JP5126434B1 - 圧延銅箔 - Google Patents

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Abstract

【課題】再結晶焼鈍工程後に、優れた屈曲特性を具備させる。
【解決手段】主表面に平行な{022}面、{113}面、{111}面、{133}面、及び{002}面の、合計値が100となるように換算された回折ピーク強度比をそれぞれI{022}、I{002}、I{113}、I{111}、及びI{133}とし、{022}面、{113}面、{111}面、{133}面、及び{002}面を有する粉末銅の、合計値が100となるように換算された回折ピーク強度比をそれぞれI0{022}、I0{113}、I0{111}、I0{133}、及びI0{002}としたとき、I{022}/I0{022}≧7.0であり、I{113}/I0{113}≧0.40であり、I{111}/I0{111}≧0.090であり、且つ、I{133}/I0{133}≧1.4である。
【選択図】図1

Description

本発明は、圧延銅箔に関し、特に、フレキシブルプリント配線板に用いられる圧延銅箔に関する。
フレキシブルプリント配線板(FPC:Flexible Printed Circuit)は、薄くて可撓性に優れることから、電子機器等への実装形態における自由度が高い。そのため、折り畳み式携帯電話の折り曲げ部やデジタルカメラ、プリンタヘッド等の可動部、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)、デジタルバーサタイルディスク(DVD:Digital Versatile Disk)、コンパクトディスク(CD:Compact Disk)等のディスク関連機
器の可動部の配線等には、FPCが用いられることが多い。したがって、FPCやその配線材として用いられる圧延銅箔には、優れた屈曲特性が要求されてきた。
FPC用の圧延銅箔は、熱間圧延、冷間圧延等の工程を経て製造され、接着剤を介し或いは直接的に、ポリイミド等の樹脂からなるFPCのベースフィルム(基材)と加熱等により貼り合わされ、エッチング等の表面加工を施されて配線となる。圧延銅箔の屈曲特性は、冷間圧延後の加工硬化した硬質な状態より、焼鈍後の再結晶により軟化した状態の方が著しく向上する。そこで、例えば上述の製造工程においては、冷間圧延後の圧延銅箔を用いて伸びやしわ等の変形を避けつつ圧延銅箔を裁断し、基材上に重ね合わせた後に、圧延銅箔の再結晶焼鈍も兼ねて加熱することにより圧延銅箔と基材とを密着させ一体化する製造方法が採られる。
上述のFPCの製造工程を前提として、屈曲特性に優れた圧延銅箔やその製造方法についてこれまでに種々の研究がなされ、圧延銅箔の表面に立方体方位である{002}面({200}面)が発達するほど屈曲特性が向上することが数多く報告されている。
そこで、例えば、特許文献1では、最終冷間圧延の直前の焼鈍を、再結晶粒の平均粒径が5μm〜20μmになる条件下で行い、最終冷間圧延での圧延加工度を90%以上としている。これにより、再結晶組織に調質した状態において、圧延面のX線回折で求めた{200}面の強度Iが、微粉末銅のX線回折で求めた{200}面の強度Iに対し、I/I>20である立方体集合組織を得る。
また、例えば、特許文献2では、最終冷間圧延前の立方体集合組織の発達度を高め、最終冷間圧延での加工度を93%以上とし、更に再結晶焼鈍を施すことにより、{200}面の積分強度がI/I≧40の、立方体集合組織が著しく発達した圧延銅箔を得る。
また、例えば、特許文献3では、最終冷間圧延工程における総加工度を94%以上とし、かつ1パスあたりの加工度を15%〜50%に制御する。これにより、再結晶焼鈍後には、X線回折極点図測定により得られる圧延面の{200}面に対する{111}面の面内配向度Δβが10°以下であり、かつ圧延面における立方体集合組織である{200}面の規格化した回折ピーク強度[a]と{200}面の双晶関係にある結晶領域の規格化した回折ピーク強度[b]との比が、[a]/[b]≧3である結晶粒配向状態を得る。
このように、従来技術では、最終冷間圧延工程の総加工度を高くすることで、再結晶焼鈍工程後に圧延銅箔の立方体集合組織を発達させて屈曲特性の向上を図っている。
特許第3009383号公報 特許第3856616号公報 特許第4285526号公報
しかしながら、上記の特許文献1〜3のように、立方体集合組織を多く発現させたとしても、多結晶構造をとる圧延銅箔において立方体集合組織である{002}面が100%を占めることはない。つまり、圧延銅箔中には主方位の{002}面以外にも、{113}面、{111}面、{133}面等の副方位の結晶面が制御されることなく複数混在している。
近年では、電子機器の小型化や薄型化に伴って小スペースへFPCを組み込むことが増え、より小さいスペース内でFPCやその配線材の性能の信頼性を確保しなければならない。これに応じて、配線材となる圧延銅箔の屈曲特性に対する要求も高まっており、ただ単に主方位の{002}面にのみ着目し、立方体集合組織の比率を高めるという上記特許文献1〜3の手法には限界がある。
本発明の目的は、再結晶焼鈍工程後に、優れた屈曲特性を具備させることが可能な圧延銅箔を提供することである。
本発明の第1の態様によれば、
主表面を備え、前記主表面に平行な複数の結晶面を有する最終冷間圧延工程後、再結晶焼鈍工程前の圧延銅箔であって、
前記複数の結晶面には{022}面、{113}面、{111}面、{133}面、及び{002}面が含まれ、
前記主表面に対する2θ/θ法を用いたX線回折測定から求められ、合計値が100となるように換算された前記各結晶面の回折ピーク強度比をそれぞれI{022}、I{113}、I{111}、I{133}、及びI{002}とし、
{022}面、{113}面、{111}面、{133}面、及び{002}面を有する粉末銅についてのJCPDSカード又はICDDカードに記載の前記各結晶面の標準的な回折ピークの相対強度から求められ、合計値が100となるように換算された前記各結晶面の回折ピーク強度比をそれぞれI0{022}、I0{113}、I0{111}、I0{133}、及びI0{002}としたとき、
{022}/I0{022}≧7.0であり、
{113}/I0{113}≧0.40であり、
{111}/I0{111}≧0.090であり、且つ、
{133}/I0{133}≧1.4である
圧延銅箔が提供される。
本発明の第2の態様によれば、
{002}/I0{002}≦0.25である
第1の態様に記載の圧延銅箔が提供される。
本発明の第3の態様によれば、
JIS C1020に規定の無酸素銅、又はJIS C1100に規定のタフピッチ銅を主成分とする
第1又は第2の態様に記載の圧延銅箔が提供される。
本発明の第4の態様によれば、
銀、硼素、チタン、錫の少なくともいずれかが添加されている
第1〜第3の態様のいずれかに記載の圧延銅箔が提供される。
本発明の第5の態様によれば、
総加工度が90%以上の前記最終冷間圧延工程により厚さが20μm以下となっている第1〜第4の態様のいずれかに記載の圧延銅箔が提供される。
本発明の第6の態様によれば、
フレキシブルプリント配線板用である
第1〜第5の態様のいずれかに記載の圧延銅箔が提供される。
本発明によれば、再結晶焼鈍工程後に、優れた屈曲特性を具備させることが可能な圧延銅箔が提供される。
本発明の一実施形態に係る圧延銅箔の製造工程を示すフロー図である。 2θ/θ法を用いたX線回折の測定結果であって、(a)本発明の実施例に係る圧延銅箔のX線回折チャートであり、(b)比較例に係る圧延銅箔のX線回折チャートである。 本発明の実施例に係る圧延銅箔の屈曲特性を測定する摺動屈曲試験装置の模式図である。 純銅型金属の逆極点図であって、(a)は引張変形による結晶回転方向を示す逆極点図であり、(b)は圧縮変形による結晶回転方向を示す逆極点図である。 最終冷間圧延工程後、再結晶焼鈍工程前の圧延銅箔の結晶方位を示す逆極点図である。
<本発明者等が得た知見>
上述のように、FPC用途で求められる屈曲特性の高い圧延銅箔を得るには、圧延面の立方体方位を発達させるほど良い。本発明者等も、立方体方位の占有率を増大させるべく種々の実験を行ってきた。そして、それまでの実験結果から、最終冷間圧延工程後に存在していた{022}面が、その後の再結晶焼鈍工程によって再結晶に調質されると、{002}面、すなわち立方体方位となることを確認した。つまり、最終冷間圧延工程後、再結晶焼鈍工程前においては、{022}面が主方位となっていることが好ましい。
一方、圧延銅箔は多結晶であるため、圧延面全体がひとつの結晶面で100%占められることはなく、例えば最終冷間圧延工程後の状態においては、主方位である{022}面以外にも、{113}面、{111}面、{133}面等の副方位の結晶面が複数混在し、これらの複数の結晶面を有する結晶粒は、圧延銅箔の諸特性に種々の影響を及ぼすと考えられる。そこで、本発明者等は、これまで不要とされてきた副方位の結晶面に着目し、主方位の占有率を維持して高い屈曲特性を確保しつつ、これら副方位の結晶面を更なる屈曲特性の向上に寄与させることができないか検討してきた。
このような鋭意研究の結果、本発明者等は、{113}面、{111}面、{133}面等の副方位の結晶面の比率について、銅の標準的な副方位の結晶面の比率からのズレを制御することで、圧延銅箔の屈曲特性を一層向上させることができることを見いだした。
本発明は、発明者等が見いだした上記知見に基づくものである。
<本発明の一実施形態>
(1)圧延銅箔の構成
まずは、本発明の一実施形態に係る圧延銅箔の結晶構造等の構成について説明する。
(圧延銅箔の概要)
本実施形態に係る圧延銅箔は、例えば主表面としての圧延面を備える板状に構成されている。この圧延銅箔は、例えば無酸素銅(OFC:Oxygen-Free Copper)やタフピッチ銅等の純銅を原材料とする鋳塊に、後述の熱間圧延工程や冷間圧延工程等を施し所定厚さとした、最終冷間圧延工程後、再結晶焼鈍工程前の圧延銅箔である。すなわち、本実施形態に係る圧延銅箔は、例えばFPCの可撓性の配線材用途に用いられるよう、総加工度が90%以上、より好ましくは94%以上の最終冷間圧延工程により厚さが20μm以下に構成されており、この後、上述のように、例えばFPCの基材との貼り合わせの工程を兼ねて再結晶焼鈍工程が施され、再結晶することにより優れた屈曲特性を具備させることが企図されている。
原材料となる無酸素銅は、例えばJIS C1020,H3100等に規定の純度が99.96%以上の銅材である。酸素含有量は完全にゼロでなくともよく、例えば数ppm程度の酸素が含まれていてもよい。また、タフピッチ銅は、例えばJIS C1100,H3100等に規定の純度が99.9%以上の銅材である。タフピッチ銅の場合、酸素含有量は例えば100ppm〜600ppm程度である。これらの銅材に銀(Ag)等の所定の添加材を微量に加えて希薄銅合金とし、耐熱性等の諸特性が調整された圧延銅箔とする場合もある。本実施形態に係る圧延銅箔には純銅と希薄銅合金との両方を含むことができ、原材料の銅材質や添加材による本実施形態の効果への影響はほとんど生じない。
最終冷間圧延工程における総加工度は、最終冷間圧延工程前の加工対象物(銅の板材)の厚さをTとし、最終冷間圧延工程後の加工対象物の厚さをTとすると、総加工度(%)=[(T−T)/T]×100で表わされる。総加工度を90%以上、より好ましくは94%以上とすることで、高い屈曲特性を有する圧延銅箔が得られる。
(圧延面の結晶構造)
上記圧延銅箔は、圧延面に平行な複数の結晶面を有している。具体的には、最終冷間圧延工程後、再結晶焼鈍工程前の状態で、複数の結晶面には、{022}面、{113}面、{111}面、{133}面、及び{002}面が含まれる。{022}面は圧延面における主方位となっており、その他の各結晶面は副方位である。このように、圧延面において、各結晶面はそれぞれが所定の占有率を有するよう制御されている。
具体的には、各結晶面の占有率について、銅の標準的な結晶面の占有率からのズレを制御する。各結晶面の占有率は、X線回折測定から求めた各結晶面の回折ピーク強度比に略等しく、上記のズレは回折ピーク強度比により規定し、制御することができる。各結晶面の回折ピーク強度比は、以下のように求めることができる。
すなわち、本実施形態に係る圧延銅箔の圧延面について、2θ/θ法を用いたX線回折により測定した上記5つの結晶面の回折ピーク強度を合計値が100となるような比に換算し、各結晶面の回折ピーク強度比を求める。各結晶面の回折ピーク強度比のうち、代表として{022}面の回折ピーク強度比を求める換算式(A)を以下に示す。ここで、圧延銅箔における各結晶面の回折ピーク強度比をそれぞれI{022}、I{113}、I{111}、I{133}、及びI{002}とし、各結晶面の回折ピーク強度をそれぞれI’{022}、I’{113}、I’{111}、I’{133}、及びI’{00
2}とする。
Figure 0005126434
また、銅の標準的な回折ピークとしては、例えば、{022}面、{113}面、{111}面、{133}面、及び{002}面を有する粉末銅の回折ピークが挙げられる。例えばJCPDS(Joint Committee for Powder Diffraction Standards)カード(カード番号:40836)、又はICDD(International Center for Diffraction Data)
カードには、係る回折ピークの相対強度が記載されている。
上記5つの結晶面の標準的な回折ピークの相対強度を合計値が100となるような比に換算し直し、粉末銅について各結晶面の回折ピーク強度比を求め、これらを上記圧延銅箔の各結晶面の回折ピーク強度比のズレを規定する基準値とすることができる。各結晶面の回折ピーク強度比のうち、代表として{022}面の回折ピーク強度比を求める換算式(B)を以下に示す。ここで、粉末銅における各結晶面の回折ピーク強度比をそれぞれI0{022}、I0{113}、I0{111}、I0{133}、及びI0{002}とし、各結晶面の回折ピーク強度をそれぞれI{022}、I{113}、I{111}、I{133}、及びI{002}とする。
Figure 0005126434
本実施形態に係る圧延銅箔においては、上記粉末銅における各結晶面の回折ピーク強度比を基準値とする以下の式(1)〜(4)が全て成り立つ関係にある。
{022}/I0{022}≧7.0・・・(1)
{113}/I0{113}≧0.40・・・(2)
{111}/I0{111}≧0.090・・・(3)
{133}/I0{133}≧1.4・・・(4)
また、本実施形態に係る圧延銅箔において、好ましくは以下の式(5)が成り立つ。
{002}/I0{002}≦0.25・・・(5)
(結晶構造の作用)
以上により、本実施形態に係る圧延銅箔は、再結晶焼鈍工程後には、優れた屈曲特性を具備するよう構成される。
つまり、上述のように、再結晶焼鈍工程前の圧延銅箔の{022}面は再結晶焼鈍工程後に{002}面へと変化し、圧延銅箔の屈曲特性を向上させる。後述の実施例等の結果によると、このような変化が起こるためには、基準となる粉末銅の{022}面の回折ピーク強度比I0{022}に対し、圧延銅箔の{022}面の回折ピーク強度比I{022}が所定のズレ幅以上となっていること、すなわち、例えば上記の式(1)を満たして
いることが必要となる。このとき、式(1)の値は大きければ大きいほど好ましいが、圧延銅箔は多結晶であり、{022}面が圧延面を100%占めることは無いという点が前提となる。
また、再結晶焼鈍工程前の圧延銅箔の{113}面、{111}面、及び{133}面の回折ピーク強度比I{113}、I{111}、及びI{133}の基準値からのズレ幅は、最終冷間圧延工程にて圧延銅箔が受けた加工歪の蓄積度合いを表わすと捉えることができる。つまり、上記の式(2)〜(4)を満たすとき、{113}面、{111}面、及び{133}面の各結晶粒には加工歪が多く蓄積しているといえる。本発明者等の考察によれば、このように蓄積された加工歪は、再結晶焼鈍工程において圧延銅箔の再結晶を促進させ、{002}面をより多く成長させることができる。このとき、式(2)〜(4)の値は大きければ大きいほど好ましいが、{022}面が主方位となっていることが前提となる。
一方で、{002}面には加工歪は蓄積し難いといわれている。よって、再結晶焼鈍工程前の圧延銅箔の{002}面の回折ピーク強度比I{002}の基準値からのズレ幅は、上記のような加工歪の蓄積度合いを表わすのではなく、基準となる粉末銅に対する{002}面の量の多寡を表わすと捉えることができる。上記の式(5)を満たすとき、圧延銅箔の{002}面の量は少ないままに抑えられているといえる。本発明者等の考察によれば、最終冷間圧延工程後、再結晶焼鈍工程前の{002}面の量を抑えることで、加工歪の少ない{002}面の結晶粒が、他の結晶方位を有する結晶粒の再結晶による成長を阻害するのを抑制することができる。よって、式(5)の値は小さければ小さいほど好ましい。
ところで、{002}面については、例えば特開2009−185376号公報にて、再結晶焼鈍工程での{022}面から{002}面への変化を助長する働きがあることが報告されている。しかしながら、特開2009−185376号公報では、最終冷間圧延工程での総加工度を93%未満、好ましくは90%未満に抑えた状態で、例えば上述の特許文献1〜3にみられるような高加工度の圧延銅箔に匹敵する高屈曲特性を得ることを目的としている。
本実施形態では、上記のように、高加工度の条件下で{002}面が再結晶を阻害するおそれがあることを踏まえつつ、総加工度を高めて屈曲特性を向上させたうえで、{002}面を含む副方位の結晶面の比率を制御し、特許文献1〜3や特開2009−185376号公報よりも更に、屈曲特性を高めることを目的としている。
以上、式(1)〜(4)及び、好ましくは式(5)を満たす結晶構造の上記に示す作用は、後述の実施例の結果等に基づく考察によるものである。つまり、本実施形態に係る圧延銅箔にて、再結晶焼鈍工程前に各結晶面の回折ピーク強度比が上記比例関係式を満たすこととなっていれば、再結晶焼鈍工程後には優れた屈曲特性を具備することとなる。このように、再結晶焼鈍工程後に高屈曲特性を得るには、最終冷間圧延工程後、再結晶焼鈍工程前の圧延銅箔の各結晶方位を制御しておけばよい。
(2)圧延銅箔の製造方法
次に、本発明の一実施形態に係る圧延銅箔の製造方法について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る圧延銅箔の製造工程を示すフロー図である。
(鋳塊の準備工程S10)
図1に示すように、まずは、無酸素銅(OFC:Oxygen-Free Copper)やタフピッチ銅等の純銅を原材料として鋳造を行って鋳塊(インゴット)を準備する。鋳塊は、例えば所
定厚さ、所定幅を備える板状に形成する。原材料となる無酸素銅やタフピッチ銅等の純銅は、圧延銅箔の諸特性を調整するため、所定の添加材が添加された希薄銅合金となっていてもよい。
添加材で調整可能な上記諸特性には、例えば耐熱性がある。上述のように、FPC用の圧延銅箔では、高屈曲特性を得るための再結晶焼鈍工程は、例えばFPCの基材との貼り合わせの工程を兼ねて行われる。貼り合わせの際の加熱温度は、例えばFPCの樹脂等からなる基材の硬化温度や、使用する接着剤の硬化温度等に併せて設定され、温度条件の範囲は広く多種多様である。このように設定された加熱温度に圧延銅箔の軟化温度を合わせるべく、圧延銅箔の耐熱性を調整可能な添加材が添加される場合がある。
本実施形態に使用される鋳塊として、添加材が無添加の鋳塊や、幾種類かの添加材を添加した鋳塊を以下の表1に例示する。
Figure 0005126434
また、上記の表1に示す添加材やその他の添加材として、耐熱性を上昇又は降下させる添加材の代表例には、例えば10ppm〜500ppm程度の硼素(B)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、及びカルシウム(Ca)のいずれか1つ又は複数の元素を添加した例がある。或いは、第1の添加元素としてAgを添加し、第2の添加元素として上記元素のいずれか1つ又は複数の元素を添加した例がある。そのほか、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、砒素(As)、Cd(カドミウム)、インジウム(In)、錫(Sn)、アンチモン(Sb)、金(Au)等を微量添加することも可能である。
なお、鋳塊の組成は、後述の最終冷間圧延工程S40を経た後の圧延銅箔においても略そのまま維持され、鋳塊中に添加材を加えた場合には、鋳塊と圧延銅箔とは略同じ添加材
濃度となる。
また、後述の焼鈍工程S32における温度条件は、銅材質や添加材による耐熱性に応じて適宜変更する。但し、上記銅材質や添加材、これに応じた焼鈍工程S32の温度条件の変更等は、本実施形態の効果に対してほとんど影響を与えない。
(熱間圧延工程S20)
次に、準備した鋳塊に熱間圧延を施して、鋳造後の所定厚さよりも薄い板厚の板材とする。
(繰り返し工程S30)
続いて、冷間圧延工程S31と焼鈍工程S32とを所定回数繰り返し実施する繰り返し工程S30を行う。すなわち、冷間圧延を施して加工硬化させた上記板材に、焼鈍処理を施して板材を焼き鈍すことにより加工硬化を緩和する。これを所定回数繰り返すことで、「生地」と称される銅条が得られる。銅材に耐熱性を調整する添加材等が加えられている場合は、銅材の耐熱性に応じて焼鈍処理の温度条件を適宜変更する。
なお、繰り返し工程S30中、繰り返し途中の焼鈍工程S32を「中間焼鈍工程」と呼ぶ。また、繰り返しの最後、つまり、後述の最終冷間圧延工程S40の直前に行われる焼鈍工程S32を「最終焼鈍工程」又は「生地焼鈍工程」と呼ぶ。
繰り返しの最後に行われる生地焼鈍工程では、上記の銅条(生地)に生地焼鈍処理を施し、焼鈍生地を得る。生地焼鈍工程においても、銅材の耐熱性に応じて温度条件を適宜変更する。このとき、生地焼鈍工程は、上記の各工程に起因する加工歪を充分に緩和することのできる温度条件、例えば完全焼鈍処理と略同等の温度条件で実施することが好ましい。
(最終冷間圧延工程S40)
次に、最終冷間圧延工程S40を実施する。最終冷間圧延は仕上げ冷間圧延とも呼ばれ、仕上げとなる冷間圧延を複数回に亘って焼鈍生地に施す。このとき、総加工度を90%以上、より好ましくは、例えば特許文献3の技術を本実施形態に応用し、94%以上とする。これにより、再結晶焼鈍工程後において、いっそう高い屈曲特性が得られ易い圧延銅箔となる。
また、冷間圧延を複数回繰り返すごとに焼鈍生地が薄くなるのに応じて、例えば特許文献3の技術を応用し、1回(1パス)あたりの加工度を徐々に小さくしていくことが好ましい。ここで、1パスあたりの加工度は、上記総加工度の例に倣い、nパス目の圧延前の加工対象物の厚さをTBnとし、圧延後の加工対象物の厚さをTAnとすると、1パスあたりの加工度(%)=[(TBn−TAn)/TBn]×100で表わされる。
圧延加工時、焼鈍生地等の加工対象物は、例えば互いに対向する1対のロール間の間隙に引き込まれ、反対側に引き出されることで減厚される。加工対象物の速度は、ロールに引き込まれる前の入り口側ではロールの回転速度より遅く、ロールから引き出された後の出口側ではロールの回転速度より速い。したがって、加工対象物には、入り口側では圧縮応力が、出口側では引張応力がかかる。加工対象物を薄く加工するためには、圧縮応力>引張応力でなければならない。上記のように、例えば1パスあたりの加工度を調整することで、圧縮応力>引張応力であることを前提として、それぞれの応力成分(圧縮成分と引張成分)の比を調整することができる。
また、最終冷間圧延工程S40では、冷間圧延を複数回繰り返すごとに、以下に説明す
る中立点の位置がロールの出口側へと移動していくよう制御することが好ましい。すなわち、上記のように、ロールの回転速度に対して入り口側と出口側とで大小関係が逆転する加工対象物の速度は、入り口側及び出口側の間のどこかの位置でロールの回転速度と等しくなる。この両者の速度が等しい位置を中立点といい、中立点では加工対象物にかかる圧力が最大となる。
中立点の位置は、前方張力、後方張力、圧延速度(ロールの回転速度)、ロール径、加工度、圧延荷重等の組み合わせを調整することで制御することができる。つまり、中立点の位置を制御することによっても、圧縮応力及び引張応力の比を調整することができる。
このように、最終冷間圧延工程S40時の圧縮応力と引張応力との応力バランスを適宜調整することで、各結晶面の回折ピーク強度のバランス、つまり、回折ピーク強度比を制御し、上記の式(1)〜(5)を満たす圧延銅箔を得ることができる。
具体的には、銅材中の銅結晶は、最終冷間圧延工程S40等の圧延工程時の応力により回転現象を起こし、いくつかの経路で{022}面へと変化する。圧縮応力が大きくなるほど{002}面や{113}面を経由し易く、引張応力が大きくなるほど{111}面や{133}面を経由し易く、それぞれ{022}面へと変化する。
つまり、上記の式(1)は、少なくとも最終冷間圧延工程S40を終えた時点で最終方位である{002}面まで到達していた結晶粒の割合を示している。また、上記の式(2)は圧縮応力が強いことを示している。また、上記の式(3),(4)は、圧縮応力>引張応力であることを前提としつつ、引張応力が比較的強いことを示している。
また、上記の式(5)をみると、圧縮応力が弱いことを示すともとれるが、一概にそうとはいえない。式(5)を満たす状態には、{002}面まで到達した後に更に先の結晶方位である{022}面へと回転した場合や、一旦は{002}面まで到達した結晶粒が逆回転で元の結晶方位に戻った場合等が考えられる。式(5)の状態が{022}面へと回転した結果だとすれば、{022}面まで到達できた結晶粒を増加させたことになり、上記の式(1)により得られる値のいっそうの増大に寄与し、高屈曲特性を得るのに有利となるよう働いたことを示している。式(5)の状態が逆回転で元の結晶方位に戻った結果だとすれば、圧縮応力>引張応力であることを前提としつつ、引張応力が比較的強いことを示している。
このように、各パスにおける加工度の大きさ制御や中立点の位置制御等により、圧縮応力と引張応力との応力バランスを調整しつつ最終冷間圧延工程S40を施すことで、上記の式(1)〜(4)、及び好ましくは式(5)を満たす圧延銅箔を得ることができる。よって、再結晶焼鈍工程後には、優れた屈曲特性を具備する圧延銅箔が得られる。
(表面処理工程S50)
以上の工程を経た銅条に所定の表面処理を施す。以上により、本実施形態に係る圧延銅箔が製造される。
(3)フレキシブルプリント配線板の製造方法
次に、本発明の一実施形態に係る圧延銅箔を用いたフレキシブルプリント配線板(FPC)の製造方法について説明する。
(再結晶焼鈍工程(CCL工程))
まずは、本実施形態に係る圧延銅箔を所定のサイズに裁断し、例えばポリイミド等の樹脂からなるFPCの基材と貼り合わせてCCL(Copper Clad Laminate)を形成する。こ
のとき、接着剤を介して貼り合わせを行う3層材CCLを形成する方法と、接着剤を介さず直接貼り合わせを行う2層材CCLを形成する方法のいずれを用いてもよい。接着剤を用いる場合には、加熱処理により接着剤を硬化させて圧延銅箔と基材とを密着させ一体化する。接着剤を用いない場合には、加熱・加圧により圧延銅箔と基材とを直接密着させる。加熱温度や時間は、接着剤や基材の硬化温度等に合わせて適宜選択することができ、例えば150℃以上400℃以下の温度で、1分以上120分以下とすることができる。
上述のように、圧延銅箔の耐熱性は、このときの加熱温度に合わせて調整されている。したがって、最終冷間圧延工程S40により加工硬化した状態の圧延銅箔が、上記加熱により軟化し再結晶される。つまり、基材に圧延銅箔を貼り合わせるCCL工程が、圧延銅箔に対する再結晶焼鈍工程を兼ねている。
CCL工程が再結晶焼鈍工程を兼ねることで、圧延銅箔を基材に貼り合わせるまでの工程では、最終冷間圧延工程S40後の加工硬化した状態で圧延銅箔を取り扱うことができ、圧延銅箔を基材に貼り合わせる際の、伸び、しわ、折れ等の変形を起こり難くすることができる。
また、上記のような圧延銅箔の軟化は、再結晶焼鈍工程により再結晶組織を有する圧延銅箔が得られたことを示している。具体的には、主方位である{022}面の回折ピーク強度比I{022}は、上記の式(1)を満たすこととなっており、{022}面は{002}面へと変化することができる。よって、屈曲特性に優れた圧延銅箔が得られる。
また、副方位である{113}面、{111}面、及び{133}面の回折ピーク強度比I{113}、I{111}、及びI{133}は、上記の式(2)〜(4)を満たすこととなっており、上記各結晶面は加工歪が多大に蓄積したエネルギーの高い状態にある。よって、蓄積された加工歪が、{022}面の加工歪とともに圧延銅箔の再結晶を促進させる。
また、再結晶焼鈍工程前の圧延銅箔に存在する{002}面の回折ピーク強度比I{002}は、上記の式(5)を満たすこととなっており、圧延銅箔の{002}面の量は少ないままに抑えられている。よって、{002}面が、上記各結晶面による再結晶の促進を阻害するのを抑制する。
以上のように、上記の式(1)〜(4)、及び好ましくは式(5)を満たすとき、再結晶焼鈍工程後の圧延銅箔に、優れた屈曲特性を具備させることが可能となる。つまり、再結晶焼鈍工程後に高屈曲特性を得るには、最終冷間圧延工程S40後、再結晶焼鈍工程前の圧延銅箔について、上記関係式を満たすように各結晶方位を制御しておけばよい。
(表面加工工程)
次に、基材に貼り合わせた圧延銅箔に表面加工工程を施す。表面加工工程では、圧延銅箔に例えばエッチング等の手法を用いて銅配線等を形成する配線形成工程と、銅配線と他の電子部材との接続信頼性を向上させるためメッキ処理等の表面処理を施す表面処理工程と、銅配線等を保護するため銅配線上の一部を覆うようにソルダレジスト等の保護膜を形成する保護膜形成工程とを行う。
以上により、本実施形態に係る圧延銅箔を用いたFPCが製造される。
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
例えば、上述の実施形態においては、圧延銅箔の耐熱性を調整する添加材として主にAgを用いることとしたが、添加材は、Agや上記代表例等に挙げたものに限られない。また、添加材により調整可能な諸特性は耐熱性に限られず、調整を必要とする諸特性に応じて添加材を適宜選択してもよい。
また、上述の実施形態においては、FPCの製造工程におけるCCL工程は圧延銅箔に対する再結晶焼鈍工程を兼ねることとしたが、再結晶焼鈍工程は、CCL工程とは別工程として行ってもよい。
また、上述の実施形態においては、圧延銅箔はFPC用途に用いられることとしたが、圧延銅箔の用途はこれに限られず、高屈曲特性を必要とする用途に用いることができる。圧延銅箔の厚さについても、FPC用途をはじめとする各種用途に応じて20μm超などとしてもよい。
なお、本発明の効果を奏するために、上記に挙げた工程のすべてが必須であるとは限らない。上述の実施形態や後述の実施例で挙げる種々の条件もあくまで例示であって、適宜変更可能である。
次に、本発明に係る実施例について比較例とともに説明する。
(1)無酸素銅を用いた圧延銅箔
まずは、無酸素銅を用いた実施例1〜7および比較例1〜7に係る圧延銅箔を以下のとおり製作し、それぞれについて各種評価を行った。
(圧延銅箔の製作)
目標濃度を150ppmとするAgを添加した無酸素銅を用い、上述の実施形態と同様の手順及び手法で、実施例1〜7および比較例1〜7に係る圧延銅箔を製作した。但し、比較例1〜7については構成を外れる処理等が含まれる。
具体的には、無酸素銅に所定量のAgを溶解して鋳造した厚さ150mm、幅500mmの鋳塊を準備した。以下の表2に、高周波誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法により分析した、鋳塊中のAg濃度の分析値を示す。
Figure 0005126434
表2に示すように、目標濃度の150ppmに対し、分析値は139ppm〜163p
pmと、いずれも150ppm±15ppm(10%)程度内のバラツキに抑えられている。Agは元々、主原材料である無酸素銅に不可避不純物として数ppm〜十数ppm程度含有されている場合があるほか、鋳塊を鋳造する際のバラツキ等の種々の原因により、±15ppm程度内のバラツキは金属材料分野では一般的なものである。
次に、上述の実施形態と同様の手順及び手法で、熱間圧延工程にて厚さ8mmの板材を得た後、冷間圧延工程と、700℃〜800℃の温度で約2分間保持する中間焼鈍工程とを繰り返し実施して銅条(生地)を製作し、約750℃の温度で約1分間保持する生地焼鈍工程にて焼鈍生地を得た。ここで、各焼鈍工程の温度条件等は、Agを139ppm〜163ppm含有する無酸素銅材の耐熱性に合わせた。なお、組成が同じ銅材に対して各焼鈍工程で異なる温度条件を用いたのは、銅材の厚さに応じて耐熱性が変化するためであり、銅材が薄いときは温度を下げることができる。
最後に、上述の実施形態と同様の手順及び手法で最終冷間圧延工程を行い、実施例1〜7および比較例1〜7に係る圧延銅箔を得た。最終冷間圧延工程での条件を以下の表3に示す。
Figure 0005126434
表3に示すように、上段から下段へと順次板厚が薄くなるのに応じて、右欄のように条件を切り替えて、最終冷間圧延を行った。つまり、厚さが240μm以下における冷間圧延加工の、1パスあたりの加工度と中立点の位置とを変化させた。右欄に示す中立点の位置(mm)は、ロールと加工対象物である焼鈍生地との接触面の出口側端部から中立点までの長さで示した。また、優れた屈曲特性を得るため、実施例1〜7および比較例1〜7の全てにおいて、最終冷間圧延工程での総加工度が95%となるように条件を設定した。以上により、厚さが12μmの実施例1〜7および比較例1〜7に係る圧延銅箔を製作した。
次に、上記のように製作した各圧延銅箔について以下の評価を行った。
(2θ/θ法によるX線回折測定)
まずは、実施例1〜7および比較例1〜7に係る圧延銅箔に対し、2θ/θ法によるX線回折測定を行った。係る測定は、株式会社リガク製のX線回折装置(型式:Ultima IV)を用い、以下の表4に示す条件で行った。代表として、図2(a)に実施例1の
X線回折チャートを、図2(b)に比較例1のX線回折チャートをそれぞれ示す。
Figure 0005126434
次に、2θ/θ法により測定した銅結晶の{022}面、{113}面、{111}面、{133}面、及び{002}面の回折ピーク強度を合計値が100となるような比に換算し、各結晶面の回折ピーク強度比を求めた。以下の表5に、実施例1〜7および比較例1〜7に係る圧延銅箔について、上記により求めた各結晶面の回折ピーク強度比I{022}、I{113}、I{111}、I{133}、及びI{002}の値を示す。
Figure 0005126434
また、粉末銅について、カード番号:40836のJCPDSカードの記載から、上記と同様の各結晶面の標準的な回折ピークの相対強度を取得した。すなわち、{111}面を100とする各結晶面{022}面、{113}面、{133}面、及び{002}面のそれぞれの相対強度20,17,9,46を得た。
係る5つの回折ピークの相対強度を合計値が100となるような比に換算し直し、粉末銅について各結晶面の回折ピーク強度比を求めた。
さらに、表5に示す圧延銅箔に係る回折ピーク強度比と、上記の粉末銅に係る回折ピーク強度比とを用い、上記の式(1)〜(5)に係る数値を求めた。以下の表6の上段に、粉末銅の各結晶面の回折ピーク強度比I0{022}、I0{113}、I0{111}、I0{133}、及びI0{002}の値を示す。また、下段に、上記により求めた上記の式(1)〜(5)に係る数値を示す。
Figure 0005126434
上記のように、本実施例及び比較例では、最終冷間圧延工程での1パスあたりの加工度と中立点の位置とを変化させている。これにより、冷間圧延加工時に、加工対象物にかかる圧縮成分と引張成分との応力成分の比が変化する。その結果、各結晶面の比率が変わり、表5に示す各結晶面の回折ピーク強度比や、表6に示す式(1)〜(5)に係る数値も変化している。
また、表6に示すように、実施例1〜7の各条件の組み合わせでは、式(1)〜(5)までの各値はいずれも上述の所定範囲内にある。
一方、比較例1〜7の各条件の組み合わせでは、いずれの圧延銅箔においても式(1)〜(5)までの各値のうち、1つ、または、複数の値が上述の所定範囲外となっている。表6中、上述の所定範囲を外れた値を下線付きの太字で示した。
(屈曲疲労寿命試験)
次に、各圧延銅箔の屈曲特性を調べるため、各圧延銅箔が破断するまでの繰返し曲げ回数(屈曲回数)を測定する屈曲疲労寿命試験を行った。係る試験は、信越エンジニアリング株式会社製のFPC高速屈曲試験機(型式:SEK−31B2S)を用い、IPC(米
国プリント回路工業会)規格に準拠して行った。図3には、上記FPC高速屈曲試験機等も含む、一般的な摺動屈曲試験装置10の模式図を示す。
まずは、実施例1〜7および比較例1〜7に係る圧延銅箔を幅12.5mm、長さ220mmに切り取った、厚さが12μmの試料片Fに、上述の再結晶焼鈍工程に倣い、300℃、60分間の再結晶焼鈍を施した。係る条件は、フレキシブルプリント配線板のCCL工程で、基材との密着の際に圧延銅箔が実際に受ける熱量の一例を模している。
次に、図3に示すように、圧延銅箔の試料片Fを、摺動屈曲試験装置10の試料固定板11にネジ12で固定した。続いて、試料片Fを振動伝達部13に接触させて貼り付け、発振駆動体14により振動伝達部13を上下方向に振動させて試料片Fに振動を伝達し、屈曲疲労寿命試験を実施した。屈曲疲労寿命の測定条件としては、曲げ半径Rを1.5mmとし、ストロークSを10mmとし、振幅数を25Hzとした。係る条件下、各圧延銅箔から切り取った試料片Fを5枚ずつ測定し、破断が発生するまでの屈曲回数の平均値を比較した。以下の表7に、結果を示す。
Figure 0005126434
上記のように、各圧延銅箔は、総加工度を95%とする最終冷間圧延工程を経ており、表7に示すように、比較例1〜7であっても、屈曲疲労寿命、すなわち、屈曲回数が100万回以上の高屈曲特性が得られた。
一方で、実施例1〜7においては、総加工度95%の最終冷間圧延工程を経るとともに、上記の式(1)〜(5)までの値が制御されて全て所定範囲内となっており、屈曲回数が200万回以上の更に優れた屈曲特性が得られた。これは、もともと高屈曲特性を有する比較例1〜7の1.4〜1.5倍という高水準の値である。
(2)タフピッチ銅を用いた圧延銅箔
次に、目標濃度を200ppmとするAgを添加したタフピッチ銅を用い、上述の実施例と同様の手順及び手法で、厚さが12μmの実施例8および比較例8に係る圧延銅箔を製作した。但し、比較例8については構成を外れる処理等が含まれる。
実施例8および比較例8の鋳塊中におけるAg濃度は、IPC発光分光分析法により得た分析値で、それぞれ195ppmおよび190ppmであった。なお、係る濃度のAgを含有するタフピッチ銅材の耐熱性に合わせ、中間焼鈍工程および生地焼鈍工程では、上記とは異なる条件を用いた。具体的には、中間焼鈍工程では650℃〜750℃の温度で約2分間保持し、生地焼鈍工程では約700℃の温度で約1分間保持した。
上記のように製作した実施例8および比較例8に係る圧延銅箔について、上述の実施例と同様の手法及び手順で2θ/θ法によるX線回折測定を行った。その結果、実施例8に係る圧延銅箔については、各結晶面の回折ピーク強度の関係が式(1)〜(5)までの所定範囲内となった。一方、比較例8に係る圧延銅箔については、所定範囲を外れる結果であった。
また、実施例8および比較例8に係る圧延銅箔に対し、上述の実施例と同様の手法及び手順で屈曲疲労寿命試験を行った。その結果、各圧延銅箔は、総加工度を95%とする最終冷間圧延工程を経ており、比較例8であっても、1,706,000回という100万回以上の優れた屈曲特性が得られた。一方で、上記の式(1)〜(5)のいずれも所定範囲内であった実施例8においては、2,392,000回という更に優れた屈曲特性を示す値が得られた。
以上のことから、各結晶面の回折ピーク強度比が所定範囲内であれば、タフピッチ銅を主原材料とする圧延銅箔についても、優れた屈曲特性が得られることがわかった。
(3)異なる添加材を用いた圧延銅箔
次に、目標濃度を100ppm〜150ppmとするAgおよび目標濃度を50ppm〜200ppmとする硼素(B)を添加材として加えた無酸素銅を用い、上述の実施例と同様の手順及び手法で、厚さが12μmの実施例9〜12および比較例9〜12に係る圧延銅箔を製作した。但し、比較例9〜12については構成を外れる処理等が含まれる。
実施例9〜12および比較例9〜12の鋳塊中におけるAg濃度およびB濃度は、以下の表8に示すように、IPC発光分光分析法により得た分析値で、それぞれが目標濃度の範囲内の値となった。
Figure 0005126434
また、上記濃度のAgおよびBを含有する無酸素銅材の耐熱性に合わせ、中間焼鈍工程および生地焼鈍工程には、上記とは異なる条件を用いた。具体的には、中間焼鈍工程では
温度650℃〜700℃で約2分間保持し、生地焼鈍工程では約700℃の温度で約2分間保持した。
上記のように製作した実施例9〜12および比較例9〜12に係る圧延銅箔について、上述の実施例と同様の手法及び手順で2θ/θ法によるX線回折測定を行い、各結晶面の回折ピーク強度比を求めた。結果を以下の表9に示す。
Figure 0005126434
また、上記結果から、式(1)〜(5)に係る値を求めたところ、以下の表10に示すように、実施例9〜12に係る圧延銅箔については、各結晶面の回折ピーク強度比の関係が式(1)〜(5)までの所定範囲内となった。一方、比較例9〜12に係る圧延銅箔については、いずれの圧延銅箔においても式(1)〜(5)までの各値のうち、1つ、または、複数の値が上述の所定範囲外となってしまった。表10中、上述の所定範囲を外れた値を下線付きの太字で示した。
Figure 0005126434
また、実施例9〜12および比較例9〜12に係る圧延銅箔に対し、上述の実施例と同様の手法及び手順で屈曲疲労寿命試験を行った。その結果、各圧延銅箔は、総加工度を95%とする最終冷間圧延工程を経ており、以下の表11に示すように、比較例9〜12のいずれにおいても、100万回以上の高屈曲特性が得られた。一方で、実施例9〜12においては、いずれも200万回以上の更に優れた屈曲特性が得られた。
Figure 0005126434
以上のことから、各結晶面の回折ピーク強度比が所定範囲内であれば、AgとBとのような異なる添加材を添加した圧延銅箔についても、優れた屈曲特性が得られることがわかった。
<本発明者等による考察>
以上、述べてきたように、副方位の結晶面を制御することで圧延銅箔に更なる高屈曲特性が付与される原理、及び、上述の圧延銅箔の製造工程における副方位の結晶面の制御の仕組みに対する本発明者等の考察について、以下に説明する。
(1)更なる高屈曲特性付与の原理について
本発明者等は、結晶方位学の知見と金属学の知見とこれまでの実験経験とから、副方位の結晶面を制御することで更なる高屈曲特性が得られる原理について以下の考察を行った。
上述のように、上記の式(2)〜(4)を満たすとき、圧延銅箔の副方位である{113}面、{111}面、及び{133}面には加工歪が蓄積された状態となっており、係る加工歪によって、{022}面から{002}面への変化を含む再結晶が促進される。
一般に、副方位の結晶面については、再結晶焼鈍工程後であっても、圧延銅箔の製造工程における最終冷間圧延工程後の状態を保ったまま比率がほとんど変化することはないとされている。しかし、本発明者等によれば、上記の式(2)〜(4)を満たす状態では、{113}面、{111}面、及び{133}面が再結晶を促進する際、再結晶により成長した{002}面にこれらの結晶面自身が取り込まれ、{002}面となって一体化することで、さらに{002}面が多く成長すると考えられる。
また、上記の式(5)を満たすとき、副方位である{002}面の量は少ないままに抑えられており、{002}面が、上記各結晶面による再結晶の促進を阻害するのを抑制する。
上述のように、{002}面は加工歪の蓄積量が少ないといわれている。加工歪が少なくエネルギーの低い{002}面は、再結晶による成長が他の結晶方位より遅れてしまう。本発明者等によれば、このような遅れは他の結晶方位の再結晶を阻害するおそれがある。特に、{002}面の結晶粒と他の結晶方位の結晶粒との境界において係る弊害が起こり易く、{002}面の回折ピーク強度比I{002}が上記の式(5)を満たすことで、{002}面による成長阻害が抑制されると考えられる。
(2)副方位の結晶面の制御の仕組みについて
(結晶回転)
上述のように、最終冷間圧延工程等の圧延加工時、銅材には圧縮応力と、圧縮応力よりも弱い引張応力とがかかっている。圧延される銅材中の銅結晶は、圧延加工時の応力によって{022}面への回転現象を起こし、圧延加工の進展とともに、圧延面に平行な結晶面の方位が主に{022}面である圧延集合組織を形成する。このとき、上述のように、圧縮応力と引張応力との比により、{022}面へと向かって回転する経路が変わる。これについて、図4を用いて説明する。
図4は、下記の技術文献(イ)から引用した純銅型金属の逆極点図であって、(a)は引張変形による結晶回転方向を示す逆極点図であり、(b)は圧縮変形による結晶回転方向を示す逆極点図である。なお、逆極点図では、{002}面を{001}面と表記し、{022}面を{011}面と表記することになっている。つまり、{002}面は、{002}面に平行な面の最小数値である{001}面で表わし、{022}面は、{022}面に平行な面の最小数値である{011}面で表わす。
(イ)編著者 長嶋晋一、“集合組織”、丸善株式会社、昭和59年1月20日、p9
6の図2.52(a),(c)
図4に示すように、銅材中の銅結晶は、引張変形のみでは{111}面へと向かって回転し、圧縮変形のみでは{011}面へと向かって回転する。圧延加工では、圧縮成分と引張成分とが合わさった変形をするため、結晶回転方向はこれほど単純ではない。ただし、引張成分より圧縮成分が優勢となって変形し、圧延加工がされるので、総じて{011}面へと向かう結晶回転を起こしつつ、圧縮成分と引張成分との割合によって{111}面へも一部回転しようとする。このとき、圧縮成分の方が優勢であるので、{111}面へと回転しかけた結晶が{011}面へと戻される結晶回転も起きる。また、これとは逆に、{011}面へと向かって回転している結晶や{011}面に到達した結晶が、引張成分によって{133}面や{111}面へ向かって回転する場合もある。
このように、圧縮成分と引張成分とが、圧縮成分>引張成分の関係を保ちながら混在する中で結晶回転が起こると、最終的には図5の逆極点図に示すような主方位および副方位の結晶面の分布になると考えられる。圧縮成分>引張成分であるから、最終的な主方位の結晶面は{011}面となり、また、圧縮成分と引張成分との混合による結晶回転の結果、副方位の結晶面は、{113}面、{111}面、{133}面、{001}面になると考えられる。
ここで、図5には、上記特定方位の結晶面のみが分布しているように示したが、これは以下の理由による。銅は面心立方構造の結晶なので、2θ/θ法によるX線回折測定では、{hkl}面のh,k,lが全て奇数値または全て偶数値でなければ回折ピークとして現れない。h,k,lが奇数値と偶数値との混在となっていると、消滅則によって回折ピークが消失し、測定できないためである。したがって、上述の実施形態等に係る圧延銅箔の構成を示すにあたっては、回折ピークとして現れる{113}面、{111}面、及び{133}面、{001}面({002}面)で規定した。上述の実施例等の結果からも本構成の効果は明白であるから、上記に挙げた副方位の結晶面を考えれば充分であるといえる。
(加工度による制御)
以上のことから、圧縮応力>引張応力であることを前提として、圧縮成分と引張成分との比を調整すると、{022}面へと向かって回転する経路が変わる。具体的には、圧縮成分が大きくなるほど{002}面や{113}面を経由し易く、引張成分が大きくなるほど{111}面や{133}面を経由し易い。主な副方位の結晶面が{002}面、{113}面、{111}面、及び{133}面となるのは、{022}面へと回転しきれなかった上記結晶面が銅材中に残るためであり、最終冷間圧延工程での圧縮成分と引張成分との調整により、銅材中に残る各副方位の結晶面の割合を調整することができる。
具体的には、圧縮成分と引張成分とは、圧延加工時の1パスあたりの圧延条件を変化させることで制御することができる。圧縮成分と引張成分とを制御する種々の制御パラメータを調整するにあたっては、上述の実施形態や実施例にて試みたように、例えば1パスあたりの加工度の変化に着目することができる。
1パスあたりの加工度を高くするには、例えば圧延荷重(ロール荷重)を大きくして圧延対象である銅材を押しつぶす方法があり、この場合、圧縮応力が大きくなる。よって、結晶の回転経路は{002}面や{113}面となって、{022}面へと向かって回転する。
一方、圧縮応力>引張応力を前提として、引張成分を大きくして銅材を薄くすることで加工度を高くする方法もある。引張成分を大きくしているので、結晶の回転経路は{11
1}面や{133}面となって、{022}面へと向かって回転する。なお、圧延後、銅材中に残る{133}面には、引張成分により結晶の回転途中で得られたものと、圧縮成分により一旦、{022}面へと到達した結晶が、引張成分により{133}面へと再び回転したものとが含まれると考えられる。また、引張応力による加工度の変化は、圧縮荷重を大きくした場合に比べると小さい。つまり、加工度への寄与は、圧縮応力の方が大きい。
なお、ここで注意しなければならないことは、それぞれの成分(圧縮応力又は引張応力)のみでは材料形状が均一に加工できず、圧延はできないということである。つまり、圧縮応力と引張応力との両方によって、材料の厚さを薄くするのと同時に材料形状を制御している。
(中立点による制御)
上述の実施形態や実施例においては、最終冷間圧延工程における1パスあたりの加工度と併せ、中立点の位置制御も行っている。つまり、圧縮成分と引張成分との制御パラメータの調整にあたっては、例えば中立点の位置変化に着目することも可能である。
上述のように、1パス毎に中立点の位置を制御する制御因子としては、前方張力、後方張力、圧延速度(ロールの回転速度)、ロール径、加工度、圧延荷重等がある。これらの制御因子を種々に組み合わせ、中立点の位置を変化させることができる。
係る中立点の位置は、いくつかの計測値から計算によって算出することができる。すなわち、まずは、下記の技術文献(ロ)を参考とする次式、
張力の成分+圧縮力の成分=2×剪断降伏応力・・・(C)
の関係において、圧縮力成分を張力成分より大きくし、さらに、圧延速度とロール径との条件バランス、すなわち、圧延加工時のロールと銅材との接触面における中立点の位置を、式(C)を用いて算出する。なお、中立点の詳細についても、下記技術文献(ロ)を参照した。
(ロ)日本塑性加工学会編、“塑性加工技術シリーズ7 板圧延”、コロナ社、p14,p27 式(3.3),p28
上記の式(C)の計算時のパラメータは上記制御因子であるが、これらのうち、固定とするものと可変とするものとをどのように選択するかで、複数種類の制御方法が考えられる。上述の実施形態や実施例においては、加工度を可変の制御因子として中立点の位置を制御したが、加工度以外の制御因子を用いた制御も可能である。
また、上記制御因子は圧延機の構成に関わるところであり、中立点の位置制御は、圧延機の仕様に依存するところが大きい。具体的には、ロールの段数、ロールの総数、ロールの組み合わせ配置、各ロールの径や材質や表面状態(表面粗さ)等のロールの構成などの違いにより、銅材への圧縮応力のかかり方や摩擦係数等に違いが生じる。圧延機が異なれば、上述の実施例で挙げた条件に係る各制御因子もその絶対値が異なるため、圧延機ごとに適宜調整することができる。また、同じ圧延機においても、圧延ロールの表面状態や圧延ロールの材質が異なれば、各制御因子の絶対値が異なる。よって、同じ圧延機であっても、それぞれの状態に応じて適宜調整することができる。
10 摺動屈曲試験装置
11 試料固定板
12 ネジ
13 振動伝達部
14 発振駆動体
F 試料片

Claims (6)

  1. 主表面を備え、前記主表面に平行な複数の結晶面を有する最終冷間圧延工程後、再結晶焼鈍工程前の圧延銅箔であって、
    前記複数の結晶面には{022}面、{113}面、{111}面、{133}面、及び{002}面が含まれ、
    前記主表面に対する2θ/θ法を用いたX線回折測定から求められ、合計値が100となるように換算された前記各結晶面の回折ピーク強度比をそれぞれI{022}、I{113}、I{111}、I{133}、及びI{002}とし、
    {022}面、{113}面、{111}面、{133}面、及び{002}面を有する粉末銅についてのJCPDSカード又はICDDカードに記載の前記各結晶面の標準的な回折ピークの相対強度から求められ、合計値が100となるように換算された前記各結晶面の回折ピーク強度比をそれぞれI0{022}、I0{113}、I0{111}、I0{133}、及びI0{002}としたとき、
    {022}/I0{022}≧7.0であり、
    {113}/I0{113}≧0.40であり、
    {111}/I0{111}≧0.090であり、且つ、
    {133}/I0{133}≧1.4である
    ことを特徴とする圧延銅箔。
  2. {002}/I0{002}≦0.25である
    ことを特徴とする請求項1に記載の圧延銅箔。
  3. JIS C1020に規定の無酸素銅、又はJIS C1100に規定のタフピッチ銅を主成分とする
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の圧延銅箔。
  4. 銀、硼素、チタン、錫の少なくともいずれかが添加されている
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧延銅箔。
  5. 総加工度が90%以上の前記最終冷間圧延工程により厚さが20μm以下となっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の圧延銅箔。
  6. フレキシブルプリント配線板用である
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の圧延銅箔。
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