以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。なお、本願において、「上」は、接地面を下側として靴を水平面上に載置した場合における上を意味する。また「下」は、接地面を下側として靴を水平面上に載置した場合における下を意味する。また本願において、前側とはつま先側と同じ意味であり、後側とは踵側と同じ意味である。
図1及び図2は、本発明の第一実施形態に係る靴1が示された図である。図1は、アウトサイドから見た図である。図2は、インサイドから見た図である。この靴1は、ゴルフ靴である。図3は、靴1を底面側から見た図である。
図1、図2及び図3は、左足用の靴1に関する図である。右足用の靴1における接地面の形状は、図3の鏡像である。
この靴1は、靴底3とアッパー5とを備えている。靴底3は、アウトソール7とミッドソール9と補強部材11とを備えている。
図3において符号L1で示されているのは、長さ線L1の両端を延長した線である。この長さ線L1は、靴底3の底面の輪郭内に画かれうる線分のうちで最長のものである。この長さ線L1の方向が、前後方向とされうる。
アウトソール7は、接地面を有する。接地面は、アウトソール7の底面である。靴1の使用状態における下面が、接地面である。
アウトソール7は、分割されている。アウトソール7は、つま先側に位置する前方分割体7aと、踵側に位置する後方分割体7bとからなる(図3参照)。前方分割体7aは、補強部材11のつま先側に位置する。後方分割体7bは、補強部材11の踵側に位置する。靴1の接地面は、前方分割体7a、補強部材11及び後方分割体7bにより構成されている。
図3が示すように、補強部材11は、靴底3の土踏まず部に設けられている。補強部材11の少なくとも一部が土踏まず部の少なくとも一部に配置されている。補強部材11は、土踏まず部よりもつま先側に延在している。補強部材11は、土踏まず部よりも踵側に延在している。
図4は、補強部材11が単独で示された図である。図4は、左足用の靴1の補強部材11である。右足用の靴1における補強部材11の形状は、図4の鏡像である。
図5は、図3のV−V線に沿った靴底3の断面図である。図6は、図3のVI−VI線に沿った靴底3の断面図である。図7は、図3のVII−VII線に沿った靴底3の断面図である。図8は、図3のVIII−VIII線に沿った靴底3の断面図である。図8は、VIII−VIII線に沿った断面の一部のみを示す。この図8は、補強部材11近傍の断面のみを示す。なお図5では、鋲(後述される鋲13及び鋲17)の記載が省略されている。
図3が示すように、アウトソール7には、複数の突起15が設けられている。突起15は、下方に向かって突出している。突起15は、靴1の防滑性能を高める。
アウトソール7は、着脱可能な鋲13を有している。またアウトソール7は、鋲13を取り付けるための台座16を有している(図5参照)。台座16は、ねじ穴16aを有している。鋲13は、台座16にねじ込まれて、固定される。
鋲13は、下方に向かって突出している。本実施形態では、6個の鋲13が設けられている。図1及び図2が示すように、この鋲13は、突起15よりも下方に突出している。鋲13は、靴1の防滑性能を高める。
アウトソール7の材質は、特に制限されない。アウトソール7の材質として、ゴム、合成樹脂、熱可塑性エラストマー等が例示される。装着者の動的荷重を受け止めうるようにする目的で、アウトソール7には、強度と耐摩耗性とが求められる。この観点から、アウトソール7は、気泡を有さない非多孔質の材質とされている。換言すれば、アウトソール7は、無発泡体とされている。好ましいアウトソール7の材質として、いわゆるソリッドのゴム又は樹脂からなる組成物が用いられうる。好ましいアウトソール7の材質として、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ウレタンゴム、熱可塑性樹脂とゴムの複合エラストマーが例示される。これらの2種以上が併用されてもよい。クッション性及び屈曲性の観点から、アウトソール7の材質として、加硫されたゴムが最も好ましい。
アウトソール7の硬度は、デュロメーターA硬度で40以上であることが好ましい。硬度が低すぎると、着用者の歩行にふらつき感を生じるおそれがある。この観点から、アウトソール7の硬度は50以上がより好ましく、さらに60以上が好ましく、特に70以上であることが好ましい。また硬度が高すぎると、歩行のために必要な屈曲性が低下しうる。また硬度が高すぎると、踵部でのクッション性が不足しやすい。これらの観点からアウトソール7の硬度は、85以下が好ましく、80以下がより好ましい。本願において、デュロメーターA硬度は、JIS−K6253に準拠して測定される。
ミッドソール9は、発泡体よりなる。ミッドソール9は、全体として一体成形されており、分割されていない。ミッドソール9の材質は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下「EVA」という)である。このポリマーを基材として、発泡剤又は微少中空球(「マイクロバルーン」等と称される)等の配合されたEVA組成物がミッドソール9用として用いられる。生産性を高める観点から、ミッドソール9の材質は、熱可塑性であるのが好ましい。発泡体のミッドソール9は、スポンジ状である。ミッドソール9は、柔軟性がある。ミッドソール9が発泡体とされることにより、靴底3の衝撃吸収性が高められる。ミッドソール9の発泡倍率は、アウトソール7の材質、アウトソール7の厚さ、ミッドソール9自身の厚さ等が考慮されて決定される。ミッドソール9の発泡倍率は、通常、1.5倍から10倍程度とされる。
ミッドソール9の硬度は、デュロメーターA硬度(JIS−K6253)で30以上が好ましく、40以上がより好ましい。硬度が低すぎると、着用者の歩行にふらつき感を生じるおそれがある。また硬度が高すぎると、クッション性が不足しやすい。この観点からミッドソール9の硬度は、80以下が好ましく、70以下がより好ましい。
図4が示すように、補強部材11は、露出部11aと非露出部11bとを有する。露出部11aは、外部に露出している。非露出部11bは、外部に露出していない。非露出部11bは、補強部材11の前側の縁部と、補強部材11の後側の縁部とに設けられている。後述される2本のリブは、露出部11aに設けられている。
図7及び図8が示すように、非露出部11bは、アウトソール7とミッドソール9とに挟まれている。非露出部11bの上面がミッドソール9の下面に接着されている。非露出部11bの下面がアウトソール7の上面に接着されている。アウトソール7とミッドソール9とで挟まれた部分を有する補強部材11は、靴底3から外れにくい。
本実施形態の靴1において、アウトソール7とミッドソール9と補強部材11とは、それぞれ別個に成形されている。靴1では、アウトソール7とミッドソール9とが、接着剤により接着されている。なお、アウトソール7とミッドソール9とが加硫接着されていてもよい。アウトソール7とミッドソール9とが融着していてもよい。
図6及び図8が示すように、補強部材11の上面は、ミッドソール9の下面に接触している。補強部材11の上面とミッドソール9の下面とが接合されている。この接合には、接着剤が用いられている。
図3及び図4が示すように、補強部材11は、インサイド踵側からアウトサイドつま先側に向かって延びる第一リブR1と、アウトサイド踵側からインサイドつま先側に向かって延びる第二リブR2とを有する。第一リブR1は、つま先側ほどアウトサイドとなるように延在している。第二リブR2は、つま先側ほどインサイドとなるように延在している。リブとは、筋状の突出部である。理解を容易とする目的で、図4において、第一リブR1及び第二リブR2が、散点模様(ドット)で示されている。なお、第二リブR2は設けられなくてもよい。
第一リブR1と第二リブR2とは、交差部Kにおいて交差している。交差部Kにおいて、第一リブR1の突出高さは、第二リブR2の突出高さよりも高い。よって交差部Kにおいて、第一リブR1の輪郭線は存在するが、第二リブR2の輪郭線は存在しない。
第一リブR1には、2本の溝m1が設けられている(図3の波線参照)。溝m1は、第一リブR1の長手方向に略沿って設けられている。図6が示すように、溝m1は、補強部材11の上面に設けられている。溝m1の断面形状は略V字型である。
第二リブR2には、1本の溝m2が設けられている(図3の波線参照)。溝m2は、第二リブR2の長手方向に略沿って設けられている。溝m2は、補強部材11の上面に設けられている。溝m2の断面形状は略V字型である。
溝m2は、途中で分断されている。溝m2は、交差部Kにおいて分断されている。溝m1は、途中で分断されていない。溝m1は、交差部Kにおいて分断されていない。
第一リブR1の幅W1は、踵側ほど小さくされている。第一リブR1の幅W1は、インサイドほど小さくされている。第二リブR2において、第二リブR2の幅W2がアウトサイドほど大きくなる部分は、第二リブR2の長さの半分以上を占めている。
第一リブR1は、第二リブR2よりも太い。図3に示す平面図において、第一リブR1の幅W1の最大値は、第二リブR2の幅W2の最大値よりも大きい。幅W1の平均値は、幅W2の平均値よりも大きい。
交差部Kよりも前側の領域における幅W2の最大値は、交差部Kよりも前側の領域における幅W1の最小値よりも小さい。
第一リブR1は、つま先側端M1と、後端T1とを有する。第二リブR2は、つま先側端M2と、後端T2とを有する。
補強部材11は、第一リブR1から下方に突出する突起k1を有する。本願において、この突起k1がリブ突起と称される。補強部材11は、リブ突起k1として、鋲17を有する。鋲17は、着脱可能である。鋲17は、第一リブR1に対して、着脱可能である。補強部材11は、鋲17を取り付けるための台座18を有している(図5参照)。台座18は、ねじ穴18aを有している。鋲17は、台座18にねじ込まれて、固定される。この鋲17は、突起15よりも下方に突出している。この鋲17は、後述される突起19よりも下方に突出している。本実施形態では、1個の鋲17が設けられている。鋲17の形状は、鋲13の形状に等しい。
なお、第二リブR2から下方に突出する突起は、存在しない。
鋲17は、交差部Kよりも前側に設けられている。鋲17は、交差部Kよりもアウトサイドに設けられている。鋲17は、土踏まず部よりも前側に設けられている。
鋲13及び鋲17の材質は、限定されない。鋲13及び鋲17の材質として、金属、樹脂及びゴムが例示される。耐摩耗性及び剛性の観点から、鋲用の樹脂として、ポリウレタンが特に好ましい。
鋲13及び鋲17は、尖った形状の突起を含んでいる。この尖った突起は、防滑性能に優れる。好ましくは、鋲13及び鋲17は突起Tbを含む。この突起Tbの軸方向に対して垂直な平面と、この突起Tbの先端とを接触させた場合、この平面と突起Tbとの接触面積がStbとされる。防滑性能の観点から、面積Stbは、10mm2以下が好ましく、8mm2以下がより好ましい。鋲1個における面積Stbの合計値は、70mm2以下が好ましく、50mm2以下がより好ましい。防滑性能の観点から、鋲13及び鋲17の硬度は、アウトソール7の硬度よりも高いのが好ましい。
図3が示すように、補強部材11は、リブ突起k1として、突起19を有している。突起19は、鋲17の近傍に設けられている。突起19は、補強部材11の本体とともに一体成形されている。突起19は、下方に向かって突出している。突起19は、靴1の防滑性能を高める。
突起19は、交差部Kよりも前側に設けられている。突起19は、交差部Kよりもアウトサイドに設けられている。突起19は、土踏まず部よりも前側に設けられている。
このように、本実施形態において、リブ突起k1は、鋲17及び突起19である。
補強部材11は、靴底3のインサイドの側面に配置されたインサイド補強部21と、靴底3のアウトサイドの側面に配置されたアウトサイド補強部23とを有する。
インサイド補強部21は、ミッドソール9のインサイドの側面の一部を覆っている。更にインサイド補強部21は、アッパー5のインサイドの側面の一部を覆っている。換言すれば、インサイド補強部21は、アッパー5のインサイドに存在している。
インサイド補強部21は、第一リブR1のインサイドの端から上方に向かって延在している。インサイド補強部21は、第一リブR1の後端T1の上方に存在している(図2参照)。
アウトサイド補強部23は、ミッドソール9のアウトサイドの側面の一部を覆っている。更にアウトサイド補強部23は、アッパー5のアウトサイドの側面の一部を覆っている。換言すれば、アウトサイド補強部23は、アッパー5のアウトサイドに存在している。
アウトサイド補強部23は、第二リブR2のアウトサイドの端から上方に向かって延在している。アウトサイド補強部23は、第二リブR2の後端T2の上方に存在している(図1参照)。
アウトサイド補強部23とアッパー5との接触面積がS1とされ、インサイド補強部21とアッパー5との接触面積がS2とされるとき、S1がS2よりも大きい。S1>S2とされることにより、足が体の内側方向に倒れやすい。S1>S2とされることにより、足が体の外側方向に倒れにくい。S1>S2とされることにより、スイングが安定しやすい。
図2において符号X1で示されているのは、インサイド補強部21の後端点である。後端点X1は、第一リブR1の後端T1よりも後側(踵側)に位置している。この構成により、足の踵付近が安定しやすい。この構成により、補強部材11に起因する靴1の安定性が向上し、スイングが安定しうる。
交差部Kよりもインサイドの領域において、補強部材11は、第一リブR1と第二リブR2との間に延びる延在部25を有する(図3及び図4参照)。この延在部25により、靴1の安定性が向上し、スイングが安定しうる。
交差部Kよりもアウトサイドの領域において、補強部材11は、第一リブR1と第二リブR2との間に延びる延在部27を有する(図3及び図4参照)。この延在部27により、靴1の安定性が向上し、スイングが安定しうる。
図1において符号X2で示されているのは、アウトサイド補強部23の後端点である。後端点X2は、第二リブR2の後端T2よりも後側(踵側)に位置している。この構成により、足の踵付近が安定しやすい。この構成により、補強部材11に起因する靴1の安定性が向上し、スイングが安定しうる。
図9から図12は、第二実施形態に係る靴29が示された図である。図9は、靴29をアウトサイドから見た図である。図10は、靴29を底面側から見た図である。図11は、図10のF11−F11線に沿った断面図である。図12は、図10のF12−F12線に沿った断面図の一部である。図12は、補強部材41の近傍のみを示す。
図9から図12は、左足用の靴29に関する図である。右足用の靴29における接地面の形状は、図10の鏡像である。
この靴29は、靴底31とアッパー33とを備えている。靴底31は、アウトソール37とミッドソール39と補強部材41とを備えている。
図10が示すように、補強部材41は、靴底31の土踏まず部に設けられている。補強部材41の少なくとも一部が土踏まず部の少なくとも一部に配置されている。補強部材41は、土踏まず部よりもつま先側に延在している。補強部材41は、土踏まず部よりも踵側に延在している。
アウトソール37には、複数の突起43が設けられている。突起43は、下方に向かって突出している。突起43は、靴29の防滑性能を高める。アウトソール37は、鋲に似た形状の突起45を有している。
アウトソール37の材質は、前述した靴1の場合と同様である。ミッドソール39の材質は、前述した靴1の場合と同様である。
図12が示すように、補強部材41は、露出部41aと非露出部41bとを有する。露出部41aは、外部に露出している。非露出部41bは、外部に露出していない。非露出部41bは、補強部材41の前側の縁部と、補強部材41の後側の縁部とに設けられている。後述される2本のリブは、露出部41aに設けられている。
図12が示すように、非露出部41bは、アウトソール37とミッドソール39とに挟まれている。アウトソール37とミッドソール39とで挟まれた部分を有する補強部材41は、靴底31から外れにくい。
図10が示すように、補強部材41は、インサイド踵側からアウトサイドつま先側に向かって延びる第一リブR1と、アウトサイド踵側からインサイドつま先側に向かって延びる第二リブR2とを有する。第一リブR1は、つま先側ほどアウトサイドとなるように延在している。第二リブR2は、つま先側ほどインサイドとなるように延在している。
第一リブR1と第二リブR2とは、交差部Kにおいて交差している。交差部Kにおいて、第一リブR1の突出高さは、第二リブR2の突出高さよりも高い。よって交差部Kにおいて、第一リブR1の輪郭線は存在するが、第二リブR2の輪郭線は存在しない。
第一リブR1には、1本の溝m1が設けられている(図10の波線参照)。溝m1は、第一リブR1の長手方向に略沿って設けられている。図11及び図12が示すように、溝m1は、補強部材41の上面に設けられている。溝m1の断面形状は略V字型である。
第二リブR2には、溝が設けられていない。
第一リブR1は、第二リブR2よりも太い。図10に示す平面図において、第一リブR1の幅W1の最大値は、第二リブR2の幅W2の最大値よりも大きい。幅W1の平均値は、幅W2の平均値よりも大きい。
図10が示すように、第一リブR1は、つま先側端M1と、後端T1とを有する。第二リブR2は、つま先側端M2と、後端T2とを有する。
補強部材41は、第一リブR1から下方に突出する突起k1を有する。補強部材41は、リブ突起k1として、突起47を有している。本実施形態では、6個の突起47が設けられている。突起47は、補強部材41とともに一体成形されている。突起47は、下方に向かって突出している。突起47は、靴29の防滑性能を高める。
図10が示すように、突起47のうちの3個は、交差部Kよりもアウトサイドに設けられている。交差部Kよりもアウトサイドに位置する突起47が存在する。突起47のうちの3個は、交差部Kよりも前側に設けられている。交差部Kよりも前側に位置する突起47が存在する。最も前側の突起47は、土踏まず部よりも前側に設けられている。突起47の体積は、アウトサイドほど大きい。突起47の体積は、前側ほど大きい。
このように、第二実施形態において、リブ突起k1は、突起47である。
前述の通り、第一リブR1は第二リブR2よりも太い。これにより、スイングが安定しやすい。以下に、この作用についての説明がなされる。
ここでは、右利きのゴルファーの場合が説明される。
先ず、右足の動きが考察される。バックスイングの際に、右側へのスウェイが起こりやすい。この「右側」とは、スイングしているゴルファーにとっての右側である。スウェイとは、横方向への体のふらつきを意味する。スウェイにより、スイングの安定性が阻害されやすい。右側へのスウェイにより、スイングの効率が低下しうる。この効率の低下により、ヘッドスピードが減少しうる。右側へのスウェイは、ミスショットの原因となりうる。
右側へのスウェイを抑制するためには、バックスイングの間、右足は、動かないか、又は、体の内側(スイングするゴルファーの左側)に少し倒れるのが理想である。この右足の動きにより、スウェイが抑制される。逆に、バックスイングにおいて、右足が体の外側方向に倒れた場合、スウェイが発生しやすい。
このように、バックスイングにおけるスウェイを抑制する観点から、右足が体の外側に倒れにくくするのが好ましい。この観点から、右足用の靴1における靴底3のねじれ剛性は、以下のねじれ剛性Bが、ねじれ剛性Aよりも大きいのが好ましい。
[ねじれ剛性A]靴底3の踵部が、靴底3のつま先部に対してインサイドに回転するときのねじれ剛性。
[ねじれ剛性B]靴底3の踵部が、靴底3のつま先部に対してアウトサイドに回転するときのねじれ剛性。
ただし、「インサイドへの回転」とは、右足用の靴1の場合、踵側から見たときの反時計回りの回転を意味する。左足用の靴1の場合、「インサイドへの回転」とは、踵側から見たときの時計回りの回転を意味する。「アウトサイドへの回転」とは、右足用の靴1の場合、踵側から見たときの時計回りの回転を意味する。左足用の靴1の場合、「アウトサイドへの回転」とは、踵側から見たときの反時計回りの回転を意味する。
また、[ねじれ剛性A]及び[ねじれ剛性B]の定義において、「靴底3の踵部」とは、補強部材11よりも踵側の部分を意味し、「靴底3のつま先部」とは、補強部材11よりもつま先側の部分を意味する。
次に、インパクトにおける右足の動きが考察される。インパクトでは、右足が体の内側に倒れ込み、「蹴り」がなされるのが好ましい。この「右足による蹴り」により、体の力がスイングに効率よく変換されうる。この「右足による蹴り」に起因して、ヘッドスピードが向上しうる。
右利きゴルファーの「右足による蹴り」が円滑になされるためには、右足が体の内側に倒れ込む必要がある。この倒れ込みがなされるためには、ねじれ剛性Aがねじれ剛性Bよりも小さいのが好ましい。右利きゴルファーの「左足による踏ん張り」が円滑になされるためには、左足が体の内側に倒れ込むのが好ましい。この倒れ込みがなされるためには、ねじれ剛性Aがねじれ剛性Bよりも小さいのが好ましい。
補強部材11のねじれ剛性が全体的に高すぎると、ねじれ剛性Aが過度に高くなり、「右足による蹴り」が円滑になされにくい。互いに交差するリブR1及びリブR2を設けることにより、ねじれ剛性Aが過大となることが抑制され、且つ、ねじれ剛性Aをねじれ剛性Bよりも小さくすることができる。
次に、左足の動きが考察される。トップからインパクトまでの間、左側へのスウェイが起こりやすい。この「左側」とは、スイングしているゴルファーにとっての左側である。このスウェイにより、スイングの安定性が阻害されやすい。左側へのスウェイは、スイングの効率を低下させうる。この効率の低下により、ヘッドスピードが低下しうる。左側へのスウェイは、ミスショットの原因となりうる。
左側へのスウェイを抑制するためには、トップからインパクトまでの間、左足は、動かないのが理想である。よって、トップからインパクトまでの間、左足には、体の内側に向かう力が作用するのがよい。この体の内側への力により、スウェイが抑制される。しかし、一般的なゴルファーでは、左足が外側に倒れて、スウェイが発生しやすい。また、一般的なゴルファーでは、左足が固定されず、ねじれることがある。
左足が外側(左側)に倒れる場合、左足の靴底3の踵部が、靴底3のつま先部に対してアウトサイドに回転する。左足を安定させ、スウェイを抑制するためには、左足用の靴1において、ねじれ剛性Bが、ねじれ剛性Aよりも大きいのが好ましい。
右利きゴルファーの場合について説明がされたが、左利きゴルファーの場合、左右の足の役割が入れ替わるだけである。本発明は、左利きゴルファーにも有効である。
以上に説明されたように、スイングを安定させるための好ましいねじれ剛性は、左足用の靴と右足用の靴とで共通であることが判明した。即ち、右足用及び左足用のいずれも、ねじれ剛性Aがねじれ剛性Bよりも小さいのがよい。
第一リブR1を第二リブR2より太くすることにより、ねじれ剛性Aがねじれ剛性Bよりも小さくなることが判明した。よって、第一リブR1及び第二リブR2は、その圧縮方向よりも、その伸長方向において、ねじれ剛性の向上に寄与していると考えられる。
第一リブR1が設けられ且つ第二リブR2が設けらない場合、第一リブR1を第二リブR2より太くするのと同様の効果が奏されうる。即ち、第一リブR1が設けられ且つ第二リブR2が設けらない場合、ねじれ剛性Aがねじれ剛性Bよりも小さくなる。
第二リブR2が設けられない場合、補強部材の剛性が過度に低下する場合がある。補強部材の剛性が過度に低下した場合、スイングの安定性が減少するおそれがある。この観点から、第二リブR2が設けられるのが好ましい。
第一リブR1のつま先側端M1は、第二リブR2のつま先側端M2よりも前側(つま先側)に位置している(図4参照)。この構成は、ねじれ剛性Aをねじれ剛性Bよりも小さくするのに寄与している。
ねじれ剛性Aをねじれ剛性Bよりも小さくする観点から、次の(a)が満たされるのが好ましい。
(a)第一リブR1の体積がVaとされ、第二リブR2の体積がVbとされ、第一リブR1の最大長さがLaとされ、第二リブR2の最大長さがLbとされたとき、以下の関係式(1)を満たす。
[Va/La]>[Vb/Lb] ・・・(1)
長さLa及び長さLbが、図4に示される。長さLaは、つま先側端M1と後端T1との間の距離である。長さLbは、つま先側端M2と後端T2との間の距離である。なお、交差部Kの体積は、体積Va及び体積Vbのいずれにも含まれるものとする。
ねじれ剛性Aをねじれ剛性Bよりも小さくする観点から、第一リブR1の断面積の最大値Saは、第二リブR2の断面積の最大値Sbよりも大きいのが好ましい。なお断面積Sa及び断面積Sbは、リブの長手方向に対して垂直な平面による断面積である。
ねじれ剛性Aをねじれ剛性Bよりも小さくする観点から、第一リブR1の体積Vaは、第二リブR2の体積Vbよりも大きいのが好ましい。
ねじれ剛性Aをねじれ剛性Bよりも小さくする観点から、長さLaは長さLbよりも大きいのが好ましい。
ねじれ剛性Aをねじれ剛性Bよりも小さくする観点から、上記交差部Kにおいて、第一リブR1の突出高さは、第二リブR2の突出高さよりも高いのが好ましい。この構成により、交差部Kにおけるリブの効果は、第二リブR2よりも第一リブR1のほうが大きい。この交差部Kの構成により、ねじれ剛性Aがねじれ剛性Bよりも小さくなりやすい。
ねじれ剛性Aをねじれ剛性Bよりも小さくする観点から、交差部Kよりも前側の領域における幅W2の最大値は、交差部Kよりも前側の領域における幅W1の最小値よりも小さいのが好ましい。
第一リブR1から突出するリブ突起k1は、第一リブR1との相乗効果を奏しうる。リブ突起k1は、第一リブR1の上に配置されているため、第一リブR1に作用する力が効果的に地面へと伝達される。
第二リブR2に比べて太い第一リブR1にリブ突起k1が設けられているため、リブ突起k1は、倒れにくい。リブ突起k1に起因する防滑性能は高い。リブ突起k1により、スイングの安定性が向上しうる。
右足において、リブ突起k1は、体の外側(ゴルファーからみて右側)へのスウェイを抑制するのに寄与する。リブ突起k1は、交差部Kよりもアウトサイドに位置している。よって、右足が体の外側に倒れようとする場合、リブ突起k1に多くの荷重が作用する。リブ突起k1は、この荷重を効果的に受け止める。リブ突起k1により、「右足の踏ん張り」が達成されやすい。リブ突起k1により、右足の外側への倒れ込みが抑制され、スイングが安定しうる。
右足が体の外側に倒れようとするときの靴のねじれは、上記ねじれ剛性Bに対応するねじれである。即ち、右足が体の外側に倒れようとするときの靴のねじれは、踵部が、つま先部に対してアウトサイドに回転するねじれ(以下、ねじれBともいう)である。リブ突起k1は、交差部Kよりもアウトサイドに位置している。よって、ねじれBの際に、リブ突起k1には多くの荷重が作用する。また一般に、スイング中、踵部よりもつま先部のほうに体重が掛かっていることが知られており、リブ突起k1は、土踏まず部よりも前側に位置している。よって、リブ突起k1には多くの荷重が作用する。リブ突起k1により、この荷重が効果的に受け止められる。また、ねじれBにおいて、第一リブR1には、伸長方向の力が作用する。前述の通り、第一リブR1及び第二リブR2は、圧縮方向よりも伸長方向においてねじれ剛性の向上に寄与していると考えられる。リブ突起k1により、第一リブR1が地面に対して固定されやすい。よって、ねじれBにおいて、第一リブR1に伸長方向の力が作用しやすい。これらに起因して、リブ突起k1は、実際に使用される局面において、ねじれ剛性Bを高めうる。この結果、リブ突起k1の存在は、ねじれ剛性Bをねじれ剛性Aよりも大きくするのに寄与しうる。実際に使用される局面において、ねじれ剛性Bをねじれ剛性Aよりも大きくする観点から、以下の(構成1)が好ましい。
(構成1)交差部Kよりも前側にあり且つ第一リブR1から下方に突出する第一リブ突起の数がN1(個)とされ、交差部Kよりも前側にあり且つ第二リブR2から下方に突出する第二リブ突起の数がN2(個)とされるとき、N1はN2よりも大きい。ただし、N1は1以上の整数であり、N2は0以上の整数である。N1及びN2の決定において、着脱可能な1つの鋲は、1個と数える。図3の実施形態では、上記N1が3であり、上記N2は0である。
左足において、リブ突起k1は、体の外側(ゴルファーからみて左側)へのスウェイを抑制するのに寄与する。リブ突起k1は、交差部Kよりもアウトサイドに位置している。よって、左足が体の外側に倒れようとする場合、リブ突起k1に多くの荷重が作用する。リブ突起k1は、この荷重を効果的に受け止める。リブ突起k1により、「左足の踏ん張り」が達成されやすい。リブ突起k1により、左足の外側への倒れ込みが抑制され、スイングが安定しうる。
左足が体の外側に倒れようとするときの靴のねじれは、上記ねじれ剛性Bに対応するねじれである。即ち、左足が体の外側に倒れようとするときの靴のねじれは、上記ねじれBである。右足の場合と同じ理由により、左足用の靴に関しても、上記(構成1)が好ましい。
リブ突起k1の上記効果を高める観点から、リブ突起k1の高さは、2mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましく、4mm以上がより好ましい。突き上げ感を抑制する観点から、リブ突起k1の高さは、7mm以下が好ましく、5mm以下が好ましい。
リブ突起k1の上記効果を高める観点から、リブ突起k1の硬度は、補強部材の硬度以上とされるのが好ましい。
補強部材の材質は限定されない。 好ましくは、補強部材は、無発泡体である。補強部材は、ミッドソールの変形を抑制し、靴の安定性を高める。
剛性及び成形性の観点から、補強部材の材質として、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー又はEVAが好ましい。剛性、成形性及び経済性の観点から、熱可塑性エラストマーがより好ましい。好ましい熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントとソフトセグメントとを有する。この熱可塑性エラストマーとして スチレンブタジエン系熱可塑性エラストマー(TPS)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)及びポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)が例示される。
補強部材のより好ましい材質は、TPUである。TPUは、剛性、成形性及び経済性に優れる。本発明では、補強部材のねじれ剛性が高すぎても低すぎても好ましくない。TPUは、補強部材のねじれ剛性を適度に設定するのに適している。
TPUの具体例として、バイエル社製の商品名「UTC−95」、BASFジャパン社の商品名「XNY585」、「ET690」及び「ET590」が例示される。
スイングの安定性の観点から、補強部材の硬度は、アウトソール7の硬度よりも高いことが好ましい。補強部材のデュロメーターA硬度(JIS−K6253)は、90以上であることが好ましい。補強部材の硬度が低い場合、靴底3のねじれ剛性が不足し、安定性が不足する場合がある。補強部材の硬度が高すぎると、靴底3のねじれ剛性が高すぎて、スイングしにくい。この観点から補強部材のデュロメーターA硬度は、100以下が好ましく、99以下がより好ましく、95以下が特に好ましい。
上記デュロメーターA硬度と同様の観点から、補強部材のショアD硬度は、50以下が好ましく、45以下がより好ましく、42以下が特に好ましい。ショアD硬度は、「ASTM−D 2240−68」の規定に準拠して、自動ゴム硬度測定装置(高分子計器社の商品名「P1」)に取り付けられたショアD型のスプリング式硬度計によって測定される。測定には、熱プレスで成形された、厚みが約2mmであるスラブが用いられる。23℃の温度下に2週間保管されたスラブが、測定に用いられる。測定時には、3枚のスラブが重ね合わされる。補強部材と同一の組成物からなるスラブが、測定に用いられる。
本発明は、左右の靴の少なくとも一方に適用されうる。好ましくは、本発明は、左右の靴の両方に適用される。前述の通り、左右の靴のいずれについても、本発明は有効である。