JP5134151B1 - 上衣 - Google Patents

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【課題】
肩甲骨から腕のつけ根の後ろ側を立体的に仕上げることにより腕の動きを円滑にし、かつ、前傾姿勢での着用時における前面の襟ぐりのたわみを解消し、襟ぐりのたわみを解消した上で、襟ぐりを大きく開けることにより着脱の利便性を図ることが出来る上衣の提供。
【解決手段】
上衣は前身頃と後身頃を備え、肩甲骨から腕のつけ根の後ろ側を立体的に仕上げるため、後身頃の横幅を拡大し、拡大した寸法に応じて後身頃の襟ぐり線と肩線に沿ってタックを形成し、かつ、前傾姿勢での着用時にできる襟ぐりのたわみを解消するため、前身頃の前中心線上の襟ぐり付近にタックを上向きに形成する。前身頃のタックは襟ぐりと身体の間に出来る空間を減らし襟ぐり線を身体にフィットさせるため、襟ぐりを大きく開けることが可能となり着脱の利便性が図れる。
【選択図】図1

Description

本発明は、背の丸い人(特に高齢者)に適した上衣に関するものである。
従来、背の丸い人に対応した衣服としてはオーダーメイドによるものがあった。しかし、オーダーメイドの商品は個人個人に合わせて作られるため、製作に時間がかかり高価である。図7に示す「非特許文献1」39ページに紹介されている上衣には次のような問題点が考えられる。
(a)セットインスリーブの袖であるため、腕の可動範囲が限られる高齢者には着用時に手が通しにくく、身体にきちんと合っていないと、手を動かすたびに袖つけの縫い目が肩に当たって着心地が悪い。セットインスリーブはデザイン性が高いが、袖が下向きについているため、手は前後左右上下のどの方向にも動かしにくいものである。
(b)食事時、靴を履くとき、杖をつくとき、手すりを持つとき等、手を前後左右に動かすときはヨークの肩先部分がひきつれて動きにくい。
(c)着用時間が長くなるにつれ、後ろの襟ぐりまわりに横じわが出来るため、首まわりに違和感が生じ着心地が一層悪くなる。
(d)背の丸味をカバーするためのヨーク下のタックやギャザーの量が多いと体型や動きに対する対応性は増す半面、背中の丸味を強調してしまい、その上、ゆとりを必要以上につけると重みがかかって、後ろにひっぱられるような感じになる。
(e)後身頃、袖つけ等が身体に合っていないと、前面の首回りに不要なゆとり生まれるため、後ろに引っ張られ首が締めつけられるような窮屈感がある。
(f)前傾姿勢の状態での着用では、後身頃の着丈が十分でなく、裾が引き上がり見た目を整えることができない。
また、既製品では、背が丸い人に対して、背面に縦方向にゆとりをとったもの(「特許文献1」)はあるが、背面の横方向のゆとりについて配慮したものがないため、腕を前後左右に動かすときの肩甲骨から腕のつけ根の後ろ側に窮屈感があり、日常生活の動きに支障をきたすことから長時間着用すると着心地が悪い。
特に背が丸くなるような高齢者は、ボタンを留める等の手先の細かい作業が困難になっていくにもかかわらず、着脱を容易にするための対策として前開きのものが多い。また、着脱を容易にするために襟ぐりを大きく開けると、前傾姿勢になったときに前面の襟ぐりと身体の間に大きな空間が出来、だらしなく見えて不快である。
特開2005−105503号公報。
ユニバーサルファッションおしゃれで着やすい介護服 ブティック社
本発明は、肩甲骨から腕のつけ根の後ろ側を立体的に仕上げ、ゆとりを持たせることにより、背の丸い人(特に高齢者)の腕の前後左右の動きを円滑にするとともに、前傾姿勢になっても前面の襟ぐり線を身体にフィットさせることにより襟ぐりのたわみを解消することで着用時の快適さを保ち、かつ、前面の襟ぐりのたわみを解消した上で、襟ぐりを大きく開けることにより着脱の利便性を図る上衣を提供しようとするものである。
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、前身頃と後身頃を備え、後身頃の襟ぐり線と肩線に沿ってタックを形成することにより、肩甲骨から腕のつけ根の後ろ側を立体的に仕上げ、かつ、前身頃の前中心線上の襟ぐり付近にタックを上向きに形成した上衣である。
本発明によれば、肩甲骨から腕のつけ根の後ろ側を立体的に仕上げ、ゆとりを持たせることにより、背の丸い人(特に高齢者)の腕の前後左右の動きを円滑にすることができるとともに、前傾姿勢になっても前面の襟ぐり線を身体にフィットさせることができるため、襟ぐりのたわみを解消し着用時の快適さを保ち、その結果、前面にたわみが出来る恐れを解消した上で、襟ぐりを大きく開けることが可能になり、腕や手の動きの悪い高齢者でも容易に着脱ができる。
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1および図2は、本発明の上衣の一実施例を示す図であり、図1は上衣の前身頃を示す概略前面図であり、図2は後身頃を裁断した状態の右半分の概略背面図である。上衣は前身頃1と後身頃2が縫い合わされることにより形成される。前身頃1と後身頃2の縫い合わせは、左右の前身頃の肩線3と後身頃の肩線4とが縫い合わされるとともに、前身頃の脇線5と後身頃の脇線6、前身頃の袖下線7と後身頃の袖下線8が縫い合わされることにより形成される。
前身頃1には前中心線上の襟ぐり付近にタック10〜12を上向きに3本形成する。
後身頃2は、背中の上部を立体的に仕上げるために必要なタック分の生地を含めて裁断する。図2において、点線が同じ寸法の特別に背の丸くない体型の人用に裁断した場合の生地の輪郭を示す。すなわち31は通常の袖先線、16は通常の肩線、15は通常の後中心線、28が通常の裾線である。この実施例では、9が実際の袖先線、4が肩線、14が後中心線、24が裾線となり、幅拡大部17、襟ぐり拡大部18、肩線拡大部19が出来、背面の横幅が広がる。上記の広げた寸法に相当する大きさのタックを以下のように分散して形成する。すなわち、襟ぐりにタック20を、肩線にタック21とタック22をそれぞれ形成する。ここで幅拡大部17の長さ+襟ぐり拡大部18の長さ+肩線拡大部19の長さ=タック20の長さ+タック21の長さ+タック22の長さとなる。従ってタック20、21、22の形成後は通常の襟ぐり線23、通常の肩線16と同寸で仕上がり、袖先線も通常の袖先線31の位置で仕上がる。
また、背面の長さの調節として、通常の裾線28から実際の裾線24まで下にずらせ後ろ下がり部24−Aを形成する。
前身頃1のタック10〜12はそれぞれ前中心線におけるタックの断面図である図3(ロ)、図3(ハ)、図3(ニ)に示すようにとる。タックをとることにより前傾姿勢になったときに出来る襟ぐりと身体の間の空間を減らし襟ぐり線25を身体にフィットさせ身だしなみを整えることができるため、襟ぐりを大きく開けることが可能になり、着脱の利便性を図ることができ、かつ、前に重みが加わることにより上衣が後ろに引っ張られることがないため首回りが苦しくなく快適である。また、タック10〜12を形成することにより前身頃1の裾線26の前中心線付近が引き上がるが、着用時には着用者が前屈みになるため目立って裾線を乱すものではない。
本実施例では図3に示す通り、前中心線上に襟ぐり線25から約1.5cm下方に上下の長さ約1cmのタック10を、タック10から約1cm下方に上下の長さ約1cmのタック11を、タック11から約1cm下方に上下の長さ約0.7cmのタック12を上向きに3本形成する。
後身頃2のタック20〜22はそれぞれ出来上がり線におけるタックの断面図である図4(ロ)、図4(ハ)、図4(ニ)に示すようにとる。タック20は主として背中が丸くなることにより後身頃の襟ぐり付近に出来やすいしわを消すためのものであり、タック21、タック22は主としてゆとりを持たせるためのものである。
本実施例ではタック20は実際の襟ぐり線23のほぼ中央にとり、肩線4上に襟ぐりから肩先に向かってタック21、タック22をとる。
タック20〜22をとることで立体的に仕立て上げ、肩甲骨から腕のつけ根の後ろ側に丸味のあるゆとりを持たせ、腕の前後左右の動きを円滑にし、快適な着用感を得ることができる。
本実施例では図4に示す通り、タック20は後中心線14から肩先に向かう長さ約1cmのタックとし、タック21は肩線4上に襟ぐりから肩先の方向に約3cmのところに後中心線に向かう長さ約1cmのタックとし、タック22はタック21からさらに肩先の方向に約3cmのところに後中心線に向かう長さ約0.8cmのタックとする。
後身頃2は、通常の裾線28より概ね2cmの長さの後ろ下がり部24−Aを設けることにより、前傾姿勢になったときの前身頃1と後身頃2との裾ラインのバランスを整える。
本実施例は下記の理由により身頃からの裁ちだしの袖を用いている。
(a)腕の可動範囲が限られた人(加齢により柔軟性がなくなった人)の着脱が容易になる。
例えば、後身頃の襟ぐりを持って後頭部を通るように前に引っ張ることにより簡単に脱ぐことができる。
(b)特に大きい人、又は特に小さい人以外は着丈、袖丈の同一サイズでの対応が可能であるため、直しの必要がなく購入後すぐ着用できる。
(c)幅広いサイズに対応できるため、量産することによる低価格での提供が可能となる。
(d)着脱の容易さ、サイズの対応の幅をもたせたまま、袖の長さ、袖口をアレンジすることができる。前身頃の袖下線7と後身頃の袖下線8を縫い合わせないことで診療時等の場面で想定される袖の上げ下げの利便性を考慮したり、袖口を狭めることで防寒・安全面に配慮したりと、機能を持たせ、デザインの幅を広げオシャレを楽しむことができる。
(e)着物のリフォームへの対応が可能である。
上衣は出来るだけ身体に負担がかからないよう、軽い布、柔らかい身体に馴染みやすい布で作ることが望ましい。本実施例ではより身体に馴染むようバイヤスに裁断している。
本発明の上衣は、前記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。
各部分の調整方法の例として次のようなものがある。
前記実施例では、袖の形状は身頃からの裁ちだしのものであるが、セットインスリーブにすることも可能である。また、前記実施例ではかぶりタイプのもので説明したが、前開きにしたり、後ろ開きにしたり、肩を開けたりと、襟ぐりから前後左右どの方向にでも開けることが可能であることにより、着脱の利便性を図りつつ、デザインを富ませることに対応できる。
適用可能な衣服の種類として、シャツ、ブラウス、プルオーバー、カットソー、ワンピース、コート、ジャケット、カーディガン、パジャマ、ベスト、ケープ等が挙げられる。
前身頃1のタック10〜12は、デザインに合わせてタックの倒す方向は上向きのままで、それぞれのタックの分量を加減して調節することができる。
前身頃1のタック10〜12は背の丸い人に限らず前屈みの作業が多い者の上衣にも応用が可能であるが、その場合は前下がりを考慮することが必要となる。
前身頃1のタック10〜12については図5(イ)、図5(ロ)に示すように形成した部分の前中心線上に飾り押え布13をつける。飾り押え布13は、タック10〜12の縫い目を補強するとともに、上衣の前後を容易に見分けるための目印となる。飾り押え布13の材質、色、幅を変えること、飾り押え布13の上にリボン、ボタン等をつけることで目印としての機能を際立たせることかでき、また、デザイン性も向上することができる。図5(イ)に示すようにリボン13−Aをつける場合は、図5(ハ)に示す通り、リボン13−Aは飾り押え布を兼ねたタイ29とタック10に挟み込んで縫いとめたタイ30を結んで形成される。図5(ロ)は飾り押え布13にボタン13―Bを付けた例である。
後身頃2のタックについては、図4の例にとどまらず、タック20については、図6(イ)に示すように、タック21〜22については図6(ロ)、図6(ハ)、図6(ニ)に示すように倒す方向を変えたり、タックを成形する位置や摘む量を調節することにより、布の材質、デザイン、個々への対応の幅を広げることができる。
本発明の上衣の一実施例を示す前身頃を示す概略前面図である。 本発明の上衣の一実施例を示す後身頃を裁断した状態の右半身の概略背面図である。 (イ)は図1の前面図のタックの詳細図であり、(ロ)(ハ)(ニ)はタックの向きを示す前中心線における断面図である。 (イ)は図2の背面図のタックの詳細図であり、(ロ)(ハ)(ニ)はタックの向きを示す出来上がり線における断面図である。 (イ)、(ロ)、(ハ)は前身頃のタックの装飾例を示す正面図である (イ)、(ロ)(ハ)、(二)は後身頃のタックの他の実施例を示す断面図である 従来例を示す斜視図である。
1 前身頃
2 後身頃
3 前身頃 肩線
4 後身頃 肩線
5 前身頃 脇線
6 後身頃 脇線
7 前身頃 袖下線
8 後身頃 袖下線
9 後身頃 袖先線
10 前身頃 タック
11 前身頃 タック
12 前身頃 タック
13 飾り押え布
13A リボン、13B ボタン
14 後中心線
15 通常の後中心線
16 後身頃 通常の肩線
17 幅拡大部
18 襟ぐり拡大部
19 肩線拡大部
20 後身頃 タック
21 後身頃 タック
22 後身頃 タック
23 後身頃 通常の襟ぐり線
24 後身頃 裾線
24A 後身頃 後ろ下がり部
25 前身頃 襟ぐり線
26 前身頃 裾線
28 後身頃 通常の裾線
29 タイ
30 タイ
31 後身頃 通常の袖先線

Claims (4)

  1. 前身頃と後身を備え、後身頃の背面部の襟ぐり線と肩線に沿ってタックを形成することにより肩甲骨から腕のつけ根の後ろ側を立体的に仕上げ、かつ、前身頃の前中心線上の襟ぐり付近に、重なり部が水平方向に伸び、かつ前記重なり部が上向きに倒れるようにタックを形成したことを特徴とする上衣。
  2. 肩線に沿ってタックを2か所形成した請求項1記載の上衣
  3. 前身頃と後身頃を、肩線、脇線,および袖下線に沿って縫い合わせて構成した、請求項1記載の上衣
  4. 前身頃にタックを平行に3か所形成した請求項1記載の上衣
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