JP5128570B2 - 複合ルツボ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、シリコン結晶の製造に好ましく用いられる複合ルツボ及びその製造方法に関するものである。
近年、環境問題やエネルギー問題への配慮から太陽電池の需要が一段と高まっている。太陽電池はその形態によって「バルク型」と「薄膜型」に大きく分類される。バルク型太陽電池は、シリコンインゴットを所定の厚さにスライスしたウェハーを用いるものであり、変換効率に優れるが、原料シリコン価格の影響を受けやすく非常に高価であるという特徴を有する。一方、薄膜型太陽電池としては、アモルファスシリコンや多結晶シリコンをガラスなどの基板上に非常に薄い膜状に形成した「シリコン系薄膜太陽電池」、化合物半導体の一種で銅とインジウムとセレン、ガリウム等を原料とした「化合物系薄膜太陽電池」、有機色素を用いて光起電力を得る「有機物系薄膜太陽電池」なども知られている。例えば薄膜シリコン系太陽電池は、原料のシリコンの使用量が1/100以下であり、製造エネルギーも少なくて済むため、近年は薄膜型太陽電池への注目が高まっている。
また太陽電池は、発電部に用いられる半導体材料の種類に基づいて、「シリコン系太陽電池」と「化合物半導体系太陽電池」の2種類に大きく分類される。さらに、シリコン系太陽電池は、「結晶シリコン系太陽電池」と「アモルファス(非晶質)シリコン系太陽電池」に分類され、結晶シリコン系太陽電池は「シリコン単結晶系太陽電池」と「シリコン多結晶系太陽電池」に分類される。
太陽電池として最も重要な特性である変換効率に注目すると、近年、化合物半導体系太陽電池はこれらの中で最も高く25%近くに達し、次にシリコン単結晶系太陽電池が20%前後と続き、シリコン多結晶系太陽電池やアモルファスシリコン系太陽電池等は5〜15%程度となっている。一方、材料コストに注目すると、シリコンは、地球上で酸素に次いで2番目に多い元素であり、化合物半導体に比べ格段に安いため、シリコン系太陽電池が最も広く普及している。なお、「変換効率」とは、「太陽電池セルに入射した光のエネルギーに対し、太陽電池により電気エネルギーに変換して取り出すことができたエネルギーの割合」をパーセンテージ(%)で表した値を言う。
次に、シリコン単結晶系太陽電池の製造方法を簡単に説明する。まず、太陽電池セルの基板となるシリコンウェハーを得るために、チョクラルスキー法(CZ法)や浮遊帯域溶融法(FZ法)により、円柱状のシリコン単結晶のインゴットを製造する。例えばCZ法では、石英ガラスルツボに投入された多結晶シリコンを加熱により溶融し、得られたシリコン融液に種結晶を浸漬させながら徐々に引き上げることによりシリコン単結晶が製造される。さらに、このインゴットをスライスして、例えば厚さ300μm程度の薄いウェハーに加工し、ウェハー表面を薬液でエッチングして表面上の加工歪みを取り除くことによって太陽電池となるウェハー(基板)が得られる。このウェハーに不純物(ドーパント)の拡散処理を施してウェハーの片側にPN接合面を形成した後、両面に電極を形成し、さらに太陽光の入射側表面に光の反射による光エネルギーの損失を減らすための反射防止膜を形成することで太陽電池が完成する。太陽電池においては、より大電流を得るために、より大面積の太陽電池セルを製造することが重要である。上記CZ法は、大直径のシリコン単結晶を容易に製造することができ、製造される単結晶の強度にも優れることから、大面積の太陽電池セルを製造するための基板材料となる大直径シリコンウェハーを得る方法として好適である。
一方、シリコン多結晶系太陽電池の製造では、溶融シリコンを鋳型で凝固させる鋳造法(以下、「キャスト法」ともいう)、又は電磁誘導による連続鋳造法(以下、「電磁鋳造法」ともいう)が好ましく採用されており、チョクラルスキー法で製造される単結晶シリコン基板よりも低コストで基板材料を製造することができる。キャスト法ではルツボ内で原料である高純度シリコンを加熱溶解し、ドープ材である微量のボロン等を均一添加したのち、そのままルツボの中で凝固させるか、または鋳型に流し込んで凝固させる。キャスト法に用いられるルツボや鋳型は、耐熱性および形状安定性に優れ、不純物含有量が少ないことが求められるので、ルツボには石英が用いられ、また鋳型には黒鉛が用いられる。
シリコン結晶の製造に用いる石英ルツボには、長時間且つマルチプルな引き上げ又は鋳造に耐え得る高温下での粘性が高いものが求められている。直径300mm以上の大口径シリコン単結晶をCZ法により製造する場合、石英ルツボは約1500℃の高温下に300〜400時間も曝されことになるが、このような環境下でも変形の少ないことが必要である。また、石英ルツボは消耗品であるが故に低コストで容易に製造できることも求められている。耐熱強度が高い従来の石英ルツボとしては、ルツボの外表面付近を高濃度のアルミニウム(Al)含有層とするもの、外表面にバリウム(Ba)等の結晶化促進剤を塗布したもの、ルツボの外表面にアルミナ、ムライト等による安定化層を形成したもの等が知られている(特許文献1〜3参照)。さらに関連技術として、分離膜等に用いるムライト質多孔体の製造方法が知られている(特許文献4)。
特開2000−247778号公報 特表2008−507467号公報 特表2004−531449号公報 特開平1−153579号公報
しかしながら、例えば石英ガラス中のアルミニウム濃度を高めた従来の石英ガラスルツボは粘性が比較的高いものの、マルチプルな引き上げに十分な耐熱強度でない。また、結晶化促進剤としてバリウムが表面に塗布された従来の石英ガラスルツボによればルツボの表面を効率よく結晶化させて強化することができるが、コーティングの手間が必要となり、毒性が強いバリウムの取り扱いも問題となる。また、外表面に安定化層が形成された従来の石英ガラスルツボは、1mm程度の薄い安定化層が溶射法によって形成されており、これによりルツボ全体の耐熱強度を高めることができるが、薄い層によって補強されているに過ぎず、強度のさらなる向上が求められている。
したがって、本発明の目的は、高温下での粘性が高く長時間使用することができ、さらに低コストで製造可能なルツボ及びその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明によるルツボは、直胴部及び底部を有し、シリコン融液を支持するための複合ルツボであって、アルミナとシリカを主成分とする組成物を焼結して得られるムライト質なルツボ本体と、前記ルツボ本体の内表面側に形成された透明石英ガラス層とを備え、前記透明石英ガラス層の厚さは前記ルツボ本体の厚さよりも薄く、前記ルツボ本体の外表面には針状又は柱状のムライト結晶のみから構成される多孔質層が形成されていることを特徴としている。
本発明によれば、ルツボ本体の材料がムライト質であることから、耐熱強度を高めることができる。したがって長時間の使用が可能であり、また低コストで製造でき、石英ガラスに変わる新たな材料を用いたルツボを提供することができる。さらに、本発明によれば、ルツボの外表面にムライト結晶のみからなる多孔質層が形成されているので、ルツボの強度を維持しつつ軽量化を図ることができ、大型であっても取り扱いの容易なルツボを提供することができる。なおムライト質か否かは、例えば、X線回折などでムライトに起因する回折強度のピークとその他の主要なピークが現れるかどうかにより判断することができる。他の組成物のピークと共にムライトに起因するピークが現れた場合には、ムライト質なルツボであるということができる。
本発明において、前記ルツボ本体の厚さは5mm以上であり、透明石英ガラス層の厚さは0.5mm以上であることが好ましい。十分な厚さを有するムライト質ルツボの基本構造体とし、その内表面を薄い透明石英ガラス層で覆うことにより、ルツボの耐熱強度を高めると共にルツボ内のシリコン融液の不純物汚染を防止することができる。
本発明において、前記ルツボ本体に含まれるアルミニウムの濃度は、ルツボ本体の外表面側から内表面側に向かって低下する濃度勾配を有することが好ましい。この構成によれば、ルツボ本体の外表面側の粘性を十分に高めつつ、内表面付近の熱膨張率が石英ガラスの熱膨張率に近づくので、両者の接合力を高めることができる。また、ルツボ内のシリコン融液の不純物汚染を防止することもできる。
本発明による複合ルツボは、前記ルツボ本体と前記透明石英ガラス層との間に設けられた多数の微小な気泡を含む不透明石英ガラス層をさらに備えることが好ましい。不透明石英ガラス層を形成することで透明石英ガラス層の割れや剥がれを防止することができる。
また、上記課題を解決するため、本発明による複合ルツボの製造方法は、アルミナとシリカを主成分とする組成物を焼結することによりムライト質なルツボ本体を形成する工程と、前記ルツボ本体の外表面をアルカリ水溶液で処理することで、主としてガラス相からなるマトリックスを溶出し、前記ムライト結晶を主な構成要素とする多孔質層を形成する工程と、前記ルツボ本体の内表面に透明石英ガラス層を形成する工程とを備えることを特徴としている。
本発明による複合ルツボの製造方法は、前記透明石英ガラス層を形成する前に、前記ルツボ本体の内表面側に多数の微小な気泡を含む不透明石英ガラス層を溶射法により形成する工程をさらに備えることが好ましい。不透明石英ガラス層を形成することで透明石英ガラス層の割れや剥がれを防止することができる。
以上のように、本発明によれば、耐熱強度が高いことによって長時間の使用が可能であり、低コストで製造可能な石英ガラスに変わる新たな材料を用いた複合ルツボ及びその製造方法を提供することができる。本発明による複合ルツボは、長時間の使用が可能であり、低コストで製造できることから、太陽電池用シリコン原料の製造に好適なルツボとして提供することができる。
本発明の好ましい実施形態による複合ルツボの構造を模式的に示す断面図である。 複合ルツボの厚さ方向に対するAlの濃度分布を示すグラフである。 本発明の他の好ましい実施の形態による複合ルツボの構造を模式的に示す断面図である。 複合ルツボ10の第1の製造方法を概略的に説明するための工程図である。 複合ルツボ10の第2の製造方法を概略的に説明するための工程図である。 複合ルツボ10の第3の製造方法を概略的に説明するための工程図である。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の好ましい実施の形態による複合ルツボの構造を示す略断面図である。
図1に示すように、本実施形態による複合ルツボ10の特徴は、ルツボの基本材料としてムライト(3Al・2SiO)を用いた点にある。そのため、複合ルツボ10は、アルミナとシリカを主成分とする組成物を焼結して得られるムライト質なルツボ本体11と、ルツボ本体11の内表面に形成された透明石英ガラス層12とを備えている。なお、「複合ルツボ」とは、従来の石英ガラスのみを基本材料とするのではなく、ムライトと石英ガラスとを用いて複合的に構成されたルツボであることを意味するものに過ぎず、当該名称によって本発明が限定的に解釈されるべきものではない。
ルツボ本体11はルツボの基本構造体であり、ルツボの外表面側に設けられている。すなわち、本実施形態による複合ルツボは、ルツボの外表面側に設けられたムライト質層と、内表面側に設けられた透明石英ガラス層12を有する二層構造である。ムライトは酸化アルミニウム(Al)と二酸化ケイ素(SiO)とを3:2の比率で含む化合物で、融点は1850℃である。そのため、石英ガラスよりも耐熱強度が高い。ムライトは石英ガラスに比べて高温における粘性が高いことから、ルツボ全体の耐熱強度を高めることができる。また、ムライトは石英に比べて安価であり、コスト面でも非常に有利である。
本明細書において「ムライト質」とは、ムライトのみからなる高純度な材料の他、ムライトのマトリックス中にアルミナやシリカが分散した材料を含むことを意味するものである。この場合、ムライト質材料は、ムライトを少なくとも50%、好ましくは80%以上含むものであることが好ましい。ムライトの比率が50%以下の場合には、ムライトよりむしろアルミナ又はシリカの性質が支配的となり、ムライトの性質を発揮することができないからである。
ムライトの熱膨張率はSiOとAlとの比率によって異なるが、4.3〜4.9(10−6−1)であることが知られている。これに対し、Alの熱膨張率は7.8であり、石英ガラスの熱膨張率は0.56である。ムライトの熱膨張率は石英ガラスよりも大きいが、両者の接合性は良好であり、加熱時及び冷却時の温度を適切に制御すれば熱膨張率の違いによるルツボ本体11と透明石英ガラス層12との剥離を防止することができる。さらに、後述するアルミニウムの濃度勾配や気泡を含む不透明石英ガラス層13を形成することで剥離を防止することができる。
ルツボ本体11の外表面には主として針状又は柱状のムライト結晶から構成される多孔質層11aが形成されている。多孔質層11aは、ルツボ本体11の外表面をアルカリ水溶液で処理し、針状又は柱状のムライト結晶の周囲にあるガラス質シリカマトリックスを溶出させることにより形成される。このように、ルツボの外表面に多孔質層11aが形成されているので、ルツボの強度を維持しつつ軽量化を図ることができ、大型であっても取り扱いの容易なルツボを提供することができる。特に、ムライト結晶の粘性は石英ガラスよりも高いことから、ムライト結晶で構成されるルツボ外表面の粘性は非常に高いものとなる。
図2は、複合ルツボ10中のアルミニウム(Al)の厚さ方向の濃度変化を示すグラフである。
図2に示すように、ムライト質なルツボ本体11に含まれるAlの濃度は、外表面から内表面に向かって低下する濃度勾配を有してもよい。ただし、本実施形態においては、多孔質層11aにはシリカ成分がほとんど含まれていないため、Al濃度は非常に高く且つほぼ一定であり、多孔質層11aよりも内側からAl濃度は徐々に低下する。多孔質層11aの内側付近のAl濃度はムライト中のAl濃度であり、Al濃度は内表面側に向かって徐々に低下し、ルツボ本体11の内表面付近のAl濃度は数ppmとなる。このように構成した場合には、ルツボ本体11の内表面付近の熱膨張率が石英ガラスの熱膨張率に近づくので、熱膨張率の違いによる層間剥離を防止することができ、両者の接合力を高めることができる。また、ルツボ内表面側のAl濃度が低いことから、ルツボ内のシリコン融液がAlで汚染されることを防止することができる。
ルツボ本体11に含まれるアルカリ金属(Na,K及びLi)の濃度はそれぞれ0.05ppm以下であることが好ましい。ルツボ本体11にアルカリ金属が多量に含まれるとルツボからシリコン融液中へアルカリ金属が溶出し、シリコン単結晶の品質低下をもたらすからである。半導体デバイス用シリコン単結晶の引き上げに用いるルツボには上記条件が要求されるが、太陽電池用シリコン結晶の引き上げに用いるルツボの場合には、比較的多くのアルカリ金属が含まれていても問題ない。
透明石英ガラス層12は、実質的に気泡を含まない非晶質シリカガラス層である。透明石英ガラス層12によれば、ルツボ内表面から剥離する石英片の増加を防止することができ、シリコン単結晶化率を高めることができる。ここで、「実質的に気泡を含まない」とは、気泡が原因で単結晶化率が低下しない程度の気泡含有率及び気泡サイズであることを意味し、特に限定されるものではないが、気泡含有率が0.1%以下であり、気泡の平均直径が100μm以下であることをいう。なお、気泡含有率は、光学的検出手段を用いて非破壊的に測定することができる。光学的検出手段としては受光レンズ及び撮像部を含む光学カメラを用い、表面から一定深さに至るまでの気泡含有率を測定するには、受光レンズの焦点を表面から深さ方向に走査すればよい。撮像された画像データは画像処理装置において画像処理され、気泡含有率が算出される。このような非破壊的気泡含有率測定法は、例えば、特開平3−86249号公報に詳述されている。
透明石英ガラス層12は天然石英ガラスであってもよく、合成石英ガラスであってもよい。天然石英ガラスとは、ケイ石、天然水晶等の天然質シリカを原料として製造されたシリカガラスを意味する。一般に天然石英は合成石英に比べて金属不純物の濃度が高く、OH基の濃度が低いという特性を有している。例えば、天然石英に含まれるAlの含有量は1ppm以上、アルカリ金属(Na,K及びLi)の含有量はそれぞれ0.05ppm以上、OH基の含有量は60ppm未満である。天然石英は、合成石英に比べて高温における粘性が高いことから、ルツボ全体の耐熱強度を高めることができる。また、天然質原料は合成石英に比べて安価であり、コスト面でも有利である。
一方、合成石英ガラスとは、例えばケイ素アルコキシドの加水分解により得られた合成質シリカを原料として製造されたシリカガラスを意味する。一般に合成石英は天然石英に比べて金属不純物の濃度が低く、OH基の濃度が高いという特性を有している。例えば、合成石英に含まれる各金属不純物の含有量は0.05ppm未満であり、OH基の含有量は30ppm以上である。ただし、Al等の金属不純物が添加された合成石英も知られていることから、合成石英か否かは一つの要素に基づいて判断されるべきものではなく、複数の要素に基づいて総合的に判断されるべきものである。合成石英ガラスは天然石英ガラスと比べて不純物が非常に少ないことから、ルツボからシリコン融液中へ溶出する不純物の増加を防止することができ、シリコン単結晶化率を高めることができる。
ルツボ本体11及び透明石英ガラス層12は共にルツボの直胴部10Aから底部10Bにわたる全体に設けられている。ルツボの直胴部10Aは円筒状であって、ルツボの開口から略真下に延びている。但し、直胴部10Aはルツボの中心軸(Z軸)に対して完全に平行である必要はなく、開口に向かって徐々に広がるように傾斜していてもよい。また、直胴部10Aは直線的であってもよく、緩やかに湾曲していてもよい。
ルツボの底部10Bは、ルツボのZ軸との交点を含む略円盤状の部分であり、底部10Bと直胴部10Aとの間には湾曲部10Cが形成されている。ルツボ底部10Bの形状はいわゆる丸底であってもよく、平底であってもよい。また、湾曲部10Cの曲率や角度も任意に設定することができる。ルツボ底部10Bが丸底の場合には、底部10Bも適度な曲率を有するため、底部10Bと湾曲部10Cとの曲率差は平底に比べて非常に小さい。ルツボ底部10Bが平底の場合には、底部10Bが平坦或いは極めて緩やかな湾曲面をなし、湾曲部10Cの曲率は非常に大きい。
ルツボ本体11の厚さは5mm以上であることが好ましく、5mm以上20mm以下であることがより好ましい。通常、口径16インチ(約400mm)以上の小型、中型又は大型ルツボの肉厚は5mm以上であり、これらのルツボは長時間の結晶製造に好ましく用いられ、本発明による効果が顕著だからである。また、ルツボ本体11の厚さが5mm以上であることから、溶射法によってルツボの外表面に薄く形成される従来の安定化層(特許文献3参照)とは明確に区別される。ルツボ本体11の厚さはルツボのサイズによって異なるが、ルツボ本体11の厚さが20mm程度有れば口径40インチ(約1000mm)の大型ルツボとして構成することが可能である。
一方、透明石英ガラス層12の厚さは0.5mm以上であることが好ましく、0.5mm以上2.0mm以下であることがより好ましい。透明石英ガラス層12が0.5mmよりも薄い場合には、シリコン単結晶の引き上げ中に透明石英ガラス層12が溶損し切ってルツボ本体11が露出するおそれがあるからである。なお、透明石英ガラス層12の厚さは直胴部10Aから底部10Bまで一定である必要はなく、例えば、湾曲部10Cにおける透明石英ガラス層12の厚さが、直胴部10Aや底部10Bにおける透明石英ガラス層12よりも厚く構成されていてもよい。
本発明による複合ルツボ10は、ルツボ本体11の基本材料がムライト質なので、従来の石英ガラスルツボよりも高温下での耐久性に優れている。特に、石英ガラスの表面に結晶化促進剤を塗布したり薄い安定化層を形成したりする強化ルツボに比べて、ルツボ本体そのものの基本的な耐久性が高い。したがって、シリコン原料を追加チャージするマルチプリング(multi-pulling)法によってひとつのルツボから複数本のシリコン単結晶を引き上げることが可能となり、シリコン単結晶の製造コストを大幅に低減することができる。
ムライトを用いた複合ルツボは、石英ガラスルツボと比べると不純物濃度(特にAl濃度)が高いことから、半導体デバイス用シリコン単結晶の引き上げに好適なルツボとは言い難い。しかしながら、シリコン融液と接するルツボ内表面は透明石英ガラス層で覆われており、シリコン融液への不純物の溶出をある程度防止することができることから、太陽電池用シリコン結晶のような不純物に対する許容度が高いシリコン結晶の引き上げには好適である。さらに、ムライトは石英原料に比べて安価であることから、コスト面でも有利であり、最終的には低価格なシリコンウェハーを提供することが可能となる。
図3は、本発明の他の好ましい実施の形態による複合ルツボの構造を模式的に示す断面図である。
図3に示すように、この複合ルツボ20は、ムライト質なルツボ本体11と透明石英ガラス層12との間に設けられた不透明石英ガラス層13を備えていることを特徴としている。不透明石英ガラス層13は、多数の微小な気泡を内包する非晶質シリカガラス層である。本明細書において「不透明」とは、石英ガラス中に多数の気泡が内在し、見かけ上、白濁した状態を意味する。不透明石英ガラス層13は、ムライト質なルツボ本体11と透明石英ガラス層12の熱膨張率の違いを緩和し、透明石英ガラス層12の割れや剥がれを防止する役割を果たす。そのため、不透明石英ガラス層13の厚さはその機能を発揮できる限りにおいて十分に薄くてよく、例えば、透明石英ガラス層12と同等又はそれ以下の厚さであることが好ましい。また、不透明石英ガラス層13は透明石英ガラス層12よりも厚くても良いが、ルツボ本体11よりも薄いことが必要であり、ルツボ本体11の厚さの1/2以下の厚さであることが好ましい。
不透明石英ガラス層13の気泡含有率は0.6%以上であることが好ましく、気泡の平均直径は100μm以下であることが好ましい。不透明石英ガラス層13の気泡含有率が0.6%未満では不透明石英ガラス層13としての機能を発揮できないからである。なお、不透明石英ガラス層13の気泡含有率は比重から求めることができる。ルツボから単位体積(1cm)の不透明石英ガラス片を切り出し、その質量をAとし、気泡を内包しない石英ガラスの比重B=2.21とするとき、気泡含有率P(%)はP=(1−A/B)×100となる。なお、石英ガラスの比重の測定原理はアルキメデス法に従う。JISによる試験方法では、例えばJIS Z8807がある。
次に、複合ルツボ10の製造方法について詳細に説明する。
複合ルツボ10はいくつかの方法で製造することができる。第1の方法は、図4に示すように、ムライト質なルツボ本体11をスリップキャスト法により形成し(ステップS11)、ルツボ本体11の外表面側に多孔質層11aを形成した後(ステップS12)、ルツボ本体11の内表面に透明石英ガラス層12を溶射法により形成する方法である(ステップS13)。スリップキャスト法はセラミック焼結体の成形方法としてよく知られている。通常、石膏等の吸水性を有する材料からなる型枠を用い、この型枠のキャビティ内に注入したスラリー(セラミック粉末の懸濁液、スリップともいう)から水分を吸収してスラリーを固化することにより行われる。得られた成形体は脱脂処理の後、焼成して最終製品とされる。この方法は、一般的には複雑形状の成形体を製造するのに適しているが、肉厚の成形体を製造するには時間がかかることから、スラリーに一定の圧力をかけながらスリップキャスト成形を行う加圧成形法も知られている。このスリップキャスト加圧成形法によれば、強制的にスラリーを脱水することができ、比較的肉厚の成形体を製造することができる。
複合ルツボ10の基本構造体であるルツボ本体11をスリップキャスト法により成形する場合、まずムライトの原料となるアルミナ粉と石英粉とを所定の比率で水に分散させてスラリーを作製した後、スラリーを型枠に流し込み、脱水することにより、アルミナとシリカを主成分とする組成物の成形体を得る。本実施形態においては、型枠を回転軸に取り付け、型枠を回転させることで強制的にスラリーを脱水することが好ましい。次に、脱水により固化した成形体をさらに一定時間乾燥させ、脱脂処理した後、1400℃で焼成して、ムライト質なルツボ本体11を形成する。
次に、本実施形態においては、ルツボ本体11の外表面をアルカリ水溶液で処理することで、主としてガラス相からなるマトリックスを溶出し、前記ムライト結晶を主な構成要素とする多孔質層を形成する。このとき、アルカリ水溶液としては水酸化ナトリウム水溶液を用いることができ、温度120〜184℃、圧力1〜10kg/cmの条件下でルツボ本体の外表面を濃度1〜10Nの水酸化ナトリウム水溶液中に3〜16時間浸漬することにより、厚さ2〜4mm程度の多孔質層が形成される。
次に、ルツボ本体11の内表面に透明石英ガラス層12を溶射法により形成する。ここで「溶射」とは、コーティング材料を加熱により溶融もしくは軟化させ(「溶」)、微粒子状にして加速し被覆対象物表面に衝突させて(「射」)、扁平に潰れた粒子を凝固・堆積させることにより皮膜を形成するコーティング技術の一種である。非溶融状態の粒子を高速で吹き付けることで皮膜を形成する技術 (kinetic spray, cold spray) も溶射の一種に含まれる。
透明石英ガラス層12は、プラズマ溶射法を用いて基材上(ルツボ本体の内表面)に石英ガラス溶射膜を形成した後、溶射原料を含まないプラズマジェットを当該形成溶射膜の表面に照射することにより、石英ガラス溶射膜の表面を溶融し、平滑性を高めることによって製造することが好ましい。
プラズマ溶射法はプラズマジェットにより基材あるいは既に形成された石英ガラス溶射膜の表面を溶融しながら成膜することが好ましい。そうすることによって密着性の高い石英ガラス溶射膜が得られる。また溶射原料粉末を溶射する過程で溶融し、基材表面に衝突後さらにプラズマジェットで溶融して基材に密着させると、溶融粒子どうしが融合し、最終的に表面粗さRaが5μm未満の平滑な溶射膜が形成され易い。最終的に表面粗さRaが5μm未満の平滑な石英ガラス溶射膜を形成するには、プラズマ溶射における溶射距離は、60mm未満、特に50mmから20mm程度まで短くすることが好ましい。
一方、減圧プラズマ溶射法を用いれば、プラズマジェットの形状が長くなる為、基材と溶射ガンの距離が60mm以上であっても石英ガラス基材表面を溶融して本発明の平滑な石英ガラス溶射膜を最終的に得ることができる。また、プラズマ溶射装置の一種である複トーチ型プラズマ溶射装置(特公平6−22719、溶射技術 Vol.11,No.1,p.1〜8(1991年))を用い、層流のプラズマジェットで溶射成膜すれば、60〜140mmの範囲でも本発明の平滑な石英ガラス溶射膜を最終的に得ることが出来る。複トーチ型プラズマ溶射装置では、ガス流量が小さい条件で長さが数百mmの層流炎プラズマとなり(通常は乱流状態で50mm程度)、溶射距離が60mm以上でも本発明の石英ガラス溶射膜を最終的に形成することが出来る。
プラズマ溶射におけるプラズマガスは、不活性ガスと水素との混合ガスであることが好ましい。不活性ガスに水素を添加する場合、水素の添加量は10〜50%、特に10〜30%添加することが好ましい。不活性ガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトンあるいは窒素等があるが、工業的には特にアルゴンあるいは窒素を用いることが好ましい。水素ガスを添加することによって、表面平滑性が高く、気泡を含まない溶射膜が得られ易い。
プラズマジェットは、上記ガスの気体放電で生じたプラズマによる数千〜数万℃の高温のガス気流である。このようなプラズマジェットは直流電源から電力を投入し、その電力を例えば25〜35kW、或いはそれ以上とするような条件とすることが好ましい。
上述のプラズマ溶射法で形成した石英ガラス溶射膜の表面に溶射原料を供給しないでプラズマジェットを照射した場合には、石英ガラス溶射膜の表面を十分に溶融して高い平滑性を達成することができる。溶射膜の成膜後のプラズマジェットの照射移動速度を速くしたり、照射パワーを小さくしたりすれば、溶射膜表面の付着物のみを溶融除去し、表面粗さ自体はそのまま維持することもできるが、石英ガラス溶射膜の表面の溶融を付着物の溶融除去だけに留めず、表面を十分に溶融することによって表面粗さRaを5μm未満にまで高めることができる。
プラズマジェットの照射条件は、溶射距離、投入パワー、プラズマガスいずれも基本的には溶射原料を供給して溶射膜を堆積する場合と同様で良い。また、プラズマジェットの照射回数は、溶射膜表面が溶融すれば1回の照射で十分であり、特に高い表面平滑性を得るためには複数回照射を繰り返しても良い。
溶射用の原料は、粉末原料を用いる場合は水晶粉末、天然石英ガラス粉末あるいは高純度の合成石英ガラス粉末等を用いることができる。特に溶射粉末の大きさは平均粒径20μm以上100μm以下のものを用いることが好ましい。平均粒径20μm未満では原料粉の流動性が悪いために、プラズマ中に均一に原料が供給できず、得られる溶射膜の形状が不均一になり易い。一方、原料粉末の粒径が100μmを越えると溶射粉末の溶融が不十分となり易く、石英ガラス溶射膜の表面が粗いものとなり、プラズマジェット再溶射による平滑化が難しい。
高純度の石英ガラス溶射膜を形成する場合には、用いる原料としては高純度の四塩化ケイ素を酸水素炎で加熱分解して合成した合成石英ガラス粉末を用いることが好ましい。高純度な四塩化ケイ素を酸水素炎中で加熱分解して合成した合成石英ガラス粉末を原料に用いた場合には、99.9999%以上の純度を有する石英ガラス溶射膜を形成することができ、高純度が要求されるシリコン単結晶引き上げ用ルツボに好適である。
図3に示したように、平滑な石英ガラス溶射膜である透明石英ガラス層12とルツボ本体11の間には、気泡を内包する不透明石英ガラス層13を形成してもよい。不透明石英ガラス層13の気泡は、プラズマ溶射法において、プラズマジェットによる基材表面の単位面積当りに与える熱量を小さくすることによって増やすことが出来る。プラズマジェットによる基材表面の単位面積当りに与える熱量を小さくすると、溶射粒子の溶融が不十分となり、石英ガラス溶射膜の中に気泡(隙間)が生じて不透明な石英ガラス溶射膜となる。プラズマジェットによる基材表面の単位面積当りに与える熱量を小さくするには、溶射パワーを下げる、溶射距離を大きくする、溶射ガンの移動速度を大きくするなどの方法が適用できる。気泡を有する不透明石英ガラス溶射層の溶射条件は、例えば、溶射距離が40〜60mm、プラズマガスには水素ガスを添加しないアルゴンガスを用いる方法等が例示できる。アルゴンガスに水素を添加すると、プラズマジェットの温度が高くなり、気泡が出来にくくなる。
気泡を内包する不透明石英ガラス層13の形成方法としては、上述の基材に対する単位時間当りの投入熱量を変化させる方法以外に、溶射原料粉末に窒化ケイ素の微粉末を混合したものを溶射粉末として用い、溶射中に分解ガスを発生させて発泡させることでも可能である。この様な原料を用いれば、溶射条件を変えなくても溶射膜中に気泡を含有させることが出来る。
ここで、溶射原料となる石英粉末に窒化ケイ素の微粉末を添加する場合は、窒化ケイ素の微粉末の平均粒径として0.5〜5μmであることが好ましく、添加量としては0.03〜3重量%であることが好ましい。窒化ケイ素の微粉末の平均粒径が0.5μm未満であれば、石英粉末に均一に窒化ケイ素の微粉末を混合させることが難しくなり、5μmを越えると気泡の直径が500μm以上となり溶射膜の機械強度が低下する。窒化ケイ素の微粉末の添加量が0.03重量%未満では気泡の生成が不十分であり、3重量%を越えると気泡同士が結合して大きな気泡となる上、気泡の分散が不均一となるため好ましくない。
以上説明したように、本実施形態による複合ルツボは、スリップキャスト法で形成したルツボ本体11の内表面に透明石英ガラス層12を溶射法で形成することにより形成することができる。
第2の方法は、図5に示すように、ムライト質なルツボ本体11を上記スリップキャスト法により形成し(ステップS21)、ルツボ本体11の外表面側に多孔質層11aを形成した後(ステップS22)、ルツボ本体11の内表面に透明石英ガラス層12をアーク溶融法によって形成する方法である(ステップS23)。スリップキャスト法によるルツボ本体11の形成方法及び多孔質層11aの形成方法は上述の通りである。
透明石英ガラス層12の形成では、回転可能なカーボンモールド内にムライトからなるルツボ本体をセットし、ルツボ本体11を一定速度で回転させながらその内壁面に沿って石英粉を投入し、ほぼ均一な厚さを有する石英粉の層を形成する。このとき、石英粉は遠心力によってルツボ本体の内表面に張り付いたまま一定位置に留まっている。その後、真空引きしながらアーク溶融して透明石英ガラス層12を形成する。カーボンモールドには真空引き用の通気孔が設けられており、通気孔から吸引することで石英粉の層内の気体をルツボの外表面側に引き寄せる。また、カーボンモールドの中心軸(回転軸)上には昇降可能なアーク電極が設けられており、アーク溶融前にはアーク電極は上方の退避位置にあるが、加熱時にはアーク電極をルツボ内部まで降下させて、石英粉を真空引きしながらアーク電極によってアーク溶融し、石英粉を溶融して透明石英ガラス層12を形成する。
この場合において、アーク溶融開始ないしアーク溶融中に電極をモールド中心線に対して相対的に側方に移動し、偏芯位置にてアーク溶融することもまた好ましい。アーク溶融時にカーボンモールドは回転しているので、アーク電極の位置を偏心させてアーク溶融したとしても、アーク電極に近づいた位置で断続的にアーク溶融されるので、リム端全体を均一に加熱溶融することができる。具体的には、例えば、口径28〜32インチ、平均肉厚11〜16mmの石英ルツボを製造する場合、ルツボ内面の温度1600〜2500℃、アーク溶融全時間20〜40分であるとき、アーク電極をリムに近づけて、アーク溶融開始から10〜20分間、局部加熱を行い、その後、引き続き、全体加熱を10〜20分間行うとよい。
さらに、真空引きの時間又は圧力を調整することにより、ルツボ本体11と透明石英ガラス層12との間に不透明石英ガラス層13を形成することもできる。図3に示すような不透明石英ガラス層13を形成することで透明石英ガラス層12の割れや剥がれを防止することができる。
以上説明したように、本実施形態による複合ルツボ10は、スリップキャスト法で形成したルツボ本体11の内表面に透明石英ガラス層12をアーク溶融法で形成することにより形成することができる。
第3の方法は、図6に示すように、ムライト質なルツボ本体11を上記スリップキャスト法により形成し(ステップS31)、ルツボ本体11の外表面側に多孔質層11aを形成した後(ステップS32)、ルツボ本体11の内表面に透明石英ガラス層12となる透明石英ガラス成形体を嵌め込みによって形成する方法である(ステップS33)。スリップキャスト法によるルツボ本体11の形成方法及び多孔質層11aの形成方法は上述の通りである。
第3の方法ではルツボ本体11とは別に透明石英ガラス成形体を予め作製しておき、この透明石英ガラス成形体をルツボ本体11の内側に嵌め込み、この状態で1500℃以上に加熱してルツボ本体11に透明石英ガラス層12を接合する。このとき、通気孔を有するモールドにルツボ本体11を収容し、ルツボ本体を外側から真空引きすることにより、両者の密着性をさらに高めることが好ましい。また、二つのルツボを重ね合わせる前にサンドブラスト又はエッチングによってルツボ本体11の内表面を粗面化し、フッ酸等で洗浄した後、石英ガラス成形体を嵌め込むことが好ましい。このようにすることで両者の接合性をさらに高めることができる。
なお、透明石英ガラス層12のみからなる石英ガラス成形体を嵌め込むのではなく、外側を不透明石英ガラス層13とし、内側を透明石英ガラス層12とする二層構造の石英ガラス成形体をルツボ本体11に嵌め込むことにより、図3に示すような不透明石英ガラス層13を中間層とする複合ルツボ20を製造することも可能である。
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能であり、それらも本発明の範囲に包含されるものであることは言うまでもない。
(実施例1)
図1に示す複合ルツボのサンプルA1を用意した。ルツボのサイズは、直径16インチ(口径約400mm)、高さ254mm、肉厚は直銅部で7mm、湾曲部で8.5mmm、底部で8.5mmとした。直胴部における透明石英ガラス層の厚さは0.5mmとし、直胴部におけるルツボ本体の厚さは6.5mmとした。さらに、ルツボの外表面をアルカリ水溶液で処理することで、主としてガラス相からなるマトリックスを溶出し、ムライト結晶を主な構成要素とする多孔質層を形成した。多孔質層の平均厚さは約2mmであった。また、多孔質層形成前のルツボサンプルA1の重量は5.9kgであり、多孔質層形成後の重量は5.3kgであった。次に、ルツボサンプルA1を炉内で長時間加熱し続け、ルツボの変形状態を確認した。加熱温度は1500℃、加熱時間は120時間とした。その結果を表1に示す。
Figure 0005128570
表1に示すように、外表面に多孔質層が形成された厚さ約6.5mmのムライト質ルツボ本体を有するルツボサンプルA1では、120時間の耐熱試験において肉眼で観察できる変形及び座屈は生じなかった。
(比較例1)
内層が透明石英ガラス層、外層が不透明石英ガラス層で構成された一般的な石英ガラスルツボのサンプルB1を用意した。ルツボのサイズは、直径16インチ(口径約400mm)、高さ254mm、肉厚は直銅部で7mm、湾曲部で8.5mmm、底部で8.5mmであった。直胴部の透明石英ガラス層の厚さは0.5mmとし、直胴部の不透明石英ガラス層の厚さは6.5mmとした。次に、それらを炉内で長時間加熱し続け、ルツボの変形状態を確認した。上記実施例と同様、加熱温度は1500℃、加熱時間は120時間とした。その結果を表2に示す。
Figure 0005128570
表2に示すように、一般的な石英ガラスルツボのサンプルB1では、長時間の加熱後に直胴部が部分的に内倒れすると共に座屈も生じ、真円度の大幅な低下が見られた。
(比較例2)
ルツボの外表面近傍に高濃度のAl含有層が形成された点以外は上記ルツボサンプルB1と同一構成を有する石英ガラスルツボ(Al強化石英ガラスルツボ)のサンプルB2を用意した。Al含有層の厚さは直胴部において0.5mmとし、そのAl濃度は100ppmとした。なお、Al含有層は不透明石英ガラス層の外表面近傍に形成された層であり、不透明石英ガラス層の一部である。次に、それらを炉内で長時間加熱し続け、ルツボの変形状態を確認した。上記実施例と同様、加熱温度は1500℃、加熱時間は120時間とした。その結果を表2に示す。
表2に示すように、Al含有層を有する石英ガラスルツボのサンプルB2では、座屈は生じなかったが直胴部の内倒れが生じた。
10 複合ルツボ
10A 直胴部
10B 底部
10C 湾曲部
11 ムライト質ルツボ本体
11a 多孔質層
12 透明石英ガラス層
13 不透明石英ガラス層

Claims (6)

  1. 直胴部及び底部を有し、シリコン融液を支持するための複合ルツボであって、
    アルミナとシリカを主成分とする組成物を焼結して得られるムライト質なルツボ本体と、前記ルツボ本体の内表面側に形成された透明石英ガラス層とを備え、
    前記透明石英ガラス層の厚さは前記ルツボ本体の厚さよりも薄く、
    前記ルツボ本体の外表面には主として針状又は柱状のムライト結晶から構成される多孔質層が形成されていることを特徴とする複合ルツボ。
  2. 前記ルツボ本体の厚さは5mm以上であり、透明石英ガラス層の厚さは0.5mm以上であって前記ルツボ本体の厚さよりも薄いことを特徴とする請求項1に記載の複合ルツボ。
  3. 前記ルツボ本体に含まれるアルミニウムの濃度は、外表面側から内表面側に向かって低下する濃度勾配を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の複合ルツボ。
  4. 前記ルツボ本体と前記透明石英ガラス層との間に設けられた多数の微小な気泡を含む不透明石英ガラス層をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の複合ルツボ。
  5. 直胴部及び底部を有し、シリコン融液を支持するための複合ルツボの製造方法であって、
    アルミナとシリカを主成分とする組成物を焼結することによりムライト質なルツボ本体を形成する工程と、
    前記ルツボ本体の外表面をアルカリ水溶液で処理することで、主としてガラス相からなるマトリックスを溶出し、ムライト結晶を主な構成要素とする多孔質層を形成する工程と、
    前記ルツボ本体の内表面に透明石英ガラス層を形成する工程とを備えることを特徴とする複合ルツボの製造方法。
  6. 前記透明石英ガラス層を形成する前に、前記ルツボ本体の内表面側に多数の微小な気泡を含む不透明石英ガラス層を溶射法により形成することを特徴とする請求項5に記載の複合ルツボの製造方法。
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