JP5142559B2 - 真空バルブ用接点材料及びその製造方法 - Google Patents

真空バルブ用接点材料及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、真空バルブ用接点材料及びその製造方法に関する。
高圧受電設備等に使用され、常規状態の電路の他、異常状態、特に短絡状態における電路を開閉する目的で設置される真空遮断器は、対向する固定接点及び可動接点の2つの開閉可能な接点を有する真空バルブを備え、真空バルブ中の接点の開閉により電路の開閉が真空中で行われる。この真空遮断器は、真空中における優れたアークの消弧力及び絶縁性能を利用したものであって、開極時に生じるアークが真空中で高速拡散するため、容易に大電流を遮断することができ、また、絶縁能力が優れているため、接点間隔が小さくできるので、小型・軽量である。
真空遮断器は、その環境調和性により適用範囲の拡大が進められている。特に、高電圧領域への適用が試みられている。この真空遮断器の真空バルブの接点に用いられる材料としては、導電性成分のマトリックス中に耐弧性成分粒子が分散された複合材料が一般的に使用されている。しかしながら、高電圧領域でこのような接点材料を使用する場合には、長年の使用によって、接点間で絶縁破壊を生じることがあった。
この接点間での絶縁破壊のメカニズムとしては、接点からの耐弧性成分等の粒子の離脱による破壊が主要因であると考えられる。特にCrのような脆性の耐弧性成分を用いる場合には、真空バルブの接点の開閉の繰り返しにより、接点表面に露出している耐弧性成分粒子が破砕され、微粒子となって、この耐弧性成分粒子の微粒子が離脱することによって絶縁破壊が発生すると考えられる。このため、従来の高電圧用接点材料では、接点の開閉により耐弧性成分粒子が破壊されるのを防止するために、接点材料として、耐弧性成分の微粒子が、あらかじめ導電成分マトリックス中に微細に分散したものが使用されている。耐弧性成分が、あらかじめ微粒子になってマトリックス中に微細分散されていることにより、真空バルブの接点の開閉の繰り返しによる耐弧性成分粒子の破砕が抑制され、耐電圧特性が向上する。
接点材料における耐弧性成分粒子を導電成分マトリックス中に微細分散させる方法としては、耐弧性成分微粒子と導電性成分微粒子との混合粒子を焼結して製造する方法(焼結法)、耐弧性成分微粒子を焼結した焼結物の空隙に、溶解した導電性成分を溶浸する方法(溶浸法)、あるいは、導電性成分と耐弧性成分の両者を溶解し、急冷して耐弧性成分を導電性成分中に微細に晶出させる方法(溶解法)などが実用化されている。
これら方法のうち、焼結法に関しては、例えば特許文献1に記載がある。
特開平5−311273号公報
真空遮断器には、上述の耐電圧性能に加えて、より高い通電性能や遮断性能が要求されている。このような観点から、主たる耐弧性成分としては、上述したCrや、Moなどの成分が通電性能や遮断性能に優れるために選択されている。しかしながら、これらの耐弧性成分は、比較的酸化し易い成分である。そのため、CrやMoを微粒子にすると容易に酸化されてしまうので、CrやMoの微粒子を原料とした焼結法による製造は困難であり、また、製造した場合でもガス含有量が多かった。
このため、CrやMoを耐弧性成分とした接点材料の微細化には、アーク溶解法や真空溶解法が用いられる。しかしながら、これらの製造方法による微細化には限界があり、アーク溶解法や真空溶解法により製造されたCrの粒子は、平均粒径が10μm程度である。そのため耐弧性成分の微細化には限界があった。
そこで、本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、ガス含有量が小さくかつ、必要な領域における耐弧性成分を微細化した真空バルブ用接点材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するためになされた本発明の真空バルブ用接点材料は、Cuよりなる導電性成分のマトリックス中に、Cr及びMoのうちの少なくとも一種を含む耐弧性成分の粒子が分散した組織形態を有し、表面から1mm以上の深さの領域が、窒化硼素よりなる回転工具を用いて摩擦撹拌処理されており、この摩擦撹拌処理を施した表面近傍の領域の耐弧性成分粒子が、この表面近傍以外の領域の耐弧性成分の粒子に比べて平均粒径が10μm以下に微細に分散していることを特徴とする。
本発明の真空バルブ用接点材料は、表面近傍の領域の耐弧性成分粒子が、針状又は片状に一方向に延伸された形状であることが好ましい。
本発明の真空バルブ用接点材料は、導電性成分がCuであり、耐弧性成分がCr及びMoのうちの少なくとも一種を含む場合に、特にその効果が大きい。
また、本発明の真空バルブ用接点材料は、真空バルブに組み込まれたときに他方の接点に対向する表面における中央部に相当する部分に、凹み又は穴を有することにより、真空バルブに接点として組み込んだ場合に適合する形状とすることができる。
本発明の真空バルブ用接点材料の製造方法は、焼結法、溶浸法及び溶解法から選ばれる一つの方法で製造され、Cuよりなる導電性成分のマトリックス中に、Cr及びMoのうちの少なくとも一種を含む耐弧性成分の粒子が分散した組織形態を有する素材の表面から1mm以上の深さの領域を、窒化硼素よりなる回転工具を用いて摩擦撹拌処理し、前記耐弧性成分の平均粒径を10μm以下に微細したことを特徴とする。
この真空バルブ用接点材料の製造方法において、摩擦撹拌処理を不活性雰囲気中にて行うことが、接点材料の性能を向上させることができることから好ましい。
本発明の真空バルブ用接点材料によれば、接点材料表面に摩擦撹拌処理を施し、耐弧性成分粒子を粉砕し、粒子間距離を低減したので、耐電圧特性に優れた接点材料を提供することができる。
以下、本発明の真空バルブ用接点材料及びその製造方法を、より具体的に説明する。
図1は、本発明の真空バルブ用接点材料が、接点として用いられる真空バルブの一例を示す断面図である。図1において、真空バルブは、気密かつ真空状態を維持するようにされている遮断室1を有している。この遮断室1は、絶縁材料によりほぼ円筒状に形成された絶縁容器2と、この絶縁容器2の両端にそれぞれ封止金具3a及び3bを介して設けられた金属製の蓋体4a、4bとで構成された空間である。
この遮断室1内には、前記蓋体4aに対して固定された導電棒5と、蓋体4bに対して軸方向に移動可能に設けられた電極棒6とが、導電棒5の一方の端部と電極棒6の一方の端部とが対向するように設けられている。また、対向させた導電棒5の端部と電極棒6との端部には、それぞれ一対の電極7、8が配設され、固定された導電棒5に配設された電極7を固定電極、軸方向に移動可能な電極棒6に配設された電極8を可動電極と呼称している。また、軸方向に移動可能な電極棒6には、ベローズ9が取り付けられていて、このベローズ9により電極8が軸方向に移動するときの遮断室1内を、真空かつ気密に保持することを可能にしている。また、このベローズ9の上部には、金属製のアークシールド10が設けられ、ベローズ9がアーク蒸気で覆われることを防止している。また、遮断室1内には、前記電極7、8を覆うように金属製のアークシールド11が設けられ、このアークシールド11により絶縁容器2がアーク蒸気で覆われることを防止している。
電極8近傍を図2に示す断面拡大図で示す。電極8は、電極棒6に対して、ろう付けより固定されている。同図では、電極8と電極棒6との間に形成されたろう付け部12が示されている。なお、ろう付けの代わりに、かしめにより電極8が電極棒6に固定される場合もある。そして、この電極8の先端部に接点13aが、ろう付けにより固定されている。同図では、電極8と電極棒6との間に形成されたろう付け部14が示されている。同様にして、接点13bは、電極7の先端部ににろう付けにより固定されている。
真空バルブは、通常、両接点13a及び13bが接続しているときに通電状態となる。この状態から電流遮断のために可動側の電極棒6を、接点13aが接点13bから離れるように軸方向に移動させると(図1の紙面下方向への移動)、可動側の接点13aが固定側の接点13bから開離し、両接点間にアークが発生する。このアークは陰極(例えば可動接点13a)側からの金属蒸気の発生により維持され、電流がゼロ点(零点)に達すると金属蒸気の発生が止まってアークが維持できなくなり、遮断が完了する。このような動作により、真空バルブは、電流開閉あるいは電流遮断を行う。
このような電流開閉あるいは電流遮断を行う真空バルブに用いられる接点材料は、耐電圧特性、通電特性、遮断特性などを高いバランスで具備することが求められる。そのため、接点材料は、耐弧性成分にCrやMo等の成分を適用するとともに、これらの耐弧性成分を微細化することが行われてきた。しかしながら、CrやMo等を酸化させることなく微細化することが従来は困難であったことは既に述べたとおりである。
発明者らは、CrやMoといった耐弧性成分を微細化して、優れた特性を具備する真空バルブ用接点材料を得るために鋭意研究を重ねた結果、摩擦撹拌処理を接点材料の素材表面に施すことにより、接点材料中の耐弧性成分粒子を粉砕し、組織をより微細にすることができることを見出した。
このような知見に基づく本発明の真空バルブ用接点材料は、導電性成分のマトリックス中に耐弧性成分粒子が分散した組織形態を有し、表面から1mm以上の深さの領域が回転工具を用いて摩擦撹拌処理されてなり、この摩擦撹拌処理を施した領域の耐弧性成分粒子が前記素材に比べて微細に分散しているものである。
本発明において、所期した真空バルブ用接点材料用素材の表面に摩擦撹拌処理を施す。この摩擦撹拌処理によって導電性成分が流動する過程において、導電性成分中に分散されている耐弧性成分粒子は変形し、粉砕され、微細化される。このような耐弧性成分粒子の粉砕は、導電性成分に包含された状態で進められるため、耐弧性成分が雰囲気によって酸化あるいは窒化される機会が少ない。従って、本発明では、低ガス含有量でかつ組織が微細な接点材料を実現することが可能であり、優れた遮断特性と耐電圧特性を兼備した接点材料を実現している。
また、本発明の真空バルブ用接点材料は、CrやMoといった耐弧性成分を10μm以下まで微細化することができるので、接点として特に優れた特性を有する接点材料とすることができる。
更に、本発明の真空バルブ用接点材料は、摩擦撹拌処理が素材の表面のみに施されていれば、接点として特に優れた特性を有することから、接点材料の製造過程において、耐弧性成分を微細分散させるための労力が最小限で済む。
本発明における摩擦撹拌処理とは、図3に概略を示した回転工具を回転させながら、処理する素材の表面に挿入し、回転工具との接触部周辺の領域を塑性流動させることにより組織を改質する処理のことである。図3(a)に示される回転工具は、円柱状の回転体21の先端部に回転体21よりも小径の撹拌部22が固着されているものであって、この撹拌部22の先端部22aは円錐形状を有している。この回転工具の撹拌部22を素材の表面から内部に挿入した状態で回転工具の回転体21及び撹拌部22を中心軸の周りに回転させつつ、この回転工具を素材の表面に沿って移動させることにより、素材の表面を摩擦撹拌することができる。図3(b)に、本発明の摩擦撹拌処理に用いられる回転工具の別の例を示す。図3(b)示された回転工具は、円柱状の回転体21の先端部に回転体21よりも小径の撹拌部23が固着されているものであって、この撹拌部23の先端部23aは円柱形状を有している。この回転工具の撹拌部23を素材の表面から内部に挿入した状態で回転工具の回転体21及び撹拌部23を中心軸の周りに回転させつつ、この回転工具を素材の表面に沿って移動させることにより、素材の表面を摩擦撹拌することができる。
なお、回転工具は、図3に示した例に限定されない。真空バルブ用接点材料を摩擦撹拌するのに適合する形状、寸法になる所定の回転工具を適用することができる。また、回転工具の材質も特に限定されることはないが、真空バルブ用接点材料を摩擦撹拌するのに適合する材質として、例えば窒化硼素よりなる回転工具を用いることができる。
回転工具による摩擦撹拌処理の条件も、真空バルブ用接点材料を摩擦撹拌するのに適合する条件として、回転数や素材表面と平行な方向への移動速度を適切に定めて摩擦撹拌処理を行うことができる。なお、発明者らは、後述する実施例のように、適切な条件により真空バルブ用接点材料を摩擦撹拌できることを確認している。
図4に、摩擦撹拌処理を行った後の接点材料の断面を模式的に示す。同図に示されるように、接点材料30の内部30aは摩擦撹拌処理が施されておらず、表面近傍部分30bは、摩擦撹拌処理が施されている。接点材料30の内部30aでは、導電性成分のマトリックス31と、このマトリックス31に分散された耐弧性成分粒子32を有している。そして、接点材料30の表面近傍部分30bでは、成分構成は内部30aと同じであるが、耐弧性成分粒子33が、内部30aの耐弧性成分粒子32よりも微細に分散している。
本発明の真空バルブ用接点材料は、表面から1mm以上の深さの領域が摩擦撹拌処理されているものとする。摩擦撹拌処理により素材表面には凹凸が生じるので、この摩擦撹拌処理による表面の凹凸の凹部に摩擦撹拌処理が施されていない領域が現れないようにするため、換言すれば、摩擦撹拌処理が程されて耐弧性成分が微細に分散している領域が表面に確実に存在するようにするためには、摩擦撹拌処理を、表面から1mm以上の深さの領域に対して行う必要がある。摩擦撹拌処理後の表面の凹凸は、研削などの平滑化処理により平坦化され、接点として供される。したがって、本発明の真空バルブ用接点材料は、摩擦撹拌処理時に、その処理深さが1mm以上であればよく、接点として真空バルブに組み込まれている時には、摩擦撹拌処理がされている領域の深さは、接点の表面から1mm未満であってもよい。もっとも、1mm未満であっても摩擦撹拌処理がされている領域が、表面近傍に形成されている必要がある。また、摩擦撹拌処理時の処理深さの上限は、特に限定されない。処理深さが深くなるほど摩擦撹拌処理時に回転工具に加わる応力が大きくなる。したがって、処理深さは、接点として必要な摩擦撹拌処理深さや、回転工具の寿命等を総合的に勘案して定めればよい。
前記表面近傍の領域の耐弧性成分粒子は、摩擦撹拌処理によって針状または片状に一方向に延伸された形状を有している。このような形状に耐弧性成分粒子は変形し、粉砕され、微細化されることから、優れた遮断特性と耐電圧特性を兼備している。
摩擦撹拌処理が施される素材は、導電性成分のマトリックス中に耐弧性成分の粒子が分散した組織形態を有する接点材料であれば、その成分組成範囲を問わない。この接点材料のなかでも、導電性成分がCuであり、耐弧性成分がCr及びMoのうちの少なくとも一種を含むことは、より好ましい。導電性成分がCuであり、耐弧性成分がCr及びMoのうちの少なくとも一種を含むものである接点材料は、耐電圧性能や通電性能や遮断性能に優れているが、従来の製造方法では、耐弧性成分の平均粒径は10μm程度が限界であって、さらなる特性向上には限界があったためである。本発明によれば、上記の成分組成の接点材料であっても、表面近傍における耐弧性成分の平均粒径を10μm以下にすることができるので、さらなる特性向上を実現することができる。
本発明の接点材料は、上記したCu、Cr及びMoの他に、Nb及びTaの一種又は二種を更に含有することができる。
本発明の接点材料は、図3に例として示された回転工具を用いて表面が摩擦撹拌される。この摩擦撹拌処理の後、素材の表面には、回転工具の先端部が挿入された跡が表面の凹部として残っている場合がある。この挿入跡は、回転工具の先端部が素材表面に挿入された深さにもよるが、摩擦撹拌処理後の研削加工などでは容易に除去することは難しい場合がある。しかし、本発明の接点材料が用いられる真空バルブの接点は、一般に、一対の対向する接点間に生ずるアークの駆動制御や接点同士の接触位置の調整等のために、その互いに対向する表面における中央部に凹み又は穴が形成される。そこで、本発明の接点材料では、回転工具の先端部が挿入された跡の位置を、製品としての接点の表面における中央部と一致させることにより、この回転工具の先端部が挿入された跡が残存したとしても、接点として何ら問題を生ずることなく適用することが可能となる。
なお、摩擦撹拌処理に関して、真空バルブ用接点材料ではない材料への適用例がある。例えば、特許第3721454号明細書には、Al又はAl合金等の軽金属製部材よりなるシリンダヘッドに摩擦撹拌処理を施すことが記載されている。しかしながら、従来公知の摩擦撹拌処理は、上記公報のようにAl又はAl合金等といった、塑性加工が容易な軽金属製部材に対して行われる処理であって、本発明のように、硬質の耐弧性成分を含む素材を摩擦撹拌処理することができることは、当業者といえども公知技術を単に転用しただけで、本発明に想到することができるものではなかった。また、特に、本発明の真空バルブ用接点材料は、軟質のCuマトリックス中に硬質のCrないしはMo粒子が分散した複合組織を有しており、このような複合組織は、特に塑性加工が難しいことが知られていた。発明者らは、予想外にも上記組織を有する真空バルブ用接点材料が摩擦撹拌処理可能であることを見出し、本発明に到ったものである。
次に、本発明の真空バルブ用接点材料の製造方法について説明する。本発明の真空バルブ用接点材料は、焼結法、溶浸法及び溶解法から選ばれる一つの方法で製造され、導電性成分のマトリックス中に耐弧性成分の粒子が分散した組織形態を有する素材の表面から1mm以上の深さの領域を、回転工具を用いて摩擦撹拌処理することによって得られる。
摩擦撹拌処理する素材は、真空バルブ用接点材料を製造する方法として従来公知の焼結法、溶浸法及び溶解法のいずれの方法によって製造されたものであってもよい。
このような素材に、摩擦撹拌処理を施す。この摩擦撹拌処理は、既に述べたように、図3に例として示された回転工具を回転させながら、処理する素材の表面から1mm以上の深さに挿入し、回転工具との接触部周辺の領域を塑性流動させることにより組織を改質する。回転工具の形状、寸法、摩擦撹拌処理時の回転工具の回転数、移動速度などの製造条件も、処理する接点材料に応じて適宜選択することができる。
摩擦撹拌処理の雰囲気は、耐弧性成分の粒子が、導電性成分によって包含されていることによってこの耐弧性成分の酸化が抑制されていることから、空気雰囲気であってもよい。摩擦撹拌処理時にこの耐弧性成分の酸化を防止するために、不活性雰囲気中であることが、より好ましい。
摩擦撹拌処理時の温度は、常温であってもよいし、摩擦撹拌処理による発熱した温度条件下であってもよいし、処理が施される接点材料が固相状態である温度範囲内で、加熱された温度条件下であってもよい。
摩擦撹拌処理後は、接点としての所定のサイズ、形状に加工されて、接点として真空バルブに組み込まれる。
次に、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。この実施例では、一例として焼結法により製造したCuCr合金,CuMo合金またはCuMoCr合金の素材表面を摩擦撹拌処理する場合について示した。
摩擦撹拌処理は、図3(a)を示した回転工具を回転させながら、処理する素材の表面に挿入し、回転工具との接触部周辺の領域を塑性流動させることにより組織を改質した。実施例では窒化硼素製の回転工具を用い、回転数1000rpm、面平行方向移動速度500mm/minで素材表面から深さ1.5mmの領域に対して摩擦撹拌処理を行った。
素材の組成、素材の製造方法、摩擦撹拌処理の有無、摩擦撹拌処理時のシールドガス(不活性ガス)の有無により、実施例1〜7、比較例1及び2の接点材料を得た。
実施例4は、真空バルブに組み込まれたときに他方の接点に対向する表面における中央部に相当する部分に、凹み又は穴を有しない例である。そのため、摩擦撹拌処理の際には、上下面が一辺100mmの正方形で5mmの厚みを有する板状の焼結体を予め準備し、この焼結体の素材に回転工具を挿入した後、回転工具を素材上面と平行に動かし、回転工具の回転部が上面全体を通過するように移動させた後、回転工具を素材角部付近で素材より抜き出し、この回転工具による穴を避けて円板状の接点を加工して取り出すことにより、接点内に穴が存在しないように配慮して作成した。
その他の実施例では、円板状の素材を用い、回転工具を素材の中心から抜き出すことにより、回転工具による穴が素材中心部に形成されるようにし、中心に穴または凹みを有する接点とした。
比較例1は、摩擦撹拌処理を行っていないが、実施例1と形状を合わせるために同様の穴を加工により形成した。
実施例3では摩擦撹拌処理をアルゴンをシールドガスとして吹き付けながら行った。
このようにして得られた実施例1〜7、比較例1及び2の接点材料について、酸素含有量、耐弧性成分の粒子間距離、真空バルブに接点として組み込んだときの電気的特性について調査した。
酸素含有量は、赤外線吸収法により測定した。また、耐弧性成分の平均粒子間距離は、断面組織写真の縦横に補助線を引き、耐弧性成分粒子間の距離を測定してその平均値を求めた。
電気的特性については、図1に示した真空バルブに、図2に示したように接点を取り付けて、遮断試験及び耐電圧試験を行って評価した。
遮断試験では、接点材料を電気的特性評価用の真空バルブに組み込み、ギャップ長を8mmとし、12kV条件での合成遮断試験を行い、遮断電流値を徐々に増大させ、再発弧が発生しない上限の遮断電流値を調べた。遮断に失敗した場合は電流値を下げ、遮断成功するかどうかを再度調べる方法で実施した。評価結果は、実施例2を基準(1.0)とした相対値で示した。
耐電圧試験は、接点材料を電気的特性評価用の真空バルブに組み込み、投入時に高電圧を印加して投入アークを発生させ、両側接点の溶着あるいは接触部を機械的に無負荷で引き外し、この引き外し部分に電圧を徐々に増加しながら印加し、絶縁破壊電圧を測定した。評価結果は実施例2を基準(1.0)とした相対値で示した。
これらの調査、評価結果をまとめて表1に示す。
Figure 0005142559
[実施例1及び比較例1]
焼結法によって製造した素材に摩擦撹拌処理を施し、処理領域が接触側の表面となるように接点形状に加工した実施例1と、焼結したままの状態から接点形状に加工した比較例1とを表1で比較する。実施例1では、図4に模式的に示したように摩擦撹拌処理により表面近傍のCr粒子が粉砕され、平均粒子間距離が短くなっており、この結果、耐電圧性能は、比較例1に対して向上している。また、実施例1の酸素含有量は500ppm程度であり、焼結したままの状態の酸素含有量400ppmから大きく増大していないため、比較例1と遮断性能は同等であることがわかる。
[実施例2〜3]
焼結法によって製造した素材を用いた実施例1及び比較例1に代わって、実施例2〜3では溶浸法及び溶解法によって製造した素材についても摩擦撹拌処理を施し同様に接点形状に加工して評価した。表1から、実施例2〜3は、焼結法で製造した素材を用いた実施例1と同様に耐電圧性能、遮断性能とも良好な結果が得られた。
[実施例4〜6及び比較例2]
摩擦撹拌処理の回転工具による穴または凹みの有無およびその位置が異なる実施例4〜6及び比較例2について調べた。角板状の素材を用い、その角部付近で摩擦撹拌処理を終了させ、回転工具によるくぼみが含まれない領域から接点を加工して取り出した実施例4と、円板状の素材中心部で摩擦撹拌処理を終了し、素材中心に貫通孔が形成されるように接点を加工して取り出した実施例5と、円板状の厚い素材中心部で摩擦撹拌処理を終了し、素材中心に凹みが形成されるように接点を加工して取り出した実施例6と、円板状の素材の中心部と外周部との中央付近で摩擦撹拌処理を終了させ、この位置に貫通孔が形成されるように接点を加工して取り出した比較例2とを評価した。
表1から、貫通孔や凹みの無い実施例4、貫通孔、凹みが中心に存在する実施例5,6では耐電圧性能、遮断性能とも良好な結果が得られており、特に貫通孔や凹みの無い実施例4では、電流遮断に有効使用できる接点面積が大きいことから、実施例5、6より高い遮断性能を示している。これに対して、中心部と外周部との中央付近に貫通孔を有する比較例2では、この部分にアーク集中が発生し、良好な遮断性能が得られていない。
[実施例7]
表1より、シールドガスとしてArを使用した実施例7についても、これを使用しない実施例1と同様に耐電圧性能、遮断性能とも良好な結果が得られた。
[実施例8]
表1より、耐弧成分としてMoを使用した実施例8についても、Crを使用した実施例1と同様に耐電圧性能、遮断性能とも良好な結果が得られた。
最後に、本発明の真空バルブの接点材料及びその製造方法は、実施例に限定されることなく、本発明の趣旨に含まれる限り幾多の変形が可能であることを付言しておく。
本発明の真空バルブ用接点材料が、接点として用いられる真空バルブの一例を示す断面図である。 真空バルブの電極近傍の断面拡大図である。 回転工具の模式図である。 摩擦撹拌処理を行った後の接点材料の模式的な断面図である。
符号の説明
30 接点材料
31 マトリックス(導電性成分)
32 耐弧性成分粒子
33 耐弧性成分粒子

Claims (3)

  1. Cuよりなる導電性成分のマトリックス中に、Cr及びMoのうちの少なくとも一種を含む耐弧性成分の粒子が分散した組織形態を有し、表面から1mm以上の深さの領域が、窒化硼素よりなる回転工具を用いて摩擦撹拌処理されており、この摩擦撹拌処理を施した表面近傍の領域の耐弧性成分粒子が、この表面近傍以外の領域の耐弧性成分の粒子に比べて平均粒径が10μm以下に微細に分散していることを特徴とする真空バルブ用接点材料。
  2. 前記表面近傍の領域の耐弧性成分粒子は、針状または片状に一方向に延伸された形状であることを特徴とする請求項1に記載の真空バルブ用接点材料。
  3. 焼結法、溶浸法及び溶解法から選ばれる一つの方法で製造され、Cuよりなる導電性成分のマトリックス中に、Cr及びMoのうちの少なくとも一種を含む耐弧性成分の粒子が分散した組織形態を有する素材の表面から1mm以上の深さの領域を、窒化硼素よりなる回転工具を用いて摩擦撹拌処理し、前記耐弧性成分の平均粒径を10μm以下に微細したことを特徴とする真空バルブ用接点材料の製造方法
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