JP5121055B2 - スクライブ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、板ガラス等の脆性材料製の薄板ワークの表面にスクライブ線(切筋線)を刻設するスクライブ装置に係り、特に液晶ディスプレイやプラズマディスプレイあるいは有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイで使用するガラス基板の切断の際に用いるスクライブ装置に関するものである。
上記したフラットパネルディスプレイで使用するガラス基板の製作や、建築用の窓ガラスの製作には、一枚の素ガラス板から複数枚の所望のサイズのガラスパネル基板や窓ガラス用ガラス板が切り出される工程がかねてから採用されている。また近年では、薄型テレビやパソコンディスプレイにおいて、大きいサイズの画面のものが主流となってきている。また建築用のガラスにおいては、多くの太陽光の取り入れを望むユーザーが増加しており、窓ガラス用として求められるガラス基板のサイズもますます大きくなっている。そして、これに伴ってガラスメーカー等で成形および加工される素ガラス板や切り出されるガラス基板製品も、大板化が進んでいる。
上記したガラス基板製品のうち、特にフラットパネルディスプレイのガラスパネルの製造は、製造コストの低減および生効率の向上を目的として、素ガラス板から多数のガラスパネルを切り出すマルチ方式が採用されている。このためガラスメーカーでは、切り出されるガラスパネルの大型化に対応し素ガラス板をできるだけ大きくし、大型のガラスパネル用のガラス基板であっても上記マルチ方式での生産を試みている。フラットパネルディスプレイ用のガラス基板は、製品化された当初はサイズが300×400mm程度であったが、その後、370×470mm、550×650mm、680×680mm、1000×1200mm、1500×1850mm、2100×2400mm、2200×2500mm、2400×2800mm、2850×3050mm(厚み約0.7mm)のガラス基板が製作されるようになり、今後もますます大板化が進む傾向にある。
素ガラス板から所望のサイズのガラス板を切り出すには、先ず、ガラス板の一方の面にスクライブカッタ(スクライブ装置)と呼ばれるガラス板切り出し用のカッタを用いてスクライブ線と呼ばれる切込みを刻設した後、このスクライブ線を分割基準として切断が行なわれる。この折割は、ガラス板のスクライブ線が刻設された面の裏側に支持部材を配設し、そのガラス板の支持部材からの張り出し側部分に、スクライブ線が刻設された面と反対面方向に押圧力を作用させることにより、スクライブ線を境界としてガラス板を分断させるものである。
ところで、ガラス板製品については、スクライブ線の刻設、折割、洗浄、加工、搬送等の各工程で発生する切粉と呼ばれる100μm以下の微細なガラス片が問題となっている。切粉がガラス板表面に付着すると、洗浄工程を経由しても容易に除去できないことから、後の工程でガラス板表面でこすれるなどして傷を発生させてしまう。
特に液晶ディスプレイの製造工程では、ガラス板の表面にTFTと呼ばれる薄膜トランジスタ回路を形成する。このため、ガラス板表面に切粉が付着したままTFT形成工程に進んでしまうと、切粉がTFT回路を断線およびショートするなどして液晶ディスプレイ不良の原因となってしまい、莫大な損害を発生してしまう場合がある。そして、この切粉は上記した切断時に発生し、ガラス表面に付着することが最も多く、切粉の発生しない切断装置および切断方法求められている。
特に上記したフラットパネルディスプレイに用いられるガラス基板は、表面に傷が存在した場合、表示機器に用いられることができず、不良品として廃棄処分される。この際、サイズの大きい大型のガラス基板になるほど、生産に要する労力やコストが増大するため、傷による不良品の発生が製品の歩留まりに多大な影響を及ぼす。このため、ガラス基板の切断面は可能な限りクリーンな面とし、傷の発生原因となる切粉の発生を極力少なくすることが求められている。
一般的に「ガラス板切断」とは、ガラス板表面に上記スクライブ線を入れ、後の工程で、スクライブ線の両側に押圧を加えて折割り、ガラス板を2枚以上に分断する作業を意味する。ここで、「スクライブ線」とは、ガラス板の肉厚の7%〜40%程度の深さにガラス切断用の直線状に延びる溝である。
ガラス板を切断する場合、スクライブ線を深く形成するほど折割による破断が容易になる。しかしながら、このとき、スクライブ線から左右方向に延びるひび割れである水平クラックも同時に発生し、この水平クラックによってスクライブ線の両側に欠けまたは剥離等が発生すると切粉も発生しやすくなる。これとは逆に、上記カッタのガラス板表面への刃先荷重を小さくすれば、水平クラックの発生は少なくなるが、垂直クラックの深さが浅くなってしまいガラス板の折割が良好に行えず、この場合も切粉の発生が増加するばかりか、分断線が直線状にならない場合もある。
従って、ガラス板切断時に切粉発生を抑制するには、スクライブ線の刻設において、水平クラック幅をできるだけ小さくし、折割に必要な垂直クラック深さを確保することが必要になる。
従来、この種のスクライブ線を刻設するためのスクライブ装置としては、特許文献1〜3に記載されたものが知られている。これら特許文献1〜3に記載されたスクライブ装置は、いずれも、ホイールカッタの直上に加圧手段(空圧シリンダ)を配置し、加圧手段の発生する力をダイレクトにカッタに伝えて、カッタ刃先がガラス板表面に接触する際の荷重を調節している。
特開平6−345471号公報 特開2005−225730号公報 特開2007−223855号公報
しかしながら、従来のスクライブ装置では、折割に必要な垂直クラックを深く刻設しようとすると水平クラック幅が増大し、切粉を発生させてしまうという問題があった。この点について分析してみたところ、従来のスクライブ装置では、カッタの刃先荷重を微妙に調節することが極めて困難であり、刃先荷重が最適範囲から外れやすいことが、結果的に切粉の発生に繋がっていることが分かった。また、カッタやカッタを支持する部材などの自重が刃先荷重として加わることになるので、最適な刃先荷重の設定自体が難しいという問題もあった。
本発明は、上記事情を考慮し、カッタ等の自重の影響を軽減しながら、カッタの刃先荷重の微妙な調整が容易にでき、適正な刃先荷重の設定によって、切粉の発生の少ないスクライブ線の形成が可能なスクライブ装置を提供することを目的とする。
請求項1の発明のスクライブ装置は、カッタの刃先を脆性材料製のワークであるディスプレイ用ガラス基板の表面に押し付けながら、カッタとディスプレイ用ガラス基板を相対移動させることによりディスプレイ用ガラス基板の表面にスクライブ線を刻設するスクライブ装置において、長手方向中間に設けた支点を中心に揺動可能に支持され、前記支点から離れた長手方向一端側に前記カッタを備えたアームと、該アームの前記支点を挟んで前記一端側と反対の長手方向他端側に力を加える点を設定し、その点に前記アームを揺動させる方向の力を加えることで、前記アームを介して前記カッタに前記ディスプレイ用ガラス基板の表面に対する押し付け力を付与する加圧機構としての空圧シリンダと、を備え、前記支点から前記カッタまでの距離をA、前記支点から前記加圧機構により力を加える点までの距離をBとした場合、
A<B
に設定され、A:Bの比率に応じて前記押し付け力を調整可能に設けられていることを特徴としている。
請求項2の発明は、請求項1に記載のスクライブ装置であって、前記ディスプレイ用ガラス基板に対して平板上でスクライブ線を刻設することを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項2に記載のスクライブ装置であって、前記平板が定盤であることを特徴としている。
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のスクライブ装置であって、前記支点は、前記アームを上下方向に揺動可能に支持する軸であることを特徴としている。
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のスクライブ装置であって、前記アームが自身の長手方向を略水平方向に向けて上下方向揺動可能に設けられており、前記アームの前記支点を挟んだ両側のうち、前記カッタを備えた長手方向一端側の重量をWA、前記力を加える点が設定された長手方向他端側の重量をWBとした場合、前記長手方向一端側の重量WAによる前記支点の周りのモーメントMAと前記長手方向他端側の重量WBによる前記支点の周りのモーメントMBとの間に、
MA≦MB
の関係が成り立っていることを特徴としている。
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のスクライブ装置であって、前記加圧機構として空圧シリンダを設け、該空圧シリンダのロッドの先端を、前記アームの長手方向他端側に設定した力を加える点に連結したことを特徴としている。
請求項7の発明は、請求項6に記載のスクライブ装置であって、前記空圧シリンダを回動自在に支持すると共に、該空圧シリンダのロッドの先端を、前記アームの長手方向他端側に設定した力を加える点に回動自在に連結したことを特徴としている。
請求項8の発明は、請求項6または7に記載のスクライブ装置であって、前記アームが自身の長手方向を略水平方向に向けて上下方向揺動可能に設けられ、前記カッタがアームの長手方向一端側に下向きに設けられ、前記空圧シリンダがロッドを下向きにして前記アームの長手方向他端側の上側に設けられていることを特徴としている。
請求項9の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載のスクライブ装置であって、前記AとBの比率が、
A:B=1.0:1.1〜5.0
であることを特徴としている。
請求項10の発明は、請求項1〜9のいずれか1項に記載のスクライブ装置であって、前記アームの長さが50mm〜500mmの範囲に設定されていることを特徴としている。
請求項1の発明によれば、長手方向中間に設けた支点を中心にアームを揺動自在に支持し、そのアームの一端側にカッタを備え、アームの他端側に加圧機構による力を加えるようにしているので、カッタを備えた状態でアームのバランスをとることにより、カッタの刃先にかかる自重の影響を軽減することができる。また、支点の両側に力点(加圧機構により力を加える点)と作用点(カッタ)を設けているので、支点から作用点(カッタ)ま
での距離Aと支点から力点までの距離Bとの比率に応じて、加圧機構の入力値とカッタの押し付け力の関係を調整することができる。また、A<Bに設定してあるので、梃子の原理により、加圧機構側に小さな荷重変化を与えることで、カッタ側に大きな荷重変化を与えることができる。また、加圧機構側に大きな変位を与えることで、カッタ側に小さな変位を与えることができる。つまり、A≧Bの場合よりも、カッタの荷重調節の分解能を細かく設定することができるようになり、カッタの荷重(ワーク表面に対する押し付け力)を容易に微調整することが可能になる。また、カッタの自重による影響を軽減できることから、カッタがワーク表面の微妙な凹凸を乗り越えるときの応答性が高まり、その点でもカッタの荷重の精度が上がる。その結果、ワークに対する適正なカッタ荷重の調整代が広がり、スクライブ線を刻設するための最適な調整が簡単にできるようになって、切粉の発生の少ない安定したスクライブ線の刻設が可能となる。そのため、切粉のワーク表面への付着残留による不良品の発生並びに製品品質の低下を抑制することができる。特に本発明は、フラットパネルディスプレイ用のガラス板の切断工程に利用した場合に、切粉によるトラブルを大幅に低減することができる。
請求項5の発明によれば、略水平に配したアームの支点を挟んだ両側の重量による支点周りのモーメントMA、MB(カッタ側がMA、反カッタ側がMB)を「MA≦MB」の関係に設定しているので、カッタの自重の影響を無くしながら、水平搬送するワークの上面に対して、スクライブ線を安定して形成することができる。
請求項6の発明によれば、加圧機構に空圧シリンダを用い、空気圧によってカッタの荷重を設定するようにしているので、ワーク表面の微妙な凹凸を乗り越える際の急激な荷重変化を吸収しながら、カッタ荷重を適正範囲に自動調整することができる。従って、切粉の発生の少ない安定したスクライブの刻設が可能となる。
請求項7の発明によれば、空圧シリンダを回動自在に支持すると共に、空圧シリンダのロッドの先端をアーム上の力を加える点に回動自在に連結したので、アームの揺動に対し無理なく空圧シリンダの姿勢を追従させることができ、空圧シリンダによるカッタ荷重の制御の精度向上に寄与することができる。
請求項8の発明によれば、アームを略水平に支持して上下方向に揺動自在とし、カッタをアームの長手方向の一端側に下向きに設け、空圧シリンダを、ロッドを下向きにしてアームの上側に設けたので、ガラス板をコンベア上で運搬する従来のガラス切断設備にそのまま搭載することができ、大きな設備更新を必要としない。
請求項9の発明によれば、アームによる梃子の原理を最も効果的に利用することができる。例えば、B/Aが1.1より下回ると、梃子の原理による利点がほとんど得られなくなり、B/Aが5.0を上回ると、アームのサイズが大きくなり、加圧機構のサイズが大型化してしまい、実用性が薄れてしまう。なお、好ましくは、A:B=1.0:1.5〜3.5であるのがよい。
請求項10の発明によれば、実用的な範囲でスクライブ装置を容易に製作することができる。例えば、アームの長さが50mmを下回ると、カッタと加圧機構を組み合わせて構成するスクライブ装置が小型化し過ぎてしまい、製造や補修が困難になってしまう。また、アームの長さが500mmを上回ると、カッタと加圧機構を組み合わせて構成するスクライブ装置が大型化し過ぎてしまい、従来の設備に搭載することが困難になり、新たな装置を設置するなどのコストや労力が必要になってしまう。なお、アームのより最適な長さは100mm〜300mmである。
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は実施形態のスクライブ装置の側面図、図2はその要部の原理図、図3は図1のIII矢視図、図4は図1のIV矢視図である。
このスクライブ装置10は、ガラス板切断設備の1ユニットとして装備されている。メインフレーム1には水平レール2を介して水平移動フレーム3が水平移動自在に装備され、水平移動フレーム3には垂直レール4を介して昇降フレーム5が矢印Y5方向に昇降自在に装備され、昇降フレーム5に実施形態のスクライブ装置10が取り付けられている。スクライブ装置10は、定盤上に載ったガラス板Gに対して矢印X方向に相対的に走行することで、カッタ15の刃先をガラス板G(脆性材料製のワーク)の表面に押し付けて、ガラス板Gの表面にスクライブ線を刻設する。
このスクライブ装置10は、昇降フレーム5に固定された側面視C字形のベースフレーム11と、ベースフレーム11の下端位置に自身の長手方向中間に設けた支点12(軸)を中心にして上下方向揺動可能に支持されたアーム13と、アーム13上の支点12から離れた長手方向一端側13Aに備えられたホイールカッタ15と、アーム13上の支点12を挟んで一端側13Aと反対の長手方向他端側13Bに設けた連結ブラケット16にロッド21の先端が水平なピン23を介して回動可能に連結された空圧シリンダ20(加圧機構)と、を有している。
この場合、連結ブラケット16が、空圧シリンダ20がアーム13に対して力を加える点であり、図2に示すように、空圧シリンダ20はその点にアーム13を揺動させる方向の力Psを加えることで、アーム13を介してホイールカッタ15にガラス板Gの表面に対する押し付け力Pwを付与する。
カッタ15は、カッタホルダ14を介してアーム13に取り付けられている。ベースフレーム11の下端の前記支点12から離れた位置には、アーム13の一端側13Aより延長したストッパ片13Cの上下に位置して、アーム13が過度に揺動したときにストッパ片13Cに当たることで、アーム13のそれ以上の揺動を規制する食い込み調整用のネジ25がブラケット26を介して取り付けられている(図4参照)。
アーム13は、自身の長手方向を略水平方向に向けて支点12で支持されており、ホイールカッタ15はアーム13の長手方向一端側13Aの下側部分に下向きに設けられている。また、空圧シリンダ20は、ロッド21を下向きにしてアーム13の長手方向他端側13Bの上側に設けられており、図3に示すように、ベースフレーム11に水平な軸18を介して回動可能に支持されたブラケット17上に取り付けられている。
そして、空圧シリンダ20により、アーム13の他端側13Bを矢印Y1方向に引き上げることにより、アーム13を矢印Y2方向に揺動させ、ホイールカッタ15を矢印Y3方向に変位させて、ガラス板Gの表面に押し付けるようになっている。
ここでは、アーム13の前記支点12を挟んだ両側のうち、ホイールカッタ15を備えた長手方向一端側13Aの重量をWA、前記力を加える点が設定された長手方向他端側13Bの重量をWBとした場合、前記長手方向一端側13Aの重量WAによる前記支点12の周りのモーメントMAと前記長手方向他端側13Bの重量WBによる前記支点12の周りのモーメントMBとの間に、
MA≦MB … (1)
の関係が成り立っている。
また、支点12からホイールカッタ15までの距離をA、支点12から空圧シリンダ20によりアーム13に力を加える点(連結ブラケット16)までの距離をBとした場合、
A<B … (2)
となっている。特にA:B=1.0:1.1〜5.0の範囲に設定されている。
このような構成になっていることにより、次の作用効果を得ることができる。
まず、長手方向の中間に設けた支点12を中心にアーム13を揺動自在に支持し、そのアーム13の一端側13Aにホイールカッタ15を備え、アーム13の他端側に空圧シリンダ20による力を加えるようにしており、更にホイールカッタ15やカッタホルダ14等を備えた状態で、支点12の周りのアーム13のモーメントを上記(1)式のように設定しているので、ホイールカッタ15の刃先にかかる自重の影響を軽減することができる。
また、支点12の両側に力点(空圧シリンダ20により力を加える点)と作用点(ホイールカッタ15)を設けているので、支点12から作用点(ホイールカッタ15)までの距離Aと支点12から力点(空圧シリンダ20により力を加える点)までの距離Bとの比率に応じて、空圧シリンダ20への入力値とホイールカッタ15のガラス板Gへの押し付け力Pwの関係を調整することができる。
また、A<Bに設定してあるので、梃子の原理により、空圧シリンダ20側に小さな荷重変化を与えることで、ホイールカッタ15側に大きな荷重変化を与えることができる。また、空圧シリンダ20側に大きな変位を与えることで、ホイールカッタ15側に小さな変位を与えることができる。つまり、A≧Bの場合よりも、ホイールカッタ15の荷重調節の分解能を細かく設定することができるようになり、ホイールカッタ15の荷重(ガラス板Gの表面に対する押し付け力)Pwを容易に微調整することが可能になる。また、ホイールカッタ15等の自重による影響を軽減できることから、ホイールカッタ15がガラス板Gの表面の微妙な凹凸を乗り越えるときの応答性が高まり、その点でもホイールカッタ15の荷重Pwの精度が上がる。
その結果、ガラス板Gに対する適正なカッタ荷重Pwの調整代が広がり、スクライブ線を刻設するための最適な調整が簡単にできるようになって、切粉の発生の少ない安定したスクライブの刻設が可能となる。そのため、切粉のガラス板Gの表面への付着残留による不良品の発生並びに製品品質の低下を抑制することができようになる。
また、本実施形態では、加圧機構に空圧シリンダ20を用い、空気圧によってホイールカッタ15の荷重を設定するようにしているので、ガラス板Gの表面の微妙な凹凸を乗り越える際の急激な荷重変化を吸収しながら、カッタ荷重を適正範囲に自動調整することができる。従って、切粉の発生の少ない安定したスクライブの刻設が可能となる。
また、本実施形態では、空圧シリンダ20を軸18により回動自在に支持すると共に、空圧シリンダ20のロッド21の先端をアーム13側に設けた連結ブラケット16に回動自在に連結しているので、アーム13の揺動に対し無理なく空圧シリンダ20の姿勢を追従させることができ、空圧シリンダ20によるカッタ荷重の制御の精度向上に寄与することができる。
また、本実施形態では、アーム13を略水平に支持して上下方向に揺動自在とし、ホイールカッタ15をアーム13の長手方向の一端側に下向きに設け、空圧シリンダ20を、ロッド21を下向きにしてアーム13の上側に設けたので、ガラス板Gをコンベア上で運
搬する従来のガラス切断設備にそのまま搭載することができて、大きな設備更新を必要としない。
また、本実施形態によれば、AとBの比率を上述のように設定しているので、アーム13による梃子の原理を最も効果的に利用することができる。例えば、B/Aが1.1より下回ると、梃子の原理による利点がほとんど得られなくなり、B/Aが5.0を上回ると、B/Aが5.0を上回ると、アーム13のサイズが大きくなり、空圧シリンダのサイズが大型化してしまい、実用性が薄れてしまう。なお、好ましくは、A:B=1.0:1.5〜3.5であるのがよい。
また、アーム13の長さは50mm〜500mmの範囲に設定するのが望ましく、そうすることで実用的な範囲でスクライブ装置を容易に製作することができる。例えば、アーム13の長さが50mmを下回ると、ホイールカッタ15と空圧シリンダ20を組み合わせて構成するスクライブ装置が小型化し過ぎてしまい、製造や補修が困難になってしまう。また、アーム13の長さが500mmを上回ると、ホイールカッタ15と空圧シリンダ20を組み合わせて構成するスクライブ装置が大型化し過ぎてしまい、従来の設備に搭載することが困難になり、新たな装置を設置するなどのコストや労力が必要になってしまう。なお、アーム13のより最適な長さは100mm〜300mmである。
なお、本案では、切粉発生の抑制に最も適していることから、カッタとしてホイールカッタ15を用いているが、ダイヤモンドポイントガラスカッタのほか、あらゆるタイプのカッタが適用可能である。
図5は、従来式のスクライブ装置と本発明のスクライブ装置によるスクライブ線の加工性能の違いについて実験した結果を示している。ここで用いた従来式のスクライブ装置は、空圧シリンダがホイールカッタの真上にあり、ダイレクトに空圧力をカッタ荷重として加えるものであり、本発明のスクライブ装置は、上述した実施形態のスクライブ装置である。
図5のグラフにおいて、横軸はカッタ荷重(g)、縦軸はクラックの大きさ(μm)を示す。図中の4種類の特性線は、本発明のスクライブ装置による垂直クラック及び水平クラックの変化と、従来式のスクライブ装置による垂直クラック及び水平クラックの変化を示している。
従来式の場合、垂直クラックを大きくするために荷重を増加させると、800gを過ぎた時点で水平クラックが大きくなり、垂直クラックは大きくならないのに、水平クラックだけが成長してしまい、荷重が1200g当たりで剥離を生じてしまう。従って、適正な切断条件範囲としては、800g〜1000gの狭い範囲に限定される。
それに対し、本発明の実施形態によると、荷重が900gを超えた当たりから垂直クラックが徐々に成長して、1000g当たりで成長は止まり、それ以降は1600gまでそのままの状態が続く。また、水平クラックは、従来式と違い、ほとんど緩やかに成長して定常状態を続けるのみで、急激に成長する段階はない。従って、適正な切断条件範囲を1000g〜1500g当たりの広い範囲に設定できる。このように適正な荷重範囲が広くなることにより、荷重調整が容易になることで、切粉の発生を抑制することができる。
なお、本発明では、ホイールカッタ15の上部に空圧シリンダ20が存在しないので、ホールカッタ15の上部にスプリング等の緩衝部材を設置し、ガラス板Gの表面の凹凸への対応性を向上させることもできる。
また、上記実施形態では、ガラス板Gが水平に配置されている場合で、アーム13が略水平に配置され、カッタ15や空圧シリンダ13が垂直方向を向けて配置されている場合を説明したが、ガラス板が垂直に配置され、ガラス板とカッタが上下方向に相対移動する製造ラインにおいても、本発明は適用することができる。その場合は、カッタ及び空圧シリンダを水平方向に向けて配置することになる。
本発明の実施形態のスクライブ装置の側面図である。 その要部の原理図である。 図1のIII矢視図である。 図1のIV矢視図である。 従来式のスクライブ装置と本発明のスクライブ装置によるスクライブ線の加工性能の違いについて実験した結果を示すグラフである。
符号の説明
10 スクライブ装置
12 支点
13 アーム
13A 一端側
13B 他端側
15 ホイールカッタ
16 連結ブラケット(空圧シリンダがアームに力を加える点)
18 軸
20 空圧シリンダ(加圧機構)
21 ロッド
23 ピン
G ガラス板(ワーク)

Claims (10)

  1. カッタの刃先を脆性材料製のワークであるディスプレイ用ガラス基板の表面に押し付けながら、カッタとディスプレイ用ガラス基板を相対移動させることによりディスプレイ用ガラス基板の表面にスクライブ線を刻設するスクライブ装置において、
    長手方向中間に設けた支点を中心に揺動可能に支持され、前記支点から離れた長手方向一端側に前記カッタを備えたアームと、
    該アームの前記支点を挟んで前記一端側と反対の長手方向他端側に力を加える点を設定し、その点に前記アームを揺動させる方向の力を加えることで、前記アームを介して前記カッタに前記ディスプレイ用ガラス基板の表面に対する押し付け力を付与する加圧機構としての空圧シリンダと、を備え、
    前記支点から前記カッタまでの距離をA、前記支点から前記空圧シリンダにより力を加える点までの距離をBとした場合、
    A<B
    に設定され、A:Bの比率に応じて前記押し付け力を調整可能に設けられていることを特徴とするスクライブ装置。
  2. 請求項1に記載のスクライブ装置であって、
    前記ディスプレイ用ガラス基板に対して平板上でスクライブ線を刻設することを特徴とするスクライブ装置。
  3. 請求項2に記載のスクライブ装置であって、
    前記平板が定盤であることを特徴とするスクライブ装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のスクライブ装置であって、
    前記支点は、前記アームを上下方向に揺動可能に支持する軸であることを特徴とするスクライブ装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のスクライブ装置であって、
    前記アームが自身の長手方向を略水平方向に向けて上下方向揺動可能に設けられており、
    前記アームの前記支点を挟んだ両側のうち、前記カッタを備えた長手方向一端側の重量をWA、前記力を加える点が設定された長手方向他端側の重量をWBとした場合、前記長手方向一端側の重量WAによる前記支点の周りのモーメントMAと前記長手方向他端側の重量WBによる前記支点の周りのモーメントMBとの間に、
    MA≦MB
    の関係が成り立っていることを特徴とするスクライブ装置。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のスクライブ装置であって、
    前記加圧機構として空圧シリンダを設け、該空圧シリンダのロッドの先端を、前記アームの長手方向他端側に設定した力を加える点に連結したことを特徴とするスクライブ装置。
  7. 請求項6に記載のスクライブ装置であって、
    前記空圧シリンダを回動自在に支持すると共に、該空圧シリンダのロッドの先端を、前記アームの長手方向他端側に設定した力を加える点に回動自在に連結したことを特徴とするスクライブ装置。
  8. 請求項6または7に記載のスクライブ装置であって、
    前記アームが自身の長手方向を略水平方向に向けて上下方向揺動可能に設けられ、前記カッタがアームの長手方向一端側に下向きに設けられ、前記空圧シリンダがロッドを下向きにして前記アームの長手方向他端側の上側に設けられていることを特徴とするスクライブ装置。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のスクライブ装置であって、
    前記AとBの比率が、
    A:B=1.0:1.1〜5.0
    であることを特徴とするスクライブ装置。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のスクライブ装置であって、
    前記アームの長さが50mm〜500mmの範囲に設定されていることを特徴とするスクライブ装置。
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