本発明の第1の発明に係るヒートパイプは、封入された冷媒の気化および凝縮によって発熱体を冷却するヒートパイプであって、気化した冷媒を拡散する蒸気拡散路と凝縮した冷媒を還流させる毛細管流路と、を内部に有する平板状の本体部と、本体部の表面における中央部と周辺部の温度差である水平温度差を測定すると共に、本体部の表面と裏面の温度差である垂直温度差を測定する温度測定部と、水平温度差と所定の第1閾値とを比較して比較結果である第1比較結果を出力すると共に、垂直温度差と所定の第2閾値とを比較して比較結果である第2比較結果を出力する比較部と、第1比較結果が第1閾値以上であると共に第2比較結果が第2閾値以上である場合に、ヒートパイプの冷却能力を基準として、本体部は冷却能力超えの動作状態であるとして判定し、判定結果を出力する判定部を備え、蒸気拡散路が本体部内部で略中央部から周辺部に形成されることで、蒸気拡散路は、気化した冷媒を水平方向に拡散し、毛細管流路が本体内部で周辺部から略中央部に形成されることで、毛細管流路は、凝縮した冷媒を垂直もしくは垂直・水平方向に還流させる。
この構成により、狭小空間においてもヒートパイプが実装できる。また、密閉された電子機器内部において、ヒートパイプの冷却能力を自己診断できるので、電子機器やヒートパイプの動作不良や故障が未然に防止できる。また、冷媒の拡散性能の高いヒートパイプにおいては、特定の位置の絶対温度よりも、少なくとも2箇所以上の温度差により、動作状態を判定することが適している。このため、ヒートパイプの冷却性能がより適切に判定できる。この構成により、冷媒の拡散性能(すなわち熱の拡散性能)の高い本体部の動作状態を、非常に高い精度で判定できる。拡散性能の高いヒートパイプでは、表面における中央部から周辺部への熱の移動速度と、発熱体に接する面からその対向する面までの移動速度が、その冷却能力の指針となるからである。この構成により、本体部の動作状態を、ヒートパイプの冷却能力を基準として、高い精度で判定できる。この結果、電子機器やヒートパイプの動作不良や故障を未然に防止できる。特に、発熱体の発熱と冷却能力との比較がより正確に行われる。
本発明の第3の発明に係るヒートパイプでは、第1又は第2の発明に加えて、本体部は、平板状の上部板と、上部板と対向する平板状の下部板と、上部板と下部板の間に積層される単数又は複数の中間板を有し、中間板は切り欠き部と内部貫通孔を有し、切り欠き部は蒸気拡散路を形成し、内部貫通孔は毛細管流路を形成する。
この構成により、気化した冷媒が水平方向に拡散すると共に、凝縮した冷媒が垂直方向もしくは垂直・水平方向に還流しやすい薄型のヒートパイプが実現できる。この結果、大型の二次冷却部材が実装しにくい狭小空間においても、ヒートパイプを実装できるうえ、発熱体の十分な冷却も可能である。勿論、冷却能力の自己診断が可能なので、電子機器やヒートパイプの動作不良や故障が未然に防止できる。
本発明の第4の発明に係るヒートパイプでは、第3の発明に加えて、蒸気拡散路は、本体部の略中央部から放射状に形成され、中間板は複数であって、複数の中間板のそれぞれに設けられた内部貫通孔同士は、それぞれの一部のみが重なって、内部貫通孔の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路が形成される。
この構成により、本体部の隅々まで広い範囲に渡って拡散した冷媒が凝縮された場合でも、広い範囲で毛細管現象によって凝縮した冷媒を還流させることができる。すなわち、冷媒の気化と凝縮の時間が短くなる。
本発明の第5の発明に係るヒートパイプでは、第1から第4のいずれかの発明に加えて、判定結果を受けて、ユーザーに注意を通知する通知部を更に備え、通知部は、発光、映像、音声および振動の少なくとも一つによってユーザーに注意を通知する。
この構成により、ユーザーは、発熱がヒートパイプの冷却能力を超えた、あるいは超えそうなことを即座に認識できる。注意を喚起されたユーザーは、電子機器の動作を停止させたり、作業を停止したりするなどの対策を打てるので、電子機器やヒートパイプの動作不良や故障を未然に防止できる。
本発明の第6の発明に係るヒートパイプでは、第1から第5のいずれかの発明に加えて、判定結果を受けて、発熱体を含む電子回路への、電力の供給およびクロック信号の供給の少なくとも一方を低減もしくは停止する。
この構成により、発熱体の発熱が、ヒートパイプの冷却能力を超えそうな場合に、自動的に電子機器側で対応処理が行われる。この結果、発熱による電子機器の動作不良や故障が、確実に防止できる。
本発明の第7の発明に係るヒートパイプでは、第3から第6のいずれかの発明に加えて、上部板、下部板および中間板の少なくとも一つは、他よりもその面積が大きく、本体部の側面から突出する突出部を形成し、突出部は、電気配線を有する。
この構成により、温度検出部位と自己診断手段に係る電子回路が、電気的に接続できる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
なお、本明細書におけるヒートパイプとは、内部空間に封入された冷媒が、発熱体からの熱を受けて気化し、気化した冷媒が冷却されて凝縮することを繰り返すことで、発熱体を冷却する機能を実現する部材、部品、装置、デバイスを意味する。
(実施の形態1)
まず、ヒートパイプの概念について説明する。
ヒートパイプは、内部に冷媒を封入しており、受熱面となる面を、電子部品をはじめとする発熱体に接している。内部の冷媒は、発熱体からの熱を受けて気化し、気化する際に発熱体の熱を奪う。気化した冷媒は、ヒートパイプの中を移動する。この移動によって発熱体の熱が運搬されることになる。移動した気化した冷媒は、放熱面などにおいて(あるいはヒートシンクや冷却ファンなどの二次冷却部材によって)冷却されて凝縮する。凝縮して液体となった冷媒は、ヒートパイプの内部を還流して再び受熱面に移動する。受熱面に移動した冷媒は、再び気化して発熱体の熱を奪う。
このようにして、冷媒の気化と凝縮の繰り返しによって、ヒートパイプは発熱体を冷却する。このため、ヒートパイプは、その内部に気化した冷媒を拡散する蒸気拡散路と、凝縮した冷媒を還流させる毛細管流路を有する必要がある。
ヒートパイプには、筒状の形状を有して垂直方向に気化した冷媒を拡散させると共に垂直方向に凝縮した冷媒を還流させる構造を有するものや、発熱体と接する受熱部と冷媒を冷却する冷却部とが別体であってパイプで接続される構造を有するものなどがある。
これらの構造を有するヒートパイプは、その体積が大きく(特に垂直方向に体積が大きくなりやすい)、実装する空間が狭小である場合には不適である。このため、平板状で薄型のヒートパイプが望まれることも多い。
一方で、平板状で薄型のヒートパイプは、垂直方向に体積が大きいヒートパイプに比較して気化した冷媒の拡散と凝縮した冷媒の還流のスペースが小さいので、発熱体の熱の移動能力が弱くなりがちである。特に、気化した冷媒は垂直方向に拡散するので、平板状で薄型のヒートパイプでは、気化した冷媒が発熱体の上方に移動するばかりとなり、熱の移動能力が弱くなりやすい。これに対して、垂直方向に体積を有した(すなわち、垂直方向に気化した冷媒の蒸気拡散路が形成されている)ヒートパイプや、受熱部分(冷媒が気化する部分)と、放熱部分(冷媒が凝縮する部分)が別体となっているヒートパイプは、当然ながら熱移動能力(冷却能力)の点で優位である。発熱体の発熱が相当な変動を有する場合でも、大型のヒートパイプは、熱移動能力に大きなマージンを有するので、冷却に特段の問題を生じさせない。
このため、平板状で薄型のヒートパイプは、その冷却効果を向上させるために、ヒートシンクや冷却ファンといった二次冷却部材とセットで使用されることが多い。
そもそも、ヒートパイプは、発熱体の熱を移動することを主としており、移動された熱を放熱するために二次冷却部材が組み合わされることが前提として考えられることも多い。このため、ヒートパイプは、一次冷却部材として捉えられることもある。
このように、ヒートシンクや冷却ファンが組み合わされる場合には、薄型で熱移動能力の弱いヒートパイプであっても十分である。また、発熱体の発熱度合いに応じて、冷却ファンの回転数が制御されれば、ヒートパイプと冷却ファンが組み合わされた冷却装置全体の冷却能力も制御できることになる。この結果、発熱体の発熱が相当な変動を有する場合でも、二次冷却部材と組み合わされたヒートパイプはこの変動に合わせて冷却能力が変動できるので、冷却に特段の問題を生じさせない。
以上のように、大型のヒートパイプや、二次冷却部材と組み合わされたヒートパイプであれば、発熱体の発熱が相当な変動を有する場合であっても、十分な冷却効果を維持できる。
しかしながら、電子機器や産業機器は小型化が必須条件であり、筐体内部には、多くの電子部品や電子基板が高密度に実装されている。このため、電子機器や産業機器の内部には、冷却部材の実装余地が少ないのが現状である。図1を用いて説明する。
図1は、電子機器内部を示す模式図である。
電子機器100は、小型化や薄型化の要求される電子機器であり、例えばカーナビゲーションシステムやカーテレビ、航空機に設置されるパーソナルモニターなどである。電子機器100では、内部空間101が非常に狭小である。図1に示されるとおり、内部空間101は、余地をほとんど有していない。
電子機器100内部には、電子基板102が実装されている。電子基板102は、電子機器100全体の体積を大型化しないために、高密度に実装される。この実装によっても、内部空間101の余地は、更に少なくなる。
電子基板102は、電子部品103を実装しており、中央演算処理装置(以下、「CPU」という)や、大容量の半導体集積回路(以下、「LSI」という)などの発熱量の大きい電子部品の場合には、冷却を必要とする。このため、図1においては、電子部品103は、発熱体であり、電子部品103を冷却するためのヒートパイプ104が実装されている。
ここで図1より明らかな通り、内部空間101は、非常に狭小である。このため、ヒートパイプ104を実装する空間も非常に少ない。結果として、垂直方向に体積を有するヒートパイプや受熱部と放熱部が別体となったヒートパイプを、電子機器100に利用するのは困難である。加えて、ヒートパイプ104に、ヒートシンクや冷却ファンなどの二次冷却部材を組み合わせることも、内部空間101の狭小性から困難である。
このように、実際の電子機器や産業機器においては、冷却能力の高い大型のヒートパイプや、二次冷却部材を組み合わせたヒートパイプを使用することが困難であることが多い。
一方で、平板状で薄型のヒートパイプでは、その熱移動能力が低く、冷却能力が発熱体である電子部品103に対して不十分であることもある。
これに対して、平板状で薄型であっても、気化した冷媒が水平方向に拡散し、凝縮した冷媒も、垂直方向もしくは垂直・水平方向に還流するヒートパイプであれば、二次冷却部材を必要とせず、十分な冷却能力を発揮できる。すなわち、水平方向を用いた拡散性能の高いヒートパイプであれば、図1に示されるような内部空間101の余地の少ない(狭小空間である)電子機器100にも十分に利用できる。図1に示されるような内部空間の余地の少ない(狭小空間である)電子機器100においては、水平方向の拡散性能の高いヒートパイプの利用が前提となる。
一方で、冷媒の(言い換えれば熱の)拡散性能の高いヒートパイプ104の冷却能力が高いとしても、狭小空間を有する電子機器100の中では不測の事態も生じうる。例えば、内部空間101に熱がこもってしまい、発熱体の発熱がそのスペック以上になることもある。この場合には、発熱体の発熱スペックに合わせたヒートパイプ104の冷却能力を超える発熱が生じてしまい、ヒートパイプ104の冷却能力が不十分となる。こうなってしまうと、電子機器100の動作不良の原因ともなる。あるいはヒートパイプ104そのものの動作不良や故障の原因ともなりうる。
更に、電子機器100を使用するユーザーは、内部で発生している状態を認識できず、電子機器100の動作不良や故障だけを感じることになり、ユーザビリティが大きく損なわれてしまう。
発明者は、拡散性能の高いヒートパイプについても鋭意検討すると共に、拡散性の高いヒートパイプの動作状態を正確かつ容易に判定する技術を鋭意検討して、本発明に至った。
まず、実施の形態1におけるヒートパイプの全体構成について説明する。
(全体構造)
全体構造について図2を用いて説明する。図2は、本発明の実施の形態1におけるヒートパイプのブロック図である。
ヒートパイプ1は、本体部2、自己診断手段7、温度測定部8、比較部9、判定部10を備えている。ヒートパイプ1自身は、封入された冷媒の気化および凝縮によって発熱体を冷却する。
実施の形態1におけるヒートパイプ1は、発熱体を冷却するヒートパイプとしての機能を有する本体部2と、本体部2の動作状態を、ヒートパイプの冷却能力を基準として診断する自己診断手段7を有している。自己診断手段7は、温度測定部8、比較部9、判定部10を備えている。
本体部2は、ヒートパイプ1の有する冷却機能を発揮する部分であり、平板状で薄型の形状を有している。本体部2は、周囲が封止された内部空間を有しており、内部空間は、冷媒を封入する。本体部2は、気化した冷媒が拡散する蒸気拡散路3と凝縮した冷媒を還流させる毛細管流路4とを有している。ここで、蒸気拡散路3は、気化した冷媒を水平方向に拡散する。毛細管流路4は、垂直方向もしくは垂直・水平方向に凝縮した冷媒を還流させる。
このため、本体部2は、冷媒を水平方向(平板状の本体部2の平面方向)に拡散させる。言い換えると、発熱体の熱は、本体部2において水平方向に拡散されて移動される。気化した冷媒は、本体部2の表面で放熱して冷却されるが、気化した冷媒が本体部2の水平方向に広く拡散するため、本体部2の表面は、隅々まで効率よく活用して、気化した冷媒を冷却できる。結果として、同じ形状、体積、素材であっても、実施の形態2の本体部2は、薄型の平板状でありながら、水平方向の拡散性の弱い他のヒートパイプよりも高い冷却能力を有する。
本体部2の表面には、少なくとも2箇所の温度検出部位5、6が設けられている。
温度測定部8は、温度検出部位5,6の温度差を測定する。温度測定部8は、測定した温度差を比較部9に出力する。比較部9は、温度差を所定の閾値と比較して、比較結果を判定部10に出力する。
判定部10は、比較結果に基づいて、本体部2の動作状態を判定して判定結果を出力する。このとき、判定部10は、本体部2の少なくとも2箇所の温度差に基づいて本体部2の動作状態を判定する。本体部2は、気化した冷媒の拡散と凝縮した冷媒の還流により、発熱体を冷却する。すなわち、その拡散性が冷却能力を生み出している。このため、異なる2箇所の温度差が高いということは、拡散性能が不十分であり、冷却能力が足りてないことを示す。このため、判定部10は、少なくとも2箇所の温度差に基づけば、本体部2の拡散性能の状態、すなわち動作状態を判定できる。
判定部10は、判定結果を出力する。ユーザーやヒートパイプ1が実装されている電子機器は、判定結果を受け取ることができる。結果として、判定部10からの判定結果により、ユーザーや電子機器は、その後の制御や処置を取ることができ、電子機器の動作不良や故障、あるいはヒートパイプ1自体の動作不良や故障を未然に防止できる。
図3は、図2を側面から見た状態を示す。図3は、本発明の実施の形態1におけるヒートパイプの側面図である。
本体部2は、発熱体17と熱的接合材18を介して接触している。ここで、熱的接合材18には、サーマルグリースやサーマルグリースにフィラーなどを添加した素材が用いられる。熱的接合材は、発熱体17と本体部2の接触部分の凸凹などの影響を排除して、発熱体17の熱を効果的に受熱面16に伝導する。
本体部2の表面(発熱体17と接触する受熱面16と対向する面である)は、気化した冷媒を放熱する放熱面15である。この放熱面15の中央部に温度検出部位5が、周辺部に温度検出部位6が設置されている。温度検出部位5,6からの温度は、電気配線19を介して自己診断手段7に伝えられる。自己診断手段7は、上述の通り、温度差に基づいて、本体部2の動作状態を判定する。
このように、実施の形態1のヒートパイプ1は、密閉された電子機器の中で、ヒートパイプ1の冷却能力以上に発熱が生じた場合でも、電子機器やヒートパイプ1に影響を与えないユーザビリティを実現できる。
次に、各部の詳細について説明する。
(本体部)
本体部2は、冷媒の気化と凝縮によって発熱体を冷却するヒートパイプの機能を有する部分である。本体部2は、気化した冷媒を水平方向に拡散する蒸気拡散路3と、凝縮した冷媒を垂直方向もしくは垂直・水平方向に還流させる毛細管流路4とを備える。
図4〜図7を用いて、本体部2についての詳細を説明する。
図4は、本発明の実施の形態1における本体部を側面から見た分解図である。
図4から明らかな通り、本体部2は、平板状の上部板30、上部板30と対向する平板状の下部板31、上部板30と下部板31の間に積層される単数又は複数の中間板32を有している。これら上部板30、下部板31、中間板32が積層されて接合されることで、本体部2が形成される。積層によって、本体部2の内部に内部空間が形成され、更には蒸気拡散路3と毛細管流路4も形成される。
(上部板)
上部板30は、平板状であり、所定の形状、面積を有している。
上部板30は、金属、樹脂などで形成されるが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高い金属で形成されることが好ましい。また、上部板30は、方形、菱形、円形、楕円形、多角形など種々の形を有していてよいが、製造上の容易性や実装上の容易性から方形が採用されやすい。
上部板30は、その一方の面であって中間板32と対向する面に、蒸気拡散路3および毛細管流路4の少なくとも一方と連通する凹部37を有していることも好ましい。凹部37が毛細管流路4と連通することで、凝縮した冷媒が、上部板30から毛細管流路4へと伝わりやすくなる。あるいは、凹部37が蒸気拡散路3と連通することで、気化した冷媒が、放熱面15に広い面積で接しやすくなり、気化した冷媒の放熱が促進される。
なお、凹部37は、本発明において必須の構成要件ではない。
上部板30は、中間板32と接合される突起部や接着部を備えていることも好適である。 上部板30は、便宜上「上部」との呼称となっているが、物理的に上部の位置に存在しなければならないわけではなく、下部板31と特段に区別されるものでもない。また、上部板30が放熱面15側となっても、受熱面16側となっても特に問題はない。
また、上部板30は、冷媒の注入口38を備えている。上部板30、中間板32、下部板31が積層されて接合されると内部空間が形成される。この内部空間は、冷媒を封入する必要があるので、上部板30などの接合後に注入口38から冷媒が封入される。注入口38は、冷媒が封入されると封止されて内部空間は密封される。
なお、冷媒は、積層後に注入口38から封入されても良く、上部板30、下部板31、中間板32が積層される際に冷媒が封入されてもよい。
(下部板)
下部板31は、上部板30と対向して単数又は複数の中間板32を挟む。
下部板31は、金属、樹脂などで形成されるが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高い金属で形成されることが好ましい。また、方形、菱形、円形、楕円形、多角形など種々の形を有していてよいが、上部板30と対向して本体部2を形成するので、上部板30と同一の形状、面積であることが好ましい。また、製造上の容易性や実装上の容易性から方形が採用されやすい。
下部板31は、その一方の面であって中間板32と対向する面に、蒸気拡散路3と毛細管流路4に連通する凹部37を有している。凹部37は、毛細管流路4と連通することで、凝縮した冷媒が、下部板31から毛細管流路4へ伝わりやすくなる。また、凹部37が蒸気拡散路3と連通することで、気化した冷媒が、放熱面15に広い面積で接しやすくなり、気化した冷媒の放熱が促進される。これは、上部板30に凹部37が設けられることと同様の意義を有する。
なお、上部板30と同様に、凹部37は必須の構成要件ではない。
下部板31は、便宜上「下部」との呼称となっているが、物理的に下部の位置に存在しなければならないわけではなく、上部板30と特段に区別されるものでもない。
下部板31は、中間板32と接合される突起部や接着部を備えていることも好適である。
また、下部板31が放熱面15側となっても、受熱面16側となっても特に問題はない。
(中間板)
中間板32は、単数又は複数である。中間板32は、上部板30と下部板31の間に積層される。
中間板32は、金属、樹脂などで形成されるが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高い金属で形成されることが好ましい。また、方形、菱形、円形、楕円形、多角形など種々の形を有していてよいが、上部板30および下部板31に挟まれて本体部2を形成するので、上部板30および下部板31と同一の形状であることが好ましい。また、製造上の容易性や実装上の容易性から方形が採用されやすい。なお、上部板30および下部板31に挟まれるので、中間板32の面積は、上部板30および下部板31と同一でも良く、若干小さくてもよい。
また、中間板32は、上部板30および下部板31と接続される際に用いられる突起や接着部を有していても良い。
最終的には、上部板30と下部板31の間に中間板32が積層されて接合されることで、本体部2が形成される。
(中間板と蒸気拡散路および毛細管流路)
次に、中間板32、蒸気拡散路3および毛細管流路4について、図5も参照しながら説明する。
まず、蒸気拡散路3について説明する。
図5は、本発明の実施の形態1における中間板の表面図である。
中間板32は、切り欠き部40と内部貫通孔36を有している。
切り欠き部40は、本体部2における蒸気拡散路3を形成する。上部板30と下部板31の間に中間板32が積層された場合に、切り欠き部40は空隙を形成することになる。この空隙が蒸気拡散路3となる。
ここで、切り欠き部40が、本体部2の水平方向に向けて形成されることで、蒸気拡散路3も、本体部2の水平方向に向けて形成される。このため、気化した冷媒は水平方向に拡散するようになる。
特に、図5に示されるように、切り欠き部40が中間板32の中央部から放射状に形成されている場合には、蒸気拡散路3も本体部2の中央部から放射状に形成されることになる。発熱体17は、本体部2の略中央部に設置されることが多いので、冷媒は本体部2の略中央部でもっとも熱を受熱する。このため、本体部2の中央部付近の冷媒が最初に気化する。このとき、図2や図5に示されるように、蒸気拡散路3が本体部2の略中央部から放射状に形成されていることで、中央付近で生じた気化冷媒は、放射状に、すなわち水平方向に拡散する。
このように、中間板32が切り欠き部40を有し、水平方向に広がる蒸気拡散路3が形成されることで、本体部2の内部においては、気化した冷媒が水平方向に拡散するようになる。結果として、発熱体17からの熱は、中央から周辺に向けて本体部2内部を水平方向に拡散する。結果として、薄型で平板状のヒートパイプであっても、発熱体17の熱を効率よく移動できる。なお、蒸気拡散路15が放射状であることで、気化した冷媒が水平方向に拡散するとしても、拡散した後冷却されて凝縮した冷媒が高速に還流しなければ、発熱体の冷却能力は十分でない。本発明のヒートパイプ1の本体部2は、拡散した後で凝縮した冷媒を、本体部2の全面を効率よく活用して還流させる毛細管流路16を有していることにより、高い水平方向の拡散(および還流)性能を実現している。
次に毛細管流路4について説明する。
中間板32は、内部貫通孔36を有している。内部貫通孔36は、微小な貫通孔であり、凝縮した冷媒が還流する毛細管流路4を形成する。中間板32が図5に示されるように切り欠き部40を有する場合には、切り欠き部40以外の部分に内部貫通孔36が形成される。
ここで、中間板32が単数の場合には、中間板32に設けられている内部貫通孔36がそのまま毛細管流路になる。
これに対して、中間板32が複数である場合には、複数の中間板32のそれぞれに設けられた内部貫通孔36の一部のみが重なって、内部貫通孔36の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路4が形成される。このように、中間板32が複数である場合には、内部貫通孔36そのものの断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路4が形成されるので、毛細管流路4における凝縮した冷媒の還流をより効果的にできる。
なお、ここで、中間板32には、複数の内部貫通孔36が設けられる。毛細管流路4として機能するためには、内部貫通孔36が複数であることが好ましいからである。
内部貫通孔36は、中間板32の表面から裏面にかけて貫通しており、その形状は円形でも楕円形でも方形でもよい。内部貫通孔36の一部同士が重なって毛細管流路4を形成することから、内部貫通孔36は方形であることが適当である。これは製造上の容易性からも適当である。
内部貫通孔36は、掘削、プレス、ウェットエッチング、ドライエッチングなどで形成されれば良いが、微小加工および加工精度の面から、ウェットエッチング、ドライエッチングなどのエッチング加工で形成されるのが適当である。
中間板32が複数の場合には、内部貫通孔36は、複数の中間板32のそれぞれに設けられる。ここで、複数の中間板32は、その内部貫通孔36の一部同士のみがそれぞれ重なるように積層されるので、内部貫通孔36の位置は、隣接する中間板32毎にずれていることが適当である。例えば、ある中間板32における内部貫通孔36の位置と、この中間板32と隣接する別の中間板32における内部貫通孔36の位置は、内部貫通孔36の面積の一部ずつが重なるようにずれている。このように、隣接する中間板32毎に内部貫通孔36の位置がずれていることで、複数の中間板32が積層された場合に、内部貫通孔36の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路4が形成される。
毛細管流路4は、複数の中間板32が積層される際に、内部貫通孔36の一部同士が重なり合って、内部貫通孔36の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する。このような内部貫通孔36の断面積よりも小さな断面積を持つ孔が、本体部2の垂直方向に積層され、垂直方向の孔同士が接続することで、垂直方向の流路が形成される。また、垂直方向において階段状の孔となるので、垂直方向であると同時に水平方向にも流れうる流路が形成される。この垂直・平面方向に形成される流路は、その断面積が非常に小さく、凝縮した冷媒を、垂直方向もしくは垂直・水平方向に還流させる。
なお、内部貫通孔36の一部のみが重なるようにして、内部貫通孔36よりも小さな断面積を有する毛細管流路4が形成される場合には、毛細管流路4を直接加工するよりも、容易に製造できるメリットもある。
なお、毛細管流路4は、凝縮した冷媒が還流するが、気化した冷媒が通ることもありえる。
また、毛細管流路4、凹部37の角部や切り欠き部40の角部は、面取りされていたり、Rが設けられていたりすることも好適である。毛細管流路4の断面は、六角形、円形、楕円形、方形、多角形など様々な断面形状を有していて良い。毛細管流路4の断面形状は、内部貫通孔36の形状と、内部貫通孔36同士の重ね合わせ方により定まる。また、断面積も同様に定まる。
(製造工程)
上部板30、下部板31、中間板32が積層されて接合されることで本体部2が製造される。
製造工程を説明する。
上部板30、下部板31および複数の中間板32(図4では中間板32は4枚である)のそれぞれが同一位置で重なるような位置関係に合わせられる。加えて、複数の中間板32は、複数の中間板32のそれぞれに設けられた内部貫通孔36のそれぞれの一部のみが重なるような位置関係にあわせられる。
上部板30、下部板31および複数の中間板32の少なくとも一つは、接合突起を有している。
上部板30、下部板31、複数の中間板32は、位置あわせされた上で積層され、ヒートプレスによって直接接合されて一体化される。このとき、各部材は、接合突起によって直接接合される。
ここで、直接接合とは、接合しようとする2つの部材の面を密着させた状態で加圧しつつ熱処理を加えることであって、面部の間に働く原子間力によって原子同士を強固に接合させることであり、接着剤を用いることなく、2つの部材の面同士を一体化しうる。このとき、接合突起が強固な接合を実現する。
ヒートプレスにおける直接接合の条件として、プレス圧力は、40kg/cm2〜150kg/cm2の範囲内であり、温度は250〜400℃の範囲内であることが好ましい。
次に、上部板30や下部板31の一部に空けられた注入口38を通じて、冷媒が注入される。その後、注入口38が封止されて本体部2が完成する。なお、冷媒の封入は真空または減圧下で行われる。真空または減圧下で行われることで、本体部2の内部空間が真空または減圧された状態となって冷媒が封入される。減圧下であると、冷媒の気化・凝縮温度が低くなり、冷媒の気化・凝縮の繰り返しが活発になるメリットがある。
(製造された本体部)
以上の製造工程で製造された本体部2について、図6、7を用いて説明する。
図6は、本発明の実施の形態1における本体部の側断面図である。図6から明らかな通り、上部板30、下部板31、複数の中間板32が積層され接合されることで、蒸気拡散路3と毛細管流路4が形成される。また、上部板30は、放熱面15となり、下部板31は受熱面16となる。なお、放熱面15と受熱面16は特段に区別されない。
本体部2の内部空間には冷媒50が封入されている。
蒸気拡散路3は、中間板32の切り欠き部40により形成され、毛細管流路4は、内部貫通孔36により形成される。図6に示されるように、発熱体17の熱により気化した冷媒は、蒸気拡散路3を通じて水平方向に拡散する。凝縮した冷媒は、毛細管流路4を通じて垂直方向もしくは垂直・水平方向に還流する。
図7は、本発明の実施の形態1における本体部を示す写真である。発明者が実際に製造したものの写真である。図7は、本体部2の上部板30を取り外して内部空間を可視状態としたものを示している。本体部2は、切り欠き部40により形成される蒸気拡散路3と内部貫通孔36により形成される毛細管流路4を有している。
ここで、図7より明らかな通り、蒸気拡散路3は、本体部2の略中央部から放射状に形成されている。このため、気化した冷媒は本体部2の内部を水平方向に拡散する。また、毛細管流路4が蒸気拡散路3以外の領域に形成されているので、凝縮した冷媒は、気化した冷媒の拡散を損なうことなく、毛細管流路4を通じて還流する。
以上のように、実施の形態1における本体部2は、水平方向に熱移動を効率よく行う、冷却能力の高いヒートパイプを実現できる。このため、ヒートシンクや冷却ファンなどの二次冷却部材を実装しにくい電子機器内部において、最適に適用できる。
なお、放射状であることに特に限定されるものではなく、蒸気拡散路3は、水平方向に気化した冷媒を拡散できる形状や構造を有していればよい。
なお、実施の形態1における本体部2は、そのサイズが特に限定されるものではないが、実用においては、あるサイズの範囲内であることが適当な場合がある。
一例として、本体部2は、20mm角以上100mm角以下の方形を有し、更に1mm以上5mm以下の厚みを有している。このように規定されるサイズは、冷却対象となる発熱体である電子部品のサイズや電子機器への実装上の容易性などから、導入される。
勿論、本体部2のサイズは、このサイズに限定されるものではなく、製造上の要求、使用上の要求、実装上の要求など、様々な要求に応じて定まればよい。
(自己診断手段)
次に、自己診断手段7について、図8、図9、図10を用いて説明する。
自己診断手段7は、上記の通り説明した本体部2の動作状態を、ヒートパイプの冷却能力を基準として判定する。
図8は、本発明の実施の形態1におけるヒートパイプのブロック図であり、図2と同じ構成要素を有している。図9は、本発明の実施の形態1におけるヒートパイプの側面図であり、図3と同じ構成要素を有している。図9に示されるように、温度検出部位5、6は、本体部2の放熱面15に設置されている。
自己診断手段7は、温度測定部8、比較部9、判定部10を備え、温度検出部位5、6の温度差に基づいて、本体部2の動作状態を判定する。
(温度検出)
温度検出部位5、6では、温度センサーが設置されて、それぞれの部位の温度を温度測定部8に伝える。
温度センサーとしては、市販の温度センサーや熱電対など種々のものが使用されるが、簡単には、例えば本体部2の表面に形成される金属めっきのパターンが利用される。
なお、図8では、温度検出部位は、2箇所であるが、3箇所以上であってもよい。
(温度測定部)
温度測定部8は、温度検出部位5、6での温度差を測定する。温度差の測定においては、温度検出部位5、6のそれぞれでの絶対値での温度を測定し、温度差を測定してもよく、最初から温度差を測定しても良い。
温度測定部8は、温度検出部位5,6の設置位置によって、本体部2の様々な位置での温度差を測定できる。例えば、図8に示されるように、温度測定部8は、本体部2の表面における中央部と周辺部との温度差(水平温度差)を測定する。勿論、温度測定部8は、本体部2の表面における異なる位置である周辺部と周辺部の温度差を測定しても良い。
このように、温度測定部8が、本体部2の特定の位置の絶対温度を測定するのではなく、少なくとも2箇所の温度差を測定するのは、本体部2が冷媒を拡散させることで発熱体を冷却する特性を有しているからである。本体部2のヒートパイプとしての冷却能力は、その拡散性能に依存しているので、拡散能力を測定することで、冷却能力が推測できる。ここで、拡散性能の優劣は、本体部2における異なる位置での温度差で推定できる。
例えば、図8に示されるように、本体部2の表面における中央部と周辺部の温度差が大きいということは、中央部で受熱した熱が水平方向に十分に拡散できてないことを示す。これは、冷却能力が不十分(発熱体の発熱が、冷却能力を超えている)であることを示している。
逆に、本体部2の表面における中央部と周辺部の温度差が小さいということは、中央部で受熱した熱が水平方向に十分に拡散できていることを示す。これは、発熱体の発熱が、本体部2の冷却能力を超えてないことを示している。
このように、実施の形態1における温度測定部8は、本体部2の特定箇所の絶対温度を冷却能力の判定材料として提供するのではなく、本体部2の少なくとも2箇所の温度差を、冷却能力の判定材料として提供する。このように、絶対温度ではなく、少なくとも2箇所以上の温度差に基づいて本体部2の動作状態が判定されることで、冷媒の拡散性能の高いヒートパイプの動作状態の判定がより正確に行える。
温度測定部8は、測定した温度差を、比較部9に出力する。
(比較部)
比較部9は、温度測定部8から受けた温度差を、所定の閾値と比較する。所定の閾値は、ヒートパイプ1に要求される冷却能力、ヒートパイプ1が実装される電子機器の仕様などに応じて定められる。
例えば、あるヒートパイプに対して熱を与えて実験を行い、どの程度の温度差になれば、ヒートパイプの動作が事実上行われていないかを測定しておく。この温度差を基準に閾値を決定すればよい。
所定の閾値は、本体部2の冷却能力が、発熱体の発熱に対して十分であるか否かを決定する基準として用意される。
比較部9は、電気信号として受け取った温度差を、電気信号としてメモリなどに記憶されている閾値と、比較器やAND回路などを用いて比較する。比較の仕方については、種々の公知技術が適用されればよい。
温度測定から比較までについて、簡単に実施する構成の一例を、図10を用いて説明する。図10は、本発明の実施の形態1における温度測定から比較までを行う回路の回路図である。
温度検出部位5、6に、金属めっきのパターンが形成されており、このパターンの出力を、図10に示されるようにオペアンプ60に接続する。パターンから出力される電圧は、温度検出部位5、6での温度に比例するので、オペアンプ60に入力する2つの信号の電圧の差は、温度検出部位5、6での温度差を示している。
オペアンプ60は、入力する2つの信号の電圧差が所定以上であるか否かで異なる信号を出力する。例えば、2つの信号の電位差が所定未満である場合(2箇所の温度差が所定の閾値未満である)には、プラス電位の信号が出力される。逆に、2つの信号の電位差が所定以上である場合(2箇所の温度差が所定の閾値以上である)には、マイナスの電位の信号が出力される。
このように、図10に示される簡便な回路は、本体部2の少なくとも2箇所の温度差を測定した上で、閾値と比較することができる。
(判定部)
次に、判定部10について説明する。
判定部10は、比較部9からの比較結果に基づいて、本体部2の動作状態を、ヒートパイプ1の冷却能力を基準として判定する。より具体的には、発熱体の発熱が、本体部2の(言い換えればヒートパイプ1の)冷却能力を超えているかいないかを、判定部10は判定する。発熱体の発熱が、本体部2の冷却能力を超えている場合には、電子機器の動作不良や故障、ヒートパイプ1自体の動作不良や故障の原因となるからである。
判定部10は、比較結果に基づいて、発熱体の発熱が、本体部2の冷却能力を超えていることを示す信号および本体部2の冷却能力を超えていないことを示す信号のいずれかを、判定結果として出力する。判定結果は、電気信号として出力されれば良い。例えば、判定結果は1ビットの電気信号であるとすると、この電気信号の値が「0」の時には、発熱体の発熱が本体部2の冷却能力を超えていることを示し、電気信号の値が「1」の時には、発熱体の発熱が、本体部2の冷却能力を超えていないことを示す。
判定結果は、信号としてユーザーや電子機器にとって利用が可能となる。
結果として、ユーザーや電子機器そのものは、電子機器やヒートパイプ1の動作不良や故障につながる情報を事前に入手でき、これら動作不良や故障を未然防止できる。
なお、自己診断手段7は、電子回路で構成されて電子基板として本体部2と別体または一体にして提供されれば良い。
また、自己診断手段7は、本体部2の動作状態を、ヒートパイプの冷却能力を基準として判定するが、これはヒートパイプ1そのものの動作状態を、冷却能力を基準として判定することと同義である。
以上のように、実施の形態1におけるヒートパイプにより、ヒートパイプの冷却能力の観点からの動作状態が、正確かつ適切に把握できる。結果として、電子機器やヒートパイプの動作不良や故障が未然防止できる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。
実施の形態2におけるヒートパイプは、本体部2の表面における中央部と周辺部との温度差である水平温度差に加えて、本体部2の表面と裏面の温度差である垂直温度差を用いた、本体部2の動作状態の判定を行う。
図11は、本発明の実施の形態2におけるヒートパイプのブロック図である。
図11に示されるヒートパイプ1では、本体部2の表面である放熱面15と裏面である受熱面16のそれぞれに温度検出部位70、71が設置されている。
温度検出部位70、71での温度差は、温度測定部8により測定される。測定された温度差の取り扱いは実施の形態1で説明したのと同様である。
図11に示されるとおり、発熱体17は、熱的接合材18を介して本体部2の受熱面16と接する。受熱面16の中央部において冷媒が気化し、気化した冷媒は、蒸気拡散路3を通じて水平方向に拡散する。拡散した冷媒は、放熱面15において冷却され凝縮して、毛細管流路4を通じて還流する。このため、本体部2のヒートパイプとしての冷却能力は、放熱面15と受熱面16との温度差によって表すことが可能である。
例えば、発熱体17の発熱に比較して本体部2の冷却能力が不十分である場合には、放熱面15と受熱面16との温度差が大きくなる。これは、冷媒の循環が不十分で、熱移動と放熱が、発熱体17の発熱に追いつかないからである。
逆に、発熱体17の発熱に比較して本体部2の冷却能力が十分である場合には、放熱面15と受熱面16との温度差は小さい。これは、冷媒の循環が十分であって、熱移動と放熱が、発熱体17の発熱に十分追随しているからである。
このように、本体部2の冷却能力を推測するに当たっては、表面の異なる2箇所の温度差(水平温度差)を利用しても良く(この点は、実施の形態1で説明している)、放熱面15と受熱面16との温度差(垂直温度差)を利用しても良い。特に、垂直温度差を利用することで、冷媒の拡散状態のみならず、実際に受熱面で受けた熱が十分に放熱されているかを基準に、判定が行える。このような判定は、冷却能力に基づく動作状態を、水平温度差よりもより直接的に表していると考えられる。このことから、本体部2のヒートパイプの冷却能力を基準とする動作状態が、より適切に判定できる。なお、水平温度差に基づく判定が、正確性や即応性の点で劣るということではない。
温度測定部8は、放熱面15と受熱面16の温度差を測定すると、測定結果を比較部9に出力する。
比較部9は、この垂直温度差を所定の閾値と比較して比較結果を判定部10に出力する。判定部10は、比較結果に基づいて、本体部2の動作状態を、ヒートパイプの冷却能力を基準として判定する。例えば、垂直温度差が所定の閾値以上である場合には、発熱体17の発熱が、本体部2の冷却能力を超えていると判定される。
判定部10は、判定結果を出力し、ユーザーや電子機器が利用できるようにする。
(変形例)
また、水平温度差と垂直温度差を組み合わせた判定が行われても良い。
温度測定部8は、図9に示される本体部2の表面における中央部と周辺部の温度検出部位5、6の温度差である水平温度差と、放熱面15の温度検出部位70と受熱面16の温度検出部位71の温度差である垂直温度差と、を測定する。温度測定部8は、水平温度差と垂直温度差の両方の情報を比較部9に出力する。
比較部9は、水平温度差を所定の第1閾値と比較して、第1比較結果を出力する。更に、比較部9は、垂直温度差を所定の第2閾値と比較して、第2比較結果を出力する。
判定部10は、第1比較結果と第2比較結果を利用して、本体部2の動作状態を、ヒートパイプの冷却能力を基準として判定する。このとき、第1比較結果だけを利用して判定しても良く、第2比較結果だけを利用して判定しても良い。あるいは、第1比較結果と第2比較結果の組み合わせに基づいて、判定部10は、本体部2の動作状態を判定しても良い。
第1比較結果と第2比較結果の組み合わせによる判定は、例えば予め記憶されている判定テーブルに基づいて行われればよい。判定テーブルの一例を(表1)に示す。
なお、表1は、あくまでも一例であり、他の組み合わせ方や判定の仕方があって差し支えない。
表1から明らかな通り、判定部10は、第1比較結果と第2比較結果の組み合わせに基づいて4種類の判定基準を有している。
第1の判定基準では、第1比較結果が第1閾値未満であると共に、第2比較結果が第2閾値未満である場合には、判定部10は、本体部2の動作状態が冷却能力以内であると判定する。
第2の判定基準では、第1比較結果が第1閾値以上であると共に、第2比較結果が第2閾値未満である場合には、判定部10は、本体部2の動作状態が冷却能力以内であると判定する。
第3の判定基準では、第1比較結果が第1閾値未満であると共に、第2比較結果が第2閾値以上である場合には、判定部10は、本体部2の動作状態が冷却能力以内であると判定する。
第4の判定基準では、第1比較結果が第1閾値以上であると共に、第2比較結果が第2閾値以上である場合には、判定部10は、本体部2の動作状態が冷却能力超えであると判定する。
このように、水平温度差と垂直温度差の組み合わせによって判定が行われることで、より精度の高い判定が行われる。組み合わせが利用されると、冷媒の拡散状態と循環状態の両方が考慮されて判定されるので、ヒートパイプの冷却能力を基準として基づいて、本体部2の動作状態がより高い精度で判定できる。
以上のように、実施の形態2におけるヒートパイプは、本体部2の動作状態を、ヒートパイプの冷却能力の視点から、高い精度で判定できる。
(実施の形態3)
次に実施の形態3について説明する。
実施の形態3では、判定部10からの判定結果を受けた処理を有するヒートパイプについて説明する。
図12は、本発明の実施の形態3におけるヒートパイプのブロック図である。図2と同じ符号の要素は、実施の形態1,2で説明したのと同様の機能、構成を有する。
図12におけるヒートパイプ1では、図2で示されるヒートパイプ1に対して、通知部80が追加されている。通知部80は、判定結果を受けてユーザーに注意を通知する。
一般に電子機器を使用するユーザーは、内部での発熱が高くなりすぎて、ヒートパイプよる冷却が足りなくなるような事態になったことに気づくことは困難である。このような事態に気づかないままに使用を続行すると、電子機器の動作不良や故障につながりかねない。そこで、電子機器に含まれる発熱体の発熱が、ヒートパイプの冷却能力を超える状態になったことを、ユーザーに通知することが大事である。
通知部80は、このように、ユーザーに注意喚起を促すために、判定結果に基づいて、注意を通知する。この注意の通知を受けたユーザーは、電子機器の動作を停止させたり、サービスマンを呼んだりするなどの処置ができるので、動作不良や故障が未然に防止できる。なお、注意を通知する際には、発熱体の発熱がヒートパイプの冷却能力を超えたと判定された場合に、ユーザーに注意を促す通知でもよく、発熱体の発熱がヒートパイプの冷却能力以内である場合に、ユーザーに正常状態であることを示す通知でも良い。
通知部80は、ユーザーに対して、発光、映像、音声および振動の少なくとも一つによって、注意を通知する。
図13は、本発明の実施の形態3における電子機器の模式図である。
電子機器82は、カーテレビやパーソナルモニターなどの薄型、小型が要求される電子機器である。
電子機器82は、ディスプレイ83、発光素子84、スピーカ85を備えている。また図示はしていないが振動デバイスも備えている。
通知部80は、このディスプレイ83、発光素子84、スピーカ85を包含するものであり、ディスプレイ83を利用して、発光や映像によりユーザーに注意を通知しても良く、発光素子84を利用して、発光によりユーザーに通知しても良く、スピーカ85を利用して、音声によりユーザーに通知しても良く、振動デバイスを利用して、振動によりユーザーに通知しても良い。
このような種々の態様により注意が通知されるので、ユーザーは、簡単に気づき、その後の処置を適切に取ることができる。例えば、電子機器の動作を停止したり、サービスマンに連絡したりするなどである。
実施の形態3のヒートパイプ1によれば、発熱と冷却とのアンバランスなどの問題が生じたことを、ユーザーは即座に認識できるので、電子機器やヒートパイプの動作不良や故障が、実効的に未然防止できる。
(実施の形態4)
次に、実施の形態4について説明する。
実施の形態4では、判定結果を受けて、電子機器や電子機器に含まれる電子回路を制御するヒートパイプについて説明する。
図14は、本発明の実施の形態4におけるヒートパイプのブロック図である。
図2や図12と同じ符号の要素は、同様の機能や構成を有する。図14に示されるヒートパイプ1は、制御部90を新たに備えている。
制御部90は、判定結果を受けて、ヒートパイプ1が冷却対象としている発熱体を含む電子回路や電子機器の動作を制御する。特に、判定結果が、発熱体の発熱がヒートパイプの冷却能力を超えるとの結果を含んでいる場合には、制御部90は、ユーザーからの処理を待つまでもなく、自動で電子回路や電子機器の動作を制御する。例えば、制御部90は、電子回路への電力供給やクロック信号の供給の少なくとも一方を低減もしくは停止させる。あるいは、制御部90は、リセット信号によって、電子回路の動作を一時的に停止させる。
このような制御によって、電子回路や電子機器の動作不良や故障が未然に防止できる。特に、実施の形態3で説明したように、ユーザーに通知するだけと異なり、自動的に電子機器の停止などが図られるので、より確実安全に、電子機器やヒートパイプの動作不良や故障が未然防止できる。特に、注意の通知を受けたユーザーがその後の処置を忘れるような場合でも、動作不良や故障が未然防止できるメリットがある。
なお、電力供給やクロック信号の供給の制御は、通常に用いられる方法で実現されれば良い。
(実施の形態5)
次に実施の形態5について説明する。
実施の形態5におけるヒートパイプは、本体部2の表面に設けられた感熱センサーからの電気信号を、外部に設けられた自己診断手段7が受け取るために、本体部2が電気配線を有する突出部を備える。
図15は、本発明の実施の形態5におけるヒートパイプのブロック図である。本体部2の側面からは突出部91が突出している。また、本体部2の表面には、設置位置の温度を検出する感熱センサーが取り付けられている。感熱センサーは、検出した温度を電気信号に変えて外部に出力する。突出部91の一部には、電気配線92が設けられており、感熱センサーからの電気信号は、この電気配線92を通じて、自己診断手段7に出力される。
自己診断手段7は、実施の形態1〜4で説明したとおり、本体部2の少なくとも2箇所以上の温度差を測定する温度測定部8、温度差を所定の閾値と比較する比較部9、比較結果に基づいて、本体部2の動作状態を判定する判定部10、判定結果をユーザーに通知する通知部80、判定結果に基づいて電子回路の動作を制御する制御部90を備えている。これらの要素により、自己診断手段7は、本体部2の動作状態を、ヒートパイプの冷却能力を基準として判定し、電子機器やヒートパイプの動作不良や故障を未然防止する。
ここで、感熱センサーや温度センサーなどの電子部品によって、本体部2の温度を検出する場合には、センサーからの電気信号を、自己診断手段7に伝える必要がある。このため、センサーと自己診断手段7が電気的に接続している必要がある。このためには、金属ワイヤで電気接続したり、本体部2の表面そのものに自己診断手段7を構成したりするなどの方法がある。
しかしながら、自己診断手段7は、電子回路や半導体集積回路で実現できるので、電子回路を制御する他の電子回路や半導体集積回路の一部として実現することが適当である。例えば、電子回路を制御するCPUやLSIが存在する場合には、これらCPUやLSIの一部に、自己診断手段7の機能を持たせることが適当である。この場合には、本体部2の表面に自己診断手段7を構成することが難しい。一方で本体部2の表面の温度を検出するセンサーなどは、本体部2の外部に設けることは難しい。勿論、非接触の温度検出装置を使えば、本体部2の外から温度検出を行うことができるが、装置が大掛かりになる問題もある。
このため、本体部2の表面に設置される温度検出のためのセンサーなどと、本体部2と別体で構成されやすい自己診断手段7とを電気的に接続することが必要な場合がある。
図15に示されるヒートパイプ1は、本体部2の側面から突出部91が突出している。突出部91は、本体部2を構成する上部板30、下部板31および中間板32の少なくとも一つが、他よりも面積が大きく、本体部2の側面から突出する。このような突出部91が構成されることで、耐久性が高いベースが、本体部2の側面に形成できる。
突出部91が電気配線92を有することで、この電気配線92を介して、本体部2の表面に設置される温度検出用のセンサーと、外部の自己診断手段7とが電気的に接続できる。
なお、電気配線92は、突出部91の表面もしくは内面に設けられた配線パターンでもよく、突出部91に固定されたフレキシブル基板でもよい。なお、突出部91の電気配線と、センサーとの間は、本体部2の側面や表面に形成された配線パターンや金属ワイヤで電気接続される。
このようにして、突出部91に電気配線92が形成されることで、電気配線92の強度や安定性が確保され、本体部2と自己診断手段7との間の電気接続の信頼性が高まる。結果として、ヒートパイプ1の自己診断機能の信頼性も高まる。
なお、電気配線は、自己診断手段7を電気的に接続するので、温度測定部8、比較部9、通知部10の少なくとも一つを、本体部2表面の温度検出センサーと電気的に接続する。
以上のように、実施の形態5におけるヒートパイプは、高い信頼性と使い勝手の良さを実現できる。
また、実施の形態1〜5で説明されたヒートパイプは、図16に示されるように、密閉された筐体95と、筐体95の内部空間98に格納された発熱体である電子部品96を有する電子基板97と、電子部品96を冷却するように格納されたヒートパイプ1を備える電子機器に好適に適用できる。特に、内部空間が狭小であって、大型のヒートパイプやヒートシンクや冷却ファンといった二次冷却部材を格納できない電子機器に好適に適用できる。図16は、本発明の実施の形態5における電子機器内部を示す模式図である。
なお、自己診断手段7は、ハードウェアで実現されてもソフトウェアで実現されても、ハードウェアとソフトウェアの両方で実現されてもよい。
(閾値の検討)
ここで、比較部9において用いられる所定の閾値について、発明者が実際に行った検討結果について説明する。
ここでは、本体部2をヒートパイプの冷却能力を基準として正常動作であるか、動作不良であるかを判定する基準となる閾値を、ヒートパイプ1と同じ素材で作られた金属板のヒートスプレッダ(熱拡散部材)との比較より検討した。
図17は、閾値検討の実験態様を示す模式図である。
実験に用いたヒートパイプ1は、銅製であり50mm角の面積と所定の厚みを有する。本体部2の構造は、実施の形態1〜5で説明したとおり、蒸気拡散路3と毛細管流路4を有している。
図17に示されるとおり、このヒートパイプ1に、3mm*5mmの大きさを有する熱源を接し、25Wの熱を流入させ、放熱面をスポットクーラーで強制冷却して実験を行った。比較対象となるのは、同じ銅製であって、50mm角の面積とヒートパイプ1と同じ厚みを有する金属板である。これを銅製ヒートスプレッダとする。この銅製ヒートスプレッダにも、ヒートパイプ1に対するのと同一条件の加熱と冷却を行う。
図18は、閾値検討の実験における銅製ヒートスプレッダの温度分布図である。なお、図18では、銅製ヒートスプレッダの表面の温度分布と表面と裏面の温度差が測定された。
図18より明らかな通り、銅製ヒートスプレッダでは、ピーク温度と最高温度との温度差が8K〜10Kほどもあり、非常に大きいことが分かる。表面と裏面では、温度差は29Kにもなる。このように温度差が大きいということは、熱の拡散が不十分である。ヒートパイプ1は、冷媒の拡散により、高い熱拡散効果を有する。このため、ヒートパイプ1の動作不良や機能不全状態の基準は、この図18に示される温度分布である。
図19は、閾値検討の実験における正常動作しているヒートパイプの温度分布図である。なお、図19では、ヒートパイプ1の表面の温度分布と表面と裏面の温度差が測定された。
ヒートパイプ1では、表面の温度差は、2Kと小さく、表面と裏面の温度差も20Kと非常に小さい。図18における銅製ヒートスプレッダとの比較の上でも非常に小さい。このように、正常動作している場合のヒートパイプ1での温度差は、非常に小さい。
図20は、閾値検討の実験におけるヒートパイプの温度分布図である。図20から明らかな通り、表面の温度差は7Kにも達し、表面と裏面の温度差も28Kに達している。この値は、図18で示された銅製ヒートスプレッダの場合にかなり近い。特に、表面温度の温度差が、7Kであるので、これは図18での銅製ヒートスプレッダの場合に近いレベルである。
このように、比較部9において用いられる所定の閾値のうち、水平温度差に対応する第1閾値は、銅製ヒートスプレッダで生じる水平温度差と同等あるいはその水平温度差から定められるのが適当である。一例としては、銅製ヒートスプレッダで生じる水平温度差の約半分を、第1閾値として定める。すなわち、ヒートパイプ1の(本体部2の)水平温度差が、銅製ヒートスプレッダで生じる水平温度差の50%を越えれば、ヒートパイプ1は、動作不良や機能不全に陥っていると考えられる。
図21は、閾値検討の実験におけるヒートパイプの温度分布図である。図21では、表面の水平温度差には特に問題が無いが、表面と裏面の温度差である垂直温度差に問題がある場合が示されている。図21では、水平温度差は2K程度であるが、垂直温度差が26Kにもなっている。この値は、図18で示される銅製ヒートスプレッダでの値に近い。水平温度差が小さくても垂直温度差が大きい場合には、ヒートパイプ1の冷却能力を超えた動作不良状態であると考えられる。
このように、比較部9において用いられる所定の閾値のうち、垂直温度差に対応する第2閾値は、銅製ヒートスプレッダで生じる垂直温度差と同等あるいは垂直温度差から定められるのが適当である。一例としては、銅製ヒートスプレッダで生じる垂直温度差の約半分を第2閾値として定める。すなわち、ヒートパイプ1の(本体部2の)垂直温度差が、銅製ヒートスプレッダで生じる垂直温度差の50%を超えれば、ヒートパイプ1は、動作不良や機能不全に陥っていると考えられる。
以上のように、比較部9で用いられる閾値は、ヒートパイプ1(本体部2)と同一素材、同一形状、同一サイズの板部材での温度差を基準に定められるのが適当である。
無論、他の基準から定められることを除外するものではない。
以上、実施の形態1〜5で説明されたヒートパイプは、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。