以下、従来技術及び本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
<従来技術>
複数の印字素子を備えた印字ヘッドを用いる装置の一例として、従来から、複数のインクの吐出口を備えた印字ヘッドを用いるインクジェット印字装置が知られている。インクジェット印字装置では、インクの吐出量や吐出方向等のバラツキに起因して、インクで形成されるドットの大きさや位置がばらついて、印刷された画像に濃度ムラが生じることがある。特に、インクジェットヘッドを複数の印字媒体の配列方向とは異なる方向(例えば、印字媒体と直交する方向)に走査させて印字するシリアル型の印字装置では、上述したバラツキに起因した濃度ムラは、筋状のムラとなって印刷された画像中に現れて目立ってしまう。このため、印刷画像の品位を低下させていた。
また、係る濃度ムラを補正するため、インクジェット印字方式による場合には、2値化処理等のハーフトーン処理を施した後の画像データ(ドットパターン)の1ラインを複数の異なる吐出口から吐出されるインクで形成する方式が提案されている。これは、例えば、印字ヘッドの幅未満の紙送りを行うことにより、1ラインの画像データを複数の走査(スキャン又はパス)で補完することで実現することができる。この手法は、一般にマルチパス印字(又は記録)方式と呼ばれる。
マルチパス印字方式には、マスクパターンを用いる方式と、多値の印字すべき入力画像の濃度を複数の走査に分割し、その分割されたものに対して、それぞれ印字データを生成する方式とがある。
マスクパターンを用いてパス分割を行う方式は、一度生成した印字データに対して、複数回の印字に分割するため、パスに応じたマスクパターンを予め用意し、このマスクパターンと生成した印字データの論理積を取ることで印字していた。このマスクパターンは、複数回の印字により、生成されたすべてのデータを打ち切ることができるように予め定められている。マルチパスのパス分割を行うため、マスクパターンは、印字可能なドットを100%として、各パス毎に印字可能なドットが決定され、各パス間では排他的であり、かつ、すべてのパスの印字可能なドットの論理和を取ると全領域に等しくなるように設定される。このため、マスクパターン自体は、ハーフトーン処理との干渉を避けるため、できるだけランダムになるように選択される。
また、印字すべき入力画像を走査に合わせて濃度分割を行うことにより、パス分割を行う方式は、本発明者らが提案している。この方式は、印字すべき入力画像を各走査運動に対応して印字する濃度比率を決定し、この走査毎の印字濃度比率に応じて決定された分割比率により、印字すべき入力画像を濃度分割し、それぞれハーフトーン処理を行って、印字データを生成する方式である。マスクパターン方式や濃度分割方式のいずれの場合においても、印字すべき入力画像を複数回の走査に分割し、印字を行うものである。以下に、マルチパス印字の動作を説明する。
図13は、入力画像を4パスに分割する従来の手順を示す図である。横軸は入力画像の濃度であり、縦軸は印字媒体上での出力濃度である。入力濃度に対する出力濃度は、線形ではなく、通常、縦軸の正方向に膨らんだ曲線を描くが、従来の濃度分割では基本的には、4パスに分割する場合には、入力された濃度データを4つに均等に分割する。すなわち、1乃至4パス目までの入力濃度の分割比率k1、k2、k3、k4が、図13で示すように、k1:k2:k3:k4=1:1:1:1となるように分割する。また、マスクパターン法及び濃度分割法のいずれの場合でも、印字すべき入力画像を複数回の走査に分割して印字する。
図17は、マルチパス印字の従来例を示す図である。ここでは、インクジェットヘッドを4回走査して印字媒体310に画像を形成する4パス印字の例について説明する。
インクジェットヘッド300は、4つの領域300a、300b、300c、300dに分割されており、各領域には縦方向に複数のノズルが配置されている。領域300aは、インクジェットヘッド300の最下端の領域であり、領域300bは、領域300aの上方に隣接する領域である。また、領域300cは、領域300bの上方に隣接する領域であり、領域300dは、領域300cの上方に隣接する領域である。領域300a乃至300dは、前述の通り、インクジェットヘッド300の領域を4つに均等分割して形成されている。
プリンタは、インクジェットヘッド300が印字媒体310上を走査した後に、印字媒体310を紙送り機構でインクジェットヘッド300に対して上方に移動させて印刷を繰り返す。
図17(a)は、領域310−1に対する1パス目の走査を示す。まず、印字媒体310の領域310−1に印字する印字データのうち、1パス目で印字する印字データをインクジェットヘッド300の下側1/4の領域300aに送信し、印字媒体310上を左方向(又は右方向)に走査する。これにより、領域300aに配置されたノズルによって、印字媒体310の領域310−1に1パス目の印字を行う。なお、1パス目の印字では、インクジェットヘッド300の領域300b、300c、300dに配置されたノズルには印字データを送信せず、印字媒体310の領域には印字を行わない。
この印字処理が終了した場合には、印字媒体310を上側にインクジェットヘッド300の1/4の長さ(すなわち、領域300aでのノズル配列方向の幅)だけ紙送りを行う。
図17(b)は、領域310−1に対する2パス目の走査を示す。インクジェットヘッド300は、領域310−1に対する2パス目の走査時には、印字媒体310に対して、実線で図示された位置にある。なお、インクジェットヘッド300は、2パス目の1回前のパスである1パス目の走査時には、印字媒体310に対して、破線で図示する位置300−1にあった。
まず、インクジェットヘッド300の領域300aに対して、印字媒体310の領域310−2に印字する印字データのうち、1パス目で印字する印字データを送信し、印字媒体310の領域310−2を左方向(又は右方向)に走査する。これにより、領域300aに配置されたノズルによって、印字媒体310の領域310−2に1パス目の印字を行う。
また、インクジェットヘッド300の領域300bに対して、印字媒体310の領域310−1に印字する印字データのうち、2パス目に印字する印字データを送信し、印字媒体310の領域310−1を左方向(又は右方向)に走査する。これにより、領域300bに配置されたノズルによって、印字媒体310の領域310−3に2パス目の印字を行う。なお、インクジェットヘッド300の領域300c、300dは、まだ印字領域に入っていないため、印字媒体310の領域には印字データを送信せず、印字を行わない。
これらの印字処理が終了した場合には、印字媒体310を上側にインクジェットヘッド300の1/4の長さ(すなわち、領域300aのノズル配列方向の幅)だけ紙送りを行う。
図17(c)は、領域310−1に対する3パス目の走査を示す。インクジェットヘッド300は、領域310−1に対する3パス目の走査時には、印字媒体310に対して、実線で図示された位置にある。なお、インクジェットヘッド300は、3パス目の1回前のパスである2パス目の走査時には、印字媒体310に対して、破線で図示する位置300−1にあった。また、インクジェットヘッド300は、3パス目の2回前のパスである1パス目の走査時には、印字媒体310に対して、破線で図示された位置300−2にあった。
まず、インクジェットヘッド300の領域300aに対して、印字媒体310の領域310−3に印字する印字データのうち、1パス目で印字する印字データを送信し、印字媒体310の領域310−3を左方向(又は右方向)に走査する。これにより、領域300aに配置されたノズルによって、印字媒体310の領域310−3に1パス目の印字を行う。
また、インクジェットヘッド300の領域300bに対して、印字媒体310の領域310−2に印字する印字データのうち、2パス目で印字する印字データを送信し、印字媒体310の領域310−2を左方向(又は右方向)に走査する。これにより、領域300bに配置されたノズルによって、印字媒体310の領域310−2に2パス目の印字を行う。
更に、インクジェットヘッド300の領域300cに対して、印字媒体310の領域310−1に印字する印字データのうち、3パス目で印字する印字データを送信し、印字媒体310の領域310−1を左方向(又は右方向)に走査する。これにより、領域300cに配置されたノズルによって、印字媒体310の領域310−1に3パス目の印字を行う。なお、インクジェットヘッド300の領域300dは、まだ印字領域に入っていないため、印字媒体310の領域には印字データを送信せず、印字を行わない。
これらの印字処理が終了した場合には、印字媒体310を上側にインクジェットヘッド300の1/4の長さ(すなわち、領域300aのノズル配列方向の幅)だけ紙送りを行う。
図17(d)は、領域310−1に対する4パス目の走査を示す。インクジェットヘッド300は、領域310−1に対する4パス目の走査時には、印字媒体310に対して、実線で図示された位置にある。なお、インクジェットヘッド300は、4パス目の1回前のパスである3パス目の走査時には、印字媒体310に対して、破線で図示された位置300−1にあった。また、インクジェットヘッド300は、4パス目の2回前のパスである2パス目の走査時には、印字媒体310に対して、破線で図示された位置300−2にあった。更に、インクジェットヘッド300は、4パス目の3回前の1パス目の走査時には、印字媒体310に対して、破線で図示された位置300−3にあった。
まず、インクジェットヘッド300の領域300aに対して、印字媒体310の領域310−4に印字する印字データのうち、1パス目で印字する印字データを送信し、印字媒体310の領域310−4を左方向(又は右方向)に走査する。これにより、領域300aに配置されたノズルによって、印字媒体310の領域310−4に1パス目の印字を行う。
また、インクジェットヘッド300の領域300bに対して、印字媒体310の領域310−3に印字する印字データのうち、2パス目で印字する印字データを送信し、印字媒体310の領域310−3を左方向(又は右方向)に走査する。これにより、領域300bに配置されたノズルによって、印字媒体310の領域310−3に2パス目の印字を行う。
また、インクジェットヘッド300の領域300cに対して、印字媒体310の領域310−2に印字する印字データのうち、3パス目で印字する印字データを送信し、印字媒体310の領域310−2を左方向(又は右方向)に走査する。これにより、領域300cに配置されたノズルによって、印字媒体310の領域310−2に3パス目の印字を行う。
更に、インクジェットヘッド300の領域300dに対して、印字媒体310の領域310−1に印字する印字データのうち、4パス目で印字する印字データを送信し、印字媒体310の領域310−1を左方向(又は右方向)に走査する。これにより、領域300dに配置されたノズルによって、印字媒体310の領域310−1に4パス目の印字を行う。
これらの印字処理が終了した場合には、1乃至4パス目の印字処理が、インクジェットヘッド300の領域300a、領域300b、領域300c、及び領域300dによりそれぞれ行われたこととなり、領域310−1については全ての画像形成が完了する。
領域310−1に対する4パス目の走査が終了した後は、印字媒体310を上側にインクジェットヘッド300の1/4の長さ(すなわち、領域300aのノズル配列方向の幅)だけ紙送りを行う。以降、インクジェットヘッド300の走査による印字と紙送りとを順次繰り返して、印字媒体310に画像を形成していく。
このように、駆動部の紙送り誤差やインクジェットヘッドのノズルのバラツキに起因する筋やムラ等の濃度ムラを低減するため、印字媒体上の領域を複数回の走査に分けて、各走査に印字データを分割して印刷するマルチパス印字方式が従来から行われている。
マルチパス印字を行うことにより、駆動部による印字媒体310の搬送量のバラツキや、インクジェットヘッドのノズルのバラツキ(吐出量や吐出方向のバラツキ(ヨレ)等)による筋状のムラ等の濃度ムラをある程度低減することはできてきた。しかしながら、印字画質の高画質化要求が高まる中で、印字液滴の小液滴化、印字解像度の高解像度化等により、従来のマルチパス印字方式だけでは、上述のプリンタにおける問題を解決し、濃度ムラを抑制することが困難である。
図14及び図15は、従来例における各パスで形成されるドットの位置を示す図である。駆動部による印字媒体の搬送量やインクジェットヘッドのノズル特性のバラツキ(吐出量や吐出方向のバラツキ(ヨレ)等)による筋状のムラ等の濃度ムラが発生する態様を説明する。但し、駆動部による印字媒体の搬送量のバラツキ、インクジェットヘッドのノズル特性のバラツキ(吐出量や吐出方向のバラツキ等)により発生する濃度ムラを明確に説明するため、実際の印字と異なる部分もある。
図14では、ある濃度の印字を4パス印字で行った時に理想的な位置に吐出されたドットを示している。丸印が印字ドットであり、丸印内の数字が1乃至4パス目までのいずれのパスで印字したドットであるかを示すパス番号である。ここでは、各パスに分割した分割係数は、それぞれ0.25と各パスの印字比率が均等になることを想定して説明する。また、濃度ムラを明確に示すため、印字ラインの奇数ラインは1及び3パス目の印字を行い、偶数ラインは2及び4パス目の印字を行う状況を想定する(実際の印字とは異なる。)。インクジェットヘッドによる吐出特性のバラツキ(吐出量や吐出方向のバラツキ等)が無く、また、プリンタの駆動部による印字媒体の搬送量のバラツキが無い状態とすると、図14で示すように印字ドットが格子状に整列し、均一な濃度として画像が形成される。
しかし、インクジェットヘッドの吐出特性や印字媒体の搬送量等のバラツキの画質劣化要因が加わる場合には、図15で示すように、インクドットの配置等が理想状態よりずれるため、形成された画像の濃度は均一ではなくなる。図15では、1パス目の印字後と3パス目の印字後の印字媒体の搬送量が少し大きくなり、2パス目の印字後の印字媒体の搬送量が少し小さくなり、更に、吐出方向のバラツキが加わった状態である。この結果、理想的には図14のように均等にドットが配置されるべきものが、2ライン目と3ライン目との間が近接する一方で、1ライン目と2ライン目との間、及び3ライン目と4ライン目との間が離間し、この部分で濃度ムラが発生してしまう。このような濃度ムラを抑制するため、本発明では、以下の各実施形態を採用することができる。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の一実施形態に係るプリンタ10の機能的構成を示すブロック図である。
プリンタ10は、本実施形態では、インクジェットプリンタであり、CPU100と、ROM110と、RAM120と、USBデバイスインターフェース130と、USBホストインターフェース140と、を備える。また、プリンタ10は、画像処理部150と、印字制御部160と、駆動制御部170と、プリンタエンジン部180とを備える。
CPU100は、プリンタ10を制御する中央処理装置であり、ROM110には、CPU100のプログラムやテーブルデータが格納されている。また、RAM120は、変数やデータを格納するメモリである。
また、USBデバイスインターフェース130は、パーソナルコンピュータ(PC)20からデータを受け取るインターフェース(I/F)である。また、USBホストインターフェース140は、デジタルカメラ30等の電子機器からデータを受け取るインターフェース(I/F)である。本実施形態では、USBデバイスインターフェース130には、パーソナルコンピュータ20が接続され、USBホストインターフェース140には、デジタルカメラ30が接続されるものとする。
画像処理部150は、デジタルカメラ30等の電子機器から入力された多値画像を色変換や2値化等の処理を行い、また、印字制御部160は、画像処理部150で2値化処理された記録データを後述のプリンタエンジン部180に送信して印字制御を行う。プリンタエンジン部180は、インクジェットヘッド、紙送り機構、及びキャリッジ送り機構を有し、印字制御部160からの制御信号に基づいて、印字媒体200上に階調画像を印字する。駆動制御部170は、プリンタエンジン部180の紙送り機構やキャリッジ送り機構等の駆動部(例えば、モータの回転数等)を制御する。
ここで、デジタルカメラ30で撮影された画像をパーソナルコンピュータ20を介さずに直接、プリンタ10に送信して印刷する場合を想定する。まず、プリンタエンジン部180にセットされた印字媒体(図示せず)は、その種類を検出するためのセンサ(図示せず)で印字媒体の情報が読み取られ、CPU100で印字媒体の種類が判別される。印字媒体の種類を検出するセンサは、種々提案されており、例えば、特定の波長の光を印字媒体に投射して反射光を読み取り、その反射光と予め記憶された複数の波長サンプルとを比べることにより、印字媒体を判別する方式が採用できる。
デジタルカメラ30で撮影された画像データは、JPEG画像としてデジタルカメラ30内のメモリ31に格納される。デジタルカメラ30は、接続ケーブルでプリンタ10のUSBホストインターフェース140に接続される。デジタルカメラ30のメモリ31に格納された撮像画像は、USBホストインターフェース140を介してプリンタ10内のRAM120に一時記憶される。デジタルカメラ30から受け取った画像データは、JPEG画像であるため、CPU100を用いて圧縮画像を解凍して画像データとし、その画像データをRAM120に格納する。RAM120に格納された画像データに基づいて、プリンタエンジン部180のインクジェットヘッドで印刷するための印字データを生成する。RAM120に格納された画像データは、画像処理部150で色変換処理や2値化処理等を行い、印字データ(ドットデータ)に変換され、更に、パス分割を行ってマルチパス印字に対応させる。なお、画像処理部150での処理手順の詳細については後述する。
印字データに変換され、パス分割されたデータは、印字制御部160に送信され、インクジェットヘッドの駆動順序に合わせて、プリンタエンジン部180のインクジェットヘッドに送信される。そして、駆動制御部170及びプリンタエンジン部180に同期して、印字制御部160で吐出パルスが生成されて、インク滴を吐出し、印字媒体(図示せず)上に画像が形成される。
なお、本実施形態では、画像処理部150で2値化処理を行うものとしたが、入力画像を印刷するために低階調化すればよいため、2値化に限定されるものではない。例えば、インクの濃度やインクの液滴の大きさ等が2段階ある場合に限らず、それらが3段階ある場合等のように、データ量削減のためのN(Nは2以上の整数)値化を含めるものである。
また、本実施形態では、プリンタエンジン部180に配置されたセンサ(図示せず)がプリンタ10にセットされた印字媒体の有無等を検出し、CPU100がセンサで検出した情報に基づいて、印字媒体の種類を判別した。しかし、ユーザがプリンタ10やデジタルカメラ30を操作して、印字媒体の種類を選択しても構わない。
図2において、(a)乃至(c)は、印字媒体200及びキャリッジ210の配置状態を示す図である。
キャリッジ210には、図2(a)で示すように、インクジェットヘッド220及びセンサ230が搭載されており、左右いずれの方向にも走査可能である。インクジェットヘッド220は、シアン用ヘッド220c、マゼンタ用ヘッド220m、イエロー用ヘッド220y、ブラック用ヘッド220bkの4色のヘッドを有し、各色毎に複数のノズルを有する。センサ230は、印字媒体200へのRGBの印字状態を検出するカラーセンサである。センサ230は、印字走査運動を行う方向(主走査方向X)に対して、インクジェットヘッド220よりも先行する位置(主走査方向Xの下流側)に隣接して配置される。すなわち、センサ230は、インクジェットヘッド220と同期して移動することとなる。なお、センサ230には、本実施形態では、RGBの印字状態を検出するカラーセンサを用いるが、CMYの補色センサやモノクロセンサ等を用いても構わない。
キャリッジ210は、印字媒体200上を主走査方向Xに走査する際に各色のインクジェットヘッド220のノズルからインク滴を吐出して印字を行う。1走査分の印字を終了した場合には、プリンタエンジン部180(図1参照)で印字媒体200を副走査方向Yに搬送し、次の走査の位置に印字媒体200をセットする。
本実施形態では、印字領域を複数回走査して印字するマルチパス印字を行うため、印字媒体200の1回の搬送量は、インクジェットヘッド220のノズル幅より小さい。すなわち、本実施形態では、インクジェットヘッド220のノズル幅の4分の1をキャリッジ210の1走査毎に搬送する。
センサ230は、図2(a)で示すように、主走査方向X(印字走査運動を行う方向)が図面上で右方向である場合には、主走査方向Xに対して、インクジェットヘッド220よりも先行する位置に位置することになる。このため、マルチパス印字を行う場合には、注目する印字走査(nパス目とする)よりも1回前の印字走査(すなわち、n−1パス目)までの印字状態を走査中に検出することができる。印字状態とは、インクジェットヘッド220の吐出特性(インクの吐出量や吐出方向のバラツキ)やプリンタエンジン部180(図1参照)による印字媒体200の搬送量のバラツキ等によって変化する実際に印字媒体200上に印字された状態を言う。従って、センサ230で検出された検出結果に基づいて、キャリッジ210の走査中にリアルタイムに濃度ムラを補正することが可能になる。なお、詳細については本実施形態で後述する。
一方、センサ230は、図2(b)で示すように、主走査方向X(印字走査運動を行う方向)が図面上で右方向である場合に、主走査方向Xに対して、インクジェットヘッド220よりも後続する位置に配置することもできる。この場合には、注目するパス(nパス目とする。)の記録データ生成時に、n−1パス目までの印字状態を検出することができない。すなわち、nパス目までの印字状態を検出することとなる。このため、走査中にリアルタイムに濃度ムラを補正するわけではなく、センサ230の出力を1走査分だけ保持して補正することとなる。なお、詳細については、第4の実施形態で後述する。
また、往復走査運動の往路及び復路の両方で記録媒体上への形成処理を行う場合には、図2(c)で示すように、センサ230を印字走査運動を行う方向に対して、インクジェットヘッド220の先行する位置及び後続する位置の両方に配置してもよい。なお、インクジェットヘッド220の左側(前述の後続する位置)に配置されるセンサ230をセンサ231とし、インクジェットヘッド220の右側(前述の先行する位置)に配置されるセンサ230をセンサ232とする。この場合には、主走査方向Xが右方向である走査の場合には、センサ231で印字状態を検出し、主走査方向Xが左方向である走査の場合には、センサ232で印字状態を検出する。従って、双方向印字を行う際に、左右いずれの方向に走査する際であっても同様に制御することが可能となる。
図3は、第1の実施形態に係る画像形成装置の機能的構成を示すブロック図である。画像形成装置は、印字媒体200上の同一領域に対して、インクジェットヘッド220を複数回往復走査運動させる。往復走査運動においては、往復走査運動の一方で印字媒体200上にドットの形成処理を行い、往復走査運動の他方で原位置への移動処理を行うマルチパス処理を用いて、印字媒体200上に階調画像を形成する。
まず、入力画像320は、色変換部330でRGB信号からプリンタ10(図1参照)で印刷するためのCMY信号335(シアン用信号335c、マゼンタ用信号335m、及びイエロー用信号335y)に変換される。また、印字状態を検出するセンサ340から検出されたRGB信号は、色変換部350でCMY信号355(シアン用信号355c、マゼンタ用信号355m、及びイエロー用信号355y)に変換される。色変換部350は、例えば、センサ340のRGB信号のカラーフィルタ特性、センサ340の検出領域に対して与える光源の特性、及び印字するインクの特性等に基づいて、CMY信号355への色変換を行う。
そして、色変換部330で変換されたCMY信号335と色変換部350で変換されたCMY信号355が印字データ生成部370(シアン用印字データ生成部370c、マゼンタ用印字データ生成部370m、イエロー用印字データ生成部370y)に入力される。印字データ生成部370では、センサ230で検出された印字状態に基づいて、プリンタエンジン部180による印字と同期して印字データを補正する。
印字データ生成部370では、インクジェットヘッドで印字を行うために2値化を行って、各記録走査運動毎の印字データを生成する。印字データ生成部370でインクジェットヘッドの印字データが生成された後、各色の印字制御部380(シアン用印字制御部380c、マゼンタ用印字制御部380m、イエロー用印字制御部380y)に入力される。印字制御部380は、低階調化された印字データに基づいて、インクジェットヘッド等のプリンタエンジン部180(図1参照)に対して印字制御を行って、印字媒体に対して画像を形成する。
図4は、第1の実施形態に係る印字データ生成部370の機能的構成を示すブロック図である。ここでは、図3で示す印字データ生成部370のうち、シアン用印字データ生成部370c、マゼンタ用印字データ生成部370m、イエロー用印字データ生成部370yのいずれか1色の機能的構成について例示する。印字画像信号400(図3のCMY信号335に相当する。)は、色変換部330(図3参照)で印字を行うための各インク色に変換される。
パス分割テーブル410は、マルチパスに分割するための分割比率k1、k2、k3、k4を格納する。乗算器420−1は、印字画像信号400に1パス目の分割比率k1(415−1)を乗算して1パス目の印字濃度を演算する。乗算器420−2は、印字画像信号400に2パス目の分割比率k2(415−2)を乗算して2パス目の印字濃度を演算する。乗算器420−3は、印字画像信号400に3パス目の分割比率k3(415−3)を乗算して3パス目の印字濃度を演算する。乗算器420−4は、印字画像信号400に4パス目の分割比率k4(415−4)を乗算して4パス目の印字濃度を演算する。
まず、センサ340からの信号430が印字データ制御部440に入力される。信号430は、図3で示したように、センサ340で検出されたRGB信号を色変換部350でCMY信号355に変換したものである。印字データ制御部440は、CMY信号に変換されたセンサ340からの信号430に対して、濃度レベルの補正及び印字データの生成のために用いられる制御データを生成し、各色の低階調化部450−1乃至450−4にその信号を送信する。
低階調化部450−1は、1パス目の印字濃度を演算した乗算器420−1の出力から1パス目の印字データを生成する。低階調化部450−2は、2パス目の印字濃度を演算した乗算器420−2の出力に対してセンサ340による検出信号より印字データ生成に対する制御データを生成した印字データ制御部440による制御を受けて2パス目の印字データを生成する。低階調化部450−3は、3パス目の印字濃度を演算した乗算器420−3の出力に対してセンサ340による検出信号より印字データ生成に対する制御データを生成した印字データ制御部440による制御を受けて3パス目の印字データを生成する。低階調化部450−4は、4パス目の印字濃度を演算した乗算器420−4の出力に対してセンサ340による検出信号より印字データ生成に対する制御データを生成した印字データ制御部440による制御を受けて4パス目の印字データを生成する。
1パス目印字画像記憶部460−1は、1パス目の印字データを生成した低階調化部450−1の出力を1パス目の印字画像として一時記憶する。2パス目印字画像記憶部460−2は、2パス目の印字データを生成した低階調化部450−2の出力を2パス目の印字画像として一時記憶する。3パス目印字画像記憶部460−3は、3パス目の印字データを生成した低階調化部450−3の出力を3パス目の印字画像として一時記憶する。4パス目印字画像記憶部460−4は、4パス目の印字データを生成した低階調化部450−4の出力を4パス目の印字画像として一時記憶する。
図4では、4パス印字を行う場合を例示したが、各パスでの印字濃度を決定するものがパス分割テーブル410である。分割比率k1、k2、k3、k4は、それぞれが、0<=ki<=1 (i=1、2、3、4)、かつ、k1+k2+k3+k4=1で示される関係を満たす。分割比率k1、k2、k3、k4は、4パス印字の場合には、例えば、すべてのパスに均等に分割するように0.25とすることができる。また、1パス目の印字比率を低めに設定して、1パス目以降のパスの印字比率を高めに設定するように、k1=0.1、k2=0.2、k3=0.3、k4=0.4とすることができる。このように、パス分割テーブル410に種々の場面を想定した分割比率を格納しておくことにより、任意の濃度比率でパス分割を行うことができる。
各インク色に変換された印字信号は、乗算器420に入力され、パス分割テーブル410から読み出された分割比率k1、k2、k3、k4が乗算され、各パスの印字濃度が決定される。次に、各パス毎の印字データを生成する手順について説明する。
まず、1パス目の領域に印字する印字データを生成する際には、色変換部330(図3参照)で各インク色に分解された印字画像信号400は、パス分割テーブル410に記憶された分割比率k1と乗算器420−1で乗算され、1パス目の印字濃度が決定される。その後、1パス目の印字濃度を1パス目の低階調化部450−1で低階調化して1パス目の印字データを生成する。生成された1パス目の印字データは、1パス目印字画像として、1パス目印字画像記憶部460−1に記憶される。
次に、2パス目の領域に印字する印字データを生成する際には、各色の印字画像信号400は、パス分割テーブル410で与えられる分割比率k2と乗算器420−2で乗算され、2パス目の印字濃度が決定される。また、1パス目の記録状態を同時にセンサ340で検出し、この検出信号を色変換部350(図3参照)でCMY信号に変換した信号430に基づいて、印字データ制御部440で濃度レベルの補正、低階調化された制御データの生成等を行う。この制御データに基づいて、2パス目の印字濃度は、2パス目の低階調化部450−2で低階調化される。
すなわち、従来、単純に2パス目の印字データを生成したのに対し、センサ340でマルチパス印字における以前のキャリッジ走査による印字(1パス目の印字)の記録状態を検出する。これにより、低階調化部450−2による印字データの生成(ドット生成、ドット配置等)を制御しようとするものである。生成された2パス目の印字データは、2パス目印字画像として、2パス目印字画像記憶部460−2に記憶される。3及び4パス目の領域に印字する印字データを生成する際にも、2パス目の領域に印字する印字データを生成する際と同様に行うことができる。
図5は、第1の実施形態に係る低階調化部450の機能的構成を示すブロック図である。低階調化部450は、本実施形態では、誤差拡散法を用いて低階調化を行う。
入力画像信号500は、図4で示す乗算器420の出力信号に相当する。制御信号505は、図4で示す印字データ制御部440の出力信号に相当し、低階調化部450を制御する信号である。
加算器510は、入力画像信号500に量子化誤差を示す誤差信号575を加算し、量子化誤差が加算された信号515を出力する。閾値生成部520は、入力される制御信号505に基づいて、量子化を行うための閾値を生成し、生成した閾値を量子化器530に出力する。量子化器530は、誤差を含む入力画像の信号515を閾値生成部520から入力された閾値に基づいて量子化して低階調化し、出力信号535を出力する。
逆量子化器550は、低階調化された出力信号535を評価値540に基づいて逆量子化する。加算器560は、誤差を含む入力画像の信号515に対して、量子化を行った結果の誤差を演算し、量子化誤差信号565を出力する。拡散/収集部570は、量子化誤差信号565に基づいて、拡散又は収集を行い、誤差信号575を出力する。なお、拡散/収集部570には、CPUの処理速度とプリンタ等の処理速度とのギャップを埋めるための緩衝用メモリであって、量子化誤差を一時記憶する誤差バッファ580が接続されている。
通常、閾値生成部520で生成される閾値には定数が用いられ、入力画像信号500に対して誤差拡散を行いながら、量子化器530で2値化を行う。一方、本実施形態では、テクスチャやドット形成の遅延を補正するために変数を用いる。
閾値生成部520に入力される制御信号505は、図4で示すように、センサ340で検出された印字状態を示す信号430が印字データ制御部440で印字データを制御する信号に生成された制御データに相当する。従って、センサ340で検出した印字状態に応じて閾値を変動させることになるため、印字濃度を均一化するように、誤差拡散処理におけるデータ生成を制御することが可能となる。
すなわち、センサが複数回の走査運動のうち、少なくとも1回の走査運動において、注目する走査運動よりも1回前の走査運動までに、プリンタエンジン部180で印字媒体200上に印字された印字状態を検出して、その検出結果に基づいて、閾値を変化させる。これにより、新たに形成するドットを既に印字されたドットから離れた位置に形成するように制御する。
例えば、センサで検出された以前の走査までの印字状態に基づいて、既にドットが形成された位置又はドットが集中して形成されることにより濃度が高まった位置に対して、量子化を行うための閾値を高めに変更し、ドットの形成を抑制するように制御する。一方、ドットが形成されていない領域又は印字濃度の低い領域では、量子化を行うための閾値を低めに変更し、ドットの形成を促進するように制御する。
このように閾値を制御することによって、マルチパス印字におけるパス間のドットの分散性を高めることができる。これにより、誤差拡散法による低階調化処理で閾値を変化させるため、分割比率に基づいてパス分割され、パス毎の印字濃度が決定された画像信号に対し、ドットの形成率ではなく、ドットの形成位置を制御することにより、濃度ムラを低減することができる。
なお、1パス目の印字データを生成する際には、1パス目より前の印字データは存在しないため、印字データ制御部440(図4参照)は存在しない。このため、制御信号は入力されず、閾値生成部520で生成される閾値は固定値(又はテクスチャやドット形成遅延を補正するために変動させた値)となり、通常の量子化が行われる。
なお、低階調化部450は、本実施形態では、誤差拡散法を用いて低階調化処理を行ったが、ディザ法を用いて低階調化処理を行うこともできる。すなわち、ディザマトリクスの閾値を誤差拡散処理で説明したものと同様に制御することにより、印字データの生成を制御することができる。
図6において、(a)は印字媒体200とキャリッジ210との位置関係を示す図であり、(b)はキャリッジ210によって走査される印字媒体200上の印字領域205を示す図である。
キャリッジ210には、インクジェットヘッド220及びセンサ230が搭載されており、左右方向のいずれにも走査可能である。センサ230は、インクジェットヘッド220に対して、主走査方向Xの下流側に設けられる。拡散マトリクス240は、印字データを生成する着目画素及び誤差拡散を行う際に用いられる。
印字領域205は、キャリッジ210を走査して、インクジェットヘッド220からインクを吐出することにより画像が形成される領域である。1パス目領域205−1は、キャリッジ210の1パス目の走査によりインクジェットヘッド220で印字される領域である。2パス目領域205−2は、キャリッジ210の2パス目の走査によりインクジェットヘッド220で印字される領域である。3パス目領域205−3は、キャリッジ210の3パス目の走査によりインクジェットヘッド220で印字される領域である。4パス目領域205−4は、キャリッジ210の4パス目の走査によりインクジェットヘッド220で印字される領域である。
キャリッジ210は、図6(a)で示すように、印字媒体200上を主走査方向Xに走査する。これと同時に、センサ230は、注目する走査の1回前の走査までに印字された状態を検出している。注目する走査で印字媒体200上にインクジェットヘッド220からインクを吐出する。
センサ230は、インクジェットヘッド220の副走査方向Yにおける幅と同等であるか、又は1パス目を印字するノズル領域を除いた幅と同等の幅を有するラインセンサである。キャリッジ210の主走査方向Xに対して、インクジェットヘッド220に先行する位置に配置されたセンサ230は、キャリッジ210の主走査方向Xに従って、以前の走査で印字された印字媒体200上の印字状態を検出する。
センサ230で検出された印字状態は、センサ230がラインセンサであるため、ライン方向に読み出される。センサ230から読み出された検出信号は、現在の走査の印字領域205に対して縦方向(図中の上下方向)に読み出される。この処理と同期して、プリンタ10のRAM120(図1参照)に一時記憶された印字すべき入力画像は、現在の走査の印字領域205に対して、縦方向(図中上下方向)に読み出される。
このようにして、RAM120から読み出された印字すべき入力画像信号は、印字データを生成するための着目画素及び拡散マトリクス240を縦方向に動かし、センサ230で検出された印字状態に応じた制御を受けながら印字データを生成する。そして、生成した印字データをメモリに記憶させる。
ここで、メモリの容量は、センサ230とインクジェットヘッド220との間の距離によって規制される。例えば、センサ230をインクジェットヘッド220に隣接して配置した場合にはメモリの容量は小さくなる。一方、センサ230、インクジェットヘッド220、及びキャリッジ210の構造により、センサ230を配置可能な場所は限定されてしまう。印字データのメモリの容量は、この位置関係に依存することになる。
また、印字データは、現在の走査による印字領域205を上下方向に生成していく。このため、現在の走査による印字領域205を1パス目領域205−1から4パス目領域205−4まで上下方向に縦断しながら印字データを生成することになる。このため、乗算器420、低階調化部450、及び印字画像記憶部460(図4参照)は、各色で独立して設けられる必要はなく、全色で合わせて1つだけ設けて、連続して行うことが可能である。
図16(a)乃至(d)は、各パスで形成されるドットの位置を示す図である。マルチパス印字で濃度ムラが発生する場合には、センサで以前の走査までの印字状態を検出し、その検出結果に基づいて、ドットの形成制御を行う。
まず、図16(a)で示すように、1パス目の印字を行う。次に、印字媒体の搬送を行い、図16(b)で示すように、2パス目の印字を行う。2パス目の印字を行う際に、1パス目の印字状態をセンサで検出している。印字状態とは、例えば、1パス目の印字の際のインクジェットヘッドの吐出方向や1パス目の印字終了後に印字媒体を搬送した際の搬送量等のバラツキを意味する。
そして、センサで検出された結果により、これから行う印字処理に対応する印字データの生成を制御する。例えば、図16(b)で示すように、1パス目の印字終了時の印字媒体の搬送量が基準値より大きいという状態を検出することができる。また、1パス目で印字を行った3ライン目(図16(a)で示す上下3列中の中央のライン)のノズルの吐出方向が上側にずれているという状態を検出することができる。このように、検出された1パス目の印字状態に基づいて、2パス目で印字するデータを生成する。
このため、2パス目の印字ドット(丸印内に符号2で示す。)は、図16(b)で示すように、従来のように印字ドットを形成した場合に比べて、印字ドット(太い丸印内に符号2で示す。)が、印字ドットの形成位置(ノズルの吐出方向等)を補正して、印字データが生成される。そして、図16(b)で示すように、2パス目の印字が行われる。
次に、2パス目の印字が終了した後に、印字媒体が搬送され、1及び2パス目での印字が行われた印字状態をセンサで検出し、検出された結果に基づいて、3パス目の印字データが生成される。この結果、従来のように印字ドットを形成する場合に比べて、印字ドット(太い丸印内に符号3で示す。)が、印字ドットの形成位置(ノズルの吐出方向等)を修正して印字データを生成する。そして、図16(c)で示すように、3パス目の印字が行われる。
同様にして、3パス目の印字終了後に、印字媒体が搬送され、1乃至3パス目での印字が行われた印字状態をセンサで検出し、検出された結果に基づいて、4パス目の印字データが生成される。生成された4パス目の印字データに基づいて、図16(d)で示すように、4パス目の印字が行われ、印字媒体上に画像が形成される。図15で示す何も制御しない状態の画像と比べて、図16(d)では、明らかに濃度ムラが低減されていることが確認できる。
従って、センサで以前の走査の印字状態を検出し、この検出結果に基づいて、印字データを生成することにより、各印字走査運動毎の印字ドットの形成位置を補正することができる。これにより、マルチパス印字を行う際に、インクジェットヘッドの特性や印字媒体の搬送量等のバラツキが生じた場合であっても、各パス間のドットを均等に分散させることができ、濃度ムラを低減することができる。
[第1の実施形態の変形例1]
図7は、第1の実施形態の変形例1に係る印字データ生成部370の機能的構成を示すブロック図である。
乗算器420は、パス分割テーブル410からの入力に基づいて、印字画像信号400を各パスに濃度分割する。印字データ制御部440は、乗算器420で濃度分割された各パスの印字画像をセンサ340で検出された信号430に基づいて、印字データを制御する。低階調化部450は、印字データ制御部440の制御を受けて、乗算器420でパス分割された印字データを低階調化する。印字画像記憶部460は、低階調化部450で低階調化された各パスの印字データを記憶する。
CMY信号に変換された印字画像信号400及びセンサ340で検出されて、CMY信号に変換された信号430は、図6で示したように、印字領域205を縦方向にスキャンするようにキャリッジ210を制御する。印字画像信号400には、各パスの印字領域205に合わせた分割比率k1、k2、k3、k4がパス分割テーブル410から読み出され、乗算器420で各パスの印字領域205に応じた印字濃度が乗算される。そして、センサ340から出力される信号430に基づいて、印字データ制御部440で濃度レベルの補正や制御データの生成等が行われ、その結果に基づいて、低階調化部450で各パスに応じた印字データが生成される。生成された印字データは、印字画像記憶部460に一時記憶され、印字制御部380(図3参照)で印字媒体上に印字され、画像が形成される。この際に、印字媒体上に形成された1パス目領域205−1(図6参照)には、以前のパスでの印字が行われておらず、センサ340からの信号が存在しないため、低階調化部450では制御されずに入力された印字濃度がそのまま低階調化される。
[第1の実施形態の変形例2]
上述の第1の実施形態では、センサ342として、RGB純色フィルタを用いたが、本変形例のように、CMY補色フィルタを用いることもできる。
図8は、第1の実施形態の変形例2に係る画像形成装置の機能的構成を示すブロック図である。図14は、第1の実施形態の変形例2における各パスで形成されるドットの位置を示す図である。なお、図14中の丸印は印字媒体上に形成されるドットを示し、丸印内の数字1、2、3、4は、ドットが形成された走査番号を示す。
この場合には、センサ342で検出された印字状態は、図3で示すようなRGB信号ではなく、図8で示すように、信号C’、M’、Y’で示すCMY信号として、色変換部352に入力される。色変換部352では、センサ342から入力された信号C’、M’、Y’に基づいて、インク色であるCMY信号に変換する。これにより、センサ342として、CMY補色フィルタを用いた場合であっても、同様の効果を得ることができる。
<第2の実施形態>
上述の第1の実施形態では、センサで検出した印字状態に基づいて、ドットの位置を制御したが、本実施形態では、センサで検出した印字状態に基づいて、印字する濃度を補正する点で相違する。なお、これらの実施形態は、単独で実施してもよいし、両者を組み合わせて実施してもよい。また、上述の第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
印字すべき入力画像320は、図3で示すように、色変換部330でプリンタ10(図1参照)で印刷を行うためのCMY信号に変換され、各色毎に印字データ生成部370に入力される。同様に、印字状態を検出するためのセンサ340で検出した信号は、色変換部350でCMY信号に変換され、各色毎に印字データ生成部370に入力される。
印字データ生成部370は、センサ340で検出された印字状態に基づいて、ノズル単位で各印字走査運動毎の記録濃度比率を補正する。すなわち、印字データ生成部370では、センサ340で検出し、色変換部350でCMY信号に変換された信号に基づいて、入力画像320の濃度レベルの補正等が行われる。
図9は、第2の実施形態に係る印字データ生成部370の機能的構成を示すブロック図である。ここでは、図3で示す印字データ生成部370のうち、シアン用印字データ生成部370c、マゼンタ用印字データ生成部370m、イエロー用印字データ生成部370yのいずれか1色の機能的構成について例示する。
濃度変換部600は、センサ340で検出された信号430に基づいて、印字濃度に変換する。
パス分割テーブル610は、マルチパスに分割するための分割比率k1、k2、k3、k4を格納する。乗算器620−1は、印字画像信号400に1パス目の分割比率k1(615−1)を乗算する。乗算器620−2は、印字画像信号400に1及び2パス目の分割比率の合計k1+k2(615−2)を乗算する。乗算器620−3は、印字画像信号400に1乃至3パス目の分割比率の合計k1+k2+k3(615−3)を乗算する。
加算器630−1は、乗算器620−1で算出された1パス目の印字濃度とセンサ340で検出された印字濃度との差分を算出する。加算器630−2は、乗算器620−2で算出された1及び2パス目の合計の印字濃度とセンサ340で検出された印字濃度との差分を算出する。加算器630−3は、乗算器620−3で算出された1乃至3パス目の合計の印字濃度とセンサ340で検出された印字濃度との差分を算出する。
加算器640−2は、1パス目の印字濃度とセンサ340で検出された印字濃度との差分(加算器630−1の出力結果)を2パス目の印字濃度に加算する。加算器640−3は、1及び2パス目の合計の印字濃度とセンサ340で検出された印字濃度との差分(加算器630−2の出力結果)を3パス目の印字濃度に加算する。加算器640−4は、1乃至3パス目の合計の印字濃度とセンサ340で検出された印字濃度との差分(加算器630−3の出力結果)を4パス目の印字濃度に加算する。
低階調化部650−1は、1パス目の印字濃度を算出した乗算器420−1の出力に基づいて、1パス目の印字データを生成する。低階調化部650−2は、2パス目の印字濃度を算出した加算器640−2の出力に基づいて、2パス目の印字データを生成する。低階調化部650−3は、3パス目の印字濃度を算出した加算器640−3の出力に基づいて、3パス目の印字データを生成する。低階調化部650−4は、4パス目の印字濃度を算出した加算器640−4の出力に基づいて、4パス目の印字データを生成する。
ここで、本実施形態では、印字画像信号400に対して、各パスの分割比率を乗算器420で算出した累積濃度を各パスの目標出力濃度と表現する。これは、印字媒体上に印字された結果の濃度ではないが、処理を行う上で扱う値として印字濃度という言葉を用いる。
まず、各インク色に変換された印字画像信号は、各パス毎の印字濃度を算出する乗算器420に入力され、パス分割テーブル410から読み出された分割比率k1、k2、k3、k4が乗算され、各パスの目標出力濃度が算出される。
1パス目の印字データを生成する際には、第1の実施形態と同様に、1パス目の印字濃度が乗算器420−1で算出され、低階調化部650−1で印字データが生成され、1パス目印字画像記憶部460−1に記憶される。
2パス目以降の印字データを生成する際には、乗算器420で各パスの印字濃度を算出すると同時に、それ以前までの走査の目標出力濃度を乗算器620で算出する。
2パス目を印字する際には、1パス目の目標出力濃度を印字画像信号400に1パス目の分割比率k1を乗算器620−1で算出する。一方、センサ340で検出された印字状態を示す信号は、CMY信号に色変換された後に、濃度変換部600で検出濃度に変換される。1パス目の検出濃度は、計算上の目標出力濃度と比較して差分を算出するため、乗算器620−1の出力と共に加算器(減算器)630−1に入力される。加算器630−1で算出された1パス目の目標出力濃度と検出濃度との差分は、加算器640−2で2パス目の印字濃度に加算される。1パス目の目標出力濃度と検出された印字濃度との差分で補正された2パス目の印字濃度は、低階調化部650−2で印字データが生成され、生成された2パス目の印字データは、2パス目印字画像として、2パス目印字画像記憶部460−2に記憶される。
また、3パス目を印字する際には、3パス目の印字濃度が乗算器420−3で算出されると同時に、既に印字を行った1及び2パス目の合計の目標出力濃度を印字画像信号400に1及び2パス目の分割比率の合計k1+k2を乗算器620−2で乗算する。一方、センサ340で検出された印字状態に基づいて、2パス目の印字後の検出濃度が濃度変換部600で変換される。乗算器620−2で算出された2パス目の印字後の目標出力濃度とセンサ340で検出された検出濃度との差分が加算器630−2で算出され、3パス目の印字濃度に加算器640−3で加算される。2パス目の印字後の目標出力濃度と検出された印字濃度との差分で補正された3パス目の印字濃度は、低階調化部650−3で印字データが生成され、生成された3パス目の印字データは、3パス目印字画像として、3パス目印字画像記憶部460−3に記憶される。
また、4パス目を印字する際には、4パス目の印字濃度が乗算器420−4で算出されると同時に、既に印字した1乃至3パス目の合計の目標出力濃度を印字画像信号400に対して、1乃至3パス目の分割比率の合計を乗算する乗算器620−3で算出する。一方、センサ340で検出された印字状態に基づいて、3パス目の印字後の検出濃度が濃度変換部600で変換される。乗算器620−3で算出された3パス目の印字後の目標出力濃度とセンサ340で検出された検出濃度との差分が加算器630−3で算出され、3パス目の印字濃度に加算器640−4で加算される。3パス目の印字後の目標出力濃度と検出された印字濃度との差分で補正された4パス目の印字濃度は、低階調化部650−4で印字データが生成され、生成された4パス目の印字データは、4パス目印字画像として、4パス目印字画像記憶部460−4に記憶される。
従って、印字データ生成部370が、複数回の印字走査運動のうち、少なくとも1回の印字走査運動において、印字走査運動よりも1回前の印字走査運動までの印字媒体上に印字されるべき累積濃度を算出する累積濃度算出部として機能する。また、印字データ生成部370が、累積濃度算出部で算出された累積濃度とセンサで検出された濃度との差分を算出する差分算出部として機能する。これにより、印字データ生成部370は、差分算出部で算出された差分が0となるように、注目する記録走査運動以降の印字データを補正する。
このようにして、印字画像記憶部460に記憶された印字データは、印字制御部380(図3参照)でインクジェットヘッドを駆動して印字媒体に画像が形成される。
なお、本実施形態では、画像形成装置の構成を第1の実施形態(図3参照)と同様として、インク色であるCMY信号に色分解された後の処理を図9で示した。センサ340で印字状態を検出して、以前の走査による印字結果の印字濃度を検出して、本来印字を行うべき目標出力濃度との差分(すなわち、濃度誤差)を算出し、この濃度誤差の分だけ、次の走査の印字で補正するように印字データを生成する。このため、センサで検出された検出信号をインク色のCMYに色変換するのではなく、画像形成をする上での理想とするCMY系に色変換を行い、この理想系のCMY色空間に対する濃度誤差を算出し、印字データに補正するようにしてもよい。これにより、インクと印字媒体との組み合わせによって、計算上の色変換と、印字媒体上に形成される画像の発色とが相違するような場合であっても、補正することが可能である。
[第2の実施形態の変形例1]
図10は、第2の実施形態の変形例1に係る印字データ生成部370の機能的構成を示すブロック図である。
乗算器420は、パス分割テーブル610からの入力に基づいて、印字画像信号400を各パスに濃度分割する。乗算器620は、印字画像信号400と累積値を乗算して、目標出力濃度を算出する。加算器630は、乗算器620で算出された目標出力濃度と、センサ340で検出され、濃度変換部600で変換された濃度との差分を算出する。加算器640は、各パスの印字濃度に加算器630で算出された差分を加算する。低階調化部650は、加算器640で差分が加算された各パスの印字画像を低階調化し、印字データを生成する。印字画像記憶部460は、低階調化部650で低階調化された各パスの印字データを記憶する。
CMY信号に変換された印字画像信号400及びセンサ340で検出されて、CMY信号に変換された信号430は、図6で示したように、印字領域205を縦方向にスキャンするようにキャリッジ210を制御する。印字画像信号400には、各パスの印字領域205(図6参照)に対応する分割比率k1、k2、k3、k4がパス分割テーブル610から読み出され、乗算器420で印字領域205に応じた印字濃度が乗算される。同時に、2パス目以降では、パス分割テーブル610より、注目する走査がnパス目である場合には、nパス目の1回前の走査であるn−1パス目までの分割比率の合計(下式で算出される。)を出力し、乗算器620で目標出力濃度を算出する。
これにより、nパス目を印字する際に、n−1パス目までの合計の目標出力濃度を算出する。
一方、センサ340で検出された信号430から濃度変換部600で検出濃度に変換され、加算器630で目標出力濃度と検出濃度との差分が算出される。算出された差分は、加算器640で各パスの印字濃度に補正され、低階調化部650で各パスに応じた印字データが生成される。生成された印字データは、印字画像記憶部460に一時記憶され、印字制御部で印字媒体に印字され、画像が形成される。
以上述べたように、本実施形態によれば、マルチパス印字の2パス目以降において、それ以前までの走査による目標出力濃度とセンサ340で検出された検出濃度との差分を次の印字に対して補正することにより、濃度ムラをより確実に低減することができる。すなわち、インクジェットヘッドの特性や印字媒体の搬送量等のバラツキによって、濃度誤差が生じた場合には、2パス目以降の走査でそれ以前の走査で印字した濃度をセンサ340で検出する。そして、その検出濃度と印字すべき目標出力濃度との差分(すなわち、発生した濃度誤差)を算出し、算出された差分を無くすように、そのパスでの印字データを補正することにより、濃度ムラをより確実に低減することができる。
<第3の実施形態>
図11は、第3の実施形態に係る印字データ生成部370の機能的構成を示すブロック図である。第1の実施形態(図3参照)では、印字すべき入力画像320を色変換部330でインクジェットプリンタで印刷を行うためのCMY信号に変換した後、センサ340で検出した信号も色変換部350でCMY信号に変換され、各色の印字データ生成部に入力される。印字データ生成部では、センサ340で検出され、色変換部350でCMY信号に変換された信号を用いて、濃度レベルの補正等が行われる。入力画像信号320、センサ340で検出された信号がそれぞれ色変換部330、350でCMY信号に変換され、それぞれ印字データ生成部370に入力される。なお、上述の第2の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。本実施形態では、第2の実施形態の図9で示す印字データ生成部370の構成との相違点を中心に説明する。
パス分割テーブル612は、マルチパスに分割する際の各走査までの累積濃度(目標出力濃度)を格納する。乗算器425−1は、印字画像信号400に1パス目の分割比率k1(417−1)を乗算する。乗算器425−2は、印字画像信号400に1及び2パス目の分割比率の合計k1+k2(417−2)を乗算して、2パス目までの累積濃度を算出する。乗算器425−3は、印字画像信号400に1乃至3パス目の分割比率の合計k1+k2+k3(417−3)を乗算して、3パス目までの累積濃度を算出する。
加算器645−2は、乗算器425−2で算出された2パス目までに印字を行うべき累積濃度(2パス目印字後の目標出力濃度)とセンサで検出した1パス目の印字濃度との差分を算出して2パス目の印字濃度を算出する。加算器645−3は、乗算器425−3で算出された3パス目までに印字を行うべき累積濃度(3パス目印字後の目標出力濃度)とセンサで検出した1及び2パス目の印字による印字濃度との差分を算出して、3パス目での印字濃度を算出する。加算器645−4は、最終パスまでに印字を行うべき累積濃度(すなわち、最終パスの目標出力濃度)とセンサで検出した3パス目までの印字による印字濃度との差分を算出して4パス目での印字濃度を算出する。
低階調化部650−1は、1パス目の印字濃度を算出した乗算器420−1の出力から1パス目の印字データを生成する。低階調化部650−2は、2パス目の印字濃度を算出した加算器640−2の出力から2パス目の印字データを生成する。低階調化部650−3は、3パス目の印字濃度を算出した加算器640−3の出力から3パス目の印字データを生成する。低階調化部650−4は、4パス目の印字濃度を算出した加算器640−4の出力から4パス目の印字データを生成する。
ここでは、第1及び第2の実施形態と同様に、図3で示す印字データ生成部370のうち、シアン用印字データ生成部370c、マゼンタ用印字データ生成部370m、イエロー用印字データ生成部370yのいずれか1色の機能的構成について例示する。本実施形態では、印字を行うパス(nパス目)及びそれ以前のパス(n−1パス目)までに印字される累積の目標出力濃度と以前の走査までに印字を行い、センサで検出された検出濃度との差分を求めて、この差分濃度を印字するものである。
まず、各インク色に変換された印字画像信号は、パス毎の累積の印字濃度を算出する乗算器425に入力され、パス分割テーブル612から読み出された係数(k1、k1+k2、k1+k2+k3)が乗算され、各パスの累積の印字濃度が決定される。
1パス目の印字データを生成する際には、図4と同様に、1パス目の印字濃度が乗算器425−1で算出され、低階調化部650−1で印字データが生成され、1パス目の印字画像記憶部460−1に記憶される。
2パス目の印字データを生成する際には、乗算器425−2で2パス目までの累積の印字濃度(1及び2パス目の印字濃度の合計)を算出する。一方、センサで印字状態を検出した検出信号は、CMY信号に色変換された後に、濃度変換部600で検出濃度に変換される。センサで検出された1パス目の検出濃度は、2パス目での累積の目標出力濃度と比較し、1及び2パス目の印字濃度を算出するため、加算器(減算器)645−2に入力される。加算器645−2で1及び2パス目の累積の目標出力濃度に対して、1パス目を印字した後の印字状態をセンサで検出した印字濃度との差分が算出され、2パス目で印字すべき濃度が算出される。算出された2パス目での印字濃度は、低階調化部650−2で印字データが生成され、生成された2パス目の印字データは、2パス目印字画像として、2パス目印字画像記憶部460−2に記憶される。
3パス目の印字データを生成する際には、1乃至3パス目の累積の印字濃度を乗算器425−3で算出する。一方、センサで検出した印字状態から2パス目を印字した後の検出濃度を濃度変換部600で変換する。センサで検出された1及び2パス目に印字した印字状態としての検出濃度は、1乃至3パス目の累積の目標出力濃度と比較し、3パス目での印字濃度を算出するため、加算器(減算器)645−3に入力される。加算器645−3で1乃至3パス目の累積の目標出力濃度に対して、2パス目を印字した後の印字状態をセンサで検出した印字濃度との差分が算出され、3パス目で印字すべき濃度が算出される。算出された3パス目での印字濃度は、低階調化部650−3で印字データが生成され、生成された3パス目の印字データは、3パス目印字画像として、3パス目印字画像記憶部460−3に記憶される。
4パス目の印字データを生成する際には、1乃至4パス目の累積の印字濃度は、4パス目が最終パスであり、入力された印字画像自体の濃度であるため、これ以前のパスでの累積の印字濃度を算出した乗算器425は不要となる。4パス目での目標出力濃度に対して、1乃至3パス目の印字状態をセンサで検出し、この検出した印字濃度と印字画像と比較し、4パス目の印字濃度を算出するために加算器(減算器)645−4に入力される。加算器645−4で1乃至4パス目の累積の目標出力濃度(印字画像の濃度)に対して、3パス目を印字した後の印字状態をセンサで検出した印字濃度との差分が算出され、4パス目で印字すべき濃度が算出される。算出された4パス目での印字濃度は、低階調化部650−4で印字データが生成され、生成された4パス目の印字データは、4パス目印字画像として、4パス目印字画像記憶部460−4に記憶される。
[第3の実施形態の変形例1]
図12は、第3の実施形態の変形例1に係る印字データ生成部370の機能的構成を示すブロック図である。
乗算器425は、印字画像信号400に現在の走査までの分割比率の合計(目標出力濃度)を乗算して、現在の走査の目標出力濃度を算出する。加算器645は、乗算器425で算出された目標出力濃度とセンサで検出された検出濃度との差分を算出する。低階調化部650は、各パスの印字画像に基づいて、印字データを生成する。印字画像記憶部460は、低階調化部650で低階調化された各パスの印字データを記憶する。
CMY変換された印字画像信号400、及びセンサで検出され、読み出され、CMY変換された信号430は、図6で示したように、印字領域205を縦方向にスキャンされる。印字画像信号400は、各パスの領域に対応する分割比率k1、k2、k3、k4による累積の分割比率の合計(目標出力濃度)k1、k1+k2、k1+k2+k3、1がパス分割テーブル612から読み出される。読み出される係数は、1乃至nパス目の分割比率の合計として、下式のように与えられる。
パス分割テーブル612で与えられた分割比率と印字画像信号400は、乗算器425で乗算され、パス領域に応じた累積の目標出力濃度が算出される。一方、センサで検出された信号430が濃度変換部600で検出濃度へ変換され、目標出力濃度とそれ以前の走査で印字され、検出された検出濃度との差分が加算器645で算出される。算出結果は、現在の走査(nパス目)の印字濃度に現在の走査より1回前の走査(n−1パス目)の印字濃度誤差を加算したものであり、印字濃度が補正された結果として、低階調化部650で各パスに応じた印字データが生成される。生成された印字データは、印字画像記憶部460に一時記憶され、印字制御部380(図3参照)で印字媒体に印字され、画像が形成される。
以上述べた通り、本実施形態によれば、着目するパスより前の走査までに印字された濃度と、目標出力濃度との差分を算出して、その差分を無くすように濃度を補正することにより、濃度ムラをより確実に低減することができる。すなわち、インクジェットヘッドの特性や印字媒体の搬送量等のバラツキにより濃度誤差が生じた場合であっても、濃度ムラを補正することが可能となる。また、第2の実施形態と比べて、乗算器及び加算器を省略したため、制御回路を簡略化することができる。
<第4の実施形態>
上述の第1乃至第3の実施形態では、図2(a)で示すように、記録走査運動を行う方向(主走査方向X)に対して、センサ230をインクジェットヘッドよりも先行する位置に配置し、センサ230の検出信号を用いて、印字データの生成を制御した。一方、本実施形態では、センサ230をインクジェットヘッドよりも後続する位置に配置する点で相違する。なお、上述の第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
センサ230をキャリッジの主走査方向Xに対して、インクジェットヘッドよりも先行する位置に配置する場合には、注目する走査で印字される印字状態は検出することができないが、注目する走査よりも1回前の走査までの印字状態を検出することができる。このため、インクジェットヘッドの特性のバラツキ(吐出量や吐出方向のバラツキ等)だけでなく、印字媒体の搬送量のバラツキを含む印字状態を検出することができるものであった。
ただし、センサ230で検出した印字状態に基づいて、印字データを生成し、キャリッジの走査に従って、インクジェットヘッド220が、検出したセンサの位置に到達した際に、生成した印字データでインクジェットヘッド220を駆動する必要がある。このため、従来より一般的に行われているバンドメモリを用いた印字制御ではなく、センサで印字状態を検出しながら、印字データを生成し、更に、キャリッジの走査に従ってインクジェットヘッドを駆動する必要がある。ここで、バンドメモリを用いた印字制御とは、キャリッジの走査前に全ての印字データの生成を完了してバンドメモリに記憶し、印字制御部では、キャリッジの走査と同期してインクジェットヘッドを駆動し、吐出を行って画像を形成するものを意味する。このため、印字データを生成する方向を図6に示し、既に説明した。
一方、図2(b)で示すように、本実施形態では、主走査方向Xに対して、センサ230をインクジェットヘッド220よりも後続する位置に配置した場合を想定して説明する。
図13は、第4の実施形態に係る画像形成装置の機能的構成を示すブロック図である。
メモリ360cは、センサ340で検出された印字状態を色変換部350でインク色のCMY信号に変換したシアン用信号を一時記憶する。メモリ360mは、センサ340で検出された印字状態を色変換部350でインク色のCMY信号に変換したマゼンタ用信号を一時記憶する。メモリ360yは、センサ340で検出された印字状態を色変換部350でインク色のCMY信号に変換したイエロー用信号を一時記憶する。
本実施形態では、前述したように、センサ340をインクジェットヘッド220(図2参照)の上流側に設けるため、インクジェットヘッド220による印字が行われた直後に、センサ340で印字状態が検出される。
センサ340で検出された印字状態の検出信号は、色変換部350でインク色であるCMY信号355に変換される。CMY信号355は、一時的にメモリ360(シアン用メモリ360c、マゼンタ用メモリ360m、イエロー用メモリ360y)に記憶される。メモリ360に記憶された検出信号は、入力画像信号320から色変換部330でインク色であるCMY信号335に変換された印字画像信号と共に印字データ生成部370に入力され、印字データが生成される。
以上述べた通り、本実施形態によれば、キャリッジを走査しながら、センサによる印字状態の検出、印字データの生成、インクジェットヘッドによる印字をリアルタイムに行う必要がない。このため、これらの処理を別々に行うことができる。また、キャリッジの走査に伴って、リアルタイムに印字データを生成するものではないため、図6(a)で示すように、インクジェットヘッドのノズルの配列方向に印字データを生成する必要はなく、従来通り、主走査方向に印字データを生成することができる。これにより、ハードウェアが印字データの生成に対して制約(タイミング、誤差メモリのアクセスに対するレイテンシ等)となる場合が少なく、従来と同様に、バンドメモリを構成して、キャリッジの走査に合わせて印字を制御することができる。
従って、キャリッジの走査に先立って印字データを生成し、バンドメモリに格納された印字データに基づいて印字を行う実施形態にも本発明を適用することができる。
<その他の実施形態>
なお、本実施形態は、複数の機器(例えば、ホストコンピュータ、インターフェース機器、リーダ、プリンタ等)から構成されるシステムに適用しても、1つの機器からなる装置(例えば、複写機、複合機、ファクシミリ装置等)に適用してもよい。
また、本発明は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのコンピュータプログラムのコードを記憶したコンピュータ可読記憶媒体(又は記録媒体)を、システム又は装置に供給してもよい。また、そのシステム又は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み込み実行することに適用してもよい。この場合、記憶媒体から読み込まれたプログラムコード自体が前述の実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記録した記憶媒体は本実施形態を構成することになる。また、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
さらに、記憶媒体から読み込まれたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。その後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も本発明に含まれることは言うまでもない。
また、本実施形態を上述のコンピュータ可読記憶媒体に適用する場合、その記憶媒体には、前述のフローチャートや機能構成に対応するコンピュータプログラムのコードが格納されることになる。
なお、第1乃至第4の実施形態で示したセンサの長さ、配置方法、パス分割数、パス分割比率等は、1つの実施形態を示したものにすぎないため、本発明の構成要件として限定されるものではない。