第1の実施の形態.
図1は本発明の第1の実施の形態にかかる電動機の構造を示す断面図であり、同電動機の回転軸に垂直な断面を呈している。
当該電動機は界磁子1と第1電機子3、第2電機子2とを備えている。本実施の形態では界磁子1は回転子として機能し、第1電機子3、第2電機子2はいずれも固定子として機能するものの、回転子、固定子の機能は適宜に選択してよい。
界磁子1は第1磁極面1a、第2磁極面1bを有しており、相互に対向している。第1電機子3は第1磁極面1aに対向し、第2電機子2は第2磁極面1bに対向して配置されている。本実施の形態では第1磁極面1a、第2磁極面1bが円筒状の、いわゆるラジアルギャップ型の電動機を示す。
第1電機子3は界磁子1へ第1回転磁界を発生させるため、巻線(図示省略)が集中巻で巻回された歯部301〜309を有する。歯部301〜309は磁性体のヨーク300で磁気的に接続されている。第2電機子2は界磁子1へ第2回転磁界を発生させるため、巻線(図示省略)が集中巻で巻回された歯部201〜203を有する。歯部201〜203は磁性体のヨーク200で磁気的に接続される。歯部201〜203,301〜309は円筒状に配置される。
界磁子1は、第1磁極面1a、第2磁極面1bにおいて個数が異なる磁極が現れる。本実施の形態では第1磁極面1a、第2磁極面1bにおいてそれぞれ極対数3,1で、即ち極数6,2で、磁極が現れる。他方、第1電機子3、第2電機子2のスロット数はそれぞれ9,3である。
このように、第1磁極面1aにおいて現れる磁極の個数よりも少ない個数で第2磁極面1bに磁極が現れ、第1磁極面1aに対向する第1電機子3のスロット数よりも第2磁極面1bに対向する第2電機子2のスロット数が少ない電動機においては、通常の運転時には、第1電機子3に電機子電流を流して磁束量が多い第1磁極面1aの界磁を用いて効率を高める。他方、第2電機子2に電機子電流を流して磁束量が少ない第2磁極面1bの界磁を用いて高速運転もできる。この際、界磁を弱める際に動作する機構部を設けたり、弱め磁束のためのd軸電流を流したりすることは前提とされない。
本実施の形態において界磁子1は、磁石101〜108及びヨーク100を有する。磁石103〜108は第1磁極面1aに現れる磁極に磁束を供給する。磁石101,102は第2磁極面1bに磁束を供給する。ヨーク100は磁性体であり、第1磁極面1aと第2磁極面1bとの間に設けられる。具体的には磁石101,102が円環状に配置され、磁石103〜108が円環状に配置されヨーク100は、これら二つの円環状配置の間に挟まれて配置される。
ここで個々の磁石は着磁された単位で把握している。従って例えば多極着磁されたリング状の磁石であっても磁石の個数としては一つではなく、その着磁された磁石101.102や磁石103〜108の個数(それぞれ2個、6個)を数えている。
このような構成の界磁子1では、ヨーク100が存在するため、磁石101,102は第1磁極面1aに現れる磁極に磁束を供給せず、磁石103〜108は第2磁極面1bに現れる磁極に磁束を供給しない。よって第1磁極面1a、第2磁極面1bにおいて個数が異なる磁極が現れる界磁子を簡易に実現することができる。
なお、図1では磁石103,108の境界と磁石101,102の境界が周方向について位置が揃っており、磁石105,106の境界と磁石101,102の境界が周方向について位置が揃っている。このような位置の整合は本実施の形態において必須の条件ではない。但し、このように位置が揃い、かつ第1磁極面1aに現れる磁極のうち、個数の多い方の極性(例えば磁石103,105が呈するN極)と、これに対向して第2磁極面1bに現れる磁極(例えば磁石101が呈するS極)とは、極性が異なることが望ましい。磁石を通る磁束密度が高まり、磁石を有利に使用するからである。
ここでは第1電機子3で巻回される電機子巻線の態様として9スロットの集中巻を紹介したが、集中巻に限定される必要はない。分布巻を採用するのであれば18の正整数倍のスロット数でスロットが第1電機子3に設けられていればよい。
また第2電機子2で巻回される電機子巻線の態様として3スロットの集中巻を紹介したが、集中巻に限定される必要はない。分布巻を採用するのであれば6の正整数倍のスロット数でスロットが第2電機子2に設けられていればよい。
もちろん、必ずしも第1電機子3のスロット数よりも第2電機子2のスロット数が小さいことは要求されない。例えば、第1電機子3のスロット数が9、第2電機子2のスロット数が12であって、それぞれ集中巻、分布巻で巻回されていてもよい。第1回転磁界よりも第2回転磁界の方が、その極数が小さい。そのほかコアレス、ギャップワインディングによって巻線が巻回されていてもよい。
なお、第1磁極面1a、第2磁極面1bをそれぞれ外周側及び内周側に配置し、第1電機子3及び第2電機子2は、それぞれ界磁子1の外側及び内側に配置されることが望ましい。その理由として下記を例挙できる。
第1の理由:第1電機子3は第2電機子2よりも回転磁界の極数が多い。よって多くの巻線を配置するためには第1電機子3を界磁子1の外側に配置して歯部301〜309の間隔を長く採ることが望ましい。歯部間の磁束の漏洩を低減するためである。
第2の理由:第1電機子3は第2電機子2よりも回転磁界の極数が多い。よって磁気抵抗を下げて鉄損を低減するためには、極数が少なく磁路が長い第2電機子2を界磁子1の内側に配置してヨーク200を短くすることが望ましい。
第3の理由:第2電機子2は回転磁界の極数が少ないので、巻線のコイルエンドが歯部の間を渡る角度は大きくなる。よって第2電機子2を界磁子1の内側に配置して歯部201〜203の間隔を短く採ることが望ましい。これにより第2電機子2の巻線長を低減することができるからである。特に分布巻を採用するのであれば、第2電機子2に分布巻を採用することで、巻線長を低減できるという効果は顕著となる。
第4の理由:銅損は界磁の磁束量が多い方が、また巻線断面積が大きい方が、低減できる。よって磁極数が多い第1磁極面1aに対向する第1電機子3を界磁子1の外側に配置
し、主として定格運転時に利用する電機子を第1電機子3とすることが望ましい。
第2の実施の形態.
図2は本発明の第2の実施の形態にかかる電動機の構造を示す断面図であり、同電動機の回転軸に垂直な断面を呈している。図3は図2の一部を拡大して示す断面図である。
当該電動機における第1電機子3、第2電機子2も、第1の実施の形態で採用されたものを採用することができ、いわゆるラジアルギャップ型の電動機を示す。
本実施の形態において界磁子1は、磁石111〜116及び第1磁性体11及び第2磁性体12を有する。第1磁性体11は第1磁極面1aを有し、第2磁性体12は第2磁極面1bを有する。
磁石111〜116は第1磁性体11及び第2磁性体12に対して異なる極性の磁極を呈する。具体的には磁石111,113,115のいずれもが、第1磁性体11及び第2磁性体12に対してそれぞれN極とS極とを呈する。また磁石112,114,116のいずれもが、第1磁性体11及び第2磁性体12に対してそれぞれS極とN極とを呈する。
上述の構造は、第1磁性体11及び第2磁性体12を一纏めにして磁性体として把握すると、磁石111〜116は当該磁性体に埋設されていると把握でき、界磁子1はいわゆる埋め込み磁石型と見ることができる。
磁石111〜116は第2磁極面1bに現れる磁極の数、即ち極対数の二倍の群に区分される。ここでは当該極対数が1であるので、磁石111〜113と、磁石114〜116が異なる群に区分される。そして隣接する群の境界には空隙121が備えられている。空隙121は群の境界で磁束の通過を阻害する磁気障壁として機能する。
但し第1磁極面1aから第2磁極面1bに亘って完全に空隙を形成してしまうと、周方向に沿って第1磁性体11及び第2磁性体12が分断されてしまう。よって正確には磁気障壁は空隙121として実現される部分と、空隙121と第1磁極面1aや第2磁極面1bとの間に残る薄肉の第1磁性体11及び第2磁性体12とによって実現される。この残置した第1磁性体11及び第2磁性体12においては、磁束が容易に飽和するため、この部分も実質的に磁気障壁として機能する。
空隙121は磁石111,116の境界及び磁石113,114の境界に設けられる。より具体的には、磁石111側にある磁石116の端部と、磁石116側にある磁石111の端部と、磁石113側にある磁石114の端部と、磁石114側にある磁石113の端部とにおいて、空隙121が設けられている。なお、空隙121と磁石113,114との位置関係の変形については後述する。
空隙121が設けられていない、磁石111〜116の端部には、同一の磁石の異なる極性の磁極の間で磁束が短絡しないための磁気障壁として空隙120が設けられている。空隙120は群の各々において隣接する磁石(例えば磁石114と磁石115)の境界において、第1磁極面1aと第2磁性体12との間での磁束の通過を阻害する。このような空隙120を設けることは周知の技術であるので、空隙121を形成することも周知の技術を適用して実現することができる。
なお、磁気障壁を構成する空隙120,121は非磁性体で充填されていても良い。また磁気障壁として、非磁性体ではなく磁石を採用することもできるが、この場合は後述する。
また当初は、磁気障壁が設られるべき位置に磁気障壁が存在しない磁性体を用い、当該位置に加工または熱等を施して磁性を失わせること、あるいは透磁率を極度に低下させることによって磁気障壁を形成してもよい。
但し本実施の形態においては、空隙120が設けられることは、他の観点からも望ましい。空隙120が存在することで、第2磁性体12に磁石が呈する磁極によらずに、第1磁極面1aに磁石が呈する磁極によって、第1磁極面1aに磁束が供給される。よって界磁は、第1電機子3、第2電機子2からの回転磁界や、これらと界磁子1との相対位置に依存しにくく、安定する。
第2磁極面1bに現れる磁極の境界は空隙121によって規定され、第2磁性体12に磁石が呈する磁極によって第2磁極面1bの磁極へと磁束が供給される。例えば磁石111〜113で構成される群についてみれば、これらはそれぞれ第2磁性体12に対してS極、N極、S極を呈する。よってこの群について、磁石が第2磁性体12に呈するS極性の磁極の総面積と、N極の磁極の総面積とが異なっていれば、磁石111〜113で構成される群の全体としては、第2磁極面1bに磁束を供給してS極を発生させる。同様にして磁石114〜116で構成される群の全体としては、第2磁極面1bに磁束を供給してN極を発生させている。
例えば、磁石のサイズを略同一とすれば、磁石が第2磁性体12に呈するS極の磁極の総面積と、N極の磁極の総面積との差は、磁石1個分となる。
他方、第1磁極面1aに磁石が呈する磁極はそれぞれ第1磁極面1aへ磁束を供給し、磁石111〜116と同数の、即ち6個の磁極を発生させる。よって第1磁極面1aの磁極の対数と第2磁極面1bの磁極の対数の和の二倍よりも少ない個数の磁石で、これらの磁極を有する界磁子1を得ることができる。
従って第1の実施の形態と同様に、通常の運転時には効率を高めつつ高速運転もできる。この際、界磁を弱める際に動作する機構部を設けたり、弱め磁束のためのd軸電流を流したりすることは前提とされない。
このような磁石の個数の節約のためには、第1磁極面1aの磁極の個数で磁石を設け、磁石の個数を、第2磁極面1bの磁極の個数で除した値が3以上の奇数であればよい。換言すれば、第1磁極面1aに現れる磁極の極対数は、第2磁極面1bに現れる磁極の極対数をm、nを正整数として、(2n+1)mであり、磁石はこれの二倍の個数で設けられる。
上述の例ではm=n=1の場合であるが、例えばm=3,n=2として、磁石を30個設け、第1磁極面1aには30個の磁極を発生させつつも、第2磁極面1bには6個の磁極のみ発生させることもできる。この場合には空隙121は周方向に沿って6個所に設けられることになり、5個の磁石が第2磁極面1bにおいて一つの磁極を発生させることになる。
なお、第1の実施の形態と同様に、第1磁極面1a、第2磁極面1bをそれぞれ外周側及び内周側に配置し、第1電機子3及び第2電機子2は、それぞれ界磁子1の外側及び内側に配置されることが望ましい。本実施の形態においてはその理由として更に第5の理由を挙げることができる。即ち磁石111〜116が平板であっても、これらを外周側に近接して埋設することは容易である。このような配置により、内周側で第2磁性体12の体積を大きく採ることができる。これは群をなす磁石同士で磁束をやりとりさせ、全体として一つの磁極を第2磁極面1bに与える観点で望ましい。
磁石の動作点の観点からは、空隙121を介して隣接する磁石111,113,114,116は、他の磁石112,115と比較してその磁極の面積が大きいことが望ましい。空隙121を介して隣接しない磁石112の第2磁極面1b側の磁極は、これと隣接する磁石111,113の第2磁極面1b側の磁極との間で磁束を流す。よって磁石112,115の動作点が高くなる。よって磁石111,113,114,116の面積を大きくすることで、動作点が比較的に低いこれらの磁石が提供する磁束を大きくし、第1磁極面1aでの磁極の磁束量のバランスを良好にすることができる。
なお第1の実施の形態とは異なり、第1電機子3、第2電機子2のいずれで駆動する場合にも電流位相を進めてリラクタンストルクを併用することができる。
第3の実施の形態.
図4は本発明の第3の実施の形態にかかる電動機の構造を示す断面図であり、同電動機の回転軸に垂直な断面を呈している。図5は図4の一部を拡大して示す断面図である。
当該電動機における第1電機子3、第2電機子2も、第1の実施の形態で採用されたものを採用することができ、いわゆるラジアルギャップ型の電動機を示す。
本実施の形態において界磁子1は、第2の実施の形態にかかる電動機の界磁子1から磁石112,115及びその両端に設けられていた空隙120が省略された構造を有している。この省略により、第2の実施の形態にかかる電動機の界磁子1とは異なり、磁石111,113,114,116が埋設される磁性体は、第1磁性体13と第2磁性体14とに区分される。
第1磁性体13は第1磁性体11(図2,図3参照)と同様に第1磁極面1aを有する。しかし第2磁性体14は第2磁性体12(図2,図3参照)とは異なり、第2磁極面1bを有するのみならず、第1磁極面1aをも有する。
つまり第1磁性体13は第1磁極面1aと、磁石111,113,114,116の第1磁極面1a側の磁極と、空隙121とに囲まれている。また第2磁性体14は第1磁極面1aと、第2磁極面1bと、磁石111,113,114,116の第2磁極面1b側の磁極と、空隙121とに囲まれている。
界磁子1には空隙121を介して隣接する磁石111,116が備えられている。これらは第1磁極面1aに対してそれぞれN極、S極の磁極を呈する。また空隙121を介して隣接する磁石113,114が備えられている。これらは第1磁極面1aに対してそれぞれN極、S極の磁極を呈する。
つまり空隙121を境界として区分される群の各々においては、磁石の磁極は第1磁極面1aに対して同極性の磁極を呈する。これは群の各々においては、第2磁性体14に対して同極性の磁極を呈することにもなる。しかし第2磁性体14は第1磁極面1aと第2磁極面1bとの両方を有するため、第1磁極面1aに磁石111,113,114,116が呈する磁極のみならず、第2磁性体14にこれらの磁石が呈する磁極によっても第1磁極面1aに磁束が供給され、第1磁極面1aに磁極が発生する。よって第2の実施の形態にかかる電動機の界磁子1よりも、必要な磁石の個数を低減できる。
更に、第2磁性体14に発生する磁極は、通電される電機子の方に、より多く磁束が流れる。つまり第1電機子3に通電する場合には、電流による磁極に吸引され、第2磁性体14の第1磁極面1a側により多くの磁束が流れる。
本実施の形態においても第1の実施の形態と同様に、通常の運転時には効率を高めつつ高速運転もできる。この際、界磁を弱める際に動作する機構部を設けたり、弱め磁束のためのd軸電流を流したりすることは前提とされない。
このような磁石の個数の節約のためには、第1磁極面1aに現れる磁極の対数が、第2磁極面1bに現れる磁極の対数mと3以上の奇数の所定数(2n+1)との積(2n+1)mであり、かつ磁石が区分される群の各々の磁石の個数は、所定数(2n+1)よりも小さくかつ2以上であればよい。
このような条件の下で、第2磁性体14が第1磁極面1a、第2磁極面1bの両方を有することにより、第2磁極面1b側へ磁石が呈する磁極と同極性の磁極が第1磁極面1a、第2磁極面1bのいずれにも発生する。第1磁極面1aには、第1磁極面1a側へ磁石が呈する磁極と同極性の磁極も発生する。
なお、第1の実施の形態と同様に、第1磁極面1a、第2磁極面1bをそれぞれ外周側及び内周側に配置し、第1電機子3及び第2電機子2は、それぞれ界磁子1の外側及び内側に配置されることが望ましい。
第4の実施の形態.
図6は本発明の第4の実施の形態にかかる電動機の構造を分解して示す斜視図である。
当該電動機は界磁子4と第1電機子6、第2電機子5とを備えている。本実施の形態では界磁子4は回転子として機能し、第1電機子6、第2電機子5はいずれも固定子として機能するものの、回転子、固定子の機能は適宜に選択してよい。
界磁子4は第1磁極面4a、第2磁極面4bを有しており、相互に対向している。分解しない状態、即ち実際の使用時には、第1電機子6は空隙を空けて第1磁極面4aに対向し、第2電機子5は空隙を空けて第2磁極面4bに対向して配置されている。本実施の形態では第1磁極面4a、第2磁極面4bが平板状の、いわゆるアキシャルギャップ型の電動機を示す。
第1電機子6は界磁子4へ第1回転磁界を発生させるため、巻線(図示省略)が集中巻で巻回された歯部601〜609を有する。歯部601〜609はヨーク600で磁気的に接続されている。第2電機子5は界磁子4へ第2回転磁界を発生させるため、巻線(図示省略)が集中巻で巻回された歯部501〜503を有する。歯部501〜503はヨーク200で磁気的に接続される。歯部501〜503,601〜609は平板状に配置される。第1電機子6、第2電機子5のいずれも中央部には回転軸(図示省略)を貫通させるための穴が設けられている。
界磁子4は、界磁子1と同様に、第1磁極面4a、第2磁極面4bにおいて個数が異なる磁極が現れる。本実施の形態では第1磁極面4a、第2磁極面4bにおいてそれぞれ極対数3,1で、即ち極数6,2で、磁極が現れる。他方、第1電機子6、第2電機子5のスロット数はそれぞれ9,3である。
このように、本実施の形態では第1の実施の形態と同様に、第1磁極面4aにおいて現れる磁極の個数よりも少ない個数で第2磁極面4bに磁極が現れ、第1磁極面4aに対向する第1電機子6のスロット数よりも第2磁極面4bに対向する第2電機子5のスロット数が少ない。よって通常の運転時には、第1電機子6に電機子電流を流して磁束量が多い第1磁極面4aの界磁を用いて効率を高め、第2電機子5に電機子電流を流して磁束量が少ない第2磁極面4bの界磁を用いて高速運転もできる。
本実施の形態において界磁子4は、磁石401〜408及びヨーク400を有する。磁石403〜408は第1磁極面4aに現れる磁極に磁束を供給する。磁石401,402は第2磁極面4bに磁束を供給する。図6では第2磁極面4bが見通せず、第2磁極面4bにおいて現れる磁極は「(N)」「(S)」として丸括弧付きで示した。
ヨーク400は、第1磁極面4aと第2磁極面4bとの間に設けられ、磁石401,402と磁石403〜408とを磁気的に遮蔽する。具体的には磁石401,402が円環状に配置され、磁石403〜408が円環状に配置されヨーク400は、これら二つの円環状配置の間に挟まれて配置される。磁石401〜408はヨーク400と接触するか、実質的に磁気障壁とはならない程度の空隙を空けて配置される。
ヨーク400の中央部には回転軸(図示省略)を貫挿させるための穴が設けられている。磁石401,402の間には空隙が設けられているが、環状の磁性体を局所的に着磁して、磁石401,402と両者の間に設けられた空隙に相当する非着磁部を一体に形成してもよい。同様にして、磁石403〜408同士の間には空隙が設けられているが、環状の磁性体を局所的に着磁して、磁石403〜408同士の間に設けられた空隙に相当する非着磁部を一体に形成してもよい。
このような構成の界磁子4でも、界磁子1と同様に、ヨーク400が存在するため、磁石404,402は第1磁極面4aに現れる磁極に磁束を供給せず、磁石403〜408は第2磁極面4bに現れる磁極に磁束を供給しない。よって第1磁極面4a、第2磁極面4bにおいて個数が異なる磁極が現れる界磁子を簡易に実現することができる。
よって本実施の形態においても第1の実施の形態と同様に、通常の運転時には効率を高めつつ高速運転もできる。この際、界磁を弱める際に動作する機構部を設けたり、弱め磁束のためのd軸電流を流したりすることは前提とされない。
第1電機子6も第1電機子3(図1)と同様に、9スロットの集中巻以外にも、18の正整数倍のスロット数で分布巻を施してもよい。
また第2電機子5で巻回される電機子巻線も同様に、3スロットの集中巻以外にも、6の正整数倍のスロット数で分布巻を施してもよい。
なお、アキシャルギャップ型ではラジアルギャップ型と異なり、第1磁極面4a、第2磁極面4bがそれぞれ第1電機子6、第2電機子5と対向していれば、ヨーク400のいずれ側に設けてもよい。但し第1の実施の形態で説明した第1乃至第4の理由による利点を得るのであれば、第1磁極面4a及び第1電機子6の径を第2磁極面4b及び第2電機子5の径よりも大きくすればよい。
第5の実施の形態.
図7は本発明の第5の実施の形態にかかる電動機の構造を分解して示す斜視図である。
当該電動機における第1電機子6、第2電機子5も、第4の実施の形態で採用されたものを採用することができる。本実施の形態においても界磁子4の第1磁極面4a、第2磁極面4bは平板状であり、いわゆるアキシャルギャップ型の電動機を示す。
本実施の形態において界磁子4は、磁石411〜416と、第1磁性体41及び第2磁性体42を有する。磁石411〜416は図示されるように空隙420,421を介して環状に隣接して配置されている。但し環状の磁性体に局所的に着磁して磁石411〜416と空隙420,421に相当する非着磁部を一体に形成してもよい。
第1磁性体41は第1磁極面4aを有し、第2磁性体42は第2磁極面4bを有する。
磁石411〜416は第1磁性体41及び第2磁性体42に対して異なる極性の磁極を呈する。具体的には磁石411,413,415のいずれもが、第1磁性体41及び第2磁性体42に対してそれぞれN極とS極とを呈する。また磁石412,414,416のいずれもが、第1磁性体41及び第2磁性体42に対してそれぞれS極とN極とを呈する。
第1磁性体41は6個のスリットS0を、第2磁性体42は2個のスリットS1を、それぞれ有している。スリットS0の位置は平面視(回転軸方向に平行な視線)において空隙420,421の位置と一致する。またスリットS1の位置は平面視において空隙421の位置と一致する。
スリットS0,S1はそれぞれ第2磁性体42及び第1磁性体41において、周方向への磁束の透過を阻害する磁気障壁として機能する。空隙120,121と同様に、スリットS0,S1はそれぞれ第1磁性体41及び第2磁性体42の径方向に貫通しているわけではない。しかしスリットS0,S1の外周や内周に残置した第2磁性体42及び第1磁性体41は径方向に対して薄肉となっており、磁束が容易に飽和するため、この部分も実質的に磁気障壁として機能する。
磁石411〜416は第2磁性体42及び第1磁性体41と接触するか、実質的に磁気障壁とはならない程度の空隙を空けて配置される。
なお、空隙420,421が存在するため、第1磁性体41は省略することができる。その場合には磁石411〜416が第1磁極面4aを有する。
但し、より多くの磁束を第1電機子6へ鎖交させる観点から、磁石411〜416の磁極の面積よりも大きく、かつスリットS0を有する第1磁性体41を設けることが望ましい。同様に、第2磁性体42は、より多くの磁束を第2電機子5へ鎖交させる観点から、磁石411〜416の磁極の面積よりも大きくすることが望ましい。
磁石411〜416は第2磁極面4bに現れる磁極の数、即ち極対数の二倍の群に区分される。ここでは当該極対数が1であるので、磁石411〜413と、磁石414〜416が異なる群に区分される。そして隣接する群の境界には第2磁性体42にスリットS1が備えられている。しかも第1磁性体41にはスリットS0が備えられている。
よってスリットS0,S1はそれぞれ空隙120,121と同様に機能し、第2磁極面4bに現れる磁極の境界はスリットS1によって規定され、第2磁性体42に磁石が呈する磁極によって第2磁極面4bの磁極へと磁束が供給される。例えば磁石411〜413で構成される群についてみれば、これらはそれぞれ第2磁性体42に対してS極、N極、S極を呈する(図示されている磁極は第2磁性体42とは反対側に呈した磁極であることに注意)。よって磁石411〜413で構成される群の全体としては、第2磁極面4bに磁束を供給してS極を発生させている。同様にして磁石414〜416で構成される群の全体としては、第2磁極面4bに磁束を供給してN極を発生させている。
他方、第1磁性体41に磁石が呈する磁極はそれぞれ第1磁極面4aへ磁束を供給し、磁石411〜416と同数の、即ち6個の磁極を発生させる。よって第2の実施の形態と同様に、第1磁極面4aの磁極の対数と第2磁極面4bの磁極の対数の和の二倍よりも少ない個数の磁石で、これらの磁極を有する界磁子4を得ることができる。
なお、第2磁性体42は、磁石が成す群の端部以外に配置される磁石412の第2電機子5側の磁極(N極)を磁石411,413の第2電機子5側の磁極(S極)で短絡し、磁石415の第2電機子5側の磁極(S極)を磁石414,416の第2電機子5側の磁極(N極)で短絡する。かかる短絡の観点から、第2磁性体42は第1磁性体41よりも多くの磁束を流し得ることが望ましい。たとえば第1磁性体41及び第2磁性体42が同じ材料で形成されるのであれば、第1磁性体41よりも第2磁性体42を厚くすることが望ましい。
よって本実施の形態においても第2の実施の形態と同様に、通常の運転時には効率を高めつつ高速運転もできる。この際、界磁を弱める際に動作する機構部を設けたり、弱め磁束のためのd軸電流を流したりすることは前提とされない。
このような磁石の個数の節約のためには、第2の実施の形態と同様に、第1磁極面4aに現れる磁極の極対数は、第2磁極面4bに現れる磁極の極対数をm、nを正整数として、(2n+1)mであり、磁石はこれの二倍の個数で設けられる。
なお、第4の実施の形態と同様、第1の実施の形態で説明した第1乃至第4の理由による利点を得るのであれば、第1磁極面4a及び第1電機子6の径を第2磁極面4b及び第2電機子5の径よりも大きくすればよい。
また、第2の実施の形態と同様、第1磁極面4aの磁極の磁束量のバランスを採るためには、空隙421を介して隣接する磁石411,413,414,416は、他の磁石412,415と比較してその磁極の面積が大きいことが望ましい。
なお第4の実施の形態とは異なり、第1電機子6、第2電機子5のいずれで駆動する場合にもリラクタンストルクを併用することができる。
第6の実施の形態.
図8は本発明の第6の実施の形態にかかる電動機の構造を分解して示す斜視図である。
当該電動機における第1電機子6、第2電機子5も、第4の実施の形態で採用されたものを採用することができる。本実施の形態においても界磁子4の第1磁極面4a、第2磁極面4bは平板状であり、いわゆるアキシャルギャップ型の電動機を示す。
本実施の形態において界磁子4は、第5の実施の形態にかかる電動機の界磁子4の磁石412,415をそれぞれ磁性体402、405に置換された構造を有している。磁石411,413,414,416及び磁性体402,405平板状の磁性体41,42と接触するか、実質的に磁気障壁とはならない程度の空隙を空けて配置される。以下では簡単のため、後者の場合も接触として表現する。
さて、磁性体42はスリットS1で一対の部分へと磁気的に分離され、その各々に磁性体402又は磁性体405が接触する。また磁性体はスリットS0で6個の部分へと磁気的に分離され、その内の一つが磁性体402に、他の一つが磁性体405に、それぞれ接触する。
そこで本実施の形態においては、磁石411,413,414,416と接触し、スリットS0で区分された磁性体41を第1磁性体として捉える。また磁性体42のみならず、磁性体402,405及びこれらと接触し、スリットS0で区分された磁性体41をも第2磁性体として捉える。
このような把握により、第3の実施の形態と同様に、第1磁性体は第1磁極面4aを有し、第2磁性体は第2磁極面4bを有するのみならず、第1磁極面4aをも有する。
つまり空隙421を境界として区分される群の各々においては、磁石の磁極は第1磁性体に対して同極性の磁極を呈する。これは群の各々においては、第2磁性体に対して同極性の磁極を呈することにもなる。第2磁性体は第1磁極面4aと第2磁極面4bとの両方を有するため、磁性体41に磁石411,413,414,416が呈する磁極のみならず、磁性体42にこれらの磁石が呈する磁極によっても第1磁極面4aに磁束が供給され、磁極が発生する。
具体的には、磁石411、413は磁性体41に対してN極を呈する。これは磁石411、413と接触する磁性体41の部分を介して、第1磁極面4aにおいてN極の磁極を発生させる。
他方、磁石411、413はこれらと接触する磁性体42の部分に対してS極を呈する。よって当該部分において第2磁極面4bにはS極の磁極が発生しつつ、磁性体402及びこれと接触する磁性体41の部分を介して第1磁極面4aにS極の磁極が発生する。
以上のようにして第5の実施の形態にかかる電動機の界磁子4よりも、必要な磁石の個数を低減できる。そして第3の実施の形態と同様に、通常の運転時には効率を高めつつ高速運転もできる。この際、界磁を弱める際に動作する機構部を設けたり、弱め磁束のためのd軸電流を流したりすることは前提とされない。
このような磁石の個数の節約のためには、第3の実施の形態と同様に、第1磁極面1aに現れる磁極の対数が、第2磁極面1bに現れる磁極の対数mと3以上の奇数の所定数(2n+1)との積(2n+1)mであり、かつ磁石が区分される群の各々の磁石の個数は、所定数(2n+1)よりも小さくかつ2以上であればよい。
なお、第4の実施の形態と同様、第1の実施の形態で説明した第1乃至第4の理由による利点を得るのであれば、第1磁極面4a及び第1電機子6の径を第2磁極面4b及び第2電機子5の径よりも大きくすればよい。
なお第4の実施の形態とは異なり、第1電機子6、第2電機子5のいずれで駆動する場合にもリラクタンストルクを併用することができる。
その他の変形.
図9及び図10は、空隙121と、磁石113,114との位置関係についての第1及び第2の変形を示す部分的な断面図であり、図3に対応している。もちろんこれらの変形は、空隙121と、磁石111,116との位置関係にも適用することができる。またこれらの図においては第2の実施の形態に対応して磁石115が存在している場合を例示している。しかし第3の実施の形態に対応して磁石115が存在していない場合にも適用することができる。
図9では空隙121が、磁石113,114の端部に設けられてはいるが、磁石113,114によって分断されている。このような場合でも磁石113が属する群と、磁石114が属する群との間での磁束の透過を阻害する磁気障壁が形成される。このような構造では第1磁極面1aや第2磁極面1bへと流れる磁束量を多くし易い。
図10では空隙121の端部が磁石113,114の端部と連結している。第2の実施の形態において述べたように、空隙121と第1磁極面1aや第2磁極面1bとの間に残る薄肉の第1磁性体11も実質的に磁気障壁として機能する。よってこのような場合でも磁石113が属する群と、磁石114が属する群との間での磁束の透過を阻害する磁気障壁が形成される。
またこのとき、空隙120も、磁石111〜116が第1磁極面1a付近まで延設されている場合は省略可能である。
図11は第3の変形を示す部分的な断面図である。第1磁性体11を設けずに磁石113,114,115が第1磁極面1aに露出している態様が示されている。つまりここではいわゆる表面磁石型の界磁子が例示されている。もちろん、磁石を固定するための構造が第1磁極面1aを覆っていてもよい。
この場合においても第2磁性体12は第2磁極面1bを有するし、磁石113,114,115が第1磁極面1aに磁極を呈すると把握することができる。よって第2の実施の形態と同様に、着磁される磁石の個数を低減することができる。
第1の実施の形態で述べたように、個々の磁石は着磁された単位で把握している。そして例えば多極着磁されたリング状の磁石を採用することができる。
図12は第2の実施の形態の変形を示す断面図である。磁石111〜116を多極着磁されたリング状の磁石で実現している。ここではリング状の磁石を採用しているため、空隙120は省略され、空隙121が残置されている。図11に示された構造と同様に、これらの磁石は第1磁極面1aに露出しており、第1磁性体11は設けられない。
図13は第3の実施の形態の変形を示す部分的な断面図である。図12の変形と類似して、第1磁性体13を設けずに磁石111,113,114,116が第1磁極面1aに露出している。第3の実施の形態と同様に、第2磁性体14は第2磁極面1bのみならず第1磁極面1aも有しており、第3の実施の形態と同様にして磁石の個数を低減できる。
磁気障壁としては、記述の通り、空隙に限定されはしない。図14は第4の変形を示す部分的な断面図であり、第2の実施の形態に基づいた変形として示しており、図3に対応する。空隙120の代わりに磁石120aが、空隙121の代わりに磁石121a及び空隙121bが、それぞれ設けられている。空隙121bは空隙121と同様に、群の境界で磁束の通過を阻害する磁気障壁として機能する。磁石120a,121aは、それぞれが隣接する磁石の端部よりも第1磁極面1a側に配置されている。空隙121bは磁石121aよりも第2磁極面1b側に配置されている。
磁石120a,121aは、これらに隣接する磁石が第1磁極面1aに向けている磁極と同じ極性を、当該隣接する磁石に向けて配置されている。具体的には磁石120aと隣接する磁石114,115は、第1磁極面1aにそれぞれS極、N極を向けている。そして磁石120aは、磁石114,115にそれぞれS極、N極を向けている。磁石121aと隣接する磁石113,114は、第1磁極面1aにそれぞれN極、S極を向けている。そして磁石121aは、磁石113,114にそれぞれN極、S極を向けている。
例えば磁石120a,121aのS極は、磁石114が第1磁極面1aに向けたS極から供給される磁束を第1磁極面1aへと導く。これにより磁石120a,121aは、第1磁極面1aと第2磁性体12との間での磁束の通過を阻害する磁気障壁として機能するとともに、第1磁極面2aに供給する磁束量を増す効果を併せて有する。
図15は第5の変形を示す断面図であり、第2の実施の形態に基づいた変形として示しており、図2に対応する。当該変形では空隙121は設けられず、磁石111〜116の端部の全てに空隙120が設けられている。そして磁石111,116の間及び磁石113,114の間には磁石121dが設けられている。磁石121dは、隣接する磁石の端部よりも第2磁極面1b側に配置されている。
磁石121dは、これに隣接する磁石が第2磁極面1bに向けている磁極と同じ極性を、当該隣接する磁石に向けて配置されている。具体的には磁石111,116は、第2磁極面1bにそれぞれS極、N極を向けている。そしてこれらに隣接する磁石121dは、磁石111,116にそれぞれS極、N極を向けている。磁石113,114は、第2磁極面1bにそれぞれS極、N極を向けている。そしてこれらに隣接する磁石121dは、磁石113,114にそれぞれS極、N極を向けている。
そして磁石121dは、磁石111,113,114,116が第2磁極面1bに向けた磁極から供給される磁束を第2磁極面2aへと導く。これにより磁石121dも空隙121と同様に、群の境界で磁束の通過を阻害する磁気障壁として機能するとともに、第2磁極面2aに供給する磁束量を増す効果を併せて有する。
第5の変形における空隙120を第4の変形における磁石120a,121aと置換してもよい。また第1乃至第5の変形は第2の実施の形態のみならず、第3の実施の形態に適用してもよい。
なお第1乃至第6の実施の形態や変形例のいずれにおいても、通常運転時に第1電機子による回転磁界と第2電機子による回転磁界との両方を採用してもよい。