JP5162797B2 - ポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物及びその成形体に関するものである。
ポリエーテル芳香族ケトン樹脂は、高温下での長期使用に耐えることができる熱可塑性樹脂である。このポリエーテル芳香族ケトン樹脂に強化材を配合することにより、強度、剛性、耐熱性に優れた熱可塑性樹脂材料として、電気・電子、機械、自動車、建材等の分野に広く用いられている。また、熱可塑性樹脂材料は、成形体の小型化・薄肉化に伴い、溶融時の優れた流動性が要求されつつある。
ポリエーテル芳香族ケトン樹脂に強化材を配合した樹脂組成物を、相手部材がアルミニウム合金等の軟質金属である摺動部材として用いる場合、相手部材を摩耗させないために、例えば、モース硬度の小さいチタン酸カリウム繊維を強化材として用いることが考えられる。しかしながら、このような場合、ポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物自体が摩耗するという問題があった。
この欠点を解決するため、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの固体潤滑剤などを添加することが考えられるが、固体潤滑剤の添加のみでは、十分に自己摩耗性を改善することはできなかった。
無機繊維状物で強化されたポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂に、PTFE及び硫酸カリウムを添加する技術が提案されている(特許文献1)。しかしながら、この技術は、炭素鋼(S45C)を相手部材とする場合に有用なものであり、相手部材がアルミニウム合金等の軟質金属である場合には、十分な効果を得ることができなかった。また、溶融時の流動性が悪くなるという問題もあった。
また、サーモトロピック液晶ポリマーに、フッ素樹脂及び炭酸カルシウムを添加した摺動性樹脂組成物(特許文献2)や、平均アスペクト比で1.5〜10の扁平比を有するフッ素樹脂とバインダー樹脂からなる摺動部材(特許文献3)等が提案されている。しかしながら、アルミニウム合金等の軟質の相手部材に対して優れた耐摩耗性を示すポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物については、具体的に提案されていない。
特許第2961311号公報 特開2005−239754号公報 特開2005−187617号公報
本発明の目的は、ポリエーテル芳香族ケトン樹脂の優れた耐熱性、耐薬品性等の特徴を損なうことなく、アルミニウム合金等の軟質の相手部材に対しても優れた耐摩耗性を示し、かつ溶融時の流動性に優れ、機械物性も改善されたポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物及びその成形体を提供することにある。
本発明のポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物は、ポリエーテル芳香族ケトン樹脂(a)に、フッ素樹脂(b)を5〜20重量%、硫酸カリウム(c)を3〜10重量%、無機繊維状物(d)を10〜40重量%配合し、フッ素樹脂(b)の372℃、荷重5kgにおけるMFR値が5g/10min以上であることを特徴としている。
本発明において、フッ素樹脂(b)と硫酸カリウム(c)の配合比は、硫酸カリウム(c)1重量部に対してフッ素樹脂(b)1.5重量部以上であることが好ましい。
本発明において、無機繊維状物(d)は、チタン酸カリウム繊維、ワラストナイト、ゾノトライト、ホウ酸アルミニウム繊維、及びホウ酸マグネシウム繊維からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましく、チタン酸カリウム繊維であることが最も好ましい。
本発明の成形体は、上記本発明のポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物を成形して得られることを特徴としている。
本発明によれば、ポリエーテル芳香族ケトン樹脂の優れた耐熱性、耐薬品性等の特徴を損なうことなく、アルミニウム合金等の軟質の相手部材に対して優れた耐摩耗性を示し、かつ溶融時の流動性に優れ、機械物性も改善されたポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物とすることができる。
本発明のポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物は、ポリエーテル芳香族ケトン樹脂((a)に、フッ素樹脂(b)、硫酸カリウム(c)、及び無機繊維状物(d)を含有させたことを特徴としている。以下、これらの各成分について詳細に説明する。
<ポリエーテル芳香族ケトン樹脂(a)>
本発明で用いられるポリエーテル芳香族ケトン樹脂(a)は、その構造単位に、芳香族核結合、エーテル結合、及びケトン結合を含む熱可塑性樹脂である。その具体例としては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトンなどが挙げられる。
これらの中では、下記の一般式(1)で表わされる繰り返し単位を有するPEEK樹脂が好適に使用される。
Figure 0005162797
なお、PEEK樹脂は、上記の基本繰り返し単位(1)と共に、本発明の本質的な特性を損なわない範囲内で、下記の一般式(2)で表わされる繰り返し単位の1種または2種以上を含むことができる。
Figure 0005162797
上記PEEK樹脂の市販品としては、VICTREX社製の商品名:「PEEK151G」、「PEEK381G」、「PEEK450G」などが挙げられる。
本発明において、ポリエーテル芳香族ケトン樹脂(a)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<フッ素樹脂(b)>
本発明で用いられるフッ素樹脂(b)は、分子中にフッ素原子を含有する合成高分子であれば、特に限定されず、例えば、従来の公知のものを使用することができる。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、ポリトリクロロフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等が挙げられる。これらのフッ素樹脂の中でも、特にPTFEが好ましく用いられる。
本発明においては、372℃、荷重5kgにおけるMFR値が5g/10min以上であるフッ素樹脂を用いる。このようなフッ素樹脂(b)を用いることにより、ポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物の溶融時に良好な流動性を付与することができる。MFR値が5g/10min未満である場合、ポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物の溶融時における流動性が損なわれるだけでなく、フッ素樹脂の凝集による外観不良の問題を生じ易い。
MFR値は、日本工業規格(JIS)K7210に準拠して測定することができる。温度は372℃であり、荷重は5kgである。MFR値を測定する際の一般的な荷重は、2.16kgであるが、本発明では5kgとしている。これは、ポリエーテル芳香族ケトン樹脂(a)をベースとした樹脂組成物においては、フッ素樹脂(b)に溶融時大きな剪断力がかかるため、高い荷重下でのMFR値を測定している。
上記MFR値のさらに好ましい範囲は、5g/10min〜30g/10minの範囲である。MFR値が高過ぎると、成形時にフッ素樹脂(b)が層剥離する場合がある。また、フッ素樹脂(b)の分子量が小さく分解ガスが発生する場合がある。
<硫酸カリウム(c)>
本発明で用いられる硫酸カリウム(c)は、平均粒子径300μm以下のものであることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜100μm程度である。平均粒子径が上記範囲内にある硫酸カリウムを用いることにより、表面性や外観に優れたポリエーテル芳香族ケトン樹脂成形体を得ることができる。
<無機繊維状物(d)>
本発明で用いられる無機繊維状物(d)としては、チタン酸カリウム繊維、ワラストナイト、ゾノトライト、ホウ酸アルミニウム繊維、及びホウ酸マグネシウム繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
チタン酸カリウム繊維は、例えば一般式KO・nTiO(式中nは2〜8の整数)、または一般式KO・nTiO・1/2HO(式中nは前記に同じ)で表される単結晶繊維等を挙げることができる。その具体例としては、4−チタン酸カリウム繊維、6−チタン酸カリウム繊維、8−チタン酸カリウム繊維等やこれらの混合物が挙げられる。これらチタン酸カリウム繊維の中でも、平均繊維径3μm以下、平均繊維長5〜200μm、平均繊維長/平均繊維径(アスペクト比)が10以上であるチタン酸カリウム繊維が特に好ましい。
ワラストナイトは、従来公知のものを広く使用でき、例えば山陽興業(株)から販売されている「ダイケンファイバナイト」(平均繊維径6.0μm、平均繊維長132μm)、Pantek Minerals社製の「WICOROLL−10」(平均繊維径4.5μm、平均繊維長13μm)等が挙げられる。
ゾノトライトは、従来公知のものを広く使用でき、例えば式6CaO・6SiO・HOで表されるもの等を挙げることができる。また、ゾノトライトとしては、例えば平均繊維径0.1〜0.5μm、平均繊維長1〜5μmのものを使用するのがよい。
ホウ酸アルミニウム繊維は、従来公知のものを広く使用でき、例えば式9Al・2Bで表されるもの等を挙げることができる。このようなホウ酸アルミニウム繊維は、例えば四国化成工業(株)製の「アルボレックスG」(平均繊維径0.5〜1μm、平均繊維長10〜30μm)等が挙げられる。
ホウ酸マグネシウム繊維は、従来公知のものを広く使用でき、例えば式2MgO・Bで表されるもの等を挙げることができる。また、ホウ酸マグネシウム繊維は、例えば平均繊維径0.05〜5μm、平均繊維長2〜100μmのものを使用するのがよい。
上記各種の無機繊維状物の中でも、チタン酸カリウム繊維及びワラストナイトが好ましく、チタン酸カリウム繊維が特に好ましい。
また、無機繊維状物(d)は、フッ素樹脂(b)との濡れ性を高めるために、その表面をカップリング剤で表面処理されていてもよい。ここで使用されるカップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング、チタネート系カップリング剤等を挙げることができる。
シラン系カップリング剤は、その具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
チタネート系カップリング剤は、具体的にはイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート等を例示できる。このようなカップリング剤による表面処理は、例えば無機繊維状物(d)をヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の混合機を用いて攪拌しつつ、これにカップリング剤をそのまま、またはトルエン、キシレン、各種アルコール等の溶媒に溶解させた液を滴下または噴霧添加することにより行うことができる。
<配合割合>
本発明においては、ポリエーテル芳香族ケトン樹脂(a)に、フッ素樹脂(b)を5〜20重量%、硫酸カリウム(c)を3〜10重量%、無機繊維状物(d)を10〜40重量%配合している。
フッ素樹脂(b)の配合量が少な過ぎると良好な耐摩耗性を得ることができず、またフッ素樹脂(b)の配合量が多過ぎると機械強度を低下させる。
フッ素樹脂(b)のさらに好ましい配合量は、10〜20重量%であり、さらに好ましくは10〜15重量%である。
硫酸カリウム(c)の配合量は3〜10重量%である。硫酸カリウム(c)の配合量が少な過ぎると良好な耐摩耗性を得ることができず、硫酸カリウム(c)の配合量が多過ぎるとアルミニウム合金の相手部材に対して良好な耐摩耗性を得ることができない。
硫酸カリウム(c)のさらに好ましい配合量は、5〜10重量%である。
無機繊維状物(d)の配合量は、10〜40重量%である。無機繊維状物(d)の配合量が少な過ぎると良好な機械強度を得ることができず、無機繊維状物(d)の配合量が多過ぎると脆くなる。
また、本発明において、フッ素樹脂(b)と硫酸カリウム(c)の配合比は、硫酸カリウム(c)1重量部に対してフッ素樹脂(b)1.5重量部以上であることが好ましい。硫酸カリウム(c)1重量部に対してフッ素樹脂(b)が1.5重量部未満であると、アルミニウム合金の相手部材に対して良好な耐摩耗性を得ることができない。
フッ素樹脂(b)と硫酸カリウム(c)のさらに好ましい配合比の範囲は、硫酸カリウム(c)1重量部に対してフッ素樹脂(b)1.5重量部〜3重量部の範囲である。フッ素樹脂(b)が硫酸カリウム(c)に対して多過ぎると、良好な機械強度や耐摩耗性を得ることができない。
<樹脂組成物及びその成形体の製造方法>
本発明の樹脂組成物及びその成形体の製造方法は、特に限定されるものではなく、この分野において公知の製造方法を広く適用することができる。例えば、上記各成分を個別にまたは順次、混練機または混合機に供給し、混練または混合することにより製造することができる。また、上記各成分を予めヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等の混合機を用いて乾式混合した後に、この混合物を溶融混合し、成形用材料として、ペレット状にしてもよい。ペレット化した後、射出成形等の公知の成形手段により所望の形状に成形することができる。
本発明のポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物は、ポリエーテル芳香族ケトン樹脂の優れた耐熱性、耐薬品性等の特徴を損なうことなく、耐摩耗性に優れ、かつ機械物性が良好である。特に、アルミニウム合金等の軟質の相手部材に対しても優れた耐摩耗性を示す。
従って、従来のプラスチック材料では適用できなかった高耐熱、精密摺動部品等として使用することができる。
また、本発明の樹脂組成物から形成される成形体は、ベアリング、スリーブ、シールリング、各種ギア等の摺動部品として用いることができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
以上の実施例及び比較例においては、以下に示すPEEK系樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PTFE、硫酸カリウム及びチタン酸カリウム繊維を用いた。
・PEEK樹脂:VICTREX社製「PEEK151G」
・PPS樹脂:大日本インキ化学工業社製「トープレンT−4」
・PTFE(A):旭硝子社製「フルオンL150J」(MFR 40g/10min)
・PTFE(B):喜多村社製「KTL610」(MFR 15g/10min)
・PTFE(C):旭硝子社製「フルオンL169J」(MFR 0.02g/10min)
・硫酸カリウム:大塚化学社製「硫酸カリウム」(平均粒子径50μm)
・チタン酸カリウム繊維:大塚化学社製「TISMO N102」(平均繊維長10〜20μm、平均繊維径0.3〜0.6μm)
PTFEのMFR値は、JIS K7210に準じ、372℃、荷重5kgで測定した。
〔樹脂組成物及び試験片の作製〕
上記各成分を、タンブラーミキサーを用い、表1及び表2に示す割合(重量%)で乾式混合し、二軸混練機(日本製鋼所製、TEX44α)に供給し、シリンダ温度290℃〜380℃、スクリュー回転数80〜150rpmの条件で溶融混合した後、ペレットを作製した。
このペレットをシリンダ温度290〜380℃、金型温度130〜160℃、射出圧力20〜150MPaの条件にて、射出成形することにより、摩耗試験片(外径25.6mm、内径20mm、高さ15mmの中空円筒)、及び荷重たわみ温度試験片を作製した。
〔摩擦摩耗試験〕
上記で作製した摩耗試験片を、摩擦摩耗試験に供し、各試験片について比摩耗量(mm/N・km)を求めた。鈴木式摩擦摩耗試験を適用し、摩擦摩耗試験機としては、エー・アンド・デイ社製のEFM−III−Fを用いた。また、摩擦摩耗試験は、次の条件1及び条件2の条件で実施した。
条件1:面圧1MPa、周速度0.3m/秒、走行距離10km、相手材A5056(アルミニウム合金)
条件2:面圧1MPa、周速度0.3m/秒、走行距離10km、相手材S45C(炭素鋼)
〔荷重たわみ温度の測定〕
上記で作製した荷重たわみ温度試験片を用いて、荷重たわみ温度を測定した。JIS K7191A法に準拠し、各試験片についての荷重たわみ温度(℃)を求めた。
〔溶融粘度の測定〕
上記で作製したペレットを溶融粘度測定に供し、各ペレットの溶融粘度(Pa・s)を求めた。溶融粘度測定には、高化式フローテスター(島津製作所製の島津フローテスターCFT−500D)を用い、オリフィス(高さ10mm×径1mm)、予熱360秒、荷重100kgの測定条件により、PEEK樹脂は380℃、PPS樹脂は、320℃で測定した。
〔成形体外観の評価〕
得られた摩耗試験片、荷重たわみ温度試験片について、成形体外観を以下の基準で評価した。
〇:目視で確認できる凝集物なし
×:目視で確認できる凝集物あり
上記の測定結果を表1及び表2に示す。
Figure 0005162797
Figure 0005162797
表1に示すように、本発明に従う実施例1〜5においては、相手部材がアルミニウム合金である場合の条件1の比摩耗量、及び炭素鋼が相手部材である条件2の比摩耗量がそれぞれ小さくなっており、良好な耐摩耗性を示している。また、溶融粘度が低く、荷重たわみ温度も高い温度が得られており、優れた機械物性が得られている。さらに、成形体の外観においても優れている。
これに対し、硫酸カリウムの配合量が本発明の範囲外であり、かつ硫酸カリウム1重量部に対して、フッ素樹脂が1重量部である比較例1においては、アルミニウム合金が相手部材である条件1の比摩耗量が大きくなっており、軟質の相手部材に対する耐摩耗性において、実施例1〜5に比べ劣っている。また、溶融粘度が高く、荷重たわみ温度も低くなっている。
PTFEとして、MFR値が本発明の範囲外であるPTFE(C)を用いた比較例2においては、溶融粘度が著しく高くなっており、荷重たわみ温度も低くなっている。また、成形体外観が悪くなっている。
硫酸カリウムを配合していない比較例3及び4においては、条件1及び条件2における比摩耗量が大きくなっており、良好な耐摩耗性が得られていない。
また、硫酸カリウムを配合せず、PTFE(C)を用いた比較例5においては、溶融粘度が高くなっており、条件2の比摩耗量においても良好な耐摩耗性が得られていない。さらに、成形体外観が悪くなっている。
PTFE及び硫酸カリウムを配合していない比較例6においては、条件1及び条件2における比摩耗量が著しく大きくなっている。特に、アルミニウム合金を相手部材とした条件1の比摩耗量が著しく高くなっている。また、溶融粘度が高く、荷重たわみ温度も低くなっている。
PEEK樹脂に代えて、PPS樹脂を用いた比較例7〜9において、PTFE(B)のみを含有させた比較例8と、PTFE(B)と硫酸カリウムの両方を配合した比較例9を比較すると、PTFE(B)に加えて硫酸カリウムを配合することにより、良好な耐摩耗性が得られ、溶融粘度が低下するという本発明の効果は、PPS樹脂の場合には認められないことがわかる。
以上のように、本発明によれば、ポリエーテル芳香族ケトン樹脂の優れた耐熱性、耐薬品性等の特徴を損なうことなく、アルミニウム合金等の軟質の相手部材に対して、優れた耐摩耗性を示し、かつ溶融時の流動性に優れたポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物とすることができる。従って、本発明の樹脂組成物は、ベアリング、スリーブ、シールリング、各種ギア等の摺動部品を成形するための材料として有用に用いることができるものである。

Claims (5)

  1. ポリエーテル芳香族ケトン樹脂(a)に、フッ素樹脂(b)を5〜20重量%、硫酸カリウム(c)を3〜10重量%、無機繊維状物(d)を10〜40重量%配合し、フッ素樹脂(b)の372℃、荷重5kgにおけるMFR値が5g/10min以上であることを特徴とするポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物。
  2. フッ素樹脂(b)と硫酸カリウム(c)の配合比が、硫酸カリウム(c)1重量部に対してフッ素樹脂(b)1.5重量部以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物。
  3. 無機繊維状物(d)が、チタン酸カリウム繊維、ワラストナイト、ゾノトライト、ホウ酸アルミニウム繊維、及びホウ酸マグネシウム繊維からなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物。
  4. 無機繊維状物(d)が、チタン酸カリウム繊維であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物を成形して得られることを特徴とする成形体。
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