JP5124286B2 - 徐放性製剤およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、頻尿、尿失禁治療剤として有用である(−)−2−[4−[2−[[(1S,2R)−2−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]アミノ]エチル]−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル塩酸塩の徐放性製剤およびその製造方法に関する。
徐放性製剤は、通常の速放性製剤に比べて、薬物の血中濃度の制御による薬効の持続化や副作用の軽減、投与回数の減少によるコンプライアンスの向上等の利点を有することから、近年、多くの薬物を対象に徐放性製剤の開発が進められている。ヒト消化管におけるpH変動に関しては良く知られており、例えば、胃ではpH1付近、十二指腸ではpH5〜6、空腸ではpH6〜7、回腸ではpH8付近であると報告されている。そのためpH依存的な溶解度または溶出速度を有する薬物を有効成分とする製剤では、消化管内のpH変化の影響を受け易く、消化管の部位によって製剤からの薬物の溶出が異なる問題点が指摘されている。従って、pH依存的な溶解度または溶出速度を有する薬物を有効成分とする徐放性製剤の開発に際しては、pH非依存的に放出制御された徐放性製剤が求められている。
式(I):
Figure 0005124286

で表される(−)−2−[4−[2−[[(1S,2R)−2−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]アミノ]エチル]−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル塩酸塩(以下、化合物(I)と称する)は、優れたβ−アドレナリン受容体刺激作用を有し、頻尿、尿失禁治療剤として有用な化合物である。この化合物(I)は、胃液に相当するpH1.2付近、腸液に相当するpH6.8付近に比べてpH4付近で最も溶出速度が速く、pH変動による溶出性の差が大きい問題点を有している。
ヒドロキシプロピルセルロースなどのpH非依存性ゲル形成高分子は徐放性基剤として広く用いられているが、このようなpH非依存性ゲル形成高分子を利用する徐放性製剤では、消化管内において膨潤しゲル化したマトリクス中のpHは基本的に環境中のpHに依存して変化するため、有効成分がpH依存的な溶出速度を有する場合、pH非依存的な溶出制御をなし得ないと考えられている(例えば、非特許文献1、特許文献1および2参照)。
pH依存的な溶出速度を有する薬物の徐放製剤化に対しては、従来、徐放性基剤とともに、薬物の周囲に、薬物の溶解性を調節するための成分を添加する放出制御方法が数多く報告されている。例えば、化合物(I)のような塩基性薬物の酸付加塩の場合、通常、酸性領域のpHにおいて溶解度が高く、pHが高くなるにつれて溶解度が低くなることから、酸性成分を添加する方法(例えば、特許文献3参照)や、腸溶性成分中に薬物を分散させる方法(例えば、特許文献4参照)が提案されている。また有効成分が酸性薬物の場合にはpHが高くなるにつれて溶解度が増すことから、塩基性成分の添加が行われている(例えば、特許文献5参照)。また、マトリクス基剤にpH緩衝剤を添加する提案もなされている(例えば、特許文献6参照)。また、胃液と腸液の中間付近のpHにおいて薬物溶出速度が高い薬物に対しては、pH3付近より高いpH領域において膨潤が起こるポリマーとしてカルボキシビニルポリマーまたはメチルビニルエーテル無水マレイン酸コポリマーと、腸溶性基剤とを組み合わせて添加する徐放性製剤が提案されている(例えば、特許文献7参照)。
化合物(I)を有効成分として含有する医薬組成物として、次のような特許文献が知られている。WO2004/047830には、化合物(I)と塩酸デュロキセチンとを有効成分として含有してなる、フィルムコーティング錠またはカプセル処方が開示されている(例えば、特許文献8参照)。WO2004/047838には、化合物(I)と抗ムスカリン剤とを有効成分として含有してなる、フィルムコーティング錠、糖衣錠などの処方が開示されている(例えば、特許文献9参照)。また、WO2005/042021には、化合物(I)と塩酸タムスロシンとを有効成分として含有してなるカプセル処方が開示されている(例えば、特許文献10参照)。しかしながら、これらの特許文献に開示された処方は、いずれも即時放出性または腸溶性の製剤処方を意図したものであり、pH非依存的に放出制御された徐放性製剤については何ら記載されていない。
Huang Y.Bら,「International Journal of Pharmaceutics」, 2005年, 289巻, p.87-95 特開平1−100134号公報 国際公開第2003/000293号パンフレット 特開平6−9388号公報 特開平2−223533号公報 特開平3−204810号公報 特開昭62−242615号公報 特開平6−199657号公報 国際公開第2004/047830号パンフレット 国際公開第2004/047838号パンフレット 国際公開第2005/042021号パンフレット
本発明の目的は、(−)−2−[4−[2−[[(1S,2R)−2−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]アミノ]エチル]−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル塩酸塩を有効成分としてなり、pH非依存的に放出制御された徐放性製剤およびその製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、有効成分に、薬物の溶解性を調整するための成分を種々加えて溶出性を調べてみた。前述したように塩基性薬物の酸付加塩の場合には、しばしば酸性成分の添加が行われることから、本発明者らは、まず化合物(I)に種々の酸性成分を添加してみたが、pH依存的な溶出性は全く改善されなかった。また、本発明者らは、化合物(I)に、塩基性成分や腸溶性基剤を添加した場合の溶出性を調べてみたが、依然としてpH変動における影響を十分に改善することができなかった。また、塩基性成分を添加する場合には化合物(I)自体の分解が促進されるため、塩基性成分の使用は困難であった。
徐放性基剤は、一般的に水不溶性高分子と親水性高分子に大別され、さらに水不溶性高分子および親水性高分子は、それぞれpH依存性を有する高分子とpH非依存を有する高分子に分類される。そこで本発明者らは、これらの種々の徐放性基剤を含有する製剤の溶出性について検討した。その結果、pH依存性高分子、水不溶性高分子ではpH依存的な溶出性を改善することはできなかったが、驚くべきことにpH非依存性高分子の中でも水性媒体中でゲル層を形成する親水性高分子の添加によって、pH緩衝能を有する他の添加剤を使用することなく、pH非依存的な放出制御が可能であることを見出した。これまで有効成分がpH依存的な溶出速度を有する場合に、実質的にpH非依存性ゲル形成高分子のみを用いて、pH非依存的に放出制御された徐放性製剤は知られておらず、化合物(I)のようにpH1.2付近およびpH6.8付近に比べてpH4において高い溶出速度を有する薬物において、pH非依存性ゲル形成高分子が優れたpH緩衝能を示したことは全く予想外であった。
このように、本発明は、
〔1〕 有効成分として(−)−2−[4−[2−[[(1S,2R)−2−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]アミノ]エチル]−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル塩酸塩と、pH非依存性ゲル形成高分子とを含有する徐放性製剤;
〔2〕 pH1.2またはpH6.8に比べてpH4において高い溶出速度を有する有効成分を含有する、pH非依存的に放出制御された徐放性製剤であって、有効成分として(−)−2−[4−[2−[[(1S,2R)−2−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]アミノ]エチル]−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル塩酸塩と、pH非依存性ゲル形成高分子とを含有することを特徴とする徐放性製剤;
〔3〕 pH1.2またはpH6.8に比べてpH4において高い溶出速度を有する有効成分を含有する、pH非依存的に放出制御された徐放性製剤であって、有効成分として(−)−2−[4−[2−[[(1S,2R)−2−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]アミノ]エチル]−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル塩酸塩と、pH非依存性ゲル形成高分子とを含有し、実質的にpH非依存性ゲル形成高分子以外のpH調整剤を含有しないことを特徴とする徐放性製剤;
〔4〕 pH非依存性ゲル形成高分子が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロースおよびメチルセルロースからなる群から選択される少なくとも1種である、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項記載の徐放性製剤;
〔5〕 pH非依存性ゲル形成高分子が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレンオキシドまたはポリビニルアルコールから選択される少なくとも1種である、〔4〕記載の徐放性製剤;
〔6〕 pH非依存性ゲル形成高分子の含有量が、製剤全重量に対して10重量%以上である、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項記載の徐放性製剤
〔7〕 pH非依存性ゲル形成高分子の含有量が、有効成分に対して10重量%以上である、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項記載の徐放性製剤;
〔8〕 pH非依存性ゲル形成高分子が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、〔4〕記載の徐放性製剤;
〔9〕 ヒドロキシプロポキシル基含量が7〜12%、メトキシ基含量が28〜30%であるヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する、〔8〕記載の徐放性製剤;
〔10〕 ヒドロキシプロポキシル基含量が4〜12%、メトキシ基含量が19〜24%であるヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する、〔8〕記載の徐放性製剤;
〔11〕 ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量が、有効成分に対して30重量%以上である、〔8〕記載の徐放性製剤;
〔12〕 ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量が、有効成分に対して40重量%以上である、〔8〕記載の徐放性製剤;
〔13〕 さらに水不溶性物質を含有する、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項記載の徐放性製剤;
〔14〕 水不溶性物質が、高級アルコール、ワックス、硬化油、エチルセルロースおよびアクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーおよびアミノアルキルメタクリレートコポリマーRSから選択される少なくとも1種である、〔13〕記載の徐放性製剤;
〔15〕 水不溶性物質が、高級アルコールおよびワックスから選択される少なくとも1種である、〔13〕記載の徐放性製剤;
〔16〕 (−)−2−[4−[2−[[(1S,2R)−2−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]アミノ]エチル]−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル塩酸塩を有効成分として含有する徐放性製剤のpH非依存的な放出制御方法であって、該方法は、(−)−2−[4−[2−[[(1S,2R)−2−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]アミノ]エチル]−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル塩酸塩をpH非依存性ゲル形成高分子のマトリクス中に分散させることを特徴とする方法;
〔17〕 (−)−2−[4−[2−[[(1S,2R)−2−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]アミノ]エチル]−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル塩酸塩を含有してなるpH非依存的に放出制御された徐放性製剤用である、pH非依存性ゲル形成高分子からなるpH調整剤;
〔18〕 (−)−2−[4−[2−[[(1S,2R)−2−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]アミノ]エチル]−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル塩酸塩を有効成分として含有する、pH非依存的に放出制御された徐放性製剤の製造方法であって、該方法は、(−)−2−[4−[2−[[(1S,2R)−2−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]アミノ]エチル]−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル塩酸塩をpH非依存性ゲル形成高分子のマトリクス中に分散させることを特徴とする方法、を提供するものである。
本発明において「pH非依存的に放出制御された徐放性製剤」とは、pH1.2〜6.8の範囲においてpH非依存的に放出制御された徐放性製剤であり、好適には、第14改正日本薬局方・溶出試験法第2法(パドル法)に従って、pH1.2、pH4およびpH6.8の試験液を用いて、パドル回転数100rpmで溶出試験を行った場合に、薬物の溶出率が20〜40%、40〜60%および70%以上のいずれの範囲においてもpH非依存的に放出制御された徐放性製剤である。
本発明において「pH非依存的な放出制御」は、第14改正日本薬局方・溶出試験法第2法(パドル法)に従って、pH1.2、pH4およびpH6.8の試験液を用いて、パドル回転数100rpmで溶出試験を行った場合に、薬物の溶出率が20〜40%、40〜60%および70%以上のいずれの範囲においても、それらの溶出率の差、すなわち最も溶出率の高いものと最も溶出率の低いものとの差が20%以内であることが好ましく、15%以内であることがさらに好適であり、10%以内であることが最も好適である。
本発明の徐放性製剤に用いられるpH非依存性ゲル形成高分子は、pH非依存的に水性媒体中で膨潤しゲル層を形成する、親水性高分子である。このようなpH非依存性ゲル形成高分子としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース等を用いることができる。
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は、分子内にヒドロキシプロポキシル基とメトキシ基とを有するセルロース誘導体であり、ヒドロキシプロポキシル基含量とメトキシ基含量の異なる、様々なグレードのヒドロキシプロピルメチルセルロースが知られている。
本発明の徐放性製剤に好適に使用されるヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)としては、例えば、ヒドロキシプロポキシル基含量が4〜12%、メトキシ基含量が19〜30%の範囲であるHPMCが挙げられる。このようなHPMCの具体的としては、例えば、ヒドロキシプロポキシル基含量が7〜12%、メトキシ基含量が28〜30%であるヒドロキシプロピルメチルセルロース2910(例えば、メトローズ60SHタイプ(信越化学工業製), TC−5タイプ(信越化学工業製),METHOCEL Eタイプ(ダウケミカル製)など);ヒドロキシプロポキシル基含量が4〜7.5%、メトキシ基含量が27〜30%であるヒドロキシプロピルメチルセルロース2906(例えば、メトローズ65SHタイプ(信越化学工業製)、またはMETHOCEL Fタイプ(ダウケミカル製)など);およびヒドロキシプロポキシル基含量が4〜12%、メトキシ基含量が19〜24%であるヒドロキシプロピルメチルセルロース2208(例えば、メトローズ90SHタイプ(信越化学工業製),METHOCEL Kタイプ(ダウケミカル製)など)が挙げられる。
これらのHPMCの中では、ヒドロキシプロポキシル基含量が7〜12%、メトキシ基含量が28〜30%であるHPMC(例えば、メトローズ60SHタイプ(信越化学工業製), TC−5タイプ(信越化学工業製),METHOCEL Eタイプ(ダウケミカル製)など);およびヒドロキシプロポキシル基含量が4〜12%、メトキシ基含量が19〜24%であるHMPC(例えば、メトローズ90SHタイプ(信越化学工業製),METHOCEL Kタイプ(ダウケミカル製)など)が、pH緩衝能の面で好適であり、ヒドロキシプロポキシル基含量が7〜12%、メトキシ基含量が28〜30%であるHPMC(例えば、メトローズ60SHタイプ(信越化学工業製), TC−5タイプ(信越化学工業製),METHOCEL Eタイプ(ダウケミカル製)など)が、pH緩衝能の面で最も好適である。
HPMCの粘度は特に制限されないが、一般的にHPMCの粘度が増大するに従って、薬物の溶出がより遅延することから、目的とする溶出プロファイルに合わせて、20℃における2%水溶液粘度が3〜100000mPa・sである範囲から適宜選択して使用することができる。中でも15〜10000mPa・sの範囲の粘度のHPMCが徐放効果の面で好適である。
これらのHPMCは、必要に応じて、ヒドロキシプロポキシル基含量、メトキシ基含量および粘度の異なるものを、2種以上組み合わせて使用してもよい。
本発明の徐放性製剤に用いられるポリエチレンオキシド(PEO)として、分子量100000〜7000000のPEOが好適に使用される。このようなPEOの具体例としては、例えば、25℃における5%水溶液の粘度が30〜17600mPa・sのPEO(例えば、粘度30〜50mPa・sのものはPOLYOX Water-Soluble Resin WSR N-10 NF;粘度55〜90mPa・sのものとしてPOLYOX Water-Soluble Resin WSR N-80 NF;粘度600〜1200mPa・sのものとしてPOLYOX Water-Soluble Resin WSR N-750 NF;粘度4500〜8800mPa・sのものとしてPOLYOX Water-Soluble Resin WSR-205 NF;粘度8800〜17600mPa・sのものとしてPOLYOX Water-Soluble Resin WSR-1105 NF(いずれもダウケミカル製)など);25℃における2%水溶液の粘度が400〜4000mPa・sのPEO(例えば、粘度400〜800mPa・sのものとしてPOLYOX Water-Soluble Resin WSR N-12K NF;粘度2000〜4000mPa・sのものとしてPOLYOX Water-Soluble Resin WSR N-60K NF(いずれもダウケミカル製)など);25℃における1%水溶液の粘度が1650〜10000mPa・sのPEO(例えば、粘度1650〜5500mPa・sのものとしてPOLYOX Water-Soluble Resin WSR-301 NF;粘度5500〜7500mPa・sのものとしてPOLYOX Water-Soluble Resin WSR Coagulant NF;粘度7500〜10000mPa・sのものとしてPOLYOX Water-Soluble Resin WSR-303 NF(いずれもダウケミカル製)など)などが挙げられる。
さらに好ましくは、分子量 100000〜5000000であって、25℃における5%水溶液の粘度が30〜17600mPa・sのPEO;25℃における2%水溶液の粘度が400〜4000mPa・sのPEO;および25℃における1%水溶液の粘度が1650〜7500mPa・sのPEOが、pH緩衝能および徐放効果の面で好適である。
本発明の徐放性製剤に用いられるポリビニルアルコール(PVA)として、けん化度が78.0mol%〜96.0mol%であり、20℃における4%水溶液の粘度が2〜100mPa・sであるPVAが挙げられる。より具体的には、けん化度が86.5〜89.0mol%であり、20℃における4%水溶液の粘度が4.8〜46.0mPa・sであるPVA(例えば、粘度4.8〜5.8mPa・sのものとしてEG-05、EL-05;粘度20.5〜24.5mPa・sのものとしてEG-25;粘度27.0〜33.0mPa・sのものとしてEG-30、GH-17;粘度40.0〜46.0mPa・sのものとしてEG-40(いずれも日本合成化学製)など)が、pH緩衝能および徐放効果の面で好適である。
これらのpH非依存性ゲル形成高分子の含有量は、高分子の種類によっても異なるが、通常、有効成分に対して10重量%以上のpH非依存性ゲル形成高分子を添加すればpH緩衝能を発揮することが可能であり、当該pH非依存性ゲル形成高分子の含有量は、通常、製剤全重量に対して少なくとも10重量%以上配合される。より具体的には、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いた場合、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの好ましい含有量は、有効成分に対して30重量%以上であり、さらに好適には有効成分に対して40重量%以上である。ポリエチレンオキシドを用いた場合、ポリエチレンオキシドの好ましい含有量は、有効成分に対して10重量%以上であり、さらに好適には有効成分に対して15重量%以上である。ポリビニルアルコールを用いた場合、ポリビニルアルコールの好ましい含有量は、有効成分に対して35重量%以上であり、さらに好適には有効成分に対して40重量%以上である。
これらのpH非依存性ゲル形成高分子の中では、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレンオキシドまたはポリビニルアルコールが好適であり、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはポリエチレンオキシドがさらに好適である。
また、これらのpH非依存性ゲル形成高分子は、必要に応じて、2種以上を組み合わせて使用してもよく、pH非依存性ゲル形成高分子の種類やそれらの粘度や添加量を変化させることにより、マトリクス中からの化合物(I)の溶出速度を任意に調節することができる。
本発明の徐放性製剤は、実質的にpH非依存性ゲル形成高分子以外のpH調整剤を含有しないが、これはpH非依存性ゲル形成高分子以外のpH調整剤(例えば、酸性成分、塩基性成分、腸溶性基剤、pH依存性高分子など)は、本発明の効果であるpH非依存的な放出制御を減じる方向に働くためである。本発明において、実質的にとは、本発明の効果に影響を与えない量であれば、pH非依存性ゲル形成高分子以外のpH調整剤の配合を許容することを意味する。
本発明の徐放性製剤では、pH非依存的な放出制御を損なわない程度に、pH非依存性ゲル形成高分子と、それ以外の徐放性基剤とを適宜組み合わせて使用してもよい。このような徐放性基剤としては、例えば、pH依存性ゲル形成高分子および水不溶性物質などが挙げられる。
本発明の徐放性製剤に用いられるpH依存性ゲル形成高分子の具体例としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらのpH依存性ゲル形成高分子は、単独でも2種以上組み合わせて使用してもよい。
本発明の徐放性製剤に用いられる水不溶性物質は、pH緩衝能を示さず、かつ活性成分の溶出速度を調整、特に遅延する作用を有するものであれば特に制限されないが、例えば、高級アルコール(例えば、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールなど);ワックス(例えば、カルナバロウ、蜜ロウ、ラノリン、マイクロクリスタリンワックスなど);硬化油(例えば、ヒマシ油、綿実油、大豆油、菜種油、牛脂油など);エチルセルロース;メタクリル酸コポリマー(例えば、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーなど)等が挙げられる。より具体的には、高級アルコール、ワックスまたはエチルセルロースが好適であり、中でもステアリルアルコール、カルナウバワックスまたはエチルセルロースがさらに好適である。これらの水不溶性物質は、単独でも2種以上組み合わせて使用してもよい。このような水不溶性物質と、pH非依存性ゲル形成高分子とを組み合わせることによってさらに徐放効果を増すことができる。また、これらの水不溶性物質とpH非依存性ゲル形成高分子との配合比を変化させることによって、マトリクス中からの化合物(I)の溶出速度を任意に調節することができる。
また、本発明の徐放性製剤は、発明の効果に支障のない限り、上記の徐放性基剤以外に、製剤の製造に用いられる種々の添加剤を含有してもよい。このような添加剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動化剤、コーティング剤、緩衝剤、着色剤等が挙げられる。
このような賦形剤としては、例えば、乳糖、結晶セルロース、マンニトール、デンプンなどが挙げられる。結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチン、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ステアリルアルコール、カルナウバワックスなどが挙げられる。崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、クロスポビドン、カルボキシメチルスターチナトリウムなどが挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、タルク、フマル酸ステアリルナトリウムなどが挙げられる。
本発明における徐放性製剤の剤形としては、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤等の様々な剤形が挙げられ、特に限定されないが、錠剤が好適である。
次に本発明の徐放性製剤の製造方法について説明する。
本発明の徐放性製剤は、化合物(I)がpH非依存性ゲル形成高分子のマトリクス中に分散していればよく、その製造方法は、特に制限されないが、例えば、以下のような方法に従って製造することができる。
化合物(I)と、pH非依存性ゲル形成高分子、必要に応じてその他の添加剤とを混合する。次いで、適切な結合剤を使用して、高速撹拌造粒法、流動層造粒法、転動造粒法など常法の造粒法により造粒し、乾燥、整粒を行い、顆粒を得る。
また、化合物(I)と、必要に応じてその他の添加剤とを混合し、次いで、適切な結合剤を使用して、高速撹拌造粒法、流動層造粒法、転動造粒法など常法の造粒法により造粒する。さらに、乾燥、整粒を行い、pH非依存性ゲル形成高分子と混合し、顆粒を得る。
なお、上記の造粒時に用いる結合剤としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、塩化メチレン等の有機溶媒または水を結合液として用いるか、あるいは、これらの有機溶媒または水に結合剤を溶解もしくは懸濁した溶液または懸濁液が、良好なpH緩衝能を得る上で好適である。
また、乾式造粒法に従って製造する場合は、通常の乾式造粒装置を用いて、化合物(I)と、pH非依存性ゲル形成高分子、必要に応じてその他の添加剤との混合物に、圧力を加えて塊状とし、整粒を行い、顆粒を得る。
さらに、低融点の成分(例えば、高級アルコールまたはワックス、ポリエチレングリコールなど)を添加する処方の場合、化合物(I)とpH非依存性ゲル形成高分子、低融点の成分、必要に応じてその他の添加剤とを混合し、溶融造粒法により造粒を行った後、整粒を行い、顆粒を得る。
上記のような方法に従って調製された顆粒に、必要に応じて滑沢剤を添加し、打錠機で打錠することにより錠剤を得る。なお、滑沢剤を添加する場合、各種の粉体混合機を用いた常法の混合法により、顆粒と滑沢剤とを混合し打錠しても良いが、外部滑沢法を用いて打錠することにより、良好なpH緩衝能を得ることができる。
このようにして製造される本発明の徐放性製剤は、pH非依存的に放出制御され、かつ一定した溶出速度を有するので、持続的な効果を有する、頻尿、尿失禁等の疾患の治療薬として極めて有用である。
本発明の徐放性製剤は、pH1.2〜6.8の範囲においてpH非依存的な溶出を示し、さらには長時間に亘って一定の溶出率を示す。従って、本発明の徐放性製剤は、消化管内のpH環境に影響されることなく一定した溶出速度を示し、個体内または個体間でのバラツキの少ない、優れた持続性効果を発揮することができる。また、本発明の徐放性製剤は、pH非依存性ゲル形成高分子を使用することにより、pH緩衝能を有する他の成分を添加することなく調製できるので、製造が容易であり工業的生産に適している。
図1は、化合物(I)および乳糖からなる錠剤からの化合物(I)の溶出率を示した。縦軸は溶出率(%)を示し、横軸は溶出時間(分)を示す。 図2は、化合物(I)および乳糖に、pH非依存性の水不溶性高分子としてエチルセルロースを添加して調製した錠剤からの化合物(I)の溶出率を示した。縦軸は溶出率(%)を示し、横軸は溶出時間(分)を示す。 図3は、化合物(I)および乳糖に、酸性物質としてコハク酸を添加して調製した錠剤からの化合物(I)の溶出率を示した。縦軸は溶出率(%)を示し、横軸は溶出時間(分)を示す。 図4は、化合物(I)および乳糖に、塩基性物質としてリン酸水素二カリウムを添加して調製した錠剤からの化合物(I)の溶出率を示した。縦軸は溶出率(%)を示し、横軸は溶出時間(分)を示す。 図5は、化合物(I)および乳糖に、腸溶性ポリマーとしてメタクリル酸コポリマー(Eudragit S)を添加して調製した錠剤からの化合物(I)の溶出率を示した。縦軸は溶出率(%)を示し、横軸は溶出時間(分)を示す。 図6は、化合物(I)および乳糖に、pH依存性ゲル形成高分子としてカルボキシビニルポリマーを添加して調製した錠剤からの化合物(I)の溶出率を示した。縦軸は溶出率(%)を示し、横軸は溶出時間(分)を示す。 図7は、化合物(I)および乳糖に、pH非依存性ゲル形成高分子としてヒドロキシプロピルメチルセルロース2910を添加して調製した錠剤からの化合物(I)の溶出率を示した。縦軸は溶出率(%)を示し、横軸は溶出時間(分)を示す。 図8は、化合物(I)および乳糖に、pH非依存性ゲル形成高分子としてポリエチレンオキシドを添加して調製した錠剤からの化合物(I)の溶出率を示した。縦軸は溶出率(%)を示し、横軸は溶出時間(分)を示す。 図9は、化合物(I)および乳糖に、pH非依存性ゲル形成高分子としてヒドロキシプロピルメチルセルロース2910および水不溶性物質としてステアリルアルコールを添加して調製した錠剤からの化合物(I)の溶出率を示した。縦軸は溶出率(%)を示し、横軸は溶出時間(分)を示す。 図10は、化合物(I)、pH非依存性ゲル形成高分子としてヒドロキシプロピルメチルセルロース2910およびポリエチレングリコールの混合物を溶融造粒法により調製した錠剤からの化合物(I)の溶出率を示した。縦軸は溶出率(%)を示し、横軸は溶出時間(分)を示す。 図11は、化合物(I)およびpH非依存性ゲル形成高分子としてヒドロキシプロピルメチルセルロース2910の混合物を、ヒドロキシプロピルセルロースのエタノール溶液を用いて造粒して調製した錠剤からの化合物(I)の溶出率を示した。縦軸は溶出率(%)を示し、横軸は溶出時間(分)を示す。 図12は、化合物(I)および乳糖の混合物を、ヒドロキシプロピルセルロースの水溶液を用いて造粒し、続いてpH非依存性ゲル形成高分子としてヒドロキシプロピルメチルセルロース2910を添加して調製した錠剤からの化合物(I)の溶出率を示した。縦軸は溶出率(%)を示し、横軸は溶出時間(分)を示す。 図13は、化合物(I)に、pH非依存性ゲル形成高分子としてポリビニルアルコールを添加して調製した錠剤からの化合物(I)の溶出率を示した。縦軸は溶出率(%)を示し、横軸は溶出時間(分)を示す。 図14は、化合物(I)に、pH非依存性ゲル形成高分子としてヒドロキシプロピルメチルセルロース2910を混合した後に、さらにステアリン酸マグネシウムを添加して調製した錠剤からの化合物(I)の溶出率を示した。縦軸は溶出率(%)を示し、横軸は溶出時間(分)を示す。 図15は、化合物(I)に、pH非依存性ゲル形成高分子としてヒドロキシプロピルメチルセルロース2910を添加して調製した後、ステアリン酸マグネシウムを打錠時に杵と臼に薄く付着させ、打錠した錠剤からの化合物(I)の溶出率を示した。縦軸は溶出率(%)を示し、横軸は溶出時間(分)を示す。 図16は、化合物(I)および乳糖に、pH非依存性ゲル形成高分子としてヒドロキシプロピルメチルセルロース2208を添加して調製した錠剤からの化合物(I)の溶出率を示した。縦軸は溶出率(%)を示し、横軸は溶出時間(分)を示す。
本発明の内容を以下の実施例、比較例および試験例によりさらに詳細に説明するが、本発明の内容はこれらに限定されるものではない。
試験例1
溶出試験
以下に示す比較例1〜6および実施例1〜5で調製された錠剤を使用し、これらの錠剤から化合物(I)の溶出率を調べた。溶出率の評価は、第14改正日本薬局方溶出試験法第2法(パドル法)に従って、第14改正日本薬局方崩壊試験法で規定された第1液(pH1.2)および第2液(pH6.8)、並びにMcIlvaineの緩衝液(pH4.0)各900mlを用い、製剤をシンカーに入れ、パドル回転数100rpmにて行った。溶出試験開始後、経時的にサンプリングを行い、吸光度計(測定波長225nm)によりサンプルの吸光度を求め、化合物(I)の溶出率を求めた。
比較例1
化合物(I) 50mg
乳糖 100mg
(合計150mg/1錠)
化合物(I)500mgおよび乳糖1000mgを乳鉢で混合し、得られた粉末を、単発式打錠機で圧縮成形し、1錠当たり150mgの錠剤を得た。溶出試験の結果を図1に示した。
その結果、比較例1の製剤では、pH4の試験液の溶出率が最も高く、次いで第2液の溶出率がやや低く、第1液での溶出率が顕著に低かった。
比較例2
化合物(I) 50mg
乳糖 70mg
エチルセルロース 30mg
(合計150mg/1錠)
上記処方に基づき、化合物(I)500mg、乳糖700mgおよびエチルセルロース300mgを乳鉢で混合し、得られた粉末を、単発式打錠機で圧縮成形し、1錠当たり150mgの錠剤を得た。溶出試験の結果を図2に示した。
その結果、pH非依存性で、ゲル層を形成しない水不溶性高分子であるエチルセルロースを添加した比較例2の製剤は、比較例1の溶出率が遅延されただけで、溶出率のpH依存性に変化はなかった。
比較例3
化合物(I) 50mg
乳糖 50mg
コハク酸 50mg
(合計150mg/1錠)
上記処方に基づき、化合物(I)500mg、乳糖500mgおよびコハク酸500mgを乳鉢で混合し、得られた粉末を、単発式打錠機で圧縮成形し、1錠当たり150mgの錠剤を得た。溶出試験の結果を図3に示した。
その結果、酸性物質としてコハク酸を添加した参考例3の製剤は、pH4の試験液と第2液との溶出率の差は改善されたが、第1液の溶出率が顕著に低く、溶出率のpH依存性は完全に改善されなかった。
比較例4
化合物(I) 50mg
乳糖 50mg
リン酸水素二カリウム 50mg
(合計150mg/1錠)
上記処方に基づき、化合物(I)500mg、乳糖500mgおよびリン酸水素二カリウム500mgを乳鉢で混合し、得られた粉末を、単発式打錠機で圧縮成形し、1錠当たり150mgの錠剤を得た。溶出試験の結果を図4に示した。
その結果、塩基性物質としてリン酸水素二カリウムを添加した比較例4の製剤は、pH4の試験液と第2液との溶出率の差は改善されたが、第1液の溶出率が顕著に低く、溶出率のpH依存性は完全に改善されなかった。
比較例5
化合物(I) 50mg
乳糖 70mg
メタクリル酸コポリマー 30mg
(合計150mg/1錠)
上記処方に基づき、化合物(I)500mg、乳糖700mgおよび腸溶性基剤としてメタクリル酸コポリマー(Eudragit S、Degussa製)300mgを乳鉢で混合し、得られた粉末を、単発式打錠機で圧縮成形し、1錠当たり150mgの錠剤を得た。溶出試験の結果を図5に示した。
その結果、腸溶性ポリマーであるEudragit Sを添加した比較例5の製剤は、比較例1の溶出率が遅延されただけで、溶出率のpH依存性に変化はなかった。
比較例6
化合物(I) 50mg
乳糖 70mg
カルボキシビニルポリマー 30mg
(合計150mg/1錠)
上記処方に基づき、化合物(I)500mg、乳糖700mgおよびカルボキシビニルポリマー(カーボポール974P NF、Noveon製)300mgを乳鉢で混合し、得られた粉末を、単発式打錠機で圧縮成形し、1錠当たり150mgの錠剤を得た。溶出試験の結果は図6に示した。
その結果、pH依存性ゲル形成高分子としてカルボキシビニルポリマーを添加した比較例6の製剤は、第2液に比べて第1液およびpH4における溶出性が顕著に低く、溶出率のpH依存性は改善されなかった。
実施例1
化合物(I) 50mg
乳糖 50mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 50mg
(合計150mg/1錠)
上記処方に基づき、化合物(I)500mg、乳糖500mgおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース2910(メトローズ60SH50、信越化学工業製)500mgを乳鉢で混合し、得られた粉末を、単発式打錠機で圧縮成形し、1錠当たり150mgの錠剤を得た。溶出試験の結果を図7に示した。
その結果、実施例1の製剤は、溶出率が20〜40%、40〜60%、70%以上のいずれの範囲においても、第1液、pH4の試験液、第2液の間の溶出率の差が顕著に改善され、pH非依存的な溶出性を示した。
実施例2
化合物(I) 50mg
乳糖 50mg
ポリエチレンオキシド 50mg
(合計150mg/1錠)
上記処方に基づき、化合物(I)500mg、乳糖500mgおよびポリエチレンオキシド(POLYOX WSR301、ダウケミカル製)500mgを乳鉢で混合し、得られた粉末を、単発式打錠機で圧縮成形し、1錠当たり150mgの錠剤を得た。溶出試験の結果を図8に示した。
その結果、実施例2の製剤は、溶出率が20〜40%、40〜60%、70%以上のいずれの範囲においても、第1液、pH4の試験液、第2液の間の溶出率の差が顕著に改善され、pH非依存的な溶出性を示した。
実施例3
化合物(I) 50mg
乳糖 50mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 25mg
ステアリルアルコール 25mg
(合計150mg/1錠)
上記処方に基づき、化合物(I)500mg、乳糖500mg、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910(メトローズ60SH50、信越化学工業製)250mgおよび、ステアリルアルコール250mgを乳鉢で混合し、得られた粉末を試験管に入れ、約75℃に加温した水中で溶融造粒を行った。この造粒物を乳鉢で粉砕して整粒し、50メッシュの篩を通過した顆粒を単発式打錠機で圧縮成形し、1錠当たり150mgの錠剤を得た。溶出試験の結果を図9に示した。
その結果、実施例3の製剤は、溶出率が20〜40%、40〜60%、70%以上のいずれの範囲においても、第1液、pH4の試験液、第2液の間の溶出率の差が顕著に改善され、pH非依存的な溶出性を示した。
実施例4
化合物(I) 160mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 260mg
ポリエチレングリコール6000 105mg
ステアリン酸マグネシウム 0.53mg
(合計525.53mg/1錠)
上記処方に基づき、化合物(I)320g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910(TC-5R、信越化学工業製)520gおよびポリエチレングリコール6000(三洋化成工業製)210gを、加温した高速混合撹拌造粒機(VG-10、パウレック製)で混合、ポリエチレングリコール6000により溶融造粒し、パワーミル(P-02S、ダルトン製)により整粒した。得られた粉末にステアリン酸マグネシウム(太平化学産業製)1.06gを添加し、V型混合機により滑沢混合を行い、ロータリー打錠機により圧縮成形し、1錠当たり525.53mgの錠剤を得た。溶出試験の結果を図10に示した。
その結果、実施例4の製剤は、溶出率が20〜40%、40〜60%、70%以上のいずれの範囲においても、第1液、pH4の試験液、第2液の間の溶出率の差が顕著に改善され、pH非依存的な溶出性を示した。
実施例5
化合物(I) 160mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 240mg
ヒドロキシプロピルセルロース 16mg
ステアリン酸マグネシウム 2.08mg
(合計418.08mg/1錠)
上記処方に基づき、化合物(I)320g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910(TC-5S、信越化学工業製)480gを高速混合撹拌造粒機(VG-10、パウレック製)で混合し、5%ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本槽達製)エタノール溶液640gを添加し、造粒した。得られた造粒物を乾燥した後、パワーミル(P-02S、ダルトン製)により整粒し、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業製)4.16gを添加し、V型混合機により滑沢混合を行う。得られた混合末をロータリー打錠機により圧縮成形し、1錠当たり418.08mgの錠剤を得た。溶出試験の結果を図11に示した。
その結果、実施例5の製剤は、溶出率が20〜40%、40〜60%、70%以上のいずれの範囲においても、第1液、pH4の試験液、第2液の間の溶出率の差が顕著に改善され、pH非依存的な溶出性を示した。
実施例6
化合物(I) 50mg
乳糖 50mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 50mg
ヒドロキシプロピルセルロース 1.25mg
(合計151.25mg/1錠)
上記処方に基づき、化合物(I)1000mg、乳糖1000mgを乳鉢で混合し、そこへ5%ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L、日本曹達株式会社製)水溶液500mgを添加し造粒した。得られた造粒物を乾燥し、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910(メトローズ60SH50、信越化学工業製)1000mgを加え、乳鉢で混合した。得られた混合物を単発式打錠機で圧縮成形し、1錠当たり151.25mgの錠剤を得た。溶出試験の結果を図12に示した。
その結果、実施例6の製剤は、溶出率が20〜40%、40〜60%、70%以上のいずれの範囲においても、第1液、pH4の試験液、第2液の間の溶出率の差が顕著に改善され、pH非依存的な溶出性を示した。
実施例7
化合物(I) 50mg
ポリビニルアルコール 100mg
(合計150mg/1錠)
上記処方に基づき、化合物(I)500mgおよびポリビニルアルコール(GH−17、日本合成化学製)1000mgを乳鉢で混合し、得られた混合末を単発式打錠機で圧縮成形し、1錠当たり150mgの錠剤を得た。溶出試験の結果を図13に示した。
その結果、実施例7の製剤は、溶出率が20〜40%、40〜60%、70%以上のいずれの範囲においても、第1液、pH4の試験液、第2液の間の溶出率の差が顕著に改善され、pH非依存的な溶出性を示した。
実施例8
化合物(I) 50mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 100mg
ステアリン酸マグネシウム 1.5mg
(合計151.5mg/1錠)
上記処方に基づき、化合物(I)500mgおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース2910(TC5−S、信越化学工業製)1000mgを乳鉢で混合し、得られた粉末にステアリン酸マグネシウム(太平化学産業製)15mgを加え、ビニール袋内で混合した。得られた混合末を単発式打錠機で圧縮成形し、1錠当たり151.5mgの錠剤を得た。溶出試験の結果を図14に示した。
その結果、実施例8の製剤は、溶出率が20〜40%、40〜60%、70%以上のいずれの範囲においても、第1液、pH4の試験液、第2液の間の溶出率の差が顕著に改善され、pH非依存的な溶出性を示した。
実施例9
化合物(I) 50mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 100mg
ステアリン酸マグネシウム 微量
(合計150mg/1錠)
上記処方に基づき、化合物(I)500mgおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース2910(TC5−S、信越化学工業製)1000mgを乳鉢で混合し、得られた粉末を、杵と臼にステアリン酸マグネシウム(太平化学産業製)を付着させ、余分なステアリン酸マグネシウムを圧縮エアーで取り除いた単発式打錠機で圧縮成形し、1錠当たり150mgの錠剤を得た。溶出試験の結果を図15に示した。
その結果、実施例9の製剤は、溶出率が20〜40%、40〜60%、70%以上のいずれの範囲においても、第1液、pH4の試験液、第2液の間の溶出率の差が顕著に改善され、pH非依存的な溶出性を示した。また、ステアリン酸マグネシウムを外部滑沢した実施例9の製剤では、通常の滑沢混合により調製した実施例8に比べて、さらに良好なpH非依存的な溶出性を示した。
実施例10
化合物(I) 50mg
乳糖 50mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208 50mg
(合計150mg/1錠)
上記処方に基づき、化合物(I)500mg、乳糖500mgおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース2208(メトローズ90SH100SR、信越化学工業製)500mgを乳鉢で混合し、得られた粉末を、単発式打錠機で圧縮成形し、1錠当たり150mgの錠剤を得た。溶出試験の結果を図16に示した。
その結果、実施例10の製剤は、溶出率が20〜40%、40〜60%、70%以上のいずれの範囲においても、第1液、pH4の試験液、第2液の間の溶出率の差が顕著に改善され、pH非依存的な溶出性を示した。
本発明の徐放性製剤は、pH1.2〜6.8の範囲においてpH非依存的な溶出性を示し、さらには長時間に亘って一定の溶出率を示すので、持続性効果を有する頻尿・尿失禁治療剤として有用である。

Claims (16)

  1. pH1.2またはpH6.8に比べてpH4において高い溶出速度を有する有効成分を含有する、pH非依存的に放出制御された徐放性製剤であって、有効成分として(−)−2−[4−[2−[[(1S,2R)−2−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]アミノ]エチル]−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル塩酸塩と、pH非依存性ゲル形成高分子とを含有してなり、pH非依存性ゲル形成高分子の含有量が製剤全重量に対して10重量%以上であり、実質的にpH非依存性ゲル形成高分子以外のpH調整剤を含有しないことを特徴とする徐放性製剤。
  2. pH非依存性ゲル形成高分子が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロースおよびメチルセルロースからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1記載の徐放性製剤。
  3. pH非依存性ゲル形成高分子が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレンオキシドまたはポリビニルアルコールから選択される少なくとも1種である、請求項2記載の徐放性製剤。
  4. pH非依存性ゲル形成高分子の含有量が、有効成分に対して10重量%以上である、請求項1記載の徐放性製剤。
  5. pH非依存性ゲル形成高分子が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項2記載の徐放性製剤。
  6. ヒドロキシプロポキシル基含量が7〜12%、メトキシ基含量が28〜30%であるヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する、請求項記載の徐放性製剤。
  7. ヒドロキシプロポキシル基含量が4〜12%、メトキシ基含量が19〜24%であるヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する、請求項記載の徐放性製剤。
  8. ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量が、有効成分に対して30重量%以上である、請求項記載の徐放性製剤。
  9. ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量が、有効成分に対して40重量%以上である、請求項記載の徐放性製剤。
  10. さらに水不溶性物質を含有する、請求項1記載の徐放性製剤。
  11. 水不溶性物質が、高級アルコール、ワックス、硬化油、エチルセルロースおよびアクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーおよびアミノアルキルメタクリレートコポリマーRSから選択される少なくとも1種である、請求項10記載の徐放性製剤。
  12. 水不溶性物質が、高級アルコールおよびワックスから選択される少なくとも1種である、請求項10記載の徐放性製剤。
  13. 有効成分が、pH非依存性ゲル形成高分子のマトリクス中に分散されてなる、請求項1記載の徐放性製剤。
  14. 第14改正日本薬局方・溶出試験法第2法(パドル法)に従って、pH1.2、pH4およびpH6.8の試験液を用いて、パドル回転数100rpmで溶出試験を行った場合に、有効成分の溶出率が20〜40%、40〜60%および70%以上のいずれの範囲においても、最も溶出率の高いものと最も溶出率の低いものとの差が20%以内である、請求項1記載の徐放性製剤。
  15. 剤形が錠剤である、請求項1記載の徐放性製剤。
  16. (−)−2−[4−[2−[[(1S,2R)−2−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]アミノ]エチル]−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル塩酸塩を有効成分として含有する、pH非依存的に放出制御された徐放性製剤の製造方法であって、該方法は、(−)−2−[4−[2−[[(1S,2R)−2−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]アミノ]エチル]−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル塩酸塩を製剤全重量に対して10重量%以上のpH非依存性ゲル形成高分子のマトリクス中に分散させてなり、実質的にpH非依存性ゲル形成高分子以外のpH調整剤を含有しないことを特徴とする方法。
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