(第1の実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態に係る塗布装置について説明する。説明を具体的にするために、当該塗布装置が有機EL材料や正孔輸送材料等を塗布液として用いる有機EL表示装置を製造する塗布装置に適用された例を用いて、以下の説明を行う。当該塗布装置は、有機EL材料や正孔輸送材料等をステージ上に載置されたガラス基板上に所定のパターン形状に塗布して有機EL表示装置を製造するものである。図1(a)は、塗布装置1の要部概略構成を示す平面図である。図1(b)は、塗布装置1の要部概略構成を示す正面図である。なお、塗布装置1は、上述したように有機EL材料や正孔輸送材料等の複数の塗布液を用いるが、それらの代表として有機EL材料を塗布液として説明を行う。
図1(a)および図1(b)において、塗布装置1は、大略的に、基板載置装置2および有機EL塗布機構5を備えている。有機EL塗布機構5は、ノズル移動機構部51と、ノズルユニット50と、液受部53Lおよび53Rとを有している。ノズル移動機構部51は、ガイド部材511が図示X軸方向に延設されており、ノズルユニット50をガイド部材511に沿って図示X軸方向に移動させる。ノズルユニット50は、赤、緑、および青色の何れか1色の有機EL材料を吐出する複数のノズル52(図1では、3本のノズル52a、52b、および52cのみ図示)を並設した状態で保持する。なお、図1においては、3本のノズル52a、52b、および52cのみを図示した塗布装置1を示したが、塗布装置1にはさらに多くのノズル52を並設してノズルユニット50で保持することが可能である。塗布装置1には、n本(例えば、16本)のノズル52(以下、ノズル52a〜52nとする)を並設することが可能であり、この場合、赤、緑、および青色の何れか1色の有機EL材料をノズル52a〜52nから吐出する。また、各ノズル52a〜52nへは、単一の供給源541(図2参照)から赤、緑、および青色の何れか1色の有機EL材料が供給される。このように、複数のノズル52から同じ色の有機EL材料が吐出されるが、説明を具体的にするために赤色の有機EL材料がノズル52a〜52nから吐出される例を用いる。
基板載置装置2は、ステージ21、旋回部22、平行移動テーブル23、ガイド受け部24、およびガイド部材25を有している。ステージ21は、被塗布体となるガラス基板等の基板Pをそのステージ上面に載置する。ステージ21の下部は、旋回部22によって支持されており、旋回部22の回動動作によって図示θ方向にステージ21が回動可能に構成されている。また、ステージ21の内部には、有機EL材料が塗布された基板Pをステージ面上で予備加熱処理するための加熱機構や基板Pの吸着機構や受け渡しピン機構等が設けられている。
有機EL塗布機構5の下方を通るように、ガイド部材25が上記X軸方向と垂直の図示Y軸方向に延設されて水平に固定される。平行移動テーブル23の下面には、ガイド部材25と当接してガイド部材25上を滑動するガイド受け部24が固設されている。また、平行移動テーブル23の上面には、旋回部22が固設される。これによって、平行移動テーブル23が、例えばリニアモータ(図示せず)からの駆動力を受けてガイド部材25に沿った図示Y軸方向に移動可能になり、旋回部22に支持されたステージ21の水平移動も可能になる。
受け渡しピン機構を介してステージ21上に基板Pを載置し、当該基板Pを吸着固定して、平行移動テーブル23が有機EL塗布機構5の下方まで移動したとき、当該基板Pが赤色の有機EL材料の塗布をノズル52a〜52nから受ける位置となる。そして、制御部3(図3参照)がノズルユニット50をX軸方向に往復移動させるようにノズル移動機構部51を制御し、ステージ21をY軸方向へ当該直線移動毎に所定ピッチだけ移動させるように平行移動テーブル23を制御し、ノズル52a〜52nから所定流量の有機EL材料を吐出させる。また、ノズル52a〜52nのX軸方向吐出位置において、ステージ21に載置された基板Pから逸脱する両サイド空間には、基板Pから外れて吐出された有機EL材料を受ける液受部53Lおよび53Rがそれぞれ固設されている。ノズル移動機構部51は、基板Pの一方サイド外側に配設されている液受部53(例えば、液受部53L)の上部空間から、基板Pを横断して基板Pの他方サイド外側に配設されている液受部53(例えば、液受部53R)の上部空間まで、ノズルユニット50を往復移動させる。また、平行移動テーブル23は、ノズルユニット50が液受部53の上部空間に配置されている際、ノズル往復移動方向とは垂直の所定方向(図示Y軸方向)に所定ピッチだけステージ21を移動させる。このようなノズル移動機構部51および平行移動テーブル23の動作と同時にノズル52a〜52nから有機EL材料を液柱状態で吐出することによって、赤色の有機EL材料が基板Pに形成されたストライプ状の溝毎に配列された、いわゆる、ストライプ配列が基板P上に形成される。
次に、図2を参照して、塗布装置1における塗布液の供給部54aおよびノズルユニット50の概略構成について説明する。なお、図2は、塗布装置1の供給部54aおよびノズルユニット50の概略構成を示すブロック図である。
図2において、塗布装置1は、供給部54aおよびノズルユニット50を備えている。供給部54aは、単一の供給源541から供給される塗布液(例えば、赤色の有機EL材料)を供給途中(マニホールド545)で複数に分岐させて複数のノズル52a〜52nに供給する。ここで、供給部54aにおいて、供給源541から塗布液を複数に分岐するまでの供給配管を本管と記載し、塗布液を複数に分岐してからノズル52a〜52nに供給するまでの供給配管をそれぞれ支管と記載する。
供給部54aは、供給源541、ポンプ542、フィルタ543、基準流量計544、マニホールド545、複数の流量制御バルブ546a〜546n、複数の支管流量計547a〜547n、および開閉バルブ548a〜548nを備えている。ポンプ542は、制御部3から出力される動作信号Cpに応じて、供給源541に貯留された有機EL材料を取り出して本管中へ流動させる。フィルタ543は、本管中を流動する有機EL材料中の異物を除去する。基準流量計544は、本管における有機EL材料の流量を検出して、流量情報If0を制御部3へ出力する。そして、本管を流動した有機EL材料は、マニホールド(多岐管)545に供給される。
マニホールド545は、本管から供給された有機EL材料を複数(例えば、16本)の支管に分岐する。ここで、マニホールド545が分岐する複数の支管は、それぞれノズル52a〜52nに接続されており、以下の説明においてはノズル52a〜52nに接続されるそれぞれの支管をa系統支管〜n系統支管として記載する。
流量制御バルブ546aは、制御部3から出力される動作信号Cfaに応じて、a系統支管を流動する有機EL材料の流量を制御する。支管流量計547aは、a系統支管における有機EL材料の流量を検出して、流量情報Ifaを制御部3へ出力する。なお、後述により明らかとなるが、制御部3が流量情報Ifaに基づいて目標流量値facとなるように動作信号Cfaを生成して流量制御バルブ546aの動作を制御するため、制御部3、流量制御バルブ546a、および支管流量計547aを合わせてマスフローコントローラとして機能する。そして、目標流量値facは、塗布作業における流量制御バルブ546aの調節目標となる。
開閉バルブ548aは、制御部3から出力される動作信号Coaに応じて、a系統支管を開閉して有機EL材料をノズル52aへ供給または停止する。そして、ノズル52aは、開閉バルブ548aを介してa系統支管から有機EL材料の供給を受けて、その先端部から液柱状態の有機EL材料を吐出する。なお、ノズル52aは、a系統支管から供給された有機EL材料中の異物を除去するためのフィルタ521aを有している。
他のb系統支管〜n系統支管も、a系統支管と同様の構成部を有している。すなわち、流量制御バルブ546b〜546nは、それぞれ制御部3から出力される動作信号Cfb〜Cfnに応じて、それぞれb系統支管〜n系統支管を流動する有機EL材料の流量を制御する。支管流量計547b〜547nは、それぞれb系統支管〜n系統支管における有機EL材料の流量を検出して、それぞれ流量情報Ifb〜Ifnを制御部3へ出力する。したがって、他のb系統支管〜n系統支管についても、制御部3が流量情報Ifb〜Ifnに基づいてそれぞれ目標流量値fbc〜fncとなるように動作信号Cfb〜Cfnを生成して流量制御バルブ546b〜546nの動作を制御するため、制御部3、流量制御バルブ546b〜546n、および支管流量計547b〜547nをそれぞれ合わせてそれぞれマスフローコントローラとして機能する。そして、目標流量値fbc〜fncも、それぞれ塗布作業における流量制御バルブ546b〜546nの調節目標となる。
また、開閉バルブ548b〜548nは、それぞれ制御部3から出力される動作信号Cob〜Conに応じて、それぞれb系統支管〜n系統支管を開閉して有機EL材料をノズル52b〜52nへ供給または停止する。そして、ノズル52b〜52nは、それぞれ開閉バルブ548b〜548nを介してb系統支管〜n系統支管から有機EL材料の供給を受けて、それらの先端部から液柱状態の有機EL材料を吐出する。なお、ノズル52b〜52nも、それぞれb系統支管〜n系統支管から供給された有機EL材料中の異物を除去するためのフィルタ521b〜521nを有している。なお、供給源541からノズル52a〜52nに至るそれぞれの配管は、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、テフロン(登録商標)等を材料とする管部材が用いられる。
次に、図3を参照して、塗布装置1における制御機能の概略構成について説明する。なお、図3は、塗布装置1の制御機能を示すブロック図である。
図3において、塗布装置1は、上述した各構成部を制御する制御部3を備えている。例えば、制御部3は、一般的なコンピュータシステムで構成され、内蔵されるコンピュータが用いるハードディスクやメモリ等の記憶媒体やユーザが計測結果等を入力する入力装置を有している。制御部3は、ポンプ542、複数の流量制御バルブ546a〜546n、開閉バルブ548a〜548n、旋回部22、平行移動テーブル23、およびノズル移動機構部51のそれぞれの動作を制御する。また、制御部3は、基準流量計544が出力する本管流量を示す流量情報If0を取得し、支管流量計547b〜547nがそれぞれ出力する支管流量を示す流量情報Ifa〜Ifnをそれぞれ取得する。そして、a系統支管〜n系統支管それぞれに設定された目標流量(目標流量値fac〜fnc)となるように、流量情報Ifa〜Ifnに応じて流量制御バルブ546a〜546nの動作を制御する。
ここで、赤色の有機EL材料の塗布を受ける基板Pの表面には、有機EL材料を塗布すべき所定のパターン形状に応じたストライプ状の溝が複数本並設されるように形成されている。有機EL材料としては、例えば、基板P上の溝内に拡がるように流動する程度の粘性を有する有機性のEL材料が用いられ、具体的には各色毎の高分子タイプの有機EL材料が用いられる。ノズルユニット50は、所定の支持軸周りに回動自在に支持されており、制御部3の制御によって当該支持軸周りに回動させることで、塗布ピッチ間隔を調整することができる。
制御部3は、ステージ21に載置された基板Pの位置や方向に基づいて、基板Pに形成された溝の方向が上記X軸方向になるように旋回部22の角度を調整し、塗布のスタートポイント、すなわち、基板Pに形成された溝の一方の端部側で塗布を開始する塗布開始位置を算出する。なお、上記塗布開始位置は、一方の液受部53の上部空間となる。そして、制御部3は、上述したように平行移動テーブル23およびノズル移動機構部51を駆動させる。
上記塗布開始位置において、制御部3は、各ノズル52a〜52nから有機EL材料の吐出開始を供給部54aに指示する。このとき、制御部3は、ストライプ状の溝の各ポイントにおける有機EL材料の塗布量が均一となり、液柱状態で有機EL材料が吐出されるように、ノズル52a〜52nの移動速度に応じてその塗布量を制御しており、支管流量計547a〜547nからの流量情報Ifa〜Ifnをそれぞれフィードバックして制御する。そして、制御部3は、基板P上の溝内への有機EL材料の流し込むために、有機EL材料を基板P上の溝に沿わせながらこの溝内に流し込むようにノズルユニット50をガイド部材511に沿わせて移動させるように制御する。この動作によって、液柱状態で各ノズル52a〜52nから吐出される赤色の有機EL材料が同時にそれぞれの溝に流し込まれていく。
制御部3は、基板P上をノズルユニット50が横断して溝の他方端部の外側に固設されている他方の液受部53上に位置すると、ノズル52a〜52nからの有機EL材料の吐出を継続したまま、ノズル移動機構部51によるノズルユニット50の移動を停止する。この1回の移動によって、複数の溝(例えば、16列分の溝)への有機EL材料の塗布が同時に完了する。具体的には、同色の有機EL材料を各ノズル52a〜52nから吐出しているので、3列毎に1列の溝を塗布対象とした例えば合計16列分の溝に有機EL材料が塗布される。
次に、制御部3は、平行移動テーブル23をY軸正方向に所定距離(例えば、48列分)だけピッチ送りして、次に塗布対象となる溝への有機EL材料の塗布を行えるようにする。そして、制御部3は、他方の液受部53の上部空間からノズルユニット50を逆の方向へ基板P上を横断させて一方の液受部53上に位置すると、ノズル52a〜52nからの有機EL材料の吐出を継続したまま、ノズル移動機構部51によるノズルユニット50の移動を停止する。この2回目の移動によって、次の溝への有機EL材料の塗布が完了する。このような動作を繰り返すことによって、赤色の有機EL材料が赤色を塗布対象とした溝に流し込まれる。
次に、図4〜図6を参照して、第1の実施形態に係る塗布装置1の流量設定手順の一例について説明する。なお、図4は、当該塗布装置1の流量設定手順の一例を示すフローチャートである。図5は、図4のステップS82における実流量計測モード処理の動作の一例を示すサブルーチンである。図6は、図4のステップS83における支管流量設定モード処理の動作の一例を示すサブルーチンである。
図4において、制御部3は、ポンプ542を動作させて供給源541に貯留された有機EL材料を本管中へ流動させ(ステップS80)、処理を次のステップに進める。例えば、制御部3は、ポンプ542を作動させる動作信号Cpをポンプ542へ出力して、当該ポンプ542を動作させる。
次に、制御部3は、実流量Rと基準流量計544の流量計測値Fとの間の関係式が設定済みか否かを判断する(ステップS81)。例えば、制御部3は、塗布装置1が使用する塗布液の種別毎に、実流量Rと基準流量計544の流量計測値Fとの間の関係式を設定し、搭載された記憶媒体に当該関係式を記憶している。そして、制御部3は、塗布装置1で塗布する塗布液に対して上記関係式が設定されていない場合、次のステップS82に処理を進める。一方、制御部3は、塗布装置1で塗布する塗布液に対して上記関係式が設定されている場合、次のステップS83に処理を進める。
ステップS82において、制御部3は、実流量計測モード処理を行い、次のステップに処理を進める。以下、図5を参照して、実流量計測モード処理の詳細な動作について説明する。
図5において、制御部3は、実流量(実吐出流量)を計測する支管系統(例えば、a系統)を選択し、吐出流量範囲を設定して(ステップS91)、処理を次のステップに進める。ここで、上記吐出流量範囲とは、塗布装置1がこれから使用する塗布液を塗布する際に可能性がある吐出流量の範囲を示している。
次に、制御部3は、上記ステップS91で選択された対象の支管系統の開閉バルブ548(例えば、a系統の開閉バルブ548a)を全開にして、他の開閉バルブ548を全閉にし(ステップS92)、処理を次のステップに進める。
次に、制御部3は、基準流量計544の流量計測値Fが上記吐出流量範囲内の任意の値となるように、上記ステップS91で選択された対象の支管系統の流量制御バルブ546(例えば、a系統の流量制御バルブ546a)を動作させ(ステップS93)、処理を次のステップに進める。このステップS93の動作によって、本管中へ流動する有機EL材料が上記ステップS91で選択された対象の支管(例えば、a系統の支管)のみに流動して1つのノズル52(例えば、ノズル52a)から吐出される状態となる。
次に、制御部3は、秤量によって計測された実吐出流量Rおよびそのときの基準流量計544の流量計測値Fを取得し(ステップS94)、処理を次のステップに進める。例えば、塗布装置1のユーザは、上記ステップS93の動作状態において、塗布液を吐出しているノズル52から吐出している塗布液を秤量し、実吐出流量Rを計測する。例えば、ノズル52から吐出される塗布液の実吐出流量Rは、当該ノズル52から所定の容器内に塗布液を吐出させ、単位吐出時間に対する当該容器内の塗布液重量(例えば、ミリグラム/分)によって秤量される。そして、ユーザは、制御部3の入力装置を介して、計測した実吐出流量Rを入力する。なお、そのときの基準流量計544の流量計測値Fについては、基準流量計544から出力される流量情報If0を用いて自動的に制御部3が取得してもいいし、ユーザが入力装置を介して入力してもかまわない。
次に、制御部3は、実流量計測が終了したか否かを判断する(ステップS95)。例えば、上記ステップS93およびステップS94で行う実吐出流量Rの秤量は、上記吐出流量範囲内における複数ポイント(例えば、3〜5ポイント)に対応して行われる。上記ステップS95において、制御部3は、実吐出流量Rの秤量が上記複数ポイント全てに対応して行われた場合、次のステップS96に処理を進める。一方、制御部3は、実吐出流量Rの秤量が上記複数ポイントの何れかに対して行われていない場合、上記ステップS93に戻って、上記吐出流量範囲内における他の値に対する処理を行う。
ステップS96において、制御部3は、実吐出流量Rと基準流量計544の流量計測値Fとの関係式を設定して記憶媒体に記憶して、当該サブルーチンによる処理を終了する。以下、図7を参照して、実吐出流量Rと基準流量計544の流量計測値Fとの関係式について説明する。なお、図7は、実吐出流量Rの秤量結果から得られる上記関係式の一例を示すグラフである。
図7は、横軸を基準流量計544の流量計測値Fおよび縦軸を実吐出流量Rとし、実吐出流量Rの秤量結果をプロットしている。具体的には、上記ステップS93およびステップS94の処理によって、基準流量計544の流量計測値がF1のときに秤量された実吐出流量がR1である。また、基準流量計544の流量計測値がF2のときに秤量された実吐出流量がR2である。また、基準流量計544の流量計測値がF3のときに秤量された実吐出流量がR3である。そして、これら3つのプロット点(点F1−R1、点F2−R2、点F3−R3)を通る近似曲線(例えば、直線)が、実吐出流量Rと基準流量計544の流量計測値Fとの関係式として導かれる。例えば、上記関係式は、
R=A*F+B
で示される。ここで、AおよびBは、それぞれ上記プロット点から導かれる定数である。塗布装置1では、このような関係式が使用する塗布液の種別毎にそれぞれ設定されて記憶される。
図4に戻り、上記ステップS82の実流量計測モード処理の後、制御部3は、支管流量設定モード処理を行い(ステップS83)、次のステップに処理を進める。以下、図6を参照して、支管流量設定モード処理の詳細な動作について説明する。
図6において、制御部3は、支管流量を設定する支管系統(例えば、b系統)を選択し、吐出流量範囲を設定して(ステップS101)、処理を次のステップに進める。ここで、上記吐出流量範囲とは、上記ステップS91で説明した範囲と同様であり、選択された支管系統を介して、塗布装置1がこれから使用する塗布液を塗布する際に可能性がある吐出流量の範囲を示している。
次に、制御部3は、上記ステップS101で選択された対象の支管系統の開閉バルブ548(例えば、b系統の開閉バルブ548b)を全開にして、他の開閉バルブ548を全閉にし(ステップS102)、処理を次のステップに進める。
次に、制御部3は、選択された対象の支管系統の支管流量計547(例えば、b系統の支管流量計547b)の流量計測値f(例えば、支管流量計547bの流量計測値fb)が上記吐出流量範囲内の任意の値となるように、当該支管系統の流量制御バルブ546(例えば、b系統の流量制御バルブ546b)を動作させ(ステップS103)、処理を次のステップに進める。このステップS103の動作によって、本管中へ流動する有機EL材料が上記ステップS101で選択された支管(例えば、b系統の支管)のみに流動して1つのノズル52(例えば、ノズル52b)から吐出される状態となる。
次に、制御部3は、選択された支管系統の支管流量計547の流量計測値fおよびそのときの基準流量計544の流量計測値Fを取得し(ステップS104)、処理を次のステップに進める。例えば、制御部3は、ステップS103の状態で出力される支管流量計547bの流量情報Ifbおよび基準流量計544の流量情報If0を用いて、流量計測値fbおよび流量計測値Fを取得する。
次に、制御部3は、選択された支管系統の支管流量設定が終了したか否かを判断する(ステップS105)。例えば、上記ステップS103およびステップS104で行う支管流量設定も、上述した実吐出流量Rの秤量と同様に、上記吐出流量範囲内における複数ポイント(例えば、3〜5ポイント)に対応して行われる。上記ステップS105において、制御部3は、選択された支管系統の支管流量設定が上記複数ポイント全てに対応して行われた場合、次のステップS106に処理を進める。一方、制御部3は、選択された支管系統の支管流量設定が上記複数ポイントの何れかに対して行われていない場合、上記ステップS103に戻って、上記吐出流量範囲内における他の値に対する処理を行う。
ステップS106において、制御部3は、基準流量計544の流量計測値Fと支管流量計547の流量計測値fとの関係式を設定して記憶媒体に記憶して、処理を次のステップに進める。以下、図8を参照して、基準流量計544の流量計測値Fと支管流量計547の流量計測値fとの関係式について説明する。なお、図8は、上記ステップS103およびステップS104の測定結果から得られる上記関係式の一例を示すグラフである。
図8は、横軸を支管流量計547bの流量計測値fbおよび縦軸を基準流量計544の流量計測値Fとし、上記ステップS103およびステップS104の測定結果をプロットしている。具体的には、上記ステップS103およびステップS104の処理によって、支管流量計547bの流量計測値がfb1のときに基準流量計544の流量計測値がF1である。また、支管流量計547bの流量計測値がfb2のときに基準流量計544の流量計測値がF2である。また、支管流量計547bの流量計測値がfb3のときに基準流量計544の流量計測値がF3である。そして、これら3つのプロット点(点fb1−F1、点fb2−F2、点fb3−F3)を通る近似曲線(例えば、直線)が、基準流量計544の流量計測値Fと支管流量計547bの流量計測値fbとの関係式として導かれる。例えば、上記関係式は、
F=Cb*fb+Db
で示される。ここで、CbおよびDbは、それぞれ上記プロット点から導かれるb系統の定数である。塗布装置1では、このような関係式が支管の系統毎に、使用する塗布液の種別に応じてそれぞれ設定されて記憶される。
図6に戻り、上記ステップS106における関係式の設定の後、制御部3は、全ての支管系統に対する支管流量設定が終了したか否かを判断する(ステップS107)。そして、制御部3は、支管流量設定が終了していない支管系統がある場合、上記ステップS101に戻って異なる支管系統に対する支管流量設定を行う。一方、制御部3は、全ての支管系統の支管流量設定が終了した場合、当該サブルーチンによる処理を終了する。
図4に戻り、上記ステップS83の支管流量設定モード処理の後、制御部3は、後述する塗布作業(ステップS85)で用いる吐出流量に対する各支管の目標流量値fcを設定し(ステップS84)、処理を次のステップに進める。以下、図7〜図9を参照して、目標流量値fcについて説明する。なお、図9は、使用する塗布液の種別に応じてそれぞれ設定された関係式の一例を示す図である。
制御部3は、上記ステップS80〜ステップS83の処理によって、図9に示すような関係式を設定している。図9では、制御部3が使用する塗布液q〜tに対してそれぞれ設定して記憶した関係式の一例を示している。例えば、塗布液qに対して、実吐出流量Rと基準流量計544の流量計測値Fとの関係式は、
R=Aq*F+Bq
で設定されている。ここで、AqおよびBqは、それぞれ塗布液qに対して設定された上記定数AおよびBを示している。また、塗布液qに対して、基準流量計544の流量計測値Fと支管流量計547aの流量計測値faとの関係式は、
F=Caq*fa+Daq
で設定されている。ここで、CaqおよびDaqは、それぞれ塗布液qに対して設定されたa系統の定数である。また、塗布液qに対して、基準流量計544の流量計測値Fと支管流量計547bの流量計測値fbとの関係式は、
F=Cbq*fb+Dbq
で設定されている。ここで、CbqおよびDbqは、それぞれ塗布液qに対して設定されたb系統の定数である。また、他のc系統〜n系統における支管流量計547c〜547nの流量計測値fc〜fnについてもa系統およびb系統と同様に、塗布液qにおける基準流量計544の流量計測値Fとの関係式が設定されている。
制御部3は、上述した関係式を適宜組み合わせて上記吐出流量に対する各支管の目標流量値fcを設定する。説明を具体的にするために、塗布作業におけるb系統のノズル52bからの吐出流量が実吐出流量Rpとした場合の目標流量値fcについて説明する。例えば、図7に示すように、実吐出流量Rと基準流量計544の流量計測値Fとの関係式R=A*F+Bを用いて、実吐出流量Rpに対応する基準流量計544の流量計測値Fpが導かれる。そして、図8に示すように、基準流量計544の流量計測値Fと支管流量計547bの流量計測値fbとの関係式F=Cb*fb+Dbを用いて、流量計測値Fpに対応する支管流量計547bの流量計測値fbpが導かれる。つまり、これらの関係式から明らかなように、b系統のノズル52bから実吐出流量Rpで塗布液を吐出したい場合、b系統を流動する当該塗布液の目標流量値fbcを上記流量計測値fbpに設定すればいいことになる。したがって、吐出流量Rpで吐出する場合のb系統の目標流量値fbcは、
で設定される。また、上述したように各関係式が塗布液の種別毎に設定されている。したがって、塗布液qを吐出流量Rpで吐出する場合のb系統の目標流量値fbcqは、
で設定される。
図4に戻り、上記ステップS84の各支管の目標流量値fcを設定した後、制御部3は、当該目標流量値fcを用いて被塗布体(例えば、ガラス基板)に対する塗布作業を行う(ステップS85)。この塗布作業において、制御部3は、各開閉バルブ548a〜548nを全開にする。また、制御部3は、a系統の支管流量計547aから出力される流量情報Ifaを用いて、当該支管流量計547aが示す流量計測値faが目標流量値facとなるように、流量制御バルブ546aを制御する。このように目標流量値facは、流量制御バルブ546aの流量調節目標となる。また、制御部は他の系統の支管も同様に、支管流量計547b〜547nから出力される流量情報Ifb〜Ifnを用いて、当該支管流量計547b〜547nが示す流量計測値fb〜fnがそれぞれの目標流量値fbc〜fncとなるように、流量制御バルブ546b〜546nを制御する。このように目標流量値fbc〜fncは、それぞれ流量制御バルブ546b〜546nの流量調節目標となる。
そして、当該塗布作業中において、制御部3は、支管流量の再設定の要否(ステップS86)および塗布作業を終了するか否か(ステップS84)を判断する。例えば、制御部3は、塗布装置1で使用する塗布液を交換する場合や支管流量を確認する定期管理(例えば、日常管理)時期が到来した場合等において、支管流量の再設定が必要であると判断する(ステップS86でYes)。そして、制御部3は、支管流量の再設定が必要と判断した場合、上記ステップS81に戻って処理を繰り返す。また、制御部3は、支管流量の再設定が不要で塗布作業を継続する場合(ステップS86およびステップS87が何れもNo)、上記ステップS85に戻って処理を繰り返す。一方、制御部3は、塗布作業を終了する場合(ステップS87でYes)、ポンプ542を停止させて(ステップS88)、当該フローチャートによる処理を終了する。
上述した第1の実施形態に係る流量設定方法では、実吐出流量の秤量計測を用いて基準流量計544を測定し、その値付けを行うことによって校正して、基準流量計544を塗布装置1内の標準器として取り扱っている。そして、この標準器(基準流量計544)を用いて複数の支管流量計547をさらに校正することによって、段階的な校正体系を確立して、塗布装置1内に設置された多数の流量計の流量管理を行っている。なお、第1の実施形態においては、各流量計(基準流量計544、支管流量計547)の関係式を設定することによって値付けして校正を行っているが、各流量計の流量計測値を調整(較正)してもかまわない。
このように、第1の実施形態に係る塗布装置は、本管に設置された基準流量計の流量計測値に基づいて各支管の目標流量値が設定される。したがって、ノズル系統毎に実吐出流量を秤量して関係式をそれぞれ導くことが不要となる。例えば、当該塗布装置において塗布する塗布液を変更(例えば、赤色の有機EL材料から緑色の有機EL材料に変更)する場合、当該塗布液変更後であっても基準流量計の流量計測値に基づいて各支管の目標流量値が設定されるため、塗布装置の流量管理工数が激減する。実際の塗布作業に用いる塗布液を用いて目標流量値が設定されるため、代替え塗布液を用いた流量設定と比較すると、実作業に合致した高精度の目標流量値の設定が可能であり、換算作業等も不要となる。また、従来のように塗布装置の実吐出流量計測時間が長くなることによって実吐出流量が変動することに起因する流量管理の不安定要素を排除することができるため、正確な実吐出流量の設定が可能となる。
(第2の実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の第2の実施形態に係る塗布装置について説明する。ここで、第2の実施形態に係る塗布装置は、上述した第1の実施形態に係る塗布装置と比較して、本管に流量制御バルブ549が追加されている。第2の実施形態に係る塗布装置における他の構成要素は、上述した第1の実施形態に係る塗布装置と同様であるため、同様の構成要素に対して同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
図10を参照して、第2の実施形態に係る塗布装置1における塗布液の供給部54bおよびノズルユニット50の概略構成について説明する。なお、図10は、当該塗布装置1の供給部54bおよびノズルユニット50の概略構成を示すブロック図である。
図10において、供給部54bは、供給部54aと同様に、単一の供給源541から供給される塗布液(例えば、赤色の有機EL材料)を供給途中(マニホールド545)で複数に分岐させて複数のノズル52a〜52nに供給する。供給部54bは、供給源541、ポンプ542、フィルタ543、基準流量計544、マニホールド545、複数の流量制御バルブ546a〜546n、複数の支管流量計547a〜547n、開閉バルブ548a〜548nに加えて、流量制御バルブ549を備えている。
流量制御バルブ549は、制御部3から出力される動作信号Cf0に応じて、本管を流動する有機EL材料の流量を制御する。また、基準流量計544は、本管における有機EL材料の流量を検出して、流量情報If0を制御部3へ出力する。そして、本管を流動した有機EL材料は、マニホールド(多岐管)545に供給される。なお、制御部3は、流量情報If0に基づいて目標流量値f0cとなるように動作信号Cf0を生成して流量制御バルブ549の動作を制御することも可能であるため、制御部3、流量制御バルブ549、および基準流量計544を合わせてマスフローコントローラとして機能する。
次に、図11〜図13を参照して、第2の実施形態に係る塗布装置1の流量設定手順の一例について説明する。なお、図11は、当該塗布装置1の流量設定手順の一例を示すフローチャートである。図12は、図11のステップS112における実流量計測モード処理の動作の一例を示すサブルーチンである。図13は、図11のステップS113における支管流量設定モード処理の動作の一例を示すサブルーチンである。
図11において、制御部3は、ポンプ542を動作させて供給源541に貯留された有機EL材料を本管中へ流動させる(ステップS110)。次に、制御部3は、実流量Rと基準流量計544の流量計測値Fとの間の関係式が設定済みか否かを判断する(ステップS111)。そして、制御部3は、塗布装置1で塗布する塗布液に対して上記関係式が設定されていない場合、次のステップS112に処理を進める。一方、制御部3は、塗布装置1で塗布する塗布液に対して上記関係式が設定されている場合、次のステップS113に処理を進める。なお、上記ステップS110およびステップS111の処理は、それぞれ上述したステップS80およびステップS81の処理と同様であるため、詳細な説明を省略する。
ステップS112において、制御部3は、実流量計測モード処理を行い、次のステップに処理を進める。以下、図12を参照して、実流量計測モード処理の詳細な動作について説明する。
図12において、制御部3は、実吐出流量を計測する支管系統(例えば、a系統)を選択し、吐出流量範囲を設定する(ステップS121)。次に、制御部3は、上記ステップS121で選択された対象の支管系統の開閉バルブ548(例えば、a系統の開閉バルブ548a)を全開にして、他の開閉バルブ548を全閉にし(ステップS122)、処理を次のステップに進める。
次に、制御部3は、上記ステップS121で選択された対象の支管系統の流量制御バルブ546(例えば、a系統の流量制御バルブ546a)を全開にして(ステップS123)、処理を次のステップに進める。
次に、制御部3は、基準流量計544の流量計測値Fが上記吐出流量範囲内の任意の値となるように、本管の支管系統の流量制御バルブ549を動作させ(ステップS124)、処理を次のステップに進める。このステップS124の動作によって、本管中へ流動する有機EL材料が上記ステップS121で選択された対象の支管(例えば、a系統の支管)のみに流動して1つのノズル52(例えば、ノズル52a)から吐出される状態となる。
次に、制御部3は、秤量によって計測された実吐出流量Rおよびそのときの基準流量計544の流量計測値Fを取得し(ステップS125)、処理を次のステップに進める。なお、上記ステップS125で行われる秤量方法やデータ入力方法等は、上述したステップS94で説明した方法と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
次に、制御部3は、実流量計測が終了したか否かを判断する(ステップS126)。例えば、上記ステップS124およびステップS125で行う実吐出流量Rの秤量も、上記吐出流量範囲内における複数ポイント(例えば、3〜5ポイント)に対応して行われる。上記ステップS126において、制御部3は、実吐出流量Rの秤量が上記複数ポイント全てに対応して行われた場合、次のステップS127に処理を進める。一方、制御部3は、実吐出流量Rの秤量が上記複数ポイントの何れかに対して行われていない場合、上記ステップS124に戻って、上記吐出流量範囲内における他の値に対する処理を行う。
ステップS127において、制御部3は、実吐出流量Rと基準流量計544の流量計測値Fとの関係式を設定して記憶媒体に記憶して、当該サブルーチンによる処理を終了する。なお、上記ステップS127で設定する実吐出流量Rと基準流量計544の流量計測値Fとの関係式については、図7を用いて説明した関係式と同様であるため、詳細な説明を省略する。
図11に戻り、上記ステップS112の実流量計測モード処理の後、制御部3は、支管流量設定モード処理を行い(ステップS113)、次のステップに処理を進める。以下、図13を参照して、支管流量設定モード処理の詳細な動作について説明する。
図13において、制御部3は、支管流量を設定する支管系統(例えば、b系統)を選択し、後述する塗布作業(ステップS114)において当該支管系統を介してノズル52から吐出される吐出流量を設定する(ステップS131)。次に、制御部3は、上記ステップS131で選択された対象の支管系統の開閉バルブ548(例えば、b系統の開閉バルブ548b)を全開にして、他の開閉バルブ548を全閉にする(ステップS1322)。そして、制御部3は、選択された対象の支管系統の流量制御バルブ546(例えば、b系統の流量制御バルブ546b)を全開にして(ステップS133)、処理を次のステップに進める。
次に、制御部3は、本管の基準流量計544の流量計測値Fが塗布作業における吐出流量に応じた値となるように、本管の流量制御バルブ549を動作させ(ステップS134)、処理を次のステップに進める。
ここで、上記ステップS134における流量計測値Fと塗布作業における吐出流量との関係について説明する。上述したステップS112の実流量計測モード処理において、実吐出流量Rと基準流量計544の流量計測値Fとの関係式が設定されている。ここで、上記関係式が図7で示した一例であり、後述する塗布作業におけるb系統のノズル52bからの吐出流量が実吐出流量Rpであるとする。この場合、塗布作業における吐出流量(すなわち、実吐出流量Rp)に応じた基準流量計544の流量計測値はFpとなる。したがって、上記ステップS134において、制御部3は、上記ステップS112で設定された関係式を用いて、塗布作業における吐出流量に応じた基準流量計544の流量計測値Fpを設定して、当該流量計測値Fpを目標流量値f0cとして流量制御バルブ549を動作させる。つまり、このステップS134の動作によって、本管中へ流動する有機EL材料が上記ステップS131で選択された支管(例えば、b系統の支管)のみに流動して1つのノズル52(例えば、ノズル52b)から吐出される状態となり、その塗布液および吐出流量が後述する実際の塗布作業で用いられる塗布液および流量となっている。
次に、制御部3は、選択された支管系統の支管流量計547の流量計測値fを取得し(ステップS135)、処理を次のステップに進める。例えば、制御部3は、ステップS134の状態で出力される支管流量計547bの流量情報Ifbを用いて、流量計測値fbを取得する。
次に、制御部3は、上記ステップS135で取得した流量計測値fを選択された支管系統の目標流量値fcを設定し(ステップS136)、処理を次のステップに進める。
次に、制御部3は、全ての支管系統に対する支管流量設定が終了したか否かを判断する(ステップS137)。そして、制御部3は、支管流量設定が終了していない支管系統がある場合、上記ステップS131に戻って異なる支管系統に対する支管流量設定を行う。一方、制御部3は、全ての支管系統の支管流量設定が終了した場合、当該サブルーチンによる処理を終了する。
図11に戻り、上記ステップS113の支管流量設定モード処理の後、制御部3は、上記ステップS136でそれぞれ設定された目標流量値fcを用いて被塗布体に対する塗布作業を行う(ステップS114)。この塗布作業において、制御部3は、本管の流量制御バルブ549および各開閉バルブ548a〜548nを全開にする。また、制御部3は、a系統の支管流量計547aから出力される流量情報Ifaを用いて、当該支管流量計547aが示す流量計測値faが目標流量値facとなるように、流量制御バルブ546aを制御する。また、制御部は他の系統の支管も同様に、支管流量計547b〜547nから出力される流量情報Ifb〜Ifnを用いて、当該支管流量計547b〜547nが示す流量計測値fb〜fnがそれぞれの目標流量値fbc〜fncとなるように、流量制御バルブ546b〜546nを制御する。
そして、当該塗布作業中において、制御部3は、支管流量の再設定の要否(ステップS115)および塗布作業を終了するか否か(ステップS116)を判断する。例えば、制御部3は、塗布装置1で使用する塗布液を交換する場合、支管流量を確認する定期管理(例えば、日常管理)時期が到来した場合、塗布作業で用いる吐出流量を変更する場合等において、支管流量の再設定が必要であると判断する(ステップS115でYes)。そして、制御部3は、支管流量の再設定が必要と判断した場合、上記ステップS111に戻って処理を繰り返す。また、制御部3は、支管流量の再設定が不要で塗布作業を継続する場合(ステップS115およびステップS116が何れもNo)、上記ステップS114に戻って処理を繰り返す。一方、制御部3は、塗布作業を終了する場合(ステップS116でYes)、ポンプ542を停止させて(ステップS117)、当該フローチャートによる処理を終了する。
ここで、図14を参照して、上述した動作中における各流量制御バルブおよび流量計の状態について説明する。なお、図14は、上記ステップS113の支管流量設定モード中と上記ステップS114の塗布作業中とにおける、各流量制御バルブおよび流量計の状態を示す図である。
図14において、上記ステップS113の支管流量設定モード処理でa系統支管の流量を設定しているとき、本管の基準流量計544の流量計測値FがFp(すなわち、吐出流量Rpに相当する値)になるように、本管の流量制御バルブ549が制御動作している。また、a系統支管の流量制御バルブ546aが全開状態であり、他の支管の流量制御バルブ546b〜546nが全閉状態にある。そのとき、a系統支管の支管流量計547aにおける流量計測値faがfapを示している。この流量計測値fapが、a系統支管の目標流量値facに設定される。
同様に、上記ステップS113の支管流量設定モード処理でb系統支管の流量を設定しているとき、本管の基準流量計544の流量計測値FがFp(すなわち、吐出流量Rpに相当する値)になるように、本管の流量制御バルブ549が制御動作している。また、b系統支管の流量制御バルブ546bが全開状態であり、他の支管の流量制御バルブ546aおよび546c〜546nが全閉状態にある。そのとき、b系統支管の支管流量計547bにおける流量計測値fbがfbpを示している。この流量計測値fbpが、b系統支管の目標流量値fbcに設定される。このように、他の系統の支管についても、順次流量設定されていく。
一方、上記ステップS114の塗布作業でa〜n系統支管全てから塗布液を吐出するとき、本管の流量制御バルブ549が全開状態であり、本管の基準流量計544の流量計測値Fが総流量値を示す。そして、a系統支管の支管流量計547aの流量計測値faが目標流量値fac(すなわち、吐出流量Rpに相当する値)になるように、a系統支管の流量制御バルブ546aが制御動作している。また、b系統支管の支管流量計547bの流量計測値fbが目標流量値fbc(すなわち、吐出流量Rpに相当する値)になるように、b系統支管の流量制御バルブ546bが制御動作している。さらに、c〜n系統支管の支管流量計547c〜547nの流量計測値fc〜fnがそれぞれ目標流量値fcc〜fnc(すなわち、それぞれ吐出流量Rpに相当する値)になるように、c〜n系統支管の流量制御バルブ546c〜546nが制御動作している。
なお、第2の実施形態における流量設定動作においては、塗布装置1が使用する塗布液の種別に応じて、それぞれ目標流量値fcが各支管毎に設定されるため、上述した各流量制御バルブおよび流量計の状態についても使用する塗布液毎に設定された流量計測値Fpや目標流量値fcを用いて動作する。また、塗布作業における各支管の吐出流量は、全て同じでなくてもよい。この場合、吐出流量に応じて流量計測値Fpが異なる値に設定されることになり、結果的に目標流量値fcも別の値に設定されることは言うまでもない。
また、上述した第2の実施形態に係る流量設定方法でも、実吐出流量の秤量計測を用いて基準流量計544を測定し、その値付けを行うことによって校正して、基準流量計544を塗布装置1内の標準器として取り扱っている。そして、この標準器(基準流量計544)を用いて複数の支管流量計547をさらに校正することによって、段階的な校正体系を確立して、塗布装置1内に設置された多数の流量計の流量管理を行っている。なお、第2の実施形態においては、基準流量計544の関係式を設定することによって値付けし、当該基準流量計544と各支管流量計547とをピンポイントで値付けして校正を行っているが、各流量計の流量計測値を調整(較正)してもかまわない。
このように、第2の実施形態に係る塗布装置も、本管に設置された基準流量計の流量計測値に基づいて各支管の目標流量値が設定される。したがって、ノズル系統毎に実吐出流量を秤量して関係式をそれぞれ導くことが不要となる。例えば、当該塗布装置において塗布する塗布液を変更(例えば、赤色の有機EL材料から緑色の有機EL材料に変更)する場合、当該塗布液変更後であっても基準流量計の流量計測値に基づいて各支管の目標流量値が設定されるため、塗布装置の流量管理工数が激減する。実際の塗布作業に用いる塗布液を用いて目標流量値が設定されるため、代替え塗布液を用いた流量設定と比較すると、実作業に合致した高精度の目標流量値の設定が可能であり、換算作業等も不要となる。また、従来のように塗布装置の実吐出流量計測時間が長くなることによって実吐出流量が変動することに起因する流量管理の不安定要素を排除することができるため、正確な実吐出流量の設定が可能となる。さらに、第2の実施形態に係る塗布装置は、支管流量の調整作業をピンポイントの流量(すなわち、塗布作業で用いる塗布流量)を狙って行うことができるため、さらに塗布装置の流量管理工数が削減される。また、第2の実施形態に係る塗布装置は、基準流量計の流量計測値と支管流量計の流量計測値との間の関係式も不要となる。
なお、第1の実施形態に係る塗布装置においても、第2の実施形態と同様に基準流量計の流量計測値と支管流量計の流量計測値との間の関係式を不要として、上記ピンポイントの支管流量の調整作業を可能とすることができる。例えば、図2に示す第1の実施形態の供給部54aにおいて、制御部3が基準流量計544から出力される流量情報If0に基づいて、流量制御バルブ546a〜546nそれぞれを制御可能に構成する。この場合、上記ステップS103の動作において、本管の基準流量計544の流量計測値Fが塗布作業における吐出流量に応じた値となるように、対象の支管系統の流量制御バルブ546を動作させることができる。そして、第2の実施形態と同様に、この動作中における当該支管系統の支管流量計547の流量計測値fを、当該支管系統の目標流量値fcとして設定することが可能となり、上記ピンポイントの支管流量の調整作業が可能となる。また、第2の実施形態に係る塗布装置においても、第1の実施形態と同様に基準流量計の流量計測値と支管流量計の流量計測値との間の関係式を設定する支管流量の調整作業が可能であることは言うまでもない。
また、上述した実施形態では、吐出流量範囲内における複数ポイント(例えば、3〜5ポイント)をプロットして各種関係式を導いているが、1つのポイントのみをプロットして関係式を導いてもかまわない。例えば、導く関係式が必ず所定の原点(例えば、(0,0))を通る直線となることを仮定すれば、1つのポイントをプロットするだけで関係式を導くことが可能となる。この場合、関係式を導くための実吐出流量Rの秤量や選択された支管系統の支管流量設定が1つのポイントに対応して行うだけとなるため、さらに塗布装置の流量管理工数が削減される。
また、上述した実施形態では、実流量Rと基準流量計544の流量計測値Fとの間の関係式が未設定の場合に、実流量計測モード処理を行う例を示したが、他の態様によって実流量計測モード処理を行ってもかまわない。例えば、実流量Rと基準流量計544の流量計測値Fとの間の関係式が設定済みであっても、定期的に当該関係式を再設定するために実流量計測モード処理を行ってもかまわない。これによって、実流量計測モード処理によって設定される関係式の信頼性が高まり、より正確な流量管理を行うことが可能となる。
上述した実施形態では、実流量Rと基準流量計544の流量計測値Fとの間の関係式を塗布液毎に設定する一例を示したが、当該関係式を設定しなくてもかまわない。この場合、基準流量計544の流量計測値Fを基準として各支管流量計547が値付けされることになるが、実吐出流量の秤量計測値を基準とした値付けではないために、厳密には一般的な校正とは異なる管理となる。したがって、各支管流量計547には、上述した流量設定方法のような絶対評価ではなく、流量計測値Fを基準とした相対評価が行われることになる。しかしながら、このような相対評価であっても、流量計測値Fを基準とした各支管流量計547の流量計測値fのバラツキや変動を検出することは可能であり、これらの要因を排除した目標流量値を設定することによって正確な吐出流量での塗布作業が可能となる。
また、上述した実施形態では、ノズルユニット50がX軸方向に直線移動する毎に、ステージ21をY軸方向へ所定ピッチだけ移動させて、ノズルユニット50とステージ21との当該Y軸方向に対する相対的な位置関係を変化させているが、本発明はこれに限らない。例えば、ノズルユニット50がX軸方向に直線移動する毎に、当該ノズルユニット50をY軸方向へ所定ピッチだけ移動(つまり、有機EL塗布機構5がY軸方向へ移動)させて、ノズルユニット50とステージ21との当該Y軸方向に対する相対的な位置関係を変化させてもかまわない。この場合、液受部53は、有機EL塗布機構5と共にY軸方向へ所定ピッチだけ移動する。
また、上述した実施形態では、赤、緑、および青色のうち、赤色の有機EL材料を3個1組のノズル52a〜52nで基板Pの溝内に流し込んでいるが、この塗布工程は、有機EL表示装置を製造する途中工程である。有機EL表示装置を製造するときの処理手順は、正孔輸送材料(PEDOT)塗布→乾燥→赤色の有機EL材料塗布→乾燥→緑色の有機EL材料塗布→乾燥→青色の有機EL材料塗布→乾燥という手順となる。この場合、本発明の塗布装置は、正孔輸送材料、赤色の有機EL材料、緑色の有機EL材料、および青色の有機EL材料をそれぞれ塗布する工程に用いることができる。
また、上述した塗布装置1の各構成要素の形状、数、および設置位置等は、単なる一例に過ぎず他の形状、数、および設置位置であっても、本発明を実現できることは言うまでもない。
また、上述した実施形態では、塗布液として有機EL材料や正孔輸送材料を塗布液とした有機EL表示装置の製造装置を一例にして説明したが、本発明は他の塗布装置にも適用できる。例えば、レジスト液やSOG(Spin On Glass)液やPDP(プラズマディスプレイパネル)を製造するのに使用される蛍光材料を塗布する装置にも適用することができる。また、液晶カラーディスプレイをカラー表示するために液晶セル内に構成されるカラーフィルタを製造するために使用される色材を塗布する装置にも適用することができる。
以上、本発明を詳細に説明してきたが、上述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。