JP5126513B2 - シェル中子の成形方法 - Google Patents

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Description

本発明は、シェル中子の成形方法に関し、特に、シェル砂を金型内で加熱することにより成形されたシェル中子を位置決め固定してバリを除去するシェル中子の成形方法に関するものである。
たとえば中空の鋳造品を成形するために、シェル中子が用いられている。一般に、シェル中子は、熱硬化性樹脂が被覆された鋳砂(シェル砂)を金型内に充填して、成形するとともに加熱することにより硬化させて造型するもので、中空の鋳造品を成形した後には破壊されて、鋳造品の内部から排出される。
ところで、シェル中子を金型で造型する場合、一般に、金型の衝合面の間にシェル砂が入り込み、成形されたシェル中子には、バリが発生する。そのため、造型されたシェル中子のバリを除去することが行われている。このバリ取りを行うための従来の技術としては、図4に示すように、シェル中子を造型し(S1’)、このシェル中子を金型から取り出して治具により位置決め固定して(S3’)、棒状などのバリ取り具をロボットにより移動させて、バリ取り具によりバリを除去する中子バリ取りサイクルを行い(S4’)、中子バリ取りが完了(S5’)した後に、鋳型に組み込んで鋳造を行い(S6’)、成形された鋳造品の内部のシェル中子を破壊して砂を除去する工程(S7’)が行われていた。
また、バリ取りを行うための別の従来の技術として、特許文献1が知られている。特許文献1には、鋳物砂で造型したバリ付砂中子を、液体窒素の中に浸して該砂中子の表面を凍結硬化させ、該凍結した砂中子にプラスチック粒等の軽量投射材を射出速度10〜50m/secで持って投射して砂中子のばりを除去することを特徴と砂中子のバリ取り方法が開示されている。
特開昭62−28046号公報
しかしながら、上述した従来の技術のうち、図4に示したように、造型されたシェル中子を治具により位置決め固定して(S3’)、バリ取りサイクルを行う(S4’)ものにあっては、シェル中子を加熱硬化させて造型するためにたとえば280°C程度に加熱されており、かかる温度のシェル中子は、設定成形寸法よりもたとえば0.7〜0.8%程度膨張した状態となっている。そして、この金型からシェル中子を取り出して治具で位置決め固定するときには、170〜200°C程度となっており、図4にグラフ(実際に温度を測定できたのは140°Cからである。)で示したように、その後も自然放熱により常温となるまで冷却しつつバリ取りサイクルを行っていた。このとき、シェル中子は、温度降下に伴って、膨張した状態から常温で設定された成形寸法となるまで収縮する。図4に示したグラフ(シェル中子の全長が430mmの場合)では、シェル中子を位置決めするとき(S3’)には、140°Cまで温度降下した状態で少なくとも1.25mm程度膨張しているのに対して、バリ取りサイクル(S’)が終了するときには常温となって膨張がゼロとなるまで収縮する。そのため、治具によるシェル中子の位置決め精度を向上させることができないという問題があった。そして、自然放熱による冷却では、シェル中子が金型から取り出されてから常温となるまでに20分程度かかるため、シェル中子を安定して精度よく成形するのに時間がかかり、成形効率を向上させることができないという問題もあった。また、バリ取り具を移動させるロボットは、シェル中子の設定された寸法にしたがってティーチングなどのプログラムが組まれているため、金型から取り出された高温のシェル中子の温度膨張に応じてロボットによるバリ取り具の移動軌跡のプログラムを修正する必要があり、正確にバリ取りを行うことが困難であるという問題やプログラムの修正に手間がかかるなどの問題もあった。さらに、上記従来の技術にあっては、高温のシェル中子を常温となるまで自然放熱しているため、余熱でシェル中子の内部まで熱硬化が継続して進行するため、強度が必要以上に高くなり、中空の鋳造品を鋳造により成形した後にシェル中子を破壊して鋳造品の内部から排出する(S7’)ことが困難であるという問題もあった。
また、上記従来の技術のうち、特許文献1にあっては、ショットブラストにより中子の表面を荒らすことなくバリを除去することを目的として、常温よりも極度な低温の液体窒素(−196°C)の中に浸して曲げ応力を減少させてもろくするとともに中子表面全体を硬化させるものであった。そして、特許文献1にあっては、液体窒素を使用するため、コストがかかるという問題があった。
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、精度よく安定してバリが除去されたシェル中子を成形することができ、しかも、中空の鋳造品を成形した後に容易に破壊して鋳造品の内部から排出することができるシェル中子の成形方法を提供することを目的とする。
請求項1のシェル中子の成形方法に係る発明は、上記目的を達成するため、シェル砂を金型内で加熱してシェル中子を造型し、該シェル中子を金型内から取り出して位置決め固定しバリをバリ取り具によって除去するシェル中子の成形方法であって、前記造型されたシェル中子を位置決め固定する前に、90°C〜常温に強制冷却することにより、その余熱を取り除き、シェル中子の表面のみを熱硬化させて、断面内部の熱硬化を抑制することを特徴とするものである。
請求項1のシェル中子の成形方法に係る発明によれば、シェル砂を金型内で加熱してシェル中子を造型し、シェル中子を金型内から取り出し、所定時間で90°C〜常温に強制冷却してから、位置決めする。造型されたシェル中子の膨張が収縮され安定した状態となるため、精度よく安定して位置決め固定することができる。そのため、シェル中子のバリを安定して精度よく除去することができる。また、シェル中子を強制冷却することにより、その余熱が取り除かれるため、シェル中子の表面のみを熱硬化させて、断面内部の熱硬化を抑制することができ、したがって、シェル中子の強度が必要以上に高くならないことから、中空の鋳造品を成形した後に容易に破壊して鋳造品の内部から排出することができる。
(発明の態様)
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当する。
(1) シェル砂を金型内で加熱してシェル中子を造型し、該シェル中子を金型内から取り出して位置決め固定してバリを除去するシェル中子の成形方法であって、
前記造型されたシェル中子を位置決め固定する前に、90°C〜常温に強制冷却することにより、その余熱を取り除き、シェル中子の表面のみを熱硬化させて、断面内部の熱硬化を抑制することを特徴とするシェル中子の成形方法。
(1)項の発明では、シェル砂を金型内で加熱してシェル中子を造型し、該シェル中子を金型内から取り出して、90°C〜常温に強制冷却することにより、その余熱を取り除き、シェル中子の表面のみを熱硬化させて、断面内部の熱硬化を抑制するため、造型されたシェル中子を安定して精度よく位置決め固定した状態とすることができ、そのため、安定して精度よくバリが除去されたシェル中子を成形することができ、また、シェル中子の強度が必要以上に高くならないことから、中空の鋳造品を成形した後に容易に破壊して鋳造品の内部から排出することができる。
) 前記造型されたシェル中子を、6〜0.5分間強制冷却することを特徴とする(1)項に記載のシェル中子の成形方法。
)項に記載の発明では、(1)項に記載の発明において、造型されたシェル中子を最長で6分〜最短で30秒間という自然放熱による冷却と比較して短時間で強制冷却することにより、単に強制冷却する時間を短縮するだけではなく、余熱を確実に抑制することができ、したがって、シェル中子の断面内部の熱硬化を抑制することができるため、シェル中子の強度が必要以上に高くなることがないことから、中空の鋳造品を成形した後に容易に破壊して鋳造品の内部から排出することができる。
) シェル砂を金型内で加熱してシェル中子を造型し、該シェル中子を金型内から取り出して位置決め固定し、位置決め固定されたシェル中子のバリを除去するシェル中子の成形方法であって、
前記造型されたシェル中子を強制冷却して、その断面内部の熱硬化を抑制することを特徴とするシェル中子の成形方法。
)項の発明では、表面は熱硬化して造型されたシェル中子を強制冷却して余熱を取り除き、その断面内部の熱硬化を抑制することにより、シェル中子の強度を必要以上に高くすることがないことから、中空の鋳造品を成形した後にシェル中子を容易に破壊して鋳造品の内部から排出することができる。
) 前記造型されたシェル中子の表面に常温の空気を吹き付けることにより強制冷却することを特徴とする(1)〜()項のいずれか1項に記載のシェル中子の成形方法。
)項に記載の発明では、(1)〜()項のいずれか1項に記載の発明において、造型されたシェル中子の表面に常温の空気を吹き付けることにより強制冷却するため、シェル中子を確実に常温以上の所定の温度まで所定時間で安定して精度よく温度降下させて収縮させてから位置決め固定してバリを取り除くことができる。また、シェル中子の表面のみを熱硬化させて、断面内部の熱硬化を抑制することができるため、シェル中子の強度を必要以上に高くすることがなく、したがって、中空の鋳造品を成形した後に容易に破壊して鋳造品の内部から排出することができる。
本発明のシェル中子の成形方法を図1〜図3に基づいて詳細に説明する。
本発明のシェル中子の成形方法は、概略、シェル砂を金型内で加熱してシェル中子を造型し(S1)、このシェル中子を金型内から取り出して強制冷却し(S2)、その後、位置決め固定して(S3)、バリを除去するものである。そして、造型されたシェル中子の強制冷却は、90°C〜常温に、6分〜30秒の範囲の間でシェル中子の表面に常温の圧縮空気を吹き付けることにより行う。そして、造型されたシェル中子Cを強制冷却することにより余熱を取り除いて、その表面Caのみを熱硬化させて、断面内部Cbの熱硬化を抑制するものである。ここで、常温とは、シェル中子を特に熱したり冷すことなく暫く室温の下で放置した場合に落ち着く平常の温度の意味で用いることとする。
シェル中子を成形するに際しては、最初に、砂と熱硬化性樹脂を混ぜ合わせて砂粒に熱硬化性樹脂を被覆してシェル砂を構成する。そしてシェル砂を金型のキャビティ内に吹き込み充填してたとえば280°C程度に加熱する。そして金型のキャビティに接しているシェル砂が加熱されて硬化しシェル中子Cが造型されたら、金型を開いてシェル中子Cを取り出す。このときのシェル中子Cは、造型時に金型の衝合面にシェル砂が吹き込み、バリが形成された状態となっている。そして、金型から取り出されたシェル中子Cは、時間の経過に伴って温度が200〜170°C程度となっており、寸法が0.7〜0.8%程度膨張した状態(図1に示した実施の形態では、たとえば常温状態での設定された長さが430mmのシェル中子Cで、3.00mm程度膨張した状態)となっている。
次いで、図2に示すように、造型されたシェル中子Cを強制冷却装置の台10に載置する。強制冷却装置は、シェル中子Cを支持する台10と、台10に支持されたシェル中子Cの表面に向かって開口する複数のノズル11と、複数のノズル11が接続されるチャンバ12と、チャンバ12内に常温の空気を圧縮して送る送風装置13と、チャンバ12と送風装置13とを接続する管路14とを備えている。送風装置13から管路14を介して送られた圧縮空気は、チャンバ12に一旦入り、各ノズル11から均等な圧力、流量で、たとえば25m/秒の速度で台10上に支持されたシェル中子Cの表面全体に約2分間吹き付けられる。そのため、金型から取り出されたときの温度が200〜170°C程度であったシェル中子Cは、図1にグラフ(図1におけるグラフでは、実際にシェル中子の温度を測定できたのが140°Cからであり、このときの膨張は約1.50mmである。)で示したように、収縮が完了し(膨張がほぼ0mmである)寸法が安定する常温に近い50°Cまで強制的に冷却される。すなわち、シェル中子は、強制冷却されることにより、この実施の形態では設定された長さ=430mmに収縮が促進されて、寸法が安定することとなる。
そして、従来の自然放熱による冷却(図4のグラフを参照)では、ほぼ常温に温度降下するまで20分かかっていたので、図3の(a)に示すように、シェル中子C’は、その余熱により熱硬化が継続し、断面全体が硬化することとなるため、強度が必要以上に高くなって後に破壊して除去する(図4のS7’を参照)のが困難となっていた。これに対して、本発明では、本発明では図1のグラフに示されているように、造型されたシェル中子Cを2分間という比較的短時間でほぼ常温まで強制冷却することにより、余熱が取り除かれて、図3の(b)に示すように、表面から所定の深さの層Caは従来と同様に造型時に金型のキャビティに接して加熱されることにより硬化しているが、断面における内部Cbはシェル砂の表面に被覆された熱硬化性樹脂同士の結合が疎となって硬化を抑制されており、強度が低下している。この実施の形態では、実験の結果、従来の自然放熱により冷却してシェル中子C’の断面全体を硬化させた場合に対して、本発明により強制冷却して余熱を取り除くことにより表面Caのみを硬化させて断面内部Cbの硬化を抑制した場合には強度が15%程度低下した。そのため、後述する砂除去(図1のS7を参照)を容易に行うことができる。なお、図3は、従来の技術と本発明とを比較して説明するためにシェル中子を適当にモデル化した断面形状で示したが、本発明はこの断面形状に限定されることはない。
なお、この実施の形態では、金型によりシェル中子を造型するための1サイクルが約2分であり、これに合わせて強制冷却を2分間行ったところ、上述したようにシェル中子の膨張がなくなり、シェル中子の造型と強制冷却とのサイクルタイムが調和した。しかしながら、本発明は、この実施の形態に限定されることはなく、シェル中子の寸法が安定し余熱を取り除くことができる時間の長さとして、0.5分(30秒)〜6分間強制冷却することが含まれる。
また、強制冷却によりシェル中子を降下させる温度は、バリ取りを行うために位置決め固定する治具の許容度や、断面内部Cbの熱硬化を抑制する割合などによって変更することができる。たとえば、シェル中子の寸法が0.15mm膨張した状態であっても、位置決め固定してバリ取りを行うのに大きな影響を及ぼさない場合には、シェル中子を約70°Cまで強制冷却すればよい。
次いで、バリ取りサイクルを行うべくシェル中子の両端を治具で挟むようにして位置決め固定する(図1のS3)。このとき、シェル中子は膨張した状態から強制冷却されてほぼ常温まで温度降下していることにより収縮しており寸法が安定しているため、治具によって精度よく位置決め固定されることとなる。そして、ロボットのアームに保持された棒状などのバリ取り具をロボットにより移動させて、中子バリ取りサイクルを行ってバリを除去する(図1のS4)。シェル中子が精度よく位置決め固定されており、しかも、常温に温度降下して寸法が安定していることにより、ロボットはバリ取り具を成形するシェル中子の形状に応じて移動させればよく、従来のようにティーチングされた移動軌跡のプログラムを調整・変更することなく、精度よく確実にバリを除去してシェル中子を成形することができる。以上のようにしてバリ取りが完了すると(図1のS5)、成形されたシェル中子は、鋳型のキャビティ内に配設される。
鋳型を閉じてキャビティを形成し、その内部に溶湯を射出・充填して鋳造を行う(図1のS6)。このとき、鋳造品にはシェル中子によって中空となる部分が形成される。溶湯の温度が低下することにより固化して所定形状の鋳造品を成形すると、鋳造品を金型から取り出し、シェル中子を破壊して鋳造品の中から排出させる(図1のS7)。上述したように、シェル中子の表面は熱硬化されているものの、シェル中子の断面内部は強制冷却によって熱硬化の程度が低く抑止されて強度を低下させているため、容易に破壊して鋳造品の内部から排出することができる。
本発明の工程を示した説明図である。 本発明の造型されたシェル中子を強制冷却するために使用される装置を説明するための概念図である。 従来の技術により、シェル中子の余熱を除去することなく自然放熱により冷却した場合にシェル中子全体が硬化した場合(a)と、本発明によりシェル中子を強制冷却してその表面のみを硬化させ、断面内部の硬化を抑制した場合(b)とを説明するために示した断面図である。 従来の工程を示した説明図である。
S2:シェル中子の強制冷却工程、 C:シェル中子、 Ca:熱硬化した表面層、 Cb:硬化が抑制された断面内部、 10:台、 11:ノズル、 12:チャンバ、 13:送風装置

Claims (1)

  1. シェル砂を金型内で加熱してシェル中子を造型し、該シェル中子を金型内から取り出して位置決め固定してバリを除去するシェル中子の成形方法であって、
    前記造型されたシェル中子を位置決め固定する前に、90°C〜常温に強制冷却することにより、その熱を取り除き、シェル中子の表面のみを熱硬化させて、断面内部の熱硬化を抑制することを特徴とするシェル中子の成形方法。
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