JP5128967B2 - 感熱応答性abaトリブロックポリマーおよびそれを含有する水性塗料組成物。 - Google Patents
感熱応答性abaトリブロックポリマーおよびそれを含有する水性塗料組成物。 Download PDFInfo
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Description
:青島貞人、高分子、46巻497−502頁(1997) :青島貞人、高分子論文集、63巻71−85頁(2006)。
1.Aブロック及びBブロックの分子量が共に4000以上であり、水に対する下限臨界溶液温度が40℃以上80℃未満のポリマーであるAブロック及びAブロックよりも20℃以上高い下限臨界溶液温度を有するポリビニルエーテル又は100℃以下の任意の温度で水に溶解するポリビニルエーテルであるBブロックからなるABAトリブロックポリマーであって、Aブロック及びBブロックの出発モノマーがビニルエーテル構造であり、二官能性開始剤を用い、リビングカチオン重合法により合成される、分子量が20000〜200000のABAトリブロックポリマー。
2.常温では水溶性であり、Aブロックの下限臨界溶液温度以上に昇温することによりAブロックが疎水化して疎水性相互作用によるネットワークを形成することにより液の粘度が上昇するという感熱応答性増粘挙動を示すことを特徴とする、項1に記載のABAトリブロックポリマーの水溶液または水分散体。
3.項2に記載のABAトリブロックポリマーの水溶液又は水分散体を含有することを特徴とする水性塗料組成物。
本発明に用いるABAトリブロックポリマー(以下、「トリブロックポリマー」と称することがある)は出発モノマーとしてビニルエーテル構造のモノマーを用いて合成されるものであり、水に対する下限臨界溶液温度が40℃以上のポリマーであるAブロック及びAブロックよりも20℃以上高い下限臨界溶液温度を有するポリマー又は水溶性ポリマーであるBブロックからなるABAトリブロックポリマーである。
Aブロックは常温(通常水溶液の温度として20℃よりも高く35℃よりも低い)において水溶性であり、下限臨界溶液温度(40℃以上かつ80℃未満)で疎水性となるポリマーである。ホモポリマー単体でそのような特性を示すビニルエーテルモノマーとして、例えば2−メトキシエチルビニルエーテル(下限臨界溶液温度が63℃である)を好ましいものとして挙げる事ができる。またAブロックが常温では親水性であり下限臨界溶液温度(40℃以上かつ80℃未満)で疎水性となり析出するとの条件を満たしている限りにおいて、所望の下限臨界溶液温度を持つAブロックを合成するために他の親水性ビニルエーテルモノマー、例えばp−メトキシトリエチレングリコールビニルエーテル(下限臨界溶液温度が90℃である)など、やイソブチルビニルエーテルや2−エトキシエチルビニルエーテルなどの疎水性の高いモノマーを組み合わせて用いてもよい。
一方、BブロックはAブロックの下限臨界溶液温度よりも20℃以上高い下限臨界溶液温度をもつポリマー、または100℃以下の任意の温度で水に溶解する、いわゆる水溶性ポリマーである。ビニルエーテルモノマーとして、ホモポリマー単体でそのような特性を示すものであれば支障なく用いることができる。例えば水溶性モノマーとして、2−ヒドロキシメチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル等が挙げられる。因みにこれらモノマーは下限臨界溶液温度がポリマーの熱分解を伴わずに測定する事が出来ないほど非常に高いモノマーであると見なすことも出来る。また下限臨界溶液温度をもつモノマーであっても下限臨界溶液温度がAブロックよりも20℃以上高いモノマーであれば単独でも用いる事ができる。例えばAブロックに2−メトキシエチルビニルエーテル(下限臨界溶液温度が63℃である)を用いた時にBブロックにp−メトキシトリエチレングリコールビニルエーテル(下限臨界溶液温度が90℃である)を用いる事ができる。またこれらモノマーと上述の水溶性モノマーを共重合させる事により下限臨界溶液温度をより高い温度に設定する事もできる。これらの場合Bブロックは常温では親水性でありAブロックの下限臨界溶液温度(40℃以上)よりも20℃以上高い温度で疎水性となり析出する。
本発明のトリブロックポリマーはブロックポリマーを合成できる方法であれば支障なく用いて合成可能であるが、手順の簡潔さ、工程の安定性からリビングカチオン重合法により合成することが好ましい。
:平原ら、Polymer Preprints,Japan.,53,p416(2004) :平原ら、Polymer Preprints,Japan.,54,p421(2005) このときAブロックとBブロックの分子量はゲル排除クロマトグラフィー(GPC)法によって求めることができる。即ちBブロックのみの分子量を少量抜き出した反応溶液をメタノールにて重合停止させテトラヒドロフランを展開溶媒としてGPC測定を行い数平均分子量Mn、及び分子量分布(Mw/Mn)を求める。次に両末端にAブロックを形成させたあとのトリブロックポリマーについて同様の値を測定する。Aブロックの分子量は、下式1によりで算出できる。 (後に測ったMn−先に測ったBブロックのMn)/2 (式1) 注)GPC測定には「HLC8120GPC」(東ソー社製)を使用した。カラムとしては、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000HXL」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1ml/分、検出器;RIの条件で行った。
本発明のABAトリブロックポリマーを含んでなる感熱応答性増粘剤は、それを配合された混合物は常温では流動性の高い液体であり、加温または高温部に触れることにより疎水性相互作用による擬似ゲル化により増粘するので例えば薬剤を含ませて火傷の応急処置剤として使う事ができる。また、化粧品として毛髪のドライヤートリートメント剤として利用する事もできる。
本発明のトリブロックポリマーを配合した水性塗料は、常温で塗装する時には塗装時及び塗着後の塗料の粘度が低く、そのため塗膜のフロー性にすぐれ平滑な塗面を形成することが出来、40℃よりも充分に高い温度(一般的な焼付け硬化型の水性塗料においては120℃〜200℃、特に120℃〜150℃で焼き付けられる場合が多い)での焼付けのために昇温される過程でAブロックの下限臨界溶液温度として設定された温度の前後で粘度の上昇が起こり塗着塗料の流動、いわゆる「二次タレ」を防止することが出来、高仕上がり塗面を得ることが出来る。
出発モノマー
2−エトキシエチルビニルエーテル(以下EOVEと略記する)、2−メトキシエチルビニルエーテル(以下MOVEと略記する)、p−メトキシトリエチレングリコールビニルエーテル(以下TEGMEVEと略記する)は丸善石油化学(株)より入手したものを用いた。
溶剤
ヘキサン、トルエン、メタノール、ジクロロメタンなど合成に用いた溶剤は市販の特級試薬を用いた。
原料の前処理
合成に用いたモノマー、溶剤類はすべてモレキュラーシーブス(モノマー、非極性溶媒類)または塩化カルシウム(メタノール)による脱水処理を行った後、蒸留により精製したものを使用した。
重合開始種はシクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(日本カーバイド工業(株)製、商品名CHDVE)1モルと酢酸4モルを60℃で8時間反応させて合成した。余剰の酢酸を減圧留去し、ヘキサンから再結晶により重合開始種1を得た。重合開始種1は減圧下、充分に乾燥させた後、トルエンで希釈して濃度40mM/L溶液としたものをABAトリブロックポリマーの合成に使用した。
重合重合開始剤としてのエチルアルミニウムセスキクロライドは、日本アルキルアルミ(株)製の商品名EASCを精製することなく使用直前にトルエンで希釈して1 M/L溶液としたものを0℃に冷却してABAトリブロックポリマーの合成に使用した。
「実験化学講座 第26巻 高分子化学(第5版)」(日本化学会編、丸善株式会社発行)の「2.5章 カチオン重合」を参考にABAトリブロックポリマーを合成した。
MOVE−TEGMEVE−MOVEトリブロックポリマー
撹拌装置、温度計を備え、充分に加熱乾燥して吸着水を除去したガラス製反応容器内を窒素置換した後、トルエン51.3g、酢酸エチル8.8g、TEGMEVE19.0g(100mM)、重合開始種溶液10.0ml(開始種 0.4mM)を加え、良く攪拌しながら0℃に冷却した。1M−EASC溶液 2.0ml(エチルアルミニウムセスキクロライド2.0mM)を加えて重合を開始し、0℃で3時間攪拌して反応を進行させ、ABAトリブロックポリマーのB成分を合成した。反応途中の溶液を一部抽出し、多量のアンモニアの0.3 wt%メタノール溶液中に注入して反応を停止させ、GPC測定を用いてTEGMEVEの反応率と分子量の変化を追跡した。TEGMEVEが90モル%以上消費された時点(この時点でのB成分の数平均分子量は47000であった。)でA成分であるMOVE16.3g(160mM)を加え、0℃で更に21〜24時間攪拌して反応を進行させた。MOVEが消費された時点でアンモニアの0.3 wt%メタノール溶液80mlを加えて激しく攪拌して重合を停止した。反応停止後の混合溶液中にジクロロメタンを加えて希釈し、0.6規定の塩酸で3回、脱イオン水で1回、0.5規定水酸化ナトリウム水溶液で1回、脱イオン水で3回、この順序で洗浄した。次いで揮発分を減圧留去して目的物であるMOVE−TEGMEVE−MOVEトリブロックポリマー(ポリマー1)を得た。得られたポリマーの分子量及び分子量分布はGPCにより測定した。Mnは88000、Mwは110000、Mw/Mnは1.25であった。
MOVE−TEGMEVE−MOVEトリブロックポリマー
撹拌装置、温度計を備え、充分に加熱乾燥して吸着水を除去したガラス製反応容器内を窒素置換した後、トルエン52.2g、酢酸エチル8.8g、TEGMEVE38.0
g(200mM)、重合開始種溶液10.0ml(開始種 0.4mM)を加え、良く攪拌しながら0℃に冷却した。1 M ―EASC溶液 2.0ml(エチルアルミニウムセスキクロライド2.0mM)を加えて重合を開始し、0℃で3時間攪拌して反応を進行させ、ABAトリブロックポリマーのB成分を合成した。反応途中の溶液を一部抽出し、反応途中の溶液を一部抽出し、多量のアンモニアの0.3 wt%メタノール溶液中に注入して反応を停止させ、GPC測定を用いてMOVEの反応率と分子量の変化を追跡した。MOVEが90モル%以上消費された時点(この時点でのB成分の数平均分子量は97000であった。)でA成分であるMOVE8.2g(80mM)を加え、0℃で更に21〜23時間攪拌して反応を進行させた。MOVEが消費された時点でアンモニアの0.3 wt%メタノール溶液120mlを加えて激しく攪拌して重合を停止した。反応停止後の混合溶液中にジクロロメタンを加えて希釈し、0.6規定の塩酸で3回、脱イオン水で1回、0.5規定水酸化ナトリウム水溶液で1回、脱イオン水で3回、この順序で洗浄した。次いで揮発分を減圧留去して目的物であるMOVE−TEGMEVE−MOVEトリブロックポリマー(ポリマー2)を得た。得られたポリマーの分子量及び分子量分布はGPCにより測定した。Mnは119000、Mwは150000、Mw/Mnは1.26であった。
表1に示す配合量、反応時間以外は上記製造実施例1ないし2と同様にしてポリマー3〜10を得た。
エマルションの製造
容量2リットルの4つ口フラスコに、脱イオン水38.5部、Newcol707SF(日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤、不揮発分30%)0.1部を加え、窒素置換後、85℃に保った。この中に、脱イオン水52.3部、メチルメタクリレート30部、スチレン10部、n−ブチルアクリレート20部、2−エチルヘキシルアクリレート30部、ヒドロキシエチルアクリレート10部、Newcol707SF1.6部をエマルション化してなるプレエマルションの3%分及び0.4部の過硫酸アンモニウムを10部の脱イオン水に溶解させた溶液10.4部の25%分を添加し、添加20分後から残りのプレエマルション及び残りの過硫酸アンモニウム水溶液を4時間かけて滴下した。 滴下終了後、これをさらに2時間85℃に保持した後、常温まで放冷して固形分50%のアクリル樹脂エマルションIを得た。
製造実施例1で得たポリマー1 1.5gを脱イオン水17.0gに溶解して常温で透明・粘調な溶液1を得た。上記で得たエマルションI 100gに溶液1を全量加えよく混ぜ合わせて実施例1のエマルション組成物を得た。
表3に示す配合以外は上記実施例1と同様にして実施例2〜7及び比較例1〜3のエマルション組成物を得た。
エマルションI 100gに市販のウレタン会合型レオコン剤「アデカノール UH−756VF」(株式会社ADEKA製、32%水溶液)を1.6g及び脱イオン水13.2gを加えて比較例4とした。
エマルションI 100gに脱イオン水13.6gのみを加えて比較例5とした。
実施例1〜7及び比較例1〜5について粘度の温度変化を測定し感熱応答性を評価した。粘度測定はコーン&プレート型粘度計「レオストレスRS150」(HAAKE社製、商品名)を用い、シアーレート5sec −1 で温度を変えて(30℃、50℃、70℃)測定した。表4に夫々の温度での粘度(Pa・sec)の値と共に感熱応答増粘性評価(下記)を示した。
○:30℃と50℃の間又は50℃と70℃の間で粘度の増加がある。
×:温度が高くなると粘度が減少する。
水性塗料実施例8〜14及び比較例6〜10の製造
上記表3でのエマルションIに代えて、焼付け硬化型水性エナメル塗料「アスカベークTW−400黒」(関西ペイント(株)製、水性エマルジョン塗料、アクリル樹脂/メラミン樹脂系)を固形分濃度50%に調整したもの100gを用いる他は上記実施例1〜7及び比較例1〜5と同様にして実施例8〜14及び比較例6〜10の水性塗料を製造した。
被塗物として、「パルボンド#3030」(日本パーカライジング(株)製、リン酸亜鉛系)で表面処理した冷延鋼板(大きさ:7.5×15×0.2cm)に、「エレクロンNo.9200 」(関西ペイント(株)製、エポキシ系カチオン電着塗料)を乾燥膜厚20μmとなるように電着塗装し、更にこの上に「アミラックN−2シーラー」(関西ペイント(株)製、アミノポリエステル樹脂系中塗り塗料)を30μm塗装したものを用いた。その上に実施例及び比較例の着色塗料を、塗料粘度を約30秒(フォードカップ#4、20℃)に調整して、25℃ の温度で相対湿度が70%の環境で静電噴霧塗装した。塗装膜厚は、硬化塗膜に基づいて45±5μmとした。
塗装された塗板は水平に静置され80℃で5分間予備乾燥された。その後、塗板立てを用いて水平面から70〜80度立てた状態に固定され、熱風乾燥器を用いて150℃で20分間焼付けされた。焼付け後の塗板のタレ性と仕上り性について評価した。
○:塗面にタレ跡はなく、均一に硬化している。
×:塗面にタレが生じている。
○:塗面に濁りやワキ、ブツが無く、良好に仕上がっている。
×:塗面に濁り又はワキ又はブツのいずれかが生じており、仕上がりが悪い。
なお、タレ性が×のものは評価しなかった。
Claims (3)
- Aブロック及びBブロックの分子量が共に4000以上であり、水に対する下限臨界溶液温度が40℃以上80℃未満のポリマーであるAブロック及びAブロックよりも20℃以上高い下限臨界溶液温度を有するポリビニルエーテル又は100℃以下の任意の温度で水に溶解するポリビニルエーテルであるBブロックからなるABAトリブロックポリマーであって、Aブロック及びBブロックの出発モノマーがビニルエーテル構造であり、二官能性開始剤を用い、リビングカチオン重合法により合成される、分子量が20000〜200000のABAトリブロックポリマー。
- 常温では水溶性であり、Aブロックの下限臨界溶液温度以上に昇温することによりAブロックが疎水化して疎水性相互作用によるネットワークを形成することにより液の粘度が上昇するという感熱応答性増粘挙動を示すことを特徴とする、請求項1に記載のABAトリブロックポリマーの水溶液または水分散体。
- 請求項2に記載のABAトリブロックポリマーの水溶液又は水分散体を含有することを特徴とする水性塗料組成物。
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