JP5120293B2 - 燃料噴射弁 - Google Patents
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また、弁体200がアウトオリフィス190を閉じて制御室170の燃料圧力が増大し、ノズルニードル120を図示上方へ付勢する油圧力が閉弁力より低くなると、ノズルニードル120が制御ピストン130と一体に図示下方へ押し戻されて、ノズルニードル120のシート部が、ノズルボディ110のシート面に着座する(閉弁する)ことで、燃料の噴射が終了する。
これに対し、特許文献1に記載された燃料噴射弁は、ノズルニードル120のリフト量を機械的に規制するリフトストップ機構を設けている。このリフトストップ機構は、ノズルニードル120の上端面に対向する位置にノズルリフトストッパを設けて、ノズルニードル120の開弁時(リフト時)に、ノズルニードル120の上端面がノズルリフトストッパの下端面に当接することで、それ以上のリフトを規制する構造である。
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、その目的は、噴射期間中のノズルニードルの過剰なリフトを部品同士の当接によって機械的に規制するのではなく、油圧を利用してリフト量を規制することにより、部品同士の衝突による破損を防ぐことができる燃料噴射弁を提供することにある。
本発明は、噴孔を開閉するノズルニードルと、このノズルニードルに連結される制御ピストンと、この制御ピストンを摺動自在に保持するシリンダと、制御ピストンを介してノズルニードルを閉弁方向へ付勢するスプリングと、インオリフィスを通じて高圧燃料が供給されると共に、この燃料圧力がノズルニードルを閉弁方向へ付勢する背圧として制御ピストンに作用する制御室と、制御ピストンの反噴孔側の端面と対向して配置され、且つ、制御室に通じるアウトオリフィスが形成されたオリフィスプレートと、アウトオリフィスを開閉するオリフィス開閉手段とを備え、噴射の開始および終了に応じてアウトオリフィスを開閉することにより、制御室の燃料圧力(背圧)を増減させて、ノズルニードルにより噴孔を開閉する燃料噴射弁であって、制御ピストン、または、制御ピストンとシリンダには、ノズルニードルが所定量以上リフトした時に、インオリフィスをバイパスして高圧燃料を制御室に供給するバイパス油圧回路が形成されることを特徴とする。
ここで、ノズルニードルが所定量以上リフトすると、バイパス油圧回路が形成されるため、このバイパス油圧回路を通って高圧燃料が制御室に供給される。これにより、制御室の燃料圧力が上昇して、制御ピストンに下降力が発生する。その結果、ノズルニードルと制御ピストンに掛かるリフト方向の油圧力と、ノズルニードルと制御ピストンに掛かる反リフト方向(閉弁方向)の油圧力+スプリング力との釣り合いにより、制御ピストンは、アウトオリフィスが形成されるオリフィスプレートに当接することなく静止することが可能である。
なお、ノズルニードルが所定量以上リフトしてバイパス油圧回路が形成された時に、必ずしも制御室の燃料圧力が上昇する必要はなく、制御室の圧力降下を抑制できれば良い。つまり、バイパス油圧回路を持たない従来の燃料噴射弁と比較して、制御室の圧力降下が緩やかに行われることで、制御ピストンがオリフィスプレートに当接した時の衝撃を小さくできる効果はある。
請求項1に記載した燃料噴射弁において、シリンダは、制御ピストンを摺動自在に保持する摺動孔を形成し、制御ピストンは、シリンダの摺動孔に保持される摺動部を有すると共に、この摺動部の内部を通る燃料通路が形成され、この燃料通路の一端が、シリンダの摺動孔から反制御室側へ延びる制御ピストンの外周面に開口して高圧側に常時連通し、燃料通路の他端が、摺動部の外周面に開口して、ノズルニードルが所定量以上リフトした時に、シリンダの摺動孔から抜け出て制御室に連通することによりバイパス油圧回路が形成されることを特徴とする。
請求項1に記載した燃料噴射弁において、シリンダは、制御ピストンを摺動自在に保持する摺動孔を形成すると共に、その摺動孔の外周壁を貫通して高圧側に常時連通する連通孔が形成され、制御ピストンは、シリンダの摺動孔に保持される摺動部を有すると共に、この摺動部の内部を通る燃料通路が形成され、この燃料通路の一端が、ノズルニードルの閉弁時に、連通孔が形成された位置より反制御室側の摺動孔に保持される摺動部の外周面に開口し、燃料通路の他端が、制御ピストンの端面に開口して制御室に常時連通し、ノズルニードルが所定量以上リフトした時に、燃料通路の一端が連通孔に連通してバイパス油圧回路が形成されることを特徴とする。
請求項1〜3に記載した何れかの燃料噴射弁において、ノズルニードルが所定量以上リフトした時に、インオリフィスおよびバイパス油圧回路を通って制御室に供給される燃料流量は、制御室からアウタオリフィスを通って排出される燃料流量以上であることを特徴とする。
上記の構成によれば、ノズルニードルが所定量以上リフトしてバイパス油圧回路が形成された時に、アウトオリフィスから流出する燃料流量以上の燃料流量がインオリフィスおよびバイパス油圧回路を通って制御室へ流入するため、制御室の燃料圧力が上昇して、制御ピストンに下降力が発生する。これにより、制御ピストンは、オリフィスプレートに当接することなく静止することが可能である。仮に、制御ピストンがオリフィスプレートに当接して停止する場合でも、制御室の圧力上昇によって制御ピストンの上昇速度が抑えられるため、当接時の衝撃を小さくでき、衝突による破損を防ぐことができる。
燃料噴射弁1は、コモンレール(図示せず)に蓄圧された高圧燃料をエンジンの各気筒に噴射するもので、図1に示す様に、噴射弁本体2と、この噴射弁本体2の図示下端に取り付けられる噴射ノズル3と、噴射弁本体2の図示上部に取り付けられる電磁弁4等より構成される。
噴射弁本体2は、弁ボディ5と、この弁ボディ5の内部に組み込まれるシリンダ6、制御ピストン7、スプリング8等を備える。
シリンダ6は、貫通孔10の上部内周にクリアランスを有して挿入され、スプリング8の反力により、シリンダ6の上端面がオリフィスプレート12の下端面に押し付けられて液密に当接している。このシリンダ6は、図2に示す様に、図示下側に内径が小さい円筒孔を形成し、図示上側に内径が大きい円筒孔を形成すると共に、この内径が大きい円筒孔の外周壁にインオリフィス15が形成されている。
スプリング8は、シリンダ6の図示下端面と、制御ピストン7の細軸部7cとピストン軸部7dとの間に形成される段差との間に反力を蓄えた状態で配設されている。
なお、上記の制御室13は、シリンダ6の内径が大きい円筒孔と、オリフィスプレート12と、シリンダ6の摺動孔6aから突き出る制御ピストン7とで区画された空間であり、インオリフィス15を通じて高圧燃料が常時供給される。
ノズルボディ16には、ノズルニードル17を収容するガイド孔が穿設され、このガイド孔の先端部に円錐状のシート面が形成されている。
ノズルニードル17は、ガイド孔の内周に摺動自在に保持されるニードルガイド部17aと、このニードルガイド部17aより図示下方へ延びるニードル軸部17bとを有し、このニードル軸部17bの先端部にシート部が形成されている。ニードル軸部17bは、ガイド孔の内周にクリアランスを持って挿入され、ニードルガイド部17aには、噴射弁本体2より供給される高圧燃料を上記クリアランスへ供給するための燃料供給通路19が形成されている。
一方、制御室13の燃料圧力が増大して、ノズルニードル17をリフト方向へ付勢する油圧力が閉弁力より低くなると、ノズルニードル17が制御ピストン7と一体に押し戻されて閉弁する(シート部がシート面に着座する)ことにより、燃料の噴射が終了する。
この電磁弁4は、電磁コイル23に通電されると、磁化されたステータ24にアーマチャ25が吸引されて図示上方へ移動することにより、制御室13の燃料圧力に弁体21が押圧されてアウトオリフィス14を開く。一方、電磁コイル23への通電が停止されると、電磁石の吸引力が失われるため、スプリング26によりアーマチャ25が押し戻されて、弁体21がアウトオリフィス14を閉じる。
制御ピストン7には、図2に示す様に、摺動部7aと細軸部7cの内部を通る燃料通路27が形成されている。この燃料通路27は、摺動部7aと細軸部7cの内部を斜めに貫通して形成され、一端が細軸部7cの外周面に開口し、他端が摺動部7aの外周面に開口している。細軸部7cの外周面に開口する燃料通路27の一端は、弁ボディ5の貫通孔10に常時連通している。一方、摺動部7aの外周面に開口する燃料通路27の他端は、ノズルニードル17のリフト量が所定量に達するまでは、図2(a)、(b)に示す様に、シリンダ6に形成される摺動孔6aの内周面によって塞がれている。
ノズルニードル17のリフト量が所定量以上になると、図2(c)に示す様に、摺動部7aの外周面に開口する燃料通路27の他端が、摺動孔6aから抜け出て制御室13に通じることにより、燃料通路27により高圧側と制御室13とを連通するバイパス油圧回路が形成される。
電磁コイル23への通電が停止されている状態では、弁体21がアウトオリフィス14を閉じているので、制御室13の燃料圧力は高圧に保たれている。これにより、ノズルニードル17と制御ピストン7に掛かるリフト方向の油圧力より、ノズルニードル17を反リフト方向へ付勢する力(ノズルニードル17と制御ピストン7に掛かる反リフト方向の油圧力+スプリング8の反力)の方が大きくなる。その結果、ノズルニードル17が閉弁状態を維持するため、噴孔16aより燃料が噴射されることはない。
本実施例の燃料噴射弁1は、ノズルニードル17が所定量以上リフトした時にバイパス油圧回路が形成され、このバイパス油圧回路(燃料通路27)を通って制御室13に高圧燃料が供給されることで、制御ピストン7に下降力が働くため、噴射期間中のノズルニードル17の過剰なリフトを抑制できる。これにより、制御ピストン7の端面(ピストン頭部7bの上端面)がオリフィスプレート12の下端面に当接することなく静止するので、両部品の衝突による破損(割れや亀裂の発生等)を未然に防止できる。なお、制御ピストン7の端面がオリフィスプレート12の下端面に当接して停止する場合でも、制御室13の圧力上昇によって制御ピストン7の上昇速度が抑えられるため、当接時の衝撃を小さくできるので、両部品の異常摩耗を防ぐことができる。
実施例2に示すシリンダ6は、図3に示す様に、図示上端から下端まで円筒孔の内径が同一寸法で形成されている。つまり、実施例1で説明した摺動孔6aの内径と制御室13の内径とが同一寸法によって形成されている。また、シリンダ6には、実施例1と同じく、制御室13に通じるインオリフィス15が形成され、このインオリフィス15より図示下方には、シリンダ6の外周壁(摺動孔6aを形成している部分の外周壁)を貫通して高圧側に常時連通する連通孔28が設けられている。
なお、この実施例2では、シリンダ6に形成される円筒孔の内径が上端から下端まで同一寸法であるが、実施例1と同じく、内径が異なる段付き状の円筒孔であっても良い。つまり、制御室13の内径を摺動孔6aの内径より大きく形成しても良い。
4 電磁弁(オリフィス開閉手段)
6 シリンダ
6a 摺動孔
7 制御ピストン
7a 制御ピストンの摺動部
7d 制御ピストンのピストン軸部
8 スプリング
12 オリフィスプレート
13 制御室
14 アウトオリフィス
15 インオリフィス
16a 噴孔
17 ノズルニードル
27 制御ピストンに形成された燃料通路
28 シリンダに形成された連通孔
Claims (4)
- 噴孔を開閉するノズルニードルと、
このノズルニードルに連結される制御ピストンと、
この制御ピストンを摺動自在に保持するシリンダと、
前記制御ピストンを介して前記ノズルニードルを閉弁方向へ付勢するスプリングと、
インオリフィスを通じて高圧燃料が供給されると共に、この燃料圧力が前記ノズルニードルを閉弁方向へ付勢する背圧として前記制御ピストンに作用する制御室と、
前記制御ピストンの反噴孔側の端面と対向して配置され、且つ、前記制御室に通じるアウトオリフィスが形成されたオリフィスプレートと、
前記アウトオリフィスを開閉するオリフィス開閉手段とを備え、
噴射の開始および終了に応じて前記アウトオリフィスを開閉することにより、前記制御室の燃料圧力(前記背圧)を増減させて、前記ノズルニードルにより前記噴孔を開閉する燃料噴射弁であって、
前記制御ピストン、または、前記制御ピストンと前記シリンダには、前記ノズルニードルが所定量以上リフトした時に、前記インオリフィスをバイパスして高圧燃料を前記制御室に供給するバイパス油圧回路が形成されることを特徴とする燃料噴射弁。 - 請求項1に記載した燃料噴射弁において、
前記シリンダは、前記制御ピストンを摺動自在に保持する摺動孔を形成し、
前記制御ピストンは、前記シリンダの摺動孔に保持される摺動部を有すると共に、この摺動部の内部を通る燃料通路が形成され、
この燃料通路の一端が、前記シリンダの摺動孔から反制御室側へ延びる前記制御ピストンの外周面に開口して高圧側に常時連通し、前記燃料通路の他端が、前記摺動部の外周面に開口して、前記ノズルニードルが所定量以上リフトした時に、前記シリンダの摺動孔から抜け出て前記制御室に連通することにより前記バイパス油圧回路が形成されることを特徴とする燃料噴射弁。 - 請求項1に記載した燃料噴射弁において、
前記シリンダは、前記制御ピストンを摺動自在に保持する摺動孔を形成すると共に、その摺動孔の外周壁を貫通して高圧側に常時連通する連通孔が形成され、
前記制御ピストンは、前記シリンダの摺動孔に保持される摺動部を有すると共に、この摺動部の内部を通る燃料通路が形成され、
この燃料通路の一端が、前記ノズルニードルの閉弁時に、前記連通孔が形成された位置より反制御室側の前記摺動孔に保持される前記摺動部の外周面に開口し、前記燃料通路の他端が、前記制御ピストンの端面に開口して前記制御室に常時連通し、前記ノズルニードルが所定量以上リフトした時に、前記燃料通路の一端が前記連通孔に連通して前記バイパス油圧回路が形成されることを特徴とする燃料噴射弁。 - 請求項1〜3に記載した何れかの燃料噴射弁において、
前記ノズルニードルが所定量以上リフトした時に、前記インオリフィスおよび前記バイパス油圧回路を通って前記制御室に供給される燃料流量は、前記制御室から前記アウタオリフィスを通って排出される燃料流量以上であることを特徴とする燃料噴射弁。
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