JP5140155B2 - 動物細胞の凍結保存用担体、それを用いた凍結保存用バイオデバイス及び凍結保存方法 - Google Patents

動物細胞の凍結保存用担体、それを用いた凍結保存用バイオデバイス及び凍結保存方法 Download PDF

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Description

本発明は、動物細胞の凍結保存用担体、それを用いた凍結保存用バイオデバイス及び凍結保存方法に係り、更に詳細には、凍結保存操作中に動物細胞が受けるダメージを軽減することによって、凍結・解凍後の動物細胞の生存率向上、生存細胞密度向上及び増殖速度向上に寄与し得る動物細胞の凍結保存用担体、それを用いた凍結保存用バイオデバイス及び凍結保存方法に関する。
1980年代以降、動物細胞を利用した有用物質の生産技術に関する研究が行われており、該有用物質としては、例えば動物細胞由来タンパク質医薬品であるインターフェロンやインターロイキン等のサイトカイン類、エリスロポエチン、各種抗体などが知られている。
これらの有用物質を産生する細胞は、主に細胞培養の際にガラスやプラスチックなどの接着基質に接着しないと、生存、増殖ができない足場依存性を有する「接着細胞」であるため、その培養は、例えばTCフラスコなどのプラスチック培養容器の平らな底面に細胞を接着させた状態で行われる。
培養した該細胞は、継代歴が増えると突然変異などによる変化が起こる可能性が高くなるため凍結して保存されることが常であり、一般的には、培養時の接着基質からタンパク分解酵素を用いて剥離した細胞を保存液に懸濁したものを凍結保存する方法が用いられている。
細胞を接着基質に接着させると細胞が伸展してしまい、そのまま凍結すると細胞膜に大きなストレスがかかり細胞が死滅するが、当該方法を用いれば、剥離した細胞を球形に近い形状で維持することができるので、液相内で細胞を生存させたまま凍結保存することができるからである。
上述の凍結保存方法は懸濁法とよばれ、通常以下の操作手順により行われる。
1)細胞を接着して増殖させた培養容器内の培地をピペットで吸い上げて除去する。
2)上記培養容器内にトリプシンを加え、細胞を剥離する。
3)剥離した細胞をピペットで吸い上げて遠沈管に回収して遠心分離を行い、トリプシンを含む上澄み液を除去する。
4)得られた細胞を血清に懸濁し、該懸濁液を保存液に滴下して混合する。
5)細胞が懸濁した上記保存液をクライオチューブに分注して凍結する。
しかし上記2)の細胞を剥離する工程では、タンパク分解酵素であるトリプシンが細胞膜のタンパクを分解するために細胞がダメージを受け、その後の工程3)においてもピペッティングや遠心分離によって、細胞に負荷がかかるため、懸濁法では解凍後の動物細胞の生存率が低いこと、再培養の際の初期増殖速度が遅いことなどが問題となっている。
更に凍結保存に係る一連の操作は、上述のように培養容器から剥がした細胞を保存液に懸濁させてから凍結する必要があるために煩雑であり、また血清を高濃度に含む培地を用いるためにコスト高である。
上述のトリプシン処理による細胞へのダメージを避けるために、不織布担体に細胞を担持させたまま培養と凍結保存とを続けて行うことによってトリプシ処理の工程を回避する凍結保存方法が提案されている(特許文献1参照。)。
特開平6−209767号公報
しかしながら、特許文献1の方法で担体として用いられる不織布は、一般的に目開きが小さく、繊維がランダムに絡み合っているために、担持した培養細胞は目の中に潜り込むように又は表面を覆うようにして伸展すると考えられる。この伸展した細胞は凍結過程で過剰なストレスがかかり、生存できなってしまう。
従って、この方法では、凍結解凍後の細胞の大幅な生存率向上は期待できない。また潜り込んだ細胞を再培養のために不織布から剥がす場合、細胞に過度の物理的ダメージを与え得る。更に、細胞の伸展により1つの細胞が不織布担体に占める面積が大きくなるために高密度の培養や保存には適さず効率的ではない。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、細胞の凍結保存操作中に細胞が受けるダメージを軽減することによって、凍結・解凍後の動物細胞の生存率や生存細胞密度を向上させることができ、また高密度に細胞を固定することのできる動物細胞の凍結保存用担体、凍結保存用バイオデバイス及び凍結保存方法を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、ほぼ同一形状の開口部が一定のピッチで複数個穿設されたシートを備えた動物細胞凍結保存用担体であって、該開口部を形成する内壁の少なくとも一部に曲面部を有し、次の条件(1)及び(2):
(1)粒径が5μm〜50μmであるほぼ球形の動物細胞を担持して凍結保存し、解凍したときの該動物細胞の生存率が、懸濁法により凍結保存し、解凍したときの動物細胞の生存率以上である
(2)粒径が5μm〜50μmであるほぼ球形の動物細胞を担持して凍結保存し、解凍したときの該動物細胞の生存細胞密度が、懸濁法により凍結保存し、解凍したときの動物細胞の生存細胞密度以上である
の少なくとも一方を満足する動物細胞凍結保存用担体であって、該開口部の最大長が、10μm〜120μmであり、該曲面部の曲率半径が、0.5μm〜40μmであり、該シートが、網状体であり、該網状体が繊維から成り、該繊維が長手方向とほぼ垂直な断面に曲線部を有しており、該繊維の繊維径が1μm〜80μmである動物細胞凍結保存用担体とすることで、凍結保存後に解凍した細胞の生存率や生存細胞密度が向上し、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の動物細胞凍結保存用担体は、ほぼ同一形状の開口部が一定のピッチで複数個穿設されたシートを備えた動物細胞凍結保存用担体であって、
上記開口部を形成する内壁の少なくとも一部に曲面部を有し、
次の条件(1)及び(2):
(1)粒径が5μm〜50μmであるほぼ球形の動物細胞を担持して凍結保存し、解凍したときの該動物細胞の生存率が、懸濁法により凍結保存し、解凍したときの動物細胞の生存率以上である
(2)粒径が5μm〜50μmであるほぼ球形の動物細胞を担持して凍結保存し、解凍したときの該動物細胞の生存細胞密度が、懸濁法により凍結保存し、解凍したときの動物細胞の生存細胞密度以上である
の少なくとも一方を満足する動物細胞凍結保存用担体であって、
上記開口部の最大長が、10μm〜120μmであり、
上記曲面部の曲率半径が、0.5μm〜40μmであり、
上記シートが、網状体であり、
上記網状体が繊維から成り、該繊維が長手方向とほぼ垂直な断面に曲線部を有しており、
上記繊維の繊維径が1μm〜80μmである
ことを特徴とする。
本発明の動物細胞凍結保存用バイオデバイスは、上述の如き動物細胞凍結保存用担体と、上記曲面部に接着した粒径が5μm〜50μmであるほぼ球形の動物細胞とを備えることを特徴とする。
本発明の動物細胞凍結保存方法は、上述の如き動物細胞凍結保存用バイオデバイスを凍結保存する工程を含むことを特徴とする。
更に、本発明の動物細胞凍結保存方法の好適形態は、粒径が5μm〜50μmであるほぼ球形の動物細胞を懸濁した液体培地と、上述の如き動物細胞凍結保存用担体とを培養することで上記動物細胞凍結保存用バイオデバイスを作製する工程を含むことを特徴とする。
本発明によれば、ほぼ同一形状の開口部が一定のピッチで複数個穿設されたシートを備えた動物細胞凍結保存用担体であって、該開口部を形成する内壁の少なくとも一部に曲面部を有し、次の条件(1)及び(2):
(1)粒径が5μm〜50μmであるほぼ球形の動物細胞を担持して凍結保存し、解凍したときの該動物細胞の生存率が、懸濁法により凍結保存し、解凍したときの動物細胞の生存率以上である
(2)粒径が5μm〜50μmであるほぼ球形の動物細胞を担持して凍結保存し、解凍したときの該動物細胞の生存細胞密度が、懸濁法により凍結保存し、解凍したときの動物細胞の生存細胞密度以上である
の少なくとも一方を満足する動物細胞凍結保存用担体であって、該開口部の最大長が、10μm〜120μmであり、該曲面部の曲率半径が、0.5μm〜40μmであり、該シートが、網状体であり、該網状体が繊維から成り、該繊維が長手方向とほぼ垂直な断面に曲線部を有しており、該繊維の繊維径が1μm〜80μmである動物細胞凍結保存用担体を用いることで、動物細胞の凍結保存操作中に細胞が受けるダメージを軽減し、凍結・解凍後の動物細胞の生存率や生存細胞密度を向上させることのできる動物細胞の凍結保存用担体、凍結保存用バイオデバイス及び凍結保存方法を提供することができる。
また、本発明の凍結保存用担体は、動物細胞をほぼ球形のまま担持することができるので、高密度での動物細胞の凍結保存が可能である。
更に、本発明の凍結保存方法では、培養容器から剥がした細胞を保存液に懸濁させてから凍結する必要がないため、作業の煩雑さが解消された。また上述のように高密度で凍結保存することで保存液量が低減できるため、コスト的にも有利である。
本発明の凍結保存用バイオデバイスの一実施形態を示す顕微鏡写真である。 本発明の凍結保存方法の一実施形態を示す模式図である。 実施例1における細胞固定手順を示す模式図である。 動物細胞凍結保存用バイオデバイスを入れたガラスボトムディッシュの写真である。 実施例2におけるチャイニーズハムスター卵巣細胞を用いた凍結保存用バイオデバイスの顕微鏡写真である。 本発明の凍結保存用バイオデバイスを凍結する手順の一実施形態を示す写真である。 コラーゲンコーティング担体に接着したDG44細胞の顕微鏡写真である。 コラーゲンコーティング担体に接着したDG44細胞の拡大写真である。 コラーゲンコーティングを施していない担体に接着したDG44細胞の顕微鏡写真である。
以下、本発明の動物細胞の凍結保存用担体、凍結保存用バイオデバイス、凍結保存方法につき詳細に説明する。なお、本明細書において、「%」は特記しない限り質量百分率を表すものとする。また、「ほぼ」とは、測定誤差などを含めた範囲を意味しており、当該範囲内では本発明の作用効果が奏される。
(1)凍結保存用担体
上述の如く、本発明の動物細胞凍結保存用担体は、ほぼ同一形状の開口部が一定のピッチで複数個穿設されたシートを備えた動物細胞凍結保存用担体であって、上記開口部を形成する内壁の少なくとも一部に曲面部を有し、動物細胞を担持して凍結保存し、解凍したときの該動物細胞の生存率、生存細胞密度のいずれか一方又は双方が、懸濁法により凍結保存し、解凍したときの動物細胞と同等以上である。
本発明の担体の形状は、特に限定はされないが、例えば、平面シート状や、編目の凹凸を有するメッシュ状のように一枚のシートをそのまま用いた平面的な形状であってもよいし、一枚又は複数枚のシートで構成された立体的形状であってもよい。立体的形状の場合は、シート面同士は密着せずに、いくらかの間隙が設けられていることが好ましく、例えば錐形状や柱形状の中空体、更には積層形状等とすることができる。
また使用されるシートの形状としては、以下に説明する開口部を有するシート状のものであれば十分であり、一体成形されたいわゆる孔開きフィルムのみならず、繊維から成る編物、織物及び網状体などであってもよい。なかでも開口部について大きさ等のコントロールが容易であることから網状体が好ましい。当該シートの厚みは、好ましくは10μm〜160μmであり、より好ましくは20μm〜100μmである。
上記シートに設けられた複数個の開口部は、上述のように、ほぼ同一の形状であり、一定のピッチで穿設されている。これらの開口部は、動物細胞を担持する部分でもあり、担持された動物細胞は規則的(周期的)に配列される。また当該シートは、不織布のようにランダムに繊維が結合したものとは異なり、三次元的にも乱れが少ないので、担持された動物細胞が隙間に入り込んだり、表面を覆ったりして伸展することを抑制できる。即ち、このような構造は、本発明の動物細胞凍結保存用担体において、空間に無駄を生じさせることなく高密度に動物細胞を担持し、且つその細胞が球形の形状を保つことに寄与するものである。
上記開口部の形状は、特に限定されるものではなく、その断面形状は円形、楕円形、三角形、四角形以上の多角形の他、星形などであってもよい。例えば、シートが繊維から成る網状体の場合は、正方形となる場合が多い。
また開口部の大きさは、保持する動物細胞の大きさに応じて適宜選択することができる。動物細胞は分裂と成長を繰り返す過程で大きさが変動するので、成長後の粒径は分裂直後の粒径に比べ、通常1.5倍程度にまで増大するが、開口部の最大長は、球形をなす動物細胞の分裂直後の粒径〜成長後の粒径の10倍程度の大きさであることが好ましい。
ここで「開口部の最大長」とは、当該開口部の輪郭内に引ける線分のうち最長のものの長さを意味するものとする。
開口部の最大長が、動物細胞の分裂直後の粒径未満の場合には、開口部内に動物細胞が固定されにくく、成長後粒径の10倍を超えると、開口部を形成する内壁同士が離れすぎるため、細胞が開口部を閉塞するように接着することが困難となり、開口中心部が空洞となり、結果として低密度になってしまうことがある。
本発明の動物細胞凍結保存用担体においては、上記開口部の最大長が10μm〜120μmである。
開口部の最大長が10μm未満では、動物細胞が開口部に進入することができず、表面を覆うように伸展して接着することがあり得る。
一方、開口部の最大長が120μmを超えると、動物細胞を付着させても、開口部を形成する内壁同士が離れすぎているため、該細胞が開口部を閉塞するように固定化されない場合があり、その結果、孔が残存する確率が上がって高密度とならない可能性がある。
この開口部を形成する内壁は、少なくとも一部に曲面部を有していることが必要である。かかる曲面部は好ましくは凸曲面であり、通常、開口部の中央方向に突出して形成されている。また該曲面部の曲率半径は、0.5μm〜40μmである。曲率半径が0.5μm未満であると細胞が接着できない場合があり、40μmを超えると細胞が大きく伸展して接着する場合がある。
本発明者の観察によれば、ほとんどの動物細胞はこの曲面部に付着して球形を保持する。曲面部に付着した細胞は、担体との接着力が比較的弱いために、強固に担体に接着した細胞とは異なり伸展することがないため球状の形態を維持できるからである。
一方、一般的に、平面状の部位に付着した動物細胞は球形を保持することができずに伸展してしまうことが多い。
本発明の動物細胞凍結保存用担体では、このようにして球形を保持した動物細胞が集塊を形成する。この集塊は非常に高い密度で細胞を含む。またこの集塊は生体組織と同様の構造を形成しているので細胞が凍結保存の際に受けるストレスが軽減される。更に、集塊が形成された該担体は、このまま凍結保存に供することができるのでトリプシン等のタンパク分解酵素の使用を回避でき、細胞の受けるダメージを小さくすることができる。
従って、本発明の担体を用いると解凍後の細胞生存率を高く維持することができる。また同じ理由により、凍結保存後の再培養の際、解凍後の初期増殖速度が従来に比べて早くなる。
上述のように、本発明の動物細胞凍結保存用担体に動物細胞を担持して凍結保存し、解凍したときの該動物細胞の生存率、生存細胞密度のいずれか一方又は双方は、従来法である懸濁法により凍結保存し、解凍したときの動物細胞と同等以上である。
ここで動物細胞とは、動物由来の細胞であれは、どのような細胞であってもよく、例えば繊維芽細胞、骨芽細胞、肝細胞等を挙げることができる。
また生存率とは、細胞を凍結保存し、解凍したときの全細胞数に対する生存細胞数の割合である。
具体的には、本発明の動物細胞凍結保存用担体を用いた場合の生存率は、動物細胞を該凍結保存用担体に担持し、該動物細胞にとって最適の条件下で培養した後、培養後の動物細胞を担持した凍結保存用担体を保存液に浸漬して−80℃で凍結保存し、所定日数経過後に培養温度で解凍したときの全細胞数に対する生存細胞数の割合をいう。
一方、懸濁法における生存率は、動物細胞をTCフラスコで最適の条件下にて培養した後にトリプシンで剥離し、該動物細胞を保存液に懸濁して−80℃で凍結保存し、所定日数経過後に培養温度で解凍したときの全細胞数に対する生存細胞数の割合をいう。
また生存細胞密度とは、細胞を凍結保存し、解凍したときのサンプル体積あたりの生存細胞数である。サンプル体積は、懸濁法では1mlが一般的であり、本発明に係る凍結保存法においては、5mm×5mmのナイロンネットを担体として用いた場合は2μl程度となる。
なお本発明の動物細胞凍結保存用担体に担持し、凍結・解凍したときの生存率、生存細胞密度は、懸濁法による場合と同等であってもよい。この意味において本発明の効果である「凍結・解凍後の動物細胞の生存率や生存細胞密度の向上」とは、従来法である懸濁法による凍結・解凍後の動物細胞の生存率、生存細胞密度と同等であることも含み得る。生存率や生存細胞密度が同等であったとしても、操作性の向上等を加味すると実質的に効果を有するからである。
次に、本発明の動物細胞凍結保存用担体に用いられる材料等について説明する。
上述のシートの材料は、例えば、樹脂、セラミックス、金属及びガラス等の有機材料であっても、無機材料であってもよく、骨格となる材料に上記材料をコーティングなどの表面処理加工により施したものであってもよい。
シートの形態が網状体である場合など、繊維が該シートを形成する場合においても、その繊維の材質は特に限定されるものではなく、種々の有機繊維及び無機繊維を用いることができる。
例えば有機繊維としては、各種の天然及び合成繊維、例えば、絹や綿などの天然繊維、ナイロン(登録商標)、アクリル及びポリエステルなどの合成繊維を挙げることができ、一方、無機繊維としては、各種の金属繊維やガラス繊維、セラミックス繊維を挙げることができる。
なお、該繊維はモノフィラメントであるかマルチフィラメントであるかは不問であり、更には、狭義の繊維のみならず、撚糸などでもよい。
その他、有機繊維としては、繊維表面が平滑な合成繊維及び該繊維に表面修飾を施したものを好ましく用いることができ、用途によっては、生分解性の繊維を用いることも有効である。
上記繊維は、長手方向とほぼ垂直な断面に曲線部を有することが好ましく、典型的には、繊維断面が円形や楕円形のものを挙げることができる。この場合、繊維断面形状の少なくとも一部に曲線部があれば十分であるので、三角形や多角形の角にR加工や面取りを施したような断面形状の繊維であってもよい。
断面に曲線部を有する繊維を用いてシートを形成すると、この曲線部によって作られた曲面部をシートの開口部の内壁に構成することが容易となる。但し、それ以外の方法、例えば繊維の織り方、編み方などによっても開口部の内壁に曲面部を構成することは可能である。
また、上記繊維の繊維径は、培養すべき動物細胞の種類や大きさ(粒径)に応じて適宜変更することができるが、代表的には、粒径5〜50μmの一般的な動物細胞に対しては、繊維径が80μm以下の繊維を用いることが好ましい。繊維径80μm以下の繊維で形成したシートに付着した動物細胞は、伸展せずに球形を維持する確率が高く、一方、繊維径が80μmを超える繊維で形成したシートに付着した動物細胞は、付着後に伸展する傾向にあるからである。
(2)凍結保存用バイオデバイス
図1は、本発明の動物細胞凍結保存用バイオデバイスの一実施形態を示す顕微鏡写真である。
同図において、本発明の凍結保存用バイオデバイスは、本発明の動物細胞凍結保存用担体10と、その開口部の曲面部に接着したほぼ球形の動物細胞20とを備える。動物細胞20の粒径は、5μm〜50μm、好ましくは10〜30μmとすることができ、また動物細胞凍結保存用担体10の開口部の最大長は、動物細胞20の(分裂直後粒径)〜(成長後粒径×10)とすることができる。
また動物細胞20は、本発明の動物細胞凍結保存用担体10に担持して培養された結果、高密度に増殖していることが好ましく、初期状態の球形を保持したまま成長している。
かかる動物細胞としては、特に限定されるものではないが、特に接着性の動物細胞、例えば動物の繊維芽細胞や神経細胞等を挙げることができる。
本発明の凍結保存用バイオデバイスの製造方法の一実施形態では、動物細胞を10〜10セル/mL程度の濃度で培地に懸濁させた液を、動物細胞凍結保存用担体10と接触させ、振盪培養しながら動物細胞を増殖させる。当該製造方法により、本発明の凍結保存用バイオデバイスが容易に得られる。
このときに用いる培地としては、細胞をカルチャーボトルで培養するときに用いる標準的な培地でよい。
本発明の好適形態によれば、繊維径80μm以下の繊維から成り、且つ開口部の平面形状が一辺10μm〜80μmの正方形状である網状体(動物細胞凍結保存用担体)に動物細胞を付着させると、該細胞が開口部を塞ぐように増殖し、凍結保存用バイオデバイスが形成される。
また、この凍結保存用バイオデバイスの厚み方向に積層される細胞数は、たかだか10個程度なので、これらの接着した細胞に対しては、酸素及び栄養源を迅速に供給することが容易であり、培養効率を向上することができる。
なお、かかる開口部の閉塞に応じて、本来ほぼ球状をなす動物細胞は、細胞同士が接着して固定化されているシート領域では、立方体状や直方体状をなしていることがある。
更に、本発明の凍結保存用バイオデバイスにおいて、球形をなす動物細胞がその開口部を閉塞するように固定化された場合には、この固定化細胞を貫通するような対流は起きなくなる。従って、この固定化細胞ないしは当該凍結保存用バイオデバイス自体が隔壁として機能し得るので、このシート状デバイスの表面側(一方の面側)と裏面側(他方の面側)とに別種の2液を供給しても、両者が混合されるのを抑制ないし回避することができ、固定化細胞に2種の培地や保存液などを同時に供給することが可能となる。
(3)凍結保存用バイオデバイス
図2は、本発明の凍結保存方法の一実施形態を示す模式図である。
同図においては、本実施形態の工程のうち、動物細胞凍結保存用バイオデバイスを作製する工程(A)、動物細胞凍結保存用バイオデバイスを、保存液に浸漬して凍結保存する工程(B−1)及び動物細胞凍結保存用バイオデバイスを、保存液を使用しないで凍結保存する工程(B−2)を示す。即ち、工程(A)にて作製された動物細胞凍結保存用バイオデバイスは、例えば工程(B−1)や工程(B−2)にて凍結保存することができる。
同図において、動物細胞凍結保存用バイオデバイス30は、好ましくは、動物細胞を懸濁した液体培地40を動物細胞凍結保存用担体10上に滴下し、37℃、5%COの条件下で振盪培養することで作製される。
得られた動物細胞凍結保存用バイオデバイス30は、ピンセットで移動させることができるほど取扱いが容易であり、そのまま工程(B−1)の保存液を入れた容器内又は工程(B−2)の空の容器内に移される。
上記工程(B−1)においては、動物細胞凍結保存用バイオデバイス30が浸る量の保存液が容器内にあれば十分であるため使用する保存液を削減することができる。具体的には、従来法が既存の容器1本に対して1mlの保存液が必要なのに対し、本実施形態においては、0.1mlの保存液量で十分である。この量は、新たに専用の容器を設計することで、さらに半分の量とすることができる。
また上記工程(B−2)においては、培養時に使用した培養液を細胞の周囲に残存させたまま凍結保存することによって、改めて保存液を用いることなく凍結保存することができる。
したがって、工程(B−1)及び工程(B−2)の何れの方法ともコスト的に有利であり、特に高価な血清を含む保存液等を用いる系において、その必要量を低減できることによる効果は大きい。
凍結保存された動物細胞は、再培養に供される前に解凍されるが、上述のように凍結の際に用いられる保存液はごく少量であるか、使用されないので、解凍に要する時間が短く、ひとつの実施形態においては、従来法と比較して6倍以上の解凍速度であった。
一般的に、解凍時間が短い方が、細胞にかかるストレスが少なく、解凍後の細胞生存率が高くなる傾向にあるため、解凍時間の短縮もまた、解凍後の動物細胞の生存率向上や増殖速度の増大に寄与する。
再培養に際しては、保存液を解凍後、動物細胞凍結保存用バイオデバイスをピンセットで持ち、培地に浸しながら軽く振動を与えて動物細胞を担体から剥離させて回収する。これは、上述のように、担体の曲面部に動物細胞が比較的弱く接着していることにより実現できるものである。
また他の実施形態においては、保存液と共に解凍した動物細胞凍結保存用バイオデバイスをそのまま再培養に供することもできる。
一方、解凍後の細胞を回収するための従来の方法は、細胞が懸濁している保存液を解凍後ピペットで回収し、培地と混合し、遠心分離によって細胞を分離、濃縮し、再度培地に懸濁する一連の操作が必要であるため、非常に煩雑であるばかりか、ピペッティングにより細胞にダメージを与える危険性が高い。
以下、本発明を若干の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
1.動物細胞凍結保存用バイオデバイスの作製
本発明の動物細胞凍結保存用担体として、ナイロン製メッシュ(繊維径35μm、開口部60μm)を用いた。動物細胞としてマウス繊維芽細胞3T3L1を用いた。培地は、血清入り培地[Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM)、仔ウシ血清(FBS)10%、抗生物質1%]を用いた。
図3に示すように、上記細胞を懸濁した培地(10セル/ml)を5mm×5mmの動物細胞凍結保存用担体10a上に滴下し、37℃、5%COとしたインキュベータ内で3日間、振盪培養した。培養後、固定された細胞数を測定し、細胞密度とした。
2.凍結保存
図4に示すように、培養細胞が動物細胞凍結保存用担体に固定された動物細胞凍結保存用バイオデバイス30aをガラスボトムディッシュ60にピンセットで移した。このガラスボトムディッシュの底面には直径10mm、深さ0.5mm程度のくぼみがあり、動物細胞凍結保存用バイオデバイス30aを入れて0.1mlの保存液[ウシ血清75%、ジメチルスルホキシド(DMSO)10%、DMEM10%、グルコース30g/L]を滴下した。次いで、このガラスボトムディッシュを密封し、−80℃のフリーザで凍結保存した。
3.解凍
上記凍結保存から3日後、ガラスボトムディッシュの底面を37℃のお湯に浸して解凍し、解凍に要する時間を測定した。その後、解凍した細胞の生存率を測定した。生存率は、解凍した細胞に生死判別試薬(Molecular Probes,inc.:LIVE/DEAD Viabillity/Cytotoxicity Kit for Animal Cells)を添加し、顕微鏡で生細胞数と死細胞数を計測して算出した。
(比較例1−1)
TCフラスコで培養した3T3L1細胞を、従来、動物細胞を凍結保存するときに一般に用いられている懸濁法で凍結保存した。具体的な作業は以下の通りである。マウス繊維芽細胞3T3L1をTCフラスコで培養後、TCフラスコの底面に接着している細胞をトリプシンで剥離させた。剥離させた液から遠心分離によってトリプシンを除去し、細胞を1mlの保存液中に懸濁した。次いで、該懸濁液を−80℃のディープフリーザーで凍結保存し、3日後に解凍した。その後、実施例1と同様に細胞密度、解凍時間、生存率を測定した。
(比較例1−2)
TCフラスコで培養した3T3L1細胞を、TCフラスコの底面に接着、伸展したまま凍結保存した。具体的な作業は以下の通りである。マウス繊維芽細胞3T3L1をTCフラスコで培養した。細胞はTCフラスコの底面に接着して伸展した。TCフラスコ内の培地を吸い取り、保存液を添加して凍結保存した。3日後に解凍した。実施例1と同様に生存率を測定した。
(比較例1−3)
3T3L1細胞を凍結保存用担体に固定して培養した後、懸濁法で凍結保存した。具体的な作業は以下の通りである。マウス繊維芽細胞3T3L1をメッシュ形状担体に固定し、数日間培養した。細胞が担体の全体に拡がって4×10個/cmの密度で接着したところで、酵素を用いて担体から細胞を剥がし、保存液に懸濁させて、凍結保存した。3日後に解凍した。実施例1と同様に生存率を測定した。
測定結果を表1に示す。なお生存細胞密度は、凍結細胞密度に生存率を乗じて算出した。
このように実施例1では、比較例1−1の約300倍の密度で細胞を凍結保存することができ、また解凍時間は比較例1の6分の1となった。生存率については、比較例(従来法)の81%に対し88%となり、細胞へのストレス低減効果が見られた。更に、生存細胞密度は、比較例の320倍になった。
また、比較例1−2の伸展した細胞の生存率は0.2%となり、実施例1の細胞の生存率と比較して著しく低い。
更に、比較例1−3の伸展していない細胞の生存率は88%となったが、生存細胞密度は実施例1の300分の1である。
(実施例2)
1.チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)を用いた凍結保存用バイオデバイスの作製
CHO細胞をTCフラスコで培養後、酵素(GIBCO社製TrypLE Express)で剥離した。遠心分離によって酵素を除去し、再び培地に懸濁した。培地は血清入り培地(DMEM、FBS10%、抗生物質1%、ヒスチジン・チロシン液2%)を用いた。実施例1と同様に図3に示す方法でナイロンメッシュにCHO細胞を固定した。
作製した凍結保存用バイオデバイスの顕微鏡写真を図5に示す。実施例1の3T3L1細胞と同様にCHO細胞は伸展することなく、球形のまま担体に高密度に接着した。
2.凍結保存
図6に示すとおり、凍結保存用バイオデバイス30bをガラスボトムディッシュ60に載せ(同図(a)参照。)、100μLの保存液を滴下した(同図(b)参照。)。保存液には無血清保存液(セルバンカー無血清タイプ、十慈フィールド社製BLC−2)を用いた。プログラムフリーザーを用いて1℃/minの速度に制御して−50℃まで凍結した(同図(c)参照。)。その後、−80℃のディープフリーザーに移し、3日間保存した。
3.解凍
ディッシュをディープフリーザーから取り出し、ディッシュの底面を指で暖めることによって解凍した。5秒程度で解凍が完了した。
4.生存率測定
担体に固定された細胞を酵素(GIBCO社製TrypLE Express)で剥離し、生存率を測定した。
5.増殖速度
担体に固定された細胞を酵素(GIBCO社製TrypLE Express)で剥離し、培地に懸濁して25cmTCフラスコに播種した。所定時間経過後のフラスコ底面に接着した細胞数を目視で計数した。以下の式(1)から倍加時間(DT、細胞数が2倍に増殖するまでにかかる時間)を求めた。ここで、t、tは培養時間、Nは時間tの時の細胞数、Nは時間tの時の細胞数を示す。播種からコンフルエントまでのDTの最小値を、その代の倍加時間とした。
DT=(t−t)log2/(logN−logN)…(1)
(比較例2−1)
TCフラスコで培養したCHO細胞を、従来、動物細胞を凍結保存するときに一般に用いられている懸濁法で凍結保存した。具体的な作業は以下の通りである。CHO細胞をTCフラスコで培養後、酵素(GIBCO社製TrypLE Express)で剥離した。遠心分離によって酵素を除去し、無血清保存液(セルバンカー無血清タイプ、十慈フィールド社製BLC−2)に懸濁した。プログラムフリーザーを用いて1℃/minの速度に制御して−50℃まで凍結した。その後、−80℃のディープフリーザーに移し、3日間保存した。実施例2と同様に生存率及び増殖速度を測定した。
(比較例2−2)
TCフラスコで培養したCHO細胞を、TCフラスコの底面に接着、伸展したまま凍結保存した。具体的な作業は以下の通りである。CHO細胞をTCフラスコで培養した。細胞はTCフラスコの底面に接着して伸展した。TCフラスコ内の培地を吸い取り、保存液を添加して凍結保存した。3日後に解凍した。実施例2と同様に生存率を測定した。
測定結果を表2に示す。なお生存細胞密度は、凍結細胞密度に生存率を乗じて算出した。
実施例2の生存率は比較例2−1と同様に90%であった。凍結、解凍操作後の増殖速度も比較例2と同様であり、播種後の倍加時間は30時間であった。CHO細胞を継代培養したときの倍加時間は、通常18時間であるが、解凍操作直後はダメージを受けているので増殖速度が低くなることが知られている。
また、実施例2では、比較例2−1の約300倍の密度で細胞を凍結保存することができる。
更に、比較例2−2の伸展した細胞の生存率は0.4%となり、実施例2の細胞の生存率と比較して著しく低い。
本実験から、CHO細胞が凍結によって受けるダメージは従来法と遜色ないレベルであり、CHO細胞を凍結保存する際にも本発明が有効であることがわかった。
(実施例3)
1.担体のコラーゲンコーティング
コラーゲン溶液(新田ゼラチン社製、Cellmatrix Type I−C、ブタ皮由来のペプシン可溶化Type−Iコラーゲン)を10−3M−HClで希釈した液に担体を浸漬し、すぐに取り出して12時間風乾した後、培地で2回洗浄した。
2.浮遊性細胞(DG44細胞)を用いた凍結保存用バイオデバイスの作製
DG44細胞はCHO細胞を浮遊性に改良し、さらに無血清培養できるように改良した細胞である。DG44細胞(GIBCO社製)をスピナーフラスコで浮遊培養した。培地は無血清培地(CD DG44培地、GIBCO社製)を用いた。DG44細胞が浮遊している培地を遠心分離によって濃縮し、コラーゲンコーティングを施したナイロンメッシュに実施例1と同様に図3に示す方法で固定した。
3.凍結保存及び解凍
実施例2と同じ方法で凍結保存及び解凍した。保存液には無血清保存液(CDDG44培地、7.5%DMSO)を用いた。
4.生存率測定
解凍したバイオデバイスに培地を添加し、軽く撹拌した後、遠心分離で細胞を剥離して生存率と生存細胞密度を測定した。
(比較例3)
従来、動物細胞を凍結保存するときに一般に用いられている懸濁法でDG44細胞を凍結保存した。具体的な作業は以下の通りである。DG44細胞をスピナーフラスコで浮遊培養後、遠心分離によって培地を除去し、無血清保存液(CD DG44培地、7.5%DMSO)に懸濁した。プログラムフリーザーを用いて1℃/minの速度に制御して−50℃まで凍結した。その後、−80℃のディープフリーザーに移し、3日間保存した。実施例3と同様に生存率と生存細胞密度を測定した。
実施例3で作製した凍結保存用バイオデバイスの顕微鏡写真及びその拡大写真を図7及び図8に示す。コラーゲンコーティングしていないナイロンメッシュを用いて、実施例3と同様な方法で作製したDG44細胞の凍結保存用バイオデバイスの顕微鏡写真を図9に示す。
実施例3のバイオデバイスでは実施例1及び実施例2の各細胞と同様DG44細胞は伸展することなく、球形のまま担体に接着し、メッシュの孔を埋めていることがわかる。
なお、コラーゲンコーティングしていないナイロンメッシュを用いて、実施例3と同様な方法で作製したDG44細胞の凍結保存用バイオデバイスではDG44細胞はほとんど接着しなかった。
測定結果を表3に示す。なお生存細胞密度は、凍結細胞密度に生存率を乗じて算出した。
実施例3の生存率は比較例3と同様に80%であった。コーティングなどの適切な表面修飾を担体に施すことによって、本発明は様々な細胞に適用できることがわかった。
10、10a 動物細胞凍結保存用担体
20 動物細胞
30、30a、30b 動物細胞凍結保存用バイオデバイス
40 液体培地
50 保存液
60 ガラスボトムディッシュ

Claims (4)

  1. ほぼ同一形状の開口部が一定のピッチで複数個穿設されたシートを備えた動物細胞凍結保存用担体であって、
    上記開口部を形成する内壁の少なくとも一部に曲面部を有し、
    次の条件(1)及び(2):
    (1)粒径が5μm〜50μmであるほぼ球形の動物細胞を担持して凍結保存し、解凍したときの該動物細胞の生存率が、懸濁法により凍結保存し、解凍したときの動物細胞の生存率以上である
    (2)粒径が5μm〜50μmであるほぼ球形の動物細胞を担持して凍結保存し、解凍したときの該動物細胞の生存細胞密度が、懸濁法により凍結保存し、解凍したときの動物細胞の生存細胞密度以上である
    の少なくとも一方を満足する動物細胞凍結保存用担体であって、
    上記開口部の最大長が、10μm〜120μmであり、
    上記曲面部の曲率半径が、0.5μm〜40μmであり、
    上記シートが、網状体であり、
    上記網状体が繊維から成り、該繊維が長手方向とほぼ垂直な断面に曲線部を有しており、
    上記繊維の繊維径が1μm〜80μmである
    ことを特徴とする動物細胞凍結保存用担体。
  2. 請求項1に記載の動物細胞凍結保存用担体と、上記曲面部に接着した粒径が5μm〜50μmであるほぼ球形の動物細胞とを備えることを特徴とする動物細胞凍結保存用バイオデバイス。
  3. 請求項2に記載の動物細胞凍結保存用バイオデバイスを凍結保存する工程を含むことを特徴とする動物細胞の凍結保存方法。
  4. 更に、粒径が5μm〜50μmであるほぼ球形の動物細胞を懸濁した液体培地と、請求項1に記載の動物細胞凍結保存用担体とを培養することで上記動物細胞凍結保存用バイオデバイスを作製する工程を含むことを特徴とする請求項3に記載の動物細胞の凍結保存方法。
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