JP5120884B2 - ラッカーゼ活性を有する新規タンパク質 - Google Patents

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Description

本発明は、ラッカーゼ活性を有する新規タンパク質に関する。特に、本発明は、アルカリ性の至適pH、熱安定性、界面活性剤安定性、キレート剤安定性、広範な基質特異性などの特徴を有する、新規な活性タンパク質に関する。
ラッカーゼ(EC1.10.3.2)は、分子酸素を電子供与体としてフェノール性化合物を酸化する銅含有酵素である。また、アスコルビン酸オキシダーゼ(EC1.10.3.3)は、分子酸素を電子供与体としてアスコルビン酸を酸化する銅含有酵素である。これらの酸化酵素は、細菌、糸状菌、担子菌等の微生物に由来するものをはじめとして、自然界に広く存在している。
ラッカーゼは、リグニン分解作用、ウルシオールやラッコール等のフェノール性化合物、p−フェニレンジアミン等の芳香族アミン、タンパク質等の酸化重合作用を有するため、例えば、毒性の強いフェノール性化合物や芳香族アミンを含む廃液の処理、パルプ製造処理等におけるリグニンの除去、衣類の洗濯時の移染防止、人工漆の製造、コンクリート混和剤の合成、ココア、コーヒーおよび紅茶の褐変処理、化粧品用メラニン製造、食品のゲル化剤、臨床検査試薬、漂白剤としての利用等、多くの産業分野への利用が期待されている。ここで、特にパルプ製造処理等におけるリグニンの除去、衣類の洗濯時の移染防止などの多くの用途では、反応pHがアルカリ性であることが望ましいが、既存のラッカーゼは酸性域に至適pHを有するものが多い。
アスコルビン酸オキシダーゼは、商業的には、食品分野でのアスコルビン酸の定量や、臨床検査分野で検体中に存在するアスコルビン酸による測定値の負誤差を防止するために、サンプル中のアスコルビン酸消去用に利用されており(非特許文献1)、特に、臨床検査分野では、最も広い市場を持つ酵素の1つとなっている。
これらの酸化酵素については、従来のものとは熱安定性や至適pHが異なる様々な種類のものが報告されているが(特許文献1〜4)、広範な基質特異性、熱安定性、界面活性剤耐性、キレート剤耐性、反応混合物中に銅の添加を必要としないなど、実用に有利な性質を複数備える酸化酵素がいまだ探索されている。また、上記の理由により、ラッカーゼに関しては、アルカリ性域の至適pHを有するものが望まれている。
例えば、特許文献1に記載のラッカーゼは熱安定性を有し、70℃にて10分間の加熱後にも活性を保持しているが、反応混合物中に銅イオンの添加を必要とし、キレート剤の存在下では失活し、また反応pHは酸性域である。特許文献2に記載のラッカーゼは、アルカリ性の至適pHを有し、60℃にて30分間の加熱に耐えるが、それ以上の温度では失活する。特許文献3に記載のラッカーゼは、85℃での加熱に耐えるが、至適pHは酸性域である。非特許文献2に記載のラッカーゼは、75℃の至適温度を有するが、反応に銅の添加を必要とし、反応pHは酸性域である。
特許文献4に記載のアスコルビン酸オキシダーゼは、60℃にて30分間の加熱により、少なくとも10%の活性の低下を生じる。
特開2002−171968号公報 特開2004−208503号公報 特開2006−158252号公報 特開平11−75848号公報 金井正光、金井泉編著、臨床検査法提要 改訂第29版、金原出版 p.436(1983) Martins,L.O.ら、J.Biol.Chem,2002,Vol.277,No.21,p.18849−18859
本発明は、広範な基質特異性、熱安定性、アルカリ性至適pH、界面活性剤耐性、キレート剤耐性、反応混合物中に銅の添加を必要としないなど、実用に有利な性質を複数備える新規ラッカーゼタンパク質を提供することを目的とする。
本発明者は、環境試料から微生物の分離培養を介さずにDNAを調製することにより作製したDNAライブラリー(メタゲノムライブラリー)をラッカーゼ活性についてスクリーニングし、得られたクローンから発現されるタンパク質が、広範な基質特異性を有し、特にアスコルビン酸オキシダーゼとしても機能し、熱安定性に優れ、アルカリ性の至適pHを有し、酵素阻害物質である界面活性剤およびキレート剤の存在下でもその活性が安定であり、反応混合物中に銅イオンの添加を必要とせずに反応を行い得ることを見出した。
すなわち、本発明は以下の特徴を有する。
(1)ラッカーゼ活性および以下の特性(1)〜(8)を有するタンパク質:
(1)サブユニット分子量:約36,000〜37,000Da(SDS−PAGE);活性体分子量:約70,000〜80,000Da(ゲル濾過)、
(2)至適pH:約8〜9、
(3)基質特異性:フェノール性化合物、複素環式化合物およびアスコルビン酸を酸化する、
(4)反応混合物中に銅を必要としない、
(5)熱安定性:80℃にて10分間の処理により、90%以上の活性が保持される、
(6)界面活性剤耐性:1%ドデシル硫酸ナトリウム存在下で、90%以上の活性が保持される、
(7)キレート剤耐性:5〜50mMエチレンジアミン四酢酸存在下で、90%以上の活性が保持される、
(8)活性に糖鎖修飾を必要としない。
(2)以下の(a)〜(d)のいずれかである、上記(1)に記載のタンパク質:
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)配列番号2のアミノ酸35−359に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質;
(c)上記(a)または(b)のタンパク質のアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失または付加を含むアミノ酸配列を含み、前記特性(1)〜(8)を有するタンパク質;
(d)上記(a)または(b)のタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記特性(1)〜(8)を有するタンパク質。
(3)化学的に修飾された、上記(1)または(2)に記載のタンパク質。
(4)上記(1)または(2)に記載のタンパク質をコードするDNA。
(5)以下の(a)〜(c):
(a)配列番号1に示される塩基配列を含むDNA、
(b)配列番号1の103−1077位に示される塩基配列を含むDNA、
(c)上記(a)または(b)のDNAの塩基配列において、1個もしくは数個のヌクレオチドの置換、欠失または付加を含む塩基配列を含むDNA、
(d)上記(a)または(b)のDNAの塩基配列と少なくとも90%の同一性を有する塩基配列を含むDNA
のいずれかである、上記(4)に記載のDNA。
(6)上記(4)または(5)に記載のDNAを含むベクター。
(7)上記(4)もしくは(5)に記載のDNAまたは上記(6)に記載のベクターを含む宿主細胞。
(8)上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載のタンパク質の製造方法であって、該タンパク質を産生し得る条件下で上記(7)に記載の宿主細胞を培養するステップ、細胞または培地から該タンパク質を回収するステップ、および場合により該タンパク質を化学修飾するステップを含む、上記方法。
本発明により、広範な基質特異性、熱安定性、アルカリ性至適pH、界面活性剤耐性、キレート剤耐性、反応混合物中に銅の添加を必要としないなど、実用に有利な性質を複数備える新規ラッカーゼタンパク質が提供され、該タンパク質は、それらの特性から、ラッカーゼまたはアスコルビン酸オキシダーゼとしての工業的な使用に有利である。
本発明は、以下の特性:
(1)サブユニット分子量:約36,000〜37,000Da(SDS−PAGE);活性体分子量:約70,000〜80,000Da(ゲル濾過)、
(2)至適pH:約8〜9、
(3)基質特異性:フェノール性化合物、複素環式化合物およびアスコルビン酸を酸化する、
(4)反応混合物中に銅を必要としない、
(5)熱安定性:80℃にて10分間の処理により、90%以上の活性が保持される、
(6)界面活性剤耐性:1%ドデシル硫酸ナトリウム存在下で、90%以上の活性が保持される、
(7)キレート剤耐性:5〜50mMエチレンジアミン四酢酸存在下で、90%以上の活性が保持される、
(8)活性に糖鎖修飾を必要としない、
を有するタンパク質に関する。
アルカリ性の至適pHを有するラッカーゼは、特にパルプ製造処理等におけるリグニンの除去、衣類の洗濯時の移染防止などの多くの用途において有用である。
広範な基質特異性、反応混合物中に銅を必要としないこと、熱安定性、界面活性剤耐性、およびキレート剤耐性は、酸化酵素の工業的使用において非常に有利な特性である。特に、従来のラッカーゼおよびアスコルビン酸オキシダーゼをはじめとする銅含有酸化酵素では、反応混合物中に銅イオンの添加を必要とすることが多いが、このことは、食品分野等での該酵素の使用を制限している。したがって、反応混合物中に銅イオンの添加を必要としない本発明の新規ラッカーゼタンパク質は、多くの分野に適用可能であり、非常に有利である。また、本発明の新規ラッカーゼタンパク質は、従来のラッカーゼ基質のみならず、アスコルビン酸に対しても強い触媒活性を有するため、種々の有利な特性を有するアスコルビン酸オキシダーゼとしても用いることができる。
酵素活性に糖鎖修飾を必要としないことは、大腸菌等の微生物宿主で産生させたタンパク質を、追加の糖鎖付加ステップを必要とせずに酵素として利用し得ることを意味する。このことは、大腸菌をはじめとする利用しやすい宿主を用いた、目的とする酵素の大量生成を可能にし、酵素の工業的利用に際しては非常に望ましい特性である。
本発明において、「90%以上の活性が保持される」とは、以下に記載の酸素消費量による酸化の測定、呈色による酸化の測定等の適切な方法により測定される基質酸化活性が、熱処理、界面活性剤添加およびキレート剤添加によっても、10%を超えて損なわれないことを意味する。
本発明のタンパク質は、いかなる生物由来のものでもよいが、好ましくは活性汚泥等の環境試料中に存在する生物に由来する。本発明のタンパク質は、複数の生物由来のゲノムDNAを含むことが予想される、そのような環境試料から抽出したDNAを用いて作製されたライブラリー(メタゲノムライブラリー)から、基質酸化活性についてのスクリーニングにより取得することができる。そのようなスクリーニングの方法は当業者に周知であるが、具体的には、例えば、環境試料由来のDNA断片をベクター中に挿入した形で含むDNAライブラリーを用いて宿主細胞を形質転換するステップ、形質転換体の培養物から得た粗タンパク質抽出物について、所望の基質酸化活性を調べるステップ、陽性と評価された形質転換体を単離し、それに含まれるベクターを取得するステップ、ベクターインサートの塩基配列からコード配列を特定し、コードされるアミノ酸配列を決定するステップ、および得られたアミノ酸配列を有するタンパク質について種々の特性を調べるステップを含む。
本発明において「基質酸化活性」とは、基質となる化合物等の酸化を触媒することができるタンパク質の酵素活性を意味する。ここで基質の酸化は、好ましくは分子酸素を電子供与体として行われる。
本発明において、「酸化酵素」とは、いわゆるマルチ銅酵素である銅含有酸化酵素を指し、ラッカーゼ等のフェノールオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼなどがこれに含まれる。これらの銅含有酸化酵素は、ポリペプチドのみのアポ体に銅イオンが結合した形にあるときに、活性を有する。
本発明の好ましい実施形態では、本発明のタンパク質は、以下の(a)〜(d):(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質;(b)配列番号2のアミノ酸35−359に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質;(c)上記(a)または(b)のタンパク質のアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失または付加を含むアミノ酸配列を含み、以下の特性:(1)サブユニット分子量:約36,000〜37,000Da(SDS−PAGE);活性体分子量:約70,000〜80,000Da(ゲル濾過)、(2)至適pH:約8〜9、(3)基質特異性:フェノール性化合物、複素環式化合物およびアスコルビン酸を酸化する、(4)反応混合物中に銅を必要としない、(5)熱安定性:80℃にて10分間の処理により、90%以上の活性が保持される、(6)界面活性剤耐性:1%ドデシル硫酸ナトリウム存在下で、90%以上の活性が保持される、(7)キレート剤耐性:5〜50mMエチレンジアミン四酢酸で、90%以上の活性が保持される、(8)活性に糖鎖修飾を必要としない、を有するタンパク質;および(d)上記(a)または(b)のタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、上記特性(1)〜(8)を有するタンパク質、のうちいずれかである。
ここで、下記実施例にも記載のとおり、配列番号2に示されるアミノ酸配列のうち、アミノ酸1−34はシグナルペプチドであると予想される。また、実施例に記載された実験により、配列番号2のアミノ酸35−359に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドのみで活性を有することが示されている。
配列番号2または配列番号2のアミノ酸35−359に示されるアミノ酸配列の改変を含む配列を含み、かつ上記の(1)〜(8)の特性を保持するタンパク質は、配列番号2または配列番号2のアミノ酸35−359に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質の「機能的変異体」と呼ぶことができる。
本発明において、「1個もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失または付加」とは、限定するものではないが、配列番号2または配列番号2のアミノ酸35−359に示されるアミノ酸配列と比較して、好ましくは1〜30個のアミノ酸の置換、欠失または付加、より好ましくは1〜20個、例えば15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、もしくは1個のアミノ酸が置換、欠失または付加されていることを意味する。アミノ酸の置換、欠失または付加には、タンパク質の折り畳みおよび/もしくは活性にあまり影響を及ぼさない保存的アミノ酸置換;典型的には1〜約30アミノ酸の欠失;アミノ末端のメチオニン残基などのN末端もしくはC末端の伸長;最大約20〜25残基までの短いリンカーペプチド;またはポリヒスチジン配列(Hisタグ)、抗原エピトープもしくは結合ドメインなどの、正味荷電もしくは別の機能を変化させることで精製を容易にする伸長を含有することができる。保存的置換の例は、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジンおよびヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸およびアスパラギン酸)、極性アミノ酸(グルタミンおよびアスパラギン)、疎水性アミノ酸(ロイシン、イソロイシンおよびバリン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシン)、ならびに小アミノ酸(グリシン、アラニン、セリン、トレオニンおよびメチオニン)の群の範囲内である。特異的な活性をほとんどの場合に変化させないアミノ酸置換は当技術分野において公知であり、例えば、Neurath,H.およびHill,R.L.,1979,The Proteins,Academic Press,New Yorkに記載されている。最もよく行われるアミノ酸の置換は、Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Tyr/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Valおよびこれらの組み合わせの逆順である。
本発明のタンパク質におけるアミノ酸の置換、欠失または付加は、酸化酵素としての触媒ドメイン、および基質結合ドメインその他の酵素活性に重要な部分以外の領域に導入されることが好ましい。そのようなドメインは、既知の酸化酵素との相同性解析から当業者が容易に決定することができる。
アミノ酸の置換、欠失または付加は、常用される技術、例えば、部位特異的突然変異誘発法(Zollerら、Nucleic aAcids Res.,1982,10,6478−6500)、変異を導入したプライマーを用いる公知のPCR法(Sambrookら、Molecular Cloning,第2版,9.47−9.58,Cold Spring Harbor Lab.Press(1989)等)より、当該アミノ酸配列をコードする塩基配列を改変することにより導入することができる。
本発明において、アミノ酸配列または塩基配列に関する「同一性」、「%同一性」は、例えば、BLAST、FASTAなどの公知のアルゴリズムを使用して決定することができる。そのような同一性の決定のための具体的な操作方法は、例えば高木利久および金久實編「ゲノムネットのデータベース利用法」第2版(1998年)、共立出版(東京、日本)に記載されている。
本発明の好ましい実施形態では、本発明の新規ラッカーゼタンパク質の機能を有する上記タンパク質は、上記の特性が保存される限り、化学的に修飾されていてもよい。化学的修飾の例としては、ポリエチレングリコールによる修飾などが挙げられる。
基質酸化活性は、例えば、基質となる化合物を1mM程度含むMcIlvaine緩衝液(pH8.5)に、測定対象のタンパク質を添加し、25℃にて反応させ、反応中の酸素消費量を測定することにより評価することができる。酸素消費量の測定は、溶存酸素計(例えば、タイテック社製ニードル式酸素計Mirox TX3)などを用いて行うことができる。また、基質としてABTS(2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸))を用いる場合には、418nmにおける吸光度の変化を測定することにより酸化活性を評価することができる。同様に、グアイアコールを基質として用いる場合には470nm、シリンガルダジンを基質として用いる場合には530nmにおける吸光度を測定することにより、酸化活性を評価することができる。
本発明は、上記の配列番号2または配列番号2のアミノ酸35−359に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質またはその機能的変異体をコードするDNAも提供する。
好ましい実施形態では、該DNAは、以下の(a)〜(d):(a)配列番号1に示される塩基配列を含むDNA;(b)配列番号1の103−1077位に示される塩基配列を含むDNA;(c)上記(a)または(b)のDNAの塩基配列において、1個もしくは数個のヌクレオチドの置換、欠失または付加を含む塩基配列を含むDNA;および(d)上記(a)または(b)のDNAの塩基配列と少なくとも90%の同一性を有する塩基配列を含むDNA、のいずれかである。
本発明のDNAは、配列番号1または配列番号1の103−1077位に示される塩基配列に対して改変を含むことができるが、少なくとも上記の本発明の新規ラッカーゼタンパク質の機能を有するタンパク質をコードする。そのような改変を含むDNAは配列番号1または配列番号1の103−1077位に示される塩基配列を含むDNAと「機能的に同等なDNA」と呼ぶことができる。
本発明におけるDNAの改変には、塩基配列の遺伝暗号の縮重によるヌクレオチドの改変が含まれる。該DNAには、例えば野生型の起源である生物種と異なる生物種において最適のコドンを、遺伝暗号の縮重に基づいて選択し含有させることができる。該変異配列は、塩基配列は相違しても該塩基配列によりコードされるアミノ酸配列は同一となるような変異を含む配列を意味する。
本発明のDNAは、DNA組換え技術、PCR技術、ハイブリダイゼーション技術、クローニング技術、部位特異的突然変異誘発技術などの公知の技術を用いて作製することができる。このような技術は、例えばSambrookら,上掲、Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,1998などに詳細に記載されており、本発明のDNAの作製のために利用しうる。
本発明の配列番号1または配列番号1の103−1077位に示される塩基配列を有するDNAと機能的に同等なDNAは、例えば、配列番号1の103−1077位に示される塩基配列からなるDNA、または連続した少なくとも30塩基、少なくとも50塩基、または少なくとも100塩基のその断片をプローブとして用いるストリンジェントな条件化でのハイブリダイゼーションによって、上記のような環境メタゲノムライブラリーなどから得ることができる。
ストリンジェントな条件とは、特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいい、低ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件が挙げられるが、高ストリンジェントな条件が好ましい。低ストリンジェントな条件とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄において、例えば42℃、5×SSC、0.1%SDSで洗浄する条件であり、好ましくは50℃、5×SSC、0.1%SDSで洗浄する条件である。高ストリンジェントな条件とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄において、例えば65℃、0.1×SSC及び0.1%SDSで洗浄する条件である。
あるいは、本発明の配列番号1または配列番号1の103−1077位に示される塩基配列を含むDNAと機能的に同等なDNAは、配列番号1または配列番号1の103−1077位に示される塩基配列全長において、種々の人為的処理、例えば部位特異的変異導入、変異剤処理によるランダム変異、制限酵素切断によるDNA断片の変異、欠失、連結等により、部分的にその配列を変化させることにより取得することもできる。
本発明はまた、配列番号1または配列番号1の103−1077位に示される塩基配列を含むDNA、またはその機能的に同等なDNAを含むベクターも提供する。本発明のベクターは、本発明のDNAを、一般的な遺伝子組み換え技術(例えば、Sambrookら、上掲)に従って適当なベクターに挿入することにより得ることができる。
本発明のDNAを挿入する適当なベクターとしては、宿主細胞中で複製可能なものであれば特に限定されないが、例えば、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322、pUC118他)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110、pC194他)、酵母由来のプラスミド(例、pSH19他)、バクテリオファージ、および動物細胞または植物細胞に感染可能な各種ウイルスが利用できる。
また、挿入した遺伝子が確実に発現されるようにするため、該遺伝子の上流に適当な発現プロモーターを接続する。使用する発現プロモーターは、宿主に応じて当業者が適宜選択すればよく、例えば宿主が大腸菌である場合には、T7プロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、λ−PLプロモーターなどが、宿主がバチルス属細菌である場合にはSPO系プロモーター等が、宿主が酵母である場合にはPHO5プロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター等が、それぞれ使用できるが、これらに限定されない。
本発明のベクターには更に、所望により、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、リボソーム結合部位、複製開始点、ターミネーター等の調節配列を挿入してもよい。
本発明はまた、上記の本発明のDNAまたはベクターを含む形質転換宿主細胞を提供する。本発明の宿主細胞からは、本発明のDNAを天然の状態で含む微生物等は排除される。
本発明の形質転換宿主細胞は、前記ベクターを、常法または各宿主に対して一般に用いられる形質転換方法に従って、本発明のタンパク質を発現し得るように宿主中に導入することにより得ることができる。
本発明のベクターの宿主細胞への導入は、限定するものではないが、例えばカルシウムイオン法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、スフェロプラスト法、マイクロインジェクション等を用いて実施することができる。
宿主としては、限定するものではないが、エシェリヒア属菌であるEscherichia coliの各種菌株、バチルス属菌であるBacillus subtilisの各種菌株、酵母としてはSaccharomyces cerevisiaeの各種菌株、さらに、動物細胞および植物細胞を含む他の真核細胞のいずれも利用することができる。
本発明の新規ラッカーゼタンパク質は、前記形質転換宿主細胞を、当業者に公知の通常の方法に従って培養し、当該培養細胞または培地から本発明のタンパク質を回収することにより製造できる。培養細胞から、当該細胞の破砕後、遠心分離等の分離操作により可溶性画分を得、この画分からポリペプチドを回収することができる。
本発明のタンパク質はまた、他のポリペプチド(例、グルタチオンSトランスフェラーゼ、プロテインAその他)との融合型タンパク質として発現させてもよい。このようにして発現させた融合型ポリペプチドは、宿主細胞での可溶性状態での発現および宿主細胞からの精製に有利であり、また、融合させた他のポリペプチド部分は、適当なプロテアーゼ(例、トロンビンなど)を用いて切り出すことができる。
本発明の新規ラッカーゼタンパク質は、慣用の精製技術を組み合わせて単離することができる。そのような技術には、硫安分画、有機溶媒処理、遠心分離、限外濾過、各種クロマトグラフィー(例えば、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー等)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、電気泳動等を含む。
また、本発明の新規ラッカーゼタンパク質は、抗原抗体反応を利用する方法等により、特異的に検出することができる。
以下に実施例を示すことにより本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
実施例1:新規ラッカーゼ遺伝子の単離および同定
(1)ラッカーゼ遺伝子のクローニング
活性汚泥から抽出したメタゲノムDNAを平均鎖長2〜3kbとなるように物理的に剪断し、T4 DNAポリメラーゼにより末端を平滑化した。次いで、得られたDNA混合物をアンピシリン耐性遺伝子を担持するプラスミドpUC118とライゲーションすることにより、環境メタゲノムライブラリーを作製した。プラスミドとのライゲーションにはT4 DNAリガーゼ(タカラバイオ社製)を使用した。このライゲーション溶液を用いて大腸菌コンピテントセルJM109を形質転換した。100μg/mLのアンピシリンを含むLB寒天プレート上での培養により、形質転換体を選択した。
大腸菌コロニーを数百個ピックアップし、100μg/mLのアンピシリンを含むLB培地1,200μL/ウェルを満たした96穴ディープウェルプレートの各ウェルに個々のコロニーを植菌し、37℃、1,400rpmにて18時間培養した。マイクロプレートを3,000rpm、20分間遠心し、上清をデンカンテーションにより除去した。菌体を180μL/ウェルの水で懸濁し、浅型のマイクロプレートに移した。菌体に10×BugBuster試薬(ノバジェン社製)を20μL/ウェル添加し、室温にて20分間穏やかに振盪した。マイクロプレートを3,000rpmにて20分間遠心し、上清150μLを別の浅型プレートに移した。この菌体抽出液10μLを20mM酢酸ナトリウム(pH4.5)、1mM ABTS(2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)、和光純薬社製)を含有する活性測定溶液90μLと混合し、室温にて反応させた。緑色を呈した2クローンを、ラッカーゼ活性を有するタンパク質を発現するクローンとして単離した。より強い発色が観察された1クローンについて、以下の実験を行って解析した。
(2)配列分析
陽性クローンが有するベクターのインサートDNAの塩基配列を解析した結果、配列番号1に示される塩基配列を有する遺伝子配列が含まれることが明らかになった。配列番号1に示される塩基配列から翻訳されるアミノ酸配列(配列番号2)は、BLAST−P検索では既知のラッカーゼタンパク質とは有意な相同性が見らなかった。このことから、得られた遺伝子が新規ラッカーゼ遺伝子であることが示唆された。
(3)シグナルペプチド予測
配列番号2に示されるアミノ酸配列について、SignalP3.0プログラムを用いてシグナルペプチド予測を行った(Improved prediction of signal peptides: SignalP 3.0. Bendtsen,J.D.,Nielsen,H.,von Heijne,G. and Brunak,S., J. Mol. Biol.,340:783−795,2004.)。ソフトウェアは開発者により提供されているオンライン使用できるサーバー上で行った(http://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP/)。
その結果、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドは、34番目と35番目のアミノ酸の間でシグナルペプチダーゼにより切断されると推定された。これにより、本発明の新規ラッカーゼタンパク質の酵素活性に必要な領域は、配列番号2のアミノ酸35−359に示される領域であることが推測された。
実施例2:組み換えタンパク質の調製
(1)DNA構築物の作製
上述のシグナルペプチド領域を除いた配列番号2のアミノ酸35−359に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドの発現構築物を、以下のようにして作製した。
まず、配列番号1の103−1077位に示される塩基配列を含む断片を増幅するために、以下の配列:
5’−ttttcatATGGCAGAGAGGGAATTTGATATGACTATTGAG−3’(配列番号3)
5’−tttttaagcttCCTCCCTGGACGACGTTGACGTTGTTC−3’(配列番号4)
を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて、実施例1で得られた陽性クローンに含まれていたプラスミドDNAを鋳型として、定法に従いPCRを行って、配列番号1の103−1077位に示される塩基配列を有するラッカーゼ遺伝子を増幅した。得られた産物を0.8%アガロースゲル電気泳動により分離して、約1kbのバンドを切り出した。PCR Purification kit(キアゲン社製)を用いてPCR産物を精製し、水で溶出した。制限酵素NdeIおよびHindIII(NEB社製)を用いてDNAを消化し、PCR Purification kit(キアゲン社製)を用いてDNA断片を精製し、水で溶出した。同様に、プラスミドpET−29b(+)をNdeIおよびHindIIIを用いて消化し、キットを用いてDNA断片を精製し、水で溶出した。これらのDNA断片溶液を等量混合し、T4 DNAリガーゼ(NEB社製)を用いてライゲーションした。ライゲーション溶液で大腸菌JM109を形質転換し、50μg/mLカナマイシンを含むLB寒天プレート上で培養することにより形質転換体を選択した。数個のコロニーをピックアップし、目的の組み換えプラスミドを有するクローンを選択し、陽性クローンからプラスミドを精製した。このプラスミドは、配列番号2のアミノ酸35−359に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドのコード配列を、該ポリペプチドのN末端に開始メチオニン残基が、またC末端にHisタグが付加された形で有する。作製されたコード配列の塩基配列を配列番号5に、アミノ酸配列を配列番号6にそれぞれ示す。
(2)タンパク質の発現および精製
上記で作製したプラスミドを用いて大腸菌BL21(DE3)を形質転換した。50μg/mLカナマイシンを含むLB寒天プレート上で培養することにより、形質転換体を選択した。それぞれ1コロニーをピックアップし、カナマイシン(50μg/mL)、オーバーナイトエクスプレス溶液1(ノバジェン社製)(製造元の使用説明書に従い使用)、硫酸銅(0.1mM)を含むLB培地1Lに植菌し、30℃にて24時間培養した。
培養後、培養物を5,000gにて5分間遠心することにより菌体を回収し、BugBuster試薬(ノバジェン社製)にて菌を溶解させ、室温にて20分間穏やかに振盪することにより、タンパク質を抽出した。次に、20,000gにて20分間遠心し、上清(粗タンパク質抽出液)を回収した。
上記の粗タンパク質抽出液から、目的のタンパク質を金属アフィニティーカラム(5mL;キアゲン社製)にて精製した。カラムを20mMリン酸ナトリウム(pH7.4)、0.5M塩化ナトリウム、25mMイミダゾール(平衡化溶液)にて平衡化し、上記粗タンパク質抽出液の全量をカラムにアプライした。100mLの平衡化溶液でカラムを洗浄後、上記平衡化溶液と、20mMリン酸ナトリウム(pH7.4)、0.5M塩化ナトリウム、500mMイミダゾール(溶出溶液)との勾配(100mLで100%平衡化溶液→100%溶出溶液)を用いてタンパク質を分離した。
溶出したタンパク質画分を、上記と同様のABTSを用いる試験によりラッカーゼ活性についてチェックし、ラッカーゼ活性を有する画分を回収した。
実施例3:SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分子量の推定
上記のカラム溶出画分のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果から、得られたラッカーゼタンパク質の分子量は約40kDaであると推定された。C末端に融合しているHisタグの推定分子量を考慮すると、本発明の新規ラッカーゼタンパク質のみの分子量は約36,000〜37,000Daであると予想される。
実施例4:ゲル濾過による分子量の推定
上記のカラム溶出画分を20mMトリス塩酸(pH8.0)、0.2M塩化ナトリウムに対して透析した。透析後のタンパク質溶液を限外濾過カラムウルトラ−15(アミコン社製)を用いて約10mg/mLまで濃縮し、ゲル濾過クロマトグラフィーカラムSuperose6(GEヘルスケア社製)を用いて分析した。20mMリン酸ナトリウム(pH7.4)、0.2M塩化ナトリウムを溶出液として用い、流速は0.6mL/分とした。分子量標準としてBROAD RANGE(バイオラッド社製)を用いた。
本発明の新規ラッカーゼタンパク質は、12.47mLのピーク位置で溶出された(推定分子量70,000〜80,000Da)。結果を図1に示す。上記で推定されたモノマーあたりの分子量を考慮すると、未変性状態では該タンパク質は二量体を形成していると考えられた。
実施例5:活性染色による分子量の推定
(1)サンプル調製
上記実施例4で透析・濃縮した精製タンパク質約10μgを、サンプルバッファー(終濃度:30%グリセロール、0.25%キシレンシアノール、0.25%ブロモフェノールブルー、1%SDS)を用いて処理し、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した。サンプル調製の際に、メルカプトエタノール添加・不添加、熱処理(99℃、10分間)あり・なしの4種類のサンプルを作製した。
(2)タンパク質染色
メルカプトエタノールを添加したサンプルについて、電気泳動後にゲルを水道水で10分間洗浄し、クーマシーブリリアントブルーを用いてタンパク質染色した。その結果、熱処理なしのサンプルでは約75kDa(本発明のタンパク質のみでの推定分子量70kDa)、熱処理ありのサンプルでは約40kDa(本発明のタンパク質のみでの推定分子量36kDa)のバンドが検出された。
(3)活性染色
一方、メルカプトエタノールを添加していないサンプルについて、電気泳動後にゲルを水道水で10分間洗浄し、McIlvaine緩衝液(pH8.5)、1mMガーリック酸を含む溶液に浸漬した。この染色では、活性型酵素の分子量を検出することができる。結果を図2に示す。その結果、熱処理ありのサンプルでは約75kDaの位置に弱いバンドが検出され、熱処理なしのサンプルでは約75kDaの位置に強いバンドが検出された。モノマーのサブユニット分子量と推定される40kDa付近には染色バンドがなく、機能分子量が約70kDaであることが示唆された。
実施例6:pH依存性
pH5.0〜9.0の範囲のMcIlvaine緩衝液、1mMグアイアコール反応液中で、5μgの精製タンパク質を用いて酸化反応を行った。酸化反応の検出は、マイクロプレートリーダーVersaMax(Molecular Devices社製)を用いた470nmにおける吸光度測定により行った。反応開始から5分間の反応速度をpHに対してプロットした。結果を図3に示す。結果から、本発明の新規ラッカーゼタンパク質がアルカリ条件で強い活性を有することが示された。
実施例7:界面活性剤耐性
界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウムの存在(1%)または不存在下で、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.4)、1mM シリンガルダジンを含む反応溶液を調製した。5μgの精製タンパク質を用いて25℃にて酸化反応を行った。酸化反応の検出は、マイクロプレートリーダーVersaMax(Molecular Devices社製)を用いた530nmにおける吸光度測定により行った。
1%ドデシル硫酸ナトリウムの存在下で、不存在の場合と比較して90%以上の活性が検出された。本発明の新規ラッカーゼタンパク質が、1%ドデシル硫酸ナトリウム存在下でも顕著な活性低下を示さなかったことから、該タンパク質は界面活性剤耐性であることが示された。
実施例8:キレート剤耐性
金属キレート剤であるエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を種々の濃度(0、5、10、20および50mM)で添加して、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.4)、1mM シリンガルダジンを含む反応溶液を調製した。5μgの精製タンパク質を用いて25℃にて酸化反応を行った。酸化反応の検出は、マイクロプレートリーダーVersaMax(Molecular Devices社製)を用いた530nmにおける吸光度測定により行った。
結果を図4に示す。5〜50mM EDTAの存在下で、EDTA不添加(0mM)の場合と比較して90%以上の活性が検出された。このことにより、本発明の新規ラッカーゼタンパク質がキレート剤耐性であることが示された。
実施例9:熱安定性
20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)、0.2M塩化ナトリウム中に精製タンパク質を1mg/mLの濃度で溶解させ、それぞれ40℃、50℃、60℃、70℃、80℃または90℃にて10分間加熱した。熱処理後の残存活性を、McIlvaine緩衝液、1mMグアイアコール反応液を用いた酸化反応により測定した。その結果、加熱処理なしの対照と比較して、40℃、50℃、60℃、70℃または80℃で処理したサンプルは同等の活性を有していた。90℃で処理したサンプルの活性は、対照と比較して85%であった。これにより、本発明の新規ラッカーゼタンパク質は、80℃、10分という加熱処理によって顕著に活性が低下せず、優れた熱安定性を有していることが示された。
実施例10:基質特異性
McIlvaine緩衝液(pH8.5)に種々の基質を終濃度1mMで添加し、精製タンパク質5μgを用いて25℃にて酸化反応を行った。
本発明の新規ラッカーゼタンパク質は、以下に示すいずれの化合物についても活性を有していた:ABTS;2,6−ジメトキシフェノール;2,6−ジメチルフェノール;2,6−tert−ブチルフェノール;ガーリック酸;シリンガルダジン;グアイアコール;o−フェニレンジアミン;ヒドロキシアントラニル酸;p−フェニレンジアミン;o−クレゾール;m−クレゾール;p−クレゾール;シリングアルデヒド;アセトシリンゴン;シナピン酸;2,5−ジヒドロキシ安息香酸;3,4−ジヒドロキシ安息香酸;1−ナフトール;アスコルビン酸;カテコール。これにより、本発明の新規ラッカーゼタンパク質が、フェノール性化合物をはじめとする広範な化合物に対して作用することが示された。特に、本発明の新規ラッカーゼタンパク質は、従来のラッカーゼの基質のみならず、以下に示すようにアスコルビン酸に対しても強い酸化活性を有し、上述のような様々な有利な特性を有するアスコルビン酸オキシダーゼでもあることが明らかになった。
また、本発明の新規ラッカーゼタンパク質は、反応混合物中への銅イオンの添加を全く必要とせず、これらの基質を酸化することができることが示された。
さらに、大腸菌で発現させ、精製したタンパク質が十分に機能し得ることから、本発明の新規ラッカーゼタンパク質は、その機能を発揮するために、ポリペプチドに対する糖鎖修飾を必要としないことが示された。
一部の化合物に対する酸化活性を、反応中の酸素消費量(μM/分)として、以下の表に示す。結果から、本発明の新規ラッカーゼタンパク質は、フェノール性化合物、複素環式化合物、およびアスコルビン酸に強く作用することが示された。
Figure 0005120884
実施例11:シグナルペプチド含有配列の発現および活性分析
上記実施例2と同様にして、配列番号1に示されるコード配列の全長を含む発現ベクターを構築した。配列番号2に示されるアミノ酸配列全長のN末端またはC末端にHisタグを付加したコード配列を含む2種類の発現ベクターを作製し、タンパク質の発現および金属アフィニティーカラムクロマトグラフィーによる精製を試みた。
配列番号2に示されるアミノ酸配列全長のN末端にHisタグを付加したコード配列を含む構築物については、上記の方法でのタンパク質発現および金属アフィニティークロマトグラフィーによる精製において、発現タンパク質がカラムに吸着していないようであった。このため、配列番号2に示されるアミノ酸配列全長のN末端に付加されたHisタグが機能しないことが考えられた。上記のとおり、配列番号2に示されるアミノ酸配列において、N末端のアミノ酸1−34はシグナルペプチド領域であると考えられるため、タンパク質の成熟過程でシグナルペプチドが切断されることにより、タグも切り離された可能性が示唆された。
配列番号2に示されるアミノ酸配列全長のC末端にHisタグを付加した全長コード配列を有する構築物から発現・精製したタンパク質は、電気泳動解析において、上記でシグナルペプチド領域を除去して作製した構築物から発現・精製されたタンパク質と同様の分子量のバンドを示した。このことから、配列番号2に示されるアミノ酸配列のうち、シグナルペプチドであると予測された部分は発現に際して切り離されたことが示唆された。
また、活性分析の結果もシグナルペプチド除去タンパク質と同様であった。
広範な基質特異性、熱安定性、アルカリ性至適pH、界面活性剤耐性およびキレート剤耐性などの、実用化のために有利な特性を有する本発明の新規ラッカーゼタンパク質は、ラッカーゼおよびアスコルビン酸オキシダーゼの工業的利用が所望される広範囲の産業分野において有利に用いることができる。
本発明の新規ラッカーゼタンパク質の、ゲル濾過による分子量の推定を表す図である。 本発明の新規ラッカーゼタンパク質が、70kDa付近の機能分子量を有することを示すSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動後のゲル染色像である。左側はタンパク質染色(クーマシーブリリアントブルー染色)であり、右側はガーリック酸を用いた活性染色である。電気泳動に用いたタンパク質にはHisタグが付加されているため、実際の分子量は図中に示された分子量よりも小さく見積もられることに留意されたい。 本発明の新規ラッカーゼタンパク質の酸化活性のpH依存性を示すプロットである。 本発明の新規ラッカーゼタンパク質の酸化活性のキレート剤耐性を表すグラフである。
配列番号1、2:環境メタゲノムライブラリーからクローニングした。
配列番号3、4:プライマー
配列番号5、6:合成構築物

Claims (8)

  1. ラッカーゼ活性および以下の特性(1)〜(8)の全てを有するタンパク質:
    (1)サブユニット分子量:約36,000〜37,000Da(SDS−PAGE);活性体分子量:約70,000〜80,000Da(ゲル濾過)、
    (2)至適pH:約8〜9、
    (3)基質特異性:フェノール性化合物、複素環式化合物およびアスコルビン酸を酸化する、
    (4)反応混合物中に銅を必要としない、
    (5)熱安定性:80℃にて10分間の処理により、90%以上の活性が保持される、
    (6)界面活性剤耐性:1%ドデシル硫酸ナトリウム存在下で、90%以上の活性が保持される、
    (7)キレート剤耐性:5〜50mMエチレンジアミン四酢酸存在下で、90%以上の活性が保持される、
    (8)活性に糖鎖修飾を必要としない。
  2. 以下の(a)〜(d)のいずれかである、請求項1に記載のタンパク質:
    (a)配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質;
    (b)配列番号2のアミノ酸35−359に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質;
    (c)上記(a)または(b)のタンパク質のアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失または付加を含むアミノ酸配列を含み、前記特性(1)〜(8)の全てを有するタンパク質;
    (d)上記(a)または(b)のタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記特性(1)〜(8)の全てを有するタンパク質。
  3. 化学的に修飾された、請求項1または2に記載のタンパク質。
  4. 請求項1または2に記載のタンパク質をコードするDNA。
  5. 以下の(a)〜():
    (a)配列番号1に示される塩基配列を含むDNA、
    (b)配列番号1の103−1077位に示される塩基配列を含むDNA、
    (c)上記(a)または(b)のDNAの塩基配列において、1個もしくは数個のヌクレオチドの置換、欠失または付加を含む塩基配列を含むDNA、
    (d)上記(a)または(b)のDNAの塩基配列と少なくとも90%の同一性を有する塩基配列を含むDNA
    のいずれかである、請求項4に記載のDNA。
  6. 請求項4または5に記載のDNAを含むベクター。
  7. 請求項4もしくは5に記載のDNAまたは請求項6に記載のベクターを含む宿主細胞。
  8. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のタンパク質の製造方法であって、該タンパク質を産生し得る条件下で請求項7に記載の宿主細胞を培養するステップ、細胞または培地から該タンパク質を回収するステップ、および場合により該タンパク質を化学修飾するステップを含む、上記方法。
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