JP5156585B2 - カーボン含有マグネシウム合金の製造方法 - Google Patents
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Description
マグネシウム合金を使用したこれら製品の優位性はそれがプラスチックより強く、アルミニウム合金より軽いという特性を有していることに基づいている。さらに、マグネシウム合金は剛性の高さ、熱伝導性の良さ、優れた振動吸収性および電磁波シールド性、ならびにリサイクルの容易さという特性を有しているので、他の用途にも幅広く拡大しつつある。
例えば、光ディスクのピックアップベースやピックアップボディ、レンズホルダー等の光ピックアップ部品などにおいては、軽量で耐クリープ特性に優れるアルミニウム合金やマグネシウム合金が使用されるようになってきた。マグネシウム合金の中でも極精密成形品を得るために鋳造性に優れるAZ91などが用いられている。このような精密成形品においては、これまで以上の携帯容易性、熱拡散性がもとめられている。
従来のマグネシウム合金の特性改善のため、合金組成の変更や鋳造組織の細粒化、金属以外の成分の混合などが提案されている。また、カーボンを混合して鋳造組織の結晶を細粒化することにより機械特性を改善することなどが提案されている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、マグネシウム合金にカーボンを混合する場合、溶融したマグネシウム合金の上面からカーボンを投入すると、カーボンが上部に浮遊し、大気中で燃焼する危険性がある(図1)。
また、溶融してもカーボンがマグネシウム合金中で数ミリオーダーの凝集体を形成してしまい均一に混合することが難しい(図2)。さらに、マグネシウム合金のインゴットとカーボンを予め加熱容器内に装入し同時加熱した場合(図3)はマグネシウム合金が溶融する前にカーボンが燃焼してしまう危険性がある。また、カーボンなどの添加剤をマグネシウム合金に添加し、溶融した後冷却固化し、次に再溶融して均一化する方法が提案されている(例えば、特許文献2)が、工程が増加し分散も不十分である。粒径5μm以下のグラファイトを不活性ガスキャリアーに随伴させて溶融したマグネシウム合金内に吹き込む混合方法も提案されている(例えば、特許文献3)が、カーボンの含有量を多くできず、生産性に劣り、現実的ではない。
マグネシウム合金とカーボン繊維を混合した複合金属材料やその製造方法については、その他いくつかの報告(例えば、特許文献4、5、6)がなされているが、いずれもマスターバッチ方式によるものではない。
すなわち、本発明は、下記
(1)マグネシウム合金100質量部に対し5〜30質量部のカーボン粉末、カーボンナノファイバーおよびカーボンナノチューブのいずれか少なくとも一種類を混合して放電プラズマ焼結法により調製されたマスターバッチを調製後、加熱溶融したマグネシウム合金中にマスターバッチを投入し、撹拌、均一化することを特徴とするカーボン含有マグネシウム合金の製造方法、
(2)マグネシウム合金がMg−Al系、Mg−Mn系、Mg−Zn系、Mg−Al−Zn系、Mg−Zn−Zr系、Mg−Li系、Mg−Ce−Zr系、又はMg−Al−希土類系のいずれか少なくとも一種である上記(1)に記載のカーボン含有マグネシウム合金の製造方法、
(3)Mg−Al−希土類がMg−Al−Ce、Mg−Al−La、Mg−Al−Ndのいずれか少なくとも一種である上記(2)に記載のカーボン含有マグネシウム合金の製造方法を提供するものである。
大きく分類すると、Mg−Al系、Mg−Mn系、Mg−Zn系、Mg−Al−Zn系、Mg−Zn−Zr系、Mg−Li系、Mg−Ce−Zr系、Mg−Al−希土類系およびこれらにカルシウムを0.1〜10質量%程度の割合で添加したもの、あるいは前記のものにストロンチウムを0.01〜2質量%程度の割合で添加したものなどが挙げられる。
カーボンナノファイバーは溶融紡糸法などで製造されており、直径が100〜500nm程度、長さが1〜1000nm程度のものが好ましく使用される。
カーボンナノチューブは化学気相成長(CVD)法などで製造されており、直径が0.4〜20nm程度、長さ数μm程度のものが好ましく用いられる。
加圧焼結法としては、通常用いられている方法であればいずれでも使用可能であり、具体的には、放電プラズマ焼結法(Spark Plasma Sintering, SPS法)、雰囲気焼結法、反応焼結法、通電加熱焼結法などがある。
これらの中で放電プラズマ焼結法が好ましい。この方法は、例えば、特開平7−216409号公報や特開2001−348277号公報に記載されているように、試料に直接通電することにより、ジュール熱を発生させて加熱するもので、試料内でプラズマが発生して焼結を促進させる。一般的な加熱炉と比較して加熱に要する時間、焼結に要する時間がともに短いことに特徴がある。プラズマ焼結装置としては、住友石炭工業(株)製のSPS−1030S等がある。本装置は縦型の電極配置になっており、下部電極が機械的に駆動し、加熱中に試料を加圧することができる。
マスターバッチの製造は以下のように行った。
マグネシウム合金として、AZ91D粉末(粒径100〜200μm、大晴工業社製)100質量部とカーボンナノファイバー(直径0.2μm、長さ10μm、昭和電工社製)10質量部を混合した。混合物200gを秤量して回転式ボールミル[アサヒ理化製作所製小型ボールミルAV−2型]に投入し、アルゴン置換したグローブボックス中で上記混合物とアルミナボールをアルミナ製ポット(容量1リットル)に封入後、回転数116rpmで18時間処理した。アルミナボールは直径20mmと10mmの2種類のものの合計1kgを使用した。
ボールミルで処理した後に得られた粉末はほぼ200gであり、回収率はほぼ100%であった。この粉末を放電プラズマ焼結装置[住友石炭工業(株)製SPS−1030S、直流出力パルス12V、3000A、油圧縦方向一軸加圧5〜100kN、真空限界6Pa、最高使用温度1700℃]、円筒形ダイス[内径30mm、外径80mm、高さ80mm]、パンチ2個[ともにカーボン製、直径30mm、高さ35mm、2個のパンチの間に離型剤使用]を用いて所定の質量(25〜40g)を填入した。焼結は設定温度430℃、保持時間15分、加圧約6Pa、真空雰囲気という条件で行った。内部を真空にした後、40MPaになるように、ゆっくり一軸加圧した後、加熱を開始した。冷却後、ダイスから取り出したマスターバッチのペレットの外観は均一であった。同ペレットは直径30mm、高さ25〜30mmの円柱形であり、これらを表面研磨した後、鋳造実験に供した。次に、このマスターバッチのペレット50gを700℃に加熱溶融した450gのAZ91D中に投入し、撹拌して均一化することにより約1質量%のカーボンナノファイバーを含有するマグネシウム合金を作製した。
実施例1で使用したものとは異なるサイズのカーボンナノファイバー(直径0.7μm、長さ1μm、昭和電工社製)を用いた以外は実施例1と同様に行い、約1質量%のカーボンナノファイバーを含有するマグネシウム合金を作製した。
カーボンナノファイバーの替わりにカーボン粉末(粒径3μm、日本黒鉛社製)を用いた以外は実施例1と同様に行い、約1質量%のカーボン粉末を含有するマグネシウム合金を作製した。
また、得られた本発明のカーボン含有マグネシウム合金の引張り強度が300MPa以上であれば、十分な機械的強度を有している。
実施例1〜3におけるようなマスターバッチを使用せずに、加熱溶融したAZ91D中にカーボンナノファイバー(比較例1)、カーボンナノチューブ(比較例2)、カーボン粉末(比較例3)の所定量をそれぞれ投入し、約1質量%のカーボン粉末等を含有する比較用のマグネシウム合金を作製した。
カーボン類は使用せずに、AZ91D粉末のみを用い、これを溶融して比較用のマグネシウム合金を作製した。
実施例1〜3、比較例1〜3および参考例で得られた結果を表1に示す。
なお、表1中の略号は以下の通りである。
MB:マスターバッチ
CNF:カーボンナノファイバー
CNT:カーボンナノチューブ
CP:カーボン粉末
2:浮遊したカーボン
3:凝集したカーボン
4:マグネシウム合金の粉末
5:カーボンナノファイバー
6:マスターバッチ
Claims (3)
- マグネシウム合金100質量部に対し5〜30質量部のカーボン粉末、カーボンナノファイバーおよびカーボンナノチューブのいずれか少なくとも一種類を混合して放電プラズマ焼結法により調製されたマスターバッチを調製後、質量比で3〜20倍量の加熱溶融したマグネシウム合金中にマスターバッチを投入し、撹拌、均一化することを特徴とするカーボン含有マグネシウム合金の製造方法。
- マグネシウム合金がMg−Al系、Mg−Mn系、Mg−Zn系、Mg−Al−Zn系、Mg−Zn−Zr系、Mg−Li系、Mg−Ce−Zr系、又はMg−Al−希土類系のいずれか少なくとも一種である請求項1に記載のカーボン含有マグネシウム合金の製造方法。
- Mg−Al−希土類がMg−Al−Ce、Mg−Al−La、Mg−Al−Ndのいずれか少なくとも一種である請求項2に記載のカーボン含有マグネシウム合金の製造方法。
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