JP5116706B2 - 表面保護シート - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、電子部品に設けられているリードフレーム金属板等をメッキ処理する際に非メッキ部分のマスキング用(保護用)に用いられる表面保護シート(マスキングシート)が記載されている。また、特許文献2には、光学製品用樹脂フィルムをロール状に巻き取ったり、または積み重ねて保管する際の該フィルムの表面を保護する目的に用いられるポリエチレン系表面保護フィルムが記載されている。また、特許文献3には、最表面にハードコート層または反射防止層を有する光学部材としての樹脂板の表面を長期にわたって保護する目的に使用される光学部材用表面保護フィルムが記載されている。
かかる表面保護シートは、一般に、被着体に貼り付けた際に当該被着体の表面(即ち保護される側の表面)を構成する基材と、当該表面保護シートを被着体に貼り付けるための粘着剤層とを備えるポリマー積層体として製造される。そして、かかる積層構造のポリマー製表面保護シートは、被着体の表面保護が必要な時期が終了すれば当該被着体から剥がされる形態の製品である。従って、この種の表面保護シートに望まれる一般的な性能として、表面保護が要求される時期には当該被着体に確実に接着されることと、表面保護を必要とする時期がすぎれば当該被着体の表面から容易に引き剥がすことができること(即ち被着体に対する非汚染性)との両立が要求される。上述した特許文献2や3に記載されている表面保護フィルム類についても、かかる表面保護シートに求められる一般的な要求(接着性能、非汚染性能)が考慮されている。
例えば、液晶テレビ等の液晶表示装置に用いられている偏光板は、典型的には、ヨウ素または二色性染料で染色したポリビニルアルコール(PVA)系樹脂から成る偏光フィルム(偏光子)と該偏光フィルムの両側若しくは片側に貼り付けられるトリアセチルセルロース(TAC)等から成る透明保護フィルム(以下「TACフィルム」と略称する。)とを有する積層構造体として形成されているが、かかる偏光板のTACフィルムの一方の表面をアルカリ水溶液で鹸化処理する場合がある。
具体的には、上記積層構造の偏光板(若しくは偏光子に貼り合わせる前のTACフィルム)をアルカリ水溶液に浸漬し、目的とするTACフィルムの一方の表面を親水化する鹸化処理が行われる。このとき、親水化を要しない偏光板の他方の表面(若しくは偏光子に貼り合わせる前のTACフィルムを鹸化処理する場合は親水化を要しない他方の表面)がアルカリ水溶液によって浸食(影響)されないように、ポリマー製表面保護シートを貼り付けることが行われる。特に、上記鹸化処理に供される偏光板(若しくはTACフィルム)の上記親水化を要しない側の表面には、予め種々の機能性表面、例えばアンチグレア(AG)処理面、アンチリフレクション(AR)処理面、等が形成されている場合も多く、かかる機能性表面がアルカリ水溶液によって浸食されることを防止するという面からも当該機能性表面に表面保護シートを貼り付けることは重要である。
しかし、かかる離型処理を行うことは、表面保護シート製造工程が煩雑となり、また、その離型処理工程の分だけ表面保護シートの製造コストが増大することになり好ましくない。
即ち、本発明の一つの目的は、水処理を伴うプロセスを経て製造若しくは使用される被着体の表面を保護するための表面保護シート(即ち少なくとも当該水処理が行われている間の該被着体の表面を保護する表面保護シート)であって、上記製造コスト増につながる煩雑な離型処理を行うことなく撥水性に優れる表面保護シートを提供することである。
また、そのような性状の表面保護シートを好適に製造する方法を提供することを他の一つの目的とする。また、そのような性状の表面保護シートが貼り付けられた被着体を提供することを他の一つの目的とする。また、そのような性状の表面保護シートを貼り付けることを特徴とする被着体の水処理方法(例えばアルカリ水溶液による鹸化方法)を提供することを他の一つの目的とする。
即ち、ここで開示される表面保護シートの好ましい一態様は、水処理を伴うプロセスを経て製造若しくは使用される被着体の表面を保護するための表面保護シートであって、少なくとも当該水処理が行われている間の当該被着体の表面を保護するための表面保護シートである。
この表面保護シートは、少なくとも表面部がオレフィン系ポリマー成形材料から成る、単層または積層構造(典型的には二層若しくは三層構造)の基材層と、該基材層の該表面部とは反対側に形成され、上記被着体の表面に貼り付けられる粘着剤層とを備えている。
そして、上記基材層のオレフィン系ポリマー成形材料から成る表面部は、該表面部に容積40μLの水滴を滴下して該水滴が該滴下位置から転がり始める最小の傾斜角(以下「水滴転がり傾斜角」と略称する。)が水平面を基準として40°(度)未満であるであることを特徴とする。
即ち、ここで開示される水処理用表面保護シートは、基材層の少なくとも表面部が上記の「水滴転がり傾斜角」が水平面を基準として40°未満となるように形成されていることにより、従来のような基材層表面を離型処理(例えばシリコーン系樹脂から成る離型剤の付与)することなく、典型的には成形された状態そのままの何ら離型処理を施していないオレフィン系ポリマー成形材料から成る基材層表面において、所定の水処理の際に付着した水分(液滴)を好適に除去し得る優れた撥水性を有する。
従って、ここで開示される水処理用表面保護シートによると、煩雑な処理工程の増加と製造コスト増を招く離型処理を行うことなく、優れた撥水性を実現し、結果、目的とする被着体の表面を水処理から保護すると共に、水処理後の残留液滴や残留溶質成分(例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリ成分)によって表面保護シートを剥離する際に生じ得る被着体表面に対する悪影響を未然に回避することができる。
上記水滴転がり傾斜角を具備することに加えてかかる接触角を示す水処理用表面保護シートによると、より優れた撥水性(水切りの良さ)を実現し、水処理を伴うプロセスを経て製造若しくは使用される被着体の表面をより好適に保護することができる。
ダイス温度が200℃以上に設定された比較的高温域でオレフィン系ポリマー成形材料からなる成形材料を用いて押出成形(例えばTダイ成形法やインフレーション成形法)を行うことによって、上記の好ましい水滴転がり傾斜角を具備する基材層(少なくとも粘着剤層とは反対側の基材層表面部)を好適に形成することができる。
従って、本態様の水処理用表面保護シートによると、より安定した好ましい撥水性を実現することができる。
このような基材層と粘着剤層との組み合わせであると、共押出成形によって効率よく水処理用表面保護シートが製造される。また、共押出成形により製造されるため、水処理用表面保護シート全体の薄層化を図ることができる。従って、質感に優れる水処理用表面保護シートが提供される。
かかる粘着力を有する粘着剤層を備えることにより、表面保護シートとして望まれる基本性能(粘着性)を具備した使用勝手のよい水処理用表面保護シートが提供される。
また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、製品として実際に提供される本発明の表面保護シートのサイズ・縮尺を正確に表したものではない。
本発明によって提供される表面保護シートのなかで最もシンプルな構成の一つの実施形態(被着体Sに貼り付けた状態)を図1に模式的に示す。この図に示すように、ここで開示される水処理用表面保護シート10は、全体がオレフィン系ポリマー成形材料(例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂を主成分とするポリマー成形材料)から成る基材層(即ち本実施形態では単層構造の基材層)11とその基材層11の一方の面側に形成され、被着体Sに対する貼付面を構成する粘着剤層18とから構成されている。この図の上面となる基材層表面部11Aが、上述した撥水性能を発揮する表面部11Aである。
以下、ここで開示される水処理用表面保護シートの組成ならびに好適な成形方法(製造方法)を説明する。
本明細書において「オレフィン系ポリマー成形材料」とは、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする成形材料をいう。
例えば、基材層を形成するためのオレフィン系ポリマー成形材料を構成する主成分たるポリオレフィン系樹脂成分としては、単独系樹脂(例えばホモポリプロピレン)が挙げられる。また、エチレン成分と他のオレフィンモノマー成分とからなるブロック系樹脂が挙げられる。或いはまた、ランダム系等のプロピレン系樹脂が挙げられる。或いはまた、低密度、高密度、直鎖状低密度、超低密度等のエチレン系樹脂が挙げられる。上記列挙したこれらポリオレフィン系樹脂成分は、上記撥水性を基材層の表面部に付与する目的に特に好ましい。なお、樹脂成分を複数種類使用する場合には、相溶性の観点から樹脂成分の組合せを考慮すると良い。相溶性が低い樹脂成分の組合せから成るポリマー成形材料から形成された基材層は、その表面部の表面粗さ(Ra)が高くなるため、好ましくない。基材層の表面部の表面粗さ(Ra)が1μm以下となるように基材層を形成することが好ましい。なお、相溶性に関しては当該分野の技術常識であるため、詳細な説明は省略する。
例えば、ダイス温度を200℃以上に設定するとともに、押出速度を適宜調整することにより、ポリプロピレン樹脂等を主成分とするオレフィン系ポリマー材料を押出成形(典型的にはTダイ成形法やインフレーション成形法)することにより、所望する撥水性その他の性質を備える基材層を形成することができる。
水滴転がり傾斜角が基材層表面部を水平としたときの水平面(即ち角度0)を基準として40°未満とすることが好ましい。本発明者は、上記水滴転がり傾斜角が40°未満となるようにオレフィン系ポリマー成形材料から基材層表面部を形成することによって、離型処理を施すことなく、当該基材層表面部に付着した水滴が容易に除去されることを見出した。具体的には、上記水滴転がり傾斜角を40°未満とすることにより、基材層表面からの水滴の飛散性が大幅に改善され得る。即ち、水滴転がり傾斜角は、風による飛散性や水処理工程中で容易に水を除去できる指標として好適である。
ここで開示される水処理用表面保護シートは、基材層表面部の水滴転がり傾斜角が40°未満であることにより、水処理により基材層の表面部に付着した液滴を小さな風力で当該表面部から飛散させ除去することができる。また、典型的には、基材層(即ち表面保護シートが貼り付けられた被着体)を水滴転がり傾斜角またはそれ以上に傾斜させることによって、熱を加えた乾燥処理や通風処理を行うことなく、基材層の表面部に付着した液滴を除去することができる。かかる目的には、水滴転がり傾斜角が35°以下であることがより好ましく、30°以下であることが特に好ましい。なお、かかる水滴転がり傾斜角は後述する実施例で行ったような評価手段で簡単に調べることができることも、撥水性の指標として好ましい。
例えば、上記水滴転がり傾斜角が40°未満であって、基材層表面部の水に対する接触角が90°以上(典型的には95°以上、特に100°以上)であり、且つ、70vol%エタノール水溶液(配合比 水:エタノール=3:7)に対する接触角が41°以下(典型的には40°以下、特に38°以下、さらには35°以下)であることが好ましい。水に対する接触角が90°未満であったり或いは70vol%エタノール水溶液に対する接触角が41°を上回ったりした場合には、基材層表面部における液滴の接触面積が増大し、水処理後の残留液滴の除去効率(飛散性)が低下するため好ましくない。なお、これら指標は、あくまでも補助的な指標であり、水滴転がり傾斜角の代替となる位置づけの指標ではない。
好ましい粘着剤の例示として、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エステル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤が挙げられる。
光学部材(偏光板等)の機能性表面(例えばAG処理面、AR処理面)のような表面活性度の高い被着体表面に用いられるという観点からは、非極性な天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤が好ましく、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等からなる粘着剤が特に好ましい。これらオレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等から成る熱可塑性粘着剤は、水処理に用いられる水系溶媒(例えばアルカリ水溶液や洗浄水)に対して疎水性であるため、表面保護シートの側面から被着体表面と粘着剤層表面との間の界面に水系溶媒が浸入し得る状態となった際にも該疎水性によって水系溶媒の内部への浸入を抑制することができる。また、これら粘着剤組成物は熱可塑性であるため、常温以上の加熱によって粘着剤が徐々に変形し、被着体表面と粘着剤層表面との間の界面を埋めることによる液浸入防止効果を奏することもできる。
このような粘着力を実現するのに好適なオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、プロピレンモノマーと他のオレフィンモノマーとの共重合体が挙げられる。具体的には、プロピレンモノマーと、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−へキセン等のうちの1種もしくは2種以上からなるモノマーとの共重合体、等が挙げられる。このようなエラストマー成形材料は、例えば、NOTIO(登録商標:三井化学株式会社製品)、VISTAMAXX(登録商標:エクソンモービル社製品)として市販されており、容易に入手することができる。
なお、本発明の実施にあたっては、上述したいずれかの粘着剤組成物を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、従来よく行われているように、粘着剤層の表面に例えばコロナ放電処理、紫外線照射処理、火炎処理、プラズマ処理、スパッタエッチング処理、等の粘着性の制御や貼付作業性等を目的とした表面処理を必要に応じて施してもよい。
典型的には、粘着剤層形成用高分子成形材料を所定の溶剤に添加して調製した溶液や熱溶融液を基材層の表面に塗布する方法が挙げられる。また、セパレータ上に塗布形成した粘着剤層を基材層の対向する面に移着する方法を採用してもよい。或いはまた、粘着剤層形成用高分子材料を基材層上に押出成形しつつ塗布していく方法を好適に採用することができる。
特にここで開示される水処理用表面保護シートを製造する場合の好適な方法として、上述した基材層成形材料(特にオレフィン系ポリマー材料)と粘着剤組成物とをあわせて使用して共押出成形(好ましくはダイス温度が200℃以上に設定される。)を行い、基材層と同時に粘着剤層を形成する方法が挙げられる。かかる共押出成形法は、生産性、投錨性の観点から好ましい。共押出法としては、一般にTダイ法或いはインフレーション法がよく知られているが、ここで開示される水処理用表面保護シートは、使用する成形材料に応じて何れの共押出成形法を採用してもよい。
なお、上述した図3に示すように、粘着層は必要に応じて、実用に供されるまでの間、セパレータなどを仮着して保護することもできる。かかるセパレータの材質や仮着の態様は、従来のこの種の表面保護シートと同様でよく、本発明を特徴付けるものではないため、詳細な説明は省略する。
従って、本発明の水処理用表面保護シートの適用対象は、かかる水処理を伴う被着体であれば特に制限がない。本発明の目的を実現する好ましい被着体としては、水処理を伴う種々の用途の光学部材(光学フィルム)、金属板、塗装した金属板、アルミサッシ、樹脂板、化粧鋼板、塩化ビニルラミネート鋼板、塗装鋼板、高分子フィルム、シリコン基板やガラス基板等のセラミック製品、磁気ディスク等が挙げられる。ここで開示される水処理用表面保護シートは、これら被着体において塗装処理、メッキ処理、水洗処理、酸処理、アルカリ処理等の水処理が行われる際の表面保護に好適である。
特に、所定の水処理によってダメージを受けやすい表面を有する被着体の表面保護に好適に使用することができる。例えば、種々の表面加工によって機能性表面が形成されている光学部材、特に水処理としてアルカリ鹸化処理が製造プロセスにおいて行われる偏光板(偏光フィルム)の機能性表面(例えば上述したAG処理面やAR処理面)を保護する用途に好ましく使用することができる。
230℃におけるメルトフローレート(Melt flow rate‐MFR)が0.9g/10minである密度0.9g/cm3のブロックポリプロピレンから成るポリマー成形材料を240℃に昇温したTダイ成形機を用いて押出成形し、厚み40μmの基材層を形成した。
その後、予め調製しておいたスチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(株式会社カネカ製品:SIBSTAR(登録商標)073T)のトルエン溶液を上記押出成形された基材層に塗布した。該塗布膜の乾燥後の粘着剤層の厚みは5μmであった。
以上のようにして厚み40μmの基材層と厚み5μmの粘着剤層とから成る本実施例に係る水処理用表面保護シートを作製した。
190℃におけるメルトフローレートが10.0g/10minである密度0.924g/cm3の低密度ポリエチレンから成るポリマー成形材料を共押出用Tダイ成形機(ダイス温度200℃)に供給した。
同時に、スチレン−エチレン−ブチレンランダム共重合体(JSR株式会社製品:ダイナロン(登録商標)2324P)からなる溶融した粘着層形成用高分子成形材料を上記Tダイ成形機に供給し、ダイス温度200度で共押出成形を行った。
これにより、厚み50μmの基材層と厚み10μmの粘着剤層とから成る本実施例に係る水処理用表面保護シートを作製した。
本実施例では、積層構造の基材層を形成した。即ち、190℃におけるメルトフローレートが10.0g/10minである密度0.924g/cm3の低密度ポリエチレン100質量部に対して230℃におけるメルトフローレートが2.5g/10minである密度0.90g/cm3のランダムポリプロピレン30質量部を添加して成る基材表面層形成用第1ポリマー成形材料と、190℃におけるメルトフローレートが2.0g/10minである密度0.924g/cm3の低密度ポリエチレンから成る基材内部層形成用第2ポリマー成形材料と、230℃におけるメルトフローレートが10.0g/10minである密度0.86g/cm3のプロピレン−ブテン共重合体(質量比でプロピレン:ブテン=85:15)、アタクチック構造)から成る粘着層形成用高分子成形材料とを、それぞれ、ダイス温度が200℃であるインフレーション成形機に供給して共押出成形を行った。
これにより、厚み5μmの基材表面層(図2における第1基材層22)と厚み30μmの基材内部層(図2における第2基材層23)と厚み10μmの粘着剤層とから成る本実施例に係る水処理用表面保護シートを作製した。
190℃におけるメルトフローレートが7.0g/10minである密度0.918g/cm3の低密度ポリエチレン100質量部に対してオレイン酸アミド(日本化成株式会社製品:ダイヤミッド(登録商標)O−200)を0.5質量部添加して得た本比較例に係るポリマー成形材料(190℃におけるメルトフローレート2.0g/10min、密度0.924g/cm3)と、エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井・デユポンポリケミカル株式会社製品:エバフレックス(登録商標)EV550)からなる溶融した粘着層形成用高分子成形材料とを、それぞれ、ダイス温度が150℃であるインフレーション成形機に供給して共押出成形を行った。
これにより、厚み30μmの基材層と厚み10μmの粘着剤層とから成る本比較例に係る表面保護シートを作製した。
190℃におけるメルトフローレートが4.0g/10minである密度0.919g/cm3のポリエチレンからなるポリマー成形材料をインフレーション成形機に供給し、ダイス温度160℃で押出成形し、厚み60μmの基材層を形成した。
その後、予め調製しておいた背面処理剤(一方社油脂工業株式会社製品:ピーロイル(登録商標)1010)のトルエン溶液を上記押出成形された基材層の表面部に乾燥後の厚みが100nmとなるように塗布した。
一方、基材層の反対側の面には、粘着剤としてアクリル粘着剤を乾燥後の厚みが10μmとなるように塗布した。ここで使用したアクリル粘着剤は次のようにして作製したものである。即ち、アクリル酸ブチル100質量部、アクリル酸ヒドロキシエチルエステル8質量部、トルエン1500質量部から成る溶液に、過酸化ベンゾイル0.5質量部を添加し、50℃にて24時間、窒素置換をしながらアクリル重合体を合成した。その後、当該アクリル重合体100質量部に対してイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業株式会社製品:コロネート(登録商標)HX)4.0質量部を添加した。
以上の処理により、表面部に厚み100nmの背面処理剤がコートされた厚み60μmの基材層と厚み10μmの粘着剤層とから成る本比較例に係る表面保護シートを作製した。
スチレン−エチレン−ブチレンランダム共重合体(JSR株式会社製品:ダイナロン(登録商標)2324P)のトルエン溶液を市販のポリエステルフィルム(東レ株式会社製品:ルミラー(登録商標)S−10、厚み38μm)に塗布して乾燥させ、厚み38μmの基材層と乾燥後の厚みが5μmの粘着剤層とから成る本比較例に係る表面保護シートを作製した。
比較例3のポリエステルフィルムに代えて片面にシリコーン処理されたポリエステルフィルムを使用し、比較例3と同様の処理を行った。
これにより、シリコーン処理された表面部を有する厚み38μmの基材層と乾燥後の厚みが15μmの粘着剤層とから成る本比較例に係る表面保護シートを作製した。
実施例2の水処理用表面保護シートの基材層の表面部にコロナ放電処理を行った以外は、実施例2の手順に準じて本参考例に係る表面保護シートを作製した。
<水滴転がり傾斜角試験>
基材層の表面部が上面となり且つ水平となるように配置した各表面保護シートの当該表面部上に、注射器を用いて40μLの蒸留水の液滴を調製した。
その後、表面保護シートを傾けつつ傾斜角を変化させていき、水滴が上記滴下した場所から1cm以上動き出す角度を目視にて観察した。かかる傾斜角試験に際してはテスター産業株式会社製品のボールタックテスターを使用して傾斜角を求めた。結果を表1の該当欄に示す。
各表面保護シートの基材層表面部の表面粗さを、市販の光干渉式表面粗さ測定器(Wyko社製品:RST−PLUS)にて測定し、測定面積2mm角にて中心線表面粗さRaを算出した。結果を表1の該当欄に示す。
本試験は、JIS Z0237(2000)に準じて行った。即ち、市販のアクリル板(三菱レイヨン株式会社製品:アクリライト(登録商標)L)に供試表面保護シートを線圧78.7N/cmにて貼付した。
かかる貼付から1時間後、インストロン型引張試験機にて剥離角度180度、引張速度0.3m/minの条件で粘着力を測定した。結果を表1の該当欄に示す。
本試験は、JIS R3257(1999)に準じて行った。即ち、当該JISの「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」の「6.静適法」に準じて蒸留水に対する接触角と70vol%エタノール水溶液に対する接触角を測定した。測定環境は23℃、湿度50%であった。結果を表1の該当欄に示す。
特開2002-196116の実施例1に準じてAG(アンチグレア)処理されたフィルムを作製した。
即ち、ウレタンアクリレート系モノマー(紫外線硬化型樹脂,屈折率1. 52)100質量部に、ベンゾフェノン系重合開始剤3質量部、平均粒子径4μmのシリカ粉末14質量部、フルオロアルキルシラン添加剤(屈折率1.39)3.33質量部を加え、トルエンにて固形分35質量%となるように希釈し、塗工溶液を作製した。この得られた塗工溶液をホモジナイザーを用いて攪拌してシリカ粉末を完全に分散させた。なお、(フルオロアルキルシラン添加剤の屈折率)−(樹脂バインダーの屈折率)=−0.13であった。
次いで、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上に、前記塗工溶液をバーコーターにてドライの厚み3μmとなるように塗布した。その後、紫外線照射して塗膜を硬化させ、PETフィルム上にアンチグレア(AG)層を形成した。かかるAG層(塗膜)の透過ヘイズは26%であった。また、中心線平均粗さは0. 33μm、平均山谷間隔は、27μmであった。
そして、上記PETフィルムのAG層の表面に供試表面保護シートを貼り付け、常温(25℃)で24時間放置した。その後、60℃の温水中に供試表面保護シート付きPETフィルムを漬けて2時間放置し、表面保護シートとAG層との間からの水浸入の有無を目視にて調べた。結果、水の浸入が確認されたものについては表1中で×を付し、水の浸入が認められなかったものについては表1中で○を付している。
図4に模式的に示すように、100mm×100mmのPETフィルム100(厚み150μm)の一方の表面に供試表面保護シート110を貼り付けて評価用サンプル120を作製した。
次いで、予め端部に線条引き上げ具(例えば糸材)140を取り付けた評価用サンプル120を水槽130に入れた60℃の水中に完全に浸漬させた(図4の(A))。1分後に引張速度10m/minにて水面と評価用サンプル120が垂直となるように液面から15cmほど引き上げた(図4の(B))。その後、表面保護シート110側を迅速に上面となるようにした(図4の(C))。この状態で表面保護シート110の表面部に水Dが付着しているか否かの状況を目で確認した。結果、水Dの付着量が表面保護シート110の表面部の全面積の3%未満であるものについては○とし、3%以上付着しているものを×とした。
驚くべきことに、水やエタノール水溶液に対する接触角や表面粗さでは、各実施例と各比較例との間で明確な閾値は認められなかった。他方、本発明により提示された上記「水滴転がり傾斜角」については、実施例1〜3と比較例1〜4並びに参考例1との間で明確な差異が認められた。
従って、かかる「水滴転がり傾斜角」を指標にすれば、水処理用表面保護シートとして適するものであるか否かを容易に判別し得、或いは、かかる「水滴転がり傾斜角」を指標として水処理用表面保護シートとして好適な性能を実現する表面保護シートを好適に製造することができる。
11,21 基材層
11A,22A 表面部
22 第1基材層
23 第2基材層
18,28 粘着剤層
30 剥離ライナー
Claims (6)
- 水処理を伴うプロセスを経て製造若しくは使用される被着体の表面を保護するための表面保護シートであって、
少なくとも表面部がオレフィン系ポリマー成形材料から成る、単層又は積層構造の基材層と、
前記基材層の前記表面部とは反対側に形成され、前記被着体の表面に貼り付けられる粘着剤層と、
を備えており、
ここで前記基材層の表面部は、該表面部に容積40μLの水滴を滴下して該水滴が該滴下位置から転がり始める最小の傾斜角が水平面を基準として40°未満であることを特徴とする、少なくとも前記水処理が行われている間の前記被着体の表面を保護するための表面保護シート。 - 前記基材層のオレフィン系ポリマー成形材料から成る表面部は、水に対する接触角が90°以上であり、且つ、70vol%エタノール水溶液に対する接触角が41°以下であることを特徴とする、請求項1に記載の表面保護シート。
- 前記基材層は、ダイス温度が200℃以上に設定されて行われた押出成形により形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の表面保護シート。
- 前記基材層は全体が一種又は複数種のオレフィン系ポリマー成形材料から成り、
前記粘着剤層は、前記一種又は複数種のオレフィン系ポリマー成形材料から成る基材層とともにダイス温度200℃以上の設定で共押出成形可能な高分子成形材料によって形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の表面保護シート。 - 前記粘着剤層のアクリル板への粘着力が1N/20mm以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の表面保護シート。
- 前記被着体が偏光板又はその構成フィルムであり、前記水処理として該被着体にアルカリ水溶液を供給する鹸化処理を包含することを特徴とする、偏光板又はその構成フィルムの表面を保護するために使用される請求項1〜5のいずれかに記載の表面保護シート。
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