JP5144015B2 - 多孔質構造体の製造方法および多孔質構造体並びに多孔質構造体からなる細胞培養用足場基材 - Google Patents

多孔質構造体の製造方法および多孔質構造体並びに多孔質構造体からなる細胞培養用足場基材 Download PDF

Info

Publication number
JP5144015B2
JP5144015B2 JP2006030316A JP2006030316A JP5144015B2 JP 5144015 B2 JP5144015 B2 JP 5144015B2 JP 2006030316 A JP2006030316 A JP 2006030316A JP 2006030316 A JP2006030316 A JP 2006030316A JP 5144015 B2 JP5144015 B2 JP 5144015B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polymer
porous structure
coating film
coating
temperature
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2006030316A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2007209412A (ja
Inventor
充宏 金田
孝幸 山本
かおり 水谷
卓司 新谷
千春 小田根
量子 浅井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nitto Denko Corp
Original Assignee
Nitto Denko Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nitto Denko Corp filed Critical Nitto Denko Corp
Priority to JP2006030316A priority Critical patent/JP5144015B2/ja
Publication of JP2007209412A publication Critical patent/JP2007209412A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5144015B2 publication Critical patent/JP5144015B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Materials For Medical Uses (AREA)
  • Manufacture Of Porous Articles, And Recovery And Treatment Of Waste Products (AREA)
  • Biological Depolymerization Polymers (AREA)

Description

本発明は、セル(孔)径が小さく、セル(孔)密度の高い多孔質構造体の製造方法および多孔質構造体に関する。より詳細には、細胞の培養や、細胞から三次元組織体を形成するときの足場基材として好適に使用することができる多孔質構造体に関する。
医療において、病気や事故により欠損した組織や皮膚などは、現状では生体間移植や人工素材を用いた代替組織を使用する場合がほとんどであるが、これらは生体適合性や耐久性の面で問題が多い。そこで正常部位の自己組織を一度体外に取り出し培養し、増殖、分化させた後に再び生体内に移植して組織再生を図ろうとする再生医療の研究がさまざまな機関で行われている。細胞には、リンパ球のような浮遊細胞の他に、何かに付着して生育する付着依存性細胞があり、各細胞の性質に応じて培養方法が各種試みられてきた。再生医療の分野において細胞培養を行う場合は、細胞は付着依存性ものが多く、生体外では細胞単体の浮遊状態では組織的構造を形成できず、細胞の足場となる基材が必要である。このような細胞の足場となる基材表面の化学的性質や構造は、細胞の成長などに影響を及ぼす。特に基材は細胞の付着、固定化のために、多孔質構造が有効であるといわれている。
多孔質構造体を細胞培養用足場基材として細胞を組織化すれば、人工臓器として利用することができる。多孔質構造体を生体内に埋め込む人工臓器などに利用する場合は、多孔質構造体は長期的には生体内へ吸収あるいは生体内で分解されることが望ましい。つまり、多孔質構造体を細胞工学や細胞培養技術と組み合わせて人工臓器等の医療用途へ展開するためには、多孔質構造体は体内吸収可能な材料を使うことが好適である。このような体内吸収可能な材料は、ポリ乳酸、ポリカプロラクタム、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリトリメチレンカーボネート、これらのコポリマーおよび混合物などが挙げられる。一般にこれらの体内吸収可能な材料は、ガラス転移温度が低いことや柔らかいという特徴があり、従来の多孔質体形成方法では、微細な構造を形成できない、あるいは構造が変形しやすいといった問題が発生しやすくなる。
ポリマーの多孔質構造体を得る方法として、乾式法や湿式法などが一般的であり、乾式法では物理的方法によるものと化学的方法によるものとがある。
物理的な方法として、クロロフルオロカーボン類または炭化水素類などの低沸点液体(発泡剤)をポリマーに分散させ、次に加熱し発泡剤を揮発させることにより気泡を形成させる方法が挙げられる。しかしながら、かかる方法ではセル(孔)径が比較的大きく、マイクロメートル(μm)オーダーあるいはそれ以上の多孔質構造しか得られない。
他の方法として、窒素や二酸化炭素等の気体を高圧にてポリマー中に溶解させた後、圧力を開放し、ポリマーのガラス転移温度や軟化点付近まで加熱することにより気泡を形成させる方法が提案されている。上記発泡方法により、熱力学的不安定な状態から核が形成され、核が膨張成長することで気泡が形成され発泡体が得られる。
これらの手法を熱可塑性ポリマーのポリエーテルイミドに適用し発泡体を製造する方法が開示されている(特許文献1)。開示される手法では、高圧ガスを圧力容器中で含浸させる際に、圧力容器をポリマーのビカー軟化点またはその近傍まで加熱し、減圧する際ポリマーが溶融状態にあり、高圧ガスが膨張しやすいため、発泡体のセル(孔)径は10〜300μm程度の範囲となる。従って、開示される方法により得られる多孔質構造体のセル(孔)径は10μm以上であり、細胞培養用足場基材として使用するには大きい径である。またこれら乾式法では一般に基材表面には未発泡のスキン層が形成するといわれており、細胞固定能を期待できない。
また化学的方法として、ポリマーベースに添加された化合物(発泡剤)の熱分解により生じたガスによりセルを形成し、発泡体を得る方法が挙げられる。例えば塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエタンなどを発泡剤として用い、発泡ポリエーテルイミドを成形することが開示されている(特許文献2)。かかる化学的手法による発泡技術は、発泡剤として用いる物質の有害性やオゾン層の破壊など各種の環境への問題が存在し、微細でなおかつ均一なセル径を有する発泡体を得ることは難しい。
また、ブロックコポリマーあるいはグラフトコポリマーのミクロ相分離を利用した多孔質構造を形成する方法も開示されている。例えばブロックコポリマーあるいはグラフトコポリマーを形成した後、電子線のようなエネルギーにてポリマー鎖を切断し、除去することにより多孔質構造を形成することが開示されている(特許文献3)。開示される方法は相互に化学結合している各ポリマー鎖から特定の相を選択的に除去するものである。つまりポリマー鎖の主鎖を切断して分解し、分解されたポリマー鎖を加熱によって揮発させたり有機溶剤や水によって溶出させたりし、特定の相を除去し多孔質構造体を得る。加熱はポリマーを分解して揮発させるため、高温で操作する必要があり、さらにポリマーが劣化してしまうという問題がある。また、有機溶剤による溶出は多量の薬剤を必要とすることや有機溶剤によるポリマーの変形が問題となる。生分解性材料は、一般に融点やガラス転移温度が低く柔らかいという特徴があり、溶剤や加熱による操作で多孔質構造体が変形する可能性がある。またブロックコポリマーを合成する必要があり、生分解性ポリマーをこの方法により合成することは難しい。
一方、変形を伴わない多孔質構造体形成法に関し、二相系での非混合溶媒系等における微細パターン製造方法について開示がある(特許文献4)。開示される方法では、高分子溶液を固体基板あるいは水面に展開し、高湿度気流下で有機溶媒を徐々に蒸散させると同時に該展開液表面で水を結露させ、該結露により生じた微小水滴を蒸発させることで自己組織化によるハニカム構造が形成される。しかしながら、かかる方法では基材表面のみの加工が可能であり、モノレイヤー構造しか形成できない。三次元方向での細胞培養の足場基材として利用する場合には、ハニカム構造体を積層する必要がある。
特開平6−322168号公報 米国特許第4532263号公報 特開2005−8882号公報 特開2001−157574号公報
本発明は、ナノメートルオーダーからマイクロメートルオーダーのセル(孔)を変形させず、表面に開孔した凹状構造を有し、かつ内部に多層に孔を有する多孔質構造体の製造方法および多孔質構造体を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、ポリマーと該ポリマーに対する非相溶性材料とを混合して塗工液を調製し、該塗工液を塗工用基材に塗布して塗膜を形成させ、該塗膜中のポリマーの温度を調整することでポリマーと非相溶性材料とを溶融混合状態にし、さらに溶融混合状態の塗膜温度を調整することでポリマーと非相溶性材料とが相分離した構造を有する塗膜を形成させ、塗膜中の非相溶性材料を抽出除去して空孔を形成させることで、上記課題が解決しうることを見出し、本発明を解決するに至った。
即ち本発明は、以下よりなる。
1.以下の工程を含む多孔質構造体の製造方法:
1)ポリマーと該ポリマーに対して非相溶性の材料とを混合し塗工液を調製する工程;
2)調製した塗工液を塗工用基材に塗布して、厚さ10〜300μmの塗膜を形成させる
工程;
3)前記形成された塗膜を、該塗膜中のポリマーの吸熱挙動が最大値となる温度より高い
温度に加熱し、前記ポリマーと該ポリマーに対する非相溶性材料とを溶融混合状態にする
工程;
4)前記溶融混合状態の塗膜を、該塗膜中のポリマーの吸熱挙動が最大値となる温度より
低い温度に低下させ、ポリマーを再結晶化させることにより、ポリマーと非相溶性材料と
が相分離した構造を有する塗膜を形成させる工程;
5)前記相分離した構造を有する塗膜中の非相溶性材料を、抽出溶媒として亜臨界二酸化
炭素もしくは超臨界二酸化炭素を用いて抽出除去して空孔を形成させ、厚さ0.1〜10
0μmの多孔質構造体を得る工程。
2.ポリマーが、生分解性ポリマーである前項1に記載の製造方法。
本発明の多孔質構造体の製造方法により、ナノメートルオーダーからマイクロメートルオーダーのセル(孔)を変形させず、表面に孔径が均一で開孔した凹状構造を有し、かつ内部に多層の孔を有する多孔質構造体の製造方法および多孔質構造体を提供することができた。本発明の多孔質構造体は、均一で規則的な孔のパターンを有するので、細胞培養の足場基材として利用することができ、さらに細胞から三次元組織体を形成するときの足場基材としても好適に利用することができる。また、生分解性ポリマーを材料とすると、生体内に移植することも可能であり、再生医療などの分野においても利用可能である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において「ポリマー」とは、特に限定されないが、例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクタム、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリトリメチレンカーボネート、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンカーボネートなどやこれらのコポリマー並びに混合物などの生分解性ポリマーや、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリビニルアルコール、ポリブチレンカーボネート、ポリエチレンカーボネート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセチルセルロース、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンなどのエンジニアプラスチックおよび汎用ポリマーが挙げられる。
本発明において「生分解性ポリマー」とは、生体内に吸収可能なポリマーをいう。多孔質構造体を医療用途に利用する場合は、生体適合性や生体内分解性の観点から生分解性ポリマーが特に好適である。入手の容易さや価格等の観点から、ポリ乳酸、ポリカプロラクトンなどが特に好適である。
また、多孔質構造体を一般工業用として用いる場合、高強度、高弾性率、柔軟性が必要とされ、有機溶媒への溶解性の観点からポリブチレンカーボネート、ポリエチレンカーボネート等が好適である。
本発明において「非相溶性材料」とは、前記ポリマーと混合しても相溶せず、混合攪拌しても放置すると相分離してしまう材料を意味する。ポリマーとある材料を混合したときに、目視にて白濁を確認した場合には、該混合した材料はポリマーと非相溶性であるということができる。このような非相溶性材料としては、ポリマーと混合したときに相分離し、かつ相分離構造を形成した後、溶媒抽出などの方法により除去できるものであればよい。該非相溶性材料は、無機材料または有機材料のいずれも使用できるが、有機材料のほうが好ましい。
本発明における非相溶性材料は、使用するポリマーに応じて適宜選択される。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;前記ポリアルキレングリコールの片末端若しくは両末端メチル封鎖物、または片末端若しくは両末端(メタ)アクリレート封鎖物;ウレタンプレポリマー;フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系化合物等を挙げることができる。なお、これらは単独でまたは2種以上組み合わせても使用できる。
本発明における非相溶性材料の分子量は、特に制限されないが、後の除去操作が容易になることから重量平均分子量として10,000以下(例えば100〜10,000)であることが好ましい。
上記のポリマーおよび非相溶性材料を混合して、塗工用基材に塗工するための塗工液を調製する。塗工液を調製するための非相溶性材料の混合量は、特に限定されない。例えば、ポリマー100重量部に対して、非相溶性材料は10〜200重量部の配合であれば特に問題なく塗工可能である。非相溶性材料の混合量が、ポリマー100重量部に対して10重量部以下の場合はポリマーに相溶してしまうことがあり、200重量部を超える場合には、調製した塗工液を塗工用基材に塗布する際に、ポリマーが非相溶性材料中で凝集してしまい、均一な塗膜を形成できない場合がある。
ポリマーと非相溶性材料とを混合し塗工液を調製する工程において、混合性を高めるために、有機溶媒を介してもよい。有機溶媒中にポリマーを任意の配合にて溶解させた後、非相溶性材料を任意の配合量に添加する。また有機溶媒中に非相溶性材料を溶解させた後、該ポリマーを任意の配合量に添加してもよい。
前記ポリマーと前記非相溶性材料を溶解する有機溶媒は、使用するポリマーおよび非相溶性材料に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリマーおよび非相溶性材料の少なくとも一方のみを溶解するものであってもよいし、双方を溶解するものであってもよい。このような有機溶媒としては、例えば、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素、二塩化メチレン、二塩化エチレン、テトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、ブタノール、シクロヘキサノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル等のエステル類等を挙げることができる。
有機溶媒の混合量は、ポリマー100重量部に対して、通常10〜1,000重量部であり、好ましくは30〜700重量部である。有機溶媒の混合量が、1,000重量部を超えると、塗工液の粘度が低くなるため塗膜が薄くなりすぎて、得られるシートが極端に薄くなる等の問題を有する。
上記のようにして得られた塗工液を、塗工用基材に塗布して、ポリマーと非相溶性材料とからなる相分離構造を有する塗膜を形成する。製膜方法は、連続塗布装置を用いる場合は、上記塗工液を連続的に供給して、ダイなどの吐出手段より連続的にフィルム状の塗工用基材上に薄層に押出して成形する方法が挙げられる。塗布方法はダイの他に、ワイヤーバー方式、キスコート方式、グラビア方式、マイクログラビア方式、コンマ方式などの自体公知の方法を適用することができる。
塗工用基材として、平滑な表面を有するものを利用することができる。具体的には、ポリオレフイン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などのプラスチックフィルムや、SUS、Cu、アルミニウムなどの金属箔などが用いられる。これらの基材は、1種または2種以上を組み合わせて使用してもよく、片面または両面にコロナ処理などの表面処理を施したものであってもよい。
塗工用基材の厚さは、操作性を考慮すると10〜300μm、好ましくは30〜200μm程度であるのが好適である。
形成される塗膜の厚みは特に限定されないが、ポリマーと非相溶性材料の混合性を高めるために有機溶媒を用いた場合は、有機溶媒の除去を行った後の厚みが0.1〜100μmの範囲が好ましい。厚みが0.1μm以下であると、得られる多孔質構造体を基材として使用する場合に、自己自立性が低くなり操作や取扱いが困難となる。また強度が低下しやすいなどの問題がある場合もある。また厚みが100μmより厚くなる場合は、混合性を高めるために用いた有機溶媒を除去しにくくなる場合がある。また、有機溶媒を用いない場合は、塗膜の厚みは100μmより厚くてもよい。
次に、上記形成された塗膜を、該塗膜中に含有するポリマーと非相溶性材料が溶融混合状態になりうる温度に加熱する。そのような温度として、該塗膜中に含有するポリマーの吸熱挙動が最大値となる温度より高い温度とすることができ、好ましくは5℃以上高くすることができ、より好ましくは10℃以上高い温度とすることができる。吸熱挙動が最大値となる温度は、示差操作熱量分析(DSC)により確認する。
なお、ポリマーと非相溶性材料を混合して塗工液を調製する工程において、塗工液の混合性を高めるために有機溶媒を使用した場合には、上記加熱により該有機溶媒の除去も同時に行われる。好適には有機溶媒を除去する温度においてポリマーと非相溶性材料とが、温度変化により相溶状態となればよい。塗膜を溶融混合状態にするための加熱温度における保持時間は特に制限されないが、ポリマーの酸化劣化や非相溶性材料が揮発することを抑制するため、30分以下にするのが望ましい。
次にポリマーと非相溶性材料の溶融混合状態にした塗膜の温度を、ポリマーを再結晶化しうる温度にまで低下させ、ポリマーと非相溶性材料とが相分離した構造を含むようにする。そのような温度として、該塗膜中に含有するポリマーの吸熱挙動が最大値となる温度より低い温度とすることができ、溶融温度または軟化点より低い温度とすることができる。さらには、室温(20℃)以下や、0℃に低下させてもよい。
溶融混合状態にした塗膜からポリマーを再結晶化させるために温度を低下させる速度は特に限定されないが、ポリマーと非相溶性材料との相分離構造により、微細な孔径の孔を形成するためには、冷却速度が速いほうが再結晶化される速度が速くなるため好適である。溶融混合物の冷却方法は、自体公知の方法を適用することができ、特に限定されないが、例えば空気による冷却、冷却した金属ロールあるいは金属平板に接触させることによる冷却、冷却した液体中に浸漬することによる冷却などが挙げられる。
次に、ポリマーと非相溶性材料とが相分離した構造を有する塗膜中の非相溶性材料を抽出除去して空孔を形成させる。かかる工程により、塗膜中の相分離構造において、非相溶性の材料が占めていた部分が除去されることになり、多孔質構造が得られる。このようにして得られる多孔質構造体は、熱誘起によるミクロ相分離によって形成されるため、表面に孔径が0.01〜5μm、特に0.1〜5μmの凹状構造を有し、内部には孔径が0.01〜5μm、特に0.1〜5μmの孔を有する。形成される孔は非常に微細であり、かつ厚み方向にも孔が存在する微細多層多孔質構造からなる。
塗膜から非相溶性材料を除去するための抽出溶媒は、非相溶性材料に対して良溶媒であって、かつ前記ポリマーを溶解しないものであればよく、特に限定されるものではない。このような性質を有するものであれば、一般的な有機溶媒の中から適宜選択して用いることができる。特に除去効率、無害性およびポリマー変形への影響が低いという観点から、好適には液化二酸化炭素(亜臨界二酸化炭素)や超臨界状態にある二酸化炭素(超臨界二酸化炭素)が用いられる。
前記塗膜中の非相溶性材料を抽出溶媒により除去するための装置は、自体公知のものを利用することができ、例えば加圧下で抽出除去可能な容器を利用することができる。例えばバッチ式の圧力容器、シート繰り出し巻き取り装置を有する圧力容器などであれば何れであってもよい。
抽出溶媒の例として、液化二酸化炭素や超臨界状態にある二酸化炭素(超臨界二酸化炭素)を使用する場合の具体的な方法について説明する。塗膜を圧力容器に入れて二酸化炭素を注入し、該塗膜に液化二酸化炭素または超臨界二酸化炭素を浸透させる。前記二酸化炭素を十分に浸透させた後、二酸化炭素の排気と注入を連続的或いは断続的に繰り返し、塗膜中の非相溶性材料を液化二酸化炭素または超臨界状態にある二酸化炭素(超臨界二酸化炭素)に抽出(溶解)させて、非相溶性材料を除去する。
抽出は、上記ポリマーのガラス転移点以上融点以下の温度で行うことが好ましい。融点以上で抽出すると、ポリマーが変形し、多孔質構造が壊れてしまうからである。また、ガラス転移点以下で行うと、非相溶性材料の拡散係数が小さくなってしまい、抽出の効率が悪くなってしまうからである。
本発明は、上記の方法により調製された多孔質構造体にも及ぶ。さらに本発明は、該多孔質構造体からなる細胞培養用足場基材にも及ぶ。本発明の多孔質構造体は厚み方向にも孔が存在するため、細胞の三次元組織体を形成するときの足場基材として好適に使用することができる。また本発明の多孔質構造体は、生分解性ポリマーを材料とすると、生体内に移植することも可能となり、再生医療などの医療の分野においても利用することができる。
以下実施例を示して説明するが、本実施例は発明の内容をより理解するためのものであって、本発明は本実施例に限定されるものではないことはいうまでもない。
(実施例1)冷却:80℃→水冷
ポリε−カプロラクトン(重量平均分子量:70,000〜100,000、ガラス転移点:−60℃ 融点:57℃)100重量部に対して、添加剤としてポリエチレングリコール(以下「PEG」)200を100重量部、溶媒としてトルエン500重量部を混合し、塗工液を調製した。ガラス転移点および融点はDSCにより測定した。
この塗工液を、アプリケーターで乾燥厚みが35μmになるようにポリエチレンテレフタレート(以下「PET」)(50μm)からなる塗工用基材に塗工し、80℃で溶融混合状態にするとともに、溶媒を乾燥させ、塗膜を得た。
その後、冷水により塗工液を0℃に冷却して、ポリε−カプロラクトンとPEG200を相分離させるとともに塗膜を固定化した。この塗膜を20mm×50mmの短冊状に切断し、500ccの耐圧容器に入れ、20℃の雰囲気中、25Mpaに加圧した後、圧力を保ったままガス量にして約5リットル/分の流量でCOを注入、排気して添加物を抽出する操作を2時間行い、多孔質構造体を得た。
得られた多孔質構造体の表面の凹状構造の孔径は0.56μm、内部の孔の孔径は0.43μmであった。(図1および図2参照)
孔径は、二値化SEM画像を画像処理ソフト(optimas6.1)にて解析した。
(実施例2)冷却:80℃→水冷
添加剤としてPEG200のかわりにPEG400を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
得られた多孔質構造体の表面の凹状構造の孔径は1.32μm、内部の孔の孔径は0.40μmであった。(図3および図4参照)
(実施例3)冷却:80℃→空冷
添加剤としてPEG200のかわりにジエチレングリコール(以下「DEG」)を用い、冷却を空冷、20℃で行った以外は、実施例1と同様の操作を行った。
得られた多孔質構造体の表面の凹状構造の孔径は0.80μm、内部の孔の孔径は0.63μmであった。(図5および図6参照)
(比較例)
ポリε−カプロラクトン(重量平均分子量:70,000〜100,000、ガラス転移点:−60℃ 融点:57℃)100重量部に対して、添加剤としてPEG200を100重量部、溶媒としてトルエン500重量部を混合し、塗工液を調製した。
この塗工液を、アプリケーターで乾燥厚みが35μmになるように塗工用基材(PET(50μm))に塗工し、25℃で溶媒を乾燥させ、塗膜を得た。
その後、塗膜を20mm×50mmの短冊状に切断し、500ccの耐圧容器に入れ、15℃の雰囲気中、25MPaに加圧した後、圧力を保ったままガス量にして約5リットル/分の流量でCOを注入、排気して添加物を抽出する操作を2時間行った。得られた塗膜はフィルム状であり、孔の存在が確認できなかった。(図7および図8参照)
上記説明したように、本発明の方法により得られる多孔質構造体は、表面に孔径が均一で開孔した凹状構造が規則正しく配置され、内部に孔は多層に形成されている。多孔質構造体の規則的な孔のパターンが細胞付着面を提供し、細胞の培養が可能となる。このことにより、本発明の多孔質構造体は、細胞培養用足場基材として使用することができる。つまり、多孔質構造が細胞を付着させ、栄養供給ルートとなる。また、細胞培養用足場基材が生分解性ポリマーによる場合には、該ポリマーが生体内で適合化し、生体内に吸収されるため、再生医療の分野で利用することができる。
実施例1の多孔質構造体の断面を示す図である。 実施例1の多孔質構造体の表面を示す図である。 実施例2の多孔質構造体の断面を示す図である。 実施例2の多孔質構造体の表面を示す図である。 実施例3の多孔質構造体の断面を示す図である。 実施例3の多孔質構造体の表面を示す図である。 比較例のフィルムの断面を示す図である。 比較例のフィルムの表面を示す図である。

Claims (2)

  1. 以下の工程を含む多孔質構造体の製造方法:
    1)ポリマーと該ポリマーに対して非相溶性の材料とを混合し塗工液を調製する工程;
    2)調製した塗工液を塗工用基材に塗布して、厚さ10〜300μmの塗膜を形成させる
    工程;
    3)前記形成された塗膜を、該塗膜中のポリマーの吸熱挙動が最大値となる温度より高い
    温度に加熱し、前記ポリマーと該ポリマーに対する非相溶性材料とを溶融混合状態にする
    工程;
    4)前記溶融混合状態の塗膜を、該塗膜中のポリマーの吸熱挙動が最大値となる温度より
    低い温度に低下させ、ポリマーを再結晶化させることにより、ポリマーと非相溶性材料と
    が相分離した構造を有する塗膜を形成させる工程;
    5)前記相分離した構造を有する塗膜中の非相溶性材料を、抽出溶媒として亜臨界二酸化
    炭素もしくは超臨界二酸化炭素を用いて抽出除去して空孔を形成させ、厚さ0.1〜10
    0μmの多孔質構造体を得る工程。
  2. ポリマーが、生分解性ポリマーである請求項1に記載の製造方法。
JP2006030316A 2006-02-07 2006-02-07 多孔質構造体の製造方法および多孔質構造体並びに多孔質構造体からなる細胞培養用足場基材 Expired - Fee Related JP5144015B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006030316A JP5144015B2 (ja) 2006-02-07 2006-02-07 多孔質構造体の製造方法および多孔質構造体並びに多孔質構造体からなる細胞培養用足場基材

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006030316A JP5144015B2 (ja) 2006-02-07 2006-02-07 多孔質構造体の製造方法および多孔質構造体並びに多孔質構造体からなる細胞培養用足場基材

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007209412A JP2007209412A (ja) 2007-08-23
JP5144015B2 true JP5144015B2 (ja) 2013-02-13

Family

ID=38488334

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006030316A Expired - Fee Related JP5144015B2 (ja) 2006-02-07 2006-02-07 多孔質構造体の製造方法および多孔質構造体並びに多孔質構造体からなる細胞培養用足場基材

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5144015B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102971367B (zh) 2010-06-30 2014-11-12 日东电工株式会社 热固性树脂多孔片的制造方法及使用该多孔片的复合分离膜
JP6105111B1 (ja) * 2016-03-02 2017-03-29 国立大学法人東北大学 自閉スペクトラム症改善用組成物
JP7305328B2 (ja) * 2018-10-01 2023-07-10 日東電工株式会社 多孔質体の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2007209412A (ja) 2007-08-23

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5677355A (en) Continuous open-cell polymeric foams containing living cells
WO2009110587A1 (ja) 断熱材
Woods et al. Materials processing in supercritical carbon dioxide: surfactants, polymers and biomaterials
US6620356B1 (en) Porous constructs fabricated by gas induced phase inversion
Tsivintzelis et al. Porous scaffolds prepared by phase inversion using supercritical CO2 as antisolvent: I. Poly (l-lactic acid)
KR101019186B1 (ko) 3차원 다공성 고분자 지지체의 제조방법
JP2000501752A (ja) エチレン―ビニルアルコールコポリマーのマイクロポーラス材料およびその製造方法
TWI565742B (zh) 聚乳酸系樹脂發泡粒子及其成形體
JP5144015B2 (ja) 多孔質構造体の製造方法および多孔質構造体並びに多孔質構造体からなる細胞培養用足場基材
JP5986096B2 (ja) ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法
JP2010059756A (ja) 高性能断熱材
EP1831863A1 (en) In-mold label film with foamed adhesive skin
Cuadra-Rodríguez et al. Production of cellular polymers without solid outer skins by gas dissolution foaming: A long-sought step towards new applications
Khorasani et al. Solid-state microcellular foaming of PE/PE composite systems, investigation on cellular structure and crystalline morphology
Novendra et al. Supercritical processing of CO2-philic polyhedral oligomeric silsesquioxane (POSS)-poly (L-lactic acid) composites
JP4944449B2 (ja) 多孔質構造体の製造方法および多孔質構造体並びに多孔質構造体からなる細胞培養用足場基材
CN107530473A (zh) 利用水溶性高分子的细胞培养支架
JP5652831B2 (ja) ポリ乳酸微粒子の製造方法、ポリ乳酸微粒子、並びにこれを用いた結晶核剤、成形体、及び表面改質剤
JP4520436B2 (ja) 生分解性ハニカム構造接着フィルム
Rahim et al. Mechanical Properties of Porous Polylactic Acid (PLA) Via Salt Leaching Method
JP2012036277A (ja) 発泡シートおよびその製造方法
WO2006030695A1 (ja) 多孔質体の製造方法、多孔質体、反射防止膜、反射防止シートの製造方法及び反射防止シート
Vamos et al. Novel, solvent‐based method for the production of polymer sheets with a superhydrophobic surface
JP5275546B2 (ja) 生分解性ハニカム構造接着フィルム
JP3610504B2 (ja) 生体内分解吸収性セル構造体

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20081110

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20111221

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120215

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120530

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120719

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20121115

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20121122

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20151130

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees