以下、本発明のいくつかの実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本発明は、画像の種類に応じて定着尾引き処理が選択される限りにおいて、各実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
従って、モノクロ画像形成装置に限らず、タンデム型又は1ドラム型のフルカラー画像形成装置でも実施でき、記録材搬送ベルトを用いる直接転写方式、中間転写ベルトを用いる中間転写方式でも実施できる。
本実施形態では、トナー像の形成/転写/定着に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。
なお、特許文献1、2に示される画像形成装置、定着尾引き軽減処理、トナーセーブモードに関する一般的な事項については、図示を省略して重複する説明を省略する。説明中、特許請求の範囲で用いた構成名に括弧を付して示した参照記号は、発明の理解を助けるための例示であって、実施形態の部材等に構成を限定する趣旨のものではない。
<第1実施形態>
図1は第1実施形態の画像形成装置の構成の説明図である。
図1に示すように、第1実施形態の画像形成装置100は、感光ドラム1にトナー像形成手段の一例が形成したトナー像を記録材Pに転写して、定着装置8で定着させる多機能型デジタル画像形成装置である。
画像形成装置100は、感光ドラム1の周囲に、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置7を配置している。
像担持体としての感光ドラム1は、矢印R1方向に回転する。
トナー像形成手段の一例である帯電装置2は、帯電ローラを感光ドラム1に従動回転させて、感光ドラムの表面を、例えば−400Vの暗部電位VDへ一様均一に接触帯電させる。電源D3は、直流電圧に交流電圧を重畳した帯電電圧を帯電ローラに印加する。
トナー像形成手段の一例である露光装置3は、画像を走査線に展開した画像情報を用いてON−OFF変調したレーザー光3aを走査して、回転する感光ドラム1の表面に画像の静電像を書き込む。露光された感光ドラム1の表面は、帯電電圧が放電されて例えば−50Vの明部電位VLとなる。
トナー像形成手段の一例である現像装置4は、固定のマグネット4bの周囲で回転する現像スリーブ4aに、負極性に帯電した現像剤Tを穂立ち状態で担持させて、穂先で感光ドラム1を摺擦する。電源D4は、例えば、−250Vの直流電圧Vdcに1KVpp/2.5KHzの交流電圧を重畳した現像電圧を現像スリーブ4aに印加する。これにより、負極性に帯電したトナーTは、現像スリーブ4aから相対的に正極性となった感光ドラム1の明部電位VLの領域へ移動して、静電像が反転現像され、レーザー光3aで書き込んだパターンのトナー像が形成される。
転写装置5は、転写ローラを感光ドラム1に圧接して転写部T1を形成する。記録材収納カセット9に積載された記録材Pは、搬送ローラ13によって搬送経路Bへ1枚づつ引き出されてレジストローラ14で待機する。
感光ドラム1の回転に伴ってトナー像が転写部T1へ搬送され、レジストローラ14は、トナー像にタイミングを合わせて記録材Pを転写部T1へ給送する。
電源D1は、転写ローラに例えば+2KVの直流電圧を印加して、転写部T1を挟持搬送される記録材Pへ感光ドラム1のトナー像を転写する。
クリーニング装置7は、感光ドラム1にクリーニングブレードを摺擦して、転写部T1を通過して感光ドラム1に残った転写残トナーを除去する。
分離装置6は、除電針に例えば−1KVの直流電圧を印加して負極性の帯電粒子を発生させて記録材の裏面に照射する。これにより、記録材Pの余分な正電荷が中和されて記録材Pが感光ドラム1から曲率分離する。
定着装置8は、ヒーター8cを備えた定着ローラ8aに加圧ローラ8bを圧接して定着ニップ部を形成する。
定着装置8は、トナー像を転写された記録材Pを受け入れて、転写ニップ部で挟持搬送する過程で、トナーを加熱・加圧して融解させ、記録材Pの表面へ平らに押し潰して定着させる。
トナー像を定着された記録材Pは、フェイスアップ経路Cを選択すれば側面トレイ16へ排出して積載され、フェイスダウン経路Dを選択すれば上面トレイ15へ排出して積載される。
画像形成装置100は、コピー機能、プリンタ機能、ファクシミリ機能にそれぞれ対応させて、イメージスキャナ10、プリンタ受信装置11、ファクシミリ送受信装置12を備えている。
画像読取手段の一例であるイメージスキャナ10は、幅方向のライン画像の読み取りヘッドを原稿の長さ方向に相対移動させて原稿の画像濃度分布を画像読取する。
受信手段の一例であるプリンタ受信装置11は、ネットワーク通信路を通じて接続された外部のパーソナルコンピュータ等にて作成され、送信されたプリントデータを受信する。
ファクシミリ受信手段の一例であるファクシミリ送受信装置12は、電話通信回線を通じて送信されてきたファクシミリデータを受信する。また、イメージスキャナ10で読み取った画像濃度分布をファクシミリデータに変換して外部へ送信する。
<定着尾引き>
図13は定着尾引き画像の説明図、図14は定着尾引きが発生した状態の説明図、図15は定着尾引きが発生しない状態の説明図である。図16はトナー載り量が多い場合の定着尾引きの説明図、図17はトナー載り量が少ない場合の定着尾引きの説明図である。
図13に示すように、画像形成装置100では、主走査方向の直線LGを記録材Pに画像形成した場合、副走査方向に直線LGの後端のトナーが飛び散って、画像を乱す「定着尾引き」が発生する。定着尾引きは、通常のオフィス環境下でも発生し、特に記録材Pの含水分量が多い高湿環境下で発生し易い。主走査方向は、記録材Pの搬送方向に垂直な方向であり、副走査方向は、記録材Pの搬送方向である。
図14に示すように、定着ニップ部では、記録材Pに対する急激な温度上昇とローラ加圧とによって、記録材P中の水分が爆発的に蒸発して、記録材の搬送方向の上流側に噴き出す。定着尾引きは、直線LGの後端から逃げ出した水蒸気が記録材の搬送方向の上流側(画像後端側)にトナーTを吹き崩してトナーTを飛び散らせる現象である。
定着尾引き発生のメカニズムから、定着尾引きは、記録材Pに含まれる水分量が多い高湿度環境で発生し易い。
定着尾引きは、副走査方向の直線幅が約100〜1000μmの時に発生し易い。
図15に示すように、直線幅が1000μm以上の太い線の場合、記録材Pの水蒸気がトナーTで遮断されて加圧ローラ8b側(未定着トナー担持面の反対側面)へ噴出す傾向となる。このため、定着ローラ8a側(未定着トナー担持面側)へ出てくる水蒸気が少なく、トナーTの後端部を崩すには至らず、定着尾引きが発生しにくい。
直線幅が100μm未満の細い線の場合には、トナーTを崩す水蒸気の力が強くても、線が細いために、崩れるトナー量の絶対量が少ないので、定着尾引きが発生しても、目立ちにくい。
従って、線画像や文字画像の中から副走査方向の幅が約100〜1000μmの画像領域を部分的に選んでドットを間引き、特許文献1に示されるように、トナー像に水蒸気が抜ける多数の隙間を形成する。これにより、トナーTを崩すことなく水蒸気を逃がして定着尾引きを低減できる。第1実施形態では、この処理を第2処理と呼ぶ。
図16の(a)に示すように、トナーTの高さが高い場合、(b)に示すように、定着ニップ部から噴き出す水蒸気によって大量のトナーが崩れるので、定着尾引きがひどくなる。
図17の(a)に示すように、トナーTの高さが低い場合、(b)に示すように、定着ニップ部から噴き出す水蒸気によって少量のトナーが崩れるので、定着尾引きが少なく目立たなくなる。
従って、記録材Pに転写された未定着トナーTの高さを低くすれば、未定着トナーTの高さが高い場合と比較して、トナーが崩れにくく、かつトナーの崩れる量も少なくなって定着尾引きを低減できる。第1実施形態では、この処理を第1処理と呼ぶ。
<第1処理>
図2は現像コントラストが高い場合のトナー像の説明図である。図中、(a)は、現像性能低下処理前の現像電位、(b)は、この設定で形成される記録材P上のトナー像である。
図3は現像コントラストが低い場合のトナー像の説明図である。図中、(a)は、現像性能低下処理後の現像電位、(b)は、この設定で形成される記録材P上のトナー像である。
図1を参照して図2の(a)に示すように、画像形成装置100の元々の設定(デフォルト)では、現像性能低下処理前の電位関係となっている。
暗部電位VDは、帯電装置2によって均一に帯電された帯電電位(非露光部電位)であり、VD=−400Vに設定されている。
明部電位VLは、暗部電位VDに帯電された感光ドラム1の表面を露光装置3が露光して放電させた残りの電位であり、VL=−50Vに設定されている。
現像電位Vdcは、現像装置4の現像スリーブ4aに交流電圧と重畳して印加される直流電圧であり、Vdc=−250Vに設定されている。
現像コントラストVcontは、|VL−Vdc|の差電圧であって、帯電したトナーによって埋められる電荷量を示している。現像コントラストVcontが大きい程、記録材P上のトナー載り量が多くなって定着後の画像濃度が高くなる。
現像バックコントラスト電位Vbackは、|VD−Vdc|の差電圧であって、帯電したトナーを暗部電位VDの非露光部に付着させないための抑止電圧である。
現像バックコントラスト電位Vbackが小さい程、非露光部に少量の過剰帯電トナーが付着する正規カブリが発生し易くなる。現像バックコントラスト電位Vbackが大きい程、非露光部に少量の未帯電トナーが付着する反転カブリが発生し易くなる。
従って、現像バックコントラスト電位Vbackは、小さくても、大きくても非画像部のカブリトナーが増加するので、適正範囲に設定する必要がある。
図2の(b)に示すように、記録材P上の主走査方向に形成された線画像の断面は、現像コントラストVcontが大きい程、記録材P上の未定着トナー像の高さが高くなる。
図1を参照して図3(a)に示すように、現像性能低下処理の設定が行われて、現像性能低下処理後の電位関係が形成される。
暗部電位VD=−350V、現像電位Vdc=−200Vとして明部電位VL=−50Vとする。
これにより、現像バックコントラスト電位Vbackを150Vのままに維持して、現像コントラストVcontを、200V→150Vに小さくする。
図3の(b)に示すように、この設定によって記録材P上に形成された主走査方向の線画像の断面は、図2の(b)の通常設定時に比較して、記録材P上のトナー量が少なくなって、トナー像の高さが低くなる。
従って、図16、図17を参照して説明したように、トナー像高さが低くなるので、定着尾引きが低減される。
なお、図3の(a)に示す現像バックコントラストVbackは、図2の(a)に示す現像バックコントラストVbackと同じく150Vであるから、両者の設定におけるカブリ量は同量である。
図1に示すように、制御部20は、電源D3を制御して暗部電位VDを低下させ、電源D4を制御して現像電位Vdcを低下させる。これにより、現像バックコントラストVbackを維持してカブリ量を同等に抑制したまま、現像コントラストVcontを減少させて記録材P上のトナー量を低減することにより、定着尾引きを低減する。
ただし、現像コントラストVcontを減少させて記録材P上のトナー量を低減すると、画像濃度が低下するデメリットがある。
なお、ここでは、現像コントラストVcontを50V低下させたが、画像形成装置100の構成や定着尾引きの発生状況、画像濃度に応じて、現像コントラストVcontの低下量は異なった値に設定される。現像コントラストVcontの低下量を大きくするほど、記録材P上のトナー量が低減されて定着尾引きの低減効果も大きくなるが、画像濃度も大きく低下する。現像コントラストVcontの低下量を小さくするほど、記録材P上のトナー量が増えて定着尾引きの低減効果は小さくなるが、画像濃度は通常の値に近くなる。
また、暗部電位VD及び現像電位Vdcを変更する他にも、現像性能低下処理としては、暗部電位VD及び現像電位Vdcは固定で、レーザー強度(露光光量)を減少させてもよい。明部電位VLを変更して現像コントラストVcontを小さくすることでも、同様に、記録材P上のトナー量が低減される。この場合にも、カブリ量を同等に維持して記録材P上のトナー量を低減できる。
また、現像バックコントラストVback及び現像コントラストVcontはそのままの固定で、現像ACバイアスの周波数を、例えば2.5KHz→2.8KHzに大きくしても、記録材P上のトナー量を低減できる。
また、現像電圧に印加される交流電圧のVppを、例えば1KV→0.8KVに小さくしても、記録材P上のトナー量を低減できる。
また、現像性能低下処理として、現像性能に係わる他の項目、例えば現像スリーブの回転速度を変更する制御を採用してもよい。
定着尾引き低減処理としての現像性能低下処理をコピー機能及びプリンタ機能に対して共通に適用すると、記録材P上のトナー量が減少して、トナー高さが低くなり、定着尾引きが低減される。
現像性能低下処理は、後述する主走査方向線画像ドット間引き処理と比較して、画像データを間引き処理する必要が無いので、定着尾引き低減のための画像処理時間が短くて済む。
しかし、いずれにせよ、画像濃度を低下させるため、画像濃度が薄くなる画像劣化がある程度は発生してしまう。
<第2処理>
図4は主走査方向線画像ドット間引き処理の説明図、図5は画像ドット間引き処理領域を抽出する操作の説明図、図6は図5の領域で主走査方向線画像ドット間引き処理を実行した結果の説明図である。
第2処理では、画像の全体から抽出した定着尾引きが起き易い部分のみについて、輪郭を残した画像の内側領域に千鳥状の隙間を形成して水蒸気の逃げ道とする。
定着尾引きは、主走査方向の線画像で発生し易く、副走査方向(記録材搬送方向)の線画像では発生しない。このため、定着尾引き低減処理としての画像ドット間引きは、主走査方向の線画像に対して実行し、副走査方向(記録材搬送方向)の線画像に対しては実行しない。
表1は、主走査方向線画像ドット間引き処理の論理の一例であって、主走査方向の線画像の抽出論理と、抽出された線画像における画像ドット間引き処理の論理とを示している。表1中のライン数は、1200dpiでのドット数で記載されている。
表1に示すように、定着尾引き低減処理は、モードX、モードY、モードZの三段階のいずれかに設定される。モードX、モードY、モードZの順に、画像全体から抽出されて画像ドット間引き対象となる画像部分が増え、抽出された画像部分に形成される隙間の数も増えるので、定着尾引きの低減効果は高くなる。
ただし、画像ドットが間引かれる画像部分が増えて画像部分に形成される隙間の数も増えると、画像ドットの間引きが目立ち易くなって、画像品質が低下するデメリットがある。
処理モードYは、画像ドットの間引きライン数(E)は3ライン(以下)であり、間引きラインが最大3ライン、最小1ラインである。
後端(記録材搬送方向上流側端)残ライン数(F)は、3ラインであり、線画像の後端の3ラインは間引かないで後端のエッジラインをそのまま残すので、画像後端の画像欠けが防止される。
先端(記録材搬送方向下流側端)残ライン数(G)は、3ライン以上であり、線画像の先端の3ラインは間引かないで先端のエッジラインをそのまま残すので、画像先端の画像欠けが防止される。
左端残ライン数(I)及び右端残ライン数(J)は、それぞれ3ラインであり、線画像の左右端の3ラインは間引かないで左右端のエッジラインをそのまま残すので、画像左右端の画像欠けが防止される。
処理基準ライン幅(W)は、副走査方向(記録材搬送方向)の画像ドット間引き処理を行う基準のライン幅であり、7ライン以上の幅の線画像を抽出して、先端残ライン数(G)=後端残ライン数(F)=3ラインを残した内側領域で画像ドット間引き処理を行う。
処理基準ライン長(L)は、主走査方向の画像ドット間引き処理を行う基準のライン長であり、7ライン以上の長さの線画像を抽出して、左端残ライン数(I)=右端残ライン数(J)=3ラインを残した内側領域で画像ドット間引き処理を行う。
また、画像ドット間引き処理の画像欠けが発生しにくいように、画像ドット間引き形状は、画像ドット間引きライン数(E)の中で1ドットづつ交互に千鳥状にドットを間引く処理とする。
図4に示すように、主走査方向19ライン(19ドット)、副走査方向11ライン(11ドット)の線画像に対して、処理モードYの主走査方向線画像ドット間引き処理を適用した。黒部は印字ドット、白部は間引きドット(非印字ドット)を示す。
図4に示す19ドット×11ドット画像は、モードYの画像ドット間引き処理前においては、図13で示すような定着尾引きが発生していたが、モードYの画像ドット間引き処理を施すことによって、定着尾引きがほとんど発生しなくなる。
図5に示すように、露光信号K1〜K7を用いて7ラインに走査露光された平行四辺形の線画像K0に対して処理モードYの画像ドット間引き処理を適用した場合を考える。露光信号K1〜K7は、それぞれ主走査方向の1ドットラインにおける画像情報の有無を示しており、凸部が印字部、凹部が非印字部を示している。
表1に示す処理モードYの論理に従って、処理基準ライン幅W、処理基準ライン長LのエリアSが抽出されて画像ドット間引き処理が行われる。
図6に示すように、エリアSについては、画像ドットを間引くのは中心の1ラインのみとなり、1ライン上で1個飛ばしで画像ドットが間引かれる結果となる。処理モードYでは処理基準ライン幅(W)が処理を行う最小の7ラインとなり、先端、後端、左端、右端に3ラインづつを残して千鳥状に画像ドットを間引くからである。
このように、処理モードYの論理で主走査方向の線画像のドットを間引く処理を行うことにより、主走査方向の線画像後端部でのトナー量が減少し、即ち、トナー高さが低くなるので、定着尾引きを低減することができる。
また、処理モードX、処理モードZについては説明を省略する。画像形成装置100の構成や定着尾引きレベル、画像劣化レベル(画像欠けレベル)に応じて、ドット間引き水準が高い(間引きドットの多い)処理モードZ、ドット間引き水準が低い(間引きドットの少ない)処理モードXが選択されて、実行される。
主走査方向線画像ドット間引き処理を、プリンタ機能に適用する場合は、画像品質の低下が目立たないように定めた間引きルールに従って画像ドット間引き処理を行う。
また、線画データでは座標データと属性データ、文字データでは文字コードとフォントデータから画像の輪郭が演算されるため、適正に画像ライン数(ドット数)を把握して、画像の輪郭内の適正な位置に位置決めて画像ドット間引き処理を実行できる。
このため、画像ドット間引き処理の痕跡を目立たせることなく定着尾引きを低減でき、画像濃度の全体的あるいは部分的な低下や、画像の輪郭の欠損等の画像劣化も想定した範囲内に制御される。
しかし、コピー機能を実行する場合に主走査方向線画像ドット間引き処理を適用した場合、イメージスキャナ(10:図1)で原稿画像を読み取る際に、既に画像劣化が発生してしまう。読み取りドットごとの検知誤差や照明誤差に起因して画像の輪郭に実際には存在しない凹凸や濃度ムラが形成される可能性がある。
イメージスキャナ(10:図1)は、主走査方向線画像を線として読み取らず、読み取り解像度のドットの集合として読み取る。このため、線画データや文字データから演算して形成された輪郭の場合に比較して適正に画像ライン数(ドット数)を判別して適正に画像ドット間引き処理を実行することができない。
例えば、コピー機能時において、主走査方向線画像ドット間引き処理の処理を強めて、表1の処理モードZを適用すると、定着尾引きは改善するが、逆に、画像の輪郭に目立つ欠損が発生してしまう。
本発明者の検討によると、プリンタ機能において、外部のパーソナルコンピュータ等からデジタルデータを画像データに変換して、画像形成装置に入力する場合は、主走査方向線画像ドット間引き処理が適正に動作する。CADソフト等の描画ソフトウェアで作成された線画データやワープロソフトを始めとする文書作成ソフトウェアで作成された文字データは、部分的な間引き処理を適正に実施できる。これにより、定着尾引きを効果的に低減でき、かつ通常画像とほぼ同等の全体的な画像濃度を得ることができる。
しかし、コピー機能のように、原稿等のアナログデータを、イメージスキャナ10で読み取る場合、読み取り画像の段階で、イメージセンサのばらつきや照明ムラに起因して画像の輪郭の欠損や濃度ムラが出ている。読み取り画像をデジタルデータに変換して画像データに変換すると、そのような画像の輪郭の欠損や濃度ムラが画像データに含まれてしまう。その結果、主走査方向線画像ドット間引き処理が必要な主走査方向の線画像を適正に認識できない場合が発生して、主走査方向線画像ドット間引き処理がされずに画像形成されてしまい、定着尾引きの発生に至ることもある。
画像の輪郭の欠損や濃度ムラがある画像データでは、描画ソフトウェアで作成された線画データや文書作成ソフトウェアで作成された文字データに比較して、画像ドット間引き処理に膨大な演算時間を要する。にもかかわらず、画像の輪郭の中に適正に画像ドット間引き位置を設定することが難しい。
このため、コピー機能では、主走査方向線画像ドット間引きによる定着尾引き低減処理が効果的に機能しない。
更に、プリンタ機能においても、画像データファイルの種類によっては、主走査方向線画像ドット間引きによる定着尾引き低減処理が適正に動作せず、定着尾引きを低減できない場合がある。イメージスキャナ10で読み取った画像をAdobe(登録商標)社のPDFファイル画像に変換した場合、やはり、読み取り画像の欠陥は、データファイルから再生した画像にそのまま保存されている。
また、イメージスキャナで読み取った画像は、濃度階調に周期的で微細な変動があるため、定着尾引きを低減するための画像処理で追加される微細な隙間のパターンと干渉して、意図しないモアレ干渉パターンの濃度ムラが形成される可能性がある。
また、線画データや文字データであっても、一般的な印刷データ形式やAdobe(登録商標)社のPDFファイル画像などの印刷用網かけ画像データに変換すると、画像全体に渡って網かけ処理が施されて濃度階調に周期的な変動が形成される。このため、網かけ(メッシュ)処理によるトナー像の周期的な起伏が、定着尾引きを低減するための画像処理で追加される微細な隙間のパターンと干渉して、目立つレベルの濃度ムラが形成される可能性がある。
そして、いずれにせよ、このような画像不良は、画像ドット間引きを施した画像部分に集中して発生するため、画像ドット間引きを施さない画像部分との間に実際以上の画像品質差を感じさせてしまう。つまり、「画像ドット間引き処理を必要最小限の画像部分にのみ施す」という主走査方向線画像ドット間引き処理の特徴が、逆に画像の見かけの品質を大きく低下させてしまう。
そこで、コピー機能とプリンタ機能とを備える多機能デジタル画像形成装置において、コピー機能とプリンタ機能とのどちらにおいても、画像劣化が少なく、定着尾引きを効果的に低減できることが望まれている。プリンタ機能において、画像データや画像データファイルの種類に応じて、画像劣化が少なく、定着尾引きを効果的に低減できることが望まれている。
<実施例1>
図7は実施例1の制御のフローチャートである。
図1に示すように、実施例1は、第1実施形態の画像形成装置100において、コピー機能時は第1処理として現像性能低下処理を実行し、プリンタ機能時は第2処理として主走査方向の線画像ドット間引き処理を実行する。これにより、部分的な画質劣化を回避して定着尾引きを効果的に改善する。
(1)コピー機能(第1処理を適用):イメージスキャナ10からの画像情報に基づいた画像を、記録材P上に形成する。
(2)プリンタ機能(第2処理を適用):プリンタ受信装置11がプリントデータを受信し、プリントデータからの画像情報に基づいた画像を、記録材P上に形成する。
(3)ファクシミリ機能(第1処理を適用):ファクシミリ送受信装置12がファクシミリデータを受信し、ファクシミリデータからの画像情報に基づいた画像を記録材P上に形成する。
定着尾引き低減処理としての現像性能低下処理、主走査方向線画像ドット間引き処理は、各々、一長一短があるため、実施例1は、コピー機能及びプリンタ機能に対して異なる定着尾引き低減処理を実行させる。
図1を参照して図7に示すように、選択手段の一例である制御部20は、画像形成信号が画像形成装置100に入力されると(S1)、コピー機能かプリンタ機能かを判断する(S2)。
制御部20は、コピー機能時(S2のコピー機能)、第1処理を実行するように画像形成装置100に指令する(S3)。
制御部20は、図3を参照して説明したように、現像性能低下処理を実行する(S5)。これにより、若干、画像濃度は低下するが、効果的に定着尾引きを改善することができ、画像処理時間も短縮される。コピーボタンを押してから、すぐにコピー画像を得ることができる(S7)。ただし、この現像性能低下処理は、画像濃度が許容範囲内で実施する必要がある。
制御部20は、プリンタ機能時(S2のプリント機能)、第2処理を実行するように画像形成装置100に指令する(S4)。
制御部20は、表1及び図4〜図6で示した例えばモードYの主走査方向線画像ドット間引き処理を実行する(S6)。これにより、効果的に定着尾引きを改善することができ、画像濃度の低下や画像欠け等の画像劣化の無いプリンタ画像を得ることができた(S7)。
なお、ファクシミリ機能は、一般的に、送信側のイメージスキャナで原稿画像を読み取り、通信回線でファクシミリ画像データ送信して、受信した画像形成装置100で画像を形成する。よって、ファクシミリ機能は、コピー機能に非常に近い。
従って、制御部20は、ファクシミリ機能時、定着尾引き低減処理として、コピー機能と同様に、現像性能低下処理を適用する。これにより、効果的に定着尾引きを低減できるので好適である。
以上述べたように、実施例1では、コピー機能とプリンタ機能とを選択的に実行できる画像形成装置100において、コピー機能とプリンタ機能とに応じて、定着尾引き低減処理を選択的に実行する。これにより、画質劣化が少なく、効果的に定着尾引きを改善できる。
より具体的には、コピー機能時は、現像性能低下処理を実行し、プリンタ機能時は、主走査方向線画像ドット間引き処理を実行することにより、画質劣化が少なく、効果的に定着尾引きを改善している。
<実施例2>
図8は起動後の画像処理枚数(耐久枚数)と環境湿度(絶対水分量)とに応じた現像性能低下処理の説明図、図9は起動後の画像処理枚数(耐久枚数)と環境湿度(絶対水分量)とに応じた主走査方向線画像ドット間引き処理の説明図である。
実施例2の制御は、現像装置の帯電性能及び環境湿度に応じて、定着尾引き低減処理の処理レベルを変更する。
図1に示すように、現像装置4を起動した直後は、トナーの帯電量が小さく、起動後の処理枚数が増加するに従って、トナーが現像スリーブ4a上で繰り返し回転してトナーの帯電量が大きくなる。
トナーの帯電量が小さい期間は、記録材Pへの保持力が小さいので、定着ニップ部で水蒸気によるトナーの崩れ量が多くなって、定着尾引きがひどくなり易い。このため、現像装置の起動初期は、定着尾引きが発生し易くなる。
一方、現像装置内での攪拌時間が累積してトナーの帯電量が大きくなると、記録材Pへの保持力が増し、定着ニップ部で水蒸気力によるトナーの崩れ量が小さくなって、定着尾引きが少なくなる。このため、起動初期と同じ画像でも、その後、現像装置の耐久枚数が増加するに従って、定着尾引きが発生しにくくなる。
また、記録材Pの含水分量に応じて、定着尾引きの発生状況は大きく変化し、低湿環境下においては、記録材Pの含水分量が少ないので、定着ニップ部で発生する水蒸気も少ない。このため、トナーが崩れる量が少なくなって定着尾引きレベルが発生しにくい。
一方、高湿環境下においては、記録材Pの含水分量が多いので、定着ニップ部で発生する水蒸気が多くなり、同じ画像でも低湿環境下に比較してトナーが崩れる量が多くなって定着尾引きが発生し易くなる。
従って、第2実施形態では、現像装置4を起動した直後(耐久初期)又は高湿環境下では、定着尾引き低減処理の処理レベルを高くする。そして、耐久枚数が増加するに従い、又は湿度が低くなるに従い、定着尾引き低減処理の処理レベルを低くする。これにより、耐久初期又は高湿環境下では、定着尾引きを効果的に改善し、耐久枚数が増加するに従い、又は湿度が低くなるに従い、画質劣化を小さくする。
具体的には、コピー機能時の現像性能低下処理において、耐久初期又は高湿環境下では、例えば現像コントラストVcontを50V減少させる。そして、耐久枚数の増加又は湿度の低下に従って、現像コントラストVcontを30V減少、10V減少という具合に、定着尾引き低減処理の処理レベルを低下させる。
従って、現像装置の連続運転時間が長い場合又は低湿環境においては、画像濃度低下が小さくなるので、より高画質な画像を得ることができると同時に、定着尾引きレベルは改善した状態を維持できる。
一方、プリンタ機能時の主走査方向線画像ドット間引き処理において、耐久初期又は高湿環境下では、例えば表1に示す処理モードZで線画像ドット間引き処理を行う。そして、耐久枚数の増加又は湿度の低下に従って、表1に示す処理モードY、処理モードXへと線画像ドット間引き処理のレベルを低下させる。
従って、現像装置の連続運転時間が長い場合又は低湿環境においては、画像欠けが小さくなるので、より高画質な画像を得ることができると同時に、定着尾引きレベルは改善した状態を維持できる。
実施例2では、耐久枚数と環境湿度とを組み合わせて、定着尾引き低減処理の処理レベルを変更している。
図8に示すように、第1処理(現像性能低下処理)では、環境湿度及び耐久枚数に応じて、現像コントラストVcontの低下量を変化させる。
コピー機能時の現像性低下処理において、耐久枚数と絶対水分量との組み合わせで決定される現像コントラストVcont低下量を用いて、定着尾引きレベルに応じた現像性能低下処理を実行する。従って、高画質で定着尾引きが改善した画像を得ることができる。0イメージ、5Kイメージ、10Kイメージの間の枚数においては、線形補間して、Vcontを決定すると良い。
図9に示すように、第2処理(主走査方向線画像ドット間引き処理)では、環境湿度及び耐久枚数に応じて、画像ドット間引き処理の処理モードを変更する。
プリンタ機能時の主走査方向線画像ドット間引き処理において、耐久枚数と絶対水分量で決定される処理モードを用いて、定着尾引きレベルに応じた主走査方向線画像ドット間引き処理を実行する。従って、高画質で定着尾引きが改善した画像を得ることができる。図中の処理モードレベルにおける0は線画像ドット間引き処理無し、1は表1の処理モードX、2は表1の処理モードY、3は表1の処理モードZである。そして、レベル1からレベル3に行くに従い、線画像ドット間引き処理のレベルが高く(間引きドットが多く)なる。処理モードレベルは、線形補間できないので、所定の枚数(イメージ)になると段階的に処理モードレベルを変更する。絶対水分量が13(g/Kg)の場合、0〜4999イメージは処理モードレベル2を実行し、5000〜9999イメージは処理モードレベル1を実行し、10000イメージ以降は処理モードレベル0を実行する。
図8、図9中、耐久枚数の0、5K(5000)、10K(10000)は、A4画像を1イメージと計算した連続画像形成枚数であり、A4両面1枚は、2イメージと計算し、A3片面1枚は、2イメージと計算する。
絶対水分量は、温度と湿度、気圧から計算される空気1kg中の水分量(g/kg)である。温度と湿度は、画像形成装置に配置した環境(温度・湿度)センサ(21:図1)により検知される。気圧は、一般的な数値が制御部(20:図1)に記憶されており、絶対水分量の計算に使用される。
なお、記録材の含水分量を実際に測定することが最も好適である。しかし、画像形成装置100の製造コストや機内スペースの点から困難なため、実施例2では、記録材Pの含水分量と略比例関係にある周囲環境の絶対水分量を用いた。
また、実施例2で説明した定着尾引き低減処理の処理レベルの変更値は一例であり、耐久枚数、絶対水分量等の設定値は、画像形成装置や定着尾引きレベルに応じて、任意に設定すればよい。
以上説明したように、実施例2では、現像装置4の耐久枚数、環境湿度、又はその両方とに応じて、定着尾引き低減処理の処理レベルを変更する。これにより、効果的に定着尾引きを低減しつつ、画像濃度低下や画像欠陥が少ない高画質で出力できる。
<実施例3>
図10はコピー機能における文字モードと写真モードの説明図である。
実施例3の制御では、コピー機能において、文字モードや写真モード等の画像形成モードに応じて、第1の定着尾引き処理の処理レベルを変更する。
図1を参照して図10に示すように、イメージスキャナ10で原稿を読み込んだ原稿濃度信号は、画像形成装置100で画像を形成する時の画像濃度信号へ濃度階調を変換される。
コピー機能においては、画像形成に際して、太線で示す写真モードと、細線で示す文字モードとを選択して設定可能である。
写真モード時は、画像濃度が緩やかに変化して、写真等のグラデーションが滑らかに形成されるように、原稿濃度に対して、変換曲線は傾きが小さく設定されている。このため、写真モード時は、濃度最大値の領域が少なく、画像濃度の高い部分、即ち、トナー高さが高い領域が少なくなり、定着尾引きレベルは発生しにくい。
文字モード時は、画像濃度の二値化度を高めて、白と黒のコントラストを強くして、文字がはっきりと明確に見えるように、原稿濃度に対して、変換曲線は傾きが大きく設定されている。このため、文字モード時は、濃度最大値(255)の領域が多く、画像濃度の高い部分(トナー高さが高い領域)が多くなり、定着尾引きは発生し易くなる。
つまり、現像性能低下処理では、画像形成モード(画像処理)に応じて、定着尾引きレベルが変化する。このため、実施例3では、画像形成モード(画像処理)に応じて現像性能低下処理の処理レベルを変化させる。
具体的には、現像性能低下処理を、文字モード時は、現像コントラストVcontを50V低下させ、写真モード時は、現像コントラストVcontを30V低下させている。これにより、文字モード時、及び写真モード時の両方において、効果的に定着尾引きを改善し、画像濃度低下も最小限に抑えることができた。
実施例3では、現像性能低下処理として、現像コントラストVcontを変化させる制御を説明したが、現像性能低下処理として、現像スリーブ4aに印加する交流電圧の周波数やVppを変化させる制御としてもよい。いずれにせよ、画像形成モードに応じて、現像性能低下処理レベルを変更することにより、同様な効果が得られる。
以上説明したように、実施例3においては、コピー機能の画像形成モード(画像処理)に応じて、現像性能低下処理の処理レベルを変更する。これにより、画像濃度低下の少ない、定着尾引きを効果的に改善した画像を得ることができる。
<実施例4>
図11はプリンタ機能における像域分離の説明図である。
実施例4は、プリンタ機能において、画像データを判別して1枚の画像内で、線画像、文字画像、写真画像等の像域を分離して認識し、各像域にそれぞれ異なる第2処理の処理レベルを設定する。
図11に示すように、プリンタ機能では、線画像の像域、文字画像の像域、写真画像等の像域が分離して認識される。1枚の記録材Pに出力される画像の中で像域分離を行って、写真(image)、線画(graphic)、文字(character)に画像データを分離する。
ここで、写真(graphic)は、一般的に線画像が少なく、ベタ部やハーフトーン等のドット部が多いので、定着尾引きは発生しにくい。そして、写真画像のドットを過度に間引くと、画像濃度の乱れとなって画像欠陥が目立つという問題が発生する。従って、写真画像の像域では、定着尾引き低減処理の処理レベルは低くて良いので、実施例4では、主走査方向線画像ドット間引き処理として表1の処理モードXを用いる。また、場合によっては、定着尾引き低減処理を実行しなくても良い。よって、実施例4では、ドット間引きを最小限に抑えて、写真部の画像劣化が少なく、定着尾引きも少ない画像が得られる。
一方、線画や文字画像は、一般的に写真画像に比較して直線が多い分、定着尾引きが発生し易くなる。
線画(graphic)は、直線が特に多くて定着尾引きが特に発生し易いので、実施例4では、線画像の像域に対しては、処理レベルを高く設定した主走査方向線画像ドット間引き処理として、表1の処理モードZを適用する。よって、実施例4では、主走査方向の直線においても効果的に定着尾引きを改善できる。
文字(character)は、定着尾引きレベルは中程度なので、実施例4では、処理レベルを中程度とした主走査方向線画像ドット間引き処理として、表1の処理モードYを用いる。よって、実施例4では、文字の欠けが発生せず、効果的に定着尾引きを改善できる。
実際に、プリント機能において、像域分離を行い、各像域に応じて、前記の処理モードX、Y、Zを実行することにより、画像劣化の少ない、定着尾引きが改善した画像を得ることができた。
実施例4では、表1の処理レベルの異なる処理モードを使用したが、各像域に適した論理による他の処理モードを、任意に使用しても良い。
以上説明したように、実施例4においては、プリンタ機能の像域分離機能を用いて、画像データを各像域に分離し、さらに各領域に応じて、主走査方向線画像ドット間引き処理の処理レベルを変更する。これにより、各像域の特性に応じて、画像劣化の少ない、効果的に定着尾引きを改善した画像が得られる。
<実施例5>
図12は画像データの種類に応じて定着尾引き低減処理を切り替える制御のフローチャートである。
実施例5では、プリンタ機能において、画像データ、又は画像データファイルの種類に応じて、第1処理と第2処理とを切り替える。
図1に示すように、画像形成装置100は、イメージスキャナ10で読み込んだ画像を画像ファイルとして、メール機能により、パーソナルコンピュータに送信する機能を持つ。また、不図示の外部装置のイメージスキャナで読み込んだ画像を、画像ファイルとして、パーソナルコンピュータに保存する場合もある。
このような画像ファイルとしては、一例として、Adobe(登録商標)社のPDF(登録商標)ファイル(*.pdf)がある。PDF(登録商標)ファイルは、印刷するためにパーソナルコンピュータから画像形成装置に送信すると、プリンタ機能として画像が形成される。しかし、このPDF(登録商標)ファイルの画像データは、画像形成装置100のイメージスキャナ10で読み込んだ画像であるため、コピー機能として印刷した場合と同様である。
従って、このPDF(登録商標)ファイルをプリンタ機能として印刷する際に定着尾引き低減処理として主走査方向線画像ドット間引き処理が適用されてしまうと、定着尾引き低減処理が効果的に機能しない。原稿上の主走査方向の線を、適正に線と認識できない不具合が発生して、適正に画像ドット間引き処理を実行できないからである。
よって、実施例5では、Adobe(登録商標)社のPDF(登録商標)ファイル(*.pdf)を認識すると、コピー機能に適用される現像性能低下処理を適用している。
図12に示すように、実施例5では、図7に示すプリンタ機能のフローにおいて、Adobe(登録商標)社のPDF(登録商標)ファイル(*.pdf)を認識するステップ(S10)を追加している。これ以外の処理は、図7を参照して説明したとおりであるので、図7と共通の符号を付して重複する説明を省略する。
図1を参照して図12に示すように、画像形成しようとする画像データがPDF(登録商標)ファイルである場合(S10のYES)、コピー機能に適用される第1の定着尾引き処理を指令する(S3)。
従って、プリント機能においても、PDF(登録商標)ファイルに関しては、第1処理としての現像性能低下処理が実行されるので、定着尾引きを効果的に改善することができる。
実施例5では、プリント機能であっても現像性能低下処理を適用する画像データファイルとして、Adobe(登録商標)社のPDF(登録商標)ファイル(*.pdf)を例として挙げた。しかし、他のイメージスキャナで読み込んだ画像データファイルに適用しても効果は同様である。
なお、実施例5では、プリント機能において、印刷用網かけ画像に変換された画像データファイルを用いて画像形成する場合に、データのファイル形式を判別する実施形態を説明した。しかし、プリント機能において、上述した輪郭の凹凸や濃度ムラがある場合を印刷用網かけ画像と判別することにより、印刷用網かけ画像か否かを画像データ自体から識別してもよい。
イメージスキャナ10で読み込んだ画像データは、自動的に第1処理を実行し、各種のアプリケーションソフトで作成した画像データは、第2処理を実行する制御としてもよい。
以上説明したように、実施例5では、プリンタ機能において、画像データ、又は画像データファイルの種類に応じて、現像性能低下処理と主走査方向線画像ドット間引き処理とを選択的に実行する。これにより、イメージスキャナで読み込んだ画像を、プリンタ機能で出力する場合においても、効果的に定着尾引きを改善できる。
<実施例6>
実施例6は、通常モードとトナーセーブモードとを切り替えて実行可能な画像形成装置100において、トナーセーブモード設定時には、定着尾引き低減処理を実行しない。
トナーセーブモードは、本発明で説明した定着尾引き低減処理と同様に、現像性能を低下させる方法(特開2003−29576号公報)と、画像ドットを間引く方法(特開2002−51200号公報)とが知られている。
トナーセーブの方法としては、他にも、現像スリーブに印加する直流電圧Vdcを通常より低下させ、静電像に対するトナー付着量を低下させて画像濃度を低下させる。レーザー光出力を下げる、帯電装置2に印加する直流電圧を下げる、二値画像データの黒レベルと白レベルの中間レベルで記録する等も提案されている。(特開2000−242139号公報、特開平5−158293号公報、特開平10−319789号公報、特開平10−6560号公報)
また、マスクパターン等を用いて所定の論理に基づく画像ドットの間引き処理を行ってトナーセーブモードを行うことも提案されている(特開2000−155504号公報、特開2002−51200号公報、特開平9−323448号公報)。
また、コピー時においては、プリンタエンジンのバイアス電圧を変更処理又は露光強度変更処理を行う。また、プリンタ時においては、特定の印字ドットを所定の論理に基づいて間引き処理してトナーセーブモードを行うことも提案されている(特開2003−29576号公報)。
トナーセーブモードは、通常モード時とは異なり、トナーセーブモード設定時、又はトナー残量が少ない時、等の特殊な場合の構成に関する提案であり、通常画像よりも画像濃度が低くなってしまう。さらに、定着尾引き低減処理は、主走査方向の線画像ドットを間引く処理であるが、トナーセーブモード時は、主走査方向及び線に限定せず、主走査方向及び副走査方向の画像ドットを一様一律に間引く処理が一般的である。
トナーセーブモードは、一般的に、出力する画像のレイアウトを確認するためのテスト印刷に使用され、実際の出力画像は通常モードにて印刷が行われる。
図1に示すように、画像形成装置100は、記録材P上のトナー量を減少させて、トナーを節約するトナーセーブモードを備えている。画像形成装置100は、トナーをセーブするトナーセーブモードと、トナーをセーブしない通常モードとを選択的に設定可能である。また、トナー残量が少ないことを検知すると、自動的にトナーセーブモードに切り換えて印刷を完了させる。トナーセーブモードは、トナー節約率を、10%節約、30%節約、50%節約と、多段階の節約率にユーザーが設定できる。
第1実施形態の画像形成装置100における第1処理又は第2処理にこのようなトナーセーブモード処理を加算すると、設定したトナー節約率に対して誤差が大きくなる。
主走査方向線画像ドット間引き処理は、特定の画像部分のみでドットを間引く処理であるから、画像によっては、ドットを間引く画像と間引かない画像とがある。そして、環境湿度や耐久枚数に応じて、主走査方向線画像ドット間引き処理の処理レベルを異ならせている。
このため、トナーセーブモードのように、画像全体で一律一様に画像ドットを間引く処理を加算すると、トナー節約率が目標として設定した数値から外れて、誤差が大きくなって、所望のトナー節約率に収束できない。主走査方向の線画像に対して過度に画像ドットが間引かれて、画像劣化が著しくなる可能性が出てくる。
また、主走査方向線画像ドット間引き処理にトナーセーブモードの画像ドット間引き処理を加算すると、二重の演算処理が重なって画像データ処理が複雑になり、画像データ処理に時間がかかる。よって、制御部20に必要なメモリ容量が大きくなる、制御部20の処理演算速度を上げる必要がある等のコストアップ要因を招く。
また、定着尾引き低減処理としての現像性能低下処理に、トナーセーブモードとしての現像性能低下処理を加算すると、過度に現像性能を低下させる結果となって、著しい画像品質の低下が発生する可能性が出てくる。
従って、実施例6においては、トナーをセーブするトナーセーブモードを設定した時には、定着尾引き低減処理を実行しない。これにより、トナー節約率の誤差、画像データ処理時間の延長、著しい画像劣化等を防止することができ、コストアップ要因も解消される。そして、トナーをセーブしない通常モードの設定時には、定着尾引き低減処理を実行することにより、定着尾引きを低減できる。