JP5123683B2 - 新規ペプチド - Google Patents
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Description
本発明は、かかる従来の問題に鑑み、安全でありかつ有意なコラーゲンの産生促進能を有する新規素材を提供することを目的とする。
具体的には、培養ヒト正常皮膚由来線維芽細胞に本願のペプチドを添加することで、該細胞のコラーゲン産生量が有意に増加することを明らかにした。さらに、本願ペプチドの誘導体を同様に添加した場合にも、培養ヒト正常皮膚由来線維芽細胞のコラーゲン産生量が増加することを明らかにし、これにより本発明を完成するに至った。
〔1〕 式(I):Val−Ala−Trp−Trpで表されるペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩。
〔2〕 式(II):Leu−Ser−Trpで表されるペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩。
〔3〕 〔1〕または〔2〕に記載のペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩を含む組成物。
〔4〕 〔1〕または〔2〕に記載のペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩を含有するコラーゲン産生を促進するための組成物。
〔5〕 産生を促進させるコラーゲンがIII型コラーゲンである事を特徴とする〔4〕に記載の組成物。
〔6〕 前記組成物が、医薬組成物、化粧料組成物、食品組成物又は飼料用組成物である、〔3〕〜〔5〕のいずれかに記載の組成物。
〔7〕前記〔1〕または〔2〕に記載のペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩、あるいは前記〔3〕記載の組成物を用いて、細胞におけるコラーゲンの産生を促進する方法。
〔8〕細胞におけるコラーゲンの産生を促進するための組成物の製造のための、前記〔1〕または〔2〕記載のペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩の使用。
〔9〕前記〔1〕または〔2〕に記載のペプチドをコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド。
〔10〕前記〔1〕または〔2〕に記載のペプチドをコードする塩基配列に対するアンチセンス配列からなるポリヌクレオチド。
〔11〕前記〔9〕又は〔10〕記載のポリヌクレオチドを含む、プラスミド。
〔12〕前記〔9〕又は〔10〕記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
〔13〕前記〔9〕又は〔10〕記載のポリヌクレオチドを含む、形質転換体。
本発明者らは、特定のアミノ酸配列を有する新規ペプチドを添加することにより、細胞におけるコラーゲンの産生促進能を有意に向上させることができることを見出した。本発明は、これらの知見に基づくものである。
式(I):Val−Ala−Trp−Trp(一文字略記:VAWW、配列番号:1)
式(II):Leu−Ser−Trp(一文字略記:LSW、配列番号:2)
本発明のペプチドの塩もまた、当該分野で公知の任意の方法により、当業者によって容易に作製され得る。
以上のようにして得られた本発明のペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩は、細胞におけるコラーゲンの産生を促進するために使用することができる。
医薬組成物としては、例えば、ヒトをはじめとする哺乳動物におけるコラーゲン量の低下やコラーゲンの変性などに起因する疾患の治療剤または予防剤が挙げられる。具体的には、本発明の医薬組成物は、慢性関節リウマチ、変形性関節症、骨関節炎等の関節疾患用の治療剤および/または予防剤として、角膜潰瘍などの角膜障害の治療剤および/または予防剤として、消化器官の潰瘍の治療剤および/または予防剤として、血圧上昇を抑制するための治療剤および/または予防剤として、また、紫外線曝露、加齢等による皮膚のシワもしくはタルミの予防剤および/または治療剤として、さらに皮膚の弾力性、保湿性、もしくはハリの低下に対する予防剤および/または治療剤として好適に使用され得る。
これらの食品組成物は、例えば、ヒトをはじめとする哺乳動物におけるコラーゲン量の低下やコラーゲンの変性などに起因する状態の改善用または予防用の食品として使用されうる。具体的には、本発明の食品組成物は、関節痛や高血圧などの症状に対する改善および/または予防のための食品として、または紫外線曝露、加齢等による皮膚のシワもしくはタルミの改善および/または予防のための食品として、さらに皮膚の弾力性、保湿性、もしくはハリの低下に対する改善および/または予防のための食品として好適に使用され得る。また、本発明の食品組成物は、コラーゲン量の低下やコラーゲンの変性などに起因する状態の改善および/または予防のために用いられるものである旨の表示を付した食品であることが好ましい。
化粧料組成物としては、例えば、紫外線曝露、加齢等による皮膚のシワもしくはタルミの予防および/または改善のための化粧料、皮膚の弾力性、保湿性、もしくはハリの低下に対する予防および/または改善のための化粧料が挙げられる。
飼料用組成物としては、例えば、ウシ、ブタ、ニワトリ、ヒツジ、ウマ等の家畜や、イヌ、ネコ等のペット動物におけるコラーゲン量の低下やコラーゲンの変性などに起因する状態の改善用および/または予防用の飼料が挙げられる。具体的には、本発明の組成物は、角膜潰瘍等の角膜障害、リューマチ、関節炎、変形性関節炎、骨関節炎等の関節障害、炎症性疾患等の様々なコラーゲン量の低下やコラーゲンの変性などに起因する疾患の改善用および/または予防用の飼料としても好適に用いられ得る。
一態様において、本組成物は、前記ペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩が、例えば0.05重量%以上、好ましくは0.08重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.12重量%以上となるようにいったん精製されたものを、前記含有量になるように配合することにより、調製され得る。
化粧料組成物としては、例えば、ローション、乳液、クリーム、オイル、パック等の基礎化粧料、またファンデーション、頬紅、口紅等のメーキャップ化粧料、さらに洗顔料、クレンジング、ボディ洗浄料等の洗浄料、入浴剤等の任意の形態で使用され得る。
また食品組成物とする場合には、パン、麺、惣菜、食肉加工食品(例えば、ハム、ソーセージなど)、水産加工食品、調味料(例えば、ドレッシングなど)、乳製品、菓子(例えば、ビスケット、キャンディー、ゼリー、アイスクリームなど)、スープ、ジュースなどの任意の一般の食品形態としても提供され得る。このような形態にする場合、本発明のペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩は、目的とする食品の性質等に依存して、当業者に公知の方法により適宜配合され得る。
飼料用組成物としては、任意の形態で使用され得るため、特に限定は無い。
本発明はさらに、前記ペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩、あるいは前記組成物を用いることを特徴とする、細胞におけるコラーゲンの産生を促進する方法を提供する。
すなわち、本発明の方法における前記ペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩の使用量は通常、外用剤の場合には、成人1人体重約50kgあたり好ましくは約0.1μg〜2g/日である。また、内服剤の場合における当該使用量は通常、成人1人体重約50kgあたり好ましくは約0.001〜10000mg/日、より好ましくは約0.1〜1000mg/日、さらに好ましくは約1〜100mg/日である。
前記ペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩の使用量は、前記組成物中の含有量となるように使用すればよい。
本発明のポリヌクレオチドは、前記ペプチドをコードする限り、特に限定されない。例えば、VAWWまたはLSWをコードするポリヌクレオチドとしては、遺伝暗号表に従いVAWWまたはLSWをコードすることが明らかな任意の配列が、コドン使用頻度等に応じて適宜使用され得る。好ましくは、例えば下記配列:
GTT GCA TGG TGG (配列番号:3、VAWWをコード)
CTC TCG TGG (配列番号:4、LSWをコード)
が挙げられる。
さらに、かかるポリヌクレオチドを使用することにより、以下に述べる本発明のプラスミドまたは発現ベクターを作製することができる。
本発明のプラスミドは、特に限定されないが、例えばpBR系プラスミド、pUC系プラスミド等の公知のプラスミドに、一般的な分子生物学的実験手法を使用して本発明のポリヌクレオチドを組込んで作製できる。
本発明の発現ベクターは、特に限定されないが、例えばpcDNA3、pSD64、λファージベクター等の公知のベクターに、一般的な分子生物学的実験手法を使用して本発明のポリヌクレオチドを発現可能な状態で組込んで作製できる。
本発明はさらに、前記ポリヌクレオチドを含むことを特徴とする形質転換体を提供する。
以上のようにして得られた形質転換体を適当な条件下で培養して前記ペプチドを発現させ、これを精製することにより、前記ペプチドを得ることもできる。
〔実施例1〕 ペプチド(1)Val−Ala−Trp−Trp(一文字略記:VAWW、配列番号:1)の調製
1)ペプチドの合成
ペプチドを、ペプチド自動合成装置(アプライドバイオ社製:Model 433A)を用いて、Fmoc法による固相合成法により合成した。具体的な手順は以下の通りである:まず固相合成用樹脂にFmoc−Trp(tBoc)−OHのC末端を結合させてから、保護基(Fmoc)をピペリジン処理で除去し、次いでこの樹脂を洗浄後、Fmoc−Trp(tBoc)−OHをTrpのN末端に導入する。次いで保護基(Fmoc)をピペリジン処理で除去し、再度この樹脂を洗浄後、Fmoc−Ala−OHをTrpのN末端に導入する。次いで保護基(Fmoc)をピペリジン処理で除去し、再度この樹脂を洗浄後、Fmoc−Val−OHをAlaのN末端に導入する。次いで、保護基(Fmoc)をピペリジン処理で除去した後、TFA(トリフルオロ酢酸)により、ペプチドのC末端と樹脂との結合、およびTrpのtBoc基を切断することにより脱保護した。最後に、分取HPLCで未反応物を除去して精製することによりVAWWを得た。
得られた精製物を分析用逆相高速液体クロマトグラフィー[カラム:Inertsil ODS−3 (内径: 4.6mm、長さ: 250mm) 、GL Sciences社製、;移動相:溶媒A(0.1%トリフルオロ酢酸)および溶媒B(0.1%トリフルオロ酢酸、100%アセトニトリル)のグラジエント(0分(溶媒B=0%)〜40分(溶媒B=60%));流速:1.2ml/分;検出法:波長 220nmにおける吸光度]に付したところ、26.7分に単一の鋭いピークが示され、純度は99.7%であった。
Fmoc法による固相合成法(L.A.Carpino, G.Y.Han, J.Am.Chem.Soc., 92, 5748 (1970))に従い、VAWWペプチドのN末端アセチル化誘導体を作製した。まず、固相合成用樹脂にFmoc−Trp(tBoc)−OHのC末端を結合させてから、保護基(Fmoc)をピペリジン処理で除去し、次いで、この樹脂を洗浄後、Fmoc−Trp(tBoc)−OHをTrpのN末端に導入した。次いで、保護基(Fmoc)をピペリジン処理で除去し、再度この樹脂を洗浄後、Fmoc−Ala−OHをTrpのN末端に導入した。次いで、保護基(Fmoc)をピペリジン処理で除去し、この樹脂を洗浄後、N−acetyl−ValineをAlaのN末端に導入した。次いで、この樹脂を洗浄後、TFA(トリフルオロ酢酸)により、ペプチドのC末端と樹脂との結合およびTrpのtBoc基を切断することにより脱保護した。最後に、分取HPLCで未反応物を除去して精製することにより、N末端をアセチル化したVAWWを得た。なお、得られた精製物を実施例1に示した方法と同様の純度検定に付したところ、得られた精製物の純度は97.2%であった。
1)ペプチドの合成
ペプチドを、ペプチド自動合成装置(アプライドバイオ社製:Model 433A)を用いて、Fmoc法による固相合成法により合成した。具体的な手順は以下の通りである:まず固相合成用樹脂にFmoc−Trp(tBoc)−OHのC末端を結合させてから、保護基(Fmoc)をピペリジン処理で除去し、次いでこの樹脂を洗浄後、Fmoc−Ser(tBu)−OHをTrpのN末端に導入する。次いで保護基(Fmoc)をピペリジン処理で除去し、再度この樹脂を洗浄後、Fmoc−Leu−OHをSerのN末端に導入する。次いで、保護基(Fmoc)をピペリジン処理で除去した後、TFA(トリフルオロ酢酸)により、ペプチドのC末端と樹脂との結合、SerのtBu基とTrpのtBoc基を切断することにより脱保護した。最後に、分取HPLCで未反応物を除去して精製することによりLSWを得た。
得られた精製物を分析用逆相高速液体クロマトグラフィー[カラム:Inertsil ODS−3 (内径: 4.6mm、長さ: 250mm) 、GL Sciences社製、;移動相:溶媒A(0.1%トリフルオロ酢酸)および溶媒B(0.1%トリフルオロ酢酸、100%アセトニトリル)のグラジエント(0分(溶媒B=0%)〜40分(溶媒B=60%));流速:1.2ml/分;検出法:波長 220nmにおける吸光度]に付したところ、22.4分に単一の鋭いピークが示され、純度は99.7%であった。
ペプチド(1)Val−Ala−Trp−Trp(一文字略記:VAWW、配列番号:1)
70歳女性由来ヒト正常皮膚由来線維芽細胞を、48ウェルカルチャープレート中で培養した。より詳細には、1.0×104細胞/ウェルの密度でプレートに播種し、37℃で、5%炭酸ガスおよび95%空気の環境下で48時間培養を行った。培養液は、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(D−MEM)に牛胎仔血清(FBS)を10重量%の濃度で含有した培地を各ウェル400μlずつ使用した。次いで、上記培養液からFBSを抜いた無血清培地に交換し、さらに24時間培養した。その後、培養液を除去して、合成したVAWWペプチドを10μg/mL濃度で溶解させた培地に交換した。72時間培養した後、培養液を採取し、培養液中に分泌されたIII型コラーゲン濃度を、酵素結合免疫測定法で定量した(一次抗体としてGoat Anti-Type III collagen-BIOT(Southern Biotech社製)を使用;二次抗体としてMAB1343 MS X Hu collagen Type III(CHEMICON international社製)を使用)。ここで、被験ペプチドを添加しない培地を400μl添加したものをコントロールとして用い、それぞれの定量結果をもとに、コントロール培養液中のIII型コラーゲン量を100%として各被験培養液中のIII型コラーゲン量を算出した。
さらに、培養液を採取した後の細胞についてWST-8法により生細胞数を計測した。より詳細には、400μl培地中40μlの割合でWST-8試薬(Cell Counting Kit-8(同人化学研究所製))を添加したものに培地交換し、次いで2時間培養後、その上清を100μl分取し吸光度を測定した。その結果、本願ペプチドを添加した培養液で培養されることによる生細胞数の有意な減少は認められず、生体に対して安全に使用できるものであることが確認された。
ペプチド誘導体(1)-1;N末端アセチル化VAWW
70歳女性由来ヒト正常皮膚由来線維芽細胞を、48ウェルカルチャープレート中で培養した。より詳細には、1.0×104細胞/ウェルの密度でプレートに播種し、37℃で、5%炭酸ガスおよび95%空気の環境下で48時間培養を行った。培養液は、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(D−MEM)に牛胎仔血清(FBS)を10重量%の濃度で含有した培地を各ウェル400μlずつ使用した。次いで、上記培養液からFBSを抜いた無血清培地に交換し、さらに24時間培養した。その後、培養液を除去して、合成したVAWWペプチド誘導体を1000μg/mL濃度で溶解させた培地に交換した。72時間培養した後、培養液を採取し、培養液中に分泌されたIII型コラーゲン濃度を、酵素結合免疫測定法で定量した(一次抗体としてGoat Anti-Type III collagen-BIOT(Southern Biotech社製)を使用;二次抗体としてMAB1343 MS X Hu collagen Type III(CHEMICON international社製)を使用)。ここで、被験ペプチド誘導体を添加しない培地を400μl添加したものをコントロールとして用い、それぞれの定量結果をもとに、コントロール培養液中のIII型コラーゲン量を100%として各被験培養液中のIII型コラーゲン量を算出した。
また実施例4に示したものと同様のWST-8法に供して生細胞数への影響を調べたところ、生細胞数の有意な減少は認められず、本願ペプチド誘導体も生体に対して安全に使用できるものであることが確認された。
ペプチド(2)Leu−Ser−Trp(一文字略記:LSW、配列番号:2)
70歳女性由来ヒト正常皮膚由来線維芽細胞を、48ウェルカルチャープレート中で培養した。より詳細には、1.0×104細胞/ウェルの密度でプレートに播種し、37℃で、5%炭酸ガスおよび95%空気の環境下で48時間培養を行った。培養液は、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(D−MEM)に牛胎仔血清(FBS)を10重量%の濃度で含有した培地を各ウェル400μlずつ使用した。次いで、上記培養液からFBSを抜いた無血清培地に交換し、さらに24時間培養した。その後、培養液を除去して、合成したLSWペプチドを10μg/mL濃度で溶解させた培地に交換した。72時間培養した後、培養液を採取し、培養液中に分泌されたIII型コラーゲン濃度を、酵素結合免疫測定法で定量した(一次抗体としてGoat Anti-Type III collagen-BIOT(Southern Biotech社製)を使用;二次抗体としてMAB1343 MS X Hu collagen Type III(CHEMICON international社製)を使用)。ここで、被験ペプチドを添加しない培地を400μl添加したものをコントロールとして用い、それぞれの定量結果をもとに、コントロール培養液中のIII型コラーゲン量を100%として各被験培養液中のIII型コラーゲン量を算出した。
Claims (3)
- 式(I): Val−Ala−Trp−Trpで表されるペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩。
- 式(II):Leu−Ser−Trpで表されるペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩。
- 請求項1または2に記載のペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩を含む組成物。
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