A.用語の説明
本発明の実施形態を説明する前に、本明細書で用いる用語について説明する。
図1および図2は、本明細書で用いる用語の説明図である。ここで、これらの図を用いて本明細書において用いる用語について整理する。本明細書では、感光体ドラム21の表面(像面IP)の搬送方向を副走査方向SDと定義し、該副走査方向SDに直交あるいは略直交する方向を主走査方向MDと定義している。また、ラインヘッド29は、その長手方向LGDが主走査方向MDに対応し、その幅方向LTDが副走査方向SDに対応するように、感光体ドラム21の表面(像面IP)に対して配置されている。
レンズアレイ299が有する複数のレンズLSに一対一の対応関係でヘッド基板293に配置された、複数(図1および図2においては8個)の発光素子2951の集合を、発光素子グループ295と定義する。つまり、ヘッド基板293において、複数の発光素子2951からなる発光素子グループ295は、複数のレンズLSのそれぞれに対して配置されている。また、発光素子グループ295からの光ビームを該発光素子グループ295に対応するレンズLSにより像面IPに向けて結像することで、像面IPに形成される複数のスポットSPの集合を、スポットグループSGと定義する。つまり、複数の発光素子グループ295に一対一で対応して、複数のスポットグループSGを形成することができる。また、各スポットグループSGにおいて、主走査方向MDおよび副走査方向SDに最上流のスポットを、特に第1のスポットと定義する。そして、第1のスポットに対応する発光素子2951を、特に第1の発光素子と定義する。
なお、図1および図2は、発光素子グループ295とレンズLSとスポットグループSGとの対応関係が理解しやすいように、像面が静止した状態でスポットSPを形成した場合を表した。したがって、スポットグループSGにおけるスポットSPの形成位置は、発光素子グループ295における発光素子2951の配置位置に略相似する。しかしながら、後述するように、実際のスポット形成動作は、像面IP(感光体ドラム21の表面)を副走査方向SDに搬送しつつ実行する。その結果、ヘッド基板293が有する複数の発光素子2951により形成されるスポットSPは、主走査方向MDに略平行な直線上に形成される。
また、図2の「像面上」の欄に示すように、スポットグループ行SGR、スポットグループ列SGCを定義する。つまり、主走査方向MDに並ぶ複数のスポットグループSGをスポットグループ行SGRと定義する。そして、複数行のスポットグループ行SGRは、所定のスポットグループ行ピッチPsgrで副走査方向SDに並んで配置される。また、副走査方向SDにスポットグループ行ピッチPsgrで且つ主走査方向MDにスポットグループピッチPsgで並ぶ複数(同図においては3個)のスポットグループSGをスポットグループ列SGCと定義する。なお、スポットグループ行ピッチPsgrは、副走査方向SDに互いに隣接する2つのスポットグループ行SGRそれぞれの幾何重心の、副走査方向SDにおける距離である。また、スポットグループピッチPsgは、主走査方向MDに互いに隣接する2つのスポットグループSGそれぞれの幾何重心の、主走査方向MDにおける距離である。
同図の「レンズアレイ」の欄に示すように、レンズ行LSR、レンズ列LSCを定義する。つまり、長手方向LGDに並ぶ複数のレンズLSをレンズ行LSRと定義する。そして、複数行のレンズ行LSRは、所定のレンズ行ピッチPlsrで幅方向LTDに並んで配置される。また、幅方向LTDにレンズ行ピッチPlsrで且つ長手方向LGDにレンズピッチPlsで並ぶ複数(同図においては3個)のレンズLSをレンズ列LSCと定義する。なお、レンズ行ピッチPlsrは、幅方向LTDに互いに隣接する2つのレンズ行LSRそれぞれの幾何重心の、幅方向LTDにおける距離である。また、レンズピッチPlsは、長手方向LGDに互いに隣接する2つのレンズLSそれぞれの幾何重心の、長手方向LGDにおける距離である。
同図の「ヘッド基板」の欄に示すように、発光素子グループ行295R、発光素子グループ列295Cを定義する。つまり、長手方向LGDに並ぶ複数の発光素子グループ295を発光素子グループ行295Rと定義する。そして、複数行の発光素子グループ行295Rは、所定の発光素子グループ行ピッチPegrで幅方向LTDに並んで配置される。また、幅方向LTDに発光素子グループ行ピッチPegrで且つ長手方向LGDに発光素子グループピッチPegで並ぶ複数(同図においては3個)の発光素子グループ295を発光素子グループ列295Cと定義する。なお、発光素子グループ行ピッチPegrは、幅方向LTDに互いに隣接する2つの発光素子グループ行295Rそれぞれの幾何重心の、幅方向LTDにおける距離である。また、発光素子グループピッチPegは、長手方向LGDに互いに隣接する2つの発光素子グループ295それぞれの幾何重心の、長手方向LGDにおける距離である。
同図の「発光素子グループ」の欄に示すように、発光素子行2951R、発光素子列2951Cを定義する。つまり、各発光素子グループ295において、長手方向LGDに並ぶ複数の発光素子2951を発光素子行2951Rと定義する。そして、複数行の発光素子行2951Rは、所定の発光素子行ピッチPelrで幅方向LTDに並んで配置される。また、幅方向LTDに発光素子行ピッチPelrで且つ長手方向LGDに発光素子ピッチPelで並ぶ複数(同図においては2個)の発光素子2951を発光素子列2951Cと定義する。なお、発光素子行ピッチPelrは、幅方向LTDに互いに隣接する2つの発光素子行2951Rそれぞれの幾何重心の、幅方向LTDにおける距離である。また、発光素子ピッチPelは、長手方向LGDに互いに隣接する2つの発光素子2951それぞれの幾何重心の、長手方向LGDにおける距離である。
同図の「スポットグループ」の欄に示すように、スポット行SPR、スポット列SPCを定義する。つまり、各スポットグループSGにおいて、長手方向LGDに並ぶ複数のスポットSPをスポット行SPRと定義する。そして、複数行のスポット行SPRは、所定のスポット行ピッチPsprで幅方向LTDに並んで配置される。また、幅方向LTDにスポットピッチPsprで且つ長手方向LGDにスポットピッチPspで並ぶ複数(同図においては2個)のスポットをスポット列SPCと定義する。なお、スポット行ピッチPsprは、副走査方向SDに互いに隣接する2つのスポット行SPRそれぞれの幾何重心の、副走査方向SDにおける距離である。また、スポットピッチPspは、主走査方向MDに互いに隣接する2つのスポットSPそれぞれの幾何重心の、長手方向LGDにおける距離である。
B.第1実施形態
図3は本発明にかかる画像形成装置の第1実施形態を示す図である。また、図4は図3の画像形成装置の電気的構成を示す図である。この装置は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能な画像形成装置である。なお図3は、カラーモード実行時に対応する図面である。この画像形成装置では、ホストコンピューターなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリなどを有するメインコントローラMCに与えられると、このメインコントローラMCはエンジンコントローラECに制御信号などを与えるとともに画像形成指令に対応するビデオデータVDをヘッドコントローラHCに与える。また、このヘッドコントローラHCは、メインコントローラMCからのビデオデータVDとエンジンコントローラECからの垂直同期信号Vsyncおよびパラメータ値とに基づき各色のラインヘッド29を制御する。これによって、エンジン部EGが所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどのシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
この実施形態にかかる画像形成装置が有するハウジング本体3内には、電源回路基板、メインコントローラMC、エンジンコントローラECおよびヘッドコントローラHCを内蔵する電装品ボックス5が設けられている。また、画像形成ユニット7、転写ベルトユニット8および給紙ユニット11もハウジング本体3内に配設されている。また、図3においてハウジング本体3内右側には、2次転写ユニット12、定着ユニット13、シート案内部材15が配設されている。なお、給紙ユニット11は、装置本体1に対して着脱自在に構成されている。そして、該給紙ユニット11および転写ベルトユニット8については、それぞれ取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
画像形成ユニット7は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーションSTY(イエロー用)、STM(マゼンダ用)、STC(シアン用)、STK(ブラック用)を備えている。また、各画像形成ステーションSTY、STM、STC、STKには、それぞれの色のトナー像がその表面に形成される感光体ドラム21が設けられている。各感光体ドラム21はそれぞれ専用の駆動モータに接続され図中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。これにより感光体ドラム21の表面が副走査方向に搬送されることとなる。また、感光体ドラム21の周囲には、回転方向に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25および感光体クリーナ27が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作及びトナー現像動作が実行される。したがって、カラーモード実行時は、全ての画像形成ステーションSTY、STM、STC、STKで形成されたトナー像を転写ベルトユニット8が有する転写ベルト81に重ね合わせてカラー画像を形成するとともに、モノクロモード実行時は、画像形成ステーションSTKで形成されたトナー像のみを用いてモノクロ画像を形成する。なお、図3において、画像形成ユニット7の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号をつけて、他の画像形成ステーションについては符号を省略する。
帯電部23は、その表面が弾性ゴムで構成された帯電ローラを備えている。この帯電ローラは帯電位置で感光体ドラム21の表面と当接して従動回転するように構成されており、感光体ドラム21の回転動作に伴って感光体ドラム21に対して従動方向に周速で従動回転する。また、この帯電ローラは帯電バイアス発生部(図示省略)に接続されており、帯電バイアス発生部からの帯電バイアスの給電を受けて帯電部23と感光体ドラム21が当接する帯電位置で感光体ドラム21の表面を帯電させる。
ラインヘッド29は、感光体ドラム21の軸方向(図3の紙面に対して垂直な方向)に配列された複数の発光素子を備えるとともに、感光体ドラム21から離間配置されている。そして、これらの発光素子から、帯電部23により帯電された感光体ドラム21の表面に対して光を照射して該表面に潜像を形成する。なお、この実施形態では、各色のラインヘッド29を制御するためにヘッドコントローラHCが設けられ、メインコントローラMCからのビデオデータVDと、エンジンコントローラECからの信号とに基づき各ラインヘッド29を制御している。すなわち、この実施形態では、画像形成指令に含まれる画像データがメインコントローラMCの画像処理部51に入力される。そして、該画像データに対して種々の画像処理が施されて各色のビデオデータVDが作成されるとともに、該ビデオデータVDがメイン側通信モジュール52を介してヘッドコントローラHCに与えられる。また、ヘッドコントローラHCでは、ビデオデータVDはヘッド側通信モジュール53を介してヘッド制御モジュール54に与えられる。このヘッド制御モジュール54には、上記したように潜像形成に関連するパラメータ値を示す信号と垂直同期信号VsyncがエンジンコントローラECから与えられている。そして、これらの信号およびビデオデータVDなどに基づきヘッドコントローラHCは各色のラインヘッド29に対して素子駆動を制御するための信号を作成し、各ラインヘッド29に出力する。こうすることで、各ラインヘッド29において発光素子の作動が適切に制御されて画像形成指令に対応する潜像が形成される。
そして、この実施形態においては、各画像形成ステーションSTY、STM、STC、STKの感光体ドラム21、帯電部23、現像部25および感光体クリーナ27を感光体カートリッジとしてユニット化している。また、各感光体カートリッジには、該感光体カートリッジに関する情報を記憶するための不揮発性メモリがそれぞれ設けられている。そして、エンジンコントローラECと各感光体カートリッジとの間で無線通信が行われる。こうすることで、各感光体カートリッジに関する情報がエンジンコントローラECに伝達されるとともに、各メモリ内の情報が更新記憶される。
現像部25は、その表面にトナーが担持する現像ローラ251を有する。そして、現像ローラ251と電気的に接続された現像バイアス発生部(図示省略)から現像ローラ251に印加される現像バイアスによって、現像ローラ251と感光体ドラム21とが当接する現像位置において、帯電トナーが現像ローラ251から感光体ドラム21に移動してラインヘッド29により形成された静電潜像が顕在化される。
このように上記現像位置において顕在化されたトナー像は、感光体ドラム21の回転方向D21に搬送された後、後に詳述する転写ベルト81と各感光体ドラム21が当接する1次転写位置TR1において転写ベルト81に1次転写される。
また、この実施形態では、感光体ドラム21の回転方向D21の1次転写位置TR1の下流側で且つ帯電部23の上流側に、感光体ドラム21の表面に当接して感光体クリーナ27が設けられている。この感光体クリーナ27は、感光体ドラムの表面に当接することで1次転写後に感光体ドラム21の表面に残留するトナーをクリーニング除去する。
転写ベルトユニット8は、駆動ローラ82と、図3において駆動ローラ82の左側に配設される従動ローラ83(ブレード対向ローラ)と、これらのローラに張架され図示矢印D81の方向(搬送方向)へ循環駆動される転写ベルト81とを備えている。また、転写ベルトユニット8は、転写ベルト81の内側に、感光体カートリッジ装着時において各画像形成ステーションSTY、STM、STC、STKが有する感光体ドラム21各々に対して1対1で対向配置される、4個の1次転写ローラ85Y,85M,85C,85Kを備えている。これらの1次転写ローラ85は、それぞれ1次転写バイアス発生部(図示省略)と電気的に接続される。そして、後に詳述するように、カラーモード実行時は、図3に示すように全ての1次転写ローラ85Y,85M,85C,85Kを画像形成ステーションSTY、STM、STC、STK側に位置決めすることで、転写ベルト81を画像形成ステーションSTY、STM、STC、STKそれぞれが有する感光体ドラム21に押し遣り当接させて、各感光体ドラム21と転写ベルト81との間に1次転写位置TR1を形成する。そして、適当なタイミングで上記1次転写バイアス発生部から1次転写ローラ85に1次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面上に形成されたトナー像を、それぞれに対応する1次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写してカラー画像を形成する。
一方、モノクロモード実行時は、4個の1次転写ローラ85のうち、カラー1次転写ローラ85Y,85M,85Cをそれぞれが対向する画像形成ステーションSTY、STM、STCから離間させるとともにモノクロ1次転写ローラ85Kのみを画像形成ステーションSTKに当接させることで、モノクロ画像形成ステーションSTKのみを転写ベルト81に当接させる。その結果、モノクロ1次転写ローラ85Kと画像形成ステーションSTKとの間にのみ1次転写位置TR1が形成される。そして、適当なタイミングで1次転写バイアス発生部からモノクロ1次転写ローラ85Kに1次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面上に形成されたトナー像を、1次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写してモノクロ画像を形成する。
さらに、転写ベルトユニット8は、モノクロ1次転写ローラ85Kの下流側で且つ駆動ローラ82の上流側に配設された下流ガイドローラ86を備える。また、この下流ガイドローラ86は、モノクロ1次転写ローラ85Kが画像形成ステーションSTKの感光体ドラム21に当接して形成する1次転写位置TR1での1次転写ローラ85Kと感光体ドラム21との共通内接線上において、転写ベルト81に当接するように構成されている。
駆動ローラ82は、転写ベルト81を図示矢印D81の方向に循環駆動するとともに、2次転写ローラ121のバックアップローラを兼ねている。駆動ローラ82の周面には、厚さ3mm程度、体積抵抗率が1000kΩ・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、図示を省略する2次転写バイアス発生部から2次転写ローラ121を介して供給される2次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ローラ82に高摩擦かつ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、駆動ローラ82と2次転写ローラ121との当接部分(2次転写位置TR2)へのシートが進入する際の衝撃が転写ベルト81に伝達しにくく、画質の劣化を防止することができる。
給紙ユニット11は、シートを積層保持可能である給紙カセット77と、給紙カセット77からシートを一枚ずつ給紙するピックアップローラ79とを有する給紙部を備えている。ピックアップローラ79により給紙部から給紙されたシートは、レジストローラ対80において給紙タイミングが調整された後、シート案内部材15に沿って2次転写位置TR2に給紙される。
2次転写ローラ121は、転写ベルト81に対して離当接自在に設けられ、2次転写ローラ駆動機構(図示省略)により離当接駆動される。定着ユニット13は、ハロゲンヒータ等の発熱体を内蔵して回転自在な加熱ローラ131と、この加熱ローラ131を押圧付勢する加圧部132とを有している。そして、その表面に画像が2次転写されたシートは、シート案内部材15により、加熱ローラ131と加圧部132の加圧ベルト1323とで形成するニップ部に案内され、該ニップ部において所定の温度で画像が熱定着される。加圧部132は、2つのローラ1321,1322と、これらに張架される加圧ベルト1323とで構成されている。そして、加圧ベルト1323の表面のうち、2つのローラ1321,1322により張られたベルト張面を加熱ローラ131の周面に押し付けることで、加熱ローラ131と加圧ベルト1323とで形成するニップ部が広くとれるように構成されている。また、こうして定着処理を受けたシートはハウジング本体3の上面部に設けられた排紙トレイ4に搬送される。
また、この装置では、ブレード対向ローラ83に対向してクリーナ部71が配設されている。クリーナ部71は、クリーナブレード711と廃トナーボックス713とを有する。クリーナブレード711の先端部が転写ベルト81を介してブレード対向ローラ83に当接することで、2次転写後に転写ベルトに残留するトナーや紙粉等の異物を除去する。そして、このように除去された異物は、廃トナーボックス713に回収される。また、クリーナブレード711及び廃トナーボックス713は、ブレード対向ローラ83と一体的に構成されている。したがって、次に説明するようにブレード対向ローラ83が移動する場合は、ブレード対向ローラ83と一緒にクリーナブレード711及び廃トナーボックス713も移動することとなる。
図5は本発明にかかるラインヘッドの第1実施形態の概略を示す斜視図である。また、図6は本発明にかかるラインヘッドの第1実施形態の幅方向の断面図である。本実施形態においては、ラインヘッド29の長手方向LGDが主走査方向MDと平行となるとともに、長手方向LGDとほぼ直交する幅方向LTDが副走査方向SDと平行となるように、ラインヘッド29は感光体ドラム表面に対向して配置されている。つまり、この実施形態では、感光体ドラム21側における主走査方向MDおよび副走査方向SDがそれぞれラインヘッド21側における長手方向LGDおよび幅方向LTDに対応している。なお、本実施形態では、長手方向LGDが本発明の「第1方向」に相当し、幅方向LTDが本発明の「第2方向」に相当し、主走査方向MDが本発明の「第1方向に対応する方向」に相当している。
このラインヘッド29は、長手方向LGDと平行に延設されたケース291を備えるとともに、かかるケース291の両端には、位置決めピン2911とねじ挿入孔2912が設けられている。そして、かかる位置決めピン2911を、感光体ドラム21を覆うとともに感光体ドラム21に対して位置決めされた感光体カバー(図示省略)に穿設された位置決め孔(図示省略)に嵌め込むことで、ラインヘッド29が感光体ドラム21に対して位置決めされる。そして更に、ねじ挿入孔2912を介して固定ねじを感光体カバーのねじ孔(図示省略)にねじ込んで固定することで、ラインヘッド29が感光体ドラム21に対して位置決め固定される。
ケース291は、感光体ドラム21の表面に対向する位置にマイクロレンズアレイ299を保持するとともに、その内部に、該マイクロレンズアレイ299に近い順番で、遮光部材297及びガラス基板293を備えている。また、ガラス基板293の裏面(ガラス基板293が有する2つの面のうちマイクロレンズアレイ299と逆側の面)には、複数の発光素子グループ295が設けられている。即ち、複数の発光素子グループ295は、ガラス基板293の裏面に、ケース291の長手方向LGDおよび幅方向LTD互いに所定間隔だけ離れて2次元的(M×N)に配置されている。ここで、複数の発光素子グループ295の各々は、複数の発光素子を2次元的に配列して構成されるが、これについては後に説明する。また、本実施形態では、発光素子としてボトムエミッション型の有機EL(Electro-Luminescence)素子を用いる。つまり、本実施形態では、ガラス基板293の裏面に有機EL素子を発光素子として配置している。そして、同ガラス基板293に形成された駆動回路(図示省略)によって各発光素子が駆動されると、該発光素子から感光体ドラム21の方向に光ビームが射出される。この光ビームは、ガラス基板293を介して遮光部材297へ向うこととなる。なお、本実施形態では、各発光素子から射出される光の波長が互いに等しくなるように全ての発光素子は構成されている。
遮光部材297には、複数の発光素子グループ295に対して1対1で複数の導光孔2971が穿設されている。また、かかる導光孔2971は、ガラス基板293の法線と平行な線を中心軸として遮光部材297を貫通する略円柱状の孔として穿設されている。よって、1つの発光素子グループ295に属する発光素子から出た光は全て同一の導光孔2971を介してマイクロレンズアレイ299へ向うとともに、異なる発光素子グループ295からでた光ビーム同士の干渉が遮光部材297により防止される。そして、遮光部材297に穿設された導光孔2971を通過した光ビームは、マイクロレンズアレイ299により、感光体ドラム21の表面にスポットとして結像されることとなる。なお、マイクロレンズアレイ299の具体的構成、及び、該マイクロレンズアレイ299による光ビームの結像状態については、後に詳述する。
図6に示すように、固定器具2914によって、裏蓋2913がガラス基板293を介してケース291に押圧されている。つまり、固定器具2914は、裏蓋2913をケース291側に押圧する弾性力を有するとともに、かかる弾性力により裏蓋を押圧することで、ケース291の内部を光密に(つまり、ケース291内部から光が漏れないように、及び、ケース291の外部から光が侵入しないように)密閉している。なお、固定器具2914は、ケース291の長手方向に複数箇所設けられている。また、発光素子グループ295は、封止部材294により覆われている。
図7は、マイクロレンズアレイの概略を示す斜視図である。また、図8は、マイクロレンズアレイの長手方向の断面図である。マイクロレンズアレイ299は、ガラス基板2991有するとともに、該ガラス基板2991を挟むように1対1で配置された2枚のレンズ2993A,2993Bにより構成されるレンズ対を複数有している。なお、これらレンズ2993A,2993Bは例えば樹脂により形成することができる。
つまり、ガラス基板2991の表面2991Aには複数のレンズ2993Aが配置されるとともに、複数のレンズ2993Aに1対1で対応するように、複数のレンズ2993Bがガラス基板2991の裏面2991Bに配置されている。また、レンズ対を構成する2枚のレンズ2993A,2993Bは、相互に光軸OAを共通にする。また、これら複数のレンズ対は、複数の発光素子グループ295に1対1で配置されている。つまり、これら複数のレンズ対は、発光素子グループ295の配置に対応して、長手方向LGD及び幅方向LTDに互いに所定間隔だけ離れて2次元的(M×N)に配置されている。より詳しく説明すると、このマイクロレンズアレイ299では、レンズ2993A,2993Bから成るレンズ対と、該レンズ対に挟まれるガラス基板2991とで構成されたマイクロレンズLSが本発明の「レンズ」に相当している。そして、これらのマイクロレンズLSを長手方向LGDに複数個並べたレンズ行LSRが幅方向LTDに複数列(本実施形態では「3」列)配列されて複数のマイクロレンズLSが千鳥状で、しかも互いに異なる長手方向位置に配置されている。特に、この実施形態では、長手方向LGDにおける光軸間距離Pが一定となるようにマイクロレンズLSが配置されている。(図7)。また、全てのマイクロレンズLSは同一構成であり、同一の倍率mを有している。なお、この実施形態では、倍率mが負の値を有するマイクロレンズLSを用いているが、もちろん倍率mを正の値に設定してもよいことは言うまでもない。
図9はラインヘッドにおける発光素子グループおよびマイクロレンズの配置関係を示す図である。このラインヘッドでは、同一構成を有する複数の発光素子グループ295が上記のように配置されたマイクロレンズLSに対して1対1の対応関係で配置されている。すなわち、所定個数の発光素子グループ295が長手方向LGDにおいて相互に離間しながら配列されて発光素子グループ行295Rが形成されている。また、これらの発光素子グループ行295Rが幅方向LTDに複数列(本実施形態では「3」列)配列されて複数の発光素子グループ295が千鳥状に配置されている。そして、長手方向LGDにおいて互いに隣接する発光素子グループ295の離間距離はマイクロレンズLSの光軸間距離Pと一致している。
また、各発光素子グループ295は10個の発光素子2951を有しており、発光素子2951は以下のように配置されている。すなわち、各発光素子グループ295では、5個の発光素子2951が長手方向LGDに所定間隔(=素子ピッチdpの2倍)毎に並べられて発光素子行2951Rが形成されている。また、発光素子行2951Rは幅方向LTDに2列並べられている。しかも、長手方向LGDにおける発光素子行2951Rのシフト量は素子ピッチdp(=Pel)となっている。このため、各発光素子グループ295では、全ての発光素子グループ295は互いに異なる長手方向位置に素子ピッチdpで配置されている。したがって、各発光素子グループ295では10個の発光素子2951から射出される光ビームがマイクロレンズLSにより主走査方向MDにおいて互いに異なる位置で感光体ドラム21の表面(以下「感光体表面」という)上に結像される。これによって、10個のスポットが主走査方向MDに並んで形成されてスポットグループが形成される。
さらに、この実施形態では、ラインヘッド29は、主走査方向MDにおいて互いに隣接して形成されるスポットグループが互いに部分的に重なり合うように構成されている。特に、この実施形態でマイクロレンズLSの倍率mが(−1)に設定され、しかも長手方向LGDにおいて各発光素子グループ295の両端部が隣接する発光素子グループ295の端部と重複するように配置されている。ここで、図9を参照しつつ、長手方向LGDにおいて隣接する3つの発光素子グループ259A〜259Cに着目し、上記配置関係について詳述する。発光素子グループ295Bに対して上流側(同図の左手側)に発光素子グループ295Aが位置する一方、下流側(同図の右手側)に発光素子グループ295Cが位置している。そして、同図の破線で示すように、長手方向LGDにおいて、発光素子グループ295Bを構成する10個の発光素子2951のうち最上流側の2個が発光素子グループ295Aの下流側端部に位置する2個の発光素子と重複するように配置されている。一方、最下流側の2個が発光素子グループ295Cの上流側端部に位置する2個の発光素子と重複するように配置されている。
図10はラインヘッドにより感光体表面に形成されるスポットの位置を示す図であり、2つの発光素子グループ、例えば図9中の発光素子グループ295A、295Bによりスポットが形成される様子を模式的に示している。なお、同図中の「スポットグループSGa」は上流側(図9の左手側)の発光素子グループ295Aにより形成されたスポットSPの一群を示す一方、「スポットグループSGb」は下流側(図9の右手側)の発光素子グループ295Bにより形成されたスポットSPの一群を示している。なお、同図の上段に示すように、発光素子2951を同時に点灯させると、感光体表面に形成されるスポットグループSGa、SGbも二次元配置されてしまう。
そこで、本実施形態では、同図の下段に示すように、発光素子行2951Rの各々では、感光体ドラム21の回転移動に応じたタイミングで該発光素子行2951Rを構成する発光素子2951が発光するように構成している。つまり、発光素子グループ295A、295Bを構成する発光素子行2951Rの点灯タイミングを次のように感光体ドラム21の回転移動に対応して相違させている。
(a)タイミングT1:発光素子グループ295Aの上段発光素子行2951Rの点灯、
(b)タイミングT2:発光素子グループ295Aの下段発光素子行2951Rの点灯、
(c)タイミングT3:発光素子グループ295Bの上段発光素子行2951Rの点灯、
(d)タイミングT4:発光素子グループ295Bの下段発光素子行2951Rの点灯、
このため、このタイミング調整のみにより上段発光素子列により形成されるスポットSPと下段発光素子列により形成されるスポットSPとを主走査方向MDに並んで形成することができる。このように、簡単な発光タイミング調整によりスポットSPを主走査方向MDに一列に形成することができる。
ここで、さらに注目すべき点は、本実施形態では主走査方向MDにおいて互いに隣接して形成されるスポットグループSGa、SGbは互いに部分的に重なり合い、重複スポット領域ORが形成される点である。すなわち、この重複スポット領域ORでは、発光素子グループ295Aによるスポットの一部(図10中のスポットSPa1、SPa2)と、発光素子グループ295Bによるスポットの一部(図10中のスポットSPb1、SPb2)とが重なり合っている。なお、この明細書では、重複スポット領域ORを構成するスポットSPa1、SPa2、SPb1、SPb2を「重複スポット」と称する。
このように構成されたラインヘッド29を用いて感光体表面を露光すると、図11に示すような2次元潜像LIが得られる。すなわち、互いに隣接するスポットグループは部分的に重なり合って重複スポット領域ORを形成している。よって、位置ずれや倍率誤差が発生しない場合(同図(a))がもちろんのこと、発光素子グループ295やマイクロレンズLSの相互位置関係が多少ずれたり、マイクロレンズLSの倍率誤差が生じたとしてもスポットグループSG間に隙間が生じるのを防止することができ、良好なスポット形成を行うことができる。また、このようなラインヘッド29を用いて画像形成を行うことで縦筋を発生させることなく高品質なトナー像を形成することができる。
図12はラインヘッドの比較例を示す図である。また、図13および図14は図12の比較例により形成されるスポットの様子を示す図である。ここでは、これらの図面を用いて上記構成を採用したことによる作用効果を説明する。
この比較例では、図12の下段に示すように、各発光素子グループ295では、4個の発光素子2951が長手方向LGDに所定間隔(=素子ピッチdpの2倍)毎に並べられて発光素子行2951Rが形成されている。また、発光素子行2951Rは幅方向LTDに2列並べられている。しかも、長手方向LGDにおける発光素子行2951Rのシフト量は素子ピッチdpとなっている。また比較例では、発光素子2951を点灯させると、同図の上段から明らかなように全てのスポットSPは主走査方向MDにおいて互いに異なる位置に、しかもスポットピッチ(m・dp)で形成される。
よって、比較例にかかるラインヘッドによりスポットSPを感光体表面に形成すると、位置ずれや倍率誤差が発生しない場合には隣い合うスポットグループが連続的に繋がり良好なスポット形成が行われる(図13(a)や図14(a)参照)。しかしながら、発光素子グループ295やマイクロレンズLSの相互位置関係が多少ずれて位置ずれが発生すると、図13(b)に示すようにスポットグループSG1、SG2が相互に離間して縦筋が発生してしまう。また、マイクロレンズアレイ299に倍率誤差が発生した場合にも、図14(b)に示すようにスポットグループSG1〜SG3が相互に離間して縦筋が発生してしまう。
これに対し、上記したように、本実施形態によれば、重複スポット領域ORを形成するようにラインヘッド29を構成しているため、これらの問題を発生させることなく、スポットを形成することができる。そして、このような構成されたラインヘッド29を露光手段として用いた画像形成装置では、高品質な画像を形成することができる。
C.第2実施形態
ところで、発光素子グループ295の端部に位置する発光素子2951からの光ビームについてのマイクロレンズLSに対する画角は大きくなるため、マイクロレンズLSの収差悪化によりスポットSPの径が増大し、しかも光量も低下してしまうことがある。このような問題を考慮する必要がある場合には、各発光素子グループ295を次のように構成するのが望ましい。
図15はこの発明にかかるラインヘッドの第2実施形態を示す図である。この実施形態では、発光素子グループ295を構成する発光素子が互いに異なる2種類の発光素子に分けられている。その1つは発光素子グループ295の端部に位置して重複スポットを形成する発光素子2951bである。もう1つは残りの発光素子2951aであり、それぞれ独立スポットを形成する発光素子である。そして、この実施形態では、発光素子2951bの素子径が発光素子2951aの素子径よりも小さくなっている。
このように構成された発光素子グループ295を用いた場合には、マイクロレンズLSが収差悪化することで、発光素子2951bにより形成されるスポット、つまり重複スポットの径は増大する。そのため、重複スポットの径は発光素子2951aにより形成されるスポットSPとほぼ同じとなり、スポット径の均一化を図ることができる。また、各発光素子2951bの素子径を小さくしたことにより各重複スポットの光量も小さくなる。しかしながら、重複スポット領域ORでは、長手方向LGDにおいて隣接する発光素子グループ(例えば同図中の発光素子グループ295A、295B)の発光素子2951b、つまり2つの発光素子2951bにより形成される重複スポットが重ね合わされる。これによって、発光素子2951aにより形成されるスポットSPと同程度の光量が得られる。したがって、マイクロレンズLSの収差悪化による光量低下も解消することができる。
以上のように、この実施形態にかかるラインヘッドによれば、マイクロレンズLSの収差が悪化している場合であっても、スポット径および光量の均一化を図ることができる。また、マイクロレンズLSの設計に対して極めて厳格な光学特性を要求する必要がなくなり、比較的大きな設計自由度を得るとともに、マイクロレンズアレイ299のコストを低減することができる。なお、このような構成については、後で詳述する第5〜第8実施形態における重複スポット領域ORや重なり領域WRを形成する装置にも適用することができ、同様の作用効果が得られる。
D.第3実施形態
また、重複スポット領域ORでの光量がそれ以外の領域での光量よりも増大するという問題については、次のように構成するのが望ましい。以下、図16を参照しながら説明する。
図16はこの発明にかかるラインヘッドの別の実施形態を示す図である。この実施形態においても、図15に示す実施形態と同様に、発光素子グループ295が重複スポットを形成する発光素子2951bと、独立スポットを形成する発光素子2951aとを有している。そして、この実施形態では、発光素子2951bの発光光量が発光素子2951aの発光光量よりも小さくなっている。したがって、重複スポット領域ORでは、2つの発光素子2951bにより形成される重複スポットが重ね合わされるが、重複スポット領域ORでの光量をそれ以外の領域(発光素子2951aによりスポットが形成される領域)での光量とほぼ同程度となる。したがって、重複スポット領域ORを設けたとしても、感光体表面での光量の均一化を図ることができる。なお、このような構成については、後で詳述する第5〜第8実施形態における重複スポット領域ORや重なり領域WRを形成する装置にも適用することができ、同様の作用効果が得られる。
上記実施形態では発光素子グループ295を構成する発光素子の一部が重複スポットを形成するための発光素子として機能しているが、図17に示すように全部が重複スポットを形成するための発光素子として機能してもよい。
図17はこの発明にかかるラインヘッドの第3実施形態を示す図である。この実施形態では、各発光素子グループ295は16個の発光素子2951を有している。より具体的には、各発光素子グループ295では、8個の発光素子2951が長手方向LGDに所定間隔(=素子ピッチdpの2倍)毎に並べられて発光素子行2951Rが形成されている。また、発光素子行2951Rは幅方向LTDに2列並べられている。しかも、長手方向LGDにおける発光素子行2951Rのシフト量は素子ピッチdpとなっている。このため、各発光素子グループ295では、全ての発光素子グループ295は互いに異なる長手方向位置に素子ピッチdpで配置されている。もちろん、この実施形態においても、図18に示すように動作して全ての発光素子2951が重複スポットを形成する。
図18は図17のラインヘッドにより感光体表面に形成されるスポットの位置を示す図である。同図では、図17に示された3つの発光素子グループ295A〜295Cにより形成されるスポットSPが示されている。これら3つの発光素子グループ295A〜295Cは、図17に示すように、互いに隣接する3つのマイクロレンズLSに対応して設けられたものであり、それらも長手方向LGDにおいて互いに隣接している。このため、発光素子グループ295A〜295Cはそれぞれ本発明の「上流側の発光素子グループ」、「中央発光素子グループ」および「下流側の発光素子グループ」に相当している。
そして、発光素子行2951Rの各々では、感光体ドラム21の回転移動に応じたタイミングで該発光素子行2951Rを構成する発光素子2951が発光するように構成している。つまり、発光素子グループ295A〜295Cを構成する発光素子行2951Rの点灯タイミングを次のように感光体ドラム21の回転移動に対応して相違させている。
(a)タイミングT1:発光素子グループ295Aの上段発光素子行2951Rの点灯、
(b)タイミングT2:発光素子グループ295Aの下段発光素子行2951Rの点灯、
(c)タイミングT3:発光素子グループ295Bの上段発光素子行2951Rの点灯、
(d)タイミングT4:発光素子グループ295Bの下段発光素子行2951Rの点灯、
(e)タイミングT5:発光素子グループ295Cの上段発光素子行2951Rの点灯、
(f)タイミングT6:発光素子グループ295Cの下段発光素子行2951Rの点灯、
このため、このタイミング調整のみにより上段発光素子列により形成されるスポットSPと下段発光素子列により形成されるスポットSPとを主走査方向MDに並んで形成することができる。このように、簡単な発光タイミング調整によりスポットSPを主走査方向MDに一列に形成することができる。また、このようにして形成された重複スポット領域ORは発光素子グループ295Bによるスポット領域と一致する。さらに、この実施形態では、重複スポット領域ORが第1実施形態などに比べて広がり、位置ずれや倍率誤差が大きくなった場合にも縦筋の発生を確実に防止することができる。なお、このような構成については、後で詳述する第5〜第8実施形態における重複スポット領域ORや重なり領域WRを形成する装置にも適用することができ、同様の作用効果が得られる。
E.第4実施形態
また、上記実施形態では、発光素子グループ295を同一構成とし、またマイクロレンズLSも同一構成としている。しかしながら、例えば図19に示すように、マイクロレンズLS毎に倍率を相互に相違させてもよい。同図に示す実施形態では、幅方向LTDにおける最上段と最下段のマイクロレンズLSの倍率mを「−2倍」に設定する一方、中段のマイクロレンズLSの倍率mを「−1倍」に設定している(図中のカッコ内は倍率mを示している)。このように、マイクロレンズLSの倍率mが相互に異なる、マイクロレンズLSを設けてもよく、このようなラインヘッドにおいても、重複スポット領域を形成するように構成することによって、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。しかも、このようにマイクロレンズLSの倍率mを任意に設定することができる。その結果、設計自由度を高めることができ、例えばガラス基板293上に形成する配線を引き回すのに適したスペースを容易に確保することができる。なお、マイクロレンズLS毎に倍率mを変更する場合には、同図に示すように、倍率mを考慮して発光素子2951の素子径を変更するのが望ましい。つまり、倍率mの絶対値が小さいほど素子径を大きくするのが望ましい。これは感光体表面上でのスポット径を揃えるためである。なお、このような構成については、後で詳述する第5〜第8実施形態における重複スポット領域ORや重なり領域WRを形成する装置にも適用することができ、同様の作用効果が得られる。
F.第5実施形態
ところ、上記実施形態では、互いに隣接するスポットグループSGの組み合わせの全部について重複スポット領域ORを形成しているが、次に説明するように、位置ずれ等が特に問題となる組み合わせのみに重複スポット領域ORを形成するようにしてもよい。例えばレンズアレイとして、レンズを有するレンズ基板が複数個組み合わされたものを用いた場合、レンズ基板の組付誤差などによりレンズ基板の組み合わせ位置を挟んで対をなすレンズが相対的にずれることがある。そして、それらのレンズ対のうち長手方向LGDに互いに隣接するスポットグループを形成するレンズ対について、相対的な位置ずれが発生すると、スポットグループSG間に隙間が生じてしまう。そこで、このようなレンズアレイを採用したラインヘッドや画像形成装置では、当該レンズ対を構成するレンズのレンズ間距離Piが後述する関係式(1)を満たすように構成して重複スポット領域ORを形成するのが望ましい。以下、図20〜図30を参照しつつ説明する。
図20は本発明にかかるラインヘッドの第5実施形態の概略を示す斜視図である。また、図21は本発明にかかるラインヘッドの第5実施形態の幅方向の断面図である。本実施形態においては、ラインヘッド29の長手方向LGDが主走査方向MDと平行となるとともに、長手方向LGDとほぼ直交する幅方向LTDが副走査方向SDと平行となるように、ラインヘッド29は感光体ドラム表面に対向して配置されている。つまり、この実施形態では、感光体ドラム21側における主走査方向MDおよび副走査方向SDがそれぞれラインヘッド21側における長手方向LGDおよび幅方向LTDに対応している。なお、本実施形態のラインヘッド29が第1実施形態のそれと大きく相違する点は、以下の2点である。つまり、第1点目は、複数のレンズ基板を組み合わせた分割レンズ構成を採用している点である。また、第2点目は、レンズ基板の組み合わせ位置を挟んで対をなすレンズ対により主走査方向MDに互いに隣接するスポットグループが副走査方向SDに重なるように感光体表面(像面)に形成している点である。なお、その他の構成は第1実施形態と同様であるため、相違点を中心に説明する。
図20において、ラインヘッド29は、主走査方向MDと平行な方向を長手方向とするケース291を備えるとともに、かかるケース291の両端には、位置決めピン2911とねじ挿入孔2912が設けられている。かかる位置決めピン2911を、図示しない感光体カバーに穿設された位置決め孔に嵌め込むことで、ラインヘッド29が、図3に示した感光体ドラム21に対して位置決めされている。感光体カバーは、感光体ドラム21を覆うとともに感光体ドラム21に対して位置決めされている。また、ねじ挿入孔2912を介して固定ねじを感光体カバーのねじ孔(図示省略)にねじ込んで固定することで、ラインヘッド29が感光体ドラム21に対して位置決め固定されている。
図20および図21において、ケース291は、感光体ドラム21の表面211に対向する位置に結像レンズが配列されたマイクロレンズアレイ299を保持するとともに、その内部に、マイクロレンズアレイ299に近い順番で、遮光部材297および基板としてのヘッド基板293を備えている。ヘッド基板293は透明なガラス基板である。また、ヘッド基板293の裏面2932(ヘッド基板293が有する2つの面のうち遮光部材297に対向する表面2931とは逆側の面)には、複数の発光素子グループ295が設けられている。複数の発光素子グループ295は、ヘッド基板293の裏面2932に、図20に示すように、長手方向LGDおよび幅方向LTDに互いに所定間隔だけ離れて2次元的に、離散的に並べて配置されている。ここで、発光素子グループ295は、図20中の円で囲んだ部分に示すように、複数の発光素子2951を2次元的に配列することによって構成されている。なお、それらの配置については後で詳述する。
本実施形態では、発光素子として有機ELを用いる。つまり、本実施形態では、ヘッド基板293の裏面2932に有機ELを発光素子2951として配置している。そして、複数の発光素子2951のそれぞれから感光体ドラム21の方向に射出される光は、ヘッド基板293を介して遮光部材297へ向かう。なお、本実施形態では、各発光素子から射出される光の波長が互いに等しくなるように全ての発光素子は構成されている。また、発光素子2951として有機ELを用いたが、発光素子2951の具体的構成はこれに限られるものではなく、例えばLED(Light Emitting Diode)を発光素子2951として用いても良い。この場合、基板293はガラス基板でなくてもよく、LEDは基板293の表面2931に設けることができる。
図20および図21において、遮光部材297は、複数の発光素子グループ295に対して一対一で対応する複数の導光孔2971を備えている。そして、発光素子グループ295に属する発光素子2951から射出された光は、該発光素子グループ295に一対一で対応する導光孔2971によって、マイクロレンズアレイ299に導かれる。そして、導光孔2971を通過した光は、2点鎖線で示すように、マイクロレンズアレイ299により、感光体ドラム21の表面211にスポットとして結像される。
図21に示すように、固定器具2941によって、裏蓋2913はヘッド基板293を介してケース291に押圧されている。つまり、固定器具2941は、裏蓋2913をケース291側に押圧する弾性力を有するとともに、かかる弾性力により裏蓋2913を押圧することで、ケース291の内部を光密に(つまり、ケース291内部から光が漏れないように、および、ケース291の外部から光が侵入しないように)密閉している。なお、固定器具2941は、図20に示すケース291の長手方向LGDに複数箇所設けられている。また、発光素子グループ295は、封止部材294により覆われている。
図22はマイクロレンズアレイの概略部分斜視図である。図23は長手方向におけるマイクロレンズアレイの部分断面図である。また、図24はマイクロレンズアレイの平面図である。図22および図23において、マイクロレンズアレイ299は、透明基板としてのガラス基板2991と複数(この実施形態では8枚)のプラスチックレンズ基板2992を備えている。これらの図は部分図なので、すべての部品を現しているわけではない。
図22および図23において、プラスチックレンズ基板2992はガラス基板2991の両面に設けられている。すなわち、ガラス基板2991の一方面には、図24に示すように、4枚のプラスチックレンズ基板2992が一直線状に組み合わされて接着剤2994により接着される。マイクロレンズアレイ299を平面視した場合の形状は、長方形である。これに対し、プラスチックレンズ基板2992の形状は平行四辺形であり、4枚のプラスチックレンズ基板2992の間には、すき間部2995が形成されている。また、図23および図24に示すように、すき間部2995には、光吸収材2996が充填されていてもよく、光吸収材2996としては、発光素子2951から射出された光ビームを吸収する特性を有する材料を広く用いることができ、例えばカーボンの微粒子を含んだ樹脂等を用いることができる。なお、図24中の円内には、すき間部2995付近の拡大図が図示されている。
レンズ2993は、マイクロレンズアレイ299の長手方向LGDに3つのレンズ行LSR1〜LSR3を形成するように配列されている。各行は、長手方向LGDに少しずれて配置され、レンズ列LSCはマイクロレンズアレイ299を平面視した場合の長方形の短辺に対し、斜めに配列されている。そして、すき間部2995は、レンズ列LSCに沿ってレンズ列LSC間に形成されており、本発明の「組み合わせ位置」に相当している。
各すき間部2995は、レンズ2993のレンズ有効範囲LEにかからないように形成されている。レンズの有効範囲LEとは、発光素子グループ295から射出された光が透過する領域である。すき間部2995をレンズの有効範囲LEにかからないように形成する方法としては、予めプラスチックレンズ基板のすき間部2995を形成する端面をレンズの有効範囲LEにかからないように成形する方法と、複数のプラスチックレンズ基板を一体で成形し、その後、レンズの有効範囲LEにかからないように切断する方法がある。
また、他方面側にも4枚のプラスチックレンズ基板2992が上記4枚のレンズ基板2992に対応して接着剤2994により接着される。こうして、ガラス基板2991を挟むように一対一で配置された2枚のレンズ2993により両凸レンズが結像レンズとして構成されている。なお、プラスチックレンズ基板2992およびレンズ2993については、型を用いた樹脂の射出成形により一体で形成することができる。
結像レンズを構成する2枚のレンズ2993は、相互に図中一点鎖線で示した光軸OAを共通にする。また、これら複数のレンズは、図20に示した複数の発光素子グループ295に一対一で配置されている。なお、この明細書では、2枚のレンズ2993と、かかるレンズ2993によって挟まれたガラス基板2991とから成る光学系を「マイクロレンズLS」と称することとする。結像レンズとしてのマイクロレンズLSは、発光素子グループ295の配置に対応して、長手方向LGD(主走査方向MDに対応する方向)および幅方向LTD(副走査方向SDに対応する方向)に互いに所定間隔だけ離れて2次元的(M×N)に配置されている。
上記のようにすき間部2995を設けた場合、つまり複数のレンズ基板2992を組み合わせてレンズアレイ299を形成する場合には、レンズ基板2992を設計通りに組み合わせることは困難であり、すき間部2995を挟んで配置されたレンズLSにおいて相対的な位置ずれが発生することがある。そこで、本実施形態では、複数の発光素子グループ295を上記のように配置されたマイクロレンズLSに対して1対1の対応関係で配置しつつも、レンズ基板2992を組み合わせている近傍(組み合わせ位置の近傍)と、それ以外とで装置構成を相違させている。以下、それぞれに分けて装置構成および動作について説明する。
図25はレンズ基板上のマイクロレンズと該マイクロレンズに対応する発光素子グループの配置関係を示す図である。このラインヘッドでは、所定個数の発光素子グループ295が長手方向LGDにおいて相互に離間しながら配列されて発光素子グループ行(図2中の符号295R)が形成されている。また、これらの発光素子グループ行が幅方向LTDに複数列(本実施形態では「3」列)配列されて複数の発光素子グループ295が千鳥状に配置されている。そして、長手方向LGDにおいて互いに隣接する発光素子グループ295の離間距離はマイクロレンズLSの光軸間距離と一致している。例えば、図25に示すように、長手方向LGDにおいて、第1番目のレンズLS1と第2番目のレンズLS2とは距離P1、第2番目のレンズLS2と第3番目のレンズLS3とは距離P2、…は同一値を有している。また、レンズLS1〜LS3に対応する発光素子グループ295間の長手方向LGDの距離もそれらに一致している。
発光素子グループ295は、後述する特別レンズ対に関連する発光素子グループを除き、8個の発光素子2951を有しており、発光素子2951は以下のように配置されている。すなわち、各発光素子グループ295では、4個の発光素子2951が長手方向LGDに所定間隔(=素子ピッチdpiの2倍)毎に並べられて発光素子行(図1中の符号2951R)が形成されている。また、発光素子行は幅方向LTDに2列並べられている。しかも、長手方向LGDにおける発光素子行のシフト量は素子ピッチdpiとなっている。このため、各発光素子グループ295では、全ての発光素子グループ295は互いに異なる長手方向位置に素子ピッチdpi(=Pel)で配置されている。したがって、各発光素子グループ295では8個の発光素子2951から射出される光ビームがマイクロレンズLSにより主走査方向MDにおいて互いに異なる位置で感光体ドラム21の表面(以下「感光体表面」という)上に結像される。これによって、8個のスポットが主走査方向MDに並んで形成されてスポットグループSGが形成される。より具体的には、次のようにしてスポットグループSGの形成が行われる。
図26はラインヘッドにより感光体表面に形成されるスポットの位置を示す図であり、2つの発光素子グループ、例えば図25中の第1番目のレンズLS1に対応する発光素子グループ295_1と、第2番目のレンズLS2に対応する発光素子グループ295_2とによりスポットが形成される様子を模式的に示している。なお、同図中の「スポットグループSG1」は上流側(図25の左手側)の発光素子グループ295_1により形成されたスポットSPの一群を示す一方、「スポットグループSG2」は下流側(図25の右手側)の発光素子グループ295_2により形成されたスポットSPの一群を示している。なお、同図の上段に示すように、発光素子2951を同時に点灯させると、感光体表面に形成されるスポットグループSG1、SG2も二次元配置されてしまう。
そこで、本実施形態では、同図の下段に示すように、発光素子行の各々では、感光体ドラム21の回転移動に応じたタイミングで該発光素子行を構成する発光素子2951が発光するように構成している。つまり、発光素子グループ295を構成する発光素子列の点灯タイミングを次のように感光体ドラム21の回転移動に対応して相違させている。
(a)タイミングT1:発光素子グループ295_1の上段発光素子行の点灯、
(b)タイミングT2:発光素子グループ295_1の下段発光素子行の点灯、
(c)タイミングT3:発光素子グループ295_2の上段発光素子行の点灯、
(d)タイミングT4:発光素子グループ295_2の下段発光素子行の点灯、
このため、このタイミング調整のみにより上段発光素子行により形成されるスポットSPと下段発光素子行により形成されるスポットSPとを主走査方向MDに並んで形成することができる。このように、簡単な発光タイミング調整によりスポットSPを主走査方向MDに一列に形成することができる。
図27は組み合わせ位置近傍でのマイクロレンズと発光素子グループの配置関係を示す図である。この組み合わせ位置近傍においても、基本的には、マイクロレンズと発光素子グループの配置関係および動作は図26に示すそれと同一である。つまり、主走査方向MDに互いに隣接するスポットグループを形成するために複数のレンズ対、例えば図27中のレンズLSi−1とレンズLSiは同一のレンズ基板2992に形成されており、これらのレンズ対によりレンズ対(レンズLS1、LS2)と同様にしてスポットグループが形成される。しかしながら、すき間部2995を挟んで対をなし、しかも主走査方向MDに互いに隣接するスポットグループを形成するレンズ対(以下「特別レンズ対」という)、例えば図27中のレンズLSiとレンズLSi+1で構成されるレンズ対については、図25に示すレンズ対(以下「通常レンズ対」という)と異なる構成を有している。すなわち、図27に示すように、レンズLSiに対応する発光素子グループ295では、発光素子2951が2個余分に設けられている。すなわち、発光素子グループ295_iでは、5個の発光素子2951が長手方向LGDに所定間隔(=素子ピッチdpiの2倍)毎に並べられて発光素子行(図2中の符号2951R)が形成されている。また、発光素子行は幅方向LTDに2列並べられている。しかも、長手方向LGDにおける発光素子行のシフト量は素子ピッチdpiとなっている。
図28は特別レンズ対と該レンズ対に対応する発光素子グループにより感光体表面に形成されるスポットの位置を示す図である。この実施形態では、特別レンズ対を構成するレンズLSi、LSi+1のレンズ間距離Piは次式
m
iはレンズLS
iの光学倍率であり、
L
iはレンズLS
iに対向する発光素子グループの長手方向LGDの幅であり、
dp
iはレンズLS
iに対向する発光素子グループでの長手方向LGDにおける発光素子2951のピッチであり、
m
i+1はレンズLS
i+1の光学倍率であり、
L
i+1はレンズLS
i+1に対向する発光素子グループの長手方向LGDの幅であり、
dp
i+1はレンズLS
i+1に対向する発光素子グループでの長手方向LGDにおける発光素子2951のピッチであり、
を満たしている。なお、ピッチdp
i、dp
i+1は予め設計した値や実測値の平均ピッチなどを用いることができる。
このように構成された特別レンズ対によりスポットを形成した際には、主走査方向MDにおいて互いに隣接して形成されるスポットグループSGi、SGi+1は互いに部分的に重なり合い、重複スポット領域ORが形成される。すなわち、この重複スポット領域ORでは、レンズLSiに対応する発光素子グループ295によるスポットの一部(図28中のスポットSPa、SPb)と、レンズLSi+1に対応する発光素子グループ295によるスポットの一部(図28中のスポットSPaa、SPbb)とが重なり合う。なお、この明細書では、重複スポット領域ORを構成するスポットSPa、SPb、SPaa、SPbbを「重複スポット」と称する。
このように構成されたラインヘッド29を用いて感光体表面を露光すると、図29に示すような2次元潜像LIが得られる。すなわち、互いに隣接するスポットグループは部分的に重なり合って重複スポット領域ORを形成している。よって、次の作用効果が得られる。すなわち、レンズアレイ299を製造する際に、レンズ基板2992の組付誤差などによりレンズ基板2992の組み合わせ位置(すき間部2995)を挟んで対をなすレンズLSi、LSi+1が相対的にずれることがある。そして、特別レンズ対について、相対的な位置ずれが発生すると、スポットグループ間に隙間が生じてしまう(同図(a))。これに対し、本実施形態では、上記関係式(1)を満足するように特別レンズ対を構成しているため、これらの問題を発生させることなく、スポットを形成することができる(同図(b))。そして、このような構成されたラインヘッド29を露光手段として用いた画像形成装置では、高品質な画像を形成することができる。
以上のように、第5実施形態によれば、主走査方向MDに互いに隣接するスポットグループSGを形成するレンズ対(レンズLSkとレンズLSk+1:ただし、k=1,2,3,…)のうち特別レンズ対(図27中のレンズLSiとレンズLSi+1)について、当該レンズ対を構成するレンズLSi、LSi+1のレンズ間距離Piが上記関係式(1)を満たすように構成している。これによって、特別レンズ対により主走査方向MDに互いに隣接するスポットグループSGi、SGi+1が副走査方向SDに部分的に重なるように感光体表面(像面)に形成されて重複スポット領域ORが形成される。したがって、特別レンズ対の間に相対的な位置ずれが発生したとしても、スポットグループSGi、SGi+1の間に隙間が生じるのを防止することができる。したがって、このようなレンズアレイ299を採用した画像形成装置では、縦筋を発生させることなく高品質なトナー像を形成することができる。
また、上記実施形態では、全スポットグループSGk(k=1,2,3,…)において、値(mkdpk)と値(mk+1dpk+1)が同一となるように構成しているので、各スポットグループSGでのスポットピッチPspが等しくなり、スポット形成をより良好に行うことができる。また、このようなラインヘッドを用いて画像形成を行うことで高品質な画像が得られる。
なお、ここでは、特別レンズ対のみについて関係式(1)が成立するように構成しているが、主走査方向MDに互いに隣接するスポットグループSGを形成するレンズ対(レンズLSkとレンズLSk+1:ただし、k=1,2,3,…)の全てについて関係式(1)が成立するように構成してもよい。この場合、第1実施形態と同様に、互いに隣接するスポットグループSGの間に重複スポット領域ORが形成される。
また、第5実施形態では、重複スポット領域ORを形成するために、発光素子グループ295_iを構成する発光素子2951の個数を2個増やして重複スポット領域ORを形成している。ここで、特別レンズ対を構成する他方レンズLSi+1に対応する発光素子グループ295_i+1の発光素子数を2個増やしたり、図30に示すように発光素子グループ295_i、295_i+1において1個ずつ増やしてもよい。また、重複させる発光素子2951の個数は「2」に限定されるものではなく、任意である。
また、上記第5実施形態では、4枚のレンズ基板2992を一直線状に組み合わしてレンズアレイ299を構成しているが、複数枚のレンズ基板を任意の形態で組み合わせてレンズアレイを形成したラインヘッド全般に本発明を適用することができる。つまり、複数のレンズ基板を組み合わしたラインヘッドにおいて、レンズ基板の組み合わせ位置を挟んで対をなすレンズ対のうち、長手方向(第1方向)LGDに対応する方向(主走査方向MD)に互いに隣接するスポットグループを形成するレンズ対について、式(1)が満たされるように構成することができる。これにより、特別レンズ対により主走査方向MDに互いに隣接するスポットグループSGが副走査方向SDに部分的に重なるように感光体表面(像面)に形成されて重複スポット領域ORが形成される。したがって、このように構成されたラインヘッドや画像形成装置においても、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
G.第6実施形態
上記第5実施形態では、レンズアレイ299を分割・組立方式で構成しているが、ヘッド基板293を分割・組立方式で構成してもよく、このヘッド基板を用いたラインヘッドおよび画像形成装置に対して本発明を適用することができる。例えば、図31に示すように、発光素子グループ295が形成された素子基板2933、2934を組み合わせてヘッド基板293を構成してもよい。この場合、両素子基板2933、2934の組み合わせ位置2935では組付誤差などにより分割・組立方式によりレンズアレイを構成した場合と同様の問題が発生することがある。つまり、主走査方向MDに互いに隣接するスポットグループの間で縦筋が発生することがある。したがって、このように構成されたラインヘッドや画像形成装置において、次のように構成することによって上記実施形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、素子基板2932の組み合わせ位置2935を挟んで対をなす発光素子グループ対に対向するレンズ対のうち、長手方向(第1方向)LGDに対応する主走査方向MDに互いに隣接するスポットグループを形成する特別レンズ対(レンズLSi、LSi+1)について、式(1)が満たされるように構成する。これによって、特別レンズ対により主走査方向MDに互いに隣接するスポットグループSGi、SGi+1が副走査方向SDに部分的に重なるように感光体表面(像面)に形成されて重複スポット領域ORが形成される。したがって、組み合わせ位置2935での発光素子グループの位置ずれが発生したとしても、良好なスポット形成を行うことができ、縦筋の発生を確実に防止することができる。
H.第7実施形態
本発明は分割・組立方式を採用せずに製造されたレンズアレイ299およびヘッド基板293を用いたラインヘッドおよび画像形成装置に対しても本発明を適用することができる。例えば、図32に示す装置では、マイクロレンズアレイ299の長手方向LGDに3つのレンズ行LSR1〜LSR3が形成されるように、レンズLSが配列されている。このような配列を有するレンズアレイ299では、上記実施形態と同様の問題が発生することがある。つまり、幅方向(第2方向)LTDにおける第1番目のレンズ行LSR1を構成するレンズと第3番目のレンズ行を構成するレンズとは幅方向LTDに離れている。したがって、製造誤差などにより両レンズが相対的にずれることがある。そして、それらのレンズにより構成されるレンズ対のうち長手方向LGDに対応する主走査方向MDに互いに隣接するスポットグループを形成するレンズ対、例えば同図中のレンズLSiとレンズLSi+1で構成されるレンズ対について、相対的な位置ずれが発生すると、スポットグループ間に隙間が生じてしまう。そこで、このようなレンズアレイを採用したラインヘッドや画像形成装置では、レンズLSiとレンズLSi+1のレンズ間距離Piが上記した式(1)を満たすように構成して、特別レンズ対により主走査方向MDに互いに隣接するスポットグループSGi、SGi+1が副走査方向SDに部分的に重なるように感光体表面(像面)に形成されて重複スポット領域ORを形成するのが望ましい。これによって縦筋を発生させることなく高品質なトナー像を形成することができる。
なお、この実施形態では、レンズ行が3列である、つまりN=3の装置に対して本発明を適用しているが、4列以上の装置に対して本発明を適用することができる。すなわち、幅方向LTDにおける第1番目のレンズ行を構成するレンズと幅方向LTDにおける第N番目のレンズ行を構成するレンズとのレンズ対により主走査方向MDに互いに隣接するスポットグループが副走査方向SDに重なるように感光体表面(像面)に形成することで上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
I.第8実施形態
上記実施形態では、主走査方向MDにおいて隣接するスポットグループSGを構成するスポットSPが重複スポット領域ORで重なり合うように構成しているが、副走査方向SDにずれた状態でスポットSPを形成しても上記と同様の作用効果が得られる。例えばスクリーン処理された階調パターンを従来技術(比較例)により形成すると、図33に示す潜像LIが感光体表面(像面)に形成される。つまり、位置ずれ等が発生しない場合には、同図(a)に示すように、主走査方向MDに互いに隣接するスポットグループSGi、SGi+1は連続的に形成される。しかしながら、位置ずれ等が発生すると、同図(b)に示すように、スポットグループSGi、SGi+1が相互に離間して縦筋が発生してしまう。
これに対し、本発明の第8実施形態では、主走査方向MDにおいて隣接するスポットグループの組み合わせのうちの一部または全部についてスポットグループが副走査方向SDにおいて部分的に重なるように感光体表面に形成される。これによって、図34に示すように、スポットグループSGi、SGi+1の間に重なり領域WRが形成される。よって、位置ずれや倍率誤差が発生しない場合(同図(a))がもちろんのこと、発光素子グループ295やマイクロレンズLSの相互位置関係が多少ずれたり、マイクロレンズLSの倍率誤差が生じたとしてもスポットグループSG間に隙間が生じるのを防止することができ、良好なスクリーン処理された潜像LIを形成することができる。また、このようなラインヘッド29を用いて画像形成を行うことで縦筋を発生させることなく良好な階調画像を形成することができる。
J.その他
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、長手方向LGDに所定間隔毎に4個、5個や8個の発光素子2951を並べて構成される発光素子行2951Rを、幅方向LTDに2個並べている。しかしながら、発光素子行2951Rの構成及び配置の態様(換言すれば、複数の発光素子の配置態様)は、これに限られるものではない。要は、複数の発光素子2951の配置態様としては、長手方向LGDの位置がそれぞれ異なるように配置すればよい。
また、上記実施形態では、発光素子2951として有機ELを用いたが、発光素子2951の具体的構成はこれに限られるものではなく、例えばLED(Light Emitting Diode)を発光素子2951として用いても良い。
また、上記実施形態では、感光体ドラム21の表面を本発明の「像面」としているが、この発明の適用対象がこれに限定されない。例えば図35に示すように感光体ベルトを用いた装置に対しても本発明を適用可能である。
図35は本発明にかかるラインヘッドを装備した画像形成装置を示す模式図である。この実施形態が図3の実施形態と大きく相違する点は、感光体の態様である。すなわち、この実施形態では、感光体ドラム21の代わりに感光体ベルト21Bが用いられている。なお、その他の構成は上記実施形態と同様であるため、同一構成については同一または相当符号を付して構成説明を省略する。
この実施形態では、主走査方向MDに伸びる2本のローラ28に感光体ベルト21Bが張架されている。この感光体ベルト21Bは図示を省略する駆動モータによって所定の回転方向D21に回転移動される。また、この感光体ベルト21Bの周囲には、回転方向D21に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25および感光体クリーナ27が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作及びトナー現像動作が実行される。
この実施形態では、ラインヘッド29は感光体ベルト21Bがフラットになる位置に対応して配置されている。したがって、ラインヘッド29からの露光用の光ビームは感光体ベルト21Bに表面に垂直照射されてスポットが形成される。したがって、スポットは常にフラットな感光体の表面に照射されることとなり、スポット形成をさらに良好なものとすることができる。というのも、感光体ドラム21を被走査面とする場合には感光体表面が曲率面を有しているため、スポットSPの変形は避けられない。これに対し、感光体ベルト21Bを用いた装置では、感光体表面はフラットとなり、スポットSPの変形を防止することができ、より良好なスポット形成が可能となる。
また、上記実施形態では、カラー画像形成装置に本発明が適用されているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、いわゆる単色画像を形成するモノクロ画像形成装置に対しても本発明を適用することができる。
21…感光体ドラム(潜像担持体)、 29…ラインヘッド、 293…ヘッド基板、 2933,2934…素子基板、 295…発光素子グループ、 2951…発光素子、 295R…発光素子グループ行、 299…マイクロレンズアレイ、 2991…ガラス基板、 2992…プラスチックレンズ基板、 2993…レンズ、 2995…すき間部(組み合わせ位置)、 D21…搬送方向、 IP…像面、 LGD…長手方向(第1方向)、 LS…マイクロレンズ、 LSR…レンズ行、 LTD…幅方向(第2方向)、 MD…主走査方向、 SD…副走査方向(搬送方向)、 SG…スポットグループ、 SP…スポット