JP5153180B2 - イオン照射装置 - Google Patents

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本発明は、イオンビーム電流の変動を検知する手段を備えたイオン照射装置に関する。
半導体プロセス処理、例えばLSIの製造分野では、シリコンウエハに所望のイオンを注入するイオン注入処理が広く行われている。例えば、近年需要の拡大しつつある低温ポリシリコンTFT液晶等に代表される平面型表示装置(以降、FPD(フラットパネルディスプレイ)という)においてもガラス基板上にアクティブマトリクス素子としてTFT(薄膜トランジスタ)が形成される。すなわち、ガラス基板上に形成したポリシリコン層等に一定量のホウ素、りん、砒素等の不純物を極微少量(ppm〜ppbの範囲)含ませるため、イオン注入処理が行われる。イオン注入処理は、チャネル工程、エクステンション工程、LDD工程、およびソース/ドレイン工程、パンチスループット工程など多くの工程で行なわれ、形成するデバイスの特性を左右する重要な処理の1つである。
イオン注入では、チャンバ内に供給された原料ガスを電離させてプラズマを生成し、このプラズマから取り出された荷電粒子からなるイオンビームをターゲット基板に照射するイオン注入装置が用いられる。ところで、FPDの分野では、FPDのサイズ拡大が望まれており、サイズ自体が性能の一要素となっている。このため、例えば1992年から10年間の間にFPD用ガラス基板は360mm×465mmから1500mm×1800mmに、略16倍に拡大されている。このため、イオン注入装置としては、なるべく大型のターゲット基板に対してイオン注入が可能でり、この際、大型基板であっても照射面内でドーズ量がばらつかないことが要求されている。大型基板に対して均一にイオンを注入するための装置として、一方向に長い(ターゲット基板の一辺の長さに比べて長い)幅広形状のイオンビームをターゲット基板に照射させるイオン注入装置が、例えば本願出願人によって提供されている(例えば、下記特許文献1)。
イオン注入装置では、例えば、生成したイオンビームを、ターゲット基板が配置されたプロセス室まで導き、プロセス室内で、プラテンに固定されたターゲット基板をイオンビームに対して上下もしくは左右、回転させることで、ターゲット基板の照射面全体にイオンビームを照射して、イオンを注入している。このため、例えば、イオンビーム電流の大きさが時間的に変動すれば、ターゲット基板の照射面において、イオン注入ドーズ量がばらつく(面内分布が生じる)ことになる。
イオンビーム電流の時間的な変動の要因の1つに、グリッチとよばれるイオンビームの一時的減少が挙げられる。グリッチが生じると、イオンビーム電流が短時間で急激に落ち込み、また短時間で急峻に回復する。このグリッチは、イオン源やイオンビーム引き出し系やビームラインが、徐々に材料ガスによって汚染されていくことで導電性堆積物が形成され、局所的に高電界がかかって放電が生じたり、真空度が変動したりすることで生じる現象である。このグリッチは、装置を運用するにあたって不可避的に生じる現象であり、完全になくすことは困難である。このため、グリッチの発生を検知して、オペレータに報知する機能を持たせたイオン注入装置も、いくつか提案されている。
例えば、ファラデイカップなど、イオンビーム電流の一部が直接照射されることで、照射されたイオンビーム電流の大きさを測定する直接検知手段によって、イオンビーム電流の大きさを検知し、グリッチの発生の有無を判定するものなどがある。このような装置では、例えば、ファラデイカップなどの直接検知手段によって測定されたイオンビーム電流の大きさが、閾値以下になった場合、グリッチが発生したと判定している。ファラデイカップなどの直接電流検知手段は、イオンビーム電流の調節のためにターゲット基板への照射に先がけて行なう、イオンビーム電流密度分布の計測において用いるために、イオン照射装置に広く備えられているものである。グリッチの検知を行なわない場合、ターゲット基板へイオンビームを照射している最中では、直接電流検知手段をイオンビームに直接曝す必要はない。しかし、グリッチの検知を行なう場合は、ターゲット基板とともに、直接電流検知手段にもイオンビームを同時に照射する必要があり、イオンビーム電流のロスが生じる。また、グリッチ検知のための最適な位置に、直接検知手段を配置することは困難であるとともに、イオンビーム電流が直接曝されることによる発熱の問題もある。このため、イオンビームに直接曝されることなくイオンビーム電流の変動を検知することができる、イオンビームの変動検知手段が求められていた。
例えば、下記特許文献2および特許文献3では、イオンビームの流れを遮断せずに、イオンビーム電流を非接触で精度良く測定する装置として、真空配管中を流れるイオンビームにより生じた磁場を、例えばパーマロイ製の磁気コレクタによって超電導素子に導き、この超電導素子によって磁場の磁束を検知することでイオンビーム電流を測定する装置が記載されている。下記特許文献2および3では、dcSQUID素子で構成された超電動素子に、測定しようとする微小磁場がかけられた状態で、一定の電流を流してdcSQUID素子を動作状態にしておき、一方、イオンビーム電流計を介して測定しようとする磁場を打ち消すように布設した電線に電流を流し、dcSQUID素子が準静的状態となるように、打ち消し電流を調整すると記載されている。そして、この準静的な状態になった時の電流量をイオンビーム電流量とみなすと記載されている。
また、下記特許文献4には、既にイオン注入され、そのイオン注入量の均一性が充分でないウエハについて、イオン注入量の補正を行ない得るイオン注入装置が記載されている。下記特許文献4記載のイオン注入装置では、ウエハ面内に対するイオン注入量を、なるべく小さな面積単位で補正する必要があり、イオンビーム径を小さくするための集束レンズ(請求項1等)が設けられている。イオン注入装置では、イオン注入の不均一を補正するために、ビーム電流の絶対値を比較的高い精度で計測することは必須であるといえる。このため、下記特許文献4記載のイオン注入装置には、細く絞ったイオンビームのビーム電流を、非接触ビーム電流計で計測する機構が設けられていると記載されている。下記特許文献4記載のイオン注入装置では、予め、非接触ビーム電流計による計測値を、ファラデーカップによって直接的に検出したビーム電流値によって校正し、ビーム電流の絶対値を計測している。
特開2006−139996号公報 特開平7−135099号公報 特開2003−21670号公報 特開平11−288681号公報
上記特許文献2および特許文献3記載の装置では、超電動素子を用いて、イオンビーム電流によって生じる磁界の大きさを直接検知している。特許文献2および特許文献3記載の装置では、例えば1μA程度のイオンビーム電流を流したときに誘起される磁場が、超電動素子による原理的に測定可能な磁場よりほぼ5桁程度大きいことを利用し、超伝導素子を用いてイオンビーム電流の絶対値を測定している。イオンビーム電流の絶対値を検知するために超電動素子を用いる、特許文献2および特許文献3記載の装置では、磁場を検知できる程度まで超電動素子を冷却するための大掛かりな冷却機構が必要である。特許文献2および特許文献3記載の装置を、従来のイオンビーム照射装置に適用することは、イオンビーム照射装置全体の大きさの極端な増大や、コストの極端な増加につながり、現実的ではない。
また、特許文献4記載のイオン注入装置では、集束レンズによって細く絞ったイオンビームについては、ビーム電流の絶対値を比較的高い制度で計測することはできるかもしれないが、幅広形状で進行するイオンビームについて、ビーム電流の絶対値を高精度に知るためには、イオンビームに対するコイルの位置やイオンビームの電流密度など、様々な情報を知るための大掛かりな機構や、複雑な処理アルゴリズムが必要となる。そもそも、上記特許文献4記載のイオン注入装置は、上述のように、ビーム電流の絶対値を高精度に知ることを目的としているため、イオンビームは細く絞っている必要がある。上記特許文献4には、幅広形状で進行するイオンビームを形成すること自体示唆されておらず、幅広形状で進行するイオンビームを形成するイオン注入装置における、グリッチの検出の問題についても示唆されていない。
そこで、本発明は、イオンビームに直接曝されることなく、比較的小型かつ低いコストで、上記のグリッチを検知することができるイオンビーム電流の変動検知手段を備えたイオン照射装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、一方向に広がった幅広形状のイオンビームを、ターゲットに照射するイオン照射装置であって、前記イオンビームを生成するイオンビーム生成部と、前記イオンビーム生成部から前記ターゲットに至る前記イオンビームの経路上に配置された、前記イオンビームを囲む壁状の磁性体部材と、前記イオンビーム電流によって前記磁性体部材の内部に生じる磁界を囲むよう、前記磁性体部材の一部に導電線が巻き回されてなるコイルと、前記イオンビーム電流の変動に起因した前記磁界の変化にともなう、前記コイルに発生する誘起起電力の大きさを計測する誘起起電力計測部と、前記誘起起電力計測部によって計測された前記誘起起電力の大きさに基き、前記イオンビーム電流の一時的変動を検知する検知部と、前記イオンビーム生成部によって生成された前記イオンビームから所望の質量のイオンのみを選別するとともに、前記イオンビームのビーム幅を拡大するイオン分析部とを有し、前記磁性体部材および前記コイルは、前記イオン分析部に対し、前記イオンビームのより上流側に配置され、前記検知部では、前記誘起起電力の大きさと予め定められた閾値とを比較し、前記誘起起電力大きさが前記閾値を上回った場合、装置内でグリッチが発生したと判定することを特徴とするイオン照射装置を提供する。
なお、前記イオンビーム生成部は、イオンビーム取出口が設けられたチャンバと、前記チャンバ内部に供給された原料ガスをイオン化して前記チャンバ内にプラズマを生成するプラズマ生成手段と、引出電極と、前記引出電極を所定の電位に設定するための電源と、を有して構成されており、前記イオンビーム取出口は、一方向に長いスリット形状であり、前記引出電極が、前記電源によって前記所定の電位に設定されて前記イオンビーム取出口からイオンを引き出すことで、幅広形状の前記イオンビームを生成することが好ましい。
また、前記イオンビームの幅方向の長さは、少なくとも、前記イオンビーム生成部から前記イオン分析部に向かうにしたがい、より長くなることが好ましい。
本発明によれば、イオンビームに直接曝されることなく、比較的小型かつ低いコストで、イオンビーム電流の変動を検知することができる。例えば、イオン照射装置において発生するグリッチを、比較的小型かつ低いコストの装置構成によって、高精度に検知することができる。
以下、本発明のイオン照射装置について、添付の図面に示される好適実施例を基に詳細に説明する。
図1は、本発明のイオン照射装置の一実施形態であるイオン注入装置1を概念的に示す図である。イオン注入装置1は、ビーム断面形状が一方向に長い、幅広形状(リボン形状)のイオンビームをターゲット基板に照射して、ターゲット基板にイオンを均一に注入する装置である。
イオン注入装置1は、イオンビームの上流側から、イオン源21、グリッチ検知器10、イオン分析器22、多極子レンズ23、分離板26及びファラデイカップ28を有し、さらに、最下流側には、ターゲット基板27を移動可能に支える処理部29を有する。イオン注入装置1は、また、オペレータによる入力指示や、装置において取得した各種情報を受け取り、これら各種情報に基づいて、イオン注入装置1の各部の動作を制御するコントロールユニット66と、報知手段68と、を有する。コントロールユニット66は、各種データを取得して処理するためのデータ処理部65と、各部の動作を制御するための制御部64とを有している。コントロールユニット66は、各部が専用回路によって構成された装置であってもよいし、また、メモリに記憶されたプログラムをCPUが実行することで各部が機能するコンピュータであってもよい。
イオン源21は、原料ガスを供給し放電することによりプラズマを生成し、このプラズマからイオンを取り出すことによりイオンビームを作るバーナス型イオン源である。図2は、イオン源21の構成について説明する概略断面図である。イオン源21は、図2に示す様に、チャンバ32、フィラメント34、反射電極板(リペラープレート)36、背面電極板38、絶縁部材40、原料ガス供給口42、イオンビーム取出口44、および所定の電圧を印加する引出電源46と抑制電源45、アーク電源48、フィラメント電源50、原料ガス調整バルブ52を主に有して構成される。チャンバ32は、図示されない減圧容器内に収納され、チャンバ32内で10−3〜10−4(Pa)に減圧された状態となっている。チャンバ32は、アーク放電に対して耐高温性を有する、タングステン、モリブデン、タンタル、炭素等の材料で構成され、導電性を有する放電箱である。チャンバ32の外側には、背面電極板38、フィラメント34および反射電極板36の配置方向(図2中の左右方向)に沿って磁場が形成されるようにN極、S極の磁石47が設けられている。
チャンバ32の内部空間では、フィラメント34から放出された電子と、チャンバ32とフィラメント34との間に印加されたアーク電圧によりアーク放電を開始し、プラズマが励起される。このプラズマ中の電子は、磁石47の磁場の作用によってらせん運動を起こしつつ反射電極板36に向けて移動しながら反射電極板36に到達し、反射電極板36で反射し、背面電極板38に向かう。さらに、背面電極板38において電子は反射される。内部空間で移動する電子は、更にアルゴン等の原料ガス分子に衝突し、ガス分子はイオン化しプラズマが再生成され、生成されたプラズマが内部空間全体で保持される。この状態で、チャンバ32の側壁に設けられた、一方向に長いスリット状のイオンビーム取出口44から、チャンバ32と引出電極49(ここで引出電極49とは、抑制電極49aおよび接地電極49bを代表して表す)の間に印加された電圧によってイオンが引き出され、イオンビーム取出口44のスリット形状に対応した、一方向に広がった幅広形状のイオンビームXが生成される。ここで、接地電極49bは、チャンバ32との間で所定の電位差(引出電圧)が生ずるように引出電源46が設けられ、接地電極49bは、チャンバ32から見て電位が低く設定される(なお、この接地電極49bは接地される)。また、抑制電極49aは、抑制電源45により、接地電極49bよりも低い電位に設定される。チャンバ32内のイオンは、チャンバ32と抑制電極49aとの間の電場で引き出された後、抑制電極49aと接地電極49bとの間の電場(逆電場)により減速されて、下流へと進んでいく。また、チャンバ32に比べて接地電極49bの電位を低くするのみでなく、接地電極49bに比べて抑制電極49aの電位を低く設定していることで、例えば、接地電極49bから下流の2次電子がチャンバ32に流れこむことを防止し、チャンバ32表面が電子によるスパッタ効果によって損傷されることも防止している。イオン源によって調整された直後のイオンビームXは、その進行方向に垂直な断面形状が、幅方向の長さが約50mmであり、厚さ方向の長さが約5.0mmの略矩形形状となっている。図1において、厚さ方向は紙面に垂直な方向であり、幅方向は、イオンビームXの進行方向および厚さ方向の双方に垂直な方向である。
生成されたイオンビームXは、イオン源21からターゲット基板27(処理部29)に向かうにつれて、少なくともイオン分析器22に至るまで、幅方向の長さがより長くなっていく。すなわち、イオンビームXは、少なくともイオン分析器22に至るまで、進行方向の下流側にむかって、少なくとも幅方向に拡がりつつ進行する。イオンビームXの幅方向への拡がりの程度は、イオンビーム取出口44の断面形状や、チャンバ32の表面形状(抑制電極49aと対向する面の形状)、抑制電極49aの断面形状(特に、チャンバ32と対向する面の形状)、イオンビーム取出口44と抑制電極49aとの距離、抑制電極49aと接地電極49bとの距離、抑制電圧や引出電圧の大きさ、などに応じて決まる。本発明のイオン照射装置では、これらの要素を調整することで、イオンビームXの幅方向への拡がりの程度を、所望の範囲に設定すればよい。本実施形態のイオンビーム照射装置では、イオンビームは、後述するイオン分析器22によって曲げられるイオンビーム中心の軌跡を含む平面(図1の紙面に対応する平面)に垂直な方向を厚さ方向とし、イオンビームXの進行方向に垂直で、この平面(図1の紙面)に沿った方向を幅方向としている。本発明のイオンビーム照射装置におけるイオンビームの形状(より詳しくは、イオンビーム中心の軌跡を含む平面に対する、幅方向と厚さ方向の関係)は、本実施形態の例に限定されない。例えば、後述するイオン分析器22によって曲げられるイオンビーム中心の軌跡を含む同一平面(図1の紙面に対応する平面)に垂直な方向を幅方向とし、イオンビームXの進行方向に垂直で、この平面(図1の紙面)に沿った方向を厚さ方向としてもよい。この場合も、イオン源によって調整された直後のイオンビームXは、その進行方向に垂直な断面形状が、厚さ方向の長さに対して幅方向の長さがより長い、略矩形形状となっており、進行方向の下流側にむかって、少なくとも幅方向に拡がりつつ進行することが好ましい。本発明では、イオンビームの形状に関わらず、イオン照射装置において発生するグリッチを高い精度で検出することができる。
図3(a)は、イオンビーム取出口44が設けられたチャンバ32の表面を、図2の中上側から見た上面図を示している。図3(b)は、図2に示す図のうち、イオンビーム取出口44、抑制電極49aおよび接地電極49bの近辺を拡大して示す断面図である。図3(a)に示すように、イオンビーム取出口44の形状(抑制電極49aの側から見た形状)は、上側及び下側の縁が平行で両わきに近付くにつれて狭くなっている細長い孔をもつ。このイオンビーム取出口44から、イオンビーム取出口44の形状に則した形状でイオンが引き出される。また、図3(b)に示すように、チャンバ32の壁面の、イオンビーム取出口44近傍の断面形状は、外側へ凸状に湾曲している。さらに、抑制電極49aの背面(チャンバ32と対向する面)の形状も、このチャンバ32の表面に対応した曲率を有している。チャンバ32と抑制電極49aとの間に形成される電界は、これら曲率に略垂直に形成されるので、この電界によって引き出される(加速される)イオンビームは、進行方向の下流側にむかって、少なくとも幅方向に拡がりつつ進行する。
図4は、グリッチ検知器10の概略構成図である。グリッチ検知器10は、イオン源21によって生成されたイオンビームXのイオン電流の変動を検知して、イオン照射装置1におけるグリッチの発生を検知する。グリッチ検知器10は、イオン源21からターゲット基板27に至るイオンビームXの経路上に配置された、イオンビームを囲む壁状の磁性体部材であるヨーク12と、イオンビーム電流によってヨーク12の内部に生じる磁界Hを囲むよう、ヨーク12の一部に導電線が巻き回されてなるコイル14と、イオンビーム電流の変動に起因した磁界の変化にともなう、コイル14に発生する誘起起電力の大きさを計測する誘起起電力計測部15(起電力計測部15)と、起電力計測部15によって計測された誘起起電力の大きさに基き、イオン照射装置1におけるグリッチの発生を検知する、コントロールユニット66のデータ処理部に備えられた検知部16を有する。
ヨーク12は、透磁率が比較的高い材料、例えばパーマロイ(登録商標)によって形成された、円環状の肉厚な断面をもった管状の部材であり、イオン源21から引き出されたイオンビームX全体が、管路内部を通過するように配置されている。本実施形態では、イオンビームXの中心と、ヨーク12の管路内部の中心とが一致するよう、ヨーク12は配置されている。このヨーク12の一部に導電線がN回(巻き数Nで)巻き回されて、コイル14が形成されている。
ここで、ヨーク12の肉厚が十分小さく、このヨーク12の肉厚部分とヨーク12の管路内部の中心位置との距離(すなわち、ヨーク12の断面の半径)をRとし、イオンビームXが、ヨーク12の管路内部の中心位置を通過する、十分に細い径のイオンビームであるとすると、ヨーク12内には、周知のように(アンペールの法則など)、図4に示すような方向の磁界Hが形成される。この場合、磁界Hの大きさは、式(1)で表すことができる。そして、この場合、ヨーク12内の磁束密度Bは、下記式(2)によって表すことができる。ここで、μはヨーク12の透磁率である。
H=I/(2πR) ・・・(1)
B=μH=μ・I/(2πR) ・・・(2)
イオンビームXの経路に沿ったヨーク12の長さをL、ヨーク12の肉厚をT(ここでは、ヨーク12の肉厚を有効なものとして考える)とすると、ヨーク12内に生じる、イオンビームXに起因する磁束Φは、下記式(3)で表すことができる。
Φ=L・T・B=L・T・μ・I/(2πR) ・・・(3)
イオンビームXのイオン電流IがdI/dtだけ変動した場合(tは時間)、ヨーク12内に生じる、イオンビームXに起因する磁束Φは、下記式(4)だけ変動する。
dΦ/dt=L・T・μ・(dI/dt)/(2πR) ・・・(4)
ヨーク12の一部に導電線が巻き回されてなるコイル14は、導電線がこの磁束Φを囲むように設けられている。周知のように、この磁束ΦがdΦ/dtだけ変動した場合、巻き数Nのコイル14には誘起起電力Eが発生する。この誘起起電力Eの大きさは、下記式(5)で表される。
E=N・dΦ/dt=N・L・T・μ・(dI/dt)/(2πR) ・・・(5)
イオンビームXのイオンビーム電流値Iが変動した際、周知のように、コイル14には上記式(5)で概略的に表される起電力Eが生じる。起電力計測部15は、コイル14に発生する、誘起起電力の大きさを計測する公知の電圧計である。起電力計測部15によって計測された、起電力Eの大きさは、データ処理部65の一部をなす検知部16に送られる。検知部16では、起電力Eの大きさと、予め定められた閾値とを比較して、グリッチの発生を検知する。検知部16では、起電力Eの大きさが閾値より大きい場合、イオン照射装置においてグリッチが発生したものと判定する。
グリッチとは、上述のように、イオン源やイオンビーム引き出し系やビームラインが、徐々に材料ガスによって汚染されていくことで導電性堆積物が形成され、局所的に高電界がかかって放電が生じたり、真空度が変動したりすることで生じる現象である。グリッチが生じると、イオンビーム電流が短時間で急激に落ち込み、また短時間で急峻に回復する。すなわち、グリッチが生じた時点で、上記dI/dtは極端に大きな値となる。本実施形態のようなイオン注入装置において、イオンビーム電流Iの大きさは、最大で100mA、最小で10mA程度である。イオン注入装置において、イオンビーム電流変化量は少なくとも10mA程度となる。イオン注入装置では、グリッチの発生から復旧までの間隔は、一般的に数μsec〜数msecであり、単位時間当たりのビーム電流変化量は、1.0A/sec(=10mA−0mA/0.01sec)〜10A/sec(=100mA−0mA/10−6sec)と考えられる。
グリッチによるイオンビーム電流の変動(dI/dt)は、長期的に発生するイオンビーム電流の変動と比べて極端に大きなものであり、コイル14に生じる誘起起電力Eも、グリッチの発生の時点で極端に大きくなる。グリッチによって生じる誘起起電力Eの大きさは、長期的なイオンビーム電流の変動で生じる誘起起電力の大きさとに比べて極端に大きい。検知部16では、長期的なイオンビーム電流の変動では生じない程度に十分大きな電圧の値を閾値に設定しておき、誘起起電力Eが、この閾値を越えた場合のみ、グリッチを発生したと判定する。このため、グリッチ検知器10では、イオン照射装置10におけるグリッチの発生(dI/dt)を、検知エラーを生じることなく、高精度に検知することができる。グリッチ検知器10は、ヨーク12に導電線を巻きまわしてコイル14を形成したのみの簡単な構成であり、比較的低いコストで構成できるものであるが、グリッチの検知に十分な精度を有している。なお、誘起起電力Eの大きさは、最終的にはインダクタンス{N・L・T・μ/(2πR)}で決まり、例えば、所望の程度の誘起起電力が得られるよう、コイルの巻き数Nや、ヨークの形状(L、T、R)を変更すれよい。例えば、なるべく大きな起電力が生じることが望まれる場合、インダクタンスはなるべく高いことが好ましい。この場合、例えば、コイルの巻き数Nはなるべく多い方が好ましいといえる。
上記式(1)〜(5)では簡略化して表したが、実際のイオンビームは一定の大きさをもっており、また、ヨーク12も一定の肉厚Tをもっているので、ヨーク12内に発生する磁界も、ヨーク12の径方向にある程度の分布を有している。仮に、イオンビーム電流Iの詳細な絶対値を算出しようとすれば、ヨーク12の内側空間におけるイオンビームXの通過位置や、ヨーク12の内側空間におけるイオンビームXのイオンビーム電流密度の分布など、様々な情報が必要であり、これらの情報を得るための大掛かりな機構も当然必要になってくる。しかし、グリッチ検知器10では、グリッチの発生に起因するイオンビーム電流の変動(dI/dt)が、長期的なイオンビーム電流の変動と比べて極端に大きなものであることを利用して、グリッチを検知しており、イオンビーム電流Iの絶対値については、それほど詳細には測定する必要がない。このため、簡単な装置構成をもって、また簡単な処理アルゴリズム(誘起起電力と閾値との比較)で、グリッチを高精度に検知することが可能となっている。
判定結果は、制御部64に送られる。制御部64は、グリッチの発生が検知されたとの情報を受け取った場合、報知手段68を動作させて、オペレータにグリッチの発生を報知する。報知手段68は、例えばディスプレイや警報装置によって構成されている。例えば、グリッチの発生を知らせるための警告画面をディスプレイに表示したり、警報装置によって警告音を発することで、オペレータに対してグリッチの発生を報知する。制御部64は、また、グリッチが頻繁に発生している場合など、装置の異常であると判断して、イオンビームの注入プロセスを中止してもよい。
イオン分析器22は、イオンビームXの向きを変えることにより、所望の質量を有するイオンのみを選別するデバイスである。イオン源21から取り出されて生成されたイオンビームXは、少なくとも幅方向の長さが、イオン分析器22に至るまで徐々に広がりつつ進行し、イオン分析器22に到達した段階では、少なくとも幅方向に一定の拡がりを持っており、質量の異なる種々の荷電粒子からなるイオンが含まれている。イオン注入装置1では所望のイオンのみをターゲット基板27に注入するため、所望のイオンのみイオン照射することができるようにイオンの質量によって選別する。イオン分析器22は、扇形磁石(セクターマグネット)であり、図1中の紙面に垂直方向に磁場を形成するように構成されている。このため、イオンビームX中のイオンが磁場によって曲がるときの軌道半径が、所望の質量を有するイオンのみ、設計されたイオンビームXの経路半径に一致するように設計され、下流側に設けられた分離板26の開口部Aを通過してターゲット基板27に照射される。所望の質量より軽いイオンは、軌道半径が小さく、大きく曲がり、扇形磁石の側面の位置Bや下流側の分離板26の位置Bにおいて遮断される。一方、所望の質量より重いイオンは、軌道半径が大きく、曲がりが小さく、扇形磁石の出口の位置Cや下流側の分離板26の位置Cにおいて遮断される。イオン分析器22内部では、イオンビームの幅方向の長さはより拡大される。イオン分析器22を通過した後は、イオンビームは、幅方向の形状もほとんど拡がらず、平行ビームとして進行する。
なお、本発明のイオン照射装置では、本実施形態のように(図1に示すように)、イオンビームの変動検知器(グリッチ検知器10)が、イオン分析器22に対して、イオンビームXの進行方向のより上流側に配置されていることに限定されず、イオン分析器22に対して、イオンビームXの進行方向のより下流側に配置されていてもよい(例えば、図1中に破線で示す位置Sなど)。ただし、イオン分析器22を通過した後では、イオンビームXの径が極端に大きくなり、イオンビームを囲むためのヨーク(磁性体部材)は、極端に大きくなってしまう。例えば、イオン分析器22の直前位置(進行方向上流側の、イオン分析部22入り口部分)においては、イオンビームXは、その進行方向に垂直な断面形状が、幅方向の長さが約150mmであり、厚さ方向の長さが約70mmの略矩形形状となっている。また、例えば、イオン分析器22よりも進行方向下流側である、ターゲット基板27の直前位置(ターゲット基板27に照射される直前状態)では、幅方向の長さが約720mmであり、厚さ方向の長さが約100mmの略矩形形状となっている。
イオン分析器22を通過した後の、断面形状が極端に大きくなったイオンビームXを囲むためのヨーク(磁性体部材)は、それ自体に多大なコストを要し、また、ヨークを配置することで、イオン照射装置は極端に大きくなってしまう。さらに、上記式(5)におけるRが極端に大きくなってしまうことで、発生する起電力が低下して、グリッチ検知精度が比較的低くなってしまう可能性がある。また、所望の質量を有するイオンのみを選別するので、イオン分析器22の下流側では、イオン分析器22の上流側と比較して、イオンビーム電流Iの大きさが30%程度まで低下してしまう。イオン分析器22の下流側にグリッチ検知器10を配置した場合、このような原因によって、発生する起電力が低下して、グリッチ検知精度が比較的低くなってしまう可能性がある。本発明のイオン照射装置では、本実施形態のように(図1に示すように)、イオンビームの変動検知器(グリッチ検知器10)が、イオン分析器22に対して、イオンビームXの進行方向のより上流側に配置されていることが好ましい。
図5は多極子レンズ23の概略斜視図である。多極子レンズ23は、図5に示すように、複数の電磁石60がイオンビームXの幅方向に隣接して配置され、幅広形状のイオンビームXの形成する幅広面に対して直交する方向に局所磁場を形成し、この局所磁場によって、イオンビームXの電流密度分布を調整するデバイスである。イオン分析器22にて分離され、多極子レンズ23を透過した所望の質量を有するイオンから成る幅広形状のイオンビームXは、10度以下の拡がり角度(イオンビームの幅方向の端における、イオンビームの中心に対する角度)を有する。各電磁石60は、イオンビームXの幅方向に平行して延びる支持棒62に対して直交する方向に鉄心を配置し、その周りに巻き回されたコイルによって構成される。鉄心の断面は長方形〜長円形の形状を成しており、鉄心は、その断面の長手方向(断面が長方形の場合は長辺方向、長円形の場合は長軸方向)が、直下又は直上を通るイオンビームの進行方向に沿うように設けられるのが好ましい。
各電磁石60は、制御ユニット64とそれぞれ接続され、各電磁石60に流れる電流を自在に制御できる構成となっている。電流の制御は、制御ユニット64にて行われ、下流側のターゲット基板27の照射直前の位置でファラデイカップ28によって計測され、データ処理装置65にて作成された電流密度分布のプロファイルに基づいて、電磁石60に流す電流を設定し、電磁石60によって形成される局所磁場を調整、制御する。
ファラデイカップ28は、ターゲット基板27の前方位置に配置され、イオンビームXの幅方向に自在に移動し、イオンビームXの電流密度を計測するデバイスである。この電流密度の計測は、ターゲット基板27へのイオン注入処理の前に行なわれる。計測された電流密度はデータ処理装置65に送られ、データ処理装置65にて、電流密度のプロファイルが作成される。このプロファイルは電流密度の均一性を求めるために用いられる。電流密度の均一性が十分でないと判断される場合、上述したように、多極子レンズ23の電磁石に流す電流を、図示しない電源を介して調整、制御する。
処理部29は、ターゲット基板27を移動可能に支え、ターゲット基板27に対して垂直な方向からイオンビームXを照射することにより、イオン注入を行う部分である。図6は、処理部29の構成について説明する概略断面図である。処理部29は、高真空(10−3〜10−4(Pa))に減圧されたチャンバ80内に設けられ、図6に示すように、プーリ82に張られたベルト84に基台86が設けられ、この基台86にターゲット基板27が支持固定されている。プーリ82は、図示されないモータにより回転が制御され、基台86が図6中の上下方向に移動する構成となっている。このため基台86の移動によりターゲット基板27がイオンビームXの照射位置に対して上下方向に移動することで、ターゲット基板27をイオンビームXに対して走査移動する構成となっている。イオンビームXは、ターゲット基板27の幅に従ってビーム幅が調整されて、イオンビームXのビーム幅はターゲット基板27の幅と一致するか、あるいはそれよりも広くなっている。したがって、イオンビームXを用いて幅の広いターゲット基板27についても効率よくイオン注入することができる。
データ処理装置65は、ファラデイカップ28によって計測されたデータから電流密度分布のプロファイルを算出する。算出されたプロファイルは制御ユニット64に送られ、制御ユニット64は、算出されたプロファイルに基づいて、電磁石60に流す電流を設定する。すなわち、制御ユニット64は、多極子レンズ23が行なうイオンビームの電流密度分布を所望の分布にするように制御する。制御ユニット64は、必要に応じて、電流密度のプロファイルに基づいて多極子レンズ23に流す電流を繰り返し調整、制御する。例えば電流密度が均一でないと判断した場合、イオンビームXが均一になるように電流を調整、制御する。イオン注入装置1は以上のように構成される。
イオン注入装置1によるイオン注入処理では、まず、ターゲット基板27へのイオン注入処理に先がけて、イオンビームXのイオン電流密度分布の調整を行なう。この際、ファラデイカップ28が、イオンビームXの幅方向に移動しつつイオン電流密度を計測する。ファラデイカップ28によって計測された現在のイオン電流密度の情報は、ファラデイカップ28の現在の位置情報とともに、データ処理装置65へ送られる。データ処理装置65は、移動するファラデイカップ28によって計測された、現在の位置情報と現在のイオン電流密度の情報とを時系列に順次受け取り、電流密度分布のプロファイルを算出する。そして、制御ユニット64が、算出された電流密度のプロファイルに基づいて多極子レンズ23に流す電流を調整、制御して、イオンビームXが均一になるように電流を調整、制御する。
ターゲット基板27へのイオン注入処理に先がけて行なう、イオンビームXのイオン電流密度分布の調整の際も、グリッチ検知器10は、常時グリッチの発生を検知する。例えば、ファラデイカップ28におけるイオンビームの電流密度分布の計測の際、あるタイミングAでグリッチが生じたとする。当然、このタイミングAにおけるファラデイカップ28によるイオンビームXのイオン電流密度の計測結果は、このグリッチの発生を反映したものとなる。すなわち、データ処理装置65で算出するプロファイルでは、このタイミングAにおけるファラデイカップの位置におけるイオン電流密度の情報は、グリッチの発生が反映された情報となってしまう。イオン電流密度は、この位置(タイミングAに対応する位置)で長期にわたってイオンビーム電流を照射した際の、平均的なイオン電流密度と異なるものとなってしまう。このような瞬時的に発生したグリッチの影響が反映された情報に基づいて、多極子レンズ23に流す電流を調整、制御して、イオンビームXが均一になるように電流を調整、制御したとしても、イオンビームXを均一にすることはできず、余分な時間を要するだけである。
このため、本実施形態では、イオンビームXのイオン電流密度分布の調整の際も、グリッチ検知器10によってグリッチの発生を検知しておき、例えば、グリッチが生じたタイミングAにおける、ファラデイカップ28による電流密度の計測結果については、多極子レンズ23に流す電流の調整、制御の際に参照しないように設定しておく。例えば、タイミングAにおいて、グリッチ検知器10によってグリッチの発生を検知した場合、このタイミングAでファラデイカップ28によって検知したイオン電流密度の情報については電流密度のプロファイルに加えず、この位置(タイミングAでのファラデイカップ28の位置)におけるイオン電流密度を、再度測定し直して取得すればよい。
イオンビームXのイオン電流密度分布の調整が終了した後、ターゲット基板27へのイオン注入処理を行う。この際も、グリッチ検知器10は、グリッチ発生の有無を検知している。グリッチ検知器10では、上述のように、コイル14に生じる誘起起電力の大きさEを常時モニタし、誘起起電力の大きさEが予め設定された閾値を超えた場合、グリッチが発生したと判断する。そして、制御部64が報知手段68の動作を制御することで、オペレータに対してグリッチの発生を報知する。また、必要に応じて、イオン注入処理を停止してもよい。例えば、1つのイオン注入処理において所定回数以上グリッチが発生すれば、所望の仕様に応じたイオン注入処理が出来ないことが明らかである場合など、この所定回数を予め設定しておき、設定した所定回数以上グリッチが発生したときは、イオン注入処理を停止すればよい。
上記実施形態では、イオンビーム電流の変動検知器を構成する磁性体材料の断面形状は、外形状を円形とした。本発明において、この磁性体材料の形状は特に限定されず、例えば、ビームの形状に併せて、外径状を四角形状としたり、それ以上の多角形状としてもよい。上述のように、本発明のイオン照射装置が備えるイオンビーム電流の変動検知手段では、グリッチの発生に起因するイオンビーム電流の変動(dI/dt)が、長期的なイオンビーム電流の変動と比べて極端に大きなものであることを利用して、グリッチを検知しており、イオンビーム電流Iの絶対値については詳細に測定する必要がない。このため、磁性体材料の断面形状が円形でないとしても、断面形状が円形の場合と同様、簡単な装置構成をもって、また簡単な処理アルゴリズム(誘起起電力と閾値との比較)で、グリッチを高精度に検知することができる。
本発明のイオン照射装置によれば、イオンビームに直接曝されることなく、比較的小型かつ低いコストで、イオンビーム電流の変動を検知することができる。また、本発明のイオン照射装置によれば、イオン照射において発生するグリッチを、比較的小型かつ低いコストの装置構成によって、高精度に検知することができる。イオンビームの変動検知器を用い、イオン照射におけるグリッチを検知することで、イオン照射装置を使用するオペレータは、実施したイオン注入処理などのイオン照射処理においてグリッチが発生したか否かを正確に知ることができ、実施したイオン照射処理の処理精度を把握することができる。また、イオン照射装置におけるグリッチの発生頻度を正確に知ることができるので、イオン照射装置の現在の状態やメンテナンスの必要性の程度など、装置の保守・管理に必要な情報を的確に把握することができる。
以上、本発明のイオン照射装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
本発明のイオン照射装置の一例であるイオン注入装置の概略構成図である。 図1に示すイオン注入装置に用いるイオン源の概略断面図である。 (a)は、イオンビーム取出口が設けられたチャンバの表面を示す概略上面図であり、(b)は、イオンビーム取出口、抑制電極および接地電極の近辺を拡大して示す概略断面図である。 図1に示すイオン注入装置に備えられる、イオンビーム電流の変動検知器の一例であるグリッチ検知器の概略構成図である。 図1に示すイオン注入装置に用いる多極子レンズの概略斜視図である。 図1に示すイオン注入装置に用いる処理部の概略断面図である。
符号の説明
1 イオン注入装置
10 グリッチ検知器
12 ヨーク
14 コイル
15 誘起起電力計測部
16 検知部
21 イオン源
22 イオン分析器
23 多極子レンズ
26 分離板
27 ターゲット基板
28 ファラデイカップ
29 処理部
32 チャンバ
34 フィラメント
36 反射電極板(リペラープレート)
38 背面電極板
40 絶縁部材
42 原料ガス供給口
44 イオンビーム取出口
45 抑制電源
46 引出電源
47 磁石
48 アーク電源
49a 抑制電極
49b 接地電極
50 フィラメント電源
52 原料ガス調整バルブ
60 電磁石
62 支持棒
64 制御部
65 データ処理部
66 コントロールユニット
68 報知手段
80 チャンバ
82 プーリ
84 ベルト
86 基台

Claims (3)

  1. 一方向に広がった幅広形状のイオンビームを、ターゲットに照射するイオン照射装置であって、
    前記イオンビームを生成するイオンビーム生成部と、
    前記イオンビーム生成部から前記ターゲットに至る前記イオンビームの経路上に配置された、前記イオンビームを囲む壁状の磁性体部材と、
    前記イオンビーム電流によって前記磁性体部材の内部に生じる磁界を囲むよう、前記磁性体部材の一部に導電線が巻き回されてなるコイルと、
    前記イオンビーム電流の変動に起因した前記磁界の変化にともなう、前記コイルに発生する誘起起電力の大きさを計測する誘起起電力計測部と、
    前記誘起起電力計測部によって計測された前記誘起起電力の大きさに基づき、前記イオンビーム電流の一時的変動を検知する検知部と、
    前記イオンビーム生成部によって生成された前記イオンビームから所望の質量のイオンのみを選別するとともに、前記イオンビームのビーム幅を拡大するイオン分析部と
    を有し、
    前記磁性体部材および前記コイルは、前記イオン分析部に対し、前記イオンビームのより上流側に配置され、
    前記検知部では、前記誘起起電力の大きさと予め定められた閾値とを比較し、前記誘起起電力大きさが前記閾値を上回った場合、装置内でグリッチが発生したと判定することを特徴とするイオン照射装置。
  2. 前記イオンビーム生成部は、イオンビーム取出口が設けられたチャンバと、前記チャンバ内部に供給された原料ガスをイオン化して前記チャンバ内にプラズマを生成するプラズマ生成手段と、引出電極と、前記引出電極を所定の電位に設定するための電源と、を有して構成されており、
    前記イオンビーム取出口は、一方向に長いスリット形状であり、前記引出電極が、前記電源によって前記所定の電位に設定されて前記イオンビーム取出口からイオンを引き出すことで、幅広形状の前記イオンビームを生成することを特徴とする請求項1記載のイオン照射装置。
  3. 前記イオンビームの幅方向の長さは、少なくとも、前記イオンビーム生成部から前記イオン分析部に向かうにしたがい、より長くなることを特徴とする請求項記載のイオン照射装置。
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