JP5123548B2 - ポリ乳酸フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、平坦性、厚み均一性及び表面性が良好なポリ乳酸フィルム及び生産性のよい製造方法に関する。さらに詳しくは特定のスルホン酸四級ホスホニウム塩を含むポリ乳酸フィルム及び静電密着法による該フィルムの効率的な製造方法を包含する。
ポリ乳酸を含む脂肪族ポリエステルあるいは芳香族ポリエステルフィルムは、溶融ポリマーをフィルム状に押し出し、次いで回転冷却ドラム(以下冷却ドラムと略称することがある。)上で冷却して固体状の未延伸フィルムにキャスティングし、この未延伸フィルムを必要に応じて1軸方向または2軸方向に延伸して一軸延伸フィルムあるいは二軸延伸フィルムとする方法が採られる。
冷却ドラム上で冷却する際に、冷却が不均一になるとフィルムの凹凸、厚み斑が発生するなどの不都合が発生する場合がある。これを防ぐため溶融フィルムと冷却ドラムとを均一に密着させる必要がある。
芳香族ポリエステルフィルムにおいては、溶融フィルムを冷却ドラムに均一に密着させる方法として、ダイと冷却ドラムの間にワイヤー状の電極を設け溶融フィルムに静電荷を主にグロー放電およびコロナ放電により印加してキャスティングする方法(以下静電キャスト法と称することがある。)(特許文献1)がよく知られている。
しかし静電キャスト法によっても体積固有抵抗値、溶融粘度の高いポリ乳酸などのポリマーでは、冷却ドラムとフィルムとの静電密着性が低下し、冷却ドラムとフィルムの間に空気を巻き込んでフィルム表面に泡状の欠陥、凹凸の発生及び厚み均一性が低下する問題は十分に解決されていない。
とりわけフィルム生産性の向上のため冷却ドラムの周速を高めると静電キャスト法の密着効果が低下し、冷却ドラムと溶融フィルムの間に空気を巻き込んで前述のフィルム表面に泡状の欠陥などを発生しやすくなる問題が顕著となる。
芳香族ポリエステルフィルムでは、静電密着性低下の問題を克服し製膜速度を向上させて高能率で、平坦で厚みの均一な表面欠陥の少ないフィルムを製造するため、製膜性改良剤として酢酸リチウムをはじめとするアルカリ金属、アルカリ土類金属化合物などのイオン性化合物を0.005〜5重量%含有させ、静電密着性の向上法が提案され所望の効果が得られている(特許文献2)。
しかしポリ乳酸においてはアルカリ金属、アルカリ土類金属化合物を含有させると溶融時、ポリ乳酸の解重合が促進されポリマーが分解する重大な欠陥を有しているため、ポリ乳酸フィルムにこれらの剤を適用することは不可能と判断される。
表面性良好で、厚み均一性の高いポリ乳酸フィルムの効果的な製造方法はいまだ提案されなく、表面性良好で、厚み均一性の高いポリ乳酸フィルムの出現がまたれている。
具体的にはアルカリ金属、アルカリ土類金属の添加に替わる静電密着性改良策の提案が切望されている。
特公昭37−6142号公報 特公昭53−40231号公報
本発明の目的は、平坦性、厚み均一性が良好で表面欠陥の改良されたポリ乳酸フィルを提供することにある。本発明の他の目的は平坦性、厚みの均一性が良好で表面欠陥の改良されたポリ乳酸フィルムの効率的な製造方法を提供することにある。
本発明者らは上記従来技術に鑑み鋭意検討を重ねた結果本発明を完成するに至った。
即ち本発明によれば、
1.下記式(I)または(II)で表されるスルホン酸四級ホスホニウム塩を0.001〜1wt%ふくみ下記要件を満たすポリ乳酸フィルムが提供される。
(1)表面性:幅5cm長さ50cmの試料において目視で観察できるピン状欠陥が1個以下。
(2)厚み斑:試料長50cm(長手方向)の厚みを連続厚み計(電子マイクロメーター)で測定したときの厚み変動値△Rμmが平均厚みRμmの7%以内。
Figure 0005123548
Figure 0005123548
また、本願には以下も包含される。
2.ポリ乳酸をダイよりフィルム状に押し出し、ダイ下でフィルム状溶融ポリ乳酸と冷却ドラムとの接点近傍にもうけられた電極から静電荷を該フィルム状溶融ポリ乳酸の片面に付与し、回転冷却ドラムの表面に密着させ、急冷固化させる工程を含む上記1に記載のポリ乳酸フィルムの製造方法。
3.フィルム状溶融ポリ乳酸と冷却ドラムとの接点近傍にもうけられた電極との間に静電密着を起こす程度の電圧を印加する上記2に記載のポリ乳酸フィルムの製造方法。
4.電極がワイヤー状またはナイフ状である上記2または3に記載のポリ乳酸フィルムの製造方法。
5.高温空気流を該電極及びその近傍に吹き付け、電極上部に排気ノズルを設け強制排気する上記2から4のいずれかに記載のポリ乳酸フィルムの製造方法。
6.ポリ乳酸がポリL‐乳酸またはポリD‐乳酸を主成分とする上記2から5のいずれかに記載のポリ乳酸フィルムの製造方法。
7.一軸または二軸延伸してなり、さらにその後、示差走査熱量計(DSC)測定による190℃以下の融点をTmhとするとき、に融点(Tmh−50)から(Tmh−5)℃で熱処理する上記6に記載のポリ乳酸フィルムの製造方法。
8.D‐乳酸単位を主成分とし、D‐乳酸以外の共重合単位を0〜10モル%含有する結晶性ポリ乳酸(B)と、L‐乳酸単位を主成分としL‐乳酸以外の共重合単位を0〜10モル%含有する結晶性ポリ乳酸(C)とを重量比(B/C)=10/90〜90/10で溶融熱処理してなるポリ乳酸(A)よりなり、ステレオ化度(S)が80%から100%である、上記1に記載のポリ乳酸フィルム。
9.一軸または二軸延伸してなり、さらにその後、示差走査熱量計(DSC)測定による190℃以上の融点をTmscとするとき、(Tmsc−50)から(Tmsc−5)℃で熱処理する上記8に記載のポリ乳酸フィルムの製造方法。
本発明のポリ乳酸フィルムは平坦性、表面欠陥、厚みむらが少ないポリ乳酸フィルムであり、さらに本発明のポリ乳酸フィルムは高い効率をもって工業的に製造することができる。
以下に本発明について詳細な説明をする。
本発明のポリ乳酸フィルムは、上記式(I)または(II)で表されるスルホン酸四級ホスホニウム塩を0.001〜1wt%ふくみ下記要件を満たすポリ乳酸フィルムである。
(1)表面性:幅5cm長さ50cmの試料において目視で観察できるピン状欠陥が1個以下。
(2)厚み斑:試料長50cm(長手方向)の厚みを連続厚み計(電子マイクロメーター)で測定したときの厚み変動値△Rμmが平均厚みRμmの7%以内。
表面性、厚み斑の制御はフィルム用途においては必須の条件であり、かかる表面性、厚み均一性を有することによりポリ乳酸フィルムは広い用途への展開が可能になる。
さらに好ましくは
(1)表面性:幅5cm長さ3mの試料において目視で観察できるピン状欠陥が1個以下。
(2)厚み斑:試料長3m(長手方向)の厚みを連続厚み計(電子マイクロメーター)で測定したときの厚み変動値△Rμmが平均厚みRμmの7%以内。の範囲である。
本発明において上記スルホン酸4級ホスホニウム塩はポリ乳酸の溶融キャスティングによる製膜性改良剤としての効果を奏し、より具体的には、溶融キャスティング時のキャスティングフィルムの冷却ロールへの密着性を向上させる製膜性を改良する効果を奏する。
上記スルホン酸4級ホスホニウム塩をポリD‐乳酸、ポリL‐乳酸またはポリD‐乳酸成分及びポリL‐乳酸成分を溶融、熱処理してなるポリ乳酸(A)組成物に適用することにより上記表面性、厚み均一性を実現してなるポリD‐乳酸、ポリL‐乳酸またはポリD‐乳酸成分及びポリL‐乳酸成分を溶融、熱処理してなるポリ乳酸(A)組成物からなるフィルムを好適に実現することができる。
ポリエチレンテレフタレートを始めとする芳香族ポリエステルフィルにおいては前述した如く各種の剤が提案されているがポリ乳酸フィルムにおいては、原料ポリマーの溶融時の不安定性よりスルホン酸四級ホスホニウム塩がとりわけ好適に適用される。
本発明の上記スルホン酸4級ホスホニウム塩の適用量はポリ乳酸に基づき0.001〜1wt%を含有することが必須である。
この割合が0.001wt%より少ないとポリ乳酸フィルムと冷却ドラムとの密着が不十分なものとなり本発明の目的を達成することができない。
またこの割合が1wt%を超えるとポリ乳酸中でのスルホン酸四級ホスホニウム塩の分散性が悪くなり、フィルムにフィッシュアイが発生したり、或いは溶融製膜する際にスルホン酸四級ホスホニウム塩の熱分解やポリ乳酸の熱分解が顕著になりフィルムの着色が著しくなることがあるからである。
スルホン酸四級ホスホニウム塩の含有量は好ましくは0.003〜0.5wt%であり、より好ましくは0.005〜0.1wt%である。
ポリ乳酸に対し、スルホン酸四級ホスホニウム塩をかかる量比で適用することによりポリ乳酸の溶融時の体積固有抵抗値が低減するためポリ乳酸フィルムへの静電荷印加が十分なものとなり、該フィルムと冷却ドラムとの密着性が良好なものとなると判断される。
スルホン酸四級ホスホニウム塩を含有するポリ乳酸フィルムの溶融状態における体積固有抵抗値は0.5×10Ω.cm以下であることが好ましい。体積固有抵抗値がこの範囲にあるとキャスティングの際フィルムへの静電印加が強くなりフィルムと冷却ドラムの密着性が一層良好なものとなる。
これにより、フィルムの平坦性、厚み均一性が良好となりまたピン状欠陥などの表面欠陥もなく、色相も良好なものとなる。
本発明のスルホン酸四級ホスホニウム塩は下記式(I)及び下記式(II)であらわされる化合物である。
Figure 0005123548
Figure 0005123548
式(I)中X、Xは同一または異なっていてもよい水素原子またはエステル形成性官能基である。エステル形成性官能基としては、例えばカルボキシル基、アルコキシカルボニル基、水酸基などを挙げることができる。ただし、X,Xは同時に水素原子であることはない。
式(I)、(II)中RからRは同一または異なっていてもよい炭素数1から18の一価の炭化水素基であり炭素数1から18のアルキル基、炭素数7から12のアラルキル基、炭素数6から12のアリール基を表す。
炭素数1から18のアルキル基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−ペンタデシル基、n−オクタデシル基などを挙げることができる。
炭素数7から12のアラルキル基は例えばベンジル基、2−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基、2,4−ジメチルベンジル基、4−エチルベンジル基等を挙げることができる。
炭素数6から12のアリール基は例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などをあげることができる。
m,nは1または2である。Aは(n+2)価、すなわち3価または4価の炭素数2〜18の脂肪族基又は芳香族基である。Aの具体例としては以下に記載する式(I)の化合物の具体例から明らかとなろう。
式(II)で表される4級ホスホニウムカチオンの具体例としては、例えばテトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テチラブチルホスホニウム、トリメエチルメチルホスホニウム、トリブチルメチルホスホニウム、トリブチルエチルホスホニウム、トリオクチルメチルホスホニウム、トリメチルブチルホスホニウム、トリメチルオクチルホスホニウム、トリメチルラウリルホスホニウム、トリメチルステアリルホスホニウム、トリエチルブチルホスホニウム、トリエチルオクチルホスホニウム、トリブチルオクチルホスホニウム、等の脂肪族ホスホニウム;トリエトリフェニルメチルホスホニウム、トリフェニルエチルホスホニウム、トリフェニルベンジルホスホニウム、トリブチルベンジルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム等の芳香族ホスホニウム等を挙げることができる。
さらに、テトラヒドロキシメチルホスホニウム、トリス(2−シアノエチル)メチルホスホニウム、トリス(2−シアノエチル)エチルホスホニウム、トリス(2−シアノエチル)ベンジルホスホニウム、トリス(3−ヒドロキシプロピル)メチルホスホニウム、トリス(3−ヒドロキシプロピル)ベンジルホスホニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)ホスホニウム、トリブチル(2−ヒドロキシエチル)ホスホニウム等の置換基を有するホスホニウムカチオンも使用することができる。
式(I)で示されるスルホン酸四級ホスホニウム塩としては、例えば3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸エチルトリブチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ベンジルトリブチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸フェニルトリブチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ベンジルテトラフェニルホスホニウム塩、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸エチルトリフェニルホスホニウム塩、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ブチルトリフェニルホスホニウム塩、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ベンジルトリフェニルホスホニウム塩、3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸エチルトリブチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ベンジルトリブチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸フェニルトリブチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸エチルトリフェニルホスホニウム塩、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ブチルトリフェニルホスホニウム塩、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ベンジルトリフェニルホスホニウム塩、3−カルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3−カルボキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、3−カルボメトキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3−カルボメトキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、3,5−ビス(2−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5−ビス(2−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、3−(2−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3−(2−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、4−ヒドロキシエトキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ビスフェノールA−3,3’−ビス(スルホン酸テトラブチルホスホニウム塩)、2,6−ジカルボキシナフタレン−4−スルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、α―テトラブチルホスホニウムスルホコハク酸などを挙げることができる。
式(II)中のホスホニウムカチオンの具体例としては式(I)につき前述したものと同じものを挙げることができる。
式(II)で表されるスルホン酸四級ホスホニウム塩のうち、m=1の化合物のスルホネートとしては、例えばブチルスルホネート、オクチルスルホネート、ラウリルスルホネート、ミリスチルスルホネート、ヘキサデシルスルホネート、2−エチルヘキシルスルホネートなどの脂肪族スルホネート類及びこれらの混合物、p−トシレート、ブチルフェニルスルホネート、ドデシルフェニルスルホネート、オクタデシルフェニルホスホネート、ジブチルフェニルホスホネートなどの置換フェニルスルホネート類、ナフチルスルホネート、ジイソプロピルナフチルスルホネート、ジブチルナフチルスルホネートなどの置換或いは無置換のナフチルスルホネート類を挙げることができる。
m=2の化合物のスルホネートとしては例えば1,1−エタンジスルホネート、1,2−エタンジスルホネート、フェノール−2,4−ジスルホネート、フェノール−2,5−ジスルホネート、1,2−ジヒドロキシベンゼン−3,5−ジスルホネート、1,4−ジヒドロキシベンゼン−3,5−ジスルホネート、1,4−ベンゼンジスルホネート、2,5−ジメチル−1,3−ベンゼンジスルホネート、4−メチル−1,3−ベンゼンジスルホネート、5−メチル−1,3−ベンゼンジスルホネート、5−メトキシカルボニル−1,3−ベンゼンジスルホネート、1,8−ジヒドロキシアントラキノン−2,7−ジスルホネート、1,5−ジヒドロキシアントラキノン−2,6−ジスルホネート、1,5−ジメトキシアントラキノン−2,6−ジスルホネートなどを挙げることができる。
かかるスルホン酸四級ホスホニウムのうち前記式(I)で示したスルホン酸四級ホスホニウム塩を前述した量比で使用することによりポリ乳酸フィルムと冷却ドラムとの密着性が良好となり好ましい。
特に3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホネートが好ましい。
尚、スルホン酸四級ホスホニウム塩は1種のみで使用することもできるが、フィルムの耐熱性、潤滑性、透明性など所望の目的を達成するため、2種以上併用することも好ましい使用法である。
本発明のポリ乳酸にスルホン酸四級ホスホニウム塩及びその他の添加剤を適用するには、ポリ乳酸重合開始より製膜前の間の段階で剤を配合することができる。重合開始から終了までの間、樹脂が溶融状態を保った間に剤を添加する場合、通常の剤投入法を使用することで剤含有ポリ乳酸を製造することができる。
また剤を、ポリ乳酸溶融融合後、一度ペレットなどの固体状態のものに添加するには、従来公知の各種方法を好適に使用することができる。たとえば、ポリ乳酸と燐酸エステル金属塩をタンブラー、V型ブレンンダー、スーパーミキサー、ナウタミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、1軸または2軸の押出機等で混合する方法が適宜用いられる。
こうして得られるスルホン酸四級ホスホニウム塩などを含有するポリ乳酸は、溶融混合し、そのまま、または計量ポンプなどを経由して製膜装置に移送、製膜することもできるし又は溶融押出し、一旦ペレット状にしてから製膜装置に供給する方法も可能である。
ペレットの形状は、ペレットを各種成形方法で成形するに好適な形状を有するもの、具体的にはペレット長は1から7mm、長径3から5mm、短径1から4mmのものが好ましい。またかかるペレット形状は、ばらつきの少ないものが好ましい。
さらに本発明フィルムにおいては、フィルム巻取り、走行性を改良する目的でポリ乳酸中、潤滑剤を適用することが好ましい。
この潤滑剤は常温で固体であってもまた液体であってもよく、融点或いは軟化点が200℃以下のものが好ましい。潤滑剤の具体例としては下記のものを挙げることができ、これらは2種以上を併用してもよい。
脂肪族炭化水素:流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、天然パラフィン、合成パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等、
高級脂肪酸またはその金属塩:ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ヒドロキシステアリン酸、硬化油、モンタン酸ナトリウム等、
脂肪酸アミド:ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ベヘン酸アミド、メチレンビスステリルアミド等、
脂肪酸エステル:n−ブチルステアレート、メチルヒドロキシステアレート、ミリシルセロチネート、高級アルコール脂肪酸エステル、エステル系ワックス等、
脂肪酸ケトン:ケトンワックス等、
脂肪族高級アルコール:ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール等、
多価アルコール脂肪酸エステルまたは部分エステル:グリセリン脂肪酸エステル、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル等、
非イオン系界面活性剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等、
シリコン油:直鎖状メチルシリコン油、メチルフェニルシリコン油、変性シリコン油等、
フッ素系界面活性剤:フルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、モノパーフルオロアルキルエチル燐酸エステル、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等。
これらの潤滑剤は1種類で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。潤滑剤はポリ乳酸中、0.001〜1wt%、さらに好ましくは0.005〜0.5wt%の範囲で適用される。
本発明フィルムにおいてはフィルム巻取り、走行性を改良する目的でポリ乳酸中、滑剤を適用することができる。
かかる滑剤としては、例えば乾式法で製造されたシリカ、湿式法で製造されたシリカ、ゼオライト、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、カオリン、カオリナイト、クレイ、タルク、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、水酸化アルミニウム、酸化カルシウム、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、炭化珪素、酸化スズ等の無機粒子;架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子等の有機微粒子を好ましく挙げることができる。
滑剤としては平均粒径が0.001〜5.0μmの微粒子が好ましく、1種類で使用することもできるし2種類以上併用することも可能である。
これらはポリ乳酸にたいし、0.01〜0.5wt%の範囲で配合することができる。
またこれらの剤以外に酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、蛍光蒼白剤、可塑剤、架橋剤、紫外線吸収剤その他の樹脂等を必要に応じて添加することができる。
本発明のポリ乳酸フィルムは、前記スルホン酸四級ホスホニウム塩及び所望により前述した潤滑剤などを適用し、ポリ乳酸の溶融フィルムを冷却ドラム上に押し出しついで該フィルムを回転する冷却ドラムに密着させ冷却することによって製造される。このときポリ乳酸フィルムにはスルホン酸四級ホスホニウム塩が0.001〜1wt%含有されるので、該フィルムが冷却する近傍において電極よりフィルム溶融面に非接触的に電荷を容易に印加することができ、それによってフィルムを回転する冷却ドラムに密着させることができる。
たとえば、前記スルホン酸四級ホスホニウム塩及び所望により前述した潤滑剤などを含有するポリ乳酸組成物を押出機に供給し、ポリマー融点以上300℃までの温度となるよう溶融し、成形用口金(ダイス)からフィルム状に吐出させ、該フィルムに電極より静電荷を印加させながら冷却ドラムにて冷却固化させることにより未延伸フィルムを製造することができる。
該フィルムに静電価を印加する電極はワイヤー状或いはナイフ状の形状のものが好適に使用される。
該電極の表面物質が白金であることがこのましい。即ち長時間にわたり製膜を続けるとき、フィルムより昇華する不純物が電極表面に付着したり、電極表面が変質したりして静電気の印加能力が低下する懸念があるが、高温空気流を電極或いはその近傍に噴きつけ電極上部に排気ノズルを設置することにより不純物の付着を防ぐことができる。
また白金を電極表面物質とし、放電電極を170〜350℃に保つことにより、上記問題をより効率的に防ぐことができる。
なお、製膜機に供給するポリ乳酸は、溶融時の分解を抑制するため、製膜機供給前乾燥しておくことがこのましい。水分含有量は100ppm以下であることが特に好ましい。
前記未延伸フィルムは必要に応じてさらに一軸方向或いは二軸方向に延伸して一軸延伸フィルム或いは二軸延伸フィルムとすることができる。かかる一軸延伸フィルム或いは二軸延伸フィルムを得るには、上記未延伸フィルムを延伸可能な温度、即ちポリ乳酸のガラス転移温度(以下Tgと記すことがある。)から(Tg+80)℃の温度に加熱し、少なくとも一軸方向に延伸する。
延伸倍率は一軸延伸フィルムで2〜12倍、二軸延伸フィルムでは延伸面積倍率で5から50倍の範囲で選択される。
上記二軸延伸フィルムは、例えば未延伸フィルムを縦方向にまず延伸し、ついで横方向に延伸する縦−横逐次延伸法、縦方向と横方向とを同時に延伸する同時に軸延伸法などにより製造することができる。
この二軸延伸フィルムは、さらに縦方向あるいは横方向の一軸方向に、或いは縦方向及び横方向の二軸方向に再延伸して二軸再延伸フィルムとすることもできる。
上記一軸延伸フィルム或いは二軸延伸フィルムはポリ乳酸がポリD‐乳酸あるいはポリL‐乳酸であるとき,ポリ乳酸の結晶融解温度をTmhとするとき、Tmh以下の温度で熱処理し、室温まで冷却することにより一軸延伸熱処理フィルム、或いは二軸延伸熱処理フィルムとすることができる。
好ましくは、熱処理温度は(Tmh−5)から(Tmh−50)℃とすることにより、フィルムの破断も少なく、熱固定効果も十分たかくなり、寸法安定性の良好なフィルムとすることができる。
またポリ乳酸(A)の一軸延伸フィルム或いは二軸延伸フィルムはポリ乳酸(A)のコンプレックス相結晶融点をTmscとするとき、Tmsc以下の温度で熱処理し、室温まで冷却することにより一軸延伸熱処理フィルム、或いは二軸延伸熱処理フィルムとすることができる。
好ましくは、熱処理温度は(Tmsc−5)から(Tmsc−50)℃とすることにより、フィルムの破断も少なく、熱固定効果も十分たかくなり、寸法安定性の良好なフィルムとすることができる。
かくして得られた一軸延伸フィルム或いは二軸延伸フィルムには、所望により従来公知の方法で、表面活性化処理、たとえばプラズマ処理、アミン処理、コロナ処理を施し、濡れ性、印刷性などを改良することも可能である。
本発明のポリD−乳酸またはポリL‐乳酸は、D‐乳酸またはL‐乳酸を主たるモノマー単位とし、実質的に乳酸単位だけで構成されるポリ乳酸及び他の共重合成分を含有する共重合体などが挙げられるが、実質的に乳酸単位だけで構成されるポリ乳酸であることが好ましい。
このポリD−乳酸、ポリL−乳酸において結晶性、耐熱性などのフィルムの物性の点より、主たるモノマー単位であるD−乳酸単位、L‐乳酸単位は、90〜100モル%、好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは98〜100モル%の範囲が選択される。
即ち、主たる構成成分以外の共重合成分単位は0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜2モル%の範囲である。
また、このポリ乳酸は結晶性を有しておりその融点が150℃から190℃であることが好ましく、さらには160℃から190℃以下であることがより好ましい。
結晶融点がこの範囲にあれば、該ポリマーよりなるフィルムの結晶性を高め、耐熱性を高めることができ、また該成分を含むポリ乳酸(A)組成物のステレオコンプレックス相(コンプレックス相と以下記述することがある。)の形成を促進し、結晶性、耐熱性を高めるために好適であるからである。
本発明に用いるポリD−乳酸、ポリL‐乳酸は、その重量平均分子量が8万から50万の範囲であることがフィルム成形性、フィルムの機械物性を両立させる観点より好ましく選択され、さらに好ましくは10万から25万、さらに好ましくは14万から25万の範囲が選択される。
共重合できる成分としては、特に限定するものではないが、例えば、グリコール酸、カプロラクトン、ブチロラクトン、プロピオラクトンなどのヒドロキシカルボン酸類、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、炭素数が2から30の脂肪族ジオール類、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、炭素数2から30の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキノンなど芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸などから選ばれる1種以上のモノマーを選ぶことが出来る。
本発明に用いるポリD‐乳酸及びまたはポリL‐乳酸を製造する方法は特に限定されるものではなく従来公知の方法が使用できる。
例えばそれぞれの乳酸を直接脱水縮合する方法、それぞれの乳酸を一度脱水環化してラクチドとした後に開環重合する方法で製造することが可能である。これらの製造方法において用いる触媒は、ポリL―乳酸成分やポリD―乳酸成分が所定の特性を有するように重合させることが出来るものであれば、いずれも用いることができるが、オクチル酸スズ、塩化スズ、スズのアルコキシドなどの2価のスズ化合物、酸化スズ、酸化ブチルスズ、酸化エチルスズなど4価のスズ化合物、金属スズ、亜鉛化合物、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、ランタニド化合物などを例示することが出来る。
本発明のポリD−乳酸成分及びポリL−乳酸成分とよりなるポリ乳酸(A)組成物はポリL−乳酸及びポリD−乳酸単独成分よりなる低温結晶溶融相(以下ホモ相と略称することがある。))及びステレオコンプレックスポリ乳酸よりなる高温結晶溶融相(以下コンプレックス相と略称することがある。)とよりなり、示差走査熱量計で測定した低温結晶融解熱を△Hm1,高温結晶融解熱を△Hm2とするとき式(3)で表されるステレオ化度(S)が80%以上であるポリ乳酸であることが好ましい。
[数1]
S = △Hm2 / (△Hm1+△Hm2) × 100 (3)
かかるポリ乳酸(A)は前述のポリL‐乳酸とポリD‐乳酸を重量比で10/90から90/10の範囲で220から300℃で溶融熱処理することにより得ることができる。
ポリD‐乳酸とポリL‐乳酸の溶融混合比は、ステレオ化度を高くするためには上記重量比は好ましくは30/70から70/30、さらに好ましくは40/60から60/40の範囲が選択され、できるだけ50/50に近いことが好ましい。
溶融熱処理温度はポリ乳酸の溶融時の安定性を考慮すると230〜300℃、さらに好ましくは230〜280℃の範囲が選択される。
あるいは、ポリL‐乳酸セグメントとポリD‐乳酸セグメントが上記量比で結合している、ステレオブロックポリ乳酸も好適に用いることが出来る。
ステレオブロックポリ乳酸はポリ−L−乳酸セグメントとポリ−D−乳酸セグメントが分子内で結合してなる、ブロック重合体である。このようなブロック重合体は、たとえば、逐次開環重合によって製造する方法や、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を重合しておいてあとで鎖交換反応や鎖延長剤で結合する方法、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を重合しておいてブレンド後固相重合して鎖延長する方法、立体選択開環重合触媒を用いてラセミラクチドから製造する方法、など上記の基本的構成を持つ、ブロック共重合体であれば製造方法によらず、用いることができる。しかしながら、逐次開環重合によって得られる高融点のステレオブロック重合体、固相重合法によって得られる重合体を用いることが製造の容易さからより好ましい。
溶融熱処理法は特に限定されるものではないが、溶融混練、さらに好ましくは剪断条件下溶融混練する方法が好ましい。
溶融混練に使用される装置は従来公知のバッチ式或いは連続式の溶融混合装置が好適に使用される。たとえば、溶融攪拌槽、一軸、二軸の押し出し機、ニーダー、無軸籠型攪拌槽、住友重機製バイボラック、三菱重工業製N−SCR,日立製作所製めがね翼、格子翼あるいはケニックス式、あるいはズルツァー式SMLXタイプスタチックミキサー具備管型重合槽などを使用できるが、生産性、ポリ乳酸の品質とりわけ色調の点でセルフクリーニング式の重合装置であるフィニッシャー、N−SCR、2軸押し出しルーダーなどが好適に使用される。
ポリ乳酸(A)はステレオコンプレックス結晶を含有する。ステレオコンプレックス結晶の含有率は、上記ステレオ化度(S)で好ましくは80〜100%、より好ましくは95〜100%である。コンプレックス相の結晶融点は、195〜250℃の範囲、より好ましくは200〜220℃の範囲である。融解エンタルピーは、20J/g以上、好ましくは30J/g以上である。
具体的には、示差走査熱量計(DSC)測定において、昇温過程における融解ピークのうち、195℃以上の融解ピークの割合が90%以上であり、融点が195〜250℃の範囲にあり、融解エンタルピーが20J/g以上であることが好ましい。
また本発明に用いるポリD‐乳酸成分、D‐乳酸成分は260℃において溶融させた場合の重量平均分子量の低下が20%以下のものが好ましい。高温での分子量低下が激しいと製膜が困難になるばかりでなく、得られたフィルムの物性が低下し、好ましくない。
ポリD‐乳酸成分及びポリL‐乳酸成分は重合時使用された重合触媒を従来公知の方法、例えば、溶媒で洗浄除去するか、触媒活性を不活性化しておくのが好ましい。
触媒活性を不活性化するには、触媒失活剤と称される重合触媒の重合活性を不活性化させる剤、すなわちイミノ基を有し且つ特定金属系重合触媒に配位し得るキレート配位子の群からなる有機リガンド、リンオキソ酸、リンオキソ酸エステル及び式(4)、式で表される有機リンオキソ酸化合物群、式(5)で表される環状及びウルトラ領域メタ燐酸系化合物を包含するメタ燐酸系化合物から選択される少なくとも1種の剤を重合終了の時点において触媒中の金属元素1当量あたり0.3から20当量配合して触媒活性を失わせておくことも有効な手段である。
−P(=O)m(OH)n(OX2−n (4)
(式中mは0または1、nは1または2、X,Xは各々独立に炭素数1から20の置換基を有していても良い炭化水素基をあらわす。)
Figure 0005123548
該失活剤の使用量はさらにこのましくは前記基準で0.4から15当量、特に好ましくは0.5から10当量の範囲である。
本発明で用いるポリ乳酸(A)組成物には、ステレオ化度を向上させるために特定の添加物を添加することが好ましい。そのような添加物としては、下記式に示すリン酸エステル金属塩が好ましい例として挙げることができる。
Figure 0005123548
Figure 0005123548
これらの金属塩は、ポリ乳酸成分に対して、好ましくは10ppmから2wt%、より好ましくは50ppmから0.5wt%、さらに好ましくは100ppmから0.3wt%用いることが好ましい。少なすぎる場合には、ステレオ化度を向上する効果が小さく、多すぎると樹脂自体を劣化させるので好ましくない。
本発明の平坦性、厚み均一性が良好でピン状欠陥などの表面欠陥のないポリ乳酸フィルムは、包装用フィルム、コンデンサー用フィルム(たとえば肉厚3μm以下のフィルム)、プリンターリボン用フィルム(たとえば肉厚5μm程度のフィルム)、感熱孔版印刷用フィルム、磁気記録フィルム(たとえばQICテープ用:コンピューター記録用フィルム1/4インチテープ)、ノングレアフィルム(たとえば肉厚50μm以下のフィルム)などに有用である。
以下実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれによって何等限定を受けるものでは無い。尚例中の「部」は重量部を意味し、ポリ乳酸の分子量は重量平均分子量を意味する。
ポリ乳酸の重量平均分子量、融点、結晶融解ピーク、ステレオ化度、フィルム、ポリマーの体積固有抵抗値、静電キャスト性、フィルム厚み均一性の評価は以下の方法によった。
(1)重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn):
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン標準サンプルとの比較で求めた。
GPC測定器は下記を用い、クロロフォルム溶離液を使用、カラム温度40℃、流速1.0ml/minで流し、濃度1mg/ml(1%ヘキサフルオロイソプロパノール含有クロロフォルム)の資料10μlを注入した。
検出器:示差屈折計(株)島津製作所製RID−6A。
ポンプ:(株)島津製作所製LC−9A。
カラム:(株)東ソーTSKgelG3000HXL,TSKgelG4000HXL,TSKgelG5000HXLとTSKguardcolumnHXL−Lを直列に接続。
(2)結晶融点、結晶融解熱(△Hm)及びステレオ化度(S):
パーキンエルマー(株)製DCS7示差走査熱量計(DSC)により測定した。試料10mgを窒素雰囲気下、1st RUNにて昇温速度20℃/分で、30℃から250℃に昇温し、結晶化温度(Tcc)、結晶化エンタルピー(△Hcc)、結晶融点(Tm),結晶融融解熱を(△Hm)を測定した。
なおステレオ化度(S)はポリ乳酸につき、190℃以下のホモ相結晶融解熱(△Hmh)、190℃以上の高温相結晶融解熱(△Hmsc)より下記式によりもとめた。
[数2]
S = △Hmsc/(△Hmsc+△Hmh) × 100 (3)
また、250℃で5分保持後、降降温速度5℃/分で250℃から30℃に降温し、結晶化エンタルピー(△Hcc)結晶化開始温度(Tcci)、結晶化ピーク温度(Tccp)、結晶化終了温度(Tccf)を測定した。
(3)体積固有抵抗値(Z):
厚さ約150μmのフィルムを直径20cmの円柱状下部電極と直径5.6cm、厚さ0.2cmの上部電極間の150μmの平行間隙で、電極に密着するように挿入し、該電極をフィルムの(融点+30)℃に加熱、100Vの交流電圧を印加、フィルムを通して流れる電流を測定し、下記式により求めた。
なおZは体積固有抵抗値,Eは印加電圧、Iは電流、dは電極間間隙を表す。
[数3]
Z = (E/I) × (S/d) (8)
(4)フィルム表面性、厚み均一性の判定:
表面性;ピン状欠陥の有無を幅5cm長さ50cmの試料を目視判断により、ピン状欠陥が1個以下のものを合格とした。
厚み均一性;試料長50cm(長手方向)の厚みを電子マイクロメーターで測定、厚み変動値(△R)が平均厚みRμmの7%以内のものを合格とした。
(5)未延伸フィルム平坦性:
幅1m×長さ2mの厚さ200μmの未延伸フィルム資料を平坦な人工皮革上に広げ、軽く両端をひっぱったとき、フィルムに生じる凹凸の目視判定により厚みむらを判定した。
凹凸がほとんど認められないとき合格(○),凹凸が認められる時不合格(×)と判定した。
(6)静電キャスト性:
ポリ乳酸を樹脂温度260℃でフィルム状に溶融押し出しする際、口金部のちかくでかつ押し出しフィルムの上部に設置したワイヤー電極により冷却ドラムとの間に7000Vの電圧を印加して厚さ210μmのフィルムをキャスティングする際、ピン状欠陥(pinner bubble)を生ずることなく、平坦性、厚み均一性良好に安定的に製膜できる冷却ドラムの最大速度を求め、冷却ドラムの最大速度により以下の如く判定した。
最大ドラム速度が50m/分以上のとき良好合格(◎)と判断した。最大ドラム速度が20m/分から50m/分の時合格(○)、20m/分に満たないとき工業的生産に不適合、不合格(×)と判断した。
(7)溶融安定性(%):
試料を窒素雰囲気下、260℃、10分間保持後の還元粘度の保持率を測定した。ポリ乳酸樹脂成型品を製造するとき、溶融安定性が80%以上であれば通常の射出成型、押し出し成型などの溶融成型が問題なくでき、溶融安定性合格と判断した。
なお、還元粘度(ηsp/c)は試料1.2mgを〔テトラクロロエタン/フェノール=(6/4)wt混合溶媒〕100mlに溶解、35℃でウベローデ粘度管を使用して測定した。
[製造例1]ポリL‐乳酸(PLLA‐1)の製造例:
真空配管、及び窒素ガス配管、触媒、ラクチド添加配管、アルコール開始剤添加配管を具備したフルゾーン翼具備縦型攪拌槽(40L)を窒素置換後、光学純度99.8%超のL−ラクチド30Kg,ステアリルアルコール0.69kg(0.023モル/kg−LD)、オクチル酸スズ6.14g(5.05×10−4モル/1kg―LD)を仕込み、窒素圧106.4kPaの雰囲気下、150に昇温した、内容物が溶解した時点で、攪拌を開始、内温をさらに190℃に昇温した。内温が180℃を超え反応が始まってから冷却を開始し、内温を185℃から190℃に保持し2時間反応を継続した。
ついで内圧を2気圧から5気圧に昇圧し、内容物をマックスブレンド翼具備攪拌槽に送液した。攪拌しつつ、窒素圧106.4kPa、内温200℃から210℃で、2時間反応を行なった後攪拌を停止、内圧を13.3kPaに減圧、20分間ラクチド量の調節をおこなった。その後内圧を窒素圧で2から3気圧に昇圧しプレポリマーをチップカッターに押し出し重量平均分子量6.5万、分子量分散1.5のプレポリマーをペレット化した。
該バッチ反応を3回実施した後、容積60Lの第一の無軸籠型攪拌翼具備重合装置にプレポリマーを16kg/hrで送液、触媒、L‐ラクチド16kg/hr、オクチル酸スズ触媒をラクチド類1kgあたり5.05×10−4モル/1kg−LDを送液し200℃から210℃で滞留時間2.5時間重合を行い、第2の無軸籠型攪拌翼具備重合装置に移送、入り口で失活剤のリン酸を触媒1モルあたり1.05モルを添加し、内圧1.33kPa、滞留時間0.5時間ラクチド低減処理をおこなった後定量ポンプでチップカッターに移送しチップ化した。
ラクチド低減処理をしたポリL‐乳酸樹脂は重量平均分子量20.5万、融点(Tm)は168℃、結晶化点(Tc)は122℃、ラクチド含有量0.005wt%であった。
[製造例2]ポリD‐乳酸(PDLA‐1)の製造例:
また同様の合成実験を光学純度99.8%超のD‐ラクチドを使用し、製造例1に準拠して、ポリ乳酸を製造した。ポリD‐乳酸の重量平均分子量20.1万、融点(Tm)は168℃、結晶化点(Tc)は122℃、ラクチド含有量0.005wt%であった。
[製造例3]ポリL‐乳酸(PLLA‐2)の製造例:
製造例1において仕込み時、真球状シリカ(平均粒径0.6μm)0.12Kgを追加添加し以下同様に重合を行い重量平均分子量20.4万、融点(Tm)168℃、結晶化点(Tc)122℃、真球状シリカ含有量0.2wt%、0.ラクチド含有量0.005wt%のポリL−乳酸を得た。
[製造例4]ポリD‐乳酸(PDLA−2)の製造例:
製造例2において仕込み時、真球状シリカ(平均粒径0.6μm)0.12Kgを追加添加し以下同様に重合を行い重量平均分子量20.2万、融点(Tm)168℃、結晶化点(Tc)122℃、真球状シリカ含有量0.2wt%、0.ラクチド含有量0.005wt%のポリD‐乳酸を得た。
[実施例1]スルホン酸ホスホニウム塩含有組成物のフィルム化:
製造例1で製造し110℃で5時間乾燥したポリL‐乳酸100重量部あたり、3,5‐ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム0.5重量部をヘンシェルミキサーで混合後、2軸押出機で溶融混練した溶融安定性90%と良好な組成物を260℃で210μmのフィルム状に溶融押し出し、白金コート線状電極を用い静電キャスト法によって鏡面冷却ドラム表面に密着、固化させた。
このとき冷却ドラムの回転速度を徐々に高め、密着不良に起因するフィルムのピン状欠陥平坦性不良、厚み均一性不良などが生じることなく、良好に製造できる最高キャスティング速度は50m/分で静電キャスト性合格◎と判断した。
該組成物はポリマー温度240℃、キャスティング速度20m/分で1時間にわたり密着性の変動もなく製膜可能であった。
該未延伸フィルムはさらに120℃で、縦方向に3.6倍、横方向に3.9倍延伸、140℃で熱固定を行い厚さ15μmの2軸延伸フィルムとした。該フィルムは表面性、厚み均一性とも合格であった。
[実施例2〜5]
実施例1における3,5‐カルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩の量を表1の値に変更し、実施例2から4ではさらにPLLA‐1をPDLA‐1に変更し、実施例1と同様にして260℃でキャスティングフィルム化静電キャスティング性を評価した。静電キャスティング性、溶融安定性を表1に記載する。
さらに実施例1と同様条件で未延伸フィルム及び延伸フィルムを製造した。これらの実験での未延伸フィルムの平滑性、表面性、厚み均一性、延伸フィルムの表面性、厚み均一性は良好であった。
[比較例1〜4]
比較例1においては、実施例1の3,5‐ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウムを適用しない組成物のキャスティング性を評価した。
ピンニングの発生しない最大キャスティング速度は10m/分にすぎなかった。
さらに実施例1と同様条件で未延伸フィルム及び延伸フィルムを製造した。未延伸フィルムの表面性、厚み均一性は不合格であり、平滑性も凹凸が観測され、延伸フィルムにおいても表面性、厚み均一性は不合格であった。
比較例2、3においては実施例1の3,5‐ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウムを酢酸ナトリウム、酢酸カリウムに変更してキャスティングを実施した。比較例2,3ではポリ乳酸が分解し、分子量が大幅に低下してキャスティング困難であった。さらにダイより吐出したポリ乳酸は分解のため着色し商品化には向かないものであった。
また比較例4では3,5‐ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウムの量のみを3wt%に変更しフィルム化を実施した。
ポリマーの黄変が見られ、さらに鏡面冷却ロールの汚れが顕著で、フィルム表面に汚れが転写し、表面性不良であった。結果を表1にまとめる。
Figure 0005123548
[実施例6〜11]スルホン酸四級ホスホニウム塩の種類、量の検討:
実施例1におけるポリ乳酸、スルホン酸四級ホスホニウム塩の種類、量を表2に記載のポリ乳酸、スルホン酸四級ホスホニウム塩、量に変更してキャスティング性を評価した。
これらの実験において静電キャスト性はいずれも合格(◎)であり、該剤の配合による組成物の溶融安定性も90%以上と良好であった。なおPLLA−2、PDLA−2は、真球シリカ入りポリ乳酸であり製膜性良好であった。
実施例1と同様の条件で未延伸フィルム、延伸フィルムを製造したところ、いずれの実験の延伸フィルムも表面性、厚み均一性は合格であった。
Figure 0005123548
[実施例12]3,5−ジカルボキシスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩の重合添加:
(PLLA−1)と同様にして製造したプレポリマーと3,5−ジカルボキシスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩(プレポリマー100重量部あたり0.1重量部)を容積60Lの第一の無軸籠型攪拌翼具備重合装置に16kg/hrの移送速度で、オクチル酸スズ触媒をラクチド類1kgあたり5.05×10−4モル/1kgL−LDを送液し、200℃から210℃で滞留時間2.5時間重合を行い、第2の無軸籠型攪拌翼具備重合装置に移送、入り口で失活剤のリン酸を触媒1モルあたり1.05モルを添加し、内圧1.33kPa、滞留時間0.5時間ラクチド低減処理をおこなった後定量ポンプでチップカッターに移送しチップ化した。
ラクチド低減処理したポリL‐乳酸は重量平均分子量20万、結晶融点(Tmh)は167℃、ラクチド含有量0.005wt%であった。該組成物を(PLLA‐101)と呼ぶ。
該組成物は260℃での最大キャスティング速度は50m/分でピン状欠陥もなく、厚み均一性、平滑性良好にフィルム化でき、静電キャスト性合格(◎)であった。
実施例1と同様の条件で未延伸フィルム、延伸フィルムを製造したところ、いずれの実験の延伸フィルムも表面性、厚み均一性は合格であった。
[実施例13]
実施例12の3,5−ジカルボキシスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩のみをドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩に替え同様の実験を行った。該組成物を(PLLA−102)と呼ぶ。
ラクチド低減処理したポリL−乳酸樹脂は重量平均分子量20.2万、融点(Tm)は168℃、ラクチド含有量0.005wt%であった。
該組成物は最大キャスティング速度55m/分でピン状欠陥もなく、厚み均一性、平滑性良好にフィルム化でき、静電キャスト性合格(◎)であった。
実施例1と同様の条件で未延伸フィルム、延伸フィルムを製造したところ、いずれの実験の延伸フィルムも表面性、厚み均一性は合格であった。
[実施例14]
実施例12において、PLLA−1プレポリマーをPDLA−1プレポリマーに変更、同様に重合をおこなった。ラクチド低減処理したポリD‐乳酸の重量平均分子量は各々20.5万、20.3万、融点(Tm)は168℃、ラクチド含有量0.005wt%であった。該組成物を(PDLA−101)と呼ぶ。
該組成物は最大キャスティング速度55m/分でピン状欠陥もなく、厚み均一性、平滑性良好にフィルム化でき、静電キャスト性合格(◎)であった。
実施例1と同様の条件で未延伸フィルム、延伸フィルムを製造したところ、いずれの実験の延伸フィルムも表面性、厚み均一性は合格であった。
Figure 0005123548
[実施例15]ステレオコンプレックス組成物のフィルム化:
製造例1、2で製造したPLLA‐1及びPDLA−1の重量比1/1の混合物を120℃で5時間乾燥し2軸押出機の第一供給口から、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩(前記混合物100重量部あたり0.05重量部)を2軸押出機の第二供給口より供給し、250℃で溶融混練(該ポリ乳酸(A)組成物をscPLA1と呼ぶ。)、260℃で210μmのフィルム状に溶融押し出し、白金コート線状電極を用い、実施例1と同様にして静電キャスト法によって鏡面冷却ドラム表面に密着、固化させ静電キャスト性を評価した。なお該組成物の溶融安定性は82%であった。
冷却ドラムの回転速度を徐々に高めたところ、密着不良に起因するフィルムのピン状欠陥等が生じない最高キャスティング速度は50m/分であり、静電キャスティング性は合格◎であった。
実施例1と同様に240℃、20m/分の速度で、1時間にわたり密着性の変動もなく製膜可能であった。平滑性、表面性、厚みむらの良好な該未延伸フィルムは、さらに180℃で、縦方向に3.6倍、横方向に3.9倍延伸、190℃で熱固定を行い厚さ15μmの2軸延伸フィルムとした。
得られた延伸フィルムは、ピン状欠陥は見られず、厚み均一性も良好であった。またフィルムの高温相融解ピークは223℃、ステレオ化率は95%であった。結果を表4に記載する。
[実施例16]
実施例15においてPLLA‐1及びPDLA−1の重量比1/1の混合物100重量部と(株)ADEKA製(「アデカスタブ」(登録商標))NA−71)0.2重量部を120℃で5時間乾燥し2軸押出機の第一供給口から、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩(前記混合物100重量部あたり0.05重量部)とカルボキシル基封止剤のカルボジイミド化合物(前記混合物100重量部あたり0.5重量部)(日清紡ケミカル(株)製「カルボジライト(登録商標)」LA−1)を第二供給口より供給、シリンダー温度230℃で溶融混練(該組成物をscPLA2と呼ぶ)、実施例18と同様にして静電キャスト性を評価したところ密着不良に起因するフィルムのピン状欠陥などが生じることなく、良好に製造できる最高キャスティング速度は50m/分であり、静電キャスト性は合格◎であった。また溶融安定性は90%であった。
得られた実施例15と同様の条件で製造した延伸フィルムは、ピン状欠陥は見られず、厚み均一性も良好であった。またフィルムの高温相融解ピークは221℃、ステレオ化率は100%であった。結果を表4に記載する。
[比較例5]
実施例15において、スルホン酸四級ホスホニウム塩を添加しない組成物について静電キャスティング性を評価した。ピン状欠陥などがない平滑性良好なフィルムの最高キャスティング速度は20m/分にすぎず、静電キャスト性不合格×で、生産性が低く工業的実施例においてはコスト的な問題があるものであった。
実施例15と同様の条件で製造した延伸フィルムは、ピン状欠陥が試料中2から3個観測され、厚み均一性ともに不合格であった。またフィルムの高温相融解ピークは224℃、ステレオ化率は91%であった。
[比較例6]
比較例6においては実施例16と同様にして、ただし3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を適用することなくポリ乳酸(A)組成物を製造、静電キャスティング性を評価した。ピン状欠陥などがない平滑性良好なフィルムの最高キャスティング速度は25m/分にすぎず、静電キャスト性不合格×で、生産性が低く工業的実施例においてはコスト的な問題があるものであった。
実施例15と同様の条件で製造した延伸フィルムは、ピン状欠陥が試料中2から3個観測され、厚み均一性ともに不合格であった。またフィルムの高温相融解ピークは224℃、ステレオ化率は100%であった。
[比較例7]
比較例7においては実施例15と同様にして、ただし3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩を酢酸ナトリウムに替え、ポリ乳酸(A)組成物を製造、静電キャスティング性を評価した。ポリ乳酸が分解し、分子量が大幅に低下しキャスティング困難であった。さらにダイより吐出したポリ乳酸は分解のため着色し商品化には向かないものであった。
[比較例8]
比較例8においては実施例16と同様にして、ただし3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を酢酸カリウムに替え、ポリ乳酸(A)組成物を製造、静電キャスティング性を評価した。該組成物はポリ乳酸が分解し、分子量が大幅に低下しキャスティング困難であった。さらにダイより吐出したポリ乳酸は分解のため着色し商品化には向かないものであった。
[比較例9]
また比較例8においては実施例15と同様にして、ただし3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩の量のみを3wt%変更しフィルム化を実施した。
ポリマーの黄変が見られ、さらに鏡面冷却ロールの汚れが顕著で、フィルム表面に汚れが転写し表面性不良で製品として不合格と判定した。
[実施例17、18]
実施例15と同様にして、ただしスルホン酸四級ホスホニウム塩のみを表4の化合物に変更、ステレオコンプレックス化し静電キャスト性を評価した。
フィルムは、いずれも最大キャスティング速度50m/分で、ピン状欠陥は見られず、平滑性良好で静電キャスト性合格◎であった。さらに延伸フィルムの物性を実施例15と同様にして評価した。それらの結果をまとめて、表4に記載する。
Figure 0005123548
本発明のポリ乳酸フィルムは、平坦性良好であり、ピン状欠陥などの表面欠陥もなく厚み均一性の良好なフィルムであり、コンデンサー用フィルム、プリンンター用フィルム、セラミックライナー用フィルムさらに、表面均一性良好なため光学用途にも好適である。
本発明のフィルム製造方法によれば高速で、平坦性良好で、表面性良好なフィルムを安定的にキャストすることができる。

Claims (9)

  1. 下記式(I)または(II)で表されるスルホン酸四級ホスホニウム塩を0.001〜1wt%ふくみ下記要件を満たすポリ乳酸フィルム。
    (1)表面性:幅5cm長さ50cmの試料において目視で観察できるピン状欠陥が1個以下。
    (2)厚み斑:試料長50cm(長手方向)の厚みを連続厚み計(電子マイクロメーター)で測定したときの厚み変動値△Rμmが平均厚みRμmの7%以内。
    Figure 0005123548
    Figure 0005123548
  2. ポリ乳酸をダイよりフィルム状に押し出し、ダイ下でフィルム状溶融ポリ乳酸と冷却ドラムとの接点近傍にもうけられた電極から静電荷を該フィルム状溶融ポリ乳酸の片面に付与し、回転冷却ドラムの表面に密着させ、急冷固化させる工程を含む請求項1に記載のポリ乳酸フィルムの製造方法。
  3. フィルム状溶融ポリ乳酸と冷却ドラムとの接点近傍にもうけられた電極との間に静電密着を起こす程度の電圧を印加する請求項2に記載のポリ乳酸フィルムの製造方法。
  4. 電極がワイヤー状またはナイフ状である請求項2または3に記載のポリ乳酸フィルムの製造方法。
  5. 高温空気流を該電極及びその近傍に吹き付け、電極上部に排気ノズルを設け強制排気する請求項2から4のいずれかに記載のポリ乳酸フィルムの製造方法。
  6. ポリ乳酸がポリL‐乳酸またはポリD‐乳酸を主成分とする請求項2から5のいずれかに記載のポリ乳酸フィルムの製造方法。
  7. 一軸または二軸延伸してなり、さらにその後、示差走査熱量計(DSC)測定による190℃以下の融点をTmhとするとき、に融点(Tmh−50)から(Tmh−5)℃で熱処理する請求項6に記載のポリ乳酸フィルムの製造方法。
  8. D‐乳酸単位を主成分とし、D‐乳酸以外の共重合単位を0〜10モル%含有する結晶性ポリ乳酸(B)と、L‐乳酸単位を主成分としL‐乳酸以外の共重合単位を0〜10モル%含有する結晶性ポリ乳酸(C)とを重量比(B/C)=10/90〜90/10で溶融熱処理してなるポリ乳酸(A)よりなり、ステレオ化度(S)が80%から100%である、請求項1に記載のポリ乳酸フィルム。
  9. 一軸または二軸延伸してなり、さらにその後、示差走査熱量計(DSC)測定による190℃以上の融点をTmscとするとき、(Tmsc−50)から(Tmsc−5)℃で熱処理する請求項8に記載のポリ乳酸フィルムの製造方法。
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