JP5148756B2 - 無線局 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば無線端末および無線基地局等の無線局に関する。
IEEE802.11規格の無線システムは電波干渉障害により通信性能が著しく劣化する。従って、無線システムの高信頼性を安定的に維持する上では、障害が発生すれば速やかにこれを検出して対策を実施することが必要である。
近年の無線システムでは、伝送フレームの復調エラー率を基に電波干渉を検出する方法が利用されている(非特許文献1)。これは、電波干渉の影響を受けた伝送フレームは無線局での復調処理が失敗し、PLCPエラーあるいはCRCエラー等の復調エラーが増加する現象を利用した方法である。また、無線端末間での無線リンクの障害原因を特定する方法がある(特許文献1)。
特開2009−117954号公報
"Intermittent Connectivity Issues in Wireless Bridges", Cisco Troubleshooting Technical notes, Document ID: 66090, Jan. 2008
電波干渉障害を引き起こす原因には、無線局間での同期失敗によるフレーム間干渉、同一周波数帯を使用する電子レンジやBluetooth[TM]等の妨害電波との干渉、壁等の反射波によるマルチパスフェージングなど、様々な種類がある。電波干渉障害を封じ込めるためには、これら原因に応じて適切な対策を講じる必要があり、そのためには従来の干渉検出技術に加えて、干渉原因の種別まで正確に特定する技術が必要となる。
また、従来技術が利用する復調エラーは、必ずしも電波干渉に対してのみ発生する現象ではない。例えば、遠距離や遮蔽によって電波が低受信レベルで受信した場合にも復調エラーは発生する。従って、従来技術は、実際には干渉が発生していないにも関わらず、他の原因によって復調エラーが増加することで、電波干渉障害という誤った検出結果を提示する恐れがある。
本発明は、無線通信の障害原因を正確に特定することを可能とした無線局を提供する。
本発明の一態様としての無線局は、他の無線局と無線リンクを介して接続され、前記無線リンクの障害原因を特定する無線局であって、無線リンク制御方式に従って前記無線リンクの無線リンク制御を実行する無線リンク制御部と、前記無線リンク制御の実行の間、前記無線リンクの状態を表す統計情報を取得する統計情報取得部と、前記統計情報取得部により取得した統計情報に基づき、あらかじめ統計情報と関連づけられた複数の障害原因の中から、前記無線リンクの障害原因を特定する障害原因特定部と、を備える。
本発明により、無線通信の障害原因を正確に特定することが可能となる。
本発明の第1実施形態に係る通信システムの構成例を示す。 第1実施形態に係る無線局の構成例を示す。 統計情報取得部の処理手順の一例の流れを示す。 障害原因特定部の第1の処理の手順の一例の流れを示す。 PSモードに遷移する処理の流れを示す。 Nullフレームのフレーム形式を示す。 RTSフレームおよびCTSフレームのフレーム形式を示す。 障害原因特定部の第2の処理の手順の一例を示す。 混雑状態が発生している状態を示す。 電波雑音による干渉が発生している状態を示す。 隣接チャネル干渉が発生している状態を示す。 シャドウイングが発生している状態を示す。 マルチパスフェージングによる干渉が発生している状態を示す。 2つの無線端末がお互いに隠れ端末の関係となる状態を示す。 接続先無線局の近傍で電波雑音による干渉が発生している状態を示す。 無線リンク制御方式、障害原因、統計情報の関係を表す。 フレーム損失率測定方法、障害要因、フレーム損失率の関係を表す。 障害原因の特定手順の処理フローの一例を示す。 本発明の第2実施形態の無線局の構成例を示す。 図19の無線局の動作の流れを示す。 第2実施形態の無線局の別の構成例を示す。 図21の無線局の動作の流れを示す。
第1実施形態
図1に、本発明の第1実施形態に係る通信システムの構成例を示す。
図1において、1はネットワーク、Aはネットワーク1に接続した無線基地局(無線局)、2は無線リンク、Bは無線リンク2に接続した無線端末(無線局)を表す。なお、図1には、無線基地局Aに接続する無線端末Bを1台だけ示しているが、複数台の無線端末が接続しても構わない。また、本実施形態では無線通信方式として無線LAN(Local Area Network)を例に説明するが、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)に基づく無線通信方式を採用している装置であればどのようなものであっても本発明は適用可能である。
図2に、本実施形態に係る無線局Mの構成例を示す。本実施形態では無線局Mが無線端末Bである場合を説明するが、無線局Mが無線基地局Aであっても構わない。すなわち図2内の各要素11、12、13、14、15は無線端末Bに実装されても、無線基地局Aに実装されてもよい。
統計情報取得部11は、無線端末Bと無線基地局Aとの間に形成された無線リンク2の状態を示す統計情報を取得する。
統計情報記憶部(統計情報DB)12は、統計情報取得部11により取得された統計情報を時間情報と共に記憶する。時間情報は装置内に設けたタイマ(図示せず)から得る。
無線リンク制御部13は、予め指定された無線リンク制御方式に従って、無線リンク2の無線リンク制御を実行する。
損失率測定部(測定部)14は、他の無線局(ここでは無線基地局A)へ試験フレームを送信し、送信したフレームのうち無線局Mに正しく受信されなかったフレームの割合を表すフレーム損失率を測定する。なおフレーム損失率に代えて、無線局に正しく受信されたフレームの割合を示すフレーム到着率を計算してもよい。
障害原因特定部15は、無線リンク制御部13による無線リンク制御の間に取得された統計情報に基づき、あらかじめ統計情報と関連づけられた複数の障害原因の中から、無線リンクの障害原因を特定する。統計情報と複数の障害要因との関連づけは無線リンク制御方式毎に用意される。また障害原因特定部15は、フレーム損失率と複数の障害原因との対応を保持しており、損失率測定部14により測定されたフレーム損失率を用いて無線リンクの障害原因を特定する。
各要素11、12、13、14、15は、ハードウェアとして構成されてもよいし、無線基局M上で実行されるソフトウエアモジュール(プログラム)として実現されてもよい。ソフトウエアとして実現する場合、ソフトウエアモジュールはコンピュータ読み取り可能記録媒体に格納され、CPU等のコンピュータにより読み出されて実行されてもよい。
以下各要素11〜15の詳細を説明する。
図3に統計情報取得部11の処理手順の一例の流れを示す。
統計情報取得部11は、予め定められた統計情報の取得処理を実行することにより、当該統計情報を取得する(ステップS11)。以下に、予め定める統計情報の一例を示す。
<統計情報例>
(1)PLCPプリアンブル同期失敗数
(2)PLCPパリティエラー数
(3)PLCP不正レート数
(4)PLCP不正サービス数
(5)CRCエラー数
(6)ノイズレベル
(7)EVM(Error Vector Magnitude)
(1)のPLCPプリアンブル同期失敗数は、IEEE802.11のPLCP層のフレーム受信処理において、プリアンブル同期に失敗した回数を示す値である。
(2)のPLCPプリアンブルパリティエラー数は、IEEE802.11のPLCP層のフレーム受信処理において、パリティエラーが発生した回数を示す値である。
(3)のPLCP不正レート数は、IEEE802.11のPLCP層のフレーム受信処理において、受信フレームのレートが不正であった回数を示す値である。不正とは例えばフレームレートフィールドに格納された値が、規定値と異なる値であることを意味する。
(4)のPLCP不正サービス数は、IEEE802.11のPLCP層のフレーム受信処理において、受信フレームのサービスが不正であった数を示す値である。不正とは例えばサービスフィールドに格納された値が、規定値と異なる値であることを意味する。
(5)のCRCエラー数は、IEEE802.11のMAC層のフレーム受信処理において、FCSエラーチェックが不正を示した回数を示す値である。
(6)のノイズレベルは、IEEE802.11における受信信号内のノイズ量を示す値である。ノイズレベルは、例えばチャネル毎に測定される。
(7)のEVMは、デジタル変調信号の波形品質を表す指標である。具体的にEVMは、変調方式に応じて一義的に定められた振幅および位相に対する、実際のデジタル変調信号の振幅および位相の誤差を示す。
(1)〜(7)の統計情報の値は、例えば、干渉波を受信した場合や、低受信レベルで受信したフレームの復調に失敗した場合等に増加する。
取得する統計情報は、(1)〜(7)の統計情報のうちの1つでも構わないし、複数を取得しても構わない。また、これらの統計情報に限定することなく、他の種類の統計情報を取得しても構わない。
次に、統計情報取得部11は、取得した統計情報を統計情報記憶部12に時間情報と共に記憶する(ステップS12)。
統計情報の取得を周期的に実行するために、一定時間待機し (ステップS13)、ステップS11に戻ってもよい。周期間隔は、例えば、インターネット上の統計取得ツールでは5分間隔で行うのが一般的である。また、ステップS13の待機時間を、周期タイマと同期して決定することで周期間隔を一定に保ち精度を向上することも可能である。複数の統計情報を取得する場合には統計情報ごとに個別の周期間隔を設定して取得する方法を採用してもよい。また、短時間で変動する統計情報については、無線端末B上で平均値、最大値、最小値、標準偏差等を測定し、これらを統計情報として取得してもよい。
統計情報取得部11の統計情報取得処理(S11〜S13)は、例えば障害原因特定部14からの指示に応じて開始および終了してもよいし、装置の起動中は常時、取得処理を行ってもよい。
障害原因特定部15は、統計情報取得部11と、統計情報DB12と、無線リンク制御部13とを用いて無線リンクの障害原因を特定する(第1の処理)。または、障害原因特定部15は、統計情報取得部11と、統計情報DB12と、無線リンク制御部13と、損失率測定部134とを用いて、無線リンクの障害原因を特定する(第2の処理)。
図4に障害原因特定部15の第1の処理の手順の一例の流れを示す。
まず、障害原因特定部15は処理の開始入力を検知する(ステップS21)。開始入力は、例えば、周期タイマ等からの定期的な入力や管理者からの特定の指示がある。前者のように、定期的に障害原因特定部15に開始入力を与えれば障害の発生状況を定期的に監視することが可能となり、後者のように、管理者からの指示を開始入力として与えれば、管理者がオンデマンドでかつリアルタイムに障害原因の特定を行うことが可能となる。または、無線局Mがフレームの復調エラーを検知した場合に障害原因特定部15に開始指示を入力してもよい。または統計情報の値が予め定めた閾値を超えたときや、フレーム損失率が所定値を超えたときに開始指示を入力してもよい。
開始入力を受けた場合、障害原因特定部15は、統計情報取得部11を用いて統計情報を取得し(ステップS22)、取得した統計情報を統計情報DB12に保存する(ステップS23)。同一種類の統計情報について複数回値を取得したときは平均値、最大値、最小値、標準偏差等を保存し、統計情報として扱ってもよい。なおステップS22,S23で取得した統計情報の値が閾値以下のときは無線リンクに障害は発生していないと判断してステップS24以降の処理を行わないようにしてもよい。すなわち、統計情報の値が閾値より大きいときのみステップS24以降を実施するようにしてもよい。あるいは、ステップS22,S23自体を省略して、ステップS21の次にステップS24に進んでもよい。
次に、障害原因特定部15は、無線リンク制御部13に対し無線リンク制御の実行を指示し、無線リンク制御部13は、予め与えられた無線リンク制御方式に従って無線リンク制御を実行する(ステップS24)。代表的な無線リンク制御方式の一例(方式1〜方式3)を示す。ただし無線リンク制御方式は下記のものに限定されず、後述するように他の種類のも存在する。各方式の詳細は後述する。
(方式1)無線局Mと無線局Mが接続する他の無線局との間の通信の停止
(方式2)無線局Mと無線局Mが接続する他の無線局との間の通信と同一チャネルを使用する、他の異なる無線局による当該同一チャネルでの通信の停止
(方式3)無線局Mと無線局Mが接続する他の無線局との間の通信で使用するチャネルの隣接チャネルを使用する他の異なる無線局による当該隣接チャネルでの通信の停止
障害原因特定部15は、ステップS24での無線リンク制御が実行された状態で、統計情報取得部11を用いて統計情報を取得し(ステップS25)、取得した統計情報を統計情報DB12に保存する(ステップS26)。
複数の無線リンク制御方式をそれぞれ実施する場合は、ステップS24〜S26を繰り返し実施する(図中の矢印付きの点線参照)。この際、直前に行った無線リンク制御は無効にされる。なお、繰り返しの際は、ステップS22〜S26を繰り返し行ってもよい。
ここで、上述の方式1〜方式3の各無線リンク制御方式をそれぞれ詳細に説明する。
(方式1)方式1は、本例(無線局Mが無線端末B、他の無線局が無線基地局A)の場合、無線端末Bと無線基地局Aとの通信を停止する制御を行うものである。具体的には無線端末Bのデータ送信を停止させ、無線基地局Aは無線端末B宛のデータ送信を停止させる。無線基地局Aに無線端末B宛のデータ送信を停止させる方法としては、送信停止を指示する独自のフレームを定義して無線端末Bが無線基地局Aに該フレームを送信することで停止させてもよい。あるいは、無線端末BをIEEE802.11規格で規定されるPS(Power Save)モードに遷移させることで無線基地局Aに無線端末 B宛のデータ送信を停止させてもよい。
図5に無線端末BがNullフレームを用いてPSモードに遷移する処理の流れを示す。
まず、無線端末Bは無線基地局Aに対してNullフレームを送信する(H11)。IEEE802.11規格で規定するNullフレームのフレーム形式を図6に示す。PSモードに遷移することを無線基地局Aに通知するために、Nullフレームの電力管理フィールド(図6におけるPower Managementフィールド)を1にセットする。Nullフレームを受信した無線基地局Aは、無線端末BがPSモードに遷移したことを認識し、無線端末Bに対するACKを返信し(H12)、その後は無線端末B宛のデータ送信を停止する(H13)。ACKを受信した無線端末Bはデータ送信を停止する(H14)。これにより無線基地局Aと無線端末Bとの間の無線通信を停止できる(H15)。また、無線通信の停止を解除する場合には、無線端末Bは電力管理フィールドを0にセットしたNullフレームを無線基地局Aに送信する(H16)。Nullフレームを受信した無線基地局Aは、無線端末BがPSモードを解除したことを認識し、無線端末Bに対するACKの返信し(H17)、その後は無線端末B宛のデータ送信を再開する(H18)。ACKを受信した無線端末Bはデータ送信を再開し(H19)、無線基地局Aと無線端末Bとの間の無線通信停止を解除できる。
ここで、無線基地局Aと無線端末Bとの間の通信を停止する制御を行った場合に無線端末Bが干渉波を受信したとすると、それは第3者となるデバイスが発信する電波であるという特徴がある。例えば、後述するシャドウイングやマルチパスフェージング等の障害の場合は、無線端末Bが発する電波自体がその原因となるため、もし障害原因がシャドウイングやマルチパスフェージング等であったらならば、方式1の無線リンク制御を行うことにより統計情報の値(例えば使用チャネルのノイズレベル)は小さくなる。また、後述する混雑や電波雑音、隣接チャネル干渉の障害の場合は、第3者となるデバイスが発信する電波を無線端末Bが受信することがその障害の原因となるため、方式1の無線リンク制御を実施した後も継続して統計情報の値(例えば使用チャネルのノイズレベル)は大きいままである。したがって、これらの特徴を利用して、方式1の無線リンク制御を実施する後(S25)で取得した統計情報の値を閾値と比較することで、障害原因の切り分けを行うことが可能となる。
(方式2)方式2は、本例の場合、無線基地局Aおよび無線端末B間の通信と同一チャネルで通信する他の無線端末の通信を停止させる制御を行うものである。他の無線端末の通信を停止させる方法としては、例えば、IEEE802.11規格で規定するRTSフレームあるいはCTSフレームを利用する方法がある。RTSフレームおよびCTSフレームのフレーム形式を図7に示す。RTSフレームおよびCTSフレームには無線通信に使用する予定期間を設定するデュレーションフィールド(図7におけるDurationフィールド)があり、RTSフレームあるいはCTSフレームを受信した他の無線端末はデュレーションフィールドに設定された期間、送信を禁止(NAV: Network Allocation Vector)する。したがって、無線端末Bが、他の無線端末の通信を禁止したい所望の期間をデュレーションフィールドに設定したRTSフレームあるいはCTSフレームを送信することで、無線基地局Aおよび無線端末B間の通信と同一チャネルで通信する他の無線端末の通信を停止できる。
ここでRTSフレームおよびCTSフレームの受信により通信を停止するのはIEEE802.11規格に準拠した無線端末のみであり、IEEE802.11規格に準拠しないデバイスによる電波の発信は抑制されない。したがって、この特徴を利用して、方式2の無線リンク制御を実施した後に依然として統計情報の値(例えば使用チャネルのノイズレベル)が大きいままか否かを判定することで、障害原因がIEEE802.11規格に準拠したデバイスが発信した電波により発生したものか、あるいはIEEE802.11規格に準拠しないデバイスが発生したものか、を切り分けることが可能となる。例えば本無線リンク制御を実施する前の統計情報の値(S22)が閾値より大きく、実施後の統計情報の値(S25)が閾値以下となった場合には、障害原因が混雑であるとの推定が可能となる。
(方式3)方式3は、本例の場合、無線基地局Aと無線端末B間の通信に使用するチャネルの隣接チャネルを用いて通信する他の無線端末の通信を停止させる制御を行うものである。方式2と同様にRTSフレームあるいはCTSフレームを利用して当該他の無線端末の通信を停止させるが、本方式ではRTSフレームあるいはCTSフレームを隣接チャネルを使って送信する。これにより隣接チャネルを使って通信する無線端末の通信を停止する。したがって、例えば方式3の無線リンク制御を実施する前の統計情報の値(例えば使用チャネルのノイズレベル)が閾値より大きく、実施後の統計情報の値(例えば使用チャネルのノイズレベル)が閾値以下となった場合には、障害原因が隣接チャネルで通信する無線端末が発信する電波(隣接チャネル干渉)であるとの推定が可能となる。
以上に示した以外にも、無線基地局Aおよび無線端末B間の通信と同一チャネルを使う他の無線端末の通信を停止した上で、無線基地局Aに試験フレームを送信する方式4、無線基地局Aおよび無線端末B間の通信と同一チャネルを使う他の無線端末の通信を停止した上で、方式4よりも低レートで試験フレームを送信する送信する方式5も可能である(後述する図16参照)。試験フレームの送信は後述する損失率測定部14の試験フレーム送信機能を利用して行ってもよい。ここで、試験パケットの送受は複数回実行することで測定精度を高めてもよい。方法5のように、試験パケットの送信レートを低レートに引き下げることで、電波伝搬路の空間損失に対する耐性を高めた状態での測定が可能となり、これにより後述するようにマルチパスフェージングとシャドウイングとの切り分けが可能である。IEEE802.11b規格においては利用可能な送信レートとして1、2、5.5、11Mbpsの4種類が定義されており、方式5ではこの中で方式4よりも低いレートを使用して耐性を高めた上で試験を実施できる。
また方式1と方式2とを同時実行する方式1+2(無線端末Bと無線基地局Aとの通信を停止し、かつ同一チャネルで通信する他の無線端末の通信を停止させる),方式1と方式3とを同時実行する方式1+3(無線端末Bと無線基地局Aとの通信を停止し、かつ隣接チャネルを用いて通信する他の無線端末の通信を停止させる)も可能である(後述する図16参照)。
最後に、障害原因特定部15は、ステップS22〜S26の処理を終えたら、無線リンク制御の間に得た統計情報に基づき、無線リンク制御方式毎に障害原因と統計情報とを対応づけた対応情報(第1対応情報)を利用して、障害原因を特定する(ステップS27)。対応情報は、例えば無線リンク制御方式毎に統計情報の値の範囲と障害原因とを対応付ける。統計情報の値の範囲としては、例えば統計情報の値が閾値以上の範囲と、閾値未満の範囲を用いてもよい。閾値は障害原因毎に異なった値でもよい。障害原因特定部15は、実施した無線リンク制御方式に対応して取得した統計情報の値が範囲に含まれる障害原因を特定する。複数の無線リンク制御方式を行ったときは障害原因を段階的に絞り込むことが可能である。ステップS27の具体例については後述する。
図8に、障害原因特定部15の第2の処理の手順の一例を示す。本第2の処理では、損失率測定部14をさらに用いることで、上述した第1の処理よりも障害原因を細かく特定することが可能となる。ステップS31〜S36は、図4のステップS21〜S26と同じであるため重複する説明を省略する。
ステップS37において損失率測定部14は無線基地局Aと無線端末Bの通信におけるフレーム損失率を測定する。フレーム損失率の測定は無線端末Bから無線基地局Aへ試験パケットを送信し応答フレームを受信することで行う。また、試験パケットとしては、例えば、IEEE802.11で規定するNullフレームを利用できる(図6参照)。
後述の隠れ端末のようにCSMA/CAが有効に機能しない状況では、RTSフレームを使用して測定にかかる予定期間を予約し、隠れ端末とのフレーム衝突を回避した上での測定を実施してもよい。フレーム損失の原因が隠れ端末とのフレーム衝突である場合には、RTSフレームを使用した試験を実施すればフレーム損失率が減少する。したがって、RTSフレームを使用した試験により隠れ端末によるフレーム衝突が発生しているか否かの切り分けが可能である。
最後に、障害原因特定部15は、ステップS31〜S36の処理を終えたら、取得した統計情報と、測定したフレーム損失率とに基づき、無線リンク制御方式毎に障害原因と統計情報の値の範囲とを対応づけた対応情報(第1対応情報)と、フレーム損失率の値の範囲と障害原因とを対応づけた対応情報(第2対応情報)とを利用して、障害原因を特定する(ステップS38)。例えば図4のステップS27で説明したようにして第1対応情報から障害原因を1つまたは複数に特定し、特定した障害原因の中から、第2対応情報に基づき、測定したフレーム損失率の値が含まれる障害要因を最終的な障害要因として絞り込む。ステップS38の具体例は後述する。
次に、障害原因について説明する。なお、以下では説明を簡略化するために無線基地局をAP、無線端末をSTAと呼ぶ。
「混雑」は、あるチャネルに属するSTAの数が増加し、チャネルに属する全てのAPとSTAにおいてCSMA/CAによる衝突回避が頻発する状態と定義する。混雑状態ではSTA間で送信するフレームの同期処理が失敗する確率が高くなり、同時送信によるフレーム衝突が発生する。図9にAPにSTA1、STA2、STA3が接続し混雑状態が発生している状態を示す。STA1および STA2が同時送信した場合にはフレーム衝突による干渉が発生し、その干渉フレームを受信したSTA3はフレーム復調に失敗し前述の統計情報の値が増加する。また、ここではSTA1とSTA2との間で生じる同時送信の例を示しているが、APとSTA1との間、もしくはAPとSTA2との間で同時送信が発生した場合にもSTA3のフレーム復調が失敗し統計情報の値が増加する。
「電波雑音」は、電子レンジやBluetooth[TM]等のIEEE802.11とは規格の異なる同一周波数帯の電波がSTAに届く状態と定義する。図10に電波雑音(電子レンジ)による干渉が発生している状態を示す。電波雑音を受信したSTAはフレーム受信処理を開始するが復調に失敗し統計情報の値が増加する。また、APがSTAに送信したフレームと電波雑音とが干渉した場合にもフレーム復調が失敗し統計情報の値が増加する。
「隣接チャネル干渉」は、STAが使用するチャネルに隣接したチャネルの電波がSTAに届く状態と定義する。IEEE802.11b/g規格では2400MHz〜2497MHz帯を14チャネルに分割しているが、隣接チャネルの帯域は互いに重なり合っているため同時に使用すると干渉が生じる。図11に、隣接チャネル干渉が発生している状態を示す。STA2はSTA1とAPが使用するチャネルの隣接チャネルを使用して通信している。この時、STA2が送信する隣接チャネル上のフレームを受信したSTA1はフレーム復調に失敗し統計情報の値が増加する。また、APがSTA1に送信したフレームとSTA2が送信したフレームとが干渉した場合にもフレーム復調に失敗し統計情報の値が増加する。
「シャドウイング」は、STAとAP間の遮蔽物により直接波が遮られ反射波や回折波で通信する状態と定義する。図12に、シャドウイングが発生している状態を示す。シャドウイングが生じると、STAが受信するフレームの信号電力が弱まるためフレーム復調に失敗し統計情報の値が増加する。また、APとSTAの距離が遠く伝搬損により信号強度が大きく低下する場合もフレーム復調に失敗し統計情報の値が増加する。
「マルチパスフェージング」は、APが送信する直接波の他に、壁等による反射波がSTAに遅延して届く状態と定義する。図13に、マルチパスフェージングによる干渉が発生している状態を示す。マルチパスフェージングが生じると、APが送信する直接波と、遅延して届く反射波の間で符号間干渉が発生するため、STAはフレーム復調に失敗し統計情報の値が増加する。
「隠れ端末」とは、あるSTA同士の間に遮蔽物等が存在し、互いにキャリアセンスが機能しない状態と定義する。図14に、STA1とSTA2がお互いに隠れ端末となる状態を示す。STA1とSTA2がお互いに隠れ端末となる場合には、STA1がAPに対してデータを送信中であるにもかかわらずSTA2がAPに対してデータの送信を開始する事態が発生し、その結果、フレームが衝突して干渉する。隠れ端末ではSTA1,STA2でのフレーム復調の失敗は発生しないが、APはSTA1が送信したフレームの受信に失敗しACKを返信しないため、STAのフレーム損失率が増加する。
「接続先無線局近傍の電波雑音」は、電子レンジやBluetooth[TM]等のIEEE802.11とは規格の異なる同一周波数帯の電波が無線局Mの接続先無線局に届く状態と定義する。図15に接続先無線局の近傍で電波雑音(電子レンジ)による干渉が発生している状態を示す。無線局M(STA)が接続する接続先無線局(AP)近傍で電波雑音が発生すれば、STAがAPに送信したフレームが電波雑音と干渉する。AP近傍の電波雑音ではSTAでのフレーム復調の失敗は発生しないが、APはSTAが送信したフレームの受信に失敗しACKを返信しないため、STAのフレーム損失率が増加する。
次に、無線リンク制御方式、障害原因、統計情報の関係を示す対応情報(第1対応情報)、フレーム損失率測定方法、障害要因、フレーム損失率の関係を示す対応情報(第2対応情報)について説明する。
図16に、無線リンク制御方式、障害原因、統計情報の関係を示す対応情報(第1対応情報)の一例を示す。
図中の「有」および「無」は統計情報の値と閾値との大小関係を示している。「有」は統計情報の値が予め設定した閾値より大、「無」は統計情報の値が当該閾値以下となることを示す。取得した統計情報の値と閾値との比較と、図16の対応情報とに基づいて、障害原因を特定できる。以下、障害原因を特定する一例を示す。
方式1(自身と無線基地局との間の通信を停止する)の実施により得られた統計情報の値(例えばノイズレベル)が「有」と判定されたとき、障害原因を「電波雑音・隣接チャネル干渉・混雑」のいずれかに特定し、「無」と判定されたとき「シャドウイング・マルチパスフェージング・接続先無線局近傍の電波雑音・隠れ端末・障害無し」のいずれかに特定できる。「電波雑音・隣接チャネル干渉・混雑」のいずれかに特定された場合において、「隣接チャネル干渉・電波雑音」の可能性が無いことが事前に分かっているならば、「雑音」1つに特定することも可能である。
また、方式1に加えて、方式1+2(自身と無線基地局との間の通信を停止し、かつ同一チャネルで通信する他の無線端末の通信を停止させる)を実施し、方式1で「有」、方式1+2で「有」と判定されれば障害原因を「電波雑音・隣接チャネル干渉」のいずれかに特定し、方式1が「有」で方式1+2が「無」と判定されれば「混雑」に特定できる。なお方式1+2で用いる統計情報としては例えば使用チャネルのノイズレベルがあり得る。
また、方式1+2と、方式1+3(自身と無線基地局との間の通信を停止し、隣接チャネルで通信する他の無線端末の通信を停止させる)を実施し、方式1+2および方式1+3とも「有」と判定されれば障害原因を「電波雑音」に特定し、方式1+2で「有」、方式1+3で「無」と判定されれば「隣接チャネル干渉」に特定できる。また、方式1+2が「無」、方式1+3が「有」と判定されれば「混雑」に特定できる。なお方式1+2で用いる統計情報としては例えば使用チャネルのノイズレベルがあり得る。
また、方式1と、方式4(同一チャネルの他の無線端末の通信を停止した上、Nullフレームを送信する)をそれぞれ実施し、方式1で「無」、方式4で「有」と判定されれば障害原因を「シャドウイング・マルチパスフェージング」のいずれかに特定できる。方式1で「無」、方式4でも「無」と判定されれば「接続先無線局近傍の電波雑音・隠れ端末・障害無し」のいずれかに特定できる。なお方式4で用いる統計情報としては例えばCRCエラー数、PLCPプリアンブル同期失敗数などがあり得る。
また、方式1と、方式5(同一チャネルの他の無線端末の通信を停止した上、方式4よりも低い送信レートでNullフレームを送信する)をそれぞれ実施し、方式1で「無」、方式5で「無」と判定されれば障害原因を「シャドウイング・隠れ端末・接続先無線局近傍の電波雑音・障害無し」を特定し、方式1で「無」、方式5で「有」と判定されれば「マルチパスフェージング」に特定できる。なお方式5で用いる統計情報としては例えばCRCエラー数、PLCPプリアンブル同期失敗数などがあり得る。
図17に、フレーム損失率測定方法、障害要因、フレーム損失率の関係を示す対応情報(第2対応情報)の一例を示す。
図中の「有」および「無」はフレーム損失率が予め設定した閾値より大、「無」は当該閾値以下となることを示す。測定したフレーム損失率の値と閾値との比較と、図17の対応情報とに基づいて、障害原因を特定できる。
例えば、図16で説明した方法により障害要因が「隠れ端末・接続先無線局近傍の電波雑音・障害無し」に特定されたとき、Nullフレーム送信(第1測定)により測定したフレーム損失率が「有」と判定されれば障害原因を「隠れ端末・接続先無線局近傍の電波雑音」のいずれかに特定し、「無」と判定されれば「障害無し」に特定できる。
また、上記第1測定で「有」と判定された場合、RTSフレームを使用して隠れ端末とのフレーム衝突を予防した上でNullフレームを送信する損失率測定(第2測定)を実施した場合に、フレーム損失率が「有」と判定されれば障害原因を「接続先無線局近傍の電波雑音」に特定し、「無」と判定されれば「隠れ端末」に特定できる。
図18に本実施形態に係る障害原因の特定手順の処理フローの一例を示す。
まず、無線リンク制御部13により方式1(無線基地局Aとの通信を停止)の無線リンク制御を実行し、無線リンク制御の間に統計情報取得部11により統計情報を取得する(ステップS41)。
次に、取得した統計情報の値と閾値とを比較する(ステップS42)。統計情報の値が閾値より大きいとき、無線リンク制御部は方式1+2(無線基地局Aとの通信を停止し、かつ同一チャネルに対するRTSフレームあるいはCTSフレームを送信する)により無線リンク制御を実行し、無線リンク制御の間に統計情報取得部11により統計情報を取得する(ステップS43)。
次に、ステップS43で取得した統計情報の値と閾値とを比較する(ステップS44)。統計情報の値が閾値以下のとき、障害原因を「混雑」に特定する。統計情報の値が閾値より大きいとき、無線リンク制御部13は方式3(無線基地局Aとの通信を停止、かつ隣接チャネルに対するRTSフレームあるいはCTSフレームを送信する)による無線リンク制御を実行し、無線リンク制御の間に統計情報部11により統計情報を取得する(ステップS45)。
次に、ステップS45で取得した統計情報の値と閾値とを比較する(ステップS46)。統計情報の値が閾値以下のとき障害原因を「隣接チャネル干渉」に特定する。統計情報の値が閾値より大きいとき障害原因を「電波雑音」に特定する。
ステップS42にて統計情報が閾値以下であるとき、無線リンク制御部13は方式4(RTSフレームによる保護を行ったNULLフレームの送信)による無線リンク制御を行い、無線リンク制御の間に統計情報を取得する。NULLフレームを送信するのに損失率測定部を利用してもよい(ステップS51)(この場合フレーム損失率も計算され、図17の第2測定も同時に実行することも可能である)。
次に、ステップS51で取得した統計情報の値と閾値とを比較する (ステップS52)。統計情報の値が閾値より大きいとき、無線リンク制御部13は方式5(RTSフレームによる保護を行ったNULLフレームを低レートで送信する)による無線リンク制御を行い、無線リンク制御の間に統計情報を取得する(ステップS53)。なおNULLフレームの送信に損失率測定部を利用してもよい。
次に、ステップS53で取得した統計情報の値と閾値とを比較する (ステップS54)。統計情報が閾値以下のとき障害原因を「シャドウイング」に特定する。また、統計情報の値が閾値より大きいとき障害原因を「マルチパスフェージング」に特定する。
ステップS52にて統計情報の値が閾値以下と判断されたとき、損失率測定部14は上述した第1測定(NULLフレームの送信によるフレーム損失率の測定)を実行する(ステップS61)。
次に、フレーム損失率と閾値とを比較し (ステップS62)、フレーム損失率が閾値以下のとき障害原因を「障害無し」に特定する。また、フレーム損失率が閾値より大きいとき、損失率測定部14は、上述した第2測定(RTSフレームによる保護を行ってNULLフレームを送信するフレーム損失率測定)を実行する(ステップS63)。
次に、ステップS63で取得したフレーム損失率と閾値とを比較する(ステップS64)。フレーム損失率が閾値以下のとき障害原因を「隠れ端末」に特定する。また、フレーム損失率が閾値より大きいとき障害原因を「接続先無線局近傍の電波雑音」に特定する。
以上のフローにより、障害原因を「混雑」「電波雑音」「隣接チャネル干渉」「シャドウイング」「マルチパスフェージング」「隠れ端末」「接続先無線局近傍の電波雑音」「障害無し」のいずれか1つに特定できる。よって本実施形態によれば無線通信の障害原因を正確に特定することができる。
上述した実施形態において、統計情報の閾値およびフレーム損失率の閾値は、障害原因ごとに個別に異なる値を設定することが可能であり、また、無線LANシステムの周囲環境の変化や無線端末が使用するアプリケーションの変更に伴って動的に更新してもよい。
また、本実施形態で採用する統計情報は、無線基地局Aと無線端末Bの接続状態の確立の有無に依らず取得することが可能である。同様に、本実施形態で採用する無線リンク制御方式およびフレーム損失率測定方法は、無線基地局Aと無線端末Bの接続状態の確立の有無に依らず実施することが可能である。従って、本実施形態で示した無線障害の原因推定方法は、例えば、伝播品質が極端に悪く接続状態が確立できない状況においても実現可能という利点がある。
さらに、障害原因が特定できた場合には、障害原因をメール等で即座に管理者に通知して速やかに対策を促すことも可能である。また、混雑のように無線基地局の制御により動的に対策できる障害については、該機能を有する装置に対策を要求し、障害原因の特定から対策までの一連の処理を自動化することも可能である。
第2実施形態
従来の無線LANシステムではフレーム損失が発生すると、伝送レートを低下させることでフレーム損失に対する耐性を持たせる制御が働く。一般的に、この制御はシャドウイングによってSNR(Signal/Noise Ratio)が低下した場合には有効であるが、混雑によってフレーム損失が発生している場合には逆に無線リンクの利用可能帯域を圧迫する結果となり、スループットを著しく低下させる恐れがある。そこで、本実施形態では、障害の原因が混雑であることが特定された場合に、その原因に応じて適切な対策を実施する例を説明する。混雑の特定方法として、チャネル使用率と再送率を利用する方法と、第1実施形態を用いる方法とがある。以下ではまず前者について説明し、その後、後者について説明する。
図19は、本実施形態に係る無線局の構成例を示すブロック図である。
無線局200(例えば図1の無線端末Bに相当)は、通信相手(例えば図1の無線基地局Aに相当)にフレームを無線により送信する送信部202と、通信相手からフレームを無線により受信する受信部201と、送信したフレーム数のうち再送フレーム数の占める割合から再送率を計測する再送率計測部204と、所定の期間のうちチャネルが使用中である期間の割合からチャネル使用率を計測するチャネル使用率計測部203と、再送率およびチャネル使用率に基づいてフレーム(特に再送フレーム)の伝送レートを制御する伝送レート制御部205と、再送を行うか否かを制御する再送制御部206を備えている。
受信部201はアンテナから無線信号を受信し、利用チャネルの信号強度が所定のキャリアセンスレベル以上の場合にはキャリア情報「ビジー」をチャネル使用率計測部203に入力し、キャリアセンスレベル未満の場合にはキャリア情報「アイドル」をチャネル使用率計測部203に入力する。受信部201はさらに受信した信号に対して物理層処理およびMAC層処理を施し、受信した信号にユーザデータが含まれていれば当該ユーザデータを上位層に入力する。
受信部201で受信した信号が自装置宛のACKフレームである場合には再送制御部206にACKフレームを受信した旨を通知する。
チャネル使用率計測部203は所定の期間(例えば60秒間)のうち受信部201から入力されるキャリア情報が「ビジー」である期間の割合(チャネル使用率)を計測し、所定のタイミング(例えば1ミリ秒毎、あるいはキャリア情報が変更になった時など)で更新する。さらにチャネル使用率計測部203は計測したチャネル使用率を伝送レート制御部205に入力する。
再送制御部206は、無線信号を送信したのち、所定の時間内にACKフレームを受信した旨の通知を受けた場合には送信部202に次のデータを送信するよう通知し、所定の時間内にACKフレームを受信した旨の通知を受けなかった場合には送信部202に送信済みのデータを再送するよう通知する。さらに再送制御部206は、同一フレームの再送回数を伝送レート制御部205に通知する。なお、再送制御部206は所定の条件(例えば、再送回数もしくは再送時間が所定の値を超えるなど)を満たした場合にはACKフレームを受信していない場合でも送信部202に次のデータを送信するよう通知することがある。
再送率計測部204は送信部202が送信した所定の数(例えば1000)のフレームのうち再送フレームの占める割合(再送率)を計測し、所定のタイミング(例えば1ミリ秒毎、あるいはフレーム送信するたび毎など)で更新する。さらに再送率計測部204は計測した再送率を伝送レート制御部205に入力する。
伝送レート制御部205は、所定の規則(例えば、再送制御部206より通知された再送回数に応じて伝送レートを順次低い値に変更し、初回の送信でACKフレームを受信した場合には次のデータの初回の伝送レートを前回より高い値に変更するなど)に基づいて送信フレームの伝送レートを制御する。ただし、再送率計測部204から入力された再送率が所定の閾値Aを超え、かつ、チャネル使用率計測部203から入力されたチャネル使用率が所定の閾値Bを超えた場合には、混雑が発生していると判断して、伝送レートを低下させることなく維持する。
図20は無線局200の動作の流れを示すフローチャートである。
例えば、無線局200の閾値Aが10%、閾値Bが60%に設定されており、再送率が5%、チャネル使用率が70%、前回の伝送レートが48Mbpsであったとする。ここで、送信部202から前回送信したデータに対するACKフレームが所定の時間内に受信されないと、再送制御部206は送信部202に送信済みのデータを再送するよう通知すると共に伝送レート制御部205に再送回数(例えば1)を通知する(S211)。
伝送レート制御部205は、再送率が閾値Aを超えていないので(S212のNo)、次に再送するフレームの伝送レートを一段階低い36Mbpsに変更し、送信部202に当該フレームの再送指示を通知する(S215)。送信部202は再送制御部206から受けた再送指示と、伝送レート制御部205から受けた伝送レートに基づいて、送信済みのデータを36Mbpsで送信する(S216)。
次に、上記と同様の閾値で、再送率が15%、チャネル使用率が70%、前回の伝送レートが48Mbpsの場合にフレームロスが発生すると(S211)、伝送レート制御部205は再送率が閾値Aを超え (S212のYes)、チャネル使用率が閾値Bを超えるため(S213のYes)、混雑が発生していると判断し、次に再送するフレームの伝送レートを48Mbpsのまま維持する(S214)。送信部202は再送制御部206の通知と伝送レート制御部205の伝送レートにしたがって通信相手宛のフレームを送信する(S216)。
図21は、本実施形態に係る無線局の別の構成例を示すブロック図である。
無線局220(例えば図1の無線端末Bに相当)は、通信相手(例えば図1の無線基地局Aに相当)にフレームを無線により送信する送信部222と、通信相手からフレームを無線により受信する受信部221と、フレーム(特に再送フレーム)の伝送レートを制御する伝送レート制御部225と、再送を行うか否かを制御する再送制御部226と、障害原因を推定する障害原因推定部223を備えている。障害原因推定部223は図2の統計情報取得部、統計情報DB、無線リンク制御部、損失率測定部、障害原因特定部を含み、障害原因推定部223は第1実施形態の動作に従って無線リンクの障害原因を推定する。
伝送レート制御部205は、上述の所定の規則に基づいて送信フレームの伝送レートを制御する。ただし、障害原因推定部223により障害原因が混雑と推定されたときは、伝送レートを低下させず維持する。
図22は無線局220の動作の流れを示すフローチャートである。
前回の伝送レートは48Mbpsであったとする。送信部222から前回送信したデータに対するACKフレームが所定の時間内に受信されないと、再送制御部226は送信部222に送信済みのデータを再送するよう通知すると共に伝送レート制御部225に再送回数(例えば1)を通知する(S231)。
伝送レート制御部225は、障害原因推定部223から混雑が通知されていないときは(S232のNo)、次に再送するフレームの伝送レートを一段階低い48Mbpsに変更し、送信部222に当該フレームの再送指示を通知する(S235)。送信部222は再送制御部226から受けた再送指示と、伝送レート制御部225から受けた伝送レートに基づいて、送信済みのデータを48Mbpsで送信する(S236)。一方伝送レート制御部225は、ステップS232において混雑を通知されたときは(Yes)、次に再送するフレームの伝送レートを48Mbpsのまま維持する(S234)。送信部222は再送制御部226の通知と伝送レート制御部225の伝送レートにしたがって通信相手宛のフレームを送信する(S236)。
以上、第2実施形態によれば、障害の原因が混雑であることが特定された場合に、再送フレームの伝送レートを維持することにより、スループットの低下を防止する効果を得ることができる。なおここでは再送フレームの伝送レートが維持される例を示したが、その後に送信されるフレームも、混雑が解消されるまで、伝送レートを維持するようにすることも可能である。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。

Claims (10)

  1. 他の無線局と無線リンクを介して接続され、前記無線リンクの障害原因を特定する無線局であって、
    無線リンク制御方式に従って前記無線リンクの無線リンク制御を実行する無線リンク制御部と、
    前記無線リンク制御の実行の間、前記無線リンクの状態を表す統計情報を取得する統計情報取得部と、
    前記統計情報取得部により取得した統計情報に基づき、あらかじめ統計情報と関連づけられた複数の障害原因の中から、前記無線リンクの障害原因を特定する障害原因特定部と、
    を備え、
    前記無線リンク制御方式は、
    前記他の無線局との通信を停止する方式1、
    前記他の無線局と同一チャネルを使用する、前記他の無線局と異なる無線局の通信を停止する方式2、
    前記他の無線局の使用チャネルの隣接チャネルを使用する、前記他の無線局と異なる無線局の通信を停止する方式3、
    前記他の無線局と同一チャネルを使用する、前記他の無線局と異なる無線局の通信を停止して、前記他の無線局に試験フレームを送信する方式4
    前記他の無線局と同一チャネルを使用する、前記他の無線局と異なる無線局の通信を停止して、前記他の無線局に試験フレームを前記方式4よりも低レートで送信する方式5
    の少なくともいずれかを含み、
    各前記方式のそれぞれに対応して前記統計情報と前記複数の障害原因が関連づけられており、
    前記障害原因特定部は、各前記方式のうち実行した方式に応じて前記障害要因を特定する
    ことを特徴とする無線局。
  2. 前記無線リンク制御部は、前記方式1を実行し、前記方式1と前記方式2とを同時実行し、
    前記障害原因特定部は、前記方式1の実行に対応して得られた統計情報と、前記方式1と方式2との同時実行に対応して得られた統計情報とに基づき、前記無線リンクの障害原因を特定する
    ことを特徴とする請求項1に記載の無線局。
  3. 前記無線リンク制御部は、前記方式1と前記方式3を同時実行し、
    前記障害原因特定部は、前記方式1と方式3との同時実行に対応して得られた統計情報に基づき前記無線リンクの障害原因を特定する
    ことを特徴とする請求項2に記載の無線局。
  4. 前記無線リンク制御部は、前記方式4を実行し、
    前記障害原因特定部は、前記方式4の実行に対応して得られた統計情報を用いて、前記無線リンクの障害原因を特定する
    ことを特徴とする請求項3に記載の無線局。
  5. 前記無線リンク制御部は、前記方式5を実行し、
    前記障害原因特定部は、前記方式5の実行に対応して得られた統計情報を用いて前記無線リンクの障害原因を特定する
    ことを特徴とする請求項4に記載の無線局。
  6. 前記他の無線局に試験フレームを送信し、送信した試験フレームの総数と前記他の無線局からの応答フレームの総数とに基づきフレーム損失率を測定する測定部をさらに備え、
    前記障害原因特定部は、さらに、前記フレーム損失率と複数の障害原因との対応を保持しており、前記測定されたフレーム損失率をさらに用いて前記対応に基づき前記無線リンクの障害原因を特定する、
    ことを特徴とする請求項5に記載の無線局。
  7. 前記測定部は、前記他の無線局と異なる無線局による、前記他の無線局と同一チャネルでの通信停止を指示するフレームを送信した上、前記試験フレームを前記他の無線局に送信する
    ことを特徴とする請求項6に記載の無線局。
  8. 前記他の無線局とフレームの送受信を行う通信部と、
    前記フレームの再送制御を行う再送制御部と、
    前記他の無線局へ再送されたフレームの総数または前記フレームの再送率の増加に応じて前記伝送レートを低下させる伝送レート制御部と、を備え、
    前記伝送レート制御部は、前記障害原因が混雑と判定されたときは、前記再送されたフレームの総数または前記フレームの再送率の増加にかかわらず、前記伝送レートを維持する
    ことを特徴とする請求項7に記載の無線局。
  9. 前記障害原因特定部は、前記方式1に対応して得られた統計情報の値が第1閾値より大きく、前記方式4に対応して得られた統計情報の値が第2閾値以下の場合に、前記障害の原因を混雑に特定する
    ことを特徴とする請求項8に記載の無線局。
  10. 前記他の無線局とフレームの送受信を行う通信部と、
    前記フレームの再送制御を行う再送制御部と、
    前記他の無線局に送信したフレーム数に対する再送フレーム数の割合である再送率を計測する再送率計測部と、
    所定の期間のうちチャネルが使用中である期間の割合からチャネル使用率を計測するチャネル使用率計測部と、
    前記再送率と前記チャネル使用率に基づいてフレームの伝送レートを制御する伝送レート制御部と、をさらに備え、
    前記伝送レート制御部は、前記再送率が閾値Aより大きく前記チャネル使用率が閾値Bより大きいときは前記伝送レートを維持し、前記再送率が閾値A以下または前記チャネル使用率が前記閾値B以下のときは前記伝送レートを低下させる
    ことを特徴とする請求項1に記載の無線局。
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