JP5117245B2 - 光ファイバテープ心線 - Google Patents

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Description

この発明は、光ファイバテープ心線に関し、特に難燃性を有する光ファイバテープ心線に関する。
機器内の信号伝送に用いられる方式としては、電気伝送方式及び光インターコネクション方式の二種類がある。近年のCPUクロック周波数の高速化に伴い、電気伝送方式においては、高密度配線によるクロストークの発生が問題となり、波形成形技術等の適用が必要となってきている。この結果、機器内での信号伝送方式として電気伝送方式を適用した場合には、伝送距離100m及び伝送速度10Gbps程度が伝送限界となることが分かってきている。
一方、機器内での信号伝送方式として光インターコネクション方式を適用すれば、電気伝送方式と比較して遥かに広帯域な伝送を行うことが可能であるとともに、小型かつ低消費電力の光部品を使用した信号伝送システムを構築できる。このため、光インターコネクション方式は、電気伝送方式に代わる機器内信号伝送技術として現在注目されている。
光インターコネクション方式には、光伝送手段として光導波回路を用いた方式や光ファイバを用いた方式があるが、機器内で使用される全ての光部品はできるだけ省スペース収納可能であることが望ましいことから、フレキシブルな配線が可能であり、かつ低損失な光伝送が可能である光ファイバは光インターコネクションに適した光部品の一つと位置づけられている。
一方、近年、火災防止の観点や環境負荷の低減の要請から、電子・電気機器内部に使用される配線部材を含む部品には難燃性が要求され、かつ、これらの部品が炎に曝された場合でも、燃焼時に塩化水素ガス等の有害ガスを発生するおそれがないことが求められている。
これに対して、光ファイバ及び光ファイバテープ心線の多くは紫外線硬化樹脂によって被覆されているが、一般的な紫外線硬化樹脂被覆層は難燃性ではない。そこで、紫外線硬化樹脂被覆光ファイバ心線あるいは光ファイバテープ心線に難燃性を付与するためには、例えば一層または複数層の紫外線硬化樹脂被覆層で被覆し、束状にされたこれら複数の光ファイバ心線のさらに外側を難燃性ポリ塩化ビニル(PVC)あるいは難燃性ポリエチレン(PE)等のいわゆる難燃性熱可塑樹脂からなる最外被覆層で被覆する必要があった(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、紫外線硬化樹脂被覆層の外側に難燃性の熱可塑性樹脂からなる被覆層を設けると次のような問題があった。即ち、
1)製造工程が1工程増えて生産性が低下する。
2)熱可塑性樹脂からなる被覆層は押出被覆により形成するため、被覆厚を薄くするのには限界があり、その結果光ファイバテープ心線の心線断面積が大きくなり、機器内配線において小スペースに収納する場合、曲げ径を小さくできない。
そこで、光ファイバテープ心線の心線断面積を小さくし、かつ難燃性を付与するために、難燃性紫外線硬化樹脂で被覆した光ファイバ及び光ファイバテープ心線が提案されている(例えば、特許文献2及び3)。
また、前記難燃紫外線硬化樹脂としてはハロゲン化エポキシ樹脂を含む被覆材が一例として挙げられる(特許文献4)。しかし、このような樹脂を含む被覆材の場合、炎に曝されると燃焼時に塩化水素ガス等の有害ガスを発生するおそれが生じ、環境負荷の低減という観点からは好ましくない。
一方、前記難燃紫外線硬化樹脂として実質的にハロゲンを含まない被覆材も提案されている(特許文献5)。
特開2002−214492 実開平5−96811 特開2005−326567 特開2004−83404 特開2005−189816
しかしながら、引用文献5に記載されているような実質的にハロゲンを含まない樹脂の場合、難燃性を付与するために金属酸化物、金属水酸化物や金属炭酸塩等が顔料分散体として比較的多量に含まれており、難燃性の向上に一定の効果を発揮するが、より高い難燃性の付与を目的とした場合には、配合量を増加する必要が生じる。一方、これら金属酸化物、金属水酸化物や金属炭酸塩等の顔料分散体は、配合量が増加するに伴い、樹脂の硬化に必要な紫外線エネルギーを遮蔽する効果も増大し、被覆層内部が硬化しにくくなる。その結果、光ファイバテープ心線の断面形状を保持することが困難になり、この光ファイバテープ心線をコネクタ接続する場合、コネクタ内での光ファイバ突合せ位置が断面形状の崩れによって正しい位置からずれてしまい、接続部での伝送損失が増加する原因となる。そのため、樹脂硬化の妨げにならないような配合量に調節する必要が生じ、所望の難燃性に届かないという問題点が生じる。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、光ファイバテープ心線の断面積を小さくし、かつ、より高い難燃性を有する光ファイバテープ心線を提供することにある。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る光ファイバテープ心線は、ガラス光ファイバの外周に被覆を有する光ファイバ心線を平行に並べテープ被覆によって一括被覆した光ファイバテープ心線であって、前記テープ被覆は前記光ファイバ心線を被覆する第1テープ被覆と、前記第1テープ被覆の外周を被覆する第2テープ被覆からなり、前記第1テープ被覆と前記第2テープ被覆のうち一方が、照射硬化性モノマー及びオリゴマー及びリン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィンオキシド類、難燃性窒素含有へテロ環状エチレン性不飽和化合物、リン含有アクリレート、メタクリレート官能性オリゴマー、及びこれらの混合物のうち少なくとも一つの難燃性物質Aと、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属酸化物、及びこれらの混合物のうち少なくとも一つの難燃性物質Bと、を含む紫外線硬化樹脂からなり、残るもう一方が紫外線硬化型のシリコーン樹脂からなることを特徴とする。
また、本発明に係る光ファイバテープ心線は、上記の発明において、前記第1テープ被覆及び前記第2テープ被覆が実質的にハロゲンを含まない難燃性の紫外線硬化樹脂であることを特徴とする。
また、本発明に係る光ファイバテープ心線は、上記の発明において、前記難燃性物質Bが、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及びこれらの混合物のうち少なくとも1つであることを特徴とする。
また、本発明に係る光ファイバテープ心線は、上記の発明において、前記難燃性物質Aが、リン酸エステル又はホスホン酸エステル、トリフェニルホスフェート、ジエチルエチルホスホネート、トリス(2−シアノエチル)ホスフィンオキシド、及びこれらの混合物のうち少なくとも1つであることを特徴とする。
また、本発明に係る光ファイバテープ心線は、上記の発明において、前記難燃性物質Aが、エチレン性不飽和リン含有ウレタンオリゴマーであることを特徴とする。
また、本発明に係る光ファイバテープ心線は、上記の発明において、前記紫外線硬化型のシリコーン樹脂からなる被覆は第1テープ被覆であることを特徴とする。
本発明に係る光ファイバテープ心線は、光ファイバテープ心線の断面積を小さくし、かつ、より高い難燃性を有する光ファイバテープ心線を実現できるという効果を奏する。
以下に、図面を参照して本発明に係る光ファイバテープ心線の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
図1は、本発明の実施の形態1に係る光ファイバテープ心線を模式的に表した断面図である。図1に示すように、本実施の形態1に係る光ファイバテープ心線11は、ガラス光ファイバ15の外周に一次被覆層16と、二次被覆層17と着色層18を備えた光ファイバ心線12を4本平行に並べ、第1テープ被覆13、第2テープ被覆14によって一括被覆して形成したものである。
なお、図1では、光ファイバ心線12同士が接触して配置された光ファイバテープ心線を示しているが、光ファイバ心線12同士は非接触の状態で配置してもよい。また、光ファイバ心線12の本数は4本に限定されない。
第1テープ被覆と第2テープ被覆のうち一方は、少なくとも一つの難燃性物質Aと、少なくとも一つの難燃性物質Bと、を含む紫外線硬化樹脂からなる。
難燃性物質Aおよび難燃性物質Bはいずれもハロゲンを含まない。
もう一方の被覆は紫外線硬化型のシリコーン樹脂からなる。シリコーン樹脂はそれ自身が難燃性を有しており、難燃紫外線硬化樹脂と組み合わせることで、該光ファイバテープ心線の難燃性を向上させることができる。該紫外線硬化型シリコーン樹脂の難燃性は白金化合物、酸化チタン、酸化鉄、カーボン、金属炭酸塩などを配合することによってさらに向上させることが可能であり、本発明の目的を損なわない範囲でこれらのうち少なくとも一つの物質を含むことができる。
また、紫外線硬化型のシリコーン樹脂からなる被覆を第1テープ被覆とすることにより、外部からの歪を第1テープ被覆層で吸収することができ、光ファイバテープ心線の外部からの側圧が原因となる伝送損失の増加を抑制できる。このとき、紫外線硬化型のシリコーン樹脂は、25℃でのヤング率が3Mpa以下であることが望ましく、より好ましくは1MPa以下である。
難燃性物質Aとしては、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィンオキシド類、難燃性窒素含有へテロ環状エチレン性不飽和化合物、リン含有アクリレート、メタクリレート官能性オリゴマー、及びこれらの混合物がある。
また、第1テープ被覆のみに含まれる難燃性物質Bとしては、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属酸化物、及びこれらの混合物がある。
さらに具体的には、難燃性物質Aとしては、とりわけてリンは、可溶性で難燃性の有機誘導体として該組成物に加えることができる。適当な難燃性有機リン化合物の例は、トリアリールリン酸エステル及びトリキシリルリン酸エステル、環状ジホスホン酸エステルなどのようなアリールリン酸エステルが含まれる。イソプロピル化トリフェニルリン酸エステルのようなアルキル化トリフェニルリン酸エステルは、特に好ましい。本発明で使用するのに適する他のリン酸エステル及びホスホン酸エステルの例には、アルキルリン酸エステル、アリールリン酸エステル、アルキルアリールリン酸エステル、アルキル化ポリフェニルリン酸エステルのようなアルキル化ポリアリールリン酸エステル、アルキルホスホン酸エステル、アリールホスホン酸エステル、アルキルアリールホスホン酸エステル、及び、アルキル化ポリフェニルホスホン酸エステルのようなアルキル化ポリアリールホスホン酸エステルが含まれる。本発明で使用するのに適する難燃性窒素含有複素環式エチレン性不飽和オリゴマーには、五官能性アクリル酸メラミン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのアクリル酸又はメタクリル酸エステル、イソシアヌル酸トリアリル、シアヌル酸トリアリル、及び、トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジンが含まれる。
難燃性物質Bとしては、アンチモン、ホウ素、スズ、モリブデン、リン、アルミニウム、マグネシウム、及び亜鉛のような元素を用いることができる。これらの元素は、たとえば未硬化の紫外線硬化樹脂に、酸化物、水酸化物、及び炭酸塩として、また、当酸化物、水酸化物及び炭酸塩の水和物として含ませることができる。
金属酸化物としては、アルミナ3水和物としても知られている3水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどがある。酸化アンチモン、3酸化アンチモン、5酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、及び酸化アンチモン類の水和物、酸化モリブデン類、炭酸カルシウム、酸化スズ、スズ酸亜鉛、水酸化スズ酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、及びメタホウ酸バリウムのような他の金属酸化物も適している。
なお、難燃性物質Bは、粒径の表面への浮き出しを小さく抑え、かつ光ファイバ心線のマイクロベンドロスの発生を抑制する観点から、小粒径の顔料分散体として含ませることが好ましい。
本発明の、ハロゲンを含まない難燃性紫外線硬化樹脂を製造するための適当な成分の例は、たとえば米国特許第7,221,841号(特開2005−189816)等にも開示されている。
本発明によれば、第1テープ被覆と第2テープ被覆のうち一方が、照射硬化性モノマー及びオリゴマーに、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィンオキシド類、難燃性窒素含有へテロ環状エチレン性不飽和化合物、リン含有アクリレート、メタクリレート官能性オリゴマー、及びこれらの混合物のうち少なくとも一つの難燃性物質Aと、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属酸化物、及びこれらの混合物のうち少なくとも一つの難燃性物質Bと、を加えた紫外線硬化樹脂からなり、残るもう一方が紫外線硬化型のシリコーン樹脂からなることにより、紫外線硬化樹脂に対して、樹脂の硬化性を阻害するおそれが無い程度に難燃性物質Aおよび難燃性物質Bの配合量を調節し、さらに難燃効果を有するシリコーンタイプの紫外線硬化樹脂を組み合わせることによって、難燃性が飛躍的に向上する。さらに、断面積の小さな難燃性光ファイバテープ心線が得られると共に、燃焼時に有害ガスが発生するおそれが無い光ファイバテープ心線とすることができる。
難燃性物質Aとしては、リン酸エステル又はホスホン酸エステル、トリフェニルホスフェート、ジエチルエチルホスホネート、トリス(2−シアノエチル)ホスフィンオキシド、及びこれらの混合物のうち少なくとも1つであることが、ハロゲンを含まないという観点から好ましい。
さらに難燃性物質Aとしてはエチレン性不飽和リン含有ウレタンオリゴマーであることがさらに好ましい。当該リン含有ウレタンアクリレートオリゴマーは、何ら追加の難燃性物質を添加することなく、本発明の照射硬化性オリゴマーとして、及び本発明の光ファイバテープ心線被覆組成物の難燃性物質として機能しうる。
ただし、当然ながら、当該リン含有ウレタン( メタ) アクリレートオリゴマーのみならず、別の種類の難燃性物質Aを加えることもできる。このように別の種類の難燃性物質Aをさらに加えた場合は、より確実な難燃性を得ることができる。
難燃性物質Bとしては、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及びこれらの混合物のうち少なくとも1つであることが、水和物であるという観点から好ましい。即ち、含水物質であるがゆえに、燃焼時に水分子の離脱が生じ、その際に燃焼熱を下げる効果を発揮するからである。
本発明に従って製造された実施例1〜6と比較例1〜6のデータを表1に示す。
Figure 0005117245
(実施例1〜6、比較例6)
図1に示す構成の光ファイバテープ心線11のため、外径約125μmのガラス光ファイバ15の外周に、ウレタンアクリレート系の紫外線硬化樹脂からなる柔らかい1次被覆層16と硬い2次被覆層17を被覆し、更にその外周に紫外線硬化樹脂からなる着色材を塗布して着色層18を形成し、外径約250μmの光ファイバ心線12を製造した。光ファイバ心線は、ITU−T(International Telecommunication Union Telecommunication Standard Sector)G.652準拠のシングルモード光ファイバとした。そして、この光ファイバ心線12の4本を帯状に並べ、紫外線硬化樹脂である第1テープ被覆13によって一括被覆した光ファイバテープ心線の外周をさらに紫外線硬化樹脂である第2テープ被覆14によって被覆した光ファイバテープ心線11を製造した。
なお、第1テープ被覆、第2テープ被覆は、いずれか一方が紫外線硬化型のシリコーン樹脂であり、他のもう一方が照射硬化性モノマー及びオリゴマーからなるウレタンアクリレートベースの非難燃紫外線樹脂に難燃剤を混合して形成したものである。
(比較例1〜5)
テープ被覆を1層とした以外は、前述の実施例1〜6、比較例6と同様にして光ファイバテープ心線を製造した。
得られた実施例、比較例の心光ファイバテープ心線の幅と厚さを以下の表2に示す。
Figure 0005117245
尚、本発明はここに示す光ファイバテープ心線の幅と厚さに制限されるものではないが、好ましい光ファイバテープ心線の幅としては1.05〜1.20mmの範囲であり、より好ましい範囲は1.06〜1.15mmである。また、光ファイバテープ心線として好ましい厚さとしては0.29〜0.40mmの範囲であり、より好ましい範囲は0.30〜0.36mmの間である。光ファイバテープ心線の幅が1.05mm未満または厚さが0.29mm未満の場合、テープ被覆層が薄すぎて、内部の光ファイバの全周囲を覆うことができない場合が生じる。逆に光ファイバテープ心線の幅が1.20mmよりも広い、あるいは厚さが0.40mmよりも厚い場合、光ファイバ心線同士の谷間に存在するテープ被覆樹脂が十分に硬化しなくなり、コネクタ接続の際の光ファイバテープ心線解体時に未硬化樹脂によるべたつき等の不具合が生じる場合があるためである。
それぞれの光学特性、コネクタ接続性及び燃焼性を表2に示す。
なお、実施例、比較例に例示した光ファイバテープ心線の試験方法は以下の通りである。
(接続損失)
各実施例、比較例につき2本ずつ光ファイバテープ心線を用意し、光ファイバテープ心線の先端にコネクタを取り付け、コネクタ接続し、接続損失を測定した。4本の光ファイバの接続損失の平均値を表1に記す。なお、接続損失は波長(λ)1.30μmのLD光を光ファイバテープ心線の一端側から入射し、コネクタ接続部を介した場合とコネクタ接続部を介さず、同長さの1本の光ファイバテープ心線とした場合の光ファイバテープ心線の他端からの出射光を光パワメータで測定し、その差を算出することにより得た。
コネクタ接続部にはJIS規格C5981に規定されるMTコネクタの4心タイプ(古河電気工業(株)社製)を用いた。該コネクタは2本のガイドピンによりフェルール内の光ファイバを精密位置決めして突き合わせ、クリップで一定の押し圧をかけることにより、安定した接続状態を確保する構造になっている。
(同心度)
JIS規格C5961に規定される、フェルールの中心軸と光ファイバのコア中心軸との距離の2倍として定義されるものである。測定方法はフェルール外径基準方法とした。
(側圧特性)
胴(外径:1m)の部分にJISで規定する#1000のサンドペーパを貼りつけ、ここに、100gの巻き付け張力で光ファイバテープ心線11を1層(約500mの長さ)に巻き付ける。ついで、巻き付けてから30分以内にカットバック法(例えば 大久保勝彦著、ISDN時代の光ファイバ技術、理工学社、1989年、第(3−15)〜(3〜16)頁を参照)により測定波長1550nmにおける伝送損失(L1)を測定する。
一方、同じ光ファイバテープ心線の束状態(ボビンに巻き付けていない状態で約1000m)につき、同じくカットバック法で測定波長1550nmで伝送損失(L2)を測定する。
そして、L1−L2をそれぞれの心線に対して計算し、その値を損失増加分とする。この値が小さいほど、その光ファイバは対側圧特性に優れている。尚、表1では光ファイバテープ心線に含まれる4心の損失増加分の平均値を示している。
(難燃性)
UL規格(UL94「機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験方法」)に準じ、燃焼性試験を行い判断した。「VTM-1」、「VTM-2」は以下の燃焼程度を示す基準である。
厚さ約100μmのフィルム状の試料を円筒型に保持し、1組5枚の試料に対して各試料につき3秒間の接炎を2回行い、その場合の燃焼時間の合計、燃焼距離により下記の如く、クラス分類する。VTM-1はVTM-2よりも、VTM-0はVTM-1よりもさらに燃焼しにくいことを意味する。
尚、厚さ約100μmのフィルム状の試料は次のように作成した。紫外線硬化型のシリコーン樹脂を窒素雰囲気下でUV硬化(メタルハライドランプ 240W/cm)によって厚さ50μmのフィルム状に成型した。さらに、難燃性紫外線硬化樹脂をシリコーン樹脂で成型したフィルム上に積層した合計厚さ100μmのフィルム状サンプルとして成型した。
比較例としては、難燃性紫外線硬化樹脂のみで100μmに成型したフィルムを用いた。
なお、難燃性紫外線硬化樹脂は、表1に示すように、ウレタンアクリレートベースの非難燃紫外線樹脂に難燃性物質Aおよび難燃性物質Bを混合して形成した。

燃焼クラス判定基準 VTM-0 VTM-1 VTM-2
各試料の残炎燃焼時間 ≦10秒 ≦30秒 ≦30秒
5枚の試料の燃焼時間合計 ≦50秒 ≦250秒 ≦250秒
第2回接炎後の残炎時間+無炎燃焼時間 ≦30秒 ≦60秒 ≦60秒
滴下物による綿への着火の有無 なし なし あり
125mm標線までの残炎又は無炎燃焼の有無 なし なし なし
上記のように、実施例1〜6に関しては、シリコーン樹脂層を有するため、いずれの場合についても良好な難燃性を示している。さらに実施例5、6では、第1テープ被覆層にヤング率が1Mpa以下の紫外線硬化型のシリコーン樹脂を配置していることから、側圧特性が良好である。一方、比較例1〜3ではシリコーン樹脂層がないため、難燃性物質A、難燃性物質Bのどちらか一方、もしくは両方配合されていたとしても難燃性がVTM-0に合格せず、本発明の実施例に比べて劣る結果となっている。また、比較例4に至っては、難燃性が全く認められない。比較例5では、シリコーン樹脂層が無い代わりに難燃性物質Bとして水酸化アルミニウムが多量に配合されているため、難燃性は良好であるが、内部の硬化不足のために接続損失及び同心度が悪化しており、側圧特性も本発明の実施例に比べて劣る結果となっている。さらに比較例6に関しては、第1テープ被覆層にヤング率が1Mpa以下の紫外線硬化型のシリコーン樹脂を配置していることから、側圧特性は良好であるが、難燃性物質Bとして水酸化マグネシウムが多量に配合されているため、内部の硬化不足が生じ、接続損失及び同心度が本発明の実施例に比べて劣っている。
以上より、本発明による光ファイバテープ心線は、難燃性リン系化合物と難燃性顔料が配合されている難燃紫外線硬化樹脂層とシリコーン樹脂層の二層構造にすることにより高い難燃性を維持することが可能となり、燃焼時に塩化水素ガス等の有害ガスが発生するおそれが無い。
本発明の一実施形態にかかる光ファイバテープ心線の一実施形態を示す断面図である。
符号の説明
11…光ファイバテープ心線
12…光ファイバ心線
13…第1テープ被覆
14…第2テープ被覆
15…ガラス光ファイバ
16…1次被覆層
17…2次被覆層
18…着色層

Claims (5)

  1. ガラス光ファイバの外周に被覆を有する光ファイバ心線を平行に並べテープ被覆によって一括被覆した光ファイバテープ心線であって、
    前記テープ被覆は前記光ファイバ心線を被覆する難燃性の第1テープ被覆と、前記第1テープ被覆の外周を被覆する難燃性の第2テープ被覆からなり、
    記第2テープ被覆が、照射硬化性モノマー及びオリゴマーに、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィンオキシド類、難燃性窒素含有へテロ環状エチレン性不飽和化合物、リン含有アクリレート、メタクリレート官能性オリゴマー、及びこれらの混合物のうち少なくとも一つの難燃性物質Aと、
    金属水酸化物、金属炭酸塩、金属酸化物、及びこれらの混合物のうち少なくとも一つの難燃性物質Bと、を加えた紫外線硬化樹脂からなり、
    前記第1テープ被覆、25℃でのヤング率が3MPa以下である紫外線硬化型のシリコーン樹脂からなり、
    前記第1テープ被覆と前記第2テープ被覆とが共同して所望の難燃性を達成することを特徴とする難燃性光ファイバテープ心線。
  2. 前記第1テープ被覆及び前記第2テープ被覆が実質的にハロゲンを含まない難燃性の紫外線硬化樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバテープ心線。
  3. 前記難燃性物質Bが、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及びこれらの混合物のうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光ファイバテープ心線。
  4. 前記難燃性物質Aが、リン酸エステル又はホスホン酸エステル、トリフェニルホスフェート、ジエチルエチルホスホネート、トリス(2−シアノエチル)ホスフィンオキシド、及びこれらの混合物のうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載光ファイバテープ心線。
  5. 前記難燃性物質Aが、エチレン性不飽和リン含有ウレタンオリゴマーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載光ファイバテープ心線。
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