JP5157975B2 - 車両の吸気量演算装置及びアイドル回転数制御装置 - Google Patents
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Description
そこで、パージ時と非パージ時とで制御値を別々に記憶する技術が考案される。なお、パージ時と非パージ時とで別々の制御値を用いる技術思想は、例えば以下に示す特許文献1に開示されている。
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、エンジンに実際に導入される実吸気量を高精度に演算することができるようにした車両の吸気量演算装置を提供することを目的とするとともに、アイドル回転数を制御する際に必要とされる記憶容量を抑制しながらアイドル回転数を安定して制御することができるようにした車両のアイドル回転数制御装置を提供することを目的とする。
また、本発明の車両のアイドル回転数制御装置によれば、目標吸気量をパージ時と非パージ時とで別々に記憶せず、パージ時と非パージ時とで同一の目標吸気量を記憶手段に記憶するので、記憶容量を抑制して実吸気量を演算することができる。そして、その実吸気量と目標吸気量との差分を学習するが、その学習値もパージ時と非パージ時とで同一であるので、記憶容量をより抑制することができる。そして、この学習値により、アイドル回転数を安定して制御することができる。
[第1実施形態]
図1〜図5を参照して、本発明の第1実施形態の車両の吸気量演算装置を備えたアイドル回転数制御装置について説明する。
<構成>
車両は、図1に示すように、駆動源としてのエンジン1と、エンジン1に供給される燃料を貯留する燃料タンク20と、燃料タンク20で発生した蒸発燃料を捕集するキャニスタ21とを備えている。そして、図2に示す本実施形態の吸気量演算装置40を備えたアイドル回転数制御装置60が、この車両に設けられている。
上記吸気通路3には、上流側から順に、車外から導入される空気を濾過するエアクリーナ7,その空気の量(吸気量)を調整する電子制御式のスロットル弁(吸気量調整弁)8、及び、サージタンク9を有するインテークマニホールド10が設けられている。スロットル弁8には、スロットル弁8の開度情報TPSを検出するスロットル開度センサ(開度情報検出手段)8aが設けられている。
パージ通路30には、パージ通路30を開閉するパージ制御弁31が設けられている。このパージ制御弁31が開放されたときに、キャニスタ21に捕集された蒸発燃料がパージ空気とともにパージ通路30を通って吸気通路3へとパージされ、燃焼室2で燃焼されるようになっている。また、パージ制御弁31の開度は、後述する制御部63によってデューティ制御されるようになっている。
吸気量演算装置40は、CPUとメモリとを有する電子制御ユニット(ECU;Electronic Control Unit)で構成されたアイドル回転数制御装置60の一部であって、パージ時であっても非パージ時であってもエンジン1の燃焼室2に実際に導入される実吸気量QAを正確に演算するようになっている。
体積効率=新気量(volume)/行程容積
体積効率係数KVE=体積効率×(大気圧Pa/インマニ圧Pb)
充填効率ηC=体積効率×大気圧補正係数KBP×吸気温補正係数KAT
なお、大気圧補正係数KBPは次のように表される。
標準大気の状態とはJIS規格の101.3kPa,20℃,湿度60%の状態であって、標準大気圧Pa0=101.3kPaである。そして、充填効率ηC(ηC1)は、後述の数式(1)のように体積効率係数KVEに関する式として書き換えることができる。
係数設定部42は、大気圧センサ15の検出した大気圧Paに基づき大気圧補正係数KBPを設定し、また、吸気温センサ13の検出した吸気温Tに基づき吸気温補正係数KATを設定するようになっている。
パージ空気量算出部44は、第1充填効率算出部(第1充填効率算出手段)44aと、第2充填効率算出部(第2充填効率算出手段)44bと、減算部(差分算出手段)44cとを有している。
ηC1=KVE×(Pb/Pa0)×KAT・・・(1)
減算部44cは、第1充填効率算出手段44aの算出した第1充填効率ηC1から第2充填効率算出部44bの算出した第2充填効率ηC2を減算するようになっている。またその後、下記の数式(2)に基づき、その減算した値(差分)にエンジンの排気量Vexh及びエンジン回転速度Neを乗じて、パージ空気の量QPを算出するようになっている。
QP=(ηC1−ηC2)×Vexh×Ne/(S×t)・・・(2)
QN(n)={K×QN(n−1)+(1−K)×VN2}×KAT×KBP・・・(3)
実吸気量設定部47は、正吸気量算出部45の算出した正吸気量QN(n)をそのまま実吸気量QAとして設定するようになっている(QA=QN(n))。
アイドル回転数制御装置60は、吸気量演算装置40に加えて、記憶部(第2記憶手段)61と、学習部(学習手段)62と、制御部(制御手段)63とを有している。
学習部62は、メモリにプログラムとして記録されて構成されたものであって、記憶部61に記憶された目標吸気量QTと実吸気量算出部46の算出した実吸気量QAとの差分、及び、目標吸気量QTと実吸気量設定部47の設定した実吸気量QAとの差分を同一の学習値(アイドル吸気量補正学習値)として学習するようになっている。
<作用・効果>
本発明の第1実施形態に係るアイドル回転数制御装置は上述のように構成されているので、以下のような作用・効果がある。
まず、ステップA10では、係数設定部42が、吸気温センサ13の検出した吸気温Tに基づき吸気温補正係数KATを設定するとともに、大気圧センサ15の検出した大気圧Paに基づき大気圧補正係数KBPを設定する。そして、正吸気量算出部45が、記憶部41から第2マップを呼び出し、スロットル開度センサ8aの検出したスロットル開度情報TPSとクランク角センサ14の検出したエンジン回転速度Neとに基づき第2基本吸気量VN2を算出する。続いて、この第2基本吸気量VN2と前回の演算周期で演算した正吸気量QN(n−1)と係数設定部42の設定した吸気温補正係数KAT及び大気圧補正係数KBPとに基づき、今回の正吸気量QN(n)を算出する。
ステップA30では、パージ空気量算出部44の第1充填効率算出部44aが、記憶部41から第1マップを呼び出し、クランク角センサ14の検出したエンジン回転速度Neと吸気圧センサ12の検出したインマニ圧Pbとに基づき体積効率係数KVEを算出する。続いて、体積効率係数KVEにインマニ圧Pbを標準大気圧Pa0で除したインマニ圧補正項を乗じ、さらに吸気温補正係数KATを乗じて第1充填効率ηC1を算出する。算出後はステップA40に進む。
ステップA50では、実吸気量算出部46が、ステップA10で算出した正吸気量QN(n)とステップA40で算出したパージ空気量QPとを加算して実吸気量QAを算出する。算出後はステップA70に進む。
ステップA70では、アイドル回転数制御装置60が、ステップA50で算出した又はステップA60で設定した実吸気量QAから目標吸気量QTを減算して、学習値を算出する。
このように、本実施形態に係るアイドル回転数制御装置60によれば、吸気通路3におけるパージ通路30が接続されるパージ位置よりも下流側のインマニ圧Pbに基づきパージ空気量QPを算出するので、パージ制御弁31の個体ばらつきが反映されたパージ空気量QPを算出することができる。そして、そのようなパージ空気量QPを用いることで、エンジン1の燃焼室2に実際に導入される実吸気量QAを高精度に演算することができる。
次に、図6〜図8を参照して、本発明の関連技術の車両のアイドル回転数制御装置について説明する。なお、本関連技術においては、吸気量演算装置40が吸気量演算装置50に変更されている点を除いては第1実施形態と構成上の差異はないため、吸気量演算装置50以外の構成要素については説明を省略する。
図6に示すように、本関連技術の吸気量演算装置50は、記憶部(記憶手段)51と、係数設定部(係数設定手段)52と、判断部(判断手段)53と、パージ空気量算出部(パージ空気量算出手段)54と、正吸気量算出部(正吸気量算出手段)55と、実吸気量算出部(実吸気量算出手段)56と、実吸気量設定部(実吸気量設定手段)57とを有している。記憶部51はメモリに設定された記憶領域として構成され、係数設定部52,判断部53,パージ空気量算出部54,正吸気量算出部55,実吸気量算出部56及び実吸気量設定部57はメモリにプログラムとして記録されて構成されている。また、吸気量演算装置50には、各種センサ8a,11〜15の検出した情報TPS,VN1,Pb,T,Ne,Paが入力されるようになっている。
判断部53も、第1実施形態の判断部43と同様に、パージ制御弁31の開閉に基づき、パージ中であるか否かを判断するようになっている。
圧力比算出部54aは、大気圧センサ15の検出した大気圧Paと、吸気圧センサ12の検出したインマニ圧Pbとの圧力比Pb/Paを算出するようになっている。
パージ流速算出部54bは、記憶部51から第3マップを呼び出し、圧力比算出部54aの算出した圧力比Pb/Paに基づき、パージ通路30を流れるパージ空気の流速fvを算出するようになっている。
QP=fv×fs×KAT×KBP・・・(4)
ここで、数式(4)中の開口面積fsについて詳述する。本関連技術のパージ制御弁31としては、開度を細かく調整できるものではなく、全開か全閉かを制御する(すなわち、オンオフ制御する)ソレノイドバルブが用いられている。このようなパージ制御弁31に対し、パージ空気量QPの調整は、一定時間内でのパージ制御弁31の開閉比率(デューティ比)を制御することで行なわれる。そのため、上記開口面積fsは、全開時の実際の開口面積にデューティ比を乗じることで求められるようになっている。なお、パージ制御弁31として開度を細かく調整できるものが用いられていても良く、その場合にはその開度に応じた開口面積を数式(4)に代入すると良い。
そして、前述の数式(3)に基づき、前回の演算周期で演算した正吸気量QN(n−1)に第1重み付け係数K(0≦K≦1)を掛けた値と、第2基本吸気量VN2に第2重み付け係数(1−K)を掛けた値とを加算し、さらに、その加算値を大気圧補正係数KBP及び吸気温補正係数KATで補正して、今回の正吸気量QN(n)を算出するようになっている。
実吸気量設定部57は、第1実施形態の実吸気量設定部47と同様に、正吸気量算出部55の算出した正吸気量QN(n)をそのまま実吸気量QAとして設定するようになっている(QA=QN(n))。
本発明の関連技術に係るアイドル回転数制御装置は上述のように構成されているので、以下のような作用・効果がある。
アイドル回転数制御装置60′は、図7のフローチャートに示す手順により、アイドル回転数を制御するための学習値を算出する。
ステップB30では、パージ空気量算出部54が、記憶部51から第3マップを呼び出し、吸気圧センサ12の検出したインマニ圧Pb及び大気圧センサ15の検出した大気圧Paの圧力比Pb/Paとに基づき、パージ流速fvを算出する。続いて、このパージ流速fvに開口面積fs,吸気温補正係数KAT及び大気圧補正係数KBPを乗じて、単位時間当たりのパージ空気量QPを算出する。算出後はステップB40に進む。
ステップB50では、実吸気量設定部57が、ステップB10で算出した正吸気量QN(n)を実吸気量QAとして設定する。設定後はステップB60に進む。
このような本関連技術に係るエンジントルク演算装置60′によっても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
例えば、上記実施形態では、空気導入通路23に大気圧センサ15を設け、この大気圧センサ15を利用して大気圧Paを検出したが、大気圧センサ15を設ける位置はこれに限定されない。また、このように大気圧センサ15を特に設けることなく、吸気圧センサ12を利用して大気圧Paを検出しても良い。これは、エンジン始動前のインマニ圧Pbは大気圧Paに略等しいことによる。そこで、吸気圧センサ12によりエンジン始動直前のインマニ圧Pb0を検出し、この値を大気圧Paとしても良い。
2 燃焼室
3 吸気通路
4 排気通路
5 吸気バルブ
6 排気バルブ
7 エアクリーナ
8 スロットル弁(吸気量調整弁)
8a スロットル開度センサ(開度情報検出手段)
9 サージタンク
10 インテークマニホールド
11 エアフローセンサ(吸気量検出手段)
12 吸気圧センサ(吸気圧検出手段)
13 吸気温センサ(吸気温検出手段)
14 クランク角センサ(エンジン回転速度検出手段)
15 大気圧センサ(大気圧検出手段)
20 燃料タンク
21 キャニスタ
22 ベーパ通路
23 空気導入通路
30 パージ通路
31 パージ制御弁
40,50 吸気量演算装置
41,51 記憶部(第1記憶手段)
42,52 係数設定部(係数設定手段)
43,53 判断部(判断手段)
44,54 パージ空気量算出部(パージ空気量算出手段)
44a 第1充填効率算出部(第1充填効率算出手段)
44b 第2充填効率算出部(第2充填効率算出手段)
44c 減算部(差分算出手段)
54a 圧力比算出部(圧力比算出手段)
54b パージ流速算出部(パージ流速算出手段)
54c 乗算部(乗算手段)
45,55 正吸気量算出部(正吸気量算出手段)
46,56 実吸気量算出部(実吸気量算出手段)
47,57 実吸気量設定部(実吸気量設定手段)
60,60′ アイドル回転数制御装置
61 記憶部(第2記憶手段)
62 学習部(学習手段)
63 制御部(制御手段)
fv パージ流速
fs パージ制御弁の開口面積
KVE 体積効率係数
Ne エンジン回転速度
Pa 大気圧
Pb インマニ圧(吸気圧)
T 吸気温
ηC 充填効率
QA 実吸気量
QP パージ空気量
QN 正吸気量
QT 目標吸気量
VN1 第1基本吸気量
VN2 第2基本吸気量
Claims (3)
- 駆動源としてのエンジンと、
前記エンジンの吸気通路に設けられて吸気量を調整する吸気量調整弁と、
前記吸気量調整弁の開度情報を検出する開度情報検出手段と、
前記吸気量調整弁よりも上流側の吸気通路に設けられて前記吸気量調整弁よりも上流側から導入される空気の量を第1基本吸気量として検出する吸気量検出手段と、
前記エンジンに供給される燃料を貯留する燃料タンクと、
前記燃料タンクで発生した蒸発燃料を捕集するキャニスタと、
前記吸気通路と前記キャニスタとを接続するパージ通路と、
前記パージ通路に設けられて前記パージ通路を開閉し、その開弁時には前記キャニスタの捕集した蒸発燃料がパージ空気とともに前記吸気通路へパージされるパージ制御弁と、
前記吸気通路における前記パージ通路が接続されるパージ位置よりも下流側の圧力を吸気圧として検出する吸気圧検出手段と、
前記エンジンのエンジン回転速度を検出するエンジン回転速度検出手段とを備えた車両において、前記エンジンの筒内に実際に導入される実吸気量を演算する吸気量演算装置であって、
前記パージ制御弁の開閉状態に基づき、パージ中であるか否かを判断する判断手段と、
前記吸気圧検出手段の検出した吸気圧に基づきパージ空気量を算出するパージ空気量算出手段と、
前記開度情報検出手段の検出した開度情報に基づき前記吸気量調整弁を通過している空気の量を第2基本吸気量として算出するとともに、前記第2基本吸気量に基づき、前記エンジンの筒内に実際に導入されている前記吸気量調整弁よりも上流側から導入される空気の量を正吸気量として算出する正吸気量算出手段と、
前記判断手段によりパージ中であると判断された場合、前記パージ空気量算出手段の算出したパージ空気量と前記正吸気量算出手段の算出した正吸気量とを加算して、前記実吸気量を算出する実吸気量算出手段と、
前記判断手段によりパージ中でないと判断された場合、前記正吸気量算出手段の算出した正吸気量を前記実吸気量として設定する実吸気量設定手段とを備え、
前記パージ空気量算出手段は、
前記吸気圧検出手段の検出した吸気圧と前記エンジン回転速度検出手段の検出したエンジン回転速度とに基づき第1充填効率を算出する第1充填効率算出手段と、
前記吸気量検出手段の検出した第1基本吸気量に基づき第2充填効率を算出する第2充填効率算出手段と、
前記第1充填効率算出手段の算出した第1充填効率と前記第2充填効率算出手段の算出した第2充填効率との差分に基づき前記パージ空気量を算出する差分算出手段とを有している
ことを特徴とする、車両の吸気量演算装置。 - 前記第1充填効率算出手段は、前記吸気圧検出手段の検出した吸気圧と前記エンジン回転速度検出手段の検出したエンジン回転速度とに基づき体積効率係数を算出するとともに、前記吸気圧を標準大気圧で除した吸気圧補正項に前記体積効率係数を乗じて前記第1充填効率を算出する
ことを特徴とする、請求項1記載の車両の吸気量演算装置。 - 請求項1又は2記載の車両の吸気量演算装置を備えた、車両のアイドル回転数制御装置であって、
予め設定された目標アイドル回転数を記憶するとともに、前記目標アイドル回転数を維持するのに必要とされる吸気量を目標吸気量として記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された目標吸気量と前記実吸気量算出手段の算出した実吸気量との差分、及び、前記目標吸気量と前記実吸気量設定手段の設定した実吸気量との差分を同一の学習値として学習する学習手段と、
前記学習値に基づき前記目標空気量を設定する制御手段とを備えた
ことを特徴とする、車両のアイドル回転数制御装置。
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