JP5139585B1 - 子牛用飼料 - Google Patents
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Abstract
ルーメンアシドーシスを緩和して糞便性状を改善しつつ、発育成績を向上させ得る3ヶ月齢以下の子牛用の飼料及び飼育方法を提供する。
【解決手段】
NDFを乾物換算で15重量%以上含むと共に、りんごジュース粕を含み、デンプンを乾物換算で20〜40重量%含む、3ヶ月齢以下の子牛用飼料とする。
【選択図】なし
Description
例えば、Stoboらは、トウモロコシ等の穀物を主体とする濃厚飼料を多く給与することでルーメン繊毛の伸長が促されることを報告している(非特許文献1)。
一方、わが国では、全粒えん麦などのルーメンに物理的な刺激を付与する上で好適な穀物を安価で安定的に入手できないため、生後間もない時期から子牛に乾草などの粗飼料を濃厚飼料と共に給与する飼育方法が一般的である。このような方法においては、粗飼料によって繊維質が給与されるため、濃厚飼料にできるだけ繊維質を配合せずに子牛の発育に対する悪影響を回避するのが一般的である。但し、子牛の粗飼料に対する嗜好性は個体差が大きく、ルーメンアシドーシス等の発生を安定的に抑制できていないのが現状である。
また、離乳後間もない時期においてもルーメンは発達途上にあるため、少なくとも4ヶ月齢までは繊維の多いバイプロダクトの使用を制限すべきであり、0〜2ヶ月齢では乾草無給与で飼料中中性デタージェント繊維(以下、NDFということがある)含量を現物換算で15重量%以下とし、2〜4ヶ月齢では乾草給与量を5〜10重量%として総飼料中(乾草と濃厚飼料を含む)のNDF含量を19重量%以下にすることを推奨している(非特許文献9)。
例えば、乳牛に、乾物換算でDDGSを15重量%配合した飼料を給与した試験で、DDGSの配合が、ルーメン内のプロトゾア数、揮発性脂肪酸(VFA)の発生量及び乳量に影響せず、乳脂率をやや低下し、乳の無脂固形分率をやや増加することが報告されている(非特許文献17)。また、ホルスタイン種去勢牛、黒毛和種去勢牛及び交雑種去勢牛に、乾物換算でDDGSを15重量%以下の範囲で配合した飼料又は無配合の飼料を給与した比較試験で、ホルスタイン種去勢牛では、DDGSを配合した飼料を給与したグループが無配合の飼料を給与したグループに比べやや日増体量が少なく、交雑種去勢牛では、DDGSを配合した飼料を給与したグループと無配合の飼料を給与したグループに、発育成績と枝肉成績に差はなく、黒毛和種去勢牛では、DDGSを配合した飼料を給与したグループで皮下脂肪がより厚くなり、脂肪融点が低下し枝肉断面が崩れ易くなったが、概ね発育成績や枝肉成績は良好であったことが報告されている(非特許文献13)。
この点、乾燥りんごジュース粕のリンゴ酸含量は、280mg/100g程度であり、飼料中に配合される乾燥りんごジュース粕の含有量を考慮すると、Liu等が有効性を報告したリンゴ酸含有量に比べ乾燥りんごジュース粕に由来するリンゴ酸の含有量は顕著に少ない。従って、これらの文献での知見によれば、りんごジュース粕という形態でリンゴ酸を給与することは、所望の作用効果を期待するには不適切であると理解される。
また、好ましい実施形態の飼料では、糖類を乾物換算で7〜12重量%、溶解性蛋白質を乾物換算で5〜9重量%、デンプンを乾物換算で25〜30重量%含む。
また、本発明の飼料は、その一の実施の形態において、粗飼料と組み合わせて用い、粗飼料を給与されている子牛を対象とすることができる。
本明細書において「中性デタージェント繊維(NDFという)」とは、セルロース、へミセルロース、及び/又はリグニンからなる繊維性物質(これらは細胞壁を構成する主な成分である)を意味する。NDF値は、耐熱性α−アミラーゼを加えながら、中性デタージェント溶液で試験飼料を煮沸した残渣から灰分を除いた画分によって求められる。測定方法は、飼料分析基準(非特許文献22)に準ずる。
また、本明細書において「非繊維性炭水化物(NFC)」とは、中性デタージェント溶出部分に含まれる炭水化物を意味し、主にデンプン、糖、有機酸、ペクチンからなる。NFC値は、乾物重量−(NDF+粗蛋白質+粗脂肪+粗灰分)により求められ、測定方法は、飼料分析基準(非特許文献22)に準ずる。
また、本明細書において「溶解性蛋白質」とは、39℃のリン酸ホウ酸塩緩衝液の中で1時間以内に溶解する粗蛋白質を意味する。
また、本願明細書で用いられる「NDF供給原料」とは、NDF含有量が乾物換算で30重量%以上の植物体又は植物体の加工副産物からなる原料を意味する。主な物としては、穀物又はその他の種子の加工副産物がある。
また、本願明細書で用いられる「粗蛋白質供給原料」とは、NDF含有量が乾物換算で30重量%未満であって、且つ粗蛋白質を乾物換算で30重量%以上含有する植物体又は植物体加工副産物からなる原料を意味する。
また、本願明細書で用いられる「デンプン供給原料」とは、NDF含有量が乾物換算で30重量%未満であって、且つデンプンを乾物換算で45重量%以上含有する植物体又は植物体加工副産物からなる原料を意味する。主な物としては、穀物又は穀物の加工副産物がある。
また、本願明細書において「穀物」との用語は、狭義の意味で用い、稲科の植物の種子に由来する原料の意味で用いる。従って、大豆などのマメ科、アマなどのアマ科、綿などのアオイ科等、他の科に属する植物の種子を含まない。
後述する実施例で実証する通り、りんごジュース粕は、牛のルーメン内のセルロース分解菌を選択的に増殖する作用を有し、NDFの消化を効率的に助長すると考えられ、NDFを多く含有する飼料であっても子牛の成育を向上させることができる。そして、NDFの高い含有量とデンプンの含有量の低減化は、ルーメンアシドーシス及び便性状の改善をもたらす。
りんごジュース粕サイレージは、サイレージ化により一部の糖類がエタノールに変換されている飼料であるのに対して、新鮮りんごジュース粕は、搾汁後の残渣そのものであり、乾燥りんごジュース粕は、乾燥により水分を20重量%以下としたりんごジュース粕である。サイレージ化を伴わない後2者のりんごジュース粕は、グルコース、フルクトース、スクロースなどの糖類を多量に含有する点で前者と異なる。
りんごジュース粕に含まれる糖類は、ルーメン内で細菌に利用され、多くの酪酸を発生させるが、この酪酸は子牛のルーメン絨毛を発達させる効果を有する。このため、りんごジュース粕により糖類が供給されると、子牛は絨毛の発達を通じてルーメン内で産生される発酵酸を効率的に吸収・利用できるようになる。このような点からは、新鮮りんごジュース粕、及び乾燥りんごジュース粕がより好ましく、これらのりんごジュース粕で穀物等のデンプン供給原料の一部を代替して飼料中のデンプンを低減することが好ましい。また、飼料調製時の扱い易さや保存性の点では乾燥りんごジュース粕が特に好ましい。
もっとも、後述する実施例で実証する通り、糖類としてグルコースのみを利用した場合と比較して、本発明のようなりんごジュース粕を配合した飼料では、ルーメン内のセルロース分解菌をより選択的に増殖することができ、繊維消化率も高い。従って、本発明の飼料による効果が単純に糖類の含有量を増大させたことによりもたらされたものではない点には留意が必要である。
上述したりんごジュース粕の存在下でこの範囲のNDFを含有すると、便質を改善するばかりか子牛の成長を向上することができる。
この点で、本発明の飼料では、とうもろこし、小麦、大麦、精白米等の従来の子牛用濃厚飼料で用いられている穀物に由来するエタノール副産物を、主要なNDF供給原料として配合することが好ましく、中でも、りんごジュース粕と組合せた際に便質改善、発育向上及び嗜好性の点で優れるとうもろこしジスチラーズグレインソリュブル(以下、DDGSという)を主要なNDF供給原料として配合することが特に好ましい。
このような点から、本発明の飼料では、デンプンを乾物換算で飼料中20〜40重量%含むことが好ましく、25〜35重量%含むことがより好ましく、25〜30重量%含むことがより好ましく、25〜28重量%含むことが特に好ましい。
本発明の飼料では、生育の向上の点でとうもろこしを主要な穀物とすることが好ましく、とうもろこしを、乾物換算で全穀物中50重量%以上含むことが好ましく、80重量%〜95重量%含むことがより好ましい。同様の観点で、とうもろこしを飼料中乾物換算で15重量%以上含むことが好ましく、20重量%〜35重量%含むことがより好ましい。
本発明の飼料に配合される粗蛋白質供給原料としては、例えば、大豆、大豆粕(加糖加熱処理又は加湿加熱処理等を施した大豆粕を含む)、菜種粕、アマニ粕、コーングルテンミール、濃縮大豆蛋白、小麦グルテン、小麦グルテン酵素分解物等を挙げることができる。
一般的に、大豆は、粗蛋白質と粗脂肪の含有率が多く、生(非加熱)の状態では溶解性蛋白質を多く含む。大豆粕は、粗たんぱく質を多く含み、一方、繊維質、非繊維性炭水化物、及び粗脂肪の含有率が比較的低い。菜種粕は、粗蛋白質を多く含み、NDFを比較的多く含むが、甲状腺肥大を誘発する抗栄養因子であるグルコシノレートを含むため、子牛用飼料へ多量に使用するのは好ましくない。アマニ粕は、粗蛋白質及び溶解性蛋白質を多く含み、NDFも比較的多く含む。コーングルテンミール、濃縮大豆蛋白及び小麦グルテンは、粗蛋白質含有量が非常に高いが、溶解性蛋白質は少ない。小麦グルテン酵素分解物は、粗蛋白質及び溶解性蛋白質を多く含む。
本発明の飼料においては、これらの原料を、それぞれの成分組成等を考慮の上、任意の量で配合すればよく、粗蛋白質供給原料全体としては、粗蛋白質を前述した一定レベルで確保するとともに、NDF等の主に他の原料に由来する成分の含有量も一定のレベルで確保する観点から、乾物換算で飼料中10〜50重量%含有することが好ましく、20〜45重量%含有することがより好ましく、25〜40重量%含有することが特に好ましい。
ビタミンとしては、例えばビタミンA、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB6、ニコチン酸、パントテン酸、葉酸、ビオチン等があり、0〜0.1重量%配合してもよく、好ましくは、0.0005〜0.05重量%配合される。
本発明の飼料は、通常、生後1週目から給与することができる。粗飼料も給与する場合においては、生後1週目から粗飼料の給与を開始することができるが、生後2ヶ月までの一部の期間で給与する場合も有り得る。
なお、乾草などの粗飼料を給与する場合、仮に濃厚飼料:乾草=9:1の割合で摂取したとすると、子牛は乾物換算で6〜7重量%程度のNDFを乾草から摂取することとなる。従って、NDF16重量%の飼料中に同じ割合で粗飼料を配合したものとして換算すると、NDFを20重量%超える量含有する飼料に相当することとなる。しかし、本発明の飼料では、りんごジュース粕により繊維質の消化が助長されると考えられ、哺乳期の子牛に上記のような比較的多くの繊維質を給与することとなっても、消化不全による生育不良を生じることがなく、粗飼料摂取の個体差に起因する、ルーメンアシドーシスや下痢の発生といった問題も軽減することができる。
また、乾草などの粗飼料は、物理的にルーメンを刺激して反芻を促す作用を有するので、粗飼料を給与せずに本発明の飼料を給与するよりも、本発明の飼料を粗飼料と組合せて用いる方が、アシドーシスの緩和や下痢の改善といった点でより有効である。本発明の飼料を粗飼料と組合せて用いる場合には、本発明による飼料と粗飼料との総量(乾物重量換算)に対して、5〜30重量%の粗飼料を組合せて用いることが好ましく、5〜20重量%の粗飼料を組合せて用いることがより好ましい。この場合、月齢3ヶ月までの本発明による飼料と粗飼料との総量(乾物重量換算)に対する粗飼料の平均摂取量は、通常5〜25重量%となる。
また、代用乳の給与量が少ない哺乳期の子牛の場合、或いは離乳期(生後2〜3ヶ月齢)の子牛では、本発明の飼料のような子牛用飼料の摂取量が増えるため、一般的には、ルーメン内のアシドーシス等の問題が生じやすい状態となる。このため、本発明の飼料は、このような状況の飼料としても有益である。
約3週齢のホルスタイン種雄子牛22頭を11頭ずつ2群に分け、DDGS10重量%と共に乾燥りんごジュース粕を配合した飼料を、子牛の発育成績、糞便性状及びルーメンpHに及ぼす影響について評価した。飼料の形態はペレットとし、配合割合及び成分値(設計値)は表1の通りとした。
注)成分値は設計値(乾物中)。NDFについては、「日本標準飼料成分表(2009年版)」(非特許文献23)の値を適用し、「日本標準飼料成分表(2009年版)」に記載のない原料は飼料分析基準(非特許文献22)に準じた分析方法による分析値を適用した。デンプン、糖および溶解性蛋白質は、CPM−Dairyにて計算した。
試験期間は8週間とし、試験開始から4週目までは個体別に単飼ペンに収容し、粗蛋白質24重量%の代用乳を定量給与(250g×2回/日/頭)し、以後は離乳させ群飼とした。哺乳期間は1日2回、朝・夕の給餌時に個体別に糞便性状を記録した。比較例1及び実施例1の各飼料は、試験期間を通じて不断給与とした。粗飼料は細断したチモシー乾草とし、2週目から給与を開始した。6週目に、糞便を採取し水分を測定し、千葉共済式胃汁採取器(富士平工業(株))を用いてルーメン液を採取しpHメーター(PH82 横河電機株式会社)にてpHを測定した。
哺乳期間の糞便性状については、実施例1の飼料を給与したグループで正常便の割合が多く軟便と下痢・水様便の割合が少なかった。また、6週目における糞便水分含量も、実施例1の飼料を給与したグループの方が低かった。更に、ルーメン液pHは、実施例1の飼料を給与したグループの方が高く、亜急性ルーメンアシドーシスの基準となるpH5.8以下の頭数及び重度のルーメンアシドーシスの基準となるpH5.5以下の頭数は、何れも実施例1の飼料を給与したグループの方が少なかった。
これらの結果から、DDGSと共に乾燥りんごジュース粕を配合すると、NDF含量が乾物換算で19.7重量%であり、デンプンの含有量が乾物換算で28.8重量%(なお、穀物の含有量は34.52重量%)あっても、子牛の発育成績はむしろ向上し、さらに下痢・軟便は減少し、ルーメンアシドーシスは緩和されているものと考えられた。
約3週齢のホルスタイン種雄子牛15頭を7頭(実施例2)と8頭(実施例3)の2群に分け、乾燥りんごジュース粕を配合した飼料においてNDF含有量等の組成を変更した際の子牛の発育成績及び糞便性状に及ぼす影響について評価した。飼料の形態はペレットとし、配合割合及び成分値(設計値)は表6の通りとした。
注)成分値は設計値(乾物中)。NDFについては、「日本標準飼料成分表(2009年版)」(非特許文献23)の値を適用し、「日本標準飼料成分表(2009年版)」に記載のない原料は飼料分析基準(非特許文献22)に準じた分析方法による分析値を適用した。デンプン、糖および溶解性蛋白質は、CPM−Dairyにて計算した。
試験期間は9週間とし、試験開始から5週目までは個体別に単飼ペンに収容し、粗蛋白質24重量%の市販代用乳(商品名:「優優ミルク」日本配合飼料株式会社製)を定量給与(250g×2回/日/頭)し、以後は離乳させ群飼とした。哺乳期間は1日2回、朝・夕の給餌時に個体別に糞便性状を記録した。実施例2及び3の各飼料及び細断したチモシー乾草は試験期間を通じて不断給与とした。
これらの結果から、乾燥りんごジュース粕を配合する場合には、NDF含量を乾物換算で19.8重量%まで高めると、子牛の発育成績に悪影響を及ぼすことなく、下痢・軟便を減少させられることが分った。
なお、NDF含有量を乾物換算で16.3重量%とした実施例2のグループと、NDF含有量が乾物換算で16.9重量%と同水準であった前述の比較例1のグループを比較した場合、実施例2のグループで軟便及び下痢・水様便の発生が多く、NDF含有量を乾物換算で19.8重量%とした実施例3のグループと、NDF含有量が乾物換算で19.7重量%と同水準であった前述の実施例1のグループを比較した場合、実施例3のグループで軟便及び下痢・水様便の発生が多い傾向であった。この点、哺乳期間の試験飼料の摂取量は、比較例1のグループで633±284g/日であるのに対し、実施例2のグループでは734±210g/日であり、実施例1のグループで762±242g/日であるのに対し、実施例3のグループで798±203g/日であり、NDF含有量が同水準のグループ間で比較すると本試験に供した子牛の方が哺乳期間の試験飼料の摂取量は多く、そのため軟便及び下痢・水様便の発生が増加したものと思われる。哺乳期間の子牛用飼料の摂取量が多かったのは供試牛の健康状態がより良好であったためであり、実際に哺乳期間の日増体量は実施例2のグループで0.77±0.16kg/日、実施例3のグループで0.80±0.08kg/日と、それぞれ比較例1及び実施例1のグループに比べ高く標準偏差は小さかった。
実施例3のグループは、実施例2のグループよりも試験飼料の摂取量が多かったにも関わらず糞便性状に優れており、これは乾燥りんごジュース粕とDDGSを同時に配合し、NDF含有量を高めデンプン含有量を低めたためであると推察される。従って、本実験においても乾燥りんごジュース粕とDDGSを同時に配合することの有用性が示されている。
哺乳期子牛用飼料の摂取量が比較的多い(100g/日以上)約3週齢のホルスタイン種雄子牛7頭を供試し、カフェテリア方式にて比較例1と実施例1の飼料を自由選択させた嗜好性比較試験を4日間行った。結果を以下に示す。
以上より、乾燥りんごジュース粕と共にDDGSを配合した飼料が、これらの何れか1つを欠く飼料に対して、子牛の嗜好性を向上させる点で優位性を有することが示された。
ルーメン液を用いたバッチ培養法により、ルーメン内の飼料消化性に及ぼす影響について、乾燥りんごジュース粕と他の糖供給原料とを比較した。
ルーメン液は、チモシー乾草を6kg/日、表12に示す組成の市販配合飼料を4kg/日を朝(9:30)と夕(17:30)に等量ずつ分けて給与したホルスタイン種雌成牛から、千葉共済式胃汁採取器(富士平工業(株))を用いて採取した。
注)成分値は設計値(乾物中)。NDFについては、「日本標準飼料成分表(2009年版)」(非特許文献23)の値を適用し、「日本標準飼料成分表(2009年版)」に記載のない原料は飼料分析基準(非特許文献22)に準じた分析方法による分析値を適用した。デンプン、糖および溶解性蛋白質は、CPM−Dairyにて計算した。
培養終了後、培養液pHをpHメーター(F−22 (株)堀場製作所)にて測定し、フィルターバッグの乾物重量を測定し乾物消失率(培養前乾物重量−残存乾物重量/培養前乾物重量)を算出した。結果を表14に示す。
また、乾燥りんごジュース粕と他の糖供給原料との比較では、表14に示す通り、対照区に比べ、乾燥りんごジュース粕を添加した試験区で乾物消失率が向上し、アビザイム1500を添加したポジティブコントロールと略同じレベルの乾物消失率であった。一方で、重曹、D−グルコース及び乾燥ホエーを添加した試験区では、対照区に比べ、乾物消失率の向上が認められなかった。
以上の結果より、乾燥りんごジュース粕は、消化酵素製剤に匹敵しうる、ルーメン内消化促進効果を有することが示唆された。また、乾燥りんごジュース粕に含まれる成分のうち、少なくとも、セロビオース、グルコース、炭酸水素ナトリウム、及びラクトース以外の成分が消化促進効果に寄与していると考えられ、グルコース等の糖を給与することに対する優位性が示された。
ルーメン液を用いたバッチ培養法により、乾燥りんごジュース粕がルーメン内の飼料消化性及びルーメン細菌叢に及ぼす影響を検討した。
ルーメン液の採取及びバッチ培養法は、前述と同様に実施した。
*1:牛は、通常固形飼料摂取量の5倍程度の水を飲む。本実験では培養液が30mLであるため、その1/5が約6000mgであり、200mgは固形飼料の3.3%に相当する計算となる。従って、実際の飼料でのりんごジュース粕供与量を十分反映する条件であると考えられる。なお、30mLの培養液への200mgのりんごジュース粕の添加は、リンゴ酸換算値では、約0.14mMに相当する。
飼料の保存性を評価するため、インキュベーター内でカビが生えるまでの日数を調査した。飼料の形態はペレットとし、配合割合及び成分値(設計値)は表16の通りとした。
注)成分値は設計値(乾物中)。NDFについては、「日本標準飼料成分表(2009年版)」(非特許文献23)の値を適用し、「日本標準飼料成分表(2009年版)」に記載のない原料は飼料分析基準(非特許文献22)に準じた分析方法による分析値を適用した。デンプン、糖および溶解性蛋白質は、CPM−Dairyにて計算した。
比較例2と実施例4の飼料は300mLビーカーに各100g入れ、開口部を硫酸紙で覆い、インキュベーター内に保管した。保管時の温湿度の日内変動を再現するため、インキュベーターは24時間を1サイクルとして平均温度25℃、平均相対湿度80%となるように温度23〜27℃、相対湿度74〜87%の範囲で変動させた。各例の飼料は1日1回、目視でカビ発生の有無を確認し、保管開始時とカビ発生日に水分と水分活性を測定した。各例の飼料は1mmメッシュで粉砕し、飼料30gに脱イオン水60mLを加えよく攪拌し、1時間室温にて静置した後、pHメーター(F−22 (株)堀場製作所)でpHを測定した。結果を表17に示す。
以上より、乾燥りんごジュース粕と共にDDGSを配合し、NDF含有量を乾物換算で19.6重量%まで高め、穀物(とうもろこし+マイロ+小麦粉)含有量を34.32重量%、デンプン含有量を乾物換算で28.3重量%まで低減させた飼料は、カビの発生が遅く保存性に優れることが示された。
Claims (17)
- 乾物換算で15〜25重量%の中性デタージェント繊維と、乾物換算で20〜40重量%のデンプンと、りんごジュース粕とを含む、3ヶ月齢以下の子牛用飼料。
- 前記中性デタージェント繊維の含有量が、乾物換算で17重量%以上である、請求項1に記載の子牛用飼料。
- 前記中性デタージェント繊維の含有量が、乾物換算で19重量%以上である、請求項1又は2に記載の子牛用飼料。
- 前記中性デタージェント繊維の含有量が、乾物換算で22重量%以下である、請求項1〜3の何れか1項に記載の子牛用飼料。
- 糖類を乾物換算で7〜12重量%含む、請求項1〜4の何れか1項に記載の子牛用飼料。
- 前記乾燥りんごジュース粕を、乾物換算で飼料中5重量%〜23重量%含む、請求項1〜5の何れか1項に記載の子牛用飼料。
- 前記乾燥りんごジュース粕を、乾物換算で飼料中9重量%〜20重量%含む、請求項1〜6の何れか1項に記載の子牛用飼料。
- 溶解性蛋白質を乾物換算で5〜9重量%含む、請求項1〜7の何れか1項に記載の子牛用飼料。
- デンプンを飼料中25〜30重量%含む、請求項1〜8の何れか1項に記載の子牛用飼料。
- トウモロコシジスチラーズグレインソリュブルを、乾物換算で飼料中3〜20重量%含む、請求項1〜9の何れか1項に記載の子牛用飼料。
- 大豆粕を、乾物換算で飼料中10〜45重量%含む、請求項1〜10の何れか1項に記載の子牛用飼料。
- 30〜45重量%(乾物換算)の穀物と、20〜40重量%(乾物換算)の大豆粕と、5〜15重量%(乾物換算)のトウモロコシジスチラーズグレインソリュブルと、10〜15重量%(乾物換算)の乾燥りんごジュース粕とを含み、17〜25重量%のNDF(乾物換算)と、25〜30重量%(乾物換算)のデンプンと、6〜9重量%(乾物換算)の溶解性蛋白質と、7〜11重量%(乾物換算)の糖類とを含む、請求項1に記載の子牛用飼料。
- 炭素数4以下のモノカルボン酸又はその塩を含有する、請求項1〜12の何れか1項に記載の子牛用飼料。
- プロピオン酸カルシウム及びプロピオン酸ナトリウムからなる群から選ばれた少なくとも1種を含有する、請求項13に記載の子牛用飼料。
- 粗飼料と組み合わせて給与するための、請求項1〜14の何れか1項に記載の子牛用飼料。
- 請求項1〜15の何れか1項に記載の飼料を、少なくとも生後1週目から3ヶ月齢までの一部の期間で給与する子牛の飼育方法。
- 少なくとも生後1週目から2ヶ月齢までの一部の期間で粗飼料も給与する、請求項16に記載の飼育方法。
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