JP5163004B2 - 製鋼スラグの処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、製鋼スラグに含まれるフッ素を固定化し、スラグからのフッ素の溶出を効果的に抑制することができるスラグ処理方法に関するものである。
従来、製鋼スラグは、コンクリート骨材や路盤材料、港湾土木材料などの土木材料として広く利用されている。
鉄鋼製造プロセスの精錬工程では、CaOなどの精錬剤の滓化促進剤としてフッ化カルシウム(CaF)を主成分とするホタル石が使用されることがあり、このような精錬工程で発生するスラグはフッ素を含有している。また、スラグには、上記のようなフッ素源以外に、高炉装入原料を通じて不可避的にフッ素が混入することもある。
このようなフッ素含有スラグを骨材や土木材料として利用した場合、スラグが水(例えば、雨水、地下水など)に接するとスラグ中のフッ素が水に溶け出し、水質や土壌などを汚染する可能性がある。このような問題に対して、スラグからのフッ素の溶出を抑制するための方法が幾つか提案されている。
例えば、特許文献1には、製鋼スラグ融体にアルミニウム化合物を添加し、凝固過程において安定なCaO−Al23−F系化合物を生成させることでフッ素を固定するとともに、製鋼スラグの雨水や地下水などへの溶解に際して、製鋼スラグから溶出するカルシウムイオンやアルミニウムイオンを用いて、スラグから溶出するフッ素を捕捉する方法が提案されている。
また、特許文献2には、フッ素を含む製鋼スラグに、カルシウムアルミネートを含む粉末からなるフッ素固定剤と、高炉徐冷スラグなどからなる増容材を添加し、フッ素を固定化する方法が提案されている。
また、特許文献3には、フッ素を含有する製鋼スラグに、燐含有化合物や燐含有鉱物などのような燐含有物を添加し、スラグからのフッ素の溶出を抑制するようにした方法が提案されている。
特開2000−247694号公報 特開2000−335946号公報 特開2003−226906号公報
しかしながら、特許文献1の方法は、スラグの凝固プロセスにおける処理であるため、アルミニウム化合物を添加するための設備が必要となるほか、生成するスラグ量も増加するため、経済性やスラグ処理の面で問題がある。
また、特許文献2の方法は、フッ素固定剤(カルシウムアルミネートを含む粉末)をかなり多量に混合しないと、フッ素の溶出量を環境基準値以下に抑えることができず、経済性に大きな問題がある。
また、特許文献3の方法も、フッ素の溶出を十分に抑制することができない。また、効果を高めようとして多量の燐含有物を添加すると、本来の用途に必要な一軸圧縮強度などの性能が悪化するおそれがある。
したがって本発明の目的は、製鋼スラグからのフッ素溶出を効果的に抑制することができ、しかも特別な設備を用いることなく低コストに実施可能なスラグ処理方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明は以下を要旨とするものである。
[1]製鋼スラグにフッ素の溶出抑制処理を施す方法において、
フッ素含有量が0.15mass%以上、リン含有量が0.3mass%以上の製鋼スラグ(A)に対して、カルシウムを含有するとともに、粒径10mm以下の割合が50mass%以上であり、且つフッ素含有量が0.2mass%未満であって、平成3年8月23日環境庁告示第46号(平成13環告16)に準拠した溶出試験により測定されるCa溶出量が100mg/L以上である鉱物(B)を添加し、製鋼スラグ(A)の含有成分と鉱物(B)が含有するカルシウムによりフッ素及びリンを含む難溶性化合物を生成させる製鋼スラグの処理方法であり、
製鋼スラグ(A)は、平成3年8月23日環境庁告示第46号(平成13環告16)に準拠した溶出試験により測定されるCa溶出量が100mg/L未満の脱燐スラグであり、鉱物(B)が水酸化カルシウム粉であることを特徴とする製鋼スラグの処理方法。
[2]上記[1]に記載の製鋼スラグの処理方法により処理されることで生成したフッ素及びリンを含む難溶性化合物を含有することを特徴とする製鋼スラグ。
本発明によれば、製鋼スラグ(A)の含有成分(フッ素およびリン)と鉱物(B)が含有するカルシウムによってフッ素を含む難溶性化合物が生成し、製鋼スラグ(A)のフッ素が固定されるので、製鋼スラグ(A)からのフッ素の溶出を効果的に抑制することができる。特に、本発明では、被処理スラグである製鋼スラグ(A)が含有するリンを利用して難溶性化合物を生成させるので、被処理スラグである製鋼スラグ(A)自身の粒子表面がフッ素を含む化合物の析出サイトとして機能するため、高いフッ素固定効果が得られる。
本発明の処理方法は、製鋼スラグにフッ素の溶出抑制処理を施す方法であり、フッ素含有量が0.15mass%以上、リン含有量が0.3mass%以上の製鋼スラグ(A)に対して、カルシウムを含有する鉱物(B)を添加し、製鋼スラグ(A)の含有成分と鉱物(B)が含有するカルシウムによりフッ素を含む難溶性化合物を生成させるものである。
なお、製鋼スラグ(A)のフッ素含有量には、スラグ粒子からその表面に存在(付着)する水に溶出したフッ素分も含まれる。
本発明において、被処理スラグとなる製鋼スラグ(A)のフッ素含有量を0.15mass%以上とするのは、このような製鋼スラグは、通常、フッ素溶出量(環境庁告示第46号に準拠した溶出試験によるフッ素溶出量)が土壌環境基準を上回るので、フッ素溶出の抑制処理を施す必要があるからである。
製鋼スラグ(A)のリン含有量を0.3mass%以上とするのは、本発明ではスラグ中のリンを利用してフッ素を含む難溶性化合物を生成させるためである。製鋼スラグ(A)は、フッ素を固定する難溶性化合物を形成するべきカルシウムが不足したスラグであり、一般には、平成3年8月23日環境庁告示第46号(平成13環告16)に準拠した溶出試験により測定されるCa溶出量が100mg/L未満のスラグである。
製鋼スラグ(A)としては、フッ素含有量が0.15mass%以上、リン含有量が0.3mass%以上のものであれば種類を問わないが、一般には、脱燐スラグに該当するものが多い。
本発明では、鉱物(B)に含まれるカルシウムが製鋼スラグ(A)のフッ素およびリンとともに難溶性化合物を生成し、スラグにフッ素を固定する。すなわち、鉱物(B)から供給されるCaと製鋼スラグ(A)中のPの溶液反応により、水には難溶解性であるがフッ素との反応活性が高いリン酸水素カルシウム水和物が生成し、この水和物とフッ素とが反応し、フッ素が固定される。このフッ素を固定した反応生成物(難溶性化合物)は、Ca(POF(フルオロアパタイト、Ca10(PO6と表記されることもある)若しくはそれに類する組成物であると考えられ、この反応生成物は水への溶解度が低いため、フッ素固定機能が長期間にわたって持続し、スラグからのフッ素溶出を長期間にわたって効果的に抑制することができ、また環境へのPの流失も防止することができる。
ここで、被処理スラグである製鋼スラグ(A)が含有するリンを利用して難溶性化合物を生成させるのが本発明の大きな特徴であり、これにより、スラグ粒子表面がフッ素を含む化合物の析出サイトとして機能し、高いフッ素固定効果が得られるものと考えられる。
鉱物(B)に含まれるカルシウム化合物としては、CaO、Ca(OH)、3CaO・SiO、2CaO・SiO、CaSOなどが挙げられ、鉱物(B)としては、これらカルシウム化合物の1種以上を含むものが好ましい。鉱物(B)としては、例えば、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、カルシウムシリケート、カルシウムシリケート水和物、セメント、石膏、塩化カルシウム、高炉水砕スラグ微粉末、その他の鉄鋼スラグなどが挙げられ、これらの1種以上を添加することができる。
また、通常、製鋼スラグ(A)に対する鉱物(B)の添加量は比較的少なくて済むため、それ鉱物(B)自身が含有するフッ素の影響は相対的に小さい。但し、鉱物(B)自体がフッ素溶出源とならないようにするため、フッ素含有量は0.2mass%未満であることが好ましい。フッ素含有量が0.2mass%以上では、鉱物(B)自身からのフッ素溶出の影響が大きくなる。また、鉱物(B)は、カルシウムの供給源として、平成3年8月23日環境庁告示第46号(平成13環告16)に準拠した溶出試験により測定されるCa溶出量が100mg/L以上、好ましくは200mg/L以上であることが望ましい。Ca溶出量が100mg/L未満では、十分なカルシウム供給源とならず、効果が少ない。
鉱物(B)のカルシウムを有効に活用するには、鉱物(B)の粒径がある程度小さい方が好ましく、この意味で、鉱物(B)は粒径10mm以下の割合が50mass%以上であることが好ましい。
また、製鋼スラグ(A)の粒径は特に規定しないが、用途に適した粒度分布となるように、粒度を適宜調整することが好ましい。
製鋼スラグ(A)に対する鉱物(B)の添加量は特に制限はないが、製鋼スラグ(A)のフッ素含有量およびリン含有量、鉱物(B)のCa溶出量などに応じて、製鋼スラグ(A)のフッ素を適切に固定できるよう、添加量が選定される。
また、本発明では、被処理スラグである製鋼スラグ(A)のフッ素含有量を0.15mass%以上とし、この製鋼スラグ(A)に添加する鉱物(B)の好ましいフッ素含有量を0.2mass%未満とするものであるが、本発明の効果をより有効に生じさせるには、鉱物(B)のフッ素含有量を0.15mass%未満とすることがより好ましい。
本発明の処理方法では、基本的に製鋼スラグ(A)に対して鉱物(B)を添加・混合するだけでよく、これにより元々スラグなどに含まれている水分を介して上述した機構に基づく反応が生じ、フッ素を含む難溶性化合物が生成し、スラグにフッ素が固定される。また、反応を供用前に進行させるために、製鋼スラグ(A)および/または鉱物(B)或いはそれらの混合物(製鋼スラグ(A)・鉱物(B)の混合中を含む)に水を添加してもよい。但し、添加水の一部が流失しないような限度行うことが好ましい。
混合は重機による混合、混合プラントによる混合など任意の方法で行うことができる。養生は必ずしも必要ではないが、1日以上、望ましくは3日以上養生することにより、供用前にフッ素固定を進行させることができる。
本発明の処理法によれば、製鋼スラグ(A)と鉱物(B)とからなり、且つ上記難溶性化合物を含有するフッ素溶出抑制処理スラグが得られる。
本実施例におけるスラグのフッ素溶出量およびカルシウム溶出量は、いずれも平成3年8月23日環境庁告示第46号(平成13環告16)に準拠した溶出試験による溶出量であり、スラグを2mmの篩目で篩った篩下材(2mm篩下材)について測定した溶出量である。
製鋼スラグ(A)として、フッ素溶出量が1.2mg/L、カルシウム溶出量が12mg/Lである脱燐スラグ(SiO:25.1mass%、CaO:34.2mass%、P:1.4mass%、F:0.50mass%)の2mm篩い下材を用い、鉱物(B)として、水酸化カルシウム粉を用いた。製鋼スラグ(A)100質量部に対して水酸化カルシウム2質量部を添加し、均一に混合した。添加・混合してから3日後に測定したスラグのフッ素溶出量は0.68mg/Lであり、土壌環境基準(0.8mg/L以下)を満足した。また、同じくスラグのカルシウム溶出量は1000mg/Lであった。

Claims (2)

  1. 製鋼スラグにフッ素の溶出抑制処理を施す方法において、
    フッ素含有量が0.15mass%以上、リン含有量が0.3mass%以上の製鋼スラグ(A)に対して、カルシウムを含有するとともに、粒径10mm以下の割合が50mass%以上であり、且つフッ素含有量が0.2mass%未満であって、平成3年8月23日環境庁告示第46号(平成13環告16)に準拠した溶出試験により測定されるCa溶出量が100mg/L以上である鉱物(B)を添加し、製鋼スラグ(A)の含有成分と鉱物(B)が含有するカルシウムによりフッ素及びリンを含む難溶性化合物を生成させる製鋼スラグの処理方法であり、
    製鋼スラグ(A)は、平成3年8月23日環境庁告示第46号(平成13環告16)に準拠した溶出試験により測定されるCa溶出量が100mg/L未満の脱燐スラグであり、鉱物(B)が水酸化カルシウム粉であることを特徴とする製鋼スラグの処理方法。
  2. 請求項1に記載の製鋼スラグの処理方法により処理されることで生成したフッ素及びリンを含む難溶性化合物を含有することを特徴とする製鋼スラグ。
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