JP5141676B2 - 端子電極の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、端子電極の製造方法に関する。
フェライトコアや積層型電子部品に設けられる端子電極としては、金属からなる下地層の上にめっき膜が形成されたものが用いられている。このような端子電極は、各種情報機器用の基板に、ハンダを用いて実装されるため、良好なハンダ付け性を有することが求められる。
例えば、特許文献1では、フェライトコアに設けられる端子電極を、銀、銀合金又は銅からなる金属層の上に、Ni,Sn,Sn−Pb等のめっき皮膜を形成して端子電極を製造することが提案されている。
フェライトコアや積層型電子部品などの電子部品は、これらが実装される電子機器の高機能化及び高品質化に伴って、一層の性能向上が要求されており、素材の有する特性を十分に活用することが求められる。
特開平10−172832号公報
しかしながら、特許文献1のような端子電極の製造方法では、めっき皮膜の形成に伴って、電子部品の性能が低下することが懸念される。例えば、チップ素体に端子電極を形成して積層型セラミックコンデンサを作製する際に、端子電極の表面層をニッケルめっき皮膜及びSnめっき皮膜をバレルめっき法等によって形成すると、めっき液がチップ素体を構成するセラミック素体の内部に侵入する可能性がある。このような事象が発生すると、セラミック素体内部において、金属の析出や電解液の残留が生じ、その結果短絡が発生してしまうことが懸念される。
また、端子電極の下地層の形成が不十分なために内部電極がニッケルめっき皮膜を形成する面に一部露出しているような場合、めっき形成時に、ニッケルめっき皮膜が水素を吸蔵してしまい、この水素がSnめっき膜に閉じ込められて、絶縁抵抗値の低下の要因となり得る。さらに、めっき工程時にセラミック素体又はチップ素体同士が接触し、これによって生じたクラック等が、セラミック素体内部へのめっき液の侵入の要因になることも考えられる。
また、特許文献1のようにめっき皮膜の下地となる下地層を、金属からなる金属層とする場合、当該金属層を形成するために、高温で焼成することが必要となる。これによって、金属層に含まれる金属元素がセラミック素体中に拡散してしまい、セラミック素体の磁気特性や電気特性が低下してしまうことが懸念される。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、端子電極の形成に伴うセラミック素体の性能低下を十分に抑制し、信頼性に優れる電子部品を製造することが可能な端子電極の製造方法及び電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、一つの側面において、電子部品のセラミック素体上に設けられる端子電極の製造方法であって、第1の金属成分とガラス成分とを含むペーストを、セラミック素体上に塗布する塗布工程と、セラミック素体上のペーストを焼成して下地層を形成する焼成工程と、下地層の上に、乾式製膜法によって第1の金属成分とは異なる第2の金属成分を含む皮膜を形成して、下地層及び下地層を被覆する皮膜を有する端子電極を得る製膜工程と、を有する、端子電極の製造方法を提供する。
上記本発明では、下地層を、第1の金属成分とガラス成分とを含むペーストを用いて形成しているため、第1の金属成分としてNi等の高融点金属を用いた場合であっても、密着性に優れる下地層を十分に低い焼成温度で形成することができる。また、乾式製膜法によって皮膜を形成していることから、セラミック素体へのめっき液の侵入を防止することができる。これらの要因によって、セラミック素体の電気特性や磁気特性の低下が十分に抑制され、信頼性に優れる電子部品を得ることが可能な端子電極を製造することができる。
本発明の製造方法では、焼成工程の後に、下地層の表面をブラストする表面処理工程を有することが好ましい。これによって、焼成工程時に下地層にガラス浮きが生じた場合に、下地層の表面に析出したガラスを除去することができ、下地層と、その後に形成される皮膜との密着性とを向上させることができる。
本発明の製造方法の製膜工程における乾式製膜法はコールドスプレー法であることが好ましい。コールドスプレー法によれば、焼成工程時に下地層の表面にガラス浮きが生じた場合であっても、第2の金属成分を含む材料粒子が下地層の表面に衝突することにより、下地層の表面におけるガラスを除去しながら材料粒子を付着させて皮膜を形成することができる。このため、下地層と皮膜との密着性に優れる端子電極を効率的に製造することができる。
本発明における第1の金属成分は、Ni,Ti,Ag及びCuの少なくとも一種を含む金属、又は当該金属を含む合金を含有することが好ましい。これによって、比較的低温で焼成して下地層を形成しても、密着性に優れた端子電極を製造することができる。
また、本発明における第2の金属成分は、Sn及びAuの少なくとも一種を含む金属、又は当該金属を含む合金を含有することが好ましい。これによって、ハンダぬれ性及びハンダとの接続強度が一層向上し、一層信頼性に優れる電子部品を得ることができる。
また、本発明は、別の側面において、第1の金属成分とガラス成分とを含むペーストを、セラミック素体上に塗布する塗布工程と、セラミック素体上のペーストを焼成して下地層を形成する焼成工程と、下地層の上に、乾式製膜法によって第2の金属成分を含む皮膜を形成して、下地層及び下地層を被覆する皮膜を有する端子電極を得る製膜工程と、を有する、セラミック素体とその上に端子電極とを備える電子部品の製造方法を提供する。
上記本発明では、下地層を、第1の金属成分とガラス成分とを含むペーストを用いて形成しているため、第1の金属成分としてNi等の高融点金属を用いた場合であっても、密着性に優れる下地層を十分に低い焼成温度で形成することができる。また、乾式製膜法によって皮膜を形成していることから、セラミック素体表面のめっき液による腐食及び素体内部へのめっき液の侵入を防止することができる。これらの要因によって、セラミック素体の電気特性や磁気特性の低下が十分に抑制され、信頼性に優れる電子部品を製造することができる。
本発明によれば、端子電極の形成に伴うセラミック素体の性能低下を十分に抑制し、信頼性に優れる電子部品を製造することが可能な端子電極の製造方法及び電子部品の製造方法を提供することができる。
本発明の製造方法によって得られるセラミックコアの一例を示す斜視図である。 本発明の製造方法によって得られるセラミックコアの一例を模式的に示す断面図である。 本発明の製造方法によって得られるコイル部品の一例を模式的に示す断面図である。 本発明の製造方法によって得られる積層セラミックコンデンサの一例を示す斜視図である。 本発明の製造方法によって得られる積層セラミックコンデンサの一例を模式的に示す断面図である。
以下、場合により図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図面において、同一または同等の要素には同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
<第1実施形態>
図1は、本実施形態の製造方法によって得られるセラミックコアの斜視図である。セラミックコア100は、図1に示すようにドラム形状を有している。
図2は、図1のセラミックコアのII−II線における模式断面図である。セラミックコア100は、図1及び図2に示すように、巻芯部12と、当該巻芯部12の軸方向の両端に形成された一対の鍔部14とを有するドラム形状のセラミック素体10と、該セラミック素体10の一方の鍔部14上に設けられる一対の端子電極20とを備える。
図1及び図2に示すように、セラミック素体10の巻芯部12及び鍔部14は、ともに円柱形状を有しており、巻芯部12と鍔部14とは、一体的に形成されている。一対の端子電極20は、それぞれセラミック素体10の鍔部14における周側面16の一部と端面18の一部を覆うように設けられている。端子電極20は、セラミック素体10側から、下地層22と皮膜24とが積層された積層構造を有している。
本実施形態の製造方法は、セラミックコア用のセラミック素体10上に端子電極20を製造する、端子電極20の製造方法である。この製造方法は、セラミックコア100用のセラミック素体10を作製する準備工程と、第1の金属成分とガラス成分とを含むペーストを、セラミック素体10の上に塗布する塗布工程と、セラミック素体10の上のペーストを焼成して下地層22を形成する焼成工程と、下地層22の表面をブラストする表面処理工程と、下地層22の上に、乾式製膜法によって第2の金属成分を含む皮膜24を形成して、下地層22が皮膜24によって被覆された端子電極20を得る製膜工程と、を有する。この製造方法は、電子部品の一種である、セラミック素体10と該セラミック素体10の上に端子電極20とを備えるセラミックコア100の製造方法でもある。以下、適宜図面を参照しつつ各工程の詳細について説明する。
準備工程では、セラミックコア用のセラミック素体10を作製する。このセラミック素体10は、公知の方法で作製することができる。例えば、セラミックコア100がフェライトコアである場合、Ni−Cu−Zn系、Ni−Zn系、又はMn−Zn系のフェライト粉末、バインダ及び添加物を配合して混合し、必要に応じて加熱して造粒する。得られた造粒粉をプレス成形して成形体を作製し、所定の温度に加熱して脱脂した後、焼成してフェライトコア用のセラミック素体10を作製することができる。焼成温度は、例えば1000〜1200℃、焼成時間は、例えば1〜3時間に設定することができる。なお、セラミックコア100が非磁性体コアである場合は、例えばアルミナ等の粉末を用いて公知の方法でセラミック素体10を作製することができる。
塗布工程では、セラミック素体10の上に、第1の金属成分とガラス成分とを含むペーストを塗布する。ここで用いるペーストは、第1の金属成分を含む市販の金属粉、ガラス粉、バインダ及び溶剤を配合して調製することができる。第1の金属成分は、好ましくはNi,Ti,Ag及びCuの少なくとも一種を含む金属、又は当該金属を含む合金であり、より好ましくはNi又はNiを含む合金である。金属粉としては、これらの金属又は合金を含む粉末を用いることができる。
第1の金属成分のうち、Niは、優れた拡散防止機能を有しており、ハンダ食われや、ハンダや皮膜24に含まれる金属成分(Snなど)がセラミック素体10に拡散するのを十分に抑制することができる。また、Niは、表1に示すとおり、拡散防止機能を有すると考えられる金属の中で、最も融点が低いため、ガラス成分を用いることとの相乗作用によって、下地層22形成時の焼成温度の低減にも寄与する。このように、Niを含む金属粉末を用いることによって、金属元素の拡散や熱によるセラミック素体10の性能低下を十分に抑制することができる。
Figure 0005141676
第1の金属成分に用いられるNi合金としては、Niと、Pd,Pt,Co,Fe,Cr,Ti,W,Mo及びNbから選ばれる少なくとも一種の金属元素との合金が挙げられる。このような合金は、ハンダや皮膜24からセラミック素体10への金属元素の拡散を、十分に抑制することができる。また、Ni合金を用いることによって、下地層22の焼成温度、焼成時の収縮挙動、及び焼成時の線膨張係数等を調整することができる。
なお、Ag及びCuは融点が低いため、第1の金属成分として、Ag又はCuを用いると、下地層22を形成する際に、焼成温度を低くすることができる。ただし、Ag及びCuは、Ni等に比べると拡散しやすい。このため、例えば、下地層22の拡散防止機能が損なわれない程度に、第1の金属成分がAg及びCuを含有してもよい。これによって、セラミック素体10への金属元素の拡散防止機能を維持しつつ、焼成温度の低減及び端子電極20の低抵抗化を図ることができる。
ペーストにおける第1の金属成分の含有率は、第1の金属成分とガラス成分との合計を基準として、好ましくは60〜95質量%、より好ましくは70〜95質量%、さらに好ましくは80〜93質量%である。第1の金属成分の含有率が高くなり過ぎると、下地層22の焼成温度が高くなる傾向にある。一方、第1の金属成分の含有率が低くなり過ぎると、下地層22の拡散防止機能が損なわれる傾向にある。
ペーストの調製に用いるガラス粉末に特に制限はないが、軟化温度が好ましくは700℃以下、より好ましくは600℃以下のものが好ましい。このように軟化温度の低いガラス粉末を用いることによって、焼成温度を低くすることが可能となり、第1の金属成分の酸化やセラミック素体10の性能低下を十分に抑制することができる。バインダとしては、アクリル、ブチラール、又はポリビニルアルコール等の樹脂を用いることができる。溶剤としては、エタノール、キシレン、ブチルカルビトール又はターピネオール等を用いることができる。ガラス粉末は、後述する表面処理工程におけるブラスト性を良好にする観点から、アルカリ金属酸化物を含むガラスからなるものであることが好ましい。
本実施形態の製造方法は、塗布工程と焼成工程の間に、セラミック素体の上に塗布したペーストを加熱して脱脂する脱脂工程を有することが好ましい。脱脂工程では、ペーストに含まれるバインダを大気中で燃焼することによって除去する。脱脂工程における加熱温度は、バインダの種類によって異なり、例えば300〜500℃であることが好ましい。
焼成工程では、セラミック素体10の上のペーストを焼成して下地層22を形成する。焼成時の雰囲気は、必要に応じて例えば窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気とし、焼成温度は、ペーストに含まれるガラス粉末の軟化温度以上とする。具体的には、焼成温度は、好ましくは500〜700℃、より好ましくは550〜650℃とする。焼成時間は、好ましくは0.1〜10時間、より好ましくは0.5〜5時間とする。このような焼成条件で焼成することによって、熱や元素拡散によるセラミック素体10の性能低下を抑制しつつ、密着性に優れる下地層22を形成することができる。焼成温度が高過ぎると、セラミック素体10と下地層22との界面付近における残留応力が大きくなり、セラミック素体10のクラックの発生、または密着性の低下が生じ易くなる傾向にある。一方、焼成温度が低過ぎると、下地層22の焼結が十分に進行せず、下地層22とセラミック素体10との密着性が損なわれる傾向にある。
下地層22の厚みは、好ましくは0.5〜20μm、より好ましくは2〜10μm、さらに好ましくは3〜8μmである。下地層22の厚みが小さくなり過ぎると、皮膜24からの元素拡散を十分に抑制することが困難になる傾向にある。一方、下地層22の厚みが大きくなり過ぎると、セラミックコア100が大型化する傾向にある。
表面処理工程では、下地層22の表面をブラストする。本実施形態の製造方法では、ガラス粉と金属粉とを含むペーストを焼成して下地層22を形成しているため、焼成条件に応じて、下地層22の表面にガラスが析出するガラス浮きが発生して、下地層22と皮膜との十分な密着性が損なわれる場合がある。そこで、表面処理工程によって、下地層22の表面に存在するガラスをブラストすれば、下地層22と皮膜24との密着性を向上することができる。ブラストの方法は特に制限されず、例えば金属粒子を下地層22の表面に衝突させることによって、下地層22の表面にあるガラスを排除することができる。
製膜工程では、下地層22の上に、乾式製膜法によって第2の金属成分を含む皮膜24を形成して、下地層22が皮膜24によって被覆された端子電極20を形成する。乾式製膜法としては、蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、CVD、プラズマCVD、溶射、又はコールドスプレーが挙げられる。本実施形態の製造方法では、このような乾式製膜によって皮膜24を形成するため、セラミック素体10にめっき液等を付着させる必要がない。したがって、めっき液によるセラミック素体10の表面の腐食、及びめっき液等の侵入に伴うセラミック素体10の性能低下を防止することができる。
上述の乾式製膜法は、通常の条件によって行うことができる。なお、下地層22が形成されていないセラミック素体10の表面に皮膜24が形成されることを防止するために、蒸着、イオンプレーティング及びスパッタリングの場合は、セラミック素体10の表面をマスキングする必要がある。一方、溶射及びコールドスプレーの場合は、適切な条件を選定することによって、マスキングをしなくても下地層22の上のみに皮膜24を形成することができる。このため、工程簡略化の観点から、溶射及びコールドスプレーによって製膜することが好ましい。また、上述の表面処理工程と製膜工程とを同時に行うことができる点で、コールドスプレーが最も好ましい。つまり、コールドスプレーによれば、第2の金属成分を含む金属粒子や合金粒子の粒径、ノズルからの噴出速度、下地層22に衝突する際の速度(衝突速度)及びワーキングディスタンス(噴出口から下地層22までの距離)を調整することによって、下地層22の表面に析出したガラスを排除しながら、下地層22の表面上に粒子を付着及び堆積させて、皮膜24を形成することができる。コールドスプレーは、通常のコールドスプレー装置を用いて行うことができる。
コールドスプレーによって下地層22の表面上に皮膜24を形成する場合、吹き付ける粒子の種類、粒子の粒径、下地層22の材質等に応じて、コールドスプレー用のノズルの寸法や、粒子の噴出速度、ワーキングディスタンスなどを、適宜調整することが好ましい。粒子の種類としては、第2の金属成分を含有する金属粒子や合金粒子を用いることができる。
コールドスプレーに用いる粒子の粒径は、好ましくは1〜30μm、より好ましくは1〜20μm、さらに好ましくは2〜10μm、最も好ましくは2〜5μmである。粒子の粒径が1μm未満であると、粒子を加速すること及びその噴出速度の安定性を確保することが困難になる傾向にある。一方、粒子の粒径が30μmを超えると、皮膜24の薄膜化が困難になる傾向にある。
コールドスプレーに用いる粒子の粒径は、小さいほど付着効率が高くなり、下地層22との密着性が向上する傾向にある。薄くて密着性の良好な金属層からなる皮膜24を形成する観点からは、できるだけ小さい粒径の粒子を用いることが好ましい。また金属層の厚さは、コールドスプレーに用いる粒子の平均粒径の0.5倍以上であることが好ましく、1倍以上であることがより好ましい。金属層の厚さが粒子の平均粒径の0.5倍未満であると、金属層の連続性の確保が困難になる傾向にある。
吹き付ける粒子として、粒径1〜30μmのスズ粒子又はスズを含有する合金粒子を用いる場合、粒子の噴出速度は好ましくは100〜1000m/秒、衝突速度は好ましくは50〜800m/秒、より好ましくは360〜800m/秒である。衝突速度が大き過ぎると、下地層22が削られる場合があり、衝突速度が小さ過ぎると粒子の塑性変形が十分に進行せず、皮膜24の緻密さ及び均一性が損なわれる傾向にある。また、スズ粒子又はスズを含有する合金粒子のコールドスプレーによる供給量は、好ましくは1〜10g/分である。該供給量が1g/分未満であると、皮膜24の均一性が損なわれる傾向にあり、該供給量が10g/分を超えるとコールドスプレーのフィーダー等が閉塞する可能性がある。
コールドスプレーによってスズ皮膜又はスズ合金皮膜を形成する場合、セラミックス素体上におけるスズ又はスズ合金の堆積速度を、金属上におけるスズ又はスズ合金の堆積速度よりも大幅に小さくすることができる。このため、コールドスプレーの条件を調整すれば、マスクレスでスズ皮膜又はスズ合金皮膜を下地層22上のみに形成することができる。
コールドスプレーのキャリアガスとしては、不活性であり且つガス密度が小さいものが好ましい。これは、ガス密度が小さい方が体積膨張が大きく、容易に粒子を加速できるためである。具体的には、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、窒素ガス又はこれらの混合ガスが挙げられる。
コールドスプレーによれば、常温でも皮膜24が形成可能であるため、溶射法に比べて皮膜24中の残留応力を十分に小さくすることができる。また、セラミック素体10の熱による性能低下を十分に抑制することができ、また、湿式めっきのようにめっき液を付着させる必要がないため、セラミック素体10の性能低下を十分に抑制することができる。さらに、下地層22の導電性の有無にかかわらず、緻密な皮膜24を効率よく形成することができる。なお、下地層22をセラミック素体10が熱によって性能低下しない程度に加熱してコールドスプレーを行えば、皮膜24の密着性及び粒子の付着確率を向上させることができる。
第2の金属成分は第1の金属成分とは異なるものであり、例えば、Sn及びAuの少なくとも一種を含む金属、又は当該金属を含む合金を含有することが好ましい。このため、皮膜24の形成には、このような金属や合金からなる金属粒子を用いることが好ましい。また、上述の第2の金属成分は、ハンダとの密着性を一層向上させる観点から、Sn又はSn合金を含有することがより好ましい。また、製造コストの観点からは、Snがさらに好ましい。
Sn合金としては、Snと、Pt,Au,Pd,Ag及びCuから選ばれる少なくとも一種の金属元素との合金が挙げられる。このようなSn合金を用いることによって、ハンダのぬれ性、及びハンダとの密着性を一層向上させることができる。同様の観点から、Sn合金のうち、ハンダ用金属と同様の組成を有する成分がより好ましく、Sn−3.5Ag−0.5Cuが特に好ましい。
皮膜24が第2の金属成分としてSn又はSn合金を含み、下地層22がNi又はNi合金を含んでいると、皮膜24からセラミック素体10への元素拡散を十分に抑制することができるため、セラミック素体10の性能低下が十分に抑制されるとともに、ハンダぬれ性及びハンダとの密着性に一層優れた端子電極20とすることができる。
皮膜24の厚みは、好ましくは0.2〜20μm、より好ましくは1〜10μm、さらに好ましくは2〜6μmである。皮膜24の厚みが小さくなり過ぎると、ハンダぬれ性やハンダとの優れた密着性が損なわれる傾向にある。一方、皮膜24の厚みが大きくなり過ぎると、製造コストが上昇するとともにセラミックコア100が大型化する傾向にある。
上述の工程によって、セラミック素体10と、該セラミック素体10の一方の鍔部14の表面上に設けられた端子電極20と、からなるセラミックコア100を得ることができる。この端子電極20は、第1の金属成分とガラス成分とを含む下地層と、第2の金属成分を含む皮膜とが積層された構造を有しているため、セラミック素体10との密着性、ハンダぬれ性及びハンダとの密着性に優れている。
端子電極20の厚みT1は、好ましくは0.7〜40μm、より好ましくは3〜20μm、さらに好ましくは5〜15μmである。これによって、セラミックコア100の大型化を回避しつつ、ハンダぬれ及びハンダとの密着性に一層優れた端子電極20とすることができる。
端子電極20は、下地層22を1000℃以下の低温で焼成して形成しても、セラミック素体10との密着性に十分優れている。このように低温で焼成することができるため、セラミック素体10が有する性能を十分に維持することができる。すなわち、本実施形態の製造方法によれば、端子電極の形成に伴うセラミック素体の性能低下を十分に抑制し、信頼性に優れるセラミックコアを製造することができる。
図3は、本実施形態の製造方法によって得られる電子部品の一種であるコイル部品の模式断面図である。コイル部品150は、上述の製造方法によって得られたセラミックコア100の巻芯部12に導電性材料からなる巻線50を巻回し、当該巻線の先端及び後端を、それぞれハンダ52を用いて端子電極20に接続することによって製造することができる。コイル部品150は、例えばチョークコイル、トランス、又はコモンモードチョークコイルであってもよい。
<第2実施形態>
図4は、本発明の別の実施形態の製造方法によって得られる積層セラミックコンデンサを示す斜視図である。図4に示す積層セラミックコンデンサ200は、略直方体形状を有しており、例えば、長手方向(横)の長さが2.0mm程度、幅方向の長さ及び奥行き方向の長さが1.2mm程度である。
積層型電子部品の一種である積層セラミックコンデンサ200は、略直方体形状のチップ素体1と、チップ素体1の両端部にそれぞれ形成された一対の端子電極20と、を備えている。チップ素体1は、互いに対向する端面11a及び端面11b(以下、纏めて「端面11」という。)と、端面11に垂直で互いに対向する側面13a及び13b(以下、纏めて「側面13」という。)と、端面11に垂直で互いに対向する側面15a及び側面15b(以下、纏めて「側面15」という。)とを有する。側面13と側面15とは互いに垂直である。
チップ素体1は、端面11と側面13aとの間の稜部R3、端面11と側面13bとの間の稜部R4、端面11と側面15aとの間の稜部R5、端面11と側面15bとの間の稜部R6を有している。稜部R3〜R6は、チップ素体1が研磨されてR形状を成している部分である。このようなR形状を有することによって、チップ素体1の稜部R3〜R6における破損の発生を抑制することができる。チップ素体1における稜部の曲率半径は、例えば、積層セラミックコンデンサ200の幅方向の長さの3〜15%とすることができる。
端子電極20は、チップ素体1における端面11、稜部R3、稜部R4、稜部R5及び稜部R6を覆うとともに、側面13,15の端面11側の一部を一体的に覆うように設けられている。すなわち、端子電極20は、チップ素体1の頂部42を覆うように設けられている。
図5は、図4の積層セラミックコンデンサ200のV−V線における断面図である。すなわち、図5は、図4に示す積層セラミックコンデンサ200を、側面13に垂直で側面15に平行な面で切断した場合の断面構造を示す図である。
端子電極20は、端面11、稜部R3〜R6及び頂部42の上において、チップ素体1側から順に下地層となる下地電極層23、及び皮膜24がこの順で積層された積層構造を有する。下地電極層23は、ガラス成分と第1の金属成分とを含有し、皮膜24は、第2の金属成分を含有する。
チップ素体1は、セラミック素体である複数の誘電体層7と複数の内部電極9とが交互に積層されて構成されている。この積層方向は、端子電極20が設けられている一対の端面11の対向方向に垂直であり、一対の側面13の対向方向に平行である。なお、説明の都合上、図5では、誘電体層7及び内部電極9の積層数を図面上で容易に視認できる程度の数としているが、所望の電気特性に応じて、誘電体層7及び内部電極9の積層数を適宜変更してもよい。積層数は、例えば、誘電体層7及び内部電極9を、それぞれ数十層としてもよく、100〜500層程度としてもよい。また、誘電体層7は、互いの間の境界が視認できない程度に一体化されていてもよい。
内部電極9aは、一方の端面11a側の端子電極20と電気的に接続されており、他方の端面11b側の端子電極20とは電気的に絶縁されている。また、内部電極9bは、他方の端面11b側の端子電極20と電気的に接続されており、一方の端面11a側の端子電極20とは電気的に絶縁されている。内部電極9a及び内部電極9bは、誘電体層7を挟んで交互に積層されている。本実施形態の積層セラミックコンデンサ200は、端面11a側の端子電極20と内部電極9bとの絶縁信頼性、及び端面11b側の端子電極20と内部電極9aとの絶縁信頼性に優れている。
本実施形態の製造方法は、積層セラミックコンデンサ用のチップ素体1の端面11及び側面13,15の一部の上に設けられる端子電極20の製造方法であって、チップ素体1を作製する準備工程と、第1の金属成分とガラス成分とを含むペーストを、チップ素体1の端面11及び側面13,15の一部の上に塗布する塗布工程と、チップ素体1の端面11及び側面13,15の一部の上に塗布されたペーストを焼成して下地電極層23を形成する焼成工程と、下地電極層23の表面をブラストする表面処理工程と、下地電極層23の上に、乾式製膜法によって第2の金属成分を含む皮膜24を形成して、下地電極層23が皮膜24によって被覆された端子電極20を得る製膜工程と、を有する。すなわち、本実施形態の製造方法は、積層セラミックコンデンサ200の製造方法でもある。以下、適宜図面を参照しつつ各工程の詳細について説明する。
準備工程では、チップ素体1を以下に述べるような通常の方法で作製する。まず、誘電体層7となるセラミックグリーンシートを形成する。セラミックグリーンシートは、ドクターブレード法等を用いてセラミックスラリーをPETフィルム上に、塗布後、乾燥させて形成することができる。セラミックスラリーは、例えば、チタン酸バリウムを主成分とする誘電体材料に溶剤、及び可塑剤等を加え、混合することによって得ることができる。形成したセラミックグリーンシートに、内部電極9となる電極パターンをスクリーン印刷し、乾燥させる。電極パターンのスクリーン印刷には、Cu粉末又はNi粉末にバインダや溶剤等を混合した電極ペーストを用いることができる。
このようにして複数の電極パターン付グリーンシート形成し、積層する。続いて、電極パターン付グリーンシートの積層体を積層方向と垂直に切断して直方体形状の積層チップを形成し、加熱処理を行って脱バインダを行う。加熱処理は、180〜400℃で0.5〜30時間行うことが好ましい。加熱処理して得られた積層チップを800〜1400℃で0.5〜8.0時間焼成し、バレル研磨して面取りを行い、直方体形状の稜部をR状にする。これによって、チップ素体1を得ることができる。
塗布工程では、第1の金属成分とガラス成分とを含むペーストを、チップ素体1の端面11上と、側面13,15の端面11側の一部の上に塗布する。ペーストは、第1実施形態と同様のものを用いることができる。
焼成工程では、チップ素体1の端面11及び側面13,15の上に塗布されたペーストを焼成して下地電極層23を形成する。この場合、下地電極層23は内部電極9と端子電極20の電気的導通を確保する機能を有する。焼成温度は、ペーストに含まれるガラス成分の軟化温度以上であり、且つペーストに含まれる第1の金属成分が十分に焼結して下地電極層23の電気抵抗を小さくすることが可能な温度にすることが好ましい。焼成時の雰囲気は、第1実施形態と同様とすることができる。これによって、熱や元素拡散によるチップ素体1における誘電体層7の性能低下を抑制しつつ、密着性及び内部電極9との電気導通性に優れる下地電極層23を形成することができる。
下地電極層23の厚みは、好ましくは0.5〜20μm、より好ましくは2〜10μm、さらに好ましくは3〜8μmである。下地電極層23の厚みが小さくなり過ぎると、後述する工程で作製する皮膜24からの元素拡散を十分に抑制することが困難になる傾向にある。一方、下地電極層23の厚みが大きくなり過ぎると、積層セラミックコンデンサ200が大型化する傾向にある。
表面処理工程では、下地電極層23の表面をブラストする。本実施形態の製造方法では、ガラス粉と金属粉とを含むペーストを焼成して下地電極層23を形成しているため、焼成条件に応じて、下地電極層23の表面にガラスが析出するガラス浮きが発生して、下地電極層23と皮膜との十分な密着性及び電気導通性が損なわれる場合がある。そこで、表面処理工程によって、下地電極層23の表面に存在するガラスをブラストすれば、下地電極層23と皮膜24との密着性及び電気伝導性を向上することができる。下地電極層23の表面全体を基準として、ガラスによって被覆される面積は、密着性及び電気導通性の向上の観点から、好ましくは10%以下である。ブラストの方法は特に制限されず、例えば金属粒子を下地電極層23の表面に衝突させることによって、下地電極層23の表面のガラスを排除することができる。
上述のブラストによって、下地電極層23の表面を粗化することができる。これによって、下地電極層23と第2の金属成分を含む皮膜24との密着性を向上することができる。下地電極層23の表面粗さは、好ましくはRa(中心線平均粗さ)で0.3〜5μmである。Raが0.3μm以下であると、下地電極層23と皮膜24との密着性向上の効果が不十分となる傾向にある。一方、Raが5μm以上であると、下地電極層23の連続性が損なわれ易くなる傾向にある。
下地電極層23の構造は、皮膜24側の表面のガラス被覆面積が全表面の10%以下であり、且つ表面粗さがRaで0.3〜5μmであることが好ましい。これらは、ブラストの条件を適切に設定することにより、容易に上述の構造を有する下地電極層23を形成することができる。下地電極層23とチップ素体1(セラミック素体)との界面における密着性を向上させる観点から、下地電極層23は、電気導通性を損なわない範囲でガラス成分の含有量を多くすることが好ましい。すなわち、下地電極層23と第2の金属成分を含む皮膜24との界面よりも下地電極層23とチップ素体1との界面の方がガラス被覆面積の割合が高い方が好ましい。
製膜工程では、下地電極層23の上に、乾式製膜法によって第2の金属成分を含む皮膜24を形成して、下地電極層23が皮膜24によって被覆された端子電極20を形成する。乾式製膜法としては、第1実施形態と同様の方法を採用することができる。したがって、めっき液等の侵入に伴うチップ素体1の腐食を防止することができる。また、この場合、製膜中に水素が発生しない乾式工法を選ぶことが好ましい。製膜工程で水素が発生すると、水素がチップ素体1におけるセラミック素体中に吸蔵され、IR低下等の電気的特性の劣化を引き起こす場合がある。このため、CVD法を用いる場合は製膜中に水素が発生しない原料を用いることが好ましい。
皮膜24の厚みは、好ましくは0.2〜20μm、より好ましくは1〜10μm、さらに好ましくは2〜6μmである。皮膜24の厚みが小さくなり過ぎると、ハンダぬれ性やハンダとの優れた密着性が損なわれる傾向にある。一方、皮膜24の厚みが大きくなり過ぎると、製造コストが上昇するとともに積層セラミックコンデンサ200が大型化する傾向にある。
上述の工程によって、チップ素体1と、該チップ素体1の端面11及び側面13,15の一部の上に設けられた端子電極20と、からなる積層セラミックコンデンサ200を得ることができる。この端子電極20は、第1の金属成分とガラス成分とを含む下地電極層23と、第2の金属成分を含む皮膜とが積層された構造を有しているため、チップ素体1との密着性、ハンダぬれ性及びハンダとの密着性に優れている。
端子電極20の厚みT1は、好ましくは0.7〜40μm、より好ましくは3〜20μm、さらに好ましくは5〜15μmである。これによって、積層セラミックコンデンサ200の大型化を回避しつつ、ハンダぬれ及びハンダとの密着性に一層優れた端子電極20とすることができる。
端子電極20は、1000℃以下の低温で焼成しても密着性に十分優れていることから、誘電体層7の性能を十分に維持することができる。すなわち、本実施形態の製造方法によれば、端子電極の形成に伴う誘電体層7の性能低下を十分に抑制し、信頼性に優れる積層セラミックコンデンサを製造することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。上記各実施形態では、電子部品としてセラミックコア、コイル部品及び積層セラミックコンデンサを挙げたが、本発明の製造方法は、上述の電子部品に限定されるものではない。本発明の製造方法は、例えば、セラミック焼結体の素体を含むバリスタ、サーミスタ(PTC,NTC)、インダクタ又はこれらの複合部品等の電子部品の製造方法にも適用可能である。これらの電子部品は単層であってもよく、上述の第2実施形態のように積層型の電子部品であってもよい。製造する電子部品に応じて、セラミック素体として磁性体や誘電体を適宜用いることができる。
本発明の製造方法において、表面処理工程は必ずしも行う必要はなく、また、制膜工程と表面処理工程とを同時に行ってもよい。また、セラミック素体と下地層の間、又は下地層と皮膜の間に他の材料からなる層が存在していてもよい。また、下地層や皮膜の製造を複数回繰り返して、複数の下地層や複数の皮膜が積層した積層構造を有する端子電極としてもよい。
実施例及び比較例を参照して本発明の内容をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
<端子電極の形成>
図1に示すようなNi−Cu−Zn系フェライトからなるドラム型のセラミック素体を準備した。また、これとは別に、市販のニッケル粉末(平均粒径:1μm)と、市販のガラス粉末(平均粒径:1μm、軟化温度:550℃)とを混合して、ガラス粉末に対するニッケル粉末の質量比が9.0である混合粉末を得た。これにバインダ(ポリビニルアルコール)及び溶剤を加えてペーストを調製した。
上述のセラミック素体の所定部分に、上述の通り調製したペーストを塗布し、大気中、600℃で焼成して、セラミック素体の表面上に厚みが5μmである下地層を形成した。
下地層が形成されていないセラミック素体の表面に、カプトンテープ製のマスキングを施し、セラミック素体の表面上に形成された下地層に、コールドスプレーによってスズ粒子を衝突させて、下地層の上に、平均膜厚5μmのスズ皮膜を形成した。コールドスプレーは、以下の条件で行った。
・キャリアガス:Heガス
・ガス圧力:0.5MPa
・スズ粒子の平均粒径:20μm
・スズ粒子の供給量:2g/分
・スズ粒子の噴出速度:400m/秒
・ワーク温度:室温(約20℃)
・スキャン速度(500mm/秒)
以上の工程によって、セラミック素体の上に、下地層と、該下地層を被覆するスズ皮膜とからなる端子電極を形成し、図1に示すようなフェライトコアを得た。同様の製造を繰り返し行って、端子電極が形成されたフェライトコアを20個作製した。
<評価>
(ハンダぬれ性の評価)
端子電極が形成されたフェライトコア20個を、鉛フリーハンダ(千住金属工業製、商品名:エコソルダーM705,組成:Sn−3.5Ag−0.5Cu)を用いて、電極を有するプリント基板上に実装して評価用サンプルを作製した。この評価用サンプルを用いて、ハンダぬれ性を目視により以下の基準で評価した。
A:ハンダぬれ性がよく、フェライトコアの端子電極とプリント基板の電極との間に滑らかなフィレットを形成することができた。
B:ハンダぬれ性が悪く、フェライトコアの端子電極とプリント基板の電極との間に滑らかなフィレットを形成することができなかった。
その結果、20個全てのサンプルの評価が「A」であり、実施例1のフェライトコアにおける端子電極は、ハンダぬれ性に優れることが確認された。
(端子電極の信頼性の評価)
上述のハンダぬれ性の評価を行った後、プリント基板上に実装したフェライトコアに横方向(プリント基板とフェライトコアの対向方向に垂直な方向)の力を加える横押試験を行って、破壊が生じた際の破壊箇所を以下の基準で評価した。
A:フェライトコア自体が破壊した。
B:ハンダと端子電極の間、又は、端子電極がセラミック素体から剥離した。
評価が「A」のフェライトコアは、ハンダと端子電極及びセラミック素体と端子電極との密着力が大きく、信頼性に優れている。一方、評価が「B」のフェライトコアは、ハンダと端子電極又はセラミック素体と端子電極との密着力が小さく、評価「A」のフェライトコアよりも信頼性が劣っている。評価の結果、20個全てのサンプルが評価「A」であり、実施例1のフェライトコアの端子電極は、信頼性に優れることが確認された。
[比較例1]
ガラス粉末を含まず且つニッケル粉末を含むペーストを用いて、実施例1と同様にしてセラミック素体上に下地層を形成したこと以外は、実施例1と同様にしてセラミック素体の表面上に厚みが5μmである下地層を形成した。そして、下地層が形成されていないセラミック素体の表面に、カプトンテープ製のマスキングを施した。その後、実施例1と同様にして、セラミック素体の表面上に形成された下地層に、コールドスプレーによって、スズ粒子を衝突させたところ、下地層がセラミック素体から剥離した。このため、セラミック素体上に端子電極を形成することができなかった。
[比較例2]
下地層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして端子電極を形成した。コールドスプレーによるフェライトコアへのスズ粒子の付着割合(コールドスプレーで供給したスズ粒子全量に対する割合)は、5質量%であり、十分な厚みを有する端子電極を形成することができなかった。また、コールドスプレーによって、セラミック素体の一部が100μm以上エッチングされていた。
[比較例3]
コールドスプレー法によってスズ皮膜を形成したことに代えて、湿式めっき(バレルめっき)法によって下地層の上にニッケルめっき皮膜及びスズめっき皮膜を順次形成し、セラミック素体の上に、下地層と、該下地層を被覆するめっき皮膜とからなる端子電極を形成した。めっき処理を施した下地層の表面の面積全体を基準として、めっき皮膜が形成された下地層の面積の割合は、10%以下であり、均一なめっき皮膜を形成することができなかった。これは、下地層のガラス浮きによって生じた下地層表面におけるガラスの影響であると考えられる。
[実施例2]
ニッケル粉末に代えて、市販のチタン粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてセラミック素体上に端子電極を形成してフェライトコアを得た。そして、実施例1と同様にして評価用サンプルを作製して評価を行った。その結果、ハンダぬれ性及び信頼性の評価は、ともに20個全てのサンプルが「A」であった。
[実施例3]
コールドスプレー法で用いる金属粒子として、スズ粒子に代えて、Sn−3.5Ag−0.5Cuの組成を有する合金粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、セラミック素体の上に、下地層と、該下地層を被覆する合金皮膜とからなる端子電極を形成し、フェライトコアを得た。そして、実施例1と同様にして評価を行った。その結果、ハンダぬれ性及び信頼性の評価は、ともに20個全てのサンプルが「A」であった。
[実施例4]
<端子電極の形成>
所定の寸法(縦1mm×横0.5mm×厚さ0.5mm)を有し、内部電極であるニッケル電極層とセラミック素体の層とが交互に積層されたチップ素体の両端部に、実施例1で用いたニッケル粉末とガラス粉末とを含有するペーストを塗布し、大気中、600℃で焼成して、厚みが5μmであるニッケルとガラスとを含有する下地電極層を形成した。
この下地電極層の上に、実施例1と同様にして、コールドスプレー法によって、厚み4μmのスズ皮膜を形成し、チップ素体の両端部に、下地電極層と該下地電極層を覆うスズ皮膜とからなる端子電極を形成し、積層型セラミックコンデンサを得た。なお、コールドスプレーは、マスキングをせずに行ったため、下地電極層が形成されていないチップ素体表面にもスズ粒子が衝突したが、チップ素体の表面にスズ粒子は付着しなかった。
<評価>
(ハンダぬれ性の評価)
積層型セラミックコンデンサ20個を、鉛フリーハンダ(千住金属工業製、商品名:エコソルダーM705,組成:Sn−3.5Ag−0.5Cu)を用いて、電極を有するプリント基板上に実装して評価用サンプルを作製した。実装後、ハンダぬれ性を目視によって以下の基準で評価した。
A:ハンダぬれ性がよく、積層型セラミックコンデンサの端子電極とプリント基板の電極との間に滑らかなフィレットを形成することができた。
B:ハンダぬれ性が悪く、積層型セラミックコンデンサの端子電極とプリント基板の電極との間に滑らかなフィレットを形成することができなかった。
その結果、20個全てのサンプルの評価が「A」であり、実施例4の積層型セラミックコンデンサの端子電極は、ハンダぬれ性に優れることが確認された。
(IR特性の評価)
同様の手順で、積層型セラミックコンデンサを1000個作製し、絶縁不良の発生率を評価した。具体的には、内部電極間の抵抗が1×10Ω以下のものを不良品と判定した。その結果、1000個の積層型セラミックコンデンサのうち、不良品は0個であった。
[比較例4]
実施例4と同様にして、チップ素体の両端部にニッケルとガラスとを含有する下地電極層を形成した。この下地電極層の表面を、ブラストして、下地電極層の表面に析出したガラスを除去し、湿式めっき(中性Snめっき)で、下地電極層上に、膜厚4μmのスズめっき膜を形成し、チップ素体の両端部に、下地電極層と該下地電極層を覆うスズめっき膜とからなる端子電極を形成して、積層型セラミックコンデンサを得た。
実施例4と同様にしてハンダぬれ性及びIR特性の評価を行った。その結果、ハンダぬれ性は、20個のサンプルの評価が全て「A」であったものの、IR特性の評価では、1000個の積層型セラミックコンデンサのうち、不良品が7個発生した。
比較例4は、ブラストを行ったため、下地電極の表面全体にスズめっき膜が形成され、良好なハンダぬれ性を有していた。しかしながら、ブラスト実施等の要因によって、下地電極層にクラック等が発生し、湿式めっき時に当該クラックよりめっき液が侵入して、絶縁不良が発生したものと考えられる。したがって、実施例4の積層型セラミックコンデンサの端子電極は、比較例4の端子電極よりも優れた信頼性を有することが確認された。
1…チップ素体、7…誘電体層、9,9a,9b…内部電極、10…セラミック素体、11,11a,11b…端面、12…巻芯部、13,15…側面、14…鍔部、16…周側面、18…端面、20…端子電極、22…下地層、23…下地電極層、24…皮膜、42…頂部、50…巻線、52…ハンダ、100…フェライトコア、150…コイル部品、200…積層セラミックコンデンサ。

Claims (6)

  1. 第1の金属成分とガラス成分とを含むペーストを、電子部品用のセラミック素体上に塗布する塗布工程と、
    前記セラミック素体上の前記ペーストを焼成して、表面にガラスが存在する下地電極層を形成する焼成工程と、
    前記下地電極層の表面をブラストして、ガラスによって被覆されるガラス被覆面積を該表面全体の10%以下にする表面処理工程と、
    ブラストした前記下地電極層の上に、乾式製膜法によって前記第1の金属成分とは異なる第2の金属成分を含む皮膜を形成して、前記下地電極層及び前記下地電極層を被覆する前記皮膜を有する端子電極を得る製膜工程と、を有し、
    前記乾式製膜法はコールドスプレー法又は溶射法であり、前記第2の金属成分はSn又はSn合金を含有する、端子電極の製造方法。
  2. 前記表面処理工程では、前記下地電極層の表面に存在するガラスをブラストして前記表面を粗化し、前記下地電極層の表面粗さをRaで0.3〜5μmにする、請求項に記載の端子電極の製造方法。
  3. 前記下地電極層と前記皮膜との界面よりも前記下地電極層と前記セラミック素体との界面の方が、前記下地電極層の表面のガラス被覆面積の割合が高い、請求項1又は2に記載の端子電極の製造方法。
  4. 前記乾式製膜法はコールドスプレー法である、請求項1〜のいずれか一項に記載の端子電極の製造方法。
  5. 前記第1の金属成分は、Ni,Ti,Ag及びCuの少なくとも一種を含む金属、又は当該金属を含む合金を含有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の端子電極の製造方法。
  6. 前記第1の金属成分はNiであり、前記第2の金属成分はSnである、請求項1〜のいずれか一項に記載の端子電極の製造方法。
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