JP5122224B2 - キャスタ及びキャスタを備えている家具 - Google Patents

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Description

本願発明は、例えばテーブルのような家具に好適に使用されるキャスタ及びこれを備えた家具に関するものである。
例えば家具に使用するキャスタは、車輪が取り付いた旋回部材(旋回支持体、ベース体、ロータと言うこともできる)を備えており、この旋回部材を、平面視において車輪の回転軸心から離れた部位を中心に水平旋回するように家具の脚に取り付けている。最もシンプルなキャスタでは、上下長手のねじ軸に旋回部材を水平旋回自在に取り付けて、家具の脚に固定したナットにねじ軸をねじ込むか、ねじ軸を家具の脚にナットで固定するかしている。
さて、テーブルのようなキャスタを設ける場合、家具のガタ付きを無くしたり天面を水平状に設定したり、或いは左右又は前後に並べた家具の高さを揃えたりするため、キャスタは被支持物の高さを調節できるようにアジャスタ機能を持っているのが好ましい。
キャスタのアジャスト手段として最も簡単なのは、特許文献1に記載されているように被支持物に対するねじ軸のねじ込み深さを変えることであるが、この方法ではねじ軸がナットでロックされていないと旋回部材の旋回によってねじ軸が連れ回転する可能性があり、さりとてねじ軸を固定するナットは専用のスパナがないと回転操作できないため、ユーザーが簡易に高さ調節できるという訳にはいかない。そこで本願出願人は、特許文献2において、人が手で簡単に回転操作できるアジャストリングを備えたキャスタを提案した。また、特許文献2のキャスタは、車輪の回転と旋回部材の水平旋回とをロックできるロック装置も備えている。
実開昭59−172604号公報 特開平11−334303号公報
特許文献のものは人がアジャストリングを手で回転させることで簡単に高さ調節できるのみならず、アジャストリングが回転自在な状態で旋回部材は旋回不能にロックされるため旋回ロック機能が確実であるという利点がある。しかし、その後の研究により、若干の改良の余地が見つかった。
例えば、高さ調節に伴ってアジャストリング自体が昇降するため、アジャストリングと被支持物(家具の脚)との間隔が広狭変化してゴミが溜まりやすくなる虞がある問題があった。また、アジャストリングが旋回部材に外側から嵌まっているため、ロック装置はアジャストリングの内側に配置せねばならず、すると、ロック装置を構成する部材は強度確保の点から過度に小さくすることはできないため、キャスタ全体が大型化しがちである問題があった。
本願発明は、調節リングの回転によってユーザーが被支持物の支持高さを簡単に変更できるという点は特許文献の思想を踏襲しつつ、より改良された構造にすることを課題とするものである。
本願発明のキャスタは、被支持体に対して回転不能で上下動自在に保持される昇降体と、前記昇降体を昇降させる水平回転式の調節リングと、前記調節リングを上下動不能で回転自在に保持するリテーナとが備えられており、前記昇降体に、車輪が取付けられた旋回部材を水平旋回自在に取付けている一方、前記昇降体と調節リングは、調節リングの回転によって昇降体が上下動するように互いに螺合している構成であり、前記リテーナは、前記調節リングを囲うように配置された複数の部材に分割されていてこれら各部材は前記被支持体に固定されており、前記複数の部材からなるリテーナと前記調節リングとが互いに嵌まり合っている。
請求項2のとおり、本願発明は請求項1に記載したキャスタを有する家具も含んでいる。
本願発明では、調節リングは上下動(昇降)しないため、高さ調節によって調節リングと被支持物との上下間隔が変わることはない。このため高さ調節に起因してゴミが溜まりやすくなるようなことはない。また、特許文献1ではアジャストリングの内側に車輪を配置していたため、キャスタを小型化しようとすると車輪も小型化せざるを得ずに走行性が低下する可能性があったが、本願発明では車輪の多きさや配置位置は調節リングとは関係なく設定できるため、調節リングを小型化しつつ大径の車輪を採用して高い走行性を確保することができる。
本願発明のキャスタは車輪のロック装置及び旋回部材のロック装置を設けることも可能であるが、その場合、ロック装置を構成する部材は昇降体や旋回部材に設ければ良く、ロック装置と調節リングとの関係は考慮する必要がないため、ロック装置を設けるにおいて部材の配置態様をシンプル化することができる。従って、ロック装置を設ける場合、その構造を簡素化することが可能になる。
リテーナによる調節リングの保持構造は様々の態様が有り得るが、本願発明では、調節リングとリテーナとがしっかりと嵌まり合うことで調節リング(及び昇降体)は被支持物に対して離反不能の状態にしっかりと保持され、しかも、リテーナは複数の部材に分割されているため取付けも何らの支障なく行える。すなわち、本願発明によると、取付けの容易性を損なうことなくリテーナを上下動不能で回転自在な状態に保持できる。
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態のキャスタは例えば折り畳み式等のテーブルを初めとした家具(特にテーブル類)への使用を目的に設計されている。そして、本実施形態は折り畳み式テーブルに適用している。
(1).第1実施形態の概要
図1〜図11では第1実施形態を示しており、このうち図1のうち(A)は折り畳み式テーブルの側面図、(B)は部分的な分離側面図である。折り畳み式テーブル1は、図示しない横長フレームで連結された左右の脚2と、跳ね上げ式の天板3を備えている。脚2は床に近い水平部2aとこの水平部2aの後端部から傾斜姿勢で立ち上がった起立部2bとで側面視略L形の形状になっており、水平部2aの前後両端部に本実施形態のキャスタ4を取付けている。水平部2aの前端部と後端部との下面部は、下方と前方とに切欠かれた上向き段落ち状態になっている(段落ち部を符号2cで示す。)。脚2はアルミダイキャストのような金属成形品から成っている。
折り畳み式テーブル1における脚2の水平部2aは下向きに開口した樋状(チャンネル状)になっており、水平部2aのうち前後キャスタ4の間の適当な位置に操作具の一例として下向きプッシュ式の操作ボタン5を設けている。詳細は省略するが、操作ボタン5はプッシュ動によって下降位置と上昇位置とに交互に変化するものであり(従って、下降して停止した位置から更に若干の寸法だけ押し下げることができる)、脚2における水平部2aの内部には、前部のキャスタ4のロック機構を操作する前後一対の操作ロッド6が水平姿勢で前後スライド自在に装着されている。
本実施形態では、操作ボタン5が上向き上昇位置から下降動すると操作ロッド6はキャスタ4から操作ボタン5に向いた方向に後退動し、操作ボタン5が下降位置から上昇位置に向けて上昇動すると操作ロッド6はキャスタ4に向いた方向に前進動する。勿論、操作ボタン5の動きと操作ロッド6の動きとを逆にすることも可能である。また、プッシュ式の操作ボタンに変えて、操作具として水平回動式の摘みやレバーを採用することも可能である。操作ロッド6がどのような動きをするかはキャスタ4におけるロック機構のメカニズムによって相違する。
以下、キャスタ4の詳細を図2以下の図面も参照して説明する。図2はキャスタ4の構成部材をほぼ網羅した分離斜視図、図3のうち(A)はフリー状態(ロック解除状態)での要部の縦断側面図、(B)は(A)の部分的な拡大図、図4はロック状態での縦断側面図である。まず、これらの図に基づいてキャスタ4の概要を説明する。
キャスタ4を構成する部材は、動きを担保するための基本部材と、ロック機構を構成するロック用部材とに大別される。これらの部材は図2〜図4にほぼ網羅して表示されている(特に図2参照)。
基本部材として、左右一対の車輪(コロ)8と、この車輪8が車軸9で取付けられている旋回部材10と、旋回部材10が水平旋回自在に支持されている昇降体11と、昇降体11を上下動操作するための回転式の筒状調節リング12と、筒状調節リング12を脚2の水平部2aに対して回転自在で上下動不能に保持するためのフロントリテーナ13及びリアリテーナ14が挙げられる。昇降体11の回転操作によって昇降体11が上下動し、結果として旋回部材10及び車輪8と脚2との相対高さが変化する。
ロック部材としては、車輪8を回転不能に保持するための車輪ストッパー15と、車輪ストッパー15をロック状態に付勢する第1ばね16と、旋回部材10を水平旋回不能に保持するための旋回ストッパー17と、旋回ストッパー17をロック状態に付勢する第2ばね18と、車輪ストッパー15と旋回ストッパー17とを同時に作動させる上下動方式の作動部材19と、既述した操作ロッドの先端に装着した第1連動体20と、第1連動体20の水平動を作動部材19の上下動に変換する第2連動体21と、第2連動体21を後退方向に付勢する第3ばね22とが挙げられる。
操作ロッド6と第1及び第2の連動体20,21と第3ばね22と作動部材19とは、操作ボタン5の動きをロックとロック解除との切り替えに変換する連動装置を構成している。そして、本実施形態では、図3(A)のように操作ロッドが前進している状態では、第2連動体21によって作動部材19が押し下げられており、この状態では旋回ストッパー17がフリー位置に後退していて旋回部材10は水平旋回自在であると共に、車輪ストッパー15はフリー姿勢になっていて車輪8は転動自在である。
他方、操作ロッド6が後退すると、第2連動体21が第3ばね22の付勢力によって後退することで操作部材19が上昇動し、すると、旋回ストッパー17がロック位置に前進して旋回部材10は水平旋回不能に保持されると共に、車輪ストッパー15はロック姿勢になって車輪8は転動不能に保持される。
以下、従前の図に加えて図5以下の図面も参照して各部材の具体的な形態相互関係を説明する。図5は部材を分離した側面図、図6及び図7は断面表示した状態での分離側面図、図8は図3(A)の VIII-VIII視断面図、図9は図3(A)の IX-IX視断面図、図10は図3(A)の X-X視方向から見た分離平断面図、図11は図7の XI-XI視断面図である。
(2).基本構成
まず、昇降体11を説明する。昇降体11は、例えば図5〜7に示すように、外周に雄ねじ(台形ねじ)を形成した雄ねじ部11aと、雄ねじ部11aの下端に一体に連続した円形のねじ無し部11bと、ねじ無し部11bから下向きに突出した円形のボス部(支軸部)11cとを備えている。ねじ無し部11bと雄ねじ部11aの外径より僅かに大径に設定されている。他方、ボス部11cはねじ無し部11bよりもかなり小径になっており、このため、ねじ無し部11bの下端面は中間段部11dになっている。また、ボス部11cの下端には当該ボス部11cよりも小径の下小径部11eが一体に形成されており、このため、ボス部11cの下端面は下段部11f(図3(B)参照)になっている。
図8に示すように、昇降体11における雄ねじ部11aの上面には、平面視で将棋の駒に近い形状の回り止め部11gが一体に形成されている。回り止め部11gは脚2の長手方向に長く延びる姿勢になっている。そして、図8に示すように、折り畳み式テーブル1における脚2の水平部2aには下向きのボス部36が形成されており、この下向きボス部36に、昇降体11の回り止め部11gが上下動自在で回転不能に嵌合する規制溝24が形成されている。なお、回り止め部11gが将棋の駒形状のような前後非対称形状になっているのは、所定姿勢でなければ脚2の規制溝24に嵌まらないように姿勢に方向性を付けるためであり、これにより、昇降体11の組み付け間違いが防止される。
規制溝24には、脚2の先端に向いた補助溝24aが連続形成されており、昇降体11の回り止め部11gに突設した昇降規制ピン25が補助溝24aに嵌まっている。昇降規制ピン25及び補助溝24aは、昇降体11の下降下限位置を規制するものである。なお、回り止め部11gが回転不能に嵌まる固定部材を脚2とは別に構成して、この固定部材を脚2の水平部2aにビスで締結することも可能である。
昇降体11の雄ねじ部11aには調節リング12が外側から螺合している。従って、調節リング12の内周は雌ねじ穴27になっている(ねじは断面台形の角ねじを採用している)。また、調節リング12の上下中途高さ位置には中段フランジ12aが一体に形成されており、中段フランジ12aの外周寄り部位に下向きの操作部12bが一体に形成されている。従って、操作部12bの内側は環状凹所になっている。図10に示すように、操作部12bの外周には人の指の引っ掛かりを良くするための凹みが適当な間隔で形成されている。
図5〜7に示すように、調節リング12の上端部には外向きに張り出した上フランジ12cが一体に形成されており、このため、上フランジ12cと中段フランジ12aとの間の部位には環状溝28になっている。そして、環状溝28の箇所をフロントリテーナ13とリアリテーナ14とで前後両側から挟むことにより、調節リング12は回転自在で上下抜け不能に保持されている(調節リング12は上方に抜けることはないので、両リテーナ13,14では少なくとも調節リング12の下向き離脱を規制すれば足りる。)。
例えば図2や図10に示すように、フロントリテーナ13は平面視でリングを半割りした形状であり、その内周には調節リング12の環状溝28に半周だけ入り込むフロント内向き突条13aが形成されている。フロントリテーナ13は3本のビス29で脚2の水平部2aに締結されている。また、フロントリテーナ13の上面には2本の位置決めピン30が突設されており、位置決めピン30は脚2の水平部2aに設けた位置決め穴に嵌まっている。
図2に明示するように、リアリテーナ14は水平部2aの長手方向に長い形態でしかも断面形状は台形の上半部と長方形の下半部とを複合した形状になっており、従って、フロントリテーナ13よりも高さが高いブロック形態になっている。このようにブロック形態になっているのは、その内部に既述の第1連動部材20を配置しているためである。
リアリテーナ14の前部には調節リング12の半分を抱持するように平面視で半円状の前凹所31が形成されており、この前凹所31に、調節リング12の環状溝28を半分だけ抱持するリア内向き突条14aが形成されている。また、リアリテーナ14の前部には、フロントリテーナ13の両端部に重なる左右一対のサイド突起33と、昇降体11における回り止め部11gの背面に当接又は近接するセンター突起34とが形成されている。
また、図6及び図8に示すように、脚2の水平部2aには、調節リング12の上端面12dが当接する既述の下向きボス部36が形成されている。下向きボス部36は、リアリテーナ14のセンター突起34と干渉しないように平面視で後ろ向き開口している。
例えば図2に示すように、リアリテーナ14には、上面と傾斜面とに跨がった座ぐり凹所37が形成されている一方、図8に示すように脚2の水平部2aには座ぐり凹所37に嵌合する下向き円柱部38が一体に形成されており、下向き円柱部38にねじ込まれたビス39によってリアリテーナ14は水平部2aに固定されている。なお、リアリテーナ14を下向きボス部38によって位置決めすることも可能である。
図3から理解できるように、フロントリテーナ13を締結するビス29は平面視で調節リング12と重なる位置に配置されている一方、リアリテーナ14を締結するビス39は平面視で調節リング12から後方に外れた位置に配置されている。
テーブル1の脚2へのキャスタ4の組み込みは、予め昇降体11に旋回部材10と調節リング12を組み込むと共に連動部材をセットしておいてから、まずフロントリテーナ13をビス29で締結し、次いで、昇降体11の回り止め部11gを脚2の規制溝24に差し込んで水平部2aの長手方向にスライドさせることで調節リング12の環状溝28とフロントリテーナ13とを嵌め合わせ、次いで、リアリテーナ14を脚2の内部に嵌め入れてからスライドさせることで当該リアリテーナ14の内向き突条14aと調節リング12とを嵌め合わせ、それから、ビス39でリアリテーナ14を締結することになる。
このような締結構造により、脚2における水平部2aの先端部の狭い部位にキャスタ4を取り付けることができる。また、本実施形態のように昇降体11の回り止め部11gと脚2における規制溝24とを平面視で後ろ向きに開口したテーパ状に形成すると、昇降体11及び中間リンク12の横スライドがガイドされて調節リング12とフロントリテーナ13との嵌め合わせがスムースかつ確実に行われる利点がある。また、本実施形態は調節リング12で脚2を直接に支持するものであるが、脚2はアルミダイキャスト製であって下向きボス部34はその下面を平坦な状態に加工できるため、調節リング12と脚2との密接状態を高い精度で確保できる。
次に、旋回部材10と車輪8を説明する。旋回部材10は樹脂の成形品であり、例えば図7に示すように、昇降体11のボス部11bに回転自在に嵌まった円形の基部を備えており、基部に平面視長方形の張り出し部10aを設けている。旋回部材10の基部には、昇降体11のボス部11bが嵌まるボス穴41と、昇降体11の下小径部11eが嵌まる下穴42とが形成されている。
図3(B)に明示するように、ボス穴41には内向き環状突起43が形成されて、昇降体11のボス部11cには環状突起42が嵌まる環状溝44が形成されており、これら環状突起43と環状溝43との嵌まり合いによって昇降体11と旋回部材10とは抜け不能に保持されている(嵌め合わせは弾性を利用した強制嵌合によって行われる。)。また、昇降体11のボス部11cと旋回部材10のボス穴41との間には若干の隙間を設けており、旋回部材10と昇降体11との回転の芯決めは昇降体11の下小径部11eと旋回部材10の下穴42との嵌合に依っている。
また、図3(A)に示すように、旋回部材10の上部は薄肉となって調節リング12における操作部12bの下向き環状凹所に入り込んでおり、このため、旋回部材10の上部には、ボス穴41よりも大径で昇降体11のねじ無し部11bの外側に広がっている上向き凹所45が空いており、上向き凹所45の内周の下端部に昇降体11のねじ無し部11aと対向した段部を形成して、この段部に、図9に示すように、旋回ロック機構の一環として内側と上方とに開口した旋回用係合溝46(図2も参照)が適宜ピッチで多数形成されている。旋回用係合溝46は平面視で半径内側に向いて間隔が広がる台形になっている。
次に車輪8を説明する。例えば図2に示すように、車輪8は旋回部材10における張り出し部10bの両側に位置しており、1本の車軸9で旋回部材10に連結されている。車輪の内面には環状凹所47が形成されており、その内周面に、車輪ロック機構の一環として回転中心に向いて車輪用係合溝48が一定ピッチで多数形成されている。図11では車輪8の外周面にOリング49を嵌め入れている。Oリング49は、床面との摩擦を大きくして滑りを防止する共に床の傷付きを防止することを主目的としているが、勿論、Oリング49は無くてもよい。また、Oリングに代えてエラストマー層を一体に設けることも可能である。
(3).ロック機構
次に、ロック機構を説明する。まず、車輪ロック機構を説明する。図2〜図5に示すように、車輪ロック機構は車輪ストッパー15と車輪用係合溝48と第1ばね16とで構成されている。車輪ストッパー15は樹脂の成形品であり、旋回部材10の下面部でかつ左右車輪8の間に配置されている。そして、左右車輪8の間の中間部において車軸9と直交した方向に延びるシーソー部15aと、シーソー部15aの前部に一体に設けた羽根部15bとを備えており、このため全体的には平面視T形の形態になっている(勿論他の形態でもよい)。
そして、図2や図11に示すように、シーソー部15aのうち羽根部15bのやや奥側の部位に左右の支軸50を横向き突設する一方、旋回部材10には、前記支軸50が下方からの強制的嵌め込みによって嵌まり込む上向き開口の軸受け部51を一体に設けている。また、シーソー部15aの先端は旋回部材10の下穴42の下方に位置している一方、羽根部15bの左右端部は車輪8の環状凹所47に入り込んでおり、左右羽根部15bの先端部に、車輪用係合溝48に嵌脱する係合突起52を形成している。
羽根部15bの左右中間部と旋回部材10との間には既述の第1ばね16が介在しており、このため、車輪ストッパー15は、その係合突起52が車輪用係合溝48に嵌合する方向に回動し勝手となるように付勢されている。旋回部材10には第1ばね16が嵌まるばね受け穴53が形成されている。
図11に示すように、旋回部材10における左右の軸受け部51は互いに分離しており、また、軸受け部51の下面には支軸50の誘い込みのための傾斜面を形成している。また、車輪ストッパー15のシーソー部15aのうち支軸50を設けている部分には、支軸50の嵌め込みに際して弾性変形して左右支軸50の間隔が狭まるように上下開口の穴54を空けている。本実施形態では車輪ストッパー15は弾性変形を利用した嵌め込みで旋回部材10に取付けられるため、取付け作業をワンタッチで行える。
次に、旋回ロックを説明する。旋回ロック機構は既述のとおり旋回ストッパー17と旋回用係合溝46と第2ばね18とで構成されている。旋回ストッパー17は例えば図2から理解できるように基本的に上下厚さよりも平面視での幅が大きい板状であり、図9に示すように、旋回ストッパー17は昇降体11のねじ無し部11bに設けたガイド穴56に水平動自在に嵌まっており、先端には旋回用係合溝46に嵌脱する平面視台形の嵌合部17aが形成されている。
旋回ストッパー17は、脚2の水平部2aの長手方向と同じ方向に延びるように配置されている。また、旋回ストッパー17は係合部17aと反対側に延びる小径軸17bを備えており、小径軸17bは昇降体11に設けた補助ガイド56aに嵌まっている。
そして、小径軸17bに第2ばね18を被嵌している。従って、旋回ストッパー17は第2ばね18によって旋回用係合溝46に嵌まる方向に付勢されている。また、旋回ストッパー17の先端部と旋回用係合溝46とが平面視で台形であるため、両者が嵌合した状態で旋回部材10に対して過度に大きな旋回モーメントが作用すると、傾斜面のガイド作用によって旋回ストッパー17が旋回用係合溝46から逃げ移動し得る。これにより、何らかの理由でロック状態の旋回部材10に過大な旋回モーメントが作用しても旋回ストッパー17等の部材の損傷を回避できる。旋回ストッパー17のうち小径軸17bに近い箇所には、平面視略矩形の操作穴57が上下に開口している。
図3,4のとおり、昇降体11は上下に貫通する縦穴57が空いていて中空状になっており、縦穴に既述の作動部材19が上下動可能な状態で嵌まっている。図2から理解できるように作動部材19は基本的には板状であり、このため昇降体11には回転不能に嵌まっている。そして、作動部材19は、旋回ストッパー17の長手方向に幅が広がる広巾部19aと、広巾部19aの上方に位置した細幅部19bと、細幅部19bの上端に一体に設けた主動ピン部19cと、広巾部19aの下端に下向き突設した従動ピン部19dとを備えている。
作動部材19の広巾部19aはおおむね昇降体11のボス部11cの箇所に位置しており、旋回ストッパー17の長手方向に幅が広がっている。そして、図2のとおり、作動部材19の広巾部19aと細幅部19bとは、上傾斜面19eと下傾斜面19fとがくの字状に連続したくびれ部19gを介して連続しており、くびれ部19gが旋回ストッパー17の操作穴57に挿通している。くびれ部19gのうち上傾斜面19eと反対側の部分は上傾斜面19eと平行な補助傾斜面19hになっており、このため、細幅部19bは広巾部19aの前後端面に対して共に段落ちした状態になっている。
図3(B)や図7に示すように、旋回部材10には作動部材19の従動ピン部19dがスライド自在に嵌まる穴59が空いており、作動部材19が下降動すると従動ピン部19dはその下部が穴59の下方に突出し、作動部材19が上昇すると従動ピン部19dは穴59に隠れる。
例えば図3,4に示すように、昇降体11の回り止め部11gにはリアリテーナ14に向いて開口した断面略角形の上ガイド穴60が空いており、この上ガイド穴60に第2連動部材21が水平スライド自在に嵌まっている。第2連動部材21はブロック状に形成されており、操作ロッド6のスライド方向と同じ方向にスライドする。そして、作動部材19の主動ピン部17cは昇降体11の上ガイド穴60に向けて出没し得る一方、第2連動部材21の下面には、主動ピン部19cが下方から当接し得る傾斜状のカム面61が形成されている。
第2連動部材21のカム面61は、第1連動部材20から遠ざかるに従って高さが高くなるように傾斜しており、このため、第2連動部材21が前進動すると作動部材19は下向きに押されて下降動する。第2連動部材21は第3ばね22によって第1連動部材20に接近し勝手となるように付勢されている。敢えて述べるまでもないが第3ばね22は昇降体11の上ガイド穴60に配置されている。カム面61の傾斜姿勢は逆にすることも可能であり、この場合は、操作ロッド6が後退位置から前進するとロック状態になる。
図2のとおり、第1連動部材20は基本的には角形であり、図3,4に示すように、リアリテーナ14に形成した角形穴62にスライド自在に嵌まっている。また、第2連動部材20は後ろ向きに開口した空所63を有しており、空所63に操作ロッド6の先端が嵌まっている。また、第1連動部材20は第2連動部材21を押す細幅の押圧部20aを有しており、押圧部20aはリアリテーナ14を貫通している。第1連動部材20の下面には下向き爪64が形成されている一方、リアリテーナ14の下面部には、第2連動部材20が前後動すると下向き爪64の移動を許容するスリット65が形成されている。下向き爪64がスリット65の後端に当たることで第2連動部材の後退動が規制される。嵌め込みは弾性変形を利用して行われる。
(4).まとめ
既述のとおり、操作ボタン5をプッシュ操作して操作ロッド6を前進させたり後退させたりすることにより、車輪8と旋回部材10とはロック状態とフリー状態とに切り替わる。そして、昇降体11は回転不能で昇降のみ自在に保持されているため、ロック状態が確実に保持される。また、ロック状態とフリー状態とを問わず、調節リング12を回転操作することでテーブル1の高さを調節できる。昇降体11が下降する(テーブル1が上昇する)場合、昇降規制ピン25が調節リング12の上面に当たることで限度位置が規制される。
本実施形態のように作動部材19と旋回ストッパー17とを昇降体11の内部に配置するとそれだけキャスタ4をコンパクト化できる。また、第1連動部材20をリアリテーナ14に内蔵すること、及び、第2連動部材21を昇降体11の回り止め部11gに内蔵することもコンパクト化に貢献している。本実施形態では、調節リング12のねじ筒部は部分的に旋回部材10の内部に入り込んでいるが、この構成によってもキャスタ4の全体の上下高さが低くなってコンパクト化に貢献している。
昇降体11、調節リング12、旋回部材10は樹脂の成形品とすることでコンパクト化や大幅なコストダウンを図ることができるが、強度の面からは、少なくとも昇降体11は例えばポリアミドMXD6系複合材料のようなエンジニアリングプラスチックを使用するのが好適である。
(5).第2実施形態(図12〜図13)
図12及び図13では、リテーナにスラスト軸受け機能を保持せしめた第2実施形態を示している。図12は縦断側面図、図13は図12の XIII-XIII視断面図である。旋回部材は第1実施形態と同様の構成であるが図では省略している。この実施形態も調節リング12は基本的には第1実施形態とほぼ同じ形態であり、また、昇降体11は雄ねじ部11aとボス部111cとを有している。
本実施形態では、フロントリテーナ13とリアリテーナ14とは調節リング12の上フランジ12cを半周ずつ囲うようになっており、このため、両リテーナ13,14は内向き突条13a,14aとスラスト軸受け部35,35′を有している。また、両リテーナ13,14には、昇降体11の回り止め部11aが嵌まる規制溝24を形成している。本実施形態では両リテーナ13,14とも平面視で調節リング12からはみ出ない大きさになっており、そこで、調節リング12の中間フランジ12aにはビス(ボルト)29,39を回転するビットを挿入する穴12dが空いている。
本実施形態も車輪及び旋回のロック装置を備えているが、この場合、操作ボタン5はキャスタ4に一体的に組み込んでいる。詳細は省略するが、操作ボタン5はプッシュ又は回転することでロック装置はロック状態とフリー状態とに切り替わる。なお、図13ではロック装置の機構部材は省略している。
(6).その他
本願発明は上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば、本願発明のキャスタは必ずしもロック装置を設ける必要はない。また、調節リングは実施形態のような中間フランジや操作部は必要不可欠という訳ではなく、単なるねじ筒状に形成することも可能である。リテーナは、3個以上に分割することも可能である。
(A)は折り畳み式テーブルの側面図、(B)は部分的な分離側面図である。 キャスタの分離斜視図である。 (A)はフリー状態での縦断側面図、(B)は(A)の部分的な拡大図である。 ロック状態での縦断側面図である。 分離側面図である。 分離側断面図である。 分離側断面図である。 図3(A)の VIII-VIII視断面図である。 図3(A)の IX-IX視断面図である。 図3(A)の X-X視方向から見た分離平断面図である。 図7の XI-XI視断面図である。 第2実施形態の縦断側面図である。 図12の XIII-XIII視断面図である。
2a テーブルにおける脚の水平部
4 キャスタ
5 操作具の一例としての操作ボタン
6 連動装置の一部を構成する操作ロッド
8 車輪
10 旋回部材
11 昇降体
11a 雄ねじ部
11c ボス部(支持部)
12 調節リング
13 フロントリテーナ
14 リアリテーナ

Claims (2)

  1. 被支持体に対して回転不能で上下動自在に保持される昇降体と、前記昇降体を昇降させる水平回転式の調節リングと、前記調節リングを上下動不能で回転自在に保持するリテーナとが備えられており、前記昇降体に、車輪が取付けられた旋回部材を水平旋回自在に取付けている一方、前記昇降体と調節リングは、調節リングの回転によって昇降体が上下動するように互いに螺合している構成であり、
    前記リテーナは、前記調節リングを囲うように配置された複数の部材に分割されていてこれら各部材は前記被支持体に固定されており、前記複数の部材からなるリテーナと前記調節リングとが互いに嵌まり合っている、
    キャスタ。
  2. 請求項1に記載したキャスタを備えている家具。
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