JP5117933B2 - エアバッグ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車等の車両に搭載される膨張展開可能なエアバッグを備えたエアバッグ装置に関し、特に、エアバッグが、車室内側壁の上方部に折り畳まれた状態で車両前後方向に沿って取り付けられるエアバッグ装置に関する。
車両の衝突時や緊急時等に、運転席や助手席及び後席の乗員を保護するため、車両内の側壁窓部に沿って、その全体を覆うように、乗員との間にエアバッグをカーテン状に展開させる側面用のエアバッグ装置が普及している。このようなエアバッグ装置では、一般に、車両前後方向に沿って取り付けられたエアバッグの全体を、折り畳まれた状態から車両の下方に向けて膨張展開させるため、エアバッグ内に設けたガス通路により、インフレータが発生するガスを、エアバッグ内の各部に案内して所定領域へ向けて供給する。
また、従来、エアバッグの上部に、ガス通路を構成する筒状体を配置し、ガス通路の途中に、ガスをエアバッグ内に流出させる開口と、その下流側に配置された通路断面積を小さくする縫目とを設けて、エアバッグ各部に対するガス供給の量やタイミングを調整したエアバッグ装置が知られている(特許文献1参照)。
ところが、この従来のエアバッグ装置では、ガス通路に流入したガスは、開口の下流側の縫目まで達し、その間の筒状体内の圧力が上昇して蓄圧されることで、ガスの方向が垂直方向に変更されて、上流側の開口からのガス流出量が増加する。そのため、このエアバッグ装置では、開口からのガス流出が遅れて、充分な量のガスが開口から流出するのに時間がかかり、そこからのガスで膨張展開するエアバッグの展開が遅れることがある。また、この縫目は、ガスの流れる方向に対して垂直な方向に設けられているので、ガスの流れが妨げられてガス流速に損失が生じ、ガス通路内の各部におけるガスの流速が変動して、全体的に低下する傾向がある。従って、このエアバッグ装置では、エアバッグの各部へ供給するガスを適切に調整するのが難しく、かつ、ガスの供給効率が低くなるとともに、ガスがガス通路の下流端へ達するまで時間を要し、エアバッグ全体が展開を開始するのが遅れる恐れがある。
特許第3876560号公報
本発明は、前記従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、ガス通路からエアバッグ内に流出させるガスの調整を容易に行えるようにし、ガス通路から適切にガスを流出させるとともに、エアバッグ内の各部にガスを効率よくスムーズに供給して、エアバッグ装置のエアバッグを早期に展開させることである。
本発明は、車室内側壁の上方部に折り畳まれた状態で車両前後方向に沿って取り付けられるエアバッグと、エアバッグにガスを供給して膨張展開させるインフレータとを備え、エアバッグ内の上縁側に沿って、インフレータから供給されるガスを案内するガス通路を有するエアバッグ装置であって、エアバッグ内の上縁側に沿って配置され、インフレータからガスが供給されるインナーチューブを備えるとともに、ガス通路がインナーチューブ内に形成され、ガス通路に、ガスの流れを分岐させる分岐部と、分岐させたガスをガス流れ方向に沿ってエアバッグ内に流出させるガス流出口と、を有するガス流出部を備え、ガス流出部が、インナーチューブに形成されたガス流出口を構成する切れ目又は切欠き部と、切れ目又は切欠き部のガス流れ方向上流側の少なくとも一部を開口させてガス通路との間を塞ぐ分岐部を構成するインナーチューブの接合部と、からなることを特徴とする。
本発明によれば、ガス通路からエアバッグ内に流出させるガスの調整を容易に行え、ガス通路から適切にガスを流出させることができ、エアバッグ内の各部にガスを効率よくスムーズに供給して、エアバッグ装置のエアバッグを早期に展開させることができる。
以下、本発明のエアバッグ装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
このエアバッグ装置は、車両内側壁の上方部からエアバッグを側壁に沿って下方に向けて膨張展開させるエアバッグ装置であり、所定状態に折り畳まれた膨張展開可能なエアバッグと、車両緊急時や衝撃検知時等にガスを発生するインフレータとを備えている。また、以下の実施形態では、車両側部上方から、エアバッグをカーテン状に膨張展開させ、運転席や助手席から車両後方側の後席まで、車両側方内側の所定範囲にエアバッグを展開させて、前後席の乗員を、頭部を中心に保護する側面用のエアバッグ装置を例に採り説明する。
図1は、本実施形態のエアバッグ装置の要部を模式的に示す正面図であり、展開状態のエアバッグの概略形状を示す平面展開図である。また、図では、エアバッグの内部を透視して内部構成も示している。
なお、図1では、後述するインフレータ40側(図では横長なエアバッグ10の右側)が車両における後方側(リアピラー側)、その逆側(図ではエアバッグ10の左側)が車両における前方側(フロントピラー側)である。また、本実施形態のエアバッグ装置1では、エアバッグ10は、車両側部上方(図ではエアバッグ10の上側)のルーフレール部等(図示せず)に配置及び収納され、ガスの導入により、収納された状態から車両下方に向けてカーテン状に膨張展開する。これにより、エアバッグ10は、車両内の側方窓部を含む車両内側壁(図では紙面奥側に位置)(図示せず)に沿って、その全体を覆うように膨張展開し、乗員と側壁等との間に膨張展開する。
具体的には、このエアバッグ装置1は、図示のように、ガスの導入(流入)により膨張展開可能なエアバッグ10と、その一端側(ここで、車両後方側)に接続され、エアバッグ10にガスを供給して膨張展開させるインフレータ40と、を備えている。また、エアバッグ装置1は、非動作時に、これらエアバッグ10やインフレータ40を所定状態で収納して車内側を覆う、収納位置に沿ってルーフレール部等に取り付けられるトリムや、エアバッグ10やインフレータ40を車両に固定する固定手段(それぞれ図示せず)等、従来と同様な他の構成を備えている。
エアバッグ10は、覆うべき車両内側壁の窓部の形状等に応じた形状の横長な略袋状をなし、上縁に沿って、車両のルーフレール部に取り付けられる複数(図では6つ)の略矩形状の上部取付片11を有する。また、エアバッグ10には、車両前方側に向かって突出する略三角形状の前部取付片12が設けられ、その先端部(突出端部)が車両のフロントピラー部等に取り付けられる。
エアバッグ10は、各取付片11、12が、それぞれ車両内の所定位置にボルト等からなる固定手段により固定されて、車室内側壁の上方部に車両前後方向に沿って取り付けられ、膨張前の状態では、車両各部に設けられたトリム内等に収納・配置される。その際、エアバッグ10は、各取付片11、12側(上縁側)に向かって順に折り畳まれ、或いは、下縁側から上縁側に車両外側に向けて巻き付けられる等、主に下方に膨張展開可能に折り畳まれた状態で収納される。一方、インフレータ40が作動すると、エアバッグ10は、収納状態から膨張してトリムを押し開き、そこから主に車両の下方に向かってカーテン状に膨張展開する。
このようなエアバッグ10は、例えば織布を裁断等して形成した2枚の同形状の基布を重ね合わせ、又は略対称形状の1枚の基布を折り重ねて、縁部に沿って互いに縫製や接着する等、対向する基布同士を所定位置で気密状態に接合し、その間に膨張可能な気室(隔室)30を形成することで略袋状に形成される。
本実施形態では、このエアバッグ10を、互いに対称形状をなす乗員側の表側基布20及び、車両内側壁側の裏側基布21とから構成し、それらを重ね合わせて、対向する基布20、21同士を外縁接合部22に沿って接合して形成している。この外縁接合部22は、エアバッグ10の内外を区画して気室30の外縁形状を規定する接合部であり、形成すべき気室30の外縁部に対応する位置に沿って、基布20、21同士を1周又は複数周に亘って縫製等して形成される。これにより、気室30を、前席の乗員を主に保護する平面視略矩形状の前部気室31、それよりも小さな平面視略矩形状をなす、後席の乗員を主に保護する後部気室32、及び各気室31、32の上部側同士を連結する連結部33からなり、車両の前後方向に連続して延びる袋状に形成している。ただし、連結部33は、気室31、32よりも上下寸法が小さい狭幅に形成され、エアバッグ10の上縁に沿うように各気室31、32間に直線状に配置されている。
また、エアバッグ10は、対向する基布20、21同士が、各気室31、32内に設けられた内側接合部23〜26でも縫製等により互いに接合され、それらを挟んで、各気室31、32が少なくともその両側に区画されている。この内側接合部23〜26は、気室31、32の内部にガス流路や膨張部を形成する隔壁としての機能や、各気室31、32の厚さ方向(図では紙面に直交する方向)の膨張を抑制して、膨張厚さや展開形状を規制する機能等を有し、その目的に応じた所定形状に形成され、気室30内の所定位置に1又は複数配置される。
ここでは、前部気室31内に、3つの内側接合部23、24、25を、それぞれ下側の外縁接合部22から上方に向かって傾斜して延び、上側の外縁接合部22から離れた所定位置まで形成して、前部気室31内で終端させている。また、これら内側接合部23、24、25を、車両前後方向に互いに所定間隔を開けて配置し、前部気室31内を車両前後方向に区画している。これにより、前部気室31に、車両前後方向に沿って順に配置された4つの小気室(隔室)31A、31B、31C、31Dを、それぞれ一端側(下端側)が閉鎖され、かつ他端側(上端側)が開口して前部気室31の上方部を介して互いに連通するように、各々略矩形状に形成している。併せて、このエアバッグ10では、基布20、21を、各内側接合部23、24、25の端部(終端部)23T、24T、25Tで略円形状に縫製し、同付近の強度の向上や破損の防止等を図っている。
これに対し、後部気室32には、その内部で両端部26Tが共に終端する1つの内側接合部26が上下方向に傾斜し、かつ、両端部26Tが略円形状に縫製されて形成されている。その結果、後部気室32は、上下部が共に連通した状態で車両前後方向に区画され、その内部に2つの小気室32A、32Bが形成される。
加えて、このエアバッグ装置1では、エアバッグ10の一端側(ここでは車両後方側)の上部で、基布20、21を外側に向かって突出させ、それらを接合する外縁接合部22間に基布20、21同士を接合しない部分を設けて、略筒状のガス導入口13を形成している。即ち、ガス導入口13は、後部気室32の一部がエアバッグ10外に向かって開放された、気室30の内外を連通させる開口部であり、インフレータ40からのガスをエアバッグ10内に導入し、気室30に供給及び流入させるガス供給口(流入口)として機能する。
インフレータ40は、略円筒状をなすシリンダタイプのガス発生装置であり、その長手方向の一端部(図ではエアバッグ10内の先端部)に、周方向に沿って複数のガス噴出し口42が形成された小径部41が、同芯状に突出して設けられている。このエアバッグ装置1では、インフレータ40の小径部41側の一端部を、その周囲にガスの案内又は整流部材である布状部材(基布)60を巻き付けた状態で、エアバッグ10のガス導入口13に挿入している。また、インフレータ40のガス噴出し口42が後部気室32近傍に位置する状態で、環状のクランプ(バンド)45により、インフレータ40の外周に、布状部材60とエアバッグ10とを挟んで、それらをまとめて外側から締め付けて固定している。
このようにして、ガス導入口13にインフレータ40を気密状に取り付け、インフレータ40の複数のガス噴出し口42から放射状に噴き出すガスを、ガス導入口13から導入してエアバッグ10内に供給し、気室30に流入させて各気室31、32を膨張展開させる。その際、このエアバッグ装置1では、エアバッグ10内の上縁側に沿って設けられた、車両前後方向に延びるガス通路(流路)51により、インフレータ40から供給されるガスを案内して流通させる。また、ここでは、エアバッグ10内の上縁側に沿って配置された、インフレータ40からガスが供給されるインナーチューブ50を備え、このインナーチューブ50内にガス通路51を形成して、それらを介して、気室30の全体にガスを供給してエアバッグ10を膨張展開させる。
即ち、インナーチューブ50は、ガス導入口13(インフレータ40)からのガスを気室30の後部気室32及び前部気室31に案内する案内部材であり、ガス導入口13に接続され、そこから後部気室32の上部及び連結部33内を通り、前部気室31まで延びるように、エアバッグ10内に配置されている。また、このエアバッグ装置1では、インナーチューブ50を、略筒状に形成して一端部をガス導入口13内まで配置し、その中に布状部材60及びインフレータ40を挿入して、クランプ45により、エアバッグ10等と共にインフレータ40の外周に挟み付けて固定している。更に、インナーチューブ50のガス案内経路の途中に、少なくとも1つ(ここでは1つ)のガス流出部70を形成するとともに、インナーチューブ50の他端部(先端部)に開口部53を設け、それらを介して、エアバッグ10の各部にガスを供給するようになっている。
ここで、ガス流出部70は、エアバッグ10のガス通路51に形成される、その内部のガスの流れを分岐させて、ガス流れ方向に沿ってエアバッグ10内に流出させるガス流出手段であり、ガス通路51内を流れるガスを、その途中から外部に流出させて気室30の所定位置に向けて供給する。また、このエアバッグ装置1のガス流出部70は、ガス通路51内におけるガスの流れを2つに分岐させる分岐部(分岐手段)71と、分岐させたガスをエアバッグ10の気室30内に流出させるガス流出口72とを有する。
本実施形態では、このガス流出部70を、後部気室32内に位置するインナーチューブ50の下縁側に形成し、ガス通路51を上・下縁側に分岐させて、分岐させた一方(ここでは、下縁側)のガスを後部気室32内に供給する。また、インナーチューブ50を、エアバッグ10と同様の基布から構成し、その対向面を上縁側の接合部55で接合して、ガス通路51等を形成している。
図2は、このインナーチューブ50を概略的に示す模式図であり、図2Aは接合部55を開いて展開した状態を示す平面展開図であり、図2Bは図1からインナーチューブ50を抜き出して示す平面図である。
インナーチューブ50は、図示のように、1又は複数枚を重ね合わせた略帯状の基布からなり、その長手方向に延びる中心線CL上(図2A参照)に、ガス流出口72が貫通して形成されている。また、インナーチューブ50は、平面展開した状態から中心線CLに沿って2つ折りにされ(図2Aでは中心線CLを中心に下側を上側に折り返す)、側縁側同士を重ね合わせ、側縁側(開口側)の縁部近傍に沿って、縫製や接着等により接合(図2Bの破線で示す接合部55)される。
これにより、インナーチューブ50は、対向する基布間に連続して延びるガス通路51が設けられ、かつガス通路51の途中に、ガス流出口72及びガス流出部70を有する略筒状に形成される。その状態で、ガス流出口72は、ガス通路51に、例えばガス流れ方向に対して直交や傾斜して開口する等、ガス流れ方向に交差して形成され、その内外を連通させて、分岐されたガスを、ガス流れ方向に沿って外部のエアバッグ10内に流出可能に構成される。
具体的には、ガス流出部70は、インナーチューブ50に形成された切れ目又は切欠き部(図2では切欠き部)からなるガス流出口72と、そのガス流れ方向上流側の少なくとも一部(図2では右側部)を開口させて、ガス通路51との間を塞ぐ分岐部71とからなる。即ち、このガス流出口72は、インナーチューブ50の一部に直線状に、又は傾斜や湾曲等して所定形状に形成された、内外を連通させるガス通路51への切れ込み(スリット)であり、ここでは、インナーチューブ50を、下縁から上縁側に向けて先細り状に所定長さで切り取って、略三角形状の切欠き部に形成されている。
一方、分岐部71は、インナーチューブ50の対向面同士を縫製や接着等により接合した接合部であり、形成した切欠き部のガス流れ方向上流側の部分を開口させた状態で、この開口を除いた切欠き部の他の部分とガス通路51との間でインナーチューブ50を接合する。これにより、分岐部71は、切欠き部の一部(図2Bでは、右側縁部)をガス通路51と連通させ、そのガス流れ方向上流側のガス通路51から、下流側に向かって開口するガス流出口72を形成する。同時に、分岐部71は、切欠き部の他の部分を閉鎖してガス通路51を塞ぎ、ガス流れ方向上流側のガスを分岐させて、下縁側のガスをガス流出口72から開口方向に流出させるとともに、上縁側のガスを下流側のガス通路51に案内する。
また、このエアバッグ装置1の分岐部71(接合部)は、ガス流出口72を囲んで配置された、下流側接合部71Aと区画接合部71Bとを有し、それらがガス通路51に連続して形成されている。下流側接合部71Aは、インナーチューブ50に形成した切欠き部(又は、上記した切れ目)のガス流れ方向下流側の縁部(図2Bでは左側の傾斜縁部)同士を接合し、同側の開口を閉じてガス通路51を閉鎖する。区画接合部71Bは、インナーチューブ50のガス流出口72(切欠き部)を越えて、ガス流れ方向上流側(図2Bでは右側)に向かって延び、ガス通路51をガス流出口72側と他方側とに分割して、ガス流出口72を含む略筒状の分岐通路73をガス通路51から区画する。
インナーチューブ50は、この下流側接合部71Aにより、下縁からガス流出口72の上縁側端部までの範囲が、切欠き部に沿って直線状に傾斜して接合される。また、下流側接合部71Aの上端部から連続して、区画接合部71Bが、インナーチューブ50のガス流れ方向(長手方向)に沿って、ガス通路51の略中央部を上流側に向けて直線状に接合され、分岐部71が全体として屈曲形状に形成される。これにより、ガス通路51は、ガス流出口72に連通してガス流出部70を構成する分岐通路73と、その上縁側に配置された、ガス流れ方向下流側の開口部53へ向かう部分とに分岐される。また、このガス通路51は、ガス流れ方向に直交する方向の断面積(以下、単に断面積という)が、分岐通路73の形成位置で一旦小さくなり、その下流側で分岐前と略同じ大きさになっている。
なお、このエアバッグ装置1では、インナーチューブ50の各接合部(接合部55及び分岐部71の各接合部71A、71B)は、インナーチューブ50の対向面(基布)同士を縫製した縫製部を、それぞれ隣接して2重に形成することで接合されている。その際、分岐部71の縫製部は、下流側接合部71Aの下端から開始して区画接合部71Bの突出端で折り返し、再び下流側接合部71Aの下端まで連続して縫製する等して、両縫製端が、ガス通路51を流れるガスが直接当たる部分(特に、区画接合部71Bの突出端を含む端部領域)以外の位置に配置される。ただし、これら各接合部55、71A、71Bは、縫製部に重ねて接着剤を塗布し、縫製と接着とにより接合してもよく、又は、縫製に替えて、接着のみにより接合してもよい。
また、インナーチューブ50は、略筒状に形成された後、接合部55を挟んだ縁部側(図2Bでは上側)が、エアバッグ10の基布20、21(図1参照)間に挟み込まれ、その部分が、エアバッグ10の外縁接合部22の接合と同時に接合されて、エアバッグ10の上縁に沿って取り付けられる。その状態で、インフレータ40が作動すると、発生するガスが、布状部材60により整流されてインナーチューブ50の車両後方端側から導入され、ガス通路51内を、車両前方の開口部53に向かって供給される。インナーチューブ50は、このガス通路51に供給されるガスを案内して、エアバッグ10内の各部に供給する。
図3は、このようにガスを案内する状態のインナーチューブ50の要部を模式的に示す斜視図である。
インナーチューブ50は、図示のように、ガスの供給により、ガス流れ方向に沿って略筒状に順次膨張し、ガス通路51内を直線状に流れるガスを、まず、ガス流れ方向上流側(図では右側)の分岐部71(区画接合部71B)で2つに分岐させる。続いて、分岐させた一方のガスを分岐通路73により案内し、下流側のガス流出口72を開口させて、ガス通路51内のガスを、これらガス流出部70の分岐通路73及びガス流出口72を通して、ガス流れ方向に沿って外部に流出させる。この流出したガスは、分岐部71の下流側接合部71Aの両側を通過して、下流側の膨張するガス通路51を挟んだインナーチューブ50の両側面に沿って下方側に向けて流れ、後部気室32内に供給される。
また、インナーチューブ50内の分岐させた他方のガスは、分岐部71を越えて、ガス流出部70よりも下流側(図では左側)のガス通路51に達し、ガス通路51内を先端部の開口部53に向かって流れて、そこから前部気室31に流出して供給される。このように、インナーチューブ50は、インフレータ40(図1参照)から連続して供給されるガスをガス通路51により順次案内し、後部気室32と前部気室31へ、それぞれ連続して供給する。これにより、後部気室32の各小気室32A、32B内及び、前部気室31の各小気室31A、31B、31C、31D内に、上方側から下方に向けてガスを流入させる等して、それらを各々膨張させてエアバッグ10全体を膨張展開させる。
以上のように構成されるエアバッグ装置1は、所定の状態に折り畳まれたエアバッグ10が、インフレータ40等とともに、車両内側壁上方部のルーフレール部やフロントピラー部に車両前後方向に沿って取り付けられ、それらをトリム内に収納して車両に搭載される。その後、エアバッグ装置1は、車両の衝突時や緊急時等にインフレータ40を作動させてガスを発生させ、そのガスを、上記のようにインナーチューブ50により案内して、エアバッグ10内(気室30)に供給する。これにより、各気室31、32内にガスを流入させて膨張させ、エアバッグ10を、その折り畳み形状を解消させつつ、車両に取り付けられた取付片11、12側から、車両の下方向の車室内に向かってカーテン状に膨張展開させる。このようにして、エアバッグ10を、乗員と車両内側壁等との間に膨張展開させ、膨張した気室30により侵入する乗員を受け止めて、主に頭部を中心に乗員を拘束して保護する。
ここで、エアバッグ10の膨張展開時に、ガス流出口72が、ガス通路51内のガスの流れる方向に対して平行であると、ガスの流速に応じて、ガス流出口72からのガスの流出量が減少して、エアバッグ10の展開も遅くなる傾向がある。これに対し、本実施形態のエアバッグ装置1では、ガス流出口72をガス流れ方向に交差させて形成する等して、ガス流出部70により、ガス通路51のガスの流れを分岐させて、そのガス流れ方向に沿ってエアバッグ10内に流出させる。そのため、ガス通路51内のガスを、その流れを妨げずに、ガス流出部70のガス流出口72から流れに沿って円滑、確実に流出させることができ、流速や流出量を下げることなく、後部気室32にガスを素早くかつ必要量供給して、後部気室32を早期に展開させることができる。
また、このガス流出部70は、分岐部71により、分岐位置までのガス通路51に加えて、そこから下流側のガス通路51へ向かうガスの流れも妨げず、その流速を損なうこともない。その結果、ガス流出口72からガスを速い速度で多量に流出させつつ、ガス流れ方向下流側のガス通路51及び開口部53へも、ガスを停滞させずに流速を充分に維持して案内することができる。これに伴い、ガス通路51内でのガスの流れをスムーズにして、各気室31、32へ効率よくガスを供給でき、エアバッグ10の展開を早期に開始させて、その展開速度を速くすることもできる。
更に、このエアバッグ装置1では、ガス流出口72の切欠き長さやガス流れ方向に対する交差角度、又は開口形状や形成位置等を変更することで、気室30へ流出させるガスの量や供給位置を種々変化させることができる。一方、分岐部71の区画接合部71Bの長さやガス流れ方向に対する傾斜角度、又はガス通路51内での形成位置や形状等を変更することで、分岐させる各ガスのそれぞれの流量や流速、又は方向等を変化させることもできる。このように、ガス流出部70の各構成を変更することで、ガス流出口72から流出させるガスや、開口部53まで案内するガスを容易に調整でき、エアバッグ10や気室30各部の展開のタイミングや展開速度を適宜調整して、エアバッグ10を、各々に応じて適切に膨張展開させることができる。併せて、ガスの流出量を確保するために、ガス流出口72を大きくする必要もないため、エアバッグ10内の適切な位置に向かって狙い通りに、ガスを流出させて供給することもできる。
従って、本実施形態によれば、ガス通路51からエアバッグ10内に流出させるガスの調整を容易に行え、ガス通路51から適切にガスを流出させることができ、エアバッグ10内の各部にガスを効率よくスムーズに供給して、エアバッグ装置1のエアバッグ10を早期かつ確実に展開させることができる。これに伴い、エアバッグ10の全体を車両内側壁に沿って迅速かつ安定して膨張展開させて、その展開特性を高めることができ、乗員を確実に拘束して保護することができる。
また、ここでは、分岐部71の区画接合部71Bにより、ガス通路51を区画して分岐通路73を形成するため、ガス通路51内を流れるガスを確実に分岐させて、それぞれに応じた流量を確保できる。同時に、ガス流出口72に繋がる分岐通路73が、ガスの供給に応じて略筒状に膨張するので、供給されるガス(特に、初期に流入するガス)を、確実にガス流出口72へ向けて案内することができる。しかも、この分岐通路73を含む分岐された2つのガス通路51は、断面積の和が、その上流側のガス通路51の断面積に対して小さくなり、それぞれ細く形成される。その結果、分岐通路73内では、上流側のガス通路51に比べて、ガスの流速が速くなるため、ガス流出口72から後部気室32へ、ガスを速い速度で効率よく流出させることもできる。
更に、ガス流出部70を形成する際に、インナーチューブ50に切れ目を形成してガス流出口72にする場合には、裁断作業が容易で作業効率が高くなり、かつ、切りくずも出ないので廃棄物を削減することもできる。一方、インナーチューブ50に切欠き部を形成してガス流出口72にする場合には、切欠きの形状や方向を変更することで、ガス流出口72の大きさや形状等を適宜変化させることができ、そこから流出するガスの流量や方向等を容易に調整することができる。これにより、例えばガス流出口72を、その下端部をガス流れ方向上流側に配置して傾斜させて形成すると、ガス流出口72が下方側に向かって大きく開口し、そこからのガスが下方の後部気室32側に流れ易くなり、エアバッグ10の展開をより早期に行える。
なお、本実施形態では、ガス流出部70の分岐部71に、下流側接合部71Aと区画接合部71Bとを設けたが、分岐部71は、下流側接合部71Aのみにより形成してもよい。これにより、インナーチューブ50の切欠き部等を挟んだ一方側の縁部を接合するだけでガス流出部70の形成が可能となり、接合やインナーチューブ50の形成作業を容易に行え、作業効率を向上させることができる。
これに対し、分岐部71は、区画接合部71Bからガス流れ方向下流側に向かって、そのインナーチューブ50の接合を延長させ、例えば、区画接合部71Bから開口部53まで、ガス流れ方向に沿って直線状に連続して接合する等して延長接合部を形成してもよい。このように、ガス流出部70を構成する接合部に延長接合部を設けることで、ガス流出部70を挟んだ上流側に対し、下流側のガス通路51の断面積を小さくして、下流側に向かって略一定に維持することができる。その結果、分岐させたガス通路51の断面積が、開口部53まで、又は下流側に他のガス流出部70があるときには次に分岐させるまで大きくならないので、その間のガス通路51内で、流速を落とすことなくガスを流すことができる。従って、供給されるガスを、ガス通路51により流速を維持して円滑に案内でき、その全体に亘って素早く供給して、エアバッグ10の各気室31、32へ迅速に流出させ、エアバッグ10の各部や全体の展開を早期に開始させることができる。
また、インナーチューブ50は、エアバッグ10と同様のエアバッグ用基布から形成することで、各基布20、21と同種・同等の性能を付与できるため、そのように形成するのが望ましい。その際、インナーチューブ50は、ノンコート基布を使用してもよいが、耐熱性や気密性を有する樹脂やゴム等の被覆層が設けられたコーティング基布を使用してもよく、この場合には、被覆層側の面を対向させた状態で接合され、ガス通路51側に被覆層側の面が配置される。加えて、インナーチューブ50の各接合部に、その対向面同士を縫製した縫製部を設けることで、接合強度を高めて、破損やガス漏れをより確実に抑制することができる。
以上、ガス通路51に、1つのガス流出部70を設けたエアバッグ10を例に説明したが、ガス流出部70は、ガス通路51からエアバッグ10内にガスを流出させる位置や数に応じて、ガス通路51の複数箇所に形成してもよい。この場合には、各位置で、上記と同様に、分岐部71とガス流出口72とを互いに対応させて形成し、インナーチューブ50の長手方向に沿って複数組み配置する。
また、本実施形態では、エアバッグ10内に配置したインナーチューブ50によりガス通路51を構成したが、エアバッグ10内にインナーチューブ50を配置せずに、ガス通路51をエアバッグ10に直接形成してもよい。この場合には、例えば、エアバッグ10の基布20、21自体を縫製や接着等により接合して、インナーチューブ50のガス通路51と同様の領域を、エアバッグ10の上縁側に沿って、ガス導入口13から連続させて区画し、この区画領域をガス通路51として使用する。また、この区画用の接合部の途中に、基布20、21同士を接合しない部分を設け、その部分でガス通路51を後部気室32と連通させてガス流出口72とし、接合端でガス通路51を前部気室31に開放して開口部53を形成する。併せて、ガス流出口72付近の基布20、21同士を、ガス通路51内に向かって屈曲等させて接合することで分岐部71を形成し、ガス流出口72をガス通路51からガス流れ方向下流側に向けて開口させ、ガス流出部70を形成する。このように形成したガス通路51により、インフレータ40から供給されるガスを案内し、上記と同様に、ガス流出部70と開口部53とを介して、各気室31、32にガスを供給する。
本実施形態のエアバッグ装置の要部を模式的に示す正面図である。 本実施形態のインナーチューブを概略的に示す模式図である。 ガスを案内する状態のインナーチューブの要部を模式的に示す斜視図である。
符号の説明
1・・・エアバッグ装置、10・・・エアバッグ、11・・・上部取付片、12・・・前部取付片、13・・・ガス導入口、20・・・表側基布、21・・・裏側基布、22・・・外縁接合部、23、24、25、26・・・内側接合部、30・・・気室、31・・・前部気室、31A、31B、31C、31D・・・小気室、32・・・後部気室、32A、32B・・・小気室、33・・・連結部、40・・・インフレータ、41・・・小径部、42・・・ガス噴出し口、45・・・クランプ、50・・・インナーチューブ、51・・・ガス通路、53・・・開口部、55・・・接合部、60・・・布状部材、70・・・ガス流出部、71・・・分岐部、72・・・ガス流出口、73・・・分岐通路。

Claims (5)

  1. 車室内側壁の上方部に折り畳まれた状態で車両前後方向に沿って取り付けられるエアバッグと、エアバッグにガスを供給して膨張展開させるインフレータとを備え、エアバッグ内の上縁側に沿って、インフレータから供給されるガスを案内するガス通路を有するエアバッグ装置であって、
    エアバッグ内の上縁側に沿って配置され、インフレータからガスが供給されるインナーチューブを備えるとともに、ガス通路がインナーチューブ内に形成され、
    ガス通路に、ガスの流れを分岐させる分岐部と、分岐させたガスをガス流れ方向に沿ってエアバッグ内に流出させるガス流出口と、を有するガス流出部を備え
    ガス流出部が、インナーチューブに形成されたガス流出口を構成する切れ目又は切欠き部と、切れ目又は切欠き部のガス流れ方向上流側の少なくとも一部を開口させてガス通路との間を塞ぐ分岐部を構成するインナーチューブの接合部と、からなることを特徴とするエアバッグ装置。
  2. 請求項1に記載されたエアバッグ装置において、
    インナーチューブの接合部が、切れ目又は切欠き部のガス流れ方向下流側の縁部同士を接合した下流側接合部を有することを特徴とするエアバッグ装置。
  3. 請求項1又は2に記載されたエアバッグ装置において、
    インナーチューブの接合部が、切れ目又は切欠き部の開口を越えてガス流れ方向上流側に向かって延びるガス通路を区画する区画接合部を有することを特徴とするエアバッグ装置。
  4. 請求項3に記載されたエアバッグ装置において、
    インナーチューブの接合部が、区画接合部からガス流れ方向下流側に向かって延長された延長接合部を有することを特徴とするエアバッグ装置。
  5. 請求項1ないしのいずれかに記載されたエアバッグ装置において、
    インナーチューブの接合部が、インナーチューブの対向面同士を縫製した縫製部を有することを特徴とするエアバッグ装置
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