JP5123548B2 - ポリ乳酸フィルム - Google Patents
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Description
具体的にはアルカリ金属、アルカリ土類金属の添加に替わる静電密着性改良策の提案が切望されている。
1.下記式(I)または(II)で表されるスルホン酸四級ホスホニウム塩を0.001〜1wt%ふくみ下記要件を満たすポリ乳酸フィルムが提供される。
(1)表面性:幅5cm長さ50cmの試料において目視で観察できるピン状欠陥が1個以下。
(2)厚み斑:試料長50cm(長手方向)の厚みを連続厚み計(電子マイクロメーター)で測定したときの厚み変動値△Rμmが平均厚みRμmの7%以内。
2.ポリ乳酸をダイよりフィルム状に押し出し、ダイ下でフィルム状溶融ポリ乳酸と冷却ドラムとの接点近傍にもうけられた電極から静電荷を該フィルム状溶融ポリ乳酸の片面に付与し、回転冷却ドラムの表面に密着させ、急冷固化させる工程を含む上記1に記載のポリ乳酸フィルムの製造方法。
3.フィルム状溶融ポリ乳酸と冷却ドラムとの接点近傍にもうけられた電極との間に静電密着を起こす程度の電圧を印加する上記2に記載のポリ乳酸フィルムの製造方法。
4.電極がワイヤー状またはナイフ状である上記2または3に記載のポリ乳酸フィルムの製造方法。
5.高温空気流を該電極及びその近傍に吹き付け、電極上部に排気ノズルを設け強制排気する上記2から4のいずれかに記載のポリ乳酸フィルムの製造方法。
6.ポリ乳酸がポリL‐乳酸またはポリD‐乳酸を主成分とする上記2から5のいずれかに記載のポリ乳酸フィルムの製造方法。
7.一軸または二軸延伸してなり、さらにその後、示差走査熱量計(DSC)測定による190℃以下の融点をTmhとするとき、に融点(Tmh−50)から(Tmh−5)℃で熱処理する上記6に記載のポリ乳酸フィルムの製造方法。
8.D‐乳酸単位を主成分とし、D‐乳酸以外の共重合単位を0〜10モル%含有する結晶性ポリ乳酸(B)と、L‐乳酸単位を主成分としL‐乳酸以外の共重合単位を0〜10モル%含有する結晶性ポリ乳酸(C)とを重量比(B/C)=10/90〜90/10で溶融熱処理してなるポリ乳酸(A)よりなり、ステレオ化度(S)が80%から100%である、上記1に記載のポリ乳酸フィルム。
9.一軸または二軸延伸してなり、さらにその後、示差走査熱量計(DSC)測定による190℃以上の融点をTmscとするとき、(Tmsc−50)から(Tmsc−5)℃で熱処理する上記8に記載のポリ乳酸フィルムの製造方法。
本発明のポリ乳酸フィルムは、上記式(I)または(II)で表されるスルホン酸四級ホスホニウム塩を0.001〜1wt%ふくみ下記要件を満たすポリ乳酸フィルムである。
(1)表面性:幅5cm長さ50cmの試料において目視で観察できるピン状欠陥が1個以下。
(2)厚み斑:試料長50cm(長手方向)の厚みを連続厚み計(電子マイクロメーター)で測定したときの厚み変動値△Rμmが平均厚みRμmの7%以内。
さらに好ましくは
(1)表面性:幅5cm長さ3mの試料において目視で観察できるピン状欠陥が1個以下。
(2)厚み斑:試料長3m(長手方向)の厚みを連続厚み計(電子マイクロメーター)で測定したときの厚み変動値△Rμmが平均厚みRμmの7%以内。の範囲である。
本発明の上記スルホン酸4級ホスホニウム塩の適用量はポリ乳酸に基づき0.001〜1wt%を含有することが必須である。
この割合が0.001wt%より少ないとポリ乳酸フィルムと冷却ドラムとの密着が不十分なものとなり本発明の目的を達成することができない。
スルホン酸四級ホスホニウム塩の含有量は好ましくは0.003〜0.5wt%であり、より好ましくは0.005〜0.1wt%である。
これにより、フィルムの平坦性、厚み均一性が良好となりまたピン状欠陥などの表面欠陥もなく、色相も良好なものとなる。
特に3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホネートが好ましい。
高級脂肪酸またはその金属塩:ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ヒドロキシステアリン酸、硬化油、モンタン酸ナトリウム等、
脂肪酸アミド:ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ベヘン酸アミド、メチレンビスステリルアミド等、
脂肪酸エステル:n−ブチルステアレート、メチルヒドロキシステアレート、ミリシルセロチネート、高級アルコール脂肪酸エステル、エステル系ワックス等、
脂肪酸ケトン:ケトンワックス等、
脂肪族高級アルコール:ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール等、
多価アルコール脂肪酸エステルまたは部分エステル:グリセリン脂肪酸エステル、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル等、
非イオン系界面活性剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等、
シリコン油:直鎖状メチルシリコン油、メチルフェニルシリコン油、変性シリコン油等、
フッ素系界面活性剤:フルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、モノパーフルオロアルキルエチル燐酸エステル、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等。
かかる滑剤としては、例えば乾式法で製造されたシリカ、湿式法で製造されたシリカ、ゼオライト、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、カオリン、カオリナイト、クレイ、タルク、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、水酸化アルミニウム、酸化カルシウム、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、炭化珪素、酸化スズ等の無機粒子;架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子等の有機微粒子を好ましく挙げることができる。
これらはポリ乳酸にたいし、0.01〜0.5wt%の範囲で配合することができる。
またこれらの剤以外に酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、蛍光蒼白剤、可塑剤、架橋剤、紫外線吸収剤その他の樹脂等を必要に応じて添加することができる。
該フィルムに静電価を印加する電極はワイヤー状或いはナイフ状の形状のものが好適に使用される。
なお、製膜機に供給するポリ乳酸は、溶融時の分解を抑制するため、製膜機供給前乾燥しておくことがこのましい。水分含有量は100ppm以下であることが特に好ましい。
上記二軸延伸フィルムは、例えば未延伸フィルムを縦方向にまず延伸し、ついで横方向に延伸する縦−横逐次延伸法、縦方向と横方向とを同時に延伸する同時に軸延伸法などにより製造することができる。
上記一軸延伸フィルム或いは二軸延伸フィルムはポリ乳酸がポリD‐乳酸あるいはポリL‐乳酸であるとき,ポリ乳酸の結晶融解温度をTmhとするとき、Tmh以下の温度で熱処理し、室温まで冷却することにより一軸延伸熱処理フィルム、或いは二軸延伸熱処理フィルムとすることができる。
即ち、主たる構成成分以外の共重合成分単位は0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜2モル%の範囲である。
結晶融点がこの範囲にあれば、該ポリマーよりなるフィルムの結晶性を高め、耐熱性を高めることができ、また該成分を含むポリ乳酸(A)組成物のステレオコンプレックス相(コンプレックス相と以下記述することがある。)の形成を促進し、結晶性、耐熱性を高めるために好適であるからである。
例えばそれぞれの乳酸を直接脱水縮合する方法、それぞれの乳酸を一度脱水環化してラクチドとした後に開環重合する方法で製造することが可能である。これらの製造方法において用いる触媒は、ポリL―乳酸成分やポリD―乳酸成分が所定の特性を有するように重合させることが出来るものであれば、いずれも用いることができるが、オクチル酸スズ、塩化スズ、スズのアルコキシドなどの2価のスズ化合物、酸化スズ、酸化ブチルスズ、酸化エチルスズなど4価のスズ化合物、金属スズ、亜鉛化合物、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、ランタニド化合物などを例示することが出来る。
[数1]
S = △Hm2 / (△Hm1+△Hm2) × 100 (3)
かかるポリ乳酸(A)は前述のポリL‐乳酸とポリD‐乳酸を重量比で10/90から90/10の範囲で220から300℃で溶融熱処理することにより得ることができる。
溶融熱処理温度はポリ乳酸の溶融時の安定性を考慮すると230〜300℃、さらに好ましくは230〜280℃の範囲が選択される。
あるいは、ポリL‐乳酸セグメントとポリD‐乳酸セグメントが上記量比で結合している、ステレオブロックポリ乳酸も好適に用いることが出来る。
溶融熱処理法は特に限定されるものではないが、溶融混練、さらに好ましくは剪断条件下溶融混練する方法が好ましい。
ポリD‐乳酸成分及びポリL‐乳酸成分は重合時使用された重合触媒を従来公知の方法、例えば、溶媒で洗浄除去するか、触媒活性を不活性化しておくのが好ましい。
X1−P(=O)m(OH)n(OX2)2−n (4)
(式中mは0または1、nは1または2、X1,X2は各々独立に炭素数1から20の置換基を有していても良い炭化水素基をあらわす。)
ポリ乳酸の重量平均分子量、融点、結晶融解ピーク、ステレオ化度、フィルム、ポリマーの体積固有抵抗値、静電キャスト性、フィルム厚み均一性の評価は以下の方法によった。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン標準サンプルとの比較で求めた。
GPC測定器は下記を用い、クロロフォルム溶離液を使用、カラム温度40℃、流速1.0ml/minで流し、濃度1mg/ml(1%ヘキサフルオロイソプロパノール含有クロロフォルム)の資料10μlを注入した。
検出器:示差屈折計(株)島津製作所製RID−6A。
ポンプ:(株)島津製作所製LC−9A。
カラム:(株)東ソーTSKgelG3000HXL,TSKgelG4000HXL,TSKgelG5000HXLとTSKguardcolumnHXL−Lを直列に接続。
パーキンエルマー(株)製DCS7示差走査熱量計(DSC)により測定した。試料10mgを窒素雰囲気下、1st RUNにて昇温速度20℃/分で、30℃から250℃に昇温し、結晶化温度(Tcc)、結晶化エンタルピー(△Hcc)、結晶融点(Tm),結晶融融解熱を(△Hm)を測定した。
なおステレオ化度(S)はポリ乳酸につき、190℃以下のホモ相結晶融解熱(△Hmh)、190℃以上の高温相結晶融解熱(△Hmsc)より下記式によりもとめた。
[数2]
S = △Hmsc/(△Hmsc+△Hmh) × 100 (3)
また、250℃で5分保持後、降降温速度5℃/分で250℃から30℃に降温し、結晶化エンタルピー(△Hcc)結晶化開始温度(Tcci)、結晶化ピーク温度(Tccp)、結晶化終了温度(Tccf)を測定した。
厚さ約150μmのフィルムを直径20cmの円柱状下部電極と直径5.6cm、厚さ0.2cmの上部電極間の150μmの平行間隙で、電極に密着するように挿入し、該電極をフィルムの(融点+30)℃に加熱、100Vの交流電圧を印加、フィルムを通して流れる電流を測定し、下記式により求めた。
なおZは体積固有抵抗値,Eは印加電圧、Iは電流、dは電極間間隙を表す。
[数3]
Z = (E/I) × (S/d) (8)
表面性;ピン状欠陥の有無を幅5cm長さ50cmの試料を目視判断により、ピン状欠陥が1個以下のものを合格とした。
厚み均一性;試料長50cm(長手方向)の厚みを電子マイクロメーターで測定、厚み変動値(△R)が平均厚みRμmの7%以内のものを合格とした。
幅1m×長さ2mの厚さ200μmの未延伸フィルム資料を平坦な人工皮革上に広げ、軽く両端をひっぱったとき、フィルムに生じる凹凸の目視判定により厚みむらを判定した。
凹凸がほとんど認められないとき合格(○),凹凸が認められる時不合格(×)と判定した。
ポリ乳酸を樹脂温度260℃でフィルム状に溶融押し出しする際、口金部のちかくでかつ押し出しフィルムの上部に設置したワイヤー電極により冷却ドラムとの間に7000Vの電圧を印加して厚さ210μmのフィルムをキャスティングする際、ピン状欠陥(pinner bubble)を生ずることなく、平坦性、厚み均一性良好に安定的に製膜できる冷却ドラムの最大速度を求め、冷却ドラムの最大速度により以下の如く判定した。
最大ドラム速度が50m/分以上のとき良好合格(◎)と判断した。最大ドラム速度が20m/分から50m/分の時合格(○)、20m/分に満たないとき工業的生産に不適合、不合格(×)と判断した。
試料を窒素雰囲気下、260℃、10分間保持後の還元粘度の保持率を測定した。ポリ乳酸樹脂成型品を製造するとき、溶融安定性が80%以上であれば通常の射出成型、押し出し成型などの溶融成型が問題なくでき、溶融安定性合格と判断した。
なお、還元粘度(ηsp/c)は試料1.2mgを〔テトラクロロエタン/フェノール=(6/4)wt混合溶媒〕100mlに溶解、35℃でウベローデ粘度管を使用して測定した。
真空配管、及び窒素ガス配管、触媒、ラクチド添加配管、アルコール開始剤添加配管を具備したフルゾーン翼具備縦型攪拌槽(40L)を窒素置換後、光学純度99.8%超のL−ラクチド30Kg,ステアリルアルコール0.69kg(0.023モル/kg−LD)、オクチル酸スズ6.14g(5.05×10−4モル/1kg―LD)を仕込み、窒素圧106.4kPaの雰囲気下、150に昇温した、内容物が溶解した時点で、攪拌を開始、内温をさらに190℃に昇温した。内温が180℃を超え反応が始まってから冷却を開始し、内温を185℃から190℃に保持し2時間反応を継続した。
ラクチド低減処理をしたポリL‐乳酸樹脂は重量平均分子量20.5万、融点(Tm)は168℃、結晶化点(Tc)は122℃、ラクチド含有量0.005wt%であった。
また同様の合成実験を光学純度99.8%超のD‐ラクチドを使用し、製造例1に準拠して、ポリ乳酸を製造した。ポリD‐乳酸の重量平均分子量20.1万、融点(Tm)は168℃、結晶化点(Tc)は122℃、ラクチド含有量0.005wt%であった。
製造例1において仕込み時、真球状シリカ(平均粒径0.6μm)0.12Kgを追加添加し以下同様に重合を行い重量平均分子量20.4万、融点(Tm)168℃、結晶化点(Tc)122℃、真球状シリカ含有量0.2wt%、0.ラクチド含有量0.005wt%のポリL−乳酸を得た。
製造例2において仕込み時、真球状シリカ(平均粒径0.6μm)0.12Kgを追加添加し以下同様に重合を行い重量平均分子量20.2万、融点(Tm)168℃、結晶化点(Tc)122℃、真球状シリカ含有量0.2wt%、0.ラクチド含有量0.005wt%のポリD‐乳酸を得た。
製造例1で製造し110℃で5時間乾燥したポリL‐乳酸100重量部あたり、3,5‐ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム0.5重量部をヘンシェルミキサーで混合後、2軸押出機で溶融混練した溶融安定性90%と良好な組成物を260℃で210μmのフィルム状に溶融押し出し、白金コート線状電極を用い静電キャスト法によって鏡面冷却ドラム表面に密着、固化させた。
このとき冷却ドラムの回転速度を徐々に高め、密着不良に起因するフィルムのピン状欠陥平坦性不良、厚み均一性不良などが生じることなく、良好に製造できる最高キャスティング速度は50m/分で静電キャスト性合格◎と判断した。
該組成物はポリマー温度240℃、キャスティング速度20m/分で1時間にわたり密着性の変動もなく製膜可能であった。
該未延伸フィルムはさらに120℃で、縦方向に3.6倍、横方向に3.9倍延伸、140℃で熱固定を行い厚さ15μmの2軸延伸フィルムとした。該フィルムは表面性、厚み均一性とも合格であった。
実施例1における3,5‐カルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩の量を表1の値に変更し、実施例2から4ではさらにPLLA‐1をPDLA‐1に変更し、実施例1と同様にして260℃でキャスティングフィルム化静電キャスティング性を評価した。静電キャスティング性、溶融安定性を表1に記載する。
さらに実施例1と同様条件で未延伸フィルム及び延伸フィルムを製造した。これらの実験での未延伸フィルムの平滑性、表面性、厚み均一性、延伸フィルムの表面性、厚み均一性は良好であった。
比較例1においては、実施例1の3,5‐ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウムを適用しない組成物のキャスティング性を評価した。
ピンニングの発生しない最大キャスティング速度は10m/分にすぎなかった。
ポリマーの黄変が見られ、さらに鏡面冷却ロールの汚れが顕著で、フィルム表面に汚れが転写し、表面性不良であった。結果を表1にまとめる。
実施例1におけるポリ乳酸、スルホン酸四級ホスホニウム塩の種類、量を表2に記載のポリ乳酸、スルホン酸四級ホスホニウム塩、量に変更してキャスティング性を評価した。
これらの実験において静電キャスト性はいずれも合格(◎)であり、該剤の配合による組成物の溶融安定性も90%以上と良好であった。なおPLLA−2、PDLA−2は、真球シリカ入りポリ乳酸であり製膜性良好であった。
実施例1と同様の条件で未延伸フィルム、延伸フィルムを製造したところ、いずれの実験の延伸フィルムも表面性、厚み均一性は合格であった。
(PLLA−1)と同様にして製造したプレポリマーと3,5−ジカルボキシスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩(プレポリマー100重量部あたり0.1重量部)を容積60Lの第一の無軸籠型攪拌翼具備重合装置に16kg/hrの移送速度で、オクチル酸スズ触媒をラクチド類1kgあたり5.05×10−4モル/1kgL−LDを送液し、200℃から210℃で滞留時間2.5時間重合を行い、第2の無軸籠型攪拌翼具備重合装置に移送、入り口で失活剤のリン酸を触媒1モルあたり1.05モルを添加し、内圧1.33kPa、滞留時間0.5時間ラクチド低減処理をおこなった後定量ポンプでチップカッターに移送しチップ化した。
ラクチド低減処理したポリL‐乳酸は重量平均分子量20万、結晶融点(Tmh)は167℃、ラクチド含有量0.005wt%であった。該組成物を(PLLA‐101)と呼ぶ。
該組成物は260℃での最大キャスティング速度は50m/分でピン状欠陥もなく、厚み均一性、平滑性良好にフィルム化でき、静電キャスト性合格(◎)であった。
実施例1と同様の条件で未延伸フィルム、延伸フィルムを製造したところ、いずれの実験の延伸フィルムも表面性、厚み均一性は合格であった。
実施例12の3,5−ジカルボキシスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩のみをドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩に替え同様の実験を行った。該組成物を(PLLA−102)と呼ぶ。
ラクチド低減処理したポリL−乳酸樹脂は重量平均分子量20.2万、融点(Tm)は168℃、ラクチド含有量0.005wt%であった。
該組成物は最大キャスティング速度55m/分でピン状欠陥もなく、厚み均一性、平滑性良好にフィルム化でき、静電キャスト性合格(◎)であった。
実施例1と同様の条件で未延伸フィルム、延伸フィルムを製造したところ、いずれの実験の延伸フィルムも表面性、厚み均一性は合格であった。
実施例12において、PLLA−1プレポリマーをPDLA−1プレポリマーに変更、同様に重合をおこなった。ラクチド低減処理したポリD‐乳酸の重量平均分子量は各々20.5万、20.3万、融点(Tm)は168℃、ラクチド含有量0.005wt%であった。該組成物を(PDLA−101)と呼ぶ。
該組成物は最大キャスティング速度55m/分でピン状欠陥もなく、厚み均一性、平滑性良好にフィルム化でき、静電キャスト性合格(◎)であった。
実施例1と同様の条件で未延伸フィルム、延伸フィルムを製造したところ、いずれの実験の延伸フィルムも表面性、厚み均一性は合格であった。
製造例1、2で製造したPLLA‐1及びPDLA−1の重量比1/1の混合物を120℃で5時間乾燥し2軸押出機の第一供給口から、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩(前記混合物100重量部あたり0.05重量部)を2軸押出機の第二供給口より供給し、250℃で溶融混練(該ポリ乳酸(A)組成物をscPLA1と呼ぶ。)、260℃で210μmのフィルム状に溶融押し出し、白金コート線状電極を用い、実施例1と同様にして静電キャスト法によって鏡面冷却ドラム表面に密着、固化させ静電キャスト性を評価した。なお該組成物の溶融安定性は82%であった。
冷却ドラムの回転速度を徐々に高めたところ、密着不良に起因するフィルムのピン状欠陥等が生じない最高キャスティング速度は50m/分であり、静電キャスティング性は合格◎であった。
実施例1と同様に240℃、20m/分の速度で、1時間にわたり密着性の変動もなく製膜可能であった。平滑性、表面性、厚みむらの良好な該未延伸フィルムは、さらに180℃で、縦方向に3.6倍、横方向に3.9倍延伸、190℃で熱固定を行い厚さ15μmの2軸延伸フィルムとした。
得られた延伸フィルムは、ピン状欠陥は見られず、厚み均一性も良好であった。またフィルムの高温相融解ピークは223℃、ステレオ化率は95%であった。結果を表4に記載する。
実施例15においてPLLA‐1及びPDLA−1の重量比1/1の混合物100重量部と(株)ADEKA製(「アデカスタブ」(登録商標))NA−71)0.2重量部を120℃で5時間乾燥し2軸押出機の第一供給口から、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩(前記混合物100重量部あたり0.05重量部)とカルボキシル基封止剤のカルボジイミド化合物(前記混合物100重量部あたり0.5重量部)(日清紡ケミカル(株)製「カルボジライト(登録商標)」LA−1)を第二供給口より供給、シリンダー温度230℃で溶融混練(該組成物をscPLA2と呼ぶ)、実施例18と同様にして静電キャスト性を評価したところ密着不良に起因するフィルムのピン状欠陥などが生じることなく、良好に製造できる最高キャスティング速度は50m/分であり、静電キャスト性は合格◎であった。また溶融安定性は90%であった。
得られた実施例15と同様の条件で製造した延伸フィルムは、ピン状欠陥は見られず、厚み均一性も良好であった。またフィルムの高温相融解ピークは221℃、ステレオ化率は100%であった。結果を表4に記載する。
実施例15において、スルホン酸四級ホスホニウム塩を添加しない組成物について静電キャスティング性を評価した。ピン状欠陥などがない平滑性良好なフィルムの最高キャスティング速度は20m/分にすぎず、静電キャスト性不合格×で、生産性が低く工業的実施例においてはコスト的な問題があるものであった。
実施例15と同様の条件で製造した延伸フィルムは、ピン状欠陥が試料中2から3個観測され、厚み均一性ともに不合格であった。またフィルムの高温相融解ピークは224℃、ステレオ化率は91%であった。
比較例6においては実施例16と同様にして、ただし3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を適用することなくポリ乳酸(A)組成物を製造、静電キャスティング性を評価した。ピン状欠陥などがない平滑性良好なフィルムの最高キャスティング速度は25m/分にすぎず、静電キャスト性不合格×で、生産性が低く工業的実施例においてはコスト的な問題があるものであった。
実施例15と同様の条件で製造した延伸フィルムは、ピン状欠陥が試料中2から3個観測され、厚み均一性ともに不合格であった。またフィルムの高温相融解ピークは224℃、ステレオ化率は100%であった。
比較例7においては実施例15と同様にして、ただし3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩を酢酸ナトリウムに替え、ポリ乳酸(A)組成物を製造、静電キャスティング性を評価した。ポリ乳酸が分解し、分子量が大幅に低下しキャスティング困難であった。さらにダイより吐出したポリ乳酸は分解のため着色し商品化には向かないものであった。
比較例8においては実施例16と同様にして、ただし3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を酢酸カリウムに替え、ポリ乳酸(A)組成物を製造、静電キャスティング性を評価した。該組成物はポリ乳酸が分解し、分子量が大幅に低下しキャスティング困難であった。さらにダイより吐出したポリ乳酸は分解のため着色し商品化には向かないものであった。
また比較例8においては実施例15と同様にして、ただし3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩の量のみを3wt%変更しフィルム化を実施した。
ポリマーの黄変が見られ、さらに鏡面冷却ロールの汚れが顕著で、フィルム表面に汚れが転写し表面性不良で製品として不合格と判定した。
実施例15と同様にして、ただしスルホン酸四級ホスホニウム塩のみを表4の化合物に変更、ステレオコンプレックス化し静電キャスト性を評価した。
フィルムは、いずれも最大キャスティング速度50m/分で、ピン状欠陥は見られず、平滑性良好で静電キャスト性合格◎であった。さらに延伸フィルムの物性を実施例15と同様にして評価した。それらの結果をまとめて、表4に記載する。
本発明のフィルム製造方法によれば高速で、平坦性良好で、表面性良好なフィルムを安定的にキャストすることができる。
Claims (9)
- ポリ乳酸をダイよりフィルム状に押し出し、ダイ下でフィルム状溶融ポリ乳酸と冷却ドラムとの接点近傍にもうけられた電極から静電荷を該フィルム状溶融ポリ乳酸の片面に付与し、回転冷却ドラムの表面に密着させ、急冷固化させる工程を含む請求項1に記載のポリ乳酸フィルムの製造方法。
- フィルム状溶融ポリ乳酸と冷却ドラムとの接点近傍にもうけられた電極との間に静電密着を起こす程度の電圧を印加する請求項2に記載のポリ乳酸フィルムの製造方法。
- 電極がワイヤー状またはナイフ状である請求項2または3に記載のポリ乳酸フィルムの製造方法。
- 高温空気流を該電極及びその近傍に吹き付け、電極上部に排気ノズルを設け強制排気する請求項2から4のいずれかに記載のポリ乳酸フィルムの製造方法。
- ポリ乳酸がポリL‐乳酸またはポリD‐乳酸を主成分とする請求項2から5のいずれかに記載のポリ乳酸フィルムの製造方法。
- 一軸または二軸延伸してなり、さらにその後、示差走査熱量計(DSC)測定による190℃以下の融点をTmhとするとき、に融点(Tmh−50)から(Tmh−5)℃で熱処理する請求項6に記載のポリ乳酸フィルムの製造方法。
- D‐乳酸単位を主成分とし、D‐乳酸以外の共重合単位を0〜10モル%含有する結晶性ポリ乳酸(B)と、L‐乳酸単位を主成分としL‐乳酸以外の共重合単位を0〜10モル%含有する結晶性ポリ乳酸(C)とを重量比(B/C)=10/90〜90/10で溶融熱処理してなるポリ乳酸(A)よりなり、ステレオ化度(S)が80%から100%である、請求項1に記載のポリ乳酸フィルム。
- 一軸または二軸延伸してなり、さらにその後、示差走査熱量計(DSC)測定による190℃以上の融点をTmscとするとき、(Tmsc−50)から(Tmsc−5)℃で熱処理する請求項8に記載のポリ乳酸フィルムの製造方法。
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