JP5161528B2 - パクリタキセル微粒子、パクリタキセル微粒子分散液、および、これらの製造方法 - Google Patents

パクリタキセル微粒子、パクリタキセル微粒子分散液、および、これらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、パクリタキセル微粒子、パクリタキセル微粒子分散液、および、これらを製造する方法に関するものである。
近年の新規医薬品の開発において、候補化合物を合成する際にコンビナトリアルケミストリーの手法が採用されている。このコンビナトリアルケミストリーとは、組み合わせを利用して多種・多様な化合物を短期間で一度に合成する技術である。本手法で得られる化合物は、多くの場合、溶解性の問題を有している。すなわち、化合物自身に優れた生理活性を見出すことができても、その化合物が水に溶けにくい性質がある場合、その化合物の開発を断念する例が多い。また、天然物からの抽出によって得られる化合物も、溶解性を改善するため様々な有機合成が行われ構造最適化が行われる。すでに市販されている医薬品にも溶解性の低いものがある。これらは、患者個体内及び個体間で薬物の吸収量に変動幅があり、血中濃度の管理など、使用する側の医師および使用される側の患者の双方にとって負担が大きい。
これらの問題点を解消し得るものとして微粒子製剤が注目を集めている。微粒子製剤は、難溶性の薬物粒子をマイクロメートル以下のサイズにしたものを水中に安定に分散させたものである。微粒子製剤を用いることで、生体内での薬物の吸収速度および量を高めることが可能である。また、患者個体内及び個体間における吸収量のバラツキの低減や、投与量に対する有効利用率の上昇が期待できる。
難溶性の薬物の1種であるパクリタキセル(paclitaxel)は、タキソール(taxol)とも呼ばれ、乳癌,非小細胞肺癌,胃癌,食道癌,頭頸部癌,卵巣癌および子宮体癌等に対して有効に作用する抗悪性腫瘍薬として知られ、臨床で頻用されている化合物である。この化合物は、非常に水に溶けにくいので(室温で0.5μg/mL程度)、注射用溶液を得るためには製剤的な工夫が不可欠である。現在のところ、パクリタキセル製剤は、エタノールおよびクレモフォールEL(Cremophor EL、ポリオキシエチレンヒマシ油)の50:50混合液として販売されており、投与時に5%ブドウ糖注射液又は生理食塩水と混和されて点滴静注される。
しかし、上記パクリタキセル製剤は、界面活性剤であるクレモフォールELを多量に含んでいるので、過敏症の既往歴のある患者がアナフィラキシーショックを引き起こす危険性を有している。また、また、上記パクリタキセル製剤は、輸液と混和した後でもエタノール濃度が高いので、アルコール過敏症患者がアルコール中毒を引き起こす危険性を有している。
特許文献1には、タキシン類(タキソール)を含んでいる安定な水中油エマルジョンおよびその製造方法についての発明が開示されている。この文献に開示された発明では、アルコール溶液中にパクリタキセルを溶解させ、これに当量容量の油を加えて透明になるまで混合した後、アルコールを回転蒸発または窒素流下の蒸発によって除去する。そして、この除去により得られたパクリタキセルの油溶液を、界面活性剤を用いて水中に分散させ、これにより、安定な水中エマルションを形成する。
また、特許文献2には、シクロデキストリンとタキソイドを含有する薬剤組成物についての発明が開示されている。この文献に開示された発明では、アルコール中にパクリタキセル及びシクロデキストリン誘導体を溶解させ、アルコールを蒸発させて、これにより乾燥固体を得る。
特表平10−502921号公報 特許第3656550号公報
特許文献1に開示された発明では、油を使用してエマルションを形成するので、界面活性剤の使用量が減少する。しかし、パクリタキセルは、油に対する溶解度も低い化合物であるので、油エマルションから結晶が析出してくる可能性が高く、安定性に問題がある。
また、特許文献2に開示された発明では、界面活性剤の代わりとなる分散化剤としてシクロデキストリン誘導体を用いている。しかし、分散化に必要なシクロデキストリンの量は、パクリタキセルの25倍から400倍と非常に多量である。このような多量な添加剤の使用は安全性に問題がある。
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、安定性および安全性が改善されたパクリタキセル微粒子およびパクリタキセル微粒子分散液等、ならびに、これらを製造する方法を提供することを目的とする。
本発明に係るパクリタキセル微粒子分散液製造方法は、(1) パクリタキセルおよび分散安定化剤を揮発性の有機溶媒に溶解させる溶解工程と、(2) この溶解工程において得られた溶解液に含まれる有機溶媒を蒸発除去して、当該有機溶媒除去による残存物であるペレット状のパクリタキセル固体組成物を容器の内壁に固定して得る固体組成物生成工程と、(3) この固体組成物生成工程の後に、容器の内部に水を注入して、ペレット状のパクリタキセル固体組成物を水に浸漬させる注水工程と、(4) この注水工程において水に浸漬されたペレット状のパクリタキセル固体組成物に光を照射して該パクリタキセル固体組成物を微粒子化し、当該微粒子が水に分散された微粒子分散液を製造する微粒子分散液生成工程と、を備えることを特徴とする。ここで、分散安定化剤がポリビニルピロリドンおよびラウリル硫酸ナトリウムを含むのが好ましい。
微粒子分散液生成工程において、容器の内壁のうち残存物が固定された領域の外側から光を照射して、その照射した光を容器,残存物および水の順に進行させるのが好適である。
なお、溶解工程,固体組成物生成工程,注水工程および微粒子分散液生成工程の全体を通じて1つの容器が用いられてもよい。また、上記残存物を得るまでの工程で用いられる容器と、それ以降の工程で用いられる容器とは、互いに別個のものであってもよい。
本発明によれば、溶解工程において、パクリタキセルおよび分散安定化剤が揮発性の有機溶媒に溶解される。続く固体組成物生成工程において、溶解工程において得られた溶解液に含まれる有機溶媒が蒸発除去され、当該有機溶媒除去による残存物であるペレット状のパクリタキセル固体組成物が容器の内壁に固定して得られる。更に続く注水工程において、パクリタキセル固体組成物が水に浸漬される。そして、微粒子分散液生成工程において、水に浸漬されたペレット状のパクリタキセル固体組成物に光が照射されて該パクリタキセル固体組成物が微粒子化され、当該微粒子が水に分散された微粒子分散液が製造される。
本発明に係るパクリタキセル微粒子は、パクリタキセル,ポリビニルピロリドンおよびラウリル硫酸ナトリウムを含むものである。本発明に係るパクリタキセル微粒子分散液は、上記の本発明に係るパクリタキセル微粒子が水に分散されたものである。本発明に係る凍結乾燥物は、上記の本発明に係るパクリタキセル微粒子分散液が凍結乾燥されたものである。本発明に係る経口投与用製剤は、上記の本発明に係るパクリタキセル微粒子,パクリタキセル微粒子分散液または凍結乾燥物を含有するものである。また、本発明に係る注射投与用製剤は、上記の本発明に係るパクリタキセル微粒子,パクリタキセル微粒子分散液または凍結乾燥物を水に再分散して得られる分散液を含有するものである。これらは、上記の本発明に係るパクリタキセル微粒子分散液製造方法が用いられて製造され得るものであり、安全性および安定性が優れる。
本発明によれば、安定性および安全性が改善されたパクリタキセル固体組成物,パクリタキセル微粒子およびパクリタキセル微粒子分散液等を提供することができる。
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
先ず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係るパクリタキセル固体組成物およびパクリタキセル微粒子分散液を製造する方法において用いられる微粒子分散液製造装置10の構成を示す図である。この図に示されるように、微粒子分散液製造装置10は、レーザ光源11,照射光制御部12,容器13および温度制御部14を備え、パクリタキセルおよび分散安定化剤が分子分散されてなるパクリタキセル固体組成物を製造するとともに、パクリタキセルおよび分散安定化剤を含むパクリタキセル微粒子が水に分散されたパクリタキセル微粒子分散液を製造するものである。
容器13は、被処理液が容れられるものであって、レーザ光源11から出力されるレーザ光Lが透過し得る材料からなり、好適にはガラスからなる。温度制御部14は、恒温槽,温度計および温調手段を含み、温度計および温調手段によるフィードバック制御により、恒温槽内に収納された容器13及び容器13内部に容れられた被処理液を温度一定に維持する。恒温槽は、レーザ光源11から出力されるレーザ光Lが通過する部分が透明窓となっている。レーザ光源11は、容器13に向けてレーザ光Lを出射するものであり、好適には波長900nm以上の赤外レーザ光Lを出射する。照射光制御部12は、レーザ光源11から出射されて容器13へ照射されるレーザ光Lの強度および照射時間の双方または何れか一方を調整する。
次に、第1実施形態に係るパクリタキセル固体組成物製造方法について説明するとともに、第1実施形態に係るパクリタキセル微粒子分散液製造方法について説明する。図2は、第1実施形態に係るパクリタキセル固体組成物製造方法およびパクリタキセル微粒子分散液製造方法を説明するフローチャートである。第1実施形態に係るパクリタキセル固体組成物製造方法は、溶解工程S1および固体組成物生成工程S2を順に行うことで、パクリタキセルおよび分散安定化剤が分子分散されてなるパクリタキセル固体組成物を製造する。また、第1実施形態に係るパクリタキセル微粒子分散液製造方法は、溶解工程S1および固体組成物生成工程S2に続いて更に注水工程S3および微粒子分散液生成工程S4を順に行うことで、パクリタキセルおよび分散安定化剤を含むパクリタキセル微粒子が水に分散されたパクリタキセル微粒子分散液を製造する。
溶解工程S1では、容器13内においてパクリタキセルおよび分散安定化剤が揮発性の有機溶媒に溶解される。ここで、分散安定化剤は高分子ポリマーまたは界面活性剤であるのが好適である。高分子ポリマーは、水溶性が高く、種々の有機溶媒に溶け易い物質であるのが望ましい。高分子ポリマーは、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルセルロースナトリウム、酢酸フタル酸セルロースなどのセルロース誘導体、寒天、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、メタアクリル酸コポリマー、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。界面活性剤は、低毒性のものであるのが望ましく、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、コール酸、デオキシコール酸、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。特に、分散安定化剤として、ポリビニルピロリドンおよびラウリル硫酸ナトリウムが用いられるのが好適である。有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトン、アセトニトリル、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル等が挙げられ、より好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類である。
溶解工程S1に続く固体組成物生成工程S2では、溶解工程S1において得られた溶解液に含まれる有機溶媒が蒸発除去され、当該有機溶媒除去によりペレット状の残存物としてパクリタキセル固体組成物1が得られ、このパクリタキセル固体組成物1が容器13の内壁に固定される。ここで得られるパクリタキセル固体組成物1は、パクリタキセルおよび分散安定化剤が分子分散されてなるものである。
固体組成物生成工程S2に続く注水工程S3では、容器13の内部に水2が注入される。この注水により、容器13の内壁に固定されているパクリタキセル固体組成物1は水2に浸漬される(図1参照)。そして、注水工程S3に続く微粒子分散液生成工程S4では、レーザ光源11から出射されたレーザ光Lが容器13の内壁に固定されたパクリタキセル固体組成物1に対して照射されて、パクリタキセル固体組成物1に光エネルギーが与えられる。これにより、パクリタキセル固体組成物1は、水中で熱的に最も安定な構造を持つパクリタキセル微粒子となり、このパクリタキセル微粒子が水2に分散されてなるパクリタキセル微粒子分散液が製造される。このパクリタキセル微粒子分散液は、パクリタキセルおよび分散安定化剤を含むパクリタキセル微粒子が水に分散されたものである。
本実施形態では、容器13の内壁に固定されたペレット状のパクリタキセル固体組成物1にレーザ光Lが高効率に照射されるので、高効率かつ短時間にパクリタキセル微粒子分散液を製造することができる。また、多光子吸収過程が生じない程度に十分に弱い光照射でもパクリタキセル微粒子が生成されるので、薬物分解等の問題が抑制され得る。
このようにして製造されたパクリタキセル微粒子分散液から、パクリタキセルおよび分散安定化剤を含むパクリタキセル微粒子が製造される。また、パクリタキセル微粒子を凍結乾燥して凍結乾燥微粒子が製造される。さらに、パクリタキセル微粒子分散液,パクリタキセル微粒子または凍結乾燥微粒子を含有する経口投与用製剤が製造され、また、パクリタキセル微粒子分散液,パクリタキセル微粒子または凍結乾燥微粒子を水に再分散して得られる分散液を含有する注射投与用製剤が製造される。
微粒子分散液生成工程S4において、図1に示されるように、容器13の内壁のうちパクリタキセル固体組成物1が固定された領域の外側からレーザ光Lが照射されて、その照射されたレーザ光Lが容器13,パクリタキセル固体組成物1および水2の順に進行するのが好適である。このようにすることにより、パクリタキセル固体組成物1と水2との界面近傍においてパクリタキセル微粒子が生成され、そのパクリタキセル微粒子は直ちに水2に分散される。この界面へのレーザ光照射は常にパクリタキセル固体組成物1を経て行われるので、水2に高濃度のパクリタキセル微粒子が含まれている状態であっても、パクリタキセル微粒子生成の効率は低下せず、一定の効率でパクリタキセル微粒子が生成される。
微粒子分散液生成工程S4において、レーザ光源11からパクリタキセル固体組成物1に対して波長900nm以上のレーザ光Lが照射されるのが好適である。このような波長のレーザ光Lがパクリタキセル固体組成物1に照射されることで、パクリタキセル固体組成物1に含まれる薬物の光劣化が更に抑制され得る。また、パクリタキセル固体組成物1を経て界面にレーザ光Lが到達して該界面でパクリタキセル微粒子が生成されることから、パクリタキセル固体組成物1に対して吸光度が小さい波長のレーザ光Lがパクリタキセル固体組成物1に照射されるのが好ましい。具体的には、パクリタキセル固体組成物1に対する吸光度が0.01程度以下である波長のレーザ光Lがパクリタキセル固体組成物1に照射されるのが好ましい。
微粒子分散液生成工程S4において、パクリタキセル固体組成物1への光照射の強度および時間の双方または何れか一方が照射光制御部12により調整されるのが好ましく、このようにすることにより、光照射により生成されるパクリタキセル微粒子の粒径が制御され得る。また、パクリタキセル固体組成物1への光照射の際に当該照射領域または容器内が温度制御部14により一定温度に維持されるのが好ましく、このようにすることにより、光照射により生成されるパクリタキセル微粒子の粒径が安定化される。
容器13として密閉容器が用いられて、溶解工程S1,固体組成物生成工程S2,注水工程S3および微粒子分散液生成工程S4が滅菌下で行われるのが好適である。あるいは、溶解工程S1を非滅菌下で行い、当該溶解液をフィルター滅菌した後、固体組成物生成工程S2,注水工程S3および微粒子分散液生成工程S4を滅菌下で行ってもよい。すなわち、本実施形態では、容器13外部から光照射するだけの簡易な手法であるので、密閉容器でも実施することができ、滅菌下での注射剤製造も容易である。
図3は、本実施形態において用いられる容器13の変形例の構成図である。この図に示される容器13の変形例である容器13Aは、パクリタキセル固体組成物1を固定する為の窪み131を内壁に有している。容器13Aの外壁に対して常に一定の位置である窪み131にパクリタキセル固体組成物1を配置することができて、レーザ光Lの照射位置の調整が簡易となる。なお、窪み131は、図示のように丸型であれば、歪みに対して強く好適である。
図4は、本実施形態において用いられる容器13の他の変形例の構成図である。この図に示される容器13の変形例である容器13Bは、注射器の機能を有している。容器13Bは、注射針132を備えており、製造直後のパクリタキセル微粒子分散液を迅速に注射できる利点がある。なお、上記変形例の容器13Aのように、注射器内壁にパクリタキセル固体組成物1を固定するための窪みを設けてもよい。
以上のようにして製造されるパクリタキセル固体組成物,パクリタキセル微粒子,パクリタキセル微粒子分散液,凍結乾燥物,経口投与用製剤および注射投与用製剤それぞれは、難溶性薬物であるパクリタキセルおよび低毒性の分散安定化剤を含むものであるから、安全性が優れる。また、後述する実施例に示されるように、これらは安定性も優れる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態と比較すると、第2実施形態では、溶解工程S1,固体組成物生成工程S2および注水工程S3については同様であるが、微粒子分散液生成工程S4の点で相違する。すなわち、第1実施形態における微粒子分散液生成工程S4ではパクリタキセル固体組成物1に光エネルギーが与えられたのに対して、第2実施形態における微粒子分散液生成工程S4では、パクリタキセル固体組成物1に振動(好適には超音波振動)のエネルギーが与えられて、パクリタキセル固体組成物1は、水中で熱的に最も安定な構造を持つパクリタキセル微粒子となり、このパクリタキセル微粒子が水2に分散されてなるパクリタキセル微粒子分散液が製造される。
第2実施形態における微粒子分散液生成工程S4において、パクリタキセル固体組成物1に振動エネルギーを与えるための振動手段として超音波プローブが容器13内の水2に浸漬されて、この超音波プローブから発生する超音波振動がパクリタキセル固体組成物1に与えられる。或いは、振動手段として超音波発生素子が容器13の外壁に貼り付けられて、この超音波発生素子から発生する超音波振動がパクリタキセル固体組成物1に与えられる。或いは、振動手段として超音波洗浄器に容器13が入れられて、この超音波洗浄器から超音波振動がパクリタキセル固体組成物1に与えられる。また、或いは、振動手段として試験管ミキサーに容器13が入れられて、この試験管ミキサーから振動がパクリタキセル固体組成物1に与えられる。
これら何れの場合にも、パクリタキセル固体組成物1に振動エネルギーが与えられ、パクリタキセル固体組成物1は、水中で熱的に最も安定な構造を持つパクリタキセル微粒子となり、このパクリタキセル微粒子が水2に分散されてなるパクリタキセル微粒子分散液が製造される。このようにして、本実施形態においても、安定性および安全性が改善されたパクリタキセル微粒子およびパクリタキセル微粒子分散液等を製造することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第1実施形態と比較すると、第3実施形態では、溶解工程S1,固体組成物生成工程S2および注水工程S3については同様であるが、微粒子分散液生成工程S4の点で相違する。すなわち、第1実施形態における微粒子分散液生成工程S4ではパクリタキセル固体組成物1に光エネルギーが与えられたのに対して、第3実施形態における微粒子分散液生成工程S4では、容器13内の水2が撹拌されることでパクリタキセル固体組成物1にエネルギーが与えられて、パクリタキセル固体組成物1が粉砕されてパクリタキセル微粒子とされ、このパクリタキセル微粒子が水2に分散されてなるパクリタキセル微粒子分散液が製造される。
第3実施形態における微粒子分散液生成工程S4において、容器13内の水2を撹拌する撹拌手段としてマグネティックスターラが用いられ、このマグネティックスターラの回転により容器13内の水2が撹拌される。或いは、撹拌手段として試験管ミキサーに容器13が入れられて、この試験管ミキサーの振動により容器13内の水2が撹拌される。なお、試験管ミキサーは、容器13内の水2の量が多いときには振動手段として作用するが、容器13内の水2の量が少ないときには撹拌手段として作用する。
これら何れの場合にも、容器13内の水2が撹拌されることでパクリタキセル固体組成物1にエネルギーが与えられ、パクリタキセル固体組成物1は、水中で熱的に最も安定な構造を持つパクリタキセル微粒子となり、このパクリタキセル微粒子が水2に分散されてなるパクリタキセル微粒子分散液が製造される。このようにして、本実施形態においても、安定性および安全性が改善されたパクリタキセル微粒子およびパクリタキセル微粒子分散液等を製造することができる。
次に、本実施形態に係るパクリタキセル固体組成物およびパクリタキセル微粒子分散液のより具体的な実施例について説明する。以下に説明する本実施例において下記の操作は全て室温(20℃)で行った。
難溶性薬物であるパクリタキセル原末(10mg)と、分散安定化剤であるポリビニルピロリドン(50mg)およびラウリル硫酸ナトリウム(2mg)とを試験管にとり、揮発性有機溶媒であるエタノール(1mL)により溶解した。減圧条件下でエタノールを乾固し、薬物(パクリタキセル)および分散安定化剤(ポリビニルピロリドン、ラウリル硫酸ナトリウム)が均一に分子分散したパクリタキセル固体組成物を得た。この得られたパクリタキセル固体組成物に水を添加して試験管を密閉した。
試験管内のパクリタキセル固体組成物に対して、試験管側方からNd:YAGパルスレーザ光を照射した。照射条件は、波長1064nm、照射光強度0.61J/cm/pulse、パルス幅5〜7ns、繰り返し周波数10Hzであった。10分間照射を行った後、軽く振とうすることでほぼ無色透明のパクリタキセル微粒子分散液を得た。
高速液体クロマトグラフィ(High performance liquid chromatography、以下「HPLC」という。)を用いて波長227nmの吸光度を測定することにより、得られたパクリタキセル微粒子分散液に含まれるパクリタキセル量を定量した。図5および図6は、実施例で得られたパクリタキセル微粒子分散液のHPLCチャートである。図6は、図5の一部を拡大して示すものである。分離担体としてODS-C18(東ソー株式会社製)を用い、移動相としてアセトニトリル-水の混合液(1:1)を使用し、温度37℃で行った。標品としてパクリタキセル原末を0.5mg/mLとなるようにメタノールに溶解したものを使用した。
これらの図に示されるように、パクリタキセルは約8分の位置に溶出し、標品を測定して得られたピーク面積を元に試料中のパクリタキセル量を比較計算して算出した結果、パクリタキセル微粒子分散液中のパクリタキセル量は9.80mg/mL(n=3)であった。水に対するパクリタキセルの溶解度(約0.5μg/mL)に比べて約2万倍と十分に高濃度のパクリタキセル微粒子分散液を調製することができた。HPLCチャート上では、夾雑物ピークは主薬ピークの数百〜千分の一程度であり、レーザ光照射による夾雑物ピークの増加は認められなかった。
また、得られたパクリタキセル微粒子分散液について、粒度分布測定装置SALD-7000(株式会社島津製作所製)を使用して粒子径分布を測定した。さらに、走査電子顕微鏡S4200(株式会社日立製作所製)を用いて、パクリタキセル微粒子分散液に含まれる微粒子の電子顕微鏡像(SEM)の観察を試みた。しかし、粒子径分布(測定限界<約100nm)および電子顕微鏡像(測定限界<約50nm)の何れも観察することができなかった。粒子径が測定限界以下であることに因ると考えられる。
なお、得られたパクリタキセル微粒子分散液は、安定性が高く、12時間経過しても、10mg/mLの安定な高濃度を保ち、ほぼ無色透明の分散液のままで析出物が観察されなかった。
第1実施形態に係るパクリタキセル固体組成物およびパクリタキセル微粒子分散液を製造する方法において用いられる微粒子分散液製造装置10の構成を示す図である。 第1実施形態に係るパクリタキセル固体組成物製造方法およびパクリタキセル微粒子分散液製造方法を説明するフローチャートである。 第1実施形態において用いられる容器13の変形例の構成図である。 第1実施形態において用いられる容器13の他の変形例の構成図である。 実施例で得られた微粒子分散液のHPLCチャートである。 実施例で得られた微粒子分散液のHPLCチャートである。
符号の説明
1…パクリタキセル固体組成物、2…水、10…微粒子分散液製造装置、11…レーザ光源、12…照射光制御部、13,13A,13B…容器、14…温度制御部、131…窪み、132…注射針、L…レーザ光。

Claims (8)

  1. パクリタキセルおよび分散安定化剤を揮発性の有機溶媒に溶解させる溶解工程と、
    この溶解工程において得られた溶解液に含まれる前記有機溶媒を蒸発除去して、当該有機溶媒除去による残存物であるペレット状のパクリタキセル固体組成物を容器の内壁に固定して得る固体組成物生成工程と、
    この固体組成物生成工程の後に、前記容器の内部に水を注入して、ペレット状のパクリタキセル固体組成物を水に浸漬させる注水工程と、
    この注水工程において水に浸漬されたペレット状のパクリタキセル固体組成物に光を照射して該パクリタキセル固体組成物を微粒子化し、当該微粒子が水に分散された微粒子分散液を製造する微粒子分散液生成工程と、
    を備えることを特徴とするパクリタキセル微粒子分散液製造方法。
  2. 前記分散安定化剤がポリビニルピロリドンおよびラウリル硫酸ナトリウムを含むことを特徴とする請求項1記載のパクリタキセル微粒子分散液製造方法。
  3. 前記微粒子分散液生成工程において、前記容器の内壁のうち前記残存物が固定された領域の外側から光を照射して、その照射した光を前記容器,前記残存物および水の順に進行させる、ことを特徴とする請求項1記載のパクリタキセル微粒子分散液製造方法。
  4. パクリタキセル,ポリビニルピロリドンおよびラウリル硫酸ナトリウムを含むパクリタキセル微粒子。
  5. 請求項記載のパクリタキセル微粒子が水に分散されたパクリタキセル微粒子分散液。
  6. 請求項記載のパクリタキセル微粒子分散液が凍結乾燥された凍結乾燥物。
  7. 請求項記載のパクリタキセル微粒子,請求項記載のパクリタキセル微粒子分散液または請求項記載の凍結乾燥物を含有する経口投与用製剤。
  8. 請求項記載のパクリタキセル微粒子,請求項記載のパクリタキセル微粒子分散液または請求項記載の凍結乾燥物を水に再分散して得られる分散液を含有する注射投与用製剤。
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