JP5145197B2 - 孔の打抜き方法 - Google Patents

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Description

この発明は孔の打抜き方法に関する。
従来、自動車用バンパー等の三次元形状を有する大型の製品において、例えば牽引フック孔のようにほとんどの機種に必要な孔であれば、バンパーの金型を加工することでその成形時に孔を形成することができるが、ユーザーの要望によって必要となるセンサー孔などは、その形成の機会が僅かな数になる。
したがって、上記センサー孔などを形成する場合には、金型による成形時には当該孔を形成せずに、必要となった場合にのみ、例えば特許文献1,2に記載の自動化装置によって別途孔の形成を行うようにしている。これは、複数の打抜き孔を精度よく形成するという点で好ましい。
特開平3−208509号公報 特開2002−18794号公報
しかし、上記従来の如く自動化装置による孔加工を行うと、その使用頻度が少ないにもかかわらず設備の大型化を招き、設備投資が多大に必要になるばかりか、そのメンテナンスにも時間や労力を多く必要とするという課題がある。
この発明は上記事情に鑑みてなされたもので、三次元形状をなすワークに複数の孔を打抜いて形成するため孔の打抜き方法において、各孔の高い打抜き精度を低コストで実現可能とすることを目的とする。
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、三次元形状をなすワーク(例えば実施例のワークW)に複数の孔(例えば実施例の孔29)を打抜いて形成するための孔の打抜き方法であって、移動自在な台車機構(例えば実施例の台車機構1)の基台(例えば実施例の基台2)上に所定の作業位置に対して出し入れ自在に設けられた基板(例えば実施例の基板3)と、該基板上に設けられて前記ワークの裏面を当接支持するように該ワークを載置する載置台(例えば実施例の載置台7)と、該載置台上にワークを載置した際に該ワークの所定箇所を貫通する位置決めピン(例えば実施例の位置決めピン8)と、前記基台及び基板に跨って構成される複数の打抜き機構(例えば実施例の打抜き機構5)と、を備え、前記各打抜き機構は、前記載置台上に載置されたワークにおける複数の孔開け箇所(例えば実施例の孔開け箇所30)の裏面に対向するように前記基板上に配設される複数の下刃(例えば実施例の下刃10)と、該各下刃に対向するように前記基台上に配設されて前記各孔開け箇所の表面に対して近接離反可能に設けられると共に前記各孔開け箇所の周囲の表面に当接して下刃側に押圧する複数の押圧部材(例えば実施例の押圧部材19)と、前記各下刃に対向するように前記基台上に配設されて前記各孔開け箇所の表面に対して近接離反可能に設けられると共に前記各下刃と協働して前記各孔開け箇所に所定の孔を打抜く複数のパンチ(例えば実施例のパンチ9)と、を有してなり、前記各打抜き機構の一つを用いて前記ワークへの最初の孔の打抜き作業を行い、該孔の内周と前記パンチの外周との摩擦係合を利用して該パンチを前記孔に挿通したままとし、この状態で他の打抜き機構を用いて順次打抜き作業を行い、最後の孔の打抜き作業の後に最初の孔の打抜き作業を行った打抜き機構のパンチをワークから抜き取ることを特徴とする。
請求項2に記載した発明は、前記各押圧部材は、前記ワークから離反する側に付勢され、対応する打抜き機構による打抜き作業時にのみ、前記孔開け箇所の周囲を押圧することを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、前記各打抜き機構は、前記ワークの長手方向で並ぶように配設され、その並び方向一端側に位置する打抜き機構により最初の孔の打抜き作業を行うと共に、並び方向他端側に位置する打抜き機構により最後の孔の打抜き作業を行うことを特徴とする。
請求項1に記載した発明によれば、パンチの外周と打抜き孔の内周とは互いに摩擦係合することから、パンチによる打抜き作業後に該パンチを戻さずに前記孔に挿通したままとすることで、該パンチをワークの位置決めピンとしても利用可能となる。この状態で順次打抜き作業を行うことで、大型で撓み易いワークであっても打抜き作業時における撓みを効果的に抑制でき、各孔の打抜き精度を低コストで高めることができる。
このとき、最初の孔の打抜き作業に用いたパンチを前記孔に挿通したままとし、この状態で他の孔の打抜き作業を順次行い、最後の孔の打抜き作業の後に前記パンチをワークから抜き取ることで、前記パンチをワークの位置決めピンとしても効果的に利用することができる。
請求項2に記載した発明によれば、必要時にのみ各押圧部材をワークの表面に当接させることとなり、該ワークの表面に対する傷付きを抑制することができる。また、押圧部材の操作を解除するのみで該押圧部材をワークから離反させることで、孔の打抜き作業の工数削減を図ることができる。
請求項3に記載した発明によれば、ワークの長手方向一端側から他端側に向けて順次打抜き作業を行うこととなり、前記長手方向に沿って複数の孔の打抜き作業を効率よく行うことができる。


以下、この発明の実施例について図面を参照して説明する。なお、説明都合上、図中矢印FRは前方を、矢印LHは左方を、矢印UPは上方をそれぞれ示す。
図1に示す孔の打抜き装置(以下、単に打抜き装置ということがある)6は、例えば塗装後の自動車用バンパーにセンサー取り付け用の孔を打抜いて形成するためのものである。
図11(A)を併せて参照し、打抜き装置6にセットされるワークWとしてのリヤバンパーは、該リヤバンパーの下面視(当該装置6の前面視(図7)参照)及び側面視(当該装置6の側面視(図2)参照)で車両後方に凸の湾曲状(膨出状)をなす外殻部材である。
ワークW(リヤバンパー)は例えばポリプロピレン等の合成樹脂からなり、車幅方向(左右方向)に長い部材とされる。このワークWの上下中間部において所定間隔を空けて左右に並ぶように、互いに同形状をなす複数の孔29が形成される。
図11(B)を参照し、各孔29は、平面視円形の基準円部29aと、該基準円部29aの外周の一部を平面視半円状に切り欠いてなる小凹部29bとを有してなる。前記小凹部29bは、当該孔29に嵌合装着される円柱状のセンサーに対し、その外周に突設される回り止め用の凸部を係合させるものである。
図1,2を参照し、打抜き装置6は、ベースフレーム1a下に複数のキャスター1bを有して床面を移動自在に設けられる台車機構1と、前記ベースフレーム1aの上端部を構成する略水平な基台2と、該基台2上に当該装置6の打抜き作業位置に対して前後に出し入れ可能に設けられる略水平な基板3と、該基板3上に固定的に設けられて上方から被せるように載置されたワークW(前記リヤバンパー)の裏面(内面)を当接支持する載置台7と、該載置台7上にワークWを載置した際に該ワークWの所定箇所(例えば車体取り付け用の左右上部フランジf、図11参照)を下方から貫通する左右一対の位置決めピン8と、前記基台2及び基板3に跨って構成される複数の打抜き機構5とを備える。
基板3は、該基板3の下面と基台2の上面との間に配設された前後に延びるスライドレール機構2a及びガイドレール機構2bを介して、基台2上に前後移動可能に支持される。基板3の前端部には、該基板3の出し入れ操作を行うための取っ手12が左右一対に設けられると共に、該左右取っ手12の間には、基板3の前後移動を前記作業位置でロックするためのハンドル付きの基準ピン13(ロックピン)が設けられる。基準ピン13は基板3に対して上下動のみ可能であり、この基準ピン13を係合させるピン受け14が基台2の前端部に固定的に設けられる。
基板3上には、例えば木型上に樹脂等の軟質材料でワークWの裏面に倣った型を形成してなる載置台7が設けられる。載置台7上には、これを上方から覆うようにして前記ワークWが載置される。このとき、ワークW(リヤバンパー)の上下方向が当該装置6の前後方向と略平行となる。またこのとき、載置台7の後方において基台2上に固設された前記左右位置決めピン8が、ワークWの前記左右上部フランジfを下方から貫通する。各位置決めピン8は、基台2上に上下方向(ひいてはワークWの載置台7への載置方向)と略平行に突出し、ワークWの載置台7への載置動作に伴い該ワークWに自動的に挿通され、もって基板3に対するワークW全体の水平方向での位置決めがなされる。なお、ワークW全体の上下方向での位置決めは、ワークWの裏面に載置台7の表面が当接することでなされる。
図3を併せて参照し、前記各打抜き機構5は、載置台7に載置されたワークWにおける複数の孔開け箇所30の裏面に対向するように前記基板3上に配設される複数の下刃10と、該各下刃10に対向するように前記基台2上に配設されて前記各孔開け箇所30の表面に対して近接離反可能に設けられると共に前記各孔開け箇所30の周囲の表面に当接して下刃10側に押圧する複数の押圧部材19と、前記各下刃10に対向するように前記基台2上に配設されて前記各孔開け箇所30の表面に対して近接離反可能に設けられると共に前記各下刃10と協働して前記各孔開け箇所30に所定の孔29を打抜く複数のパンチ9とを有してなる。
下刃10は、その上端部に前記孔29と略同形状の開口10aを有する筒状のもので、前記上端部を対応する孔開け箇所30の裏面に沿わせるように前面視で傾斜して配置される。下刃10の上端面は、載置台7にワークWを載置した際には、該ワークWの内面に載置台7の外面と共に当接する。なお、各下刃10は同一構成とされ、基板3に対して個別の台座4を介して設置されることで、対応する孔開け箇所30に応じて高さ及び角度を異ならせる。各下刃10は台座4に対して着脱可能(交換可能)である。また、各台座4及び載置台7も基板3に対して着脱可能(交換可能)であり、かつ基板3上の異なる位置に設置可能であり、異なる機種のワークWにも対応可能である。
パンチ9は、載置台7の上方において対応する下刃10の延長上に同軸に設けられる。パンチ9は、後述のストローク機構25の作用により自身の軸方向に沿って上下に往復動する。このパンチ9が下降した際には、その先端部(下端部、切り刃)が対応する下刃10の上端開口10a内に挿入され、もって対応する孔開け箇所30に前記孔29が打抜かれる。
図6(A),(B)を参照し、パンチ9の切り刃は、前記孔29の基準円部29a及び小凹部29bと略同一の断面形状を形成するべく、円柱状部9aの外周の一部にビード状の小凸部9bを有してなる。このパンチ9の先端部が、下刃10の上端開口10a内に整合するようにその上方から挿入される。
図2〜5を参照し、ストローク機構25は、載置台7の上方において対応するパンチ9及び下刃10と同軸に設けられるストロークロッド26と、該ストロークロッド26をその軸方向に沿って上下動可能に挿通保持するホルダ27と、該ホルダ27を支持するべく基台2上に固定的に立設された支持フレーム28とを有してなる。支持フレーム28は、基板3の後方において基台2から上方に起立し、その上部を前方に延出させることで、載置台7を避けるように鉤形に形成される。この支持フレーム28の上部前端部に、前記ホルダ27が固定的に支持され、このホルダ27が支持するストロークロッド26の先端部(下端部)に、前記パンチ9の基端部(上端部)が固定的に連結される。
なお、各ストローク機構25及び各パンチ9はそれぞれ同一構成とされ、基台2に対して支持フレーム28を介して設置されることで、対応する下刃10に応じて高さ及び角度を異ならせる。各パンチ9はストロークロッド26に対して着脱可能(交換可能)である。また、各支持フレーム28も基台2に対して着脱可能(交換可能)であり、かつ基台2上の異なる位置に設置可能であり、異なる機種のワークWにも対応可能である。
ストロークロッド26の上端部には、棒状の操作レバー16の前後中間部が左右方向に沿う第一連結軸22を介して揺動可能に連結される。操作レバー16の前端部は、作業者が把持し上下動させるハンドル部16aとされる。操作レバー16における前記第一連結軸22の後方部位には、比較的短い中継リンク16bの上端部が左右方向に沿う第二連結軸21を介して揺動可能に連結される。中継リンク16bの下端部は、前記ホルダ27の上端部に左右方向に沿う第三連結軸20を介して揺動可能に連結される。これにより、操作レバー16が中継リンク16b周りを中心に上下に揺動して前記ストロークロッド26及びパンチ9をその軸方向に沿って上下動させる。
操作レバー16の後端部には、該操作レバー16の前端側(ハンドル部16a側)を上方に移動させるべく操作レバー16を付勢する錘11(カウンターウェイト)が設けられる。すなわち、操作レバー16は、ハンドル部16aやパンチ9等に何ら力が付与されない状態では、錘11の作用によりハンドル部16a側を上方に変位させ、ストロークロッド26及びパンチ9を上方に移動させる。ストロークロッド26及びパンチ9の上方への移動限界位置(上限位置)は、錘11の下面がホルダ27の後部上端に当接することで規定される(図3に鎖線で示す)。ストロークロッド26及びパンチ9が上限位置にある状態では、パンチ9の先端部が下刃10の上端開口10aから上方へ抜き出ると共にワークWの表面(外面)から上方へ所定量離間する。
一方、前記錘11の付勢力に抗して操作レバー16の前端側を下方に移動させることで、ストロークロッド26及びパンチ9が下方に移動する。ストロークロッド26及びパンチ9の下方への移動限界位置(下限位置)は、操作レバー16の第一及び第二連結軸22,21間の部位がホルダ27に固設されたストッパーボルト15の上端に当接することで規定される(図3に実線で示す)。ストロークロッド26及びパンチ9が下限位置にある状態では、パンチ9の先端部が下刃10の上部開口10a内に所定量入り込む。
図3〜5を参照し、押圧部材19は、ワークWの孔開け箇所30の表面に沿うように配される板状のもので、例えばウレタンゴム等の軟質材料からなる。押圧部材19は、これと平行な板状のベース部材19aの下面に一体的に固定される。押圧部材19及びベース部材19aの平面視中央部には、これらをその直交方向で上下に貫通する貫通孔19bが形成される。貫通孔19bは、前記平面視で対応する孔開け箇所30を避けるように形成され、もって押圧部材19が孔開け箇所30の周囲の表面を押圧可能となり、かつこの状態でパンチ9を下降させて孔開け箇所30に孔29を打抜き可能となる。
ベース部材19aの後端部には連結片19cが立設され、該連結片19cの上端部がホルダ27の下端部に左右方向に沿う第四連結軸18を介して揺動可能に連結される。ベース部材19aの上面の左右両側には下係止ピン23aが固設されると共に、ホルダ27の前面の左右両側には上係止ピン23bが固設され、これら各係止ピン23a,23bの間に、付勢バネ23(引張りコイルバネ)がそれぞれ張設される。これら左右付勢バネ23の付勢力により、ベース部材19a及び押圧部材19が上方へ揺動する側(ワークWから離間する側)に付勢される。
ベース部材19aの前端部には左右方向に沿う操作ハンドル17が連設され、該操作ハンドル17を前記各付勢バネ23の付勢力に抗して下方に移動させることで、押圧部材19がベース部材19aと共に下方すなわちワークWに近接する側に移動し、孔開け箇所30の周囲の表面に当接可能となる。ベース部材19a及び押圧部材19の下方への移動限界位置(下限位置)は、押圧部材19の下面がワークWの表面に当接することで規定される(図3に実線で示す)。そして、押圧部材19がワークWの表面に当接した状態で、操作ハンドル17にさらに下方への力を付与することで、押圧部材19がワークWの表面を押圧可能となる。
一方、操作ハンドル17への下方への操作力を解除したとき(操作ハンドル17の非操作時)には、前記各付勢バネ23の付勢力により押圧部材19がベース部材19aと共に上方すなわちワークWから離反する側に揺動する。ベース部材19a及び押圧部材19の上方への移動限界位置(上限位置)は、ベース部材19aの上面がホルダ27に固設されたストッパーボルト24の下端に当接することで規定される(図3に鎖線で示す)。ベース部材19a及び押圧部材19が上限位置にある状態では、押圧部材19がワークWの表面から上方へ所定量離間する。
次に、上記打抜き装置6を用いてワークWの各孔開け箇所30に孔29を打抜く際の一手順について説明する。
まず、前記台車機構1を用いて当該装置6を工場内の所定場所に移動させる。当該装置6の設置は、各キャスター1bに並設された伸縮可能な固定脚1c(図2参照)を用いて固定的に行う。なお、図中符号1dは台車機構1の一側に設けられた移動用の取っ手を示す。
次いで、当該装置6にワークWをセットする際には、まず、作業者が前記取っ手12を持って基板3を基台2上の作業位置から略水平に手前に引き出す(図2に鎖線で示す)。これにより、基台2上に支持される各押圧部材19及び各パンチ9に対して、基板3上に支持される載置台7及び各下刃10を手前に引き出すことが可能である。このため、各押圧部材19及び各パンチ9に妨げられることなく、かつ楽な作業姿勢で、三次元形状のワークWを載置台7上にその上方から容易に載置することができる。このとき、ワークWの載置動作に伴い該ワークWの所定位置を前記位置決めピン8が貫通することで、載置台7及び各下刃10に対するワークWの位置決めがなされる。
この後、作業者が取っ手12を持って基板3を基台2上の作業位置に押し戻すことで、当該装置6へのワークWのセットが完了する。このとき、基台2上に支持される各押圧部材19及び各パンチ9が、前記付勢バネ23及び錘11の作用によりワークW表面から上方へ所定量離間した位置に保持されているため(図1参照)、各押圧部材19及び各パンチ9を上方へ移動させる手間を要することなく、ワークWと共に基板3を作業位置に戻すことができる。基板3を押し戻した後には、前記基準ピン13をピン受け14に係合させることで、基台2に対する基板3の位置決め(ひいては各パンチ9に対する各下刃10の位置決め)が確固としてなされる。
ワークWのセット後には、各打抜き機構5を用いてワークWへの孔29の打抜き作業を順次行うことができる。以下、ワークWの長手方向一端側(例えば左端)に位置する打抜き機構5から右側へ順に打抜き作業を行う際の手順を説明する。
まず、左端の打抜き機構5に前方から向かい合った作業者が、その左手で前記操作ハンドル17を把持してこれを下方へ押し下げ、押圧部材19をワークWの孔開け箇所30の周囲の表面に当接させてこれを下刃10側に押圧する(図7参照)。これにより、押圧部材19及び下刃10でワークWの孔開け箇所30の周囲を挟持し、孔29の打抜き作業時におけるワークWのズレを予め防止する。
この状態で、作業者がその右手で前記操作レバー16のハンドル部16aを把持してこれを下方に押し下げることで、パンチ9がその軸方向に沿って下降し、その先端部(切り刃)でワークWの孔開け箇所30を切除しつつ下刃10の上端開口10a内に入り込む。これにより、前記孔開け箇所30の周縁がパンチ9及び下刃10の協働により破断されて、当該箇所に前記孔29が打抜き形成される。
このとき、樹脂製のワークWの孔29の内周がパンチ9の先端部の外周に密接してこれらが摩擦係合することで、作業者が操作レバー16から右手を離しても、錘11の付勢力に抗してパンチ9が下降した状態に保たれ、もって該パンチ9がワークWを貫通した状態に保たれる(図8参照)。このパンチ9が、ワークWの長手方向一端側の位置決めピンとしても利用される。
一方、押圧部材19においては、作業者が操作ハンドル17を離せば、前記付勢バネ23の付勢力により押圧部材19が上方に移動してワークWから離間する(図8参照)。すなわち、押圧部材19は対応する孔29の打抜き作業時にのみワークWの表面に当接しこれを押圧するもので、他の孔29の打抜き作業時にはワークWから離間するものであり、塗装面であるワークWの表面の擦り傷等の発生が抑えられる。
左端の打抜き機構5による打抜き作業後には、作業者が左から二番目の打抜き機構5の前に移動し、該打抜き機構5による上記同様の打抜き作業を行う(図8参照)。この打抜き作業後には、操作レバー16を戻してパンチ9をワークWから強制的に引き抜いている。操作レバー16の戻しは、作業者がハンドル部16aに上方への操作力を付与すればよいが、この操作力は、操作レバー16のレバー比や錘11の作用により小さくて済む。また、パンチ9をワークWから抜き取りさえすれば、錘11の作用により操作レバー16が自動的に上限位置まで揺動するので、ハンドル部16aを上方まで移動しきる手間が省かれる。
その後、作業者が左から三番目の打抜き機構5の前に移動し、該打抜き機構5による上記同様の打抜き作業を行う(図9参照)。この打抜き作業後にも、操作レバー16を戻してパンチ9をワークから強制的に引き抜いている。
なお、左から二番目及び三番目の打抜き機構5で上記打抜き作業を行った後に、左端の打抜き機構5と同様にパンチ9をワークWに摩擦係合させたままとしてもよいが、全ての孔29を打抜いた後の操作レバー16の戻し作業の煩雑さを無くすために、打抜き作業毎に操作レバー16を戻してパンチ9をワークWから強制的に引き抜くことが望ましい。
そして、作業者が右端の打抜き機構5の前に移動し、該打抜き機構5による上記同様の打抜き作業を行った後(図10参照)、その操作レバー16を戻してパンチ9をワークWから抜き取った後には、左端の打抜き機構5の前まで作業者が戻り、その操作レバー16を戻してパンチ9をワークWから抜き取る。その後、前記基準ピン13の係合を解除して基板3を手前に引き出すことで、複数の孔29を全て打抜き形成したワークWを取り出すことができる。
このように、左端の打抜き機構5のパンチ9と前記一対の位置決めピン8とでワークWを位置決めした状態で、該ワークWへの打抜き作業を右側へ順次行うことで、該ワークWが大型で撓み易いものであっても、その各孔開け箇所30の近傍において確固として位置決めを行うことが可能となり、基板3や載置台7等への位置決め手段の増設を不要にすると共に、該ワークWを安定した状態に保って打抜き作業を行うことで、各孔29の形状やピッチも正確なものとなる。
なお、前記孔29は、前述の如く基準円部29aの外周の一部に小凹部29bを形成してなることから、特にパンチ9の先端部外周の小凸部9bと下刃10の上端開口10aとの干渉による刃欠けを防止するために、パンチ9と下刃10との相対的な位置決め精度を高める必要がある。ワークWが不安定な状態で打抜き作業を行うと、該作業時におけるワークWの僅かな動きにパンチ9が追従してしまい、前記刃欠けの原因になるが、上述の如くワークWを安定した状態に保って打抜き作業を行うことで、パンチ9及び下刃10を痛めることなくその寿命を延ばすことができる。
以上説明したように、上記実施例における孔の打抜き装置6は、三次元形状をなすワークWに複数の孔29を打抜いて形成するためのものであって、移動自在な台車機構1の基台2上に所定の作業位置に対して出し入れ自在に設けられた基板3と、該基板3上に設けられて前記ワークWの裏面を当接支持するように該ワークWを載置する載置台7と、該載置台7上にワークWを載置した際に該ワークWの所定箇所を貫通する位置決めピン8と、前記基台2及び基板3に跨って構成される複数の打抜き機構5と、を備え、前記各打抜き機構5は、前記載置台7上に載置されたワークWにおける複数の孔開け箇所30の裏面に対向するように前記基板3上に配設される複数の下刃10と、該各下刃10に対向するように前記基台2上に配設されて前記各孔開け箇所30の表面に対して近接離反可能に設けられると共に前記各孔開け箇所30の周囲の表面に当接して下刃10側に押圧する複数の押圧部材19と、前記各下刃10に対向するように前記基台2上に配設されて前記各孔開け箇所30の表面に対して近接離反可能に設けられると共に前記各下刃10と協働して前記各孔開け箇所30に所定の孔29を打抜く複数のパンチ9と、を有してなるものである。
この構成によれば、工場内の所定場所に比較的簡易な構成の当該装置6を容易に設置可能とし、当該装置6を用いて三次元形状のワークWに対する複数の孔29を打抜き形成することで、設備投資及びメンテナンス工数を大幅に削減することができる。
そして、パンチ9の外周と孔29の内周とが互いに摩擦係合することから、パンチ9による打抜き作業後に該パンチ9を抜き取らずに前記孔29に挿通したままとすることで、該パンチ9をワークWの位置決めピンとしても有効利用できる。この状態で順次打抜き作業を行うことで、大型で撓み易いワークWであっても、打抜き作業時における撓みを効果的に抑制でき、各孔29の打抜き精度を低コストで高めることができる。
また、上記打抜き装置6は、前記各打抜き機構5が、前記各パンチ9に対応して設けられて前記基台2に上下揺動可能に支持される複数の操作レバー16を有し、該各操作レバー16がその操作前状態から一端側を下方に移動させるように揺動操作されると、対応するパンチ9が下降してワークWに所定の孔29を打抜くと共に、前記各操作レバー16の他端側に設けた錘11の作用により、該各操作レバー16が前記操作前状態に向けて付勢されるものである。
この構成によれば、操作レバー16の非操作時には該操作レバー16が前記錘11の作用により操作前状態に保たれるため、ワークWのセット時や取り出し時等に各操作レバー16を戻す手間が省かれ、孔29の打抜き作業の工数削減を図ることができる。
さらに、上記打抜き装置6は、前記各押圧部材19が、前記ワークWから離反する側に付勢されていることで、押圧部材19を操作しワークWを押圧して孔29の打抜きを行った後には、前記操作を解除するのみで押圧部材19をワークWから離反させることができ、孔29の打抜き作業の工数削減を図ることができる。また、必要時にのみ各押圧部材19をワークWの表面に当接させることで、該ワークWの表面に対する傷付きを抑制することができる。
ここで、上記打抜き装置6を用いた打抜き方法は、前記各打抜き機構5の一つを用いて前記ワークWへの最初の孔29の打抜き作業を行い、該孔29の内周と前記パンチ9の外周との摩擦係合を利用して該パンチ9を前記孔29に挿通したままとし、この状態で他の打抜き機構5を用いて順次打抜き作業を行い、最後の孔29の打抜き作業の後に最初の孔29の打抜き作業を行った打抜き機構5のパンチ9をワークWから抜き取るものである。
この構成によれば、前述の作用効果に加え、最初の孔29の打抜き作業に用いたパンチ9を前記孔29に挿通したままとし、この状態で他の孔29の打抜き作業を順次行い、最後の孔29の打抜き作業の後に前記パンチ9をワークWから抜き取ることで、前記パンチ9をワークWの位置決めピンとしても効果的に利用することができる。
また、上記打抜き方法は、前記各押圧部材19が、前記ワークWから離反する側に付勢され、対応する打抜き機構5による打抜き作業時にのみ、前記孔開け箇所30の周囲を押圧することで、必要時にのみ各押圧部材19をワークWの表面に当接させることとなり、該ワークWの表面に対する傷付きを抑制することができる。また、押圧部材19の操作を解除するのみで該押圧部材19をワークWから離反させることで、孔29の打抜き作業の工数削減を図ることができる。
さらに、上記打抜き方法は、前記各打抜き機構5が、前記ワークWの長手方向で並ぶように配設され、その並び方向一端側に位置する打抜き機構5により最初の孔29の打抜き作業を行うと共に、並び方向他端側に位置する打抜き機構5により最後の孔29の打抜き作業を行うことで、ワークWの長手方向一端側から他端側に向けて順次打抜き作業を行うこととなり、前記長手方向に沿って複数の孔29の打抜き作業を効率よく行うことができる。
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、例えば、打抜き機構の数及び位置は様々であり、一例として、打抜き機構がワークの長手方向で並ぶ場合、その長手方向での一位置に複数の打抜き機構が配置される(複数の孔が形成される)構成も有り得る。
そして、上記実施例における構成はこの発明の一例であり、リヤバンパー以外のワークの孔開けにも適用できることはもちろん、部品構成の構造、形状、大きさ、数及び配置等を含め、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。
この発明の実施例における孔の打抜き装置の前面図である。 上記打抜き装置の側面図である。 上記打抜き装置の打抜き機構の側面図である。 上記打抜き機構の上面図である。 上記打抜き機構の前面図である。 (A)は上記打抜き機構のパンチを先端側から見た矢視図、(B)は前記パンチの前面図である。 上記打抜き装置の第一の作業手順を示す図1に相当する前面図である。 上記打抜き装置の第二の作業手順を示す図1に相当する前面図である。 上記打抜き装置の第三の作業手順を示す図1に相当する前面図である。 上記打抜き装置の第四の作業手順を示す図1に相当する前面図である。 (A)は上記打抜き装置のワークであるリヤバンパーの後面図、(B)は前記リヤバンパーに打抜き形成する孔の正面図である。
符号の説明
1 台車機構
2 基台
3 基板
5 打抜き機構
7 載置台
8 位置決めピン
9 パンチ
10 下刃
11 錘
16 操作レバー
19 押圧部材
29 孔
30 孔開け箇所
W ワーク

Claims (3)

  1. 三次元形状をなすワークに複数の孔を打抜いて形成するための孔の打抜き方法であって、
    移動自在な台車機構の基台上に所定の作業位置に対して出し入れ自在に設けられた基板と、
    該基板上に設けられて前記ワークの裏面を当接支持するように該ワークを載置する載置台と、
    該載置台上にワークを載置した際に該ワークの所定箇所を貫通する位置決めピンと、
    前記基台及び基板に跨って構成される複数の打抜き機構と、
    を備え、
    前記各打抜き機構は、
    前記載置台上に載置されたワークにおける複数の孔開け箇所の裏面に対向するように前記基板上に配設される複数の下刃と、
    該各下刃に対向するように前記基台上に配設されて前記各孔開け箇所の表面に対して近接離反可能に設けられると共に前記各孔開け箇所の周囲の表面に当接して下刃側に押圧する複数の押圧部材と、
    前記各下刃に対向するように前記基台上に配設されて前記各孔開け箇所の表面に対して近接離反可能に設けられると共に前記各下刃と協働して前記各孔開け箇所に所定の孔を打抜く複数のパンチと、
    を有してなり、
    前記各打抜き機構の一つを用いて前記ワークへの最初の孔の打抜き作業を行い、該孔の内周と前記パンチの外周との摩擦係合を利用して該パンチを前記孔に挿通したままとし、この状態で他の打抜き機構を用いて順次打抜き作業を行い、最後の孔の打抜き作業の後に最初の孔の打抜き作業を行った打抜き機構のパンチをワークから抜き取ることを特徴とする孔の打抜き方法。
  2. 前記各押圧部材は、前記ワークから離反する側に付勢され、対応する打抜き機構による打抜き作業時にのみ、前記孔開け箇所の周囲を押圧することを特徴とする請求項1に記載の孔の打抜き方法。
  3. 前記各打抜き機構は、前記ワークの長手方向で並ぶように配設され、その並び方向一端側に位置する打抜き機構により最初の孔の打抜き作業を行うと共に、並び方向他端側に位置する打抜き機構により最後の孔の打抜き作業を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の孔の打抜き方法。
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