JP2014189423A - 高炉スラグ微粉末及びそれを配合したセメント組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】良好な流動性を保ちつつブリーディングが少なく、温度ひび割れや、自己収縮と乾燥収縮によるひび割れも発生しにくい、高炉スラグ微粉末とそれを配合したセメント組成物を提供する。
【解決手段】(1)200〜700℃の温度で炭酸ガスを作用させた高炉スラグ微粉末、(2)CO含有量が0.1〜5%で、粒子表面に炭酸成分を含有した層が形成された(1)の高炉スラグ微粉末、(3)セメントと(1)又は(2)の高炉スラグ微粉末を配合したセメント組成物、である。
【選択図】なし

Description

本発明は、土木・建築分野で使用される高炉スラグ微粉末、特に、表面改質された高炉スラグ微粉末及びそれを配合したセメント組成物に関する。
セメント混和材料の代表として高炉スラグ微粉末が挙げられる。高炉スラグ微粉末は、製鉄業界の副産物である高炉水砕スラグを粉砕して微粉末化したものである。高炉スラグ微粉末は、潜在水硬性をもち、ポルトランドセメントに混合して用いると、水和して強度発現性に寄与するほか、塩化物イオンの拡散係数を小さくする効果や塩化物イオンを固定化する作用があり、塩害対策の一助となるほか、50%以上の置換率で用いると、アルカリシリカ反応も抑制することが知られる。
しかしながら、高炉スラグ微粉末は、水和反応性が高く、使用前の貯蔵期間に粒子同士が固結し易いため、炭酸ガスや炭酸水溶液で処理し固結防止をすることが提案されている(特許文献1参照)。
また、高炉スラグ微粉末は、ブリーディングが発生しやすいことや、マスコンでは水和発熱が大きいこと、さらに、自己収縮や乾燥収縮も大きくなる場合が多く、ひび割れやすいという問題があった。
そのため、高炉スラグ微粉末の利点を維持したまま、ブリーディングやひび割れやすさを解消する方法の開発が強く望まれていた。
特許第4434555号公報
本発明は、前記課題を解決すべく、種々の努力を重ねた結果、特定の方法で処理を行うと、良好な流動性を維持しつつブリーディングが抑制でき、また、温度ひび割れや自己収縮と乾燥収縮によるひび割れも抑制できることを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(1)200〜700℃の温度で炭酸ガスを作用させた高炉スラグ微粉末、(2)CO含有量が0.1〜5%で、粒子表面に炭酸成分を含有した層が形成された(1)の高炉スラグ微粉末、(3)セメントと(1)又は(2)の高炉スラグ微粉末を配合したセメント組成物、である。
本発明は、良好な流動性を保ちつつブリーディングが少なく、温度ひび割れや、自己収縮と乾燥収縮によるひび割れも発生しにくい高炉スラグ微粉末とそれを配合したセメント組成物を提供する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用する部や%は特に規定のない限り質量基準である。
高炉スラグは、製鉄所の副産物であり、高炉で銑鉄を得る際に副生する。高炉スラグは水で急冷して非晶質化した水砕スラグと、徐冷して結晶化した徐冷スラグに大別される。本発明で言う高炉スラグ微粉末とは、水砕スラグを微粉末化したものを意味する。
高炉スラグ微粉末の粒度は、特に限定されるものではないが、炭酸ガスで処理する前に粉砕処理し、ブレーン比表面積で3000〜9000cm/gに調製することが好ましい。高炉スラグ微粉末の粒度が、ブレーン比表面積で3000cm/g未満では、十分な強度発現性が得られない場合がある。また、9000cm/gを超えても更なる効果の増進が期待できない。
高炉スラグ微粉末の炭酸ガスでの処理方法は、200〜700℃の高温雰囲気で炭酸ガスを作用させることが、本発明の効果が顕著となることから好ましい。炭酸ガス濃度が高い方が、処理が短時間で済むことから好ましい。
本発明の高炉スラグ微粉末は、CO含有量が0.1〜5%で、粒子表面に炭酸成分を含有した層が形成されていることを特徴とする。
粒子表面に炭酸成分を含有した層が形成されているかどうかは、電子顕微鏡などによって確認することができる。具体的には、クリンカー表面に電子線を照射したり、クリンカーを樹脂で包埋し、アルゴンイオンビームで表面処理を行い、粒子断面の組織を観察するとともに、元素分析を行うことで確認できる。
CO含有量が前述の範囲にないと、本発明の効果が得られない場合がある。
また、粒子表面に炭酸成分を含有した層を形成することが重要である。高炉スラグ微粉末に炭酸カルシウム(石灰石微粉末含めて)や炭酸ナトリウムなどを配合したのでは、本発明の効果は得られない。
本発明では、高炉スラグ微粉末にセッコウを併用できる。
本発明で使用するセッコウは、いずれのセッコウも使用できる。これらの中では、強度発現性の点で、無水セッコウが好ましく、II型無水セッコウや天然無水セッコウが好ましい。
セッコウの粒度は、強度発現性の観点から、ブレーン比表面積で4000cm/g以上が好ましく、5000〜7000cm/gがより好ましい。
セッコウの使用量は、特に限定されるものではないが、高炉スラグ微粉末とセッコウの合計100部中、SO換算で5%以下の範囲で併用できる。
本発明で使用するセメントとしては、普通、早強、超早強、低熱、及び中庸熱等の各種ポルトランドセメント、並びに、廃棄物利用型セメント、いわゆるエコセメント等が挙げられる。これらポルトランドセメントに、フライアッシュ、シリカ、又は石灰石微粉等を混合した各種混合セメントも併用可能である。
本発明では、石灰石微粉末、高炉徐冷スラグ微粉末、下水汚泥焼却灰やその溶融スラグ、都市ゴミ焼却灰やその溶融スラグ、パルプスラッジ焼却灰等の混和材料、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、ポリマー、凝結調整剤、ベントナイト等の粘土鉱物、並びに、ハイドロタルサイトなどのアニオン交換体等のうちの1種または2種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
本発明で使用する練り混ぜ水量は、特に限定されるものではないが、通常、水/セメント比で25〜70%が好ましく、30〜50%がより好ましい。これらの範囲外では施工性が大きく低下したり、強度が低下したりする場合がある。
以下に実験例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
「実験例1」
表1に示した様々な高炉スラグ微粉末を使用し、セメント60部、高炉スラグ微粉末35部、無水セッコウ5部を配合してセメント組成物(高炉セメントB種)を調製した。
セメント組成物320kg/m、単位水量176kg/m、s/a=42%、スランプ12cm±1.5cm、空気量4.5±1.5%のコンクリートを調製した。
コンクリートのブリーディング、長さ変化率、圧縮強度を測定した。また、マスコンでの温度ひび割れ抵抗性も確認した。
なお、参考例として、高炉スラグ微粉末や無水セッコウを配合しない、普通ポルトランドセメントについても同様に行った。結果を表1に併記する。
<使用材料>
セメント:市販の普通ポルトランドセメント。
高炉スラグ微粉末A:CO0%、ブレーン比表面積4000cm/g。
高炉スラグ微粉末B:600℃の温度で炭酸ガスを作用させたもの。CO含有量が0.1%、ブレーン比表面積4000cm/g。
高炉スラグ微粉末C:600℃の温度で炭酸ガスを作用させたもの。CO含有量が0.5%、ブレーン比表面積4000cm/g。
高炉スラグ微粉末D:600℃の温度で炭酸ガスを作用させたもの。CO含有量が1.0%、ブレーン比表面積4000cm/g。
高炉スラグ微粉末E:600℃の温度で炭酸ガスを作用させたもの。CO含有量が3.0%、ブレーン比表面積4000cm/g。
高炉スラグ微粉末F:600℃の温度で炭酸ガスを作用させたもの。CO含有量が5.0%、ブレーン比表面積4000cm/g。
高炉スラグ微粉末G:600℃の温度で炭酸ガスを作用させたもの。CO含有量COが1.0%、ブレーン比表面積6000cm/g。
高炉スラグ微粉末H:600℃の温度で炭酸ガスを作用させたもの。CO含有量が1.0%、ブレーン比表面積8000cm/g。
無水セッコウ:II型無水セッコウ、ブレーン比表面積5000cm/g。
水:水道水
細骨材:新潟県姫川産、川砂、比重2.64、最大寸法5mm
粗骨材:新潟県姫川産、砕石、比重2.65、最大寸法25mm
<測定方法>
ブリーディング:JIS A 1123に準じて3時間までの値を測定した。
長さ変化率:JIS A 6202(B)に準じて測定。
圧縮強度:JIS A 1108に準じて材齢28日の強度を測定した。
温度ひび割れ:厚さ1m、高さ2.5m、長さ10mの壁を作製した。型枠の存置期間は材齢7日までとし、ひび割れの発生状況を観察した。
ひび割れ発生状況:目視で観察できるひび割れがない場合を◎、ひび割れの本数が1本で、かつ、ひび割れ幅も0.05mm未満である場合を○、ひび割れの本数は1本だが、ひび割れ幅が0.1mm以上、0.2mm未満の場合を△、ひび割れが2本以上発生したか、もしくは、ひび割れ本数は1本だが0.2mm以上のひび割れ幅を持つひび割れが発生した場合を×とした。
Figure 2014189423
表1より、本発明の高炉スラグ微粉末を配合したコンクリートは、通常の高炉スラグ微粉末を配合したコンクリートと比べて、ブリーディングが発生しにくく、長さ変化率も小さく、温度ひび割れも発生しにくいことがわかる。加えて、強度発現性も改善されている。
「実験例2」
ブレーン比表面積4000cm/gの高炉スラグ微粉末を使用し、高炉スラグ微粉末のCO含有量が1.0%となるように炭酸ガスを作用させ、温度が表2に示すようにしたこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
Figure 2014189423
表2より、高炉スラグ微粉末の炭酸化の温度が200〜700℃のものは、通常の高炉スラグ微粉末を配合したコンクリートと比べて、ブリーディングが発生しにくく、長さ変化率も小さく、温度ひび割れも発生しにくいことがわかる。加えて、強度発現性も改善されている。
本発明は、良好な流動性を保ちつつブリーディングが少なく、温度ひび割れや、自己収縮と乾燥収縮によるひび割れも発生しにくい高炉スラグ微粉末とそれを配合したセメント組成物を提供することが可能となるため、土木、建築分野などで広範に適用できる。

Claims (3)

  1. 200〜700℃の温度で炭酸ガスを作用させた高炉スラグ微粉末。
  2. CO含有量が0.1〜5%で、粒子表面に炭酸成分を含有した層が形成された請求項1に記載の高炉スラグ微粉末。
  3. セメントと請求項1又は2の高炉スラグ微粉末を配合したセメント組成物。
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