JP5139870B2 - 燃料電池システム及びそれを用いたクロスリーク検出方法 - Google Patents
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Description
この燃料電池では、アノード電極とアノード側セパレータとの間に形成された燃料ガス流路に燃料ガスとして水素ガスを供給するとともに、カソード電極とカソード側セパレータとの間に形成された酸化ガス流路に酸化ガスとして空気を供給する。これにより、アノード電極で触媒反応により発生した水素イオンが固体高分子電解質膜を透過してカソード電極まで移動し、カソード電極で空気中の酸素と電気化学反応を起こして発電が行われる。
そこで、近年では、燃料電池のコストを低減するために、各セル毎にそれぞれ電圧センサを設置するのではなく、複数の単位セル(例えば、2枚)を1つのセル群とし、これらセル群に対して1つの電圧センサを設置する構成が知られている。この場合、電圧センサにより検出される電圧は、各セル群毎の電圧、つまり複数の単位セルの合計セル電圧として検出される。
そして、誤ってクロスリークの生じていない単位セルを交換することで、単位セルの交換作業や単位セル自体のロスになる一方、クロスリークが発生した単位セルを放置しておくと、単位セルの損傷が段々大きくなり、周囲の単位セルに対してもダメージを受けるという問題がある。
(燃料電池セル)
図2は、セルの断面図である。
図2に示すように、本実施形態の燃料電池1は、固体高分子電解質膜型の燃料電池であり、単位燃料電池としてのセル55を複数積層して構成される燃料電池スタックからなる。セル55は、例えばペルフルオロスルホン酸ポリマー(登録商標「ナフィオン」)等の固体ポリマーイオン交換膜等からなる固体高分子電解質膜51をアノード52とカソード53とで両側から挟み込み、さらにその外側を一対のセパレータ54,54で挟持して形成される。また、各セル55は、燃料ガスとして水素ガス(アノードガス)が供給される水素ガス通路56と、酸化ガスとして酸素を含む空気(カソードガス)が供給される空気通路57と、冷却液が供給される冷却液通路58とを備えている。そして、アノード52で触媒反応により発生した水素イオンが、固体高分子電解質膜51を透過してカソード53まで移動し、カソード53で酸素と電気化学反応を起こして発電する。この発電に伴う発熱により燃料電池1が所定温度を越えないように、冷却液通路58を流れる冷却液で熱を奪い冷却するようになっている。
図1は、本実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
図1に示すように、この燃料電池システム100における燃料電池1は、燃料電池車両(不図示)に搭載されたものであって、上述した燃料電池スタックで構成されている。なお、図1においては、上述したセル電圧モニタ41を1つのみ示している。
燃料電池システム100は、酸化ガスである空気を所定圧力に加圧するスーパーチャージャー等のエアポンプ7を備えている。このエアポンプ7は、酸化ガス供給路8を介して、燃料電池1の入口に接続されている。なお酸化ガス供給路8には、空気の冷却装置や加湿器等(いずれも不図示)を設けることが望ましい。一方、燃料電池1における酸化ガスの排出(出口)側には、背圧制御弁10を備えたカソードオフガス排出路9が接続されている。燃料電池1において発電に供された空気は、カソード53(図2参照)側の生成水と共に、カソードオフガス排出路9を通って希釈器30に供給される。
また、アノードオフガス循環路18からは、水素排出弁21を備えたアノードオフガス排出路22が分岐している。水素排出弁21は、燃料電池1を循環する水素ガス中の不純物(水分や窒素等)の濃度が高くなったとき等、必要に応じて開いてアノードオフガスを排出する。水素排出弁21から排出されたアノードオフガスは希釈器30へ排出され、希釈器30においてカソードオフガスによって希釈される。
上述したセル電圧モニタ41および電流計55は、燃料電池システム100を統括的に制御するECU39に接続されている。
図3は、ECUのブロック図である。
図3に示すように、ECU39は、上述したカソードガス供給停止中に燃料電池1のクロスリークの発生を検出するため、電圧検出手段60と、第1判断手段61と、第2判断手段62と、クロスリーク信号出力手段63と、カソードガス供給停止手段67と、カソードガス除去手段68とを備えている。なお、図示しないがECU39は、後述する各セルペア電圧や各判断結果を記憶するメモリ部も備えている。
第1最低セル電圧検出手段64は、上述したディスチャージ完了後にセル電圧モニタ41から出力された出力信号に基づいて、各電圧センサ40で検出された各セルペアの合計セルペア電圧のうち、合計セルペア電圧が最低となるセルペア(特定セルペア)の合計セルペア電圧を第1最低セルペア電圧として検出する。そして、検出された第1最低セルペア電圧の出力信号を、第1判断手段61及び第2判断手段62に向けて出力する。
第2セル電圧検出手段65は、第1最低セルペア電圧の検出後、またはディスチャージ完了後から所定時間(図5〜7中時間T3)経過後に、セル電圧モニタ41から出力された出力信号に基づいて、各電圧センサ40で検出された合計セルペア電圧のうち、上述した特定セルペアの合計セルペア電圧を第2セルペア電圧として検出する。そして、検出された第2セルペア電圧の出力信号を、第2判断手段62に向けて出力する。
カソードガス除去手段68は、カソードガス供給が停止した際に、電力消費デバイス42にディスチャージ指令信号を出力し、電力消費デバイス42によって上述したディスチャージを行わせる。すなわち、カソードガスの供給を停止した状態で、燃料電池1から電力を取り出し、電力消費デバイス42に消費させる。
次に、本実施形態に係るクロスリーク検出方法について説明する。図4はクロスリーク検出方法を示すフローチャートである。本実施形態におけるクロスリークの検出は、カソードガス供給停止中、つまり車両のアイドル停止中や回生中、イグニッションOFF時等に行うものである。
まず、車両がアイドル停止中や回生中、イグニッションOFF時等になった場合に、カソードガス供給停止手段67からエアポンプ7に向けてエア停止指令信号を出力し、エアポンプ7によるカソードガスの供給を停止させる。
一方、ステップS1の判定結果が「YES」の場合には、カソードガス供給停止中であると判断し、ステップS2に進む。
一方、ステップS2の判定結果が「YES」の場合には、カソード53側がカソードガス欠乏状態であると判断してステップS3に進む。
一方、合計セルペア電圧の検出結果に基づいて、第1最低セル電圧検出手段64により、第1最低セルペア電圧を検出する。具体的には、各セルペアの合計セルペア電圧のうち、最も低い合計セルペア電圧を第1最低セルペア電圧として検出する。そして、これら平均セルペア電圧及び第1最低セルペア電圧をECU39のメモリ部に記憶させておく(ステップS3)。
図5〜7に示すように、時間T1において、カソードガス供給を停止した後、ディスチャージ等を行うことでカソード53側に残存するカソードガスが消費されて、平均セルペア電圧及び最低セルペア電圧が低下する(時間T2)。
図5に示すように、正常時、つまり生成水やクロスリークによる影響がない場合においては、時間T2からさらに時間が経過するにつれ(例えば、図5中T3)、外部からカソード53にカソードガスが侵入して再び発電が行われるので、平均セルペア電圧及び最低セルペア電圧が増加する。
一方、ステップS4の判定結果が「YES」の場合には、クロスリークの可能性有りと判断してステップS5に進む。
一方、ステップS5の判定結果が「YES」の場合には、第1最低セルペア電圧の検出後から所定時間経過したと判断し、ステップS6に進む。
ステップS7の判定結果が「NO」の場合(第2セルペア電圧が第1最低セルペア電圧以上)には、ステップS8に進みクロスリーク故障なしと判断する。クロスリーク故障なしと判断した場合には、クロスリークの検出フローを終了する。
このように、時間T3における最低セルペア電圧が、時間T2における最低セルペア電圧に比べて増加している場合、すなわち最低セルペア電圧が回復した場合には、時間T2における最低セルペア電圧の低下が生成水等による発電性能の低下であったと判断する。
つまり図7に示すように、時間T2における合計セルペア電圧の低下の原因が、クロスリークによるものである場合には、上述したように時間が経過するにつれてアノード52側での反応が増え、逆電位が大きくなる。これにより、時間T3における合計セルペア電圧が、時間T2における合計セルペア電圧に比べてさらに低下している場合には、合計セルペア電圧の低下が発電性能の低下ではなく、クロスリークによるものであると判断することができる。
以上により、クロスリークの検出フローを終了する。
そして、第2セルペア電圧が第1最低セルペア電圧よりも高い場合、つまり合計セルペア電圧が回復した場合には、クロスリーク以外が原因であると判断することで、クロスリークの誤検出を防止できる。
したがって、燃料電池1のコストを低減した上で、クロスリークによるセル55へのダメージを抑えることができる。
これに対して、本実施形態では、セルペア電圧の変化量に基づいてクロスリークを判断することで、水素センサを設ける必要もないため、燃料電池1の低コスト化が図ることができる。また、水素センサによる検出に比べて迅速に、かつ正確にクロスリークを判断することができる。
例えば、上述の実施形態では、2枚のセルをセルペアとして、このセルペア毎の合計セルペア電圧を検出する構成について説明したが、複数枚のセルを1つのセル群として、このセル群毎の合計セル電圧を検出するような構成にしてもよい。この場合、セルの枚数をnとすると、上述したステップS4における判定は、第1最低セル電圧が平均セル電圧の(n−1)/n−αである場合に、クロスリークの可能性ありと判断する。
Claims (7)
- アノードガスとカソードガスとを供給し発電を行うセルを積層して構成された燃料電池スタックと、
前記カソードガスを前記燃料電池スタックに供給するカソードガス供給手段と、
複数枚の前記セルをセル群として、該セル群毎の合計セル電圧を検出するセル電圧検出手段と、を有する燃料電池システムであって、
前記燃料電池スタックへの前記カソードガスの供給を停止するカソードガス供給停止手段と、
該カソードガス供給停止手段により、前記カソードガスの供給が停止されている際に、カソード極に存在する前記カソードガスを除去するカソードガス除去手段と、
該カソードガス除去手段により前記カソードガスを除去した際に、複数の前記セル群のうち前記合計セル電圧が最低となる特定セル群の前記合計セル電圧を第1最低セル電圧として検出する第1最低セル電圧検出手段と、
前記第1最低セル電圧に基づいてクロスリークが発生している可能性があるか否かを判断する第1判断手段と、
該第1判断手段によりクロスリークが発生している可能性があると判断された際に、前記第1最低セル電圧の検出後から所定時間経過後に、前記特定セル群の前記合計セル電圧を第2セル電圧として検出する第2セル電圧検出手段と、
前記第1最低セル電圧と前記第2セル電圧とを比較して、前記第2セル電圧が前記第1最低セル電圧より低い場合には、前記特定セル群においてクロスリークが発生していると判断する第2判断手段と、
該第2判断手段の結果に応じて異常信号を出力するクロスリーク信号出力手段と、を有することを特徴とする燃料電池システム。 - 前記セル群毎の前記合計セル電圧に基づいて、前記燃料電池スタックの平均セル群電圧を算出する平均セル電圧検出手段を有し、
前記第1判断手段は、前記セル群における前記セルの枚数をnとして、前記第1最低セル電圧が前記平均セル群電圧の(n−1)/n以下である場合に、クロスリークが発生している可能性があると判断することを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。 - 前記カソードガス除去手段は、前記燃料電池スタック内部に残存する前記カソードガスをディスチャージさせることにより前記カソードガスを除去することを特徴とする請求項1または請求項2記載の燃料電池システム。
- 前記第2判断手段は、前記第1最低セル電圧と前記第2セル電圧とを比較して、第2セル電圧が前記第1最低セル電圧以上である場合には、クロスリークの発生はないと判断することを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の燃料電池システム。
- 前記クロスリーク信号出力手段は、前記第2判断手段により所定回数以上クロスリークが発生していると判断された場合に、前記特定セル群におけるクロスリークの発生を確定して異常信号を出力することを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の燃料電池システム。
- 前記クロスリーク信号出力手段は、前記第2判断手段により前記第2セル電圧が前記第1最低セル電圧に比べ所定値以上低下していると検出された場合には、前記第2判断手段により前記所定回数以上クロスリークが発生していると判断されていなくても、前記特定セル群におけるクロスリークの発生を確定し、異常信号を出力することを特徴とする請求項5に記載の燃料電池システム。
- アノードガスとカソードガスとを供給し発電を行うセルを積層して構成された燃料電池スタックと、
前記カソードガスを前記燃料電池スタックに供給するカソードガス供給手段と、
複数枚の前記セルをセル群として、該セル群毎の合計セル電圧を検出するセル電圧検出手段と、を有する燃料電池システムを用いて前記セルのクロスリークを検出するクロスリーク検出方法であって、
前記燃料電池スタックへの前記カソードガスの供給を停止するカソードガス供給停止ステップと、
前記カソードガスの供給が停止されている際に、カソード極に存在する前記カソードガスを除去するカソードガス除去ステップと、
該カソードガス除去ステップにより前記カソードガスを除去した際に、複数の前記セル群のうち前記合計セル電圧が最低となる特定セル群の前記合計セル電圧を第1最低セル電圧として検出する第1最低セル電圧検出ステップと、
該第1最低セル電圧検出ステップで検出した前記第1最低セル電圧に基づいてクロスリークが発生している可能性があるか否かを判断する第1判断ステップと、
該第1判断ステップによりクロスリークが発生している可能性があると判断された際に、前記第1最低セル電圧の検出後から所定時間経過後に、前記特定セル群の前記合計セル電圧を第2セル電圧として検出する第2セル電圧検出ステップと、
前記第1最低セル電圧と前記第2セル電圧とを比較して、前記第2セル電圧が前記第1最低セル電圧より低い場合には、前記特定セル群においてクロスリークが発生していると判断する第2判断ステップと、
該第2判断ステップの結果に応じて異常信号を出力するクロスリーク信号出力ステップと、を有することを特徴とするクロスリーク検出方法。
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