JP5120293B2 - 燃料噴射弁 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関に燃料を噴射する燃料噴射弁に関する。
従来、コモンレールに蓄圧された高圧燃料を内燃機関の燃焼室に噴射する燃料噴射弁が知られている。例えば、図4に示す燃料噴射弁100は、噴孔101を有するノズルボディ110と、このノズルボディ110に収容されて噴孔101を開閉するノズルニードル120と、このノズルニードル120に連結された制御ピストン130と、この制御ピストン130を摺動自在に保持するシリンダ140と、このシリンダ140に対し制御ピストン130を図示下方(ノズルニードル120の閉弁方向)へ付勢するスプリング150と、シリンダ140の側壁に開口するインオリフィス160を通じて高圧燃料が供給され、その燃料圧力がノズルニードル120を閉弁方向へ付勢する背圧として制御ピストン130の端面に作用する制御室170と、シリンダ140の図示上端に配置されるオリフィスプレート180と、このオリフィスプレート180に形成されるアウトオリフィス190を開閉できる弁体200と、この弁体200の開閉動作を制御する電磁アクチュエータ210等より構成される。
電磁アクチュエータ210は、例えば、電磁コイル220への通電により電磁石を形成してアーマチャ230を吸引するソレノイド装置である。電磁コイル220への通電によりアーマチャ230が吸引されて図示上方へ移動すると、そのアーマチャ230の動きに応じて弁体200がアウトオリフィス190を開くことにより、制御室170の燃料が低圧側へ排出されて、制御ピストン130の端面に作用する背圧が低減する。電磁コイル220への通電が停止されると、スプリング240の反力でアーマチャ230が図示下方へ押し戻され、そのアーマチャ230の動きに応じて弁体200がアウトオリフィス190を閉じることで、制御室170の燃料圧力が上昇して、制御ピストン130の端面に作用する背圧が増大する。
ノズルニードル120は、制御ピストン130と一体に可動(図示上下動)し、制御室170の燃料圧力(制御ピストン130の端面に作用する背圧)の増減に応じて噴孔101を開閉する。つまり、弁体200がアウトオリフィス190を開いて制御室170の燃料圧力が低減し、ノズルニードル120を図示上方へ付勢する油圧力が開弁圧より高くなると、ノズルニードル120が制御ピストン130と一体に図示上方へリフトして、ノズルニードル120に形成されたシート部が、ノズルボディ110に形成されたシート面から離れる(開弁する)ことで、噴孔101より燃料が噴射される。
また、弁体200がアウトオリフィス190を閉じて制御室170の燃料圧力が増大し、ノズルニードル120を図示上方へ付勢する油圧力が閉弁力より低くなると、ノズルニードル120が制御ピストン130と一体に図示下方へ押し戻されて、ノズルニードル120のシート部が、ノズルボディ110のシート面に着座する(閉弁する)ことで、燃料の噴射が終了する。
ところで、噴射量を増大したい場合は、電磁コイル220への通電時間を長くする、つまり、ノズルニードル120の開弁時間を長くする必要がある。しかし、弁体200がアウトオリフィス190を開いている間は、ノズルニードル120が制御ピストン130と共にリフトを継続するため、シリンダ140と制御ピストン130との間に配設されるスプリング150の変形が許容できる範囲内でリフトを停止する機構が必要となる。
これに対し、特許文献1に記載された燃料噴射弁は、ノズルニードル120のリフト量を機械的に規制するリフトストップ機構を設けている。このリフトストップ機構は、ノズルニードル120の上端面に対向する位置にノズルリフトストッパを設けて、ノズルニードル120の開弁時(リフト時)に、ノズルニードル120の上端面がノズルリフトストッパの下端面に当接することで、それ以上のリフトを規制する構造である。
特開2001−355534号公報(図6参照)
ところが、上記の特許文献1に開示されたリフトストップ機構では、ノズルニードル120の上端面がノズルリフトストッパの下端面に衝突する際に、非常に大きな衝撃力が発生する。このため、両部品の接触面に異常摩耗が生じると、噴射を終了する際に、ノズルニードル120が下降を開始して閉弁するまでの時間が長くなり、閉弁応答性が低下する。また、ノズルニードル120とノズルリフトストッパとの接触面に生じる異常摩耗が進行して、ノズルニードル120のリフト量を所定以下に規制できなくなると、ノズルニードル120を閉弁方向へ付勢するスプリング150が変形する。つまり、スプリング150の変形が許容できる範囲内でノズルニードル120のリフト量を規制できなくなるため、安定した噴射特性が得られなくなる恐れがある。
さらには、ノズルニードル120の上端面がノズルリフトストッパの下端面に衝突する時の衝撃力により、両部品に割れや亀裂が発生する等の不具合が生じることもあり、信頼性の点でも問題がある。
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、その目的は、噴射期間中のノズルニードルの過剰なリフトを部品同士の当接によって機械的に規制するのではなく、油圧を利用してリフト量を規制することにより、部品同士の衝突による破損を防ぐことができる燃料噴射弁を提供することにある。
(請求項1の発明)
本発明は、噴孔を開閉するノズルニードルと、このノズルニードルに連結される制御ピストンと、この制御ピストンを摺動自在に保持するシリンダと、制御ピストンを介してノズルニードルを閉弁方向へ付勢するスプリングと、インオリフィスを通じて高圧燃料が供給されると共に、この燃料圧力がノズルニードルを閉弁方向へ付勢する背圧として制御ピストンに作用する制御室と、制御ピストンの反噴孔側の端面と対向して配置され、且つ、制御室に通じるアウトオリフィスが形成されたオリフィスプレートと、アウトオリフィスを開閉するオリフィス開閉手段とを備え、噴射の開始および終了に応じてアウトオリフィスを開閉することにより、制御室の燃料圧力(背圧)を増減させて、ノズルニードルにより噴孔を開閉する燃料噴射弁であって、制御ピストン、または、制御ピストンとシリンダには、ノズルニードルが所定量以上リフトした時に、インオリフィスをバイパスして高圧燃料を制御室に供給するバイパス油圧回路が形成されることを特徴とする。
本発明の燃料噴射弁は、アウトオリフィスを開くと、制御室の燃料圧力が低圧側へ排出されて、制御ピストンの端面に作用する背圧が低減する。これにより、ノズルニードルをリフト方向(開弁方向)へ付勢する油圧力が開弁圧より高くなると、ノズルニードルが制御ピストンと一体にリフト(開弁)して、噴孔より燃料が噴射される。
ここで、ノズルニードルが所定量以上リフトすると、バイパス油圧回路が形成されるため、このバイパス油圧回路を通って高圧燃料が制御室に供給される。これにより、制御室の燃料圧力が上昇して、制御ピストンに下降力が発生する。その結果、ノズルニードルと制御ピストンに掛かるリフト方向の油圧力と、ノズルニードルと制御ピストンに掛かる反リフト方向(閉弁方向)の油圧力+スプリング力との釣り合いにより、制御ピストンは、アウトオリフィスが形成されるオリフィスプレートに当接することなく静止することが可能である。
仮に、制御ピストンがオリフィスプレートに当接して停止する場合でも、制御ピストンの上昇速度が抑えられるため、当接時の衝撃を小さくできる。
なお、ノズルニードルが所定量以上リフトしてバイパス油圧回路が形成された時に、必ずしも制御室の燃料圧力が上昇する必要はなく、制御室の圧力降下を抑制できれば良い。つまり、バイパス油圧回路を持たない従来の燃料噴射弁と比較して、制御室の圧力降下が緩やかに行われることで、制御ピストンがオリフィスプレートに当接した時の衝撃を小さくできる効果はある。
(請求項2の発明)
請求項1に記載した燃料噴射弁において、シリンダは、制御ピストンを摺動自在に保持する摺動孔を形成し、制御ピストンは、シリンダの摺動孔に保持される摺動部を有すると共に、この摺動部の内部を通る燃料通路が形成され、この燃料通路の一端が、シリンダの摺動孔から反制御室側へ延びる制御ピストンの外周面に開口して高圧側に常時連通し、燃料通路の他端が、摺動部の外周面に開口して、ノズルニードルが所定量以上リフトした時に、シリンダの摺動孔から抜け出て制御室に連通することによりバイパス油圧回路が形成されることを特徴とする。
上記の構成によれば、ノズルニードルが所定量以上リフトした時にのみ、制御ピストンに形成された燃料通路をバイパス油圧回路として使用できる。つまり、ノズルニードルの静止時(閉弁時)およびリフト量が所定量に達していない時は、制御ピストンに形成された燃料通路の他端が制御室に通じることはなく、摺動孔の内周面によって塞がれているため、バイパス油圧回路が形成されることはない。これにより、噴射を開始する際に、ノズルニードルのリフト量が所定量に達していない間は、バイパス油圧回路を通って制御室へ高圧燃料が供給されることはないので、開弁時の応答性が損なわれることはなく、安定した噴射特性を維持できる。
(請求項3の発明)
請求項1に記載した燃料噴射弁において、シリンダは、制御ピストンを摺動自在に保持する摺動孔を形成すると共に、その摺動孔の外周壁を貫通して高圧側に常時連通する連通孔が形成され、制御ピストンは、シリンダの摺動孔に保持される摺動部を有すると共に、この摺動部の内部を通る燃料通路が形成され、この燃料通路の一端が、ノズルニードルの閉弁時に、連通孔が形成された位置より反制御室側の摺動孔に保持される摺動部の外周面に開口し、燃料通路の他端が、制御ピストンの端面に開口して制御室に常時連通し、ノズルニードルが所定量以上リフトした時に、燃料通路の一端が連通孔に連通してバイパス油圧回路が形成されることを特徴とする。
上記の構成によれば、ノズルニードルが所定量以上リフトした時にのみ、制御ピストンに形成された燃料通路をバイパス油圧回路として使用できる。つまり、ノズルニードルの静止時(閉弁時)およびリフト量が所定量に達していない時は、制御ピストンに形成された燃料通路の一端が高圧側に通じることはなく、摺動孔の内周面によって塞がれているため、バイパス油圧回路が形成されることはない。これにより、噴射を開始する際に、ノズルニードルのリフト量が所定量に達していない間は、バイパス油圧回路を通って制御室へ高圧燃料が供給されることはないので、開弁時の応答性が損なわれることはなく、安定した噴射特性を維持できる。
(請求項4の発明)
請求項1〜3に記載した何れかの燃料噴射弁において、ノズルニードルが所定量以上リフトした時に、インオリフィスおよびバイパス油圧回路を通って制御室に供給される燃料流量は、制御室からアウタオリフィスを通って排出される燃料流量以上であることを特徴とする。
上記の構成によれば、ノズルニードルが所定量以上リフトしてバイパス油圧回路が形成された時に、アウトオリフィスから流出する燃料流量以上の燃料流量がインオリフィスおよびバイパス油圧回路を通って制御室へ流入するため、制御室の燃料圧力が上昇して、制御ピストンに下降力が発生する。これにより、制御ピストンは、オリフィスプレートに当接することなく静止することが可能である。仮に、制御ピストンがオリフィスプレートに当接して停止する場合でも、制御室の圧力上昇によって制御ピストンの上昇速度が抑えられるため、当接時の衝撃を小さくでき、衝突による破損を防ぐことができる。
燃料噴射弁の断面図である(実施例1)。 本発明に係る要部を示す断面図である(実施例1)。 本発明に係る要部を示す断面図である(実施例2)。 従来技術に係る燃料噴射弁の断面図である。
本発明を実施するための最良の形態を以下の実施例により詳細に説明する。
実施例1では、本発明の燃料噴射弁を、ディーゼル機関のコモンレール式燃料噴射システムに適用した一例を説明する。
燃料噴射弁1は、コモンレール(図示せず)に蓄圧された高圧燃料をエンジンの各気筒に噴射するもので、図1に示す様に、噴射弁本体2と、この噴射弁本体2の図示下端に取り付けられる噴射ノズル3と、噴射弁本体2の図示上部に取り付けられる電磁弁4等より構成される。
噴射弁本体2は、弁ボディ5と、この弁ボディ5の内部に組み込まれるシリンダ6、制御ピストン7、スプリング8等を備える。
弁ボディ5には、コモンレールより供給される高圧燃料を導入する燃料導入路9と、この燃料導入路9に連通して弁ボディ5の内部を図示上下方向に貫通する貫通孔10と、燃料噴射システムの低圧側に通じる燃料排出路11等が形成されている。また、貫通孔10の一端が開口する弁ボディ5の図示上端には、オリフィスプレート12が配設されている。このオリフィスプレート12には、後述する制御室13の燃料圧力を低圧側へ開放するためのアウトオリフィス14が形成されている。
シリンダ6は、貫通孔10の上部内周にクリアランスを有して挿入され、スプリング8の反力により、シリンダ6の上端面がオリフィスプレート12の下端面に押し付けられて液密に当接している。このシリンダ6は、図2に示す様に、図示下側に内径が小さい円筒孔を形成し、図示上側に内径が大きい円筒孔を形成すると共に、この内径が大きい円筒孔の外周壁にインオリフィス15が形成されている。
制御ピストン7は、図2に示す様に、シリンダ6の内周に挿入されて、内径が小さい円筒孔(以下、摺動孔6aと呼ぶ)の内周に摺動自在に保持される摺動部7aと、この摺動部7aより外径が小さく形成され、且つ、摺動部7aの図示上側に形成されるピストン頭部7bと、摺動部7aより外径が小さく形成され、且つ、摺動部7aの図示下側に形成される細軸部7cと、この細軸部7cより外径が大きく形成され、貫通孔10の略下端まで延びているピストン軸部7dなどが設けられている。
スプリング8は、シリンダ6の図示下端面と、制御ピストン7の細軸部7cとピストン軸部7dとの間に形成される段差との間に反力を蓄えた状態で配設されている。
なお、上記の制御室13は、シリンダ6の内径が大きい円筒孔と、オリフィスプレート12と、シリンダ6の摺動孔6aから突き出る制御ピストン7とで区画された空間であり、インオリフィス15を通じて高圧燃料が常時供給される。
噴射ノズル3は、先端部に噴孔16aを有するノズルボディ16と、このノズルボディ16の内部に収容されて噴孔16aを開閉するノズルニードル17とで構成され、リテーニングナット18により噴射弁本体2に固定されている。
ノズルボディ16には、ノズルニードル17を収容するガイド孔が穿設され、このガイド孔の先端部に円錐状のシート面が形成されている。
ノズルニードル17は、ガイド孔の内周に摺動自在に保持されるニードルガイド部17aと、このニードルガイド部17aより図示下方へ延びるニードル軸部17bとを有し、このニードル軸部17bの先端部にシート部が形成されている。ニードル軸部17bは、ガイド孔の内周にクリアランスを持って挿入され、ニードルガイド部17aには、噴射弁本体2より供給される高圧燃料を上記クリアランスへ供給するための燃料供給通路19が形成されている。
このノズルニードル17は、ジョイント20を介して制御ピストン7に連結され、制御室13の燃料圧力(制御ピストン7の端面に作用する背圧)の増減に応じて噴孔16aを開閉する。つまり、制御室13の燃料圧力が低減して、ノズルニードル17をリフト方向(開弁方向)へ付勢する油圧力が開弁圧より高くなると、ノズルニードル17が制御ピストン7と一体にリフトして開弁する(シート部がシート面から離れる)ことにより、噴孔16aより燃料が噴射される。
一方、制御室13の燃料圧力が増大して、ノズルニードル17をリフト方向へ付勢する油圧力が閉弁力より低くなると、ノズルニードル17が制御ピストン7と一体に押し戻されて閉弁する(シート部がシート面に着座する)ことにより、燃料の噴射が終了する。
電磁弁4は、アウトオリフィス14を開閉できる弁体21と、この弁体21の開閉動作を制御するソレノイド装置(以下に説明する)により構成され、リテーニングナット22により噴射弁本体2に固定されている。ソレノイド装置は、外部のECU(図示せず)により通電制御される電磁コイル23と、この電磁コイル23への通電によって磁化されるステータ24と、このステータ24に対向して可動するアーマチャ25と、このアーマチャ25を反ステータ方向(図示下方)へ付勢するスプリング26等より構成される。
この電磁弁4は、電磁コイル23に通電されると、磁化されたステータ24にアーマチャ25が吸引されて図示上方へ移動することにより、制御室13の燃料圧力に弁体21が押圧されてアウトオリフィス14を開く。一方、電磁コイル23への通電が停止されると、電磁石の吸引力が失われるため、スプリング26によりアーマチャ25が押し戻されて、弁体21がアウトオリフィス14を閉じる。
ここで、本発明に係るバイパス油圧回路について説明する。
制御ピストン7には、図2に示す様に、摺動部7aと細軸部7cの内部を通る燃料通路27が形成されている。この燃料通路27は、摺動部7aと細軸部7cの内部を斜めに貫通して形成され、一端が細軸部7cの外周面に開口し、他端が摺動部7aの外周面に開口している。細軸部7cの外周面に開口する燃料通路27の一端は、弁ボディ5の貫通孔10に常時連通している。一方、摺動部7aの外周面に開口する燃料通路27の他端は、ノズルニードル17のリフト量が所定量に達するまでは、図2(a)、(b)に示す様に、シリンダ6に形成される摺動孔6aの内周面によって塞がれている。
従って、ノズルニードル17のリフト量が所定量に達するまでは、燃料通路27を通じて高圧側と制御室13とが連通することはない。なお、図2は、ノズルニードル17のリフト量に対するシリンダ6と制御ピストン7との位置関係を示すもので、同図(a)は、ノズルニードル17の閉弁時(リフト量=0)、同図(b)は、リフト量が小さい時(リフト量が所定量に達していない時)に相当する。
ノズルニードル17のリフト量が所定量以上になると、図2(c)に示す様に、摺動部7aの外周面に開口する燃料通路27の他端が、摺動孔6aから抜け出て制御室13に通じることにより、燃料通路27により高圧側と制御室13とを連通するバイパス油圧回路が形成される。
次に、燃料噴射弁1の作動を説明する。
電磁コイル23への通電が停止されている状態では、弁体21がアウトオリフィス14を閉じているので、制御室13の燃料圧力は高圧に保たれている。これにより、ノズルニードル17と制御ピストン7に掛かるリフト方向の油圧力より、ノズルニードル17を反リフト方向へ付勢する力(ノズルニードル17と制御ピストン7に掛かる反リフト方向の油圧力+スプリング8の反力)の方が大きくなる。その結果、ノズルニードル17が閉弁状態を維持するため、噴孔16aより燃料が噴射されることはない。
一方、電磁コイル23に通電されると、弁体21がアウトオリフィス14を開くことで、インオリフィス15を通じて制御室13へ流入する燃料流量より、制御室13からアウトオリフィス14を通じて流出する燃料流量の方が多くなる。その結果、制御室13の圧力が低下するため、ノズルニードル17をリフト方向へ付勢する油圧力が開弁圧より高くなった時点で、ノズルニードル17がリフトして開弁することにより、噴孔16aから燃料が噴射される。
ノズルニードル17のリフト量が所定量以上になると、図2(c)に示す様に、制御ピストン7に形成された燃料通路27により高圧側と制御室13とが連通してバイパス油圧回路が形成される。その結果、インオリフィス15を通じて制御室13へ流入する燃料とは別に、バイパス油圧回路(燃料通路27)からも制御室13へ燃料が供給される。これにより、制御室13の圧力が上昇し、制御ピストン7に下降力が発生する。この制御ピストン7に働く下降力は、ノズルニードル17のリフト量が増大すると共に増加する。これは、リフト量が大きくなるに連れて、制御室13に連通する燃料通路27の開口面積が次第に増大し、バイパス油圧回路を通って制御室13へ流入する燃料流量が増加するためである。これにより、ノズルニードル17と制御ピストン7に掛かるリフト方向の油圧力と、ノズルニードル17と制御ピストン7に掛かる反リフト方向の油圧力+スプリング力との釣り合いにより、制御ピストン7は、オリフィスプレート12に当接することなく静止する。
(実施例1の効果)
本実施例の燃料噴射弁1は、ノズルニードル17が所定量以上リフトした時にバイパス油圧回路が形成され、このバイパス油圧回路(燃料通路27)を通って制御室13に高圧燃料が供給されることで、制御ピストン7に下降力が働くため、噴射期間中のノズルニードル17の過剰なリフトを抑制できる。これにより、制御ピストン7の端面(ピストン頭部7bの上端面)がオリフィスプレート12の下端面に当接することなく静止するので、両部品の衝突による破損(割れや亀裂の発生等)を未然に防止できる。なお、制御ピストン7の端面がオリフィスプレート12の下端面に当接して停止する場合でも、制御室13の圧力上昇によって制御ピストン7の上昇速度が抑えられるため、当接時の衝撃を小さくできるので、両部品の異常摩耗を防ぐことができる。
また、バイパス油圧回路は、ノズルニードル17が所定量以上リフトした時にのみ形成される。つまり、図2(a)、(b)に示した様に、ノズルニードル17の静止時(閉弁時)およびリフト量が所定量に達していない時は、制御ピストン7に形成された燃料通路27の他端が制御室13に通じることはなく、摺動孔6aの内周面によって塞がれているため、バイパス油圧回路が形成されることはない。これにより、噴射を開始する際に、ノズルニードル17のリフト量が所定量に達していない間は、バイパス油圧回路を通って制御室13へ高圧燃料が供給されることはないので、開弁時の応答性が損なわれることはなく、安定した噴射特性を維持できる。
この実施例2は、バイパス油圧回路の構成が実施例1とは異なり、その相違点について説明する。なお、バイパス油圧回路の構成以外は、実施例1と共通である。
実施例2に示すシリンダ6は、図3に示す様に、図示上端から下端まで円筒孔の内径が同一寸法で形成されている。つまり、実施例1で説明した摺動孔6aの内径と制御室13の内径とが同一寸法によって形成されている。また、シリンダ6には、実施例1と同じく、制御室13に通じるインオリフィス15が形成され、このインオリフィス15より図示下方には、シリンダ6の外周壁(摺動孔6aを形成している部分の外周壁)を貫通して高圧側に常時連通する連通孔28が設けられている。
制御ピストン7には、ピストン頭部7bと摺動部7aの内部を通る燃料通路27が形成されている。この燃料通路27は、ピストン頭部7bと摺動部7aの径方向中央部を軸心方向に穿設された縦孔27aと、この縦孔27aに連通して摺動部7aの半径方向に穿設された横孔27bとで構成される。この縦孔27aと横孔27bとで構成される燃料通路27の一端(横孔27bの開口端)は、図3に示す様に、摺動部7aの外周面に開口し、燃料通路27の他端(縦孔27aの開口端)は、ピストン頭部7bの上端面に開口して制御室13に常時連通している。但し、燃料通路27の一端は、図3(a)、(b)に示す様に、ノズルニードル17のリフト量が所定量に達するまでは、シリンダ6に形成された連通孔28に通じることはなく、連通孔28より反リフト方向(図示下方)に位置している。
なお、図3は、ノズルニードル17のリフト量に対するシリンダ6と制御ピストン7との位置関係を示すもので、同図(a)は、ノズルニードル17の閉弁時(リフト量=0)、同図(b)は、リフト量が小さい時(リフト量が所定量に達していない時)に相当する。ノズルニードル17のリフト量が所定量以上になると、図3(c)に示す様に、摺動部7aの外周面に開口する燃料通路27の他端が、シリンダ6の連通孔28に通じることにより、その連通孔28と燃料通路27とで高圧側と制御室13とを連通するバイパス油圧回路が形成される。これにより、実施例1と同様に、バイパス油圧回路を通って制御室13に高圧燃料が供給され、制御ピストン7に下降力が働くため、噴射期間中のノズルニードル17の過剰なリフトを抑制できる。その結果、制御ピストン7の端面がオリフィスプレート12の下端面に当接することなく静止するので、両部品の衝突による破損(割れや亀裂の発生等)を未然に防止できる。
なお、この実施例2では、シリンダ6に形成される円筒孔の内径が上端から下端まで同一寸法であるが、実施例1と同じく、内径が異なる段付き状の円筒孔であっても良い。つまり、制御室13の内径を摺動孔6aの内径より大きく形成しても良い。
1 燃料噴射弁
4 電磁弁(オリフィス開閉手段)
6 シリンダ
6a 摺動孔
7 制御ピストン
7a 制御ピストンの摺動部
7d 制御ピストンのピストン軸部
8 スプリング
12 オリフィスプレート
13 制御室
14 アウトオリフィス
15 インオリフィス
16a 噴孔
17 ノズルニードル
27 制御ピストンに形成された燃料通路
28 シリンダに形成された連通孔

Claims (4)

  1. 噴孔を開閉するノズルニードルと、
    このノズルニードルに連結される制御ピストンと、
    この制御ピストンを摺動自在に保持するシリンダと、
    前記制御ピストンを介して前記ノズルニードルを閉弁方向へ付勢するスプリングと、
    インオリフィスを通じて高圧燃料が供給されると共に、この燃料圧力が前記ノズルニードルを閉弁方向へ付勢する背圧として前記制御ピストンに作用する制御室と、
    前記制御ピストンの反噴孔側の端面と対向して配置され、且つ、前記制御室に通じるアウトオリフィスが形成されたオリフィスプレートと、
    前記アウトオリフィスを開閉するオリフィス開閉手段とを備え、
    噴射の開始および終了に応じて前記アウトオリフィスを開閉することにより、前記制御室の燃料圧力(前記背圧)を増減させて、前記ノズルニードルにより前記噴孔を開閉する燃料噴射弁であって、
    前記制御ピストン、または、前記制御ピストンと前記シリンダには、前記ノズルニードルが所定量以上リフトした時に、前記インオリフィスをバイパスして高圧燃料を前記制御室に供給するバイパス油圧回路が形成されることを特徴とする燃料噴射弁。
  2. 請求項1に記載した燃料噴射弁において、
    前記シリンダは、前記制御ピストンを摺動自在に保持する摺動孔を形成し、
    前記制御ピストンは、前記シリンダの摺動孔に保持される摺動部を有すると共に、この摺動部の内部を通る燃料通路が形成され、
    この燃料通路の一端が、前記シリンダの摺動孔から反制御室側へ延びる前記制御ピストンの外周面に開口して高圧側に常時連通し、前記燃料通路の他端が、前記摺動部の外周面に開口して、前記ノズルニードルが所定量以上リフトした時に、前記シリンダの摺動孔から抜け出て前記制御室に連通することにより前記バイパス油圧回路が形成されることを特徴とする燃料噴射弁。
  3. 請求項1に記載した燃料噴射弁において、
    前記シリンダは、前記制御ピストンを摺動自在に保持する摺動孔を形成すると共に、その摺動孔の外周壁を貫通して高圧側に常時連通する連通孔が形成され、
    前記制御ピストンは、前記シリンダの摺動孔に保持される摺動部を有すると共に、この摺動部の内部を通る燃料通路が形成され、
    この燃料通路の一端が、前記ノズルニードルの閉弁時に、前記連通孔が形成された位置より反制御室側の前記摺動孔に保持される前記摺動部の外周面に開口し、前記燃料通路の他端が、前記制御ピストンの端面に開口して前記制御室に常時連通し、前記ノズルニードルが所定量以上リフトした時に、前記燃料通路の一端が前記連通孔に連通して前記バイパス油圧回路が形成されることを特徴とする燃料噴射弁。
  4. 請求項1〜3に記載した何れかの燃料噴射弁において、
    前記ノズルニードルが所定量以上リフトした時に、前記インオリフィスおよび前記バイパス油圧回路を通って前記制御室に供給される燃料流量は、前記制御室から前記アウタオリフィスを通って排出される燃料流量以上であることを特徴とする燃料噴射弁。
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