別されれば、針位置に異常はないとしてこのまま歯車位置検出処理を終了するが、孔無しと判別されれば、針位置の修正(すなわち、指針と連動する歯車の位置修正)を行う歯車位置自動修正処理(ステップS14)を実行してから、この歯車位置検出処理を終了する。なお、ステップS12で実行される孔有無検出処理は、後述する孔有無検出処理(図12)と同様の処理を適用することができる。
図11には、図10のステップS14で実行される歯車位置自動修正処理のフローチャートを示す。
歯車位置自動修正処理は、先ず、分針3と時針4とを高速に回転させながら、1ステップ或いは2ステップの回転(1回の運針と呼ぶ)ごとに、複数の歯車の透過孔が検出位置Pで重なった状態になったか否かを検出し、それにより分針3と時針4の実際の針位置を割り出し、次いで、秒針2を高速に回転させながら、1回の運針ごとに、複数の歯車の透過孔が検出位置Pで重なった状態になったか否かを検出し、それにより秒針2の実際の位置を割り出す。そして、全指針2〜4の実際の位置が判明したら、針位置の修正を行うものである。
この歯車位置自動修正処理に移行すると、図11に示すように、先ず、発光部31と受光部32とを有する検出部13を動作させて検出位置Pで歯車の透過孔が重なった状態にあるか否かを検出する孔有無検出処理(ステップS21)を行う。時計モジュール1には、例えば、文字板5やソーラーパネル9の寸法制度や組付バラツキ等により、内部に外来光が浸入することがあり、外来光の影響を加味して検出部13を動作させ、検出位置Pに歯車の透過孔が重なった状態にあるか否かを判別する必要がある。ステップS21の孔有無検出処理では、後述するように外来光の影響を加味しつつ高速な透過孔の検出処理が行われるようになっている。
そして、上記の孔有無検出処理(ステップS21)と、孔有りと検出された場合にこのループを抜ける分岐処理(ステップS22)と、歯車を駆動して指定の指針を1回の運針分進める運針処理(ステップS23)とを、ループ処理により繰り返し行って、複数の歯車(時針車27、分針車25、秒針車20、中間車23)に形成された第1〜第4の透過孔21a,28,29,30等が検出位置Pで重なる状態を検出していく。
そして、ステップS21〜S23のループ処理中に、孔有りと検出されてステップS22の判別処理でループ処理を抜けると、先ず、ステップS24において、この孔有りの検出に基づいて針位置を割り出す処理(すなわち指針と連動する歯車の位置を判別することで針位置を求める処理)を行う。すなわち、この孔有りと検出した際の運針処理で動かしていた指針の種類(分針3と時針4、或いは、秒針2)や、前回の孔有り検出のタイミングからの運針数等から、所定の演算処理を行って針位置の割り出しを行う。例えば、分針3と時針4とを運針しているときには、前回孔有りと検出されてから1時間分の運針で孔有りの検出があった際には、分針3が“00分”の位置にあり、時針4の位置は不明とされる。また、前回孔有りと検出されてから2時間分の運針で孔有りの検出があった際には、時針車27の第4遮光部29aを経て次の透過孔29が検出位置Pに重なったものとして、分針3と時針4が“0時00分”の位置にあると決定づける。また、秒針2を運針している際には、秒針2を360度近く回転させながら、孔有りの検出や孔無しの検出となった運針数をそれぞれカウントして、これらのカウント数を秒針車20の第1透過孔21a、第2長孔21b、第3長孔21bのパターンと対応づけることで、秒針2の位置を割り出す。
針位置の割り出し処理(ステップS24)を行ったら、次に、針位置の割り出しが行えたか、全ての針位置が確認できたか否かの判別を行う(ステップS25)。そして、未だ、全ての針位置の検出ができていなければ、ステップS21に戻って、指針2〜4を運針させなが検出位置Pで透過孔21a,28,29,30等が重なる状態を検出していくループ処理(ステップS21〜S23)に再び移行する。
一方、ステップS25の判別処理で、分針3と時針4の針位置検出および秒針2の針位置検出がそれぞれ完了したと判別されたら、先ず、マイクロコンピュータ35に設けられた針位置カウンタの値を現在の指針2〜4の位置が示す値にリセットし(ステップS26)、さらに、現在時刻を表わす時刻カウンタの値に、指針2〜4の位置が合うように、歯車を駆動して指針2〜4を運針する処理を行う(ステップS27)。これらステップS26,S27の処理によって、マイクロコンピュータ35が認識する指針2〜4の位置と、実際の指針2〜4の位置とのずれが解消され、さらに、指針2〜4が現在時刻を指し示す位置まで戻される。そして、この歯車位置自動修正処理を終了する。
図12には、歯車位置自動修正処理のステップS21で実行される孔有無検出処理のフローチャートを示す。
孔有無検出処理は、発光部31と受光部32からなるフォトインタラプタにより、検出位置Pに歯車20,23,25,27の透過孔21a,28,29,30等が重なった状態にあるか否か、すなわち、この予め定められた位置に歯車20,23,25,27が移動したか否か、を検出する処理である。
この孔有無検出処理は、主に、ステップS31〜S38の第1処理工程、ステップS40〜S43の第2処理工程、ステップS47〜S53の第3処理工程の3つの処理工程により構成される。
第1処理工程(ステップS31〜S38)は、発光部31と受光部32を動作させるとともに、外来光の影響を考慮しない第1閾値を使用して受光部32の受光量の比較を行うことで、検出対象が孔有りの状態(検出位置Pに歯車20,23,25,27の透過孔21a,28,29,30等が重なった状態)の候補となりえるか判別する処理工程である。第2処理工程(ステップS40〜S43)は、発光部31を動作させずに受光部32だけ動作させて外来光の強度測定を行う処理工程である。また、第3処理工程(ステップS47〜S53)は、発光部31と受光部32を動作させるとともに第2処理工程で測定した外来光の強度を加味した第2閾値を使用して受光部32の受光量の比較を行うことで、検出対象が孔有りの状態か否かを判別する処理工程である。
これらの第1〜第3の処理工程のうち、第2と第3の処理工程は、第1処理工程で孔有りの候補になりえると判別された場合のみ実行されるようになっており、これにより、孔有無検出処理と運針処理とを連続的に繰り返し行って針位置を割り出していく歯車位置自動修正処理(図11)の際に、トータルの処理時間の短縮やトータルの消費電力の低減が図れるようになっている。
詳細には、この孔有無検出処理に移行すると、先ず、上記の第1処理工程として、順次、ADコンバータ34を構成するDAコンバータ342とコンパレータ341の電源をオンする処理(ステップS31)、受光部32の定電圧回路321に電圧スタート信号VSを出力してフォトトランジスタTr1の駆動を開始する処理(ステップS32)、外来光の強度値が代入される変数Nにとりあえず外来光の影響を考慮しない値“0”をセットする処理(ステップS33)、発光部31の定電流回路311に電流スタート信号ISを出力して発光ダイオードD1の駆動を開始する処理(ステップS34)を行う。
続いて、順次、コンパレータ341の閾値を第1閾値“8+N”(N=0)とするために、この値をDAコンバータ342に設定し(ステップS35)、フォトトランジスタTr1の出力が安定する時間(1.4ms)を待機する(ステップS36)。このような処理により、DAコンバータ342から第1閾値“8+N(N=0)”に対応する電圧がコンパレータ341の一方の端子へ供給されるとともに、発光部31が発光状態のときの受光部32からの出力電圧がコンパレータ341に入力されて、受光量の信号と第1閾値との比較結果を表わすコンパレータ出力DIがマイクロコンピュータ35に入力される。この第1閾値は外来光の浸入がない状態で孔の有無を判別するための閾値である。
このような状態になったら、マイクロコンピュータ35のCPUは、この出力DIを読み込んで(ステップS37)、この出力DIがハイレベル(受光信号が外来光強度を含んでいない第1閾値より大きい)か、ローレベル(受光信号が外来光強度を含んでいない第1閾値より小さい)かを判別する(ステップS38)。このステップS38の処理を実行するCPUが第1判別手段を構成する。そして、ハイレベルであれば、孔有り(透過孔21a,28,29,30等が検出位置Pで重なった状態)の候補と判別して第2処理工程(ステップS40〜S43)へ移行する。一方、ローレベルであれば外来光の有無にかかわらず発光部31からの光が受光部32まで届いていないということになるため、ステップS39へ分岐し孔無しと判断する。そして、続くステップS54で、発光部31と受光部32とADコンバータ34の電源をオフして、この孔有無検出処理を終了する。
ここで、上記の閾値“8”について説明する。
図13と図14には、孔有無検出処理で孔開状態と孔閉状態と判別されるときの透過孔の重なり状態の一例をそれぞれ表わした説明図を示す。同図(a)は透過孔の部分を一部破断した側面図、(b)は歯車の平面図である。また、図15には、孔有無検出処理で孔開状態や孔閉状態と判別すべき透過孔の重なり状態のばらつきを表わした説明図を示す。なお、図13〜図15には、秒針車20、分針車25、時針車27の第1〜第3透過孔20a,28,29についてのみ示し、中間車23の第4透過孔30を省略しているが、中間車23を含めた場合でも同様の状態が生じるものである。
一般に、歯車の噛み合わせ部分にはバックラッシュが生じるため、ステッピングモータ17,22の駆動により歯車が所定ステップで回転した場合でも、歯車の回転量はステップ中心からバックラッシュ分の揺らぎが生じる。したがって、図13に示すように、本来、第1〜第3透過孔20a,28,29が完全に重なるステップであっても、秒針車20、分針車25、時針車27が回転方向に僅かにずれて第1〜第3透過孔20a,28,29の重なる面積が狭められることがある。
また、図14に示すように、第1〜第3透過孔20a,28,29が重ならないはずのステップであっても、第1〜第3透過孔20a,28,29が近い回転角度に配置されたときに、秒針車20、分針車25、時針車27がそれぞれ近づく回転方向に僅かにずれて第1〜第3透過孔20a,28,29に重なり部分が僅かに生じてしまうことがある。
すなわち、図15(a),(b)に示すように、孔が閉状態と判別すべき歯車のステップにおいても、第1〜第3透過孔20a,28,29の重なり部分が完全に閉じた状態(a)から、バックラッシュが互い違いに最大限生じて第1〜第3透過孔20a,28,29の重なり部分が僅かに生じる状態(b)まで発生しえる。重なり部分が完全に閉じた状態(a)であれば、発光部31から受光部32に届く光は最小強度(“閉MIN光”と記す)となるが、バックラッシュが互い違いに最大限生じた状態(b)であれば、発光部31から受光部32に光が届いて、孔が閉状態であると判断すべきステップにおいて最大の強度(“閉MAX光”と記す)となる。
また、図15(c),(d)に示すように、孔が開状態と判別すべき歯車のステップにあっても、バックラッシュが最大限生じて第1〜第3透過孔20a,28,29が完全に重ならない状態(c)から、第1〜第3透過孔20a,28,29が完全に重なる状態(d)まで発生しえる。完全に重なる(d)の状態では、発光部31から受光部32に届く光は最大強度(“開MAX光”と記す)となるが、最大バックラッシュ分ずれた状態(c)では、発光部31から受光部32に届く光は、孔が開状態であると判断すべきステップにおいて最小強度(“開MIN光”と記す)となる。
上記のような歯車のバックラッシュにより生じる検出光の強度バラツキは、歯車がステップ間隔で回転することで、さほど大きくならない。しかしながら、検出光の強度ばらつきは、バックラッシュによるものに限られず、例えば、発光ダイオードD1やフォトトランジスタTr1の個体ごとの特性ばらつきや、電池電圧の変動等に基づく駆動電流や駆動電圧のばらつきなどにより生じるものもあり、これらのばらつき要因がワーストとなったときを考慮した“閉MAX光”と“開MIN光”の強度差はさほど大きくならない。
検出部13は、このように様々なバラツキを考慮して想定された“閉MAX光”と“開MIN光”とを判別する必要がある。上述の閾値は、これら“閉MAX光”の検出出力と“開MIN光”の検出出力の境界に設定されたもので、この閾値と受光強度を比較することで、“閉MAX光”と“開MIN光”との判別が可能とされ、この値が上述した予め設定された閾値“8”である。
従って、外来光の侵入がない場合には、発光部31と受光部32を動作させて受光部32の受光信号と上記閾値“8”の信号とをコンパレータ341で比較することで、歯車(20,23,25,27)の透過孔21a,28,29,30等が完全に重なったステップか否かを判定することができる。しかしながら、外来光の侵入がある場合には、例えば、図15(b)の孔無しと判断されるべき状態で、“閉MIN光”が受光部32に受光され、さらに外来光が加わることで、受光信号が閾値“8”の信号を超えてしまう場合があるため、上記の閾値“8”を比較基準としたコンパレータ341の比較処理だけでは、歯車(20,23,25,27)の透過孔21a,28,29,30等が完全に重なるステップか否かを判定することはできない。
従って、孔有無検出処理(図12)のステップS38において、コンパレータ出力DIがハイレベルであると判別された場合には、直ちに、孔有りと判断することはできず、孔有りの候補であると判断して、次に、外来光の影響を反映させるために外来光を測定する第2処理工程(ステップS40〜S43)に移行する。
第2処理工程に移行したら、順次、定電流回路311への電流スタート信号ISを停止して発光ダイオードD1をオフさせ(ステップS40)、フォトトランジスタTr1の出力安定時間(例えば1.4ms)を待機した後(ステップS41)、ADコンバータ34に逐次比較によるAD変換処理をスタートさせる(ステップS42)。このAD変換処理により、発光部31を非発光状態としたときに受光部32に受光される外来光の受光信号がAD変換される。なので、マイクロコンピュータ35のCPUはこのAD変換値を読み込んで、この値を外来光の強度値として変数Nにセットする(ステップS43)。このステップS43の処理を実行するCPUが外来光検出手段を構成する。
外来光の強度をセットしたら、次いで、外来光の強度値Nが過大であるか(例えばN≧4)否かを確認し(ステップS44)、過大である場合は、異常であるとしてエラー処理へ移行する。
続いて、外来光の強度値Nがゼロであるか否かを確認する(ステップS45)。このステップ45の処理を実行するCPUがゼロ判別手段を構成する。そして、ゼロであれば(すなわちAD変換の分解能により外来光が確認できなければ)、前段の第1処理工程(ステップS31〜S38)の判別結果は外来光の影響を受けておらず、そのまま、孔有無の判別結果となりえることから、ステップS46に移行して孔有りと判断する。そして、検出部13の電源をオフして(ステップS54)、この孔有無検出処理を終了する。
一方、ステップS44,S45の判別処理で、外来光の検出値が過大でもなく、ゼロでもなかった場合には、この外来光の影響を考慮した孔有無の検出処理を行う第3処理工程(ステップS47〜S53)に移行する。
第3処理工程に移行したら、順次、定電流回路311へ電流スタート信号ISを出力して発光ダイオードD1を駆動させ(ステップS47)、コンパレータ341の比較処理の閾値を上記第1閾値よりも外来光の強度値だけ増した第2閾値“8+N”とするためにこの値をDAコンバータ342に設定し(ステップS48)、フォトトランジスタTr1の出力が安定する時間(1.4ms)を待機する(ステップS49)。この第2閾値は外来光の影響を考慮して孔の有無を判別するための閾値である。このような処理により、発光部31が発光状態のときの受光部32からの出力電圧と、ステップS35で設定した第2閾値とがコンパレータ341で比較されて、この比較結果を表わす出力DIがマイクロコンピュータ35に入力される。
このような状態になったら、マイクロコンピュータ35のCPUは、この出力DIを読み込んで(ステップS51)、この出力DIがハイレベル(受光信号が外来光の影響を加味した第2閾値より大きい)か、ローレベル(受光信号が外来光の影響を加味した第2閾値より小さい)かを判別する(ステップS51)。そして、ハイレベルであれば、孔有り(検出位置Pで透過孔21a,28,29,30等が重なった状態)と判断し(ステップS52)、ローレベルであれば孔無し(検出位置Pで透過孔21a,28,29,30等が重なってない状態)と判断する(ステップS53)。上記のステップS45〜ステップS53の処理を実行するCPUが第2判別手段を構成する。そして、検出部13の電源をオフして(ステップS54)、この孔有無検出処理を終了する。
図16には、図11の歯車位置自動修正処理において検出部の動作と運針動作の流れを表わした説明図を示す。また、図17には、歯車位置自動修正処理において検出部の動作と運針動作の大多数を占める動作パターンを説明するタイムチャートを、図18には、歯車位置自動修正処理において孔有りと判断される状態とこれに近い状態のときに現われる検出部の動作と運針動作の動作パターンを説明するタイムチャートを、それぞれ示す。図17と図18において、(a)は電圧スタート信号VSの信号レベル(ハイレベルでフォトトランジスタTr1がオンを示す)、(b)は電流スタート信号ISの信号レベル(ハイレベルで発光ダイオードD1がオンを示す)、(c)はADコンバータ34の動作期間、(d)は運針動作の期間を、それぞれ示す。
上記の孔有無検出処理によれば、歯車の高速な駆動により指針2〜4を連続的に運針しながら孔有無検出処理を繰り返し行う歯車位置自動修正処理において、図16に示すような処理動作が遂行されることとなる。すなわち、透過孔21a,28,29,30が全く重ならない大多数の期間においては、1回の運針処理J2に対して、外来光を考慮しない1回のコンパレート処理J1を行って孔無しと判断される動作パターンが繰り返される。
この動作パターンにおいては、図17に示すように、1回の孔有無検出処理にかかる時間は、1回のコンパレート処理時間(例えば122μs)と、その前段の待機時間(1.4ms)のみとなり、短い処理時間となっている。
一方、図16において二重枠で示すように、透過孔21a,28,29,30が完全に重なる運針ステップJ2yや、これより1回前後する運針ステップJ2y(透過孔21a,28,29,30が少し重なりを有する運針ステップ)においては、1回の運針処理J2yに対して、外来光を考慮しない1回目のコンパレート処理J1と、外来光を測定するAD変換処理J3と、外来光を加味した2回目のコンパレート処理J4とが行われる動作パターンとなる。
この動作パターンにおいては、図18に示すように、1回の運針処理J2yに対して、1回の孔有無検出処理にかかる時間は、2回のコンパレート処理にかかる時間(例えば122μs×2)と、1回のAD変換処理にかかる時間(例えば650μs)と、3回分のフォトトランジスタTr1の待機時間(1.4ms×3)が加算された時間となり、やや長い処理時間となる。
しかしながら、歯車位置自動修正処理(図11)においては、その大半の期間において、図17に示す短い処理時間の動作パターンが占め、図18に示す長い処理時間の動作パターンは限られたごく一部の期間に現われるだけである。それゆえ、歯車位置自動修正処理(図11)のトータルの処理時間の短縮が図れ、さらに、ADコンバータ34によるAD変換処理の処理回数も減ることからトータルの消費電力の低減も図れるようになっている。
以上のように、この実施の形態の時計モジュール1および貫通状態判別装置によれば、歯車20,23,25,27の透過孔21a,28,29,30等が検出位置Pで丁度重なる状態(バックラッシュにより僅かにずれる状態も含む)を検出するのに、大多数の期間においては透過孔21a,28,29,30が重なりを全く有さない状態となることから、図16に示すように、多くの期間において1回の運針処理J2に対して1回のコンパレート処理J1のみが実行されることとなる。従って、図19の本発明を適用しない動作パターンの説明図に示すように、毎回の運針処理J13ごとにコンパレート処理J12とAD変換処理J11を行う場合と比較して、歯車位置自動修正処理にかかるトータルの処理時間の短縮、並びに、消費電力の低減を図ることができる。また、歯車20,23,25,27の透過孔21a,28,29,30が検出位置Pで重なる状態やその前後の状態では、外来光の検出や外来光の影響を考慮した光量比較の処理が行われるので、外来光の影響を排した正確な状態検出が可能である。
また、外来光の影響を考慮せずに孔有りの候補となるか否かを判別する第1処理工程と、外来光の影響を加味して孔有りか否かを判別する第3処理工程とで、比較基準となる閾値を変化させることでそれぞれの処理工程に対応させているので、第1処理工程用の検出部と、第3処理工程用の検出部とを別途用意することなく、1個の検出部13を利用して両方の処理工程を実現することができる。
また、逐次比較型のADコンバータ34に内蔵されるコンパレータ341とDAコンバータ342を個別に利用し、外来光を計測するときのみAD変換処理を行わせ、受光部32の光量比較は、DAコンバータ342により閾値を出力させてコンパレータ341により1回の比較処理を行わせることで実現しているので、一旦、受光量をAD変換してマイクロコンピュータ35に取り込み、この値と閾値とを演算処理により比較する構成を採用した場合と比較して、処理時間のさらなる短縮が図られている。
また、孔有りの候補と判定されて、外来光の計測を行った際、外来光がゼロであった場合に、さらに受光量の比較処理を行わずに、直ちに孔有りの判定を行うようになっているので、更に、無駄な処理が省かれて、処理時間の短縮と消費電力の低減が図られている。
以上のような歯車位置の検出処理により、歯車に連動した指針2〜4の位置を高速に且つ低い消費電力で検出することができる。
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。すなわち、上記実施形態では、外来光の影響を考慮しない場合の第1閾値を、外来光がゼロである場合に孔有りか否かを判別することのできる閾値“8”としているが、例えば、この値より少し小さい閾値を採用するなど、完全に孔無しの状態と孔有りの候補となる状態とが判別できればどのような値としても良い。
また、上記実施形態では、発光部31と受光部32とを動作させて受光量を第1閾値と比較するのに、コンパレータ341による1回のコンパレート処理により実現しているが、例えば受光量をAD変換によりデータ化し、このデータ値と第1閾値とを論理演算により比較する構成とすることもできる。この場合、孔有りの候補と判別されて外来光を計測したのちに、改めて発光部31と受光部32とを動作させて受光量信号を得る必要はなく、1回目の受光量のAD変換値と外来光の計測値とを用いて、受光量の値と外来光の影響を加味した第2閾値とを論理演算により比較処理することで、孔有りの候補と判別された状態が、正確に孔有りなのか否なのかを判別することが可能となる。
また、上記実施形態では、複数の歯車の透過孔の重なり状態を判別する構成に本発明を適用した例を示したが、1個の移動部材の透過孔が検出位置に来たか否かを判別するような構成に本発明を適用することもできる。また、上記実施形態では、時計モジュール1の針位置検出に貫通状態判別装置を利用した例を示したが、透過孔を有する移動部材の状態検出を必要とする種々の装置に同様に適用することができる。その他、上記実施形態で示した細部構造および方法は発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。