<第1の実施形態>
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る自動車管理履歴認証システム100の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、本自動車管理履歴認証システム100は、カルテサーバ10と、複数のユーザ端末12と、複数の販売店端末14と、複数の整備工場端末16と、一以上のオートオークション会場端末18とが、ネットワークNを介して相互に接続されることにより構成される。
カルテサーバ10は、個々の車両毎の管理履歴をデータベース化して管理するためのコンピュータサーバであり、車両の管理履歴を記録して管理するためのデータベースを備えている。また、カルテサーバ10は、ユーザ端末12、販売店端末14、整備工場端末16、又はオートオークション会場端末18からのリクエストに応じた情報を含むウェブページを生成して、各端末に送信するためのウェブサーバを備えることが好ましい。
ユーザ端末12は、中古車を含む自動車の一般ユーザ、すなわち消費者が利用するパーソナルコンピュータ(PC)や携帯電話機等のコンピュータ機器である。販売店端末14は、中古車の販売店や買取店等の小売店に設置されるPCや携帯電話機等のコンピュータ機器である。整備工場端末16は、自動車の修理工場や改造店舗、ガソリンスタンド等を含む整備工場に設置されるPCや携帯電話機等のコンピュータ機器である。オートオークション会場端末18は、中古車のオートオークション会場に設置されるPCや携帯電話機等のコンピュータ機器である。これらの端末12,14,16,18は、ウェブページを閲覧するためのブラウザを備えていることが好ましい。
ネットワークNは、カルテサーバ10と、ユーザ端末12と、販売店端末14と、整備工場端末16と、オートオークション会場端末18との間で情報を送受信するための通信回線である。例えば、インターネット、LAN、専用線、パケット通信網、電話回線、その他の通信回線、それらの組み合わせ等のいずれであってもよく、有線であるか無線であるかを問わない。
なお、カルテサーバ10、ユーザ端末12、販売店端末14、整備工場端末16、及びオートオークション会場端末18はそれぞれ、サーバないし端末の処理及び動作を制御する制御手段として機能するCPU、ROMやRAM等のメモリ、各種の情報を格納する外部記憶装置、入力インタフェース、出力インタフェース、通信インタフェース及びこれらを結ぶバスを備える専用又は汎用のコンピュータを適用することができる。例えば、カルテサーバ10は、CPUが、メモリまたは外部記憶装置などに記憶された所定のプログラムを実行することにより、カルテサーバ10としての機能が実現される。
また、カルテサーバ10は、単一のコンピュータより構成されるものであっても、ネットワーク上に分散した複数のコンピュータより構成されるものであってもよい。また、単一のコンピュータが複数のサーバ機能を備えてもよい。
図2は、カルテサーバ10の備えるデータベースにおいて管理されるデータ項目の一例を示す図である。図2に示すように、カルテサーバ10のデータベースには、個別の車両ごと記録項目欄を備え、この記録項目欄は、ユーザによる記録項目欄110と、オートオークション会場による記録項目欄160とを含んでいる。なお、本発明においては、各車両ごとの記録項目欄には、各車両を一意に特定するための識別番号(車両識別番号)が関連付けられていて、ユーザ等は当該車両識別番号を利用して、各車両に対応する記録項目欄を呼び出すことができる。この車両識別番号は、専用カードやICカード、クレジットカード等のカード番号を転用してもよい。
ユーザによる記録項目欄110は、ユーザ端末12からデータベースに対して書き込み可能な項目欄であり、車両諸元と、契約情報と、初期ファイナンス情報等を含む初期情報欄120と、保険や自動車税等のファイナンス情報を含む第一継続管理情報欄130と、種々の管理履歴を含む第二継続管理情報欄140と、売買時における情報を含む最終管理情報欄150とを備えている。
初期情報欄120に記録する車両諸元としては、登録番号、登録年月日、車名、車体番号等の、車検証に基づく情報と、グレード、カラー、燃費基準(星の数)等の、車体に基づく情報とを含む。契約情報としては、契約日、販売元、メーカーオプション等の情報を含む。初期ファイナンス情報としては、ローン又はリースに関する情報を含み、例えば、ローンの頭金、ローン取組金額、リースの区分や元金等を含む。
第一継続管理情報欄130に記録するファイナンス情報としては、保険の契約保険会社や商品名、自動車税の支払い税額や支払日等を含む。
第二継続管理情報欄140は、外部整備情報欄141と、ユーザ整備情報欄142とを備えている。外部整備情報欄141は、ユーザ端末12からデータベースに書き込み可能であることに加え、販売店端末14及び整備工場端末16からもデータベースに対して書き込み可能な項目欄である。外部整備情報欄141としては、整備や修理の際に整備工場又は修理工場等に車両を搬入した搬入日や搬入先等の整備・修理情報、車検の際に整備工場等に車両を搬入した搬入日や搬入先等の車検情報、用品購入・取付け・取外し・オイル交換・改造などをパーツ販売店等にて行った際の搬入(購入)日や搬入(購入)先等の情報を含む。また、ユーザ整備情報欄142としては、整備・修理・用品購入・取付け・取外し・オイル交換・改造などをユーザ自身又は特定個人が行った場合の各種情報、運行履歴情報、給油履歴情報、洗車履歴情報、瑕疵履歴情報等を含む。
最終管理情報欄150に記録する情報としては、売買の目的、区分、画像、走行距離等、売買時点における車両の状態を示す情報を含む。
また、第二継続管理情報欄140及び最終管理情報欄150の各項目には、記録者によるコメント(フリーコメント)を適宜書き込むことができることが好ましい。
オートオークション会場による記録項目欄160は、オートオークション会場を含む所定の機関が、オートオークション会場端末18等からデータベースに対して書き込み可能な項目欄であり、オートオークション会場における査定結果等の情報が記録される。
図3は、カルテサーバ10のデータベースに情報が記録されるタイミングの一例を示す図である。本自動車管理履歴認証システム100は、個々の車両管理履歴をデータベース化して、いわば車両のカルテを作成するが、記録の書き込みは車両の所有者又は使用者であるユーザによるものと、販売店・整備工場・オートオークション会場等の流通セクションによるものに分けられる。
まず、ユーザが車両を購入した際(S31)、ユーザはユーザ端末12を用いて、カルテサーバ10のデータベースの初期情報欄120に、初期データを記録する。例えば、ユーザは、初期データとして、納車日、車名、グレード、色、装備品、登録番号、車体番号、型式指定番号、類別区分番号、購入価格データ、保険、納車時画像、フリーコメント等を記録する。
その後、ユーザが日々自動車を利用するごとに(S32)、ユーザは適宜ユーザ端末12を用いて、カルテサーバ10のデータベースの第一継続管理情報欄130及び第二継続管理情報欄140に、日々の自動車の利用データを記録する。このとき、ユーザはユーザ端末12に自車の車両識別番号を入力して、又は、カード番号を入力することによって、自車の記録項目欄にアクセスして、記録する。例えば、ユーザは利用状況として、旅行をしたときの旅程(出発、着日時、走行距離)、給油状況、利用区分(ドライブ、通勤、仕事、所用、その他)、税、保険、画像、フリーコメント等を記録する。
また、ユーザが自動車用品を車両に付加した場合には(S33)、ユーザはユーザ端末12を用いて、カルテサーバ10のデータベースの第二継続管理情報欄140に、用品付加データを記録する。例えば、ユーザは用品付加データとして、用品種目、パーツ名、消耗品交換、画像、フリーコメント等を記録する。
さらに、整備工場等で自動車をメンテナンス等した場合(S34)、整備工場等の整備工場端末16や販売店等の販売店端末14を用いて、カルテサーバ10のデータベースの外部整備情報欄141に整備・点検・修理などのデータを記録する。このとき、整備工場端末16等からユーザの車両識別番号を入力することによって、ユーザの車両の記録項目欄にアクセスしてもよいし、加修等の代金支払い時にユーザが使用したカード番号を利用してユーザの車両の記録項目欄にアクセスしてもよい。例えば、整備工場や販売店等において、定期点検、車検、不具合修理、用品、パーツ、消耗品交換、フリーコメント等の情報を記録する。整備工場等において記録された内容は、認証済みとなることが好ましい。
また、整備工場等において、整備工場端末16等に換えて、決済機能付きの記録機を設置してもよい。この記録機は、加修の内容を入力するための入力手段を備えている。また、当該記録機は、ネットワークNを介してカルテサーバ10に接続可能に構成されるとともに、クレジットカード等のカード決済を行うためのネットワークにも接続可能に構成される。そして、整備工場の店員等がこの記録機の入力手段を利用して加修内容を入力した上で、加修代金をカード決済すると、決済を実行するとともに、記録機から決済に使ったカード番号と加修内容とがカルテサーバ10に送信され、ユーザの車両の記録項目欄に加修内容が書き込まれるようになっている。こうして、この記録機を利用することにより、加修等の代金支払い時に、簡単に、加修内容を記録できるようになる。
なお、ユーザが自ら整備してデータベースに整備情報を記録した場合、整備工場等で当該整備個所を確認し、ユーザが記録した整備内容に誤りが無い場合には、整備工場端末16又は販売店端末14を用いて、ユーザの記録内容が正当である旨の認証を与えるようにしてもよい。これにより、カルテサーバ10のデータベースに記録されるデータが正しいことを担保できるようになるため、記録データの精度が保証される。
その後、ユーザが自動車を買換える際(S35)、ユーザはユーザ端末12を用いて、カルテサーバ10のデータベースの最終管理情報欄150に、最終車両状態データを記録する。例えば、ユーザは最終車両状態データとして、走行距離、画像、フリーコメント等を記録する。
なお、買換えの際、カルテサーバ10はデータベースに記録された情報を基にして、後述の整備履歴ライセンス30等の証明ツール36を作成する。この証明ツール36は、外装瑕疵についての前後の写真画像、納品書、領収書、レシート、点検整備記録簿、整備工場認証番号等のデータを含む。
図4は、自動車管理履歴認証システム100のアクセス権限の一例を示す図である。カルテサーバ10のデータベースに記録されたデータは、ユーザ端末12、販売店端末14、整備工場端末16、及びオートオークション会場端末18により閲覧することができるが、このとき、利用者を一意に特定可能な識別子(ID)に応じてアクセス権限を設定することが好ましい。
図4に示す例では、例えば、オートオークション会場の主催者などの特権利用者が特権IDを保有し、その他流通セクション(販売店や整備工場)の利用者や一般ユーザが限定IDを保有する場合の一例である。このとき、限定IDを保有する者は、当該限定IDを用いてカルテサーバ10にアクセスすると、車両諸元、整備履歴、修理履歴とその画像、用品取付履歴、改造履歴画像、洗車・給油履歴、過去の登録履歴回数等をデータベースから読み出して、閲覧することができる。また、特権IDを保有する者は、これらのデータに加えてさらに、過去の登録履歴、オークション出品履歴、評価点情報等の閲覧も許される。
なお、本発明においては、各利用者が保有するID毎に、アクセス権限をより細密に設定してもよい。例えば、各利用者のデータ開示範囲を次のように設定することが好ましい。一般ユーザには、自分の車となったときからの全記録、前ユーザのときの一部記録(プライベート記録以外の全て)、手元に来る前の流通セクションでの記録の一部、が開示される。販売店や整備工場には、プライベート記録以外の記録、データの精度レベル、が開示される。オートオークション会場には、出品履歴、プライベート記録以外の全て、が開示される。
次に、上記のように構成される自動車管理履歴認証システム100の動作の概要について説明する。
図5は、自動車管理履歴認証システム100による処理の概要を示すブロック図である。図5に示すように、本自動車管理履歴認証システム100では、ユーザ端末12、販売店端末14、整備工場端末16、及びオートオークション会場端末18を用いて、各利用者が車両の使用履歴や整備履歴をカルテサーバ10に記録する。また、これらの端末12,14,16,18を用いて、各利用者はカルテサーバ10に記録された履歴データ等を閲覧して確認することができる。
ここで、図5は、ユーザXが車両を販売店Aに売却した後、販売店Aが店頭小売で他ユーザYに当該車両を販売した場合と、販売店Aがオートオークション会場Dに当該車両を出品して販売店Bが落札した後、販売店Bが店頭小売にて他ユーザZに当該車両を販売した場合の、二通りの場合が図示されている。以下、車両が流通する時系列に沿って、説明する。
まず、車両の所有者であるユーザXは、車両の購入時や、購入後の日常の利用などに応じて、ユーザ端末12から個人ID20を用いてカルテサーバ10にアクセスし、データベースのユーザ記録項目欄110に対して使用履歴や整備履歴等の情報を記録する(S41)。例えば、ユーザは、瑕疵(キズ、ヘコミ、内装の汚損、何らかの不具合)の内容とその対処の記録、給油や洗車などの記録、タイヤやオイル交換などの軽整備の記録、カー用品やアフターパーツなどの取付・交換の記録、運行記録、プライベート記録(取締りや行楽、宿など日記的な記録)などをユーザ記録項目欄110に書き込む。
また、ユーザXが車両を整備工場Cに出して、点検、整備、修理、車検等をしたとき(S42)、整備工場端末16から専用ID24を用いてカルテサーバ10にアクセスし、データベースの外部整備情報欄141に対して整備履歴等の情報を記録する(S43)。例えば、整備工場等において、修理・一般整備記録(記録簿と納品書をアップロード)、車検整備・定期点検の記録、その他用品取付・軽整備などの記録などを外部整備情報欄141に書き込む。
その後、ユーザXが車両を買換えようとするとき、ユーザXはカルテサーバ10に対して専用ID22を記録した整備履歴ライセンス30の発行を申し入れ、ユーザXからの依頼に応じて、カルテサーバ10は整備履歴ライセンス30を発行する(S44)。この整備履歴ライセンス30は、カルテサーバ10のデータベースに記録された車両のデータに基づいて、当該車両の整備履歴等をカルテサーバ10が証明する認証書である。なお、整備履歴ライセンス30を発行する際に、車両の使用状態や整備状況が良好で、高レベルの認証が出た場合には、カルテサーバ10を管理するデータ認証機関から何らかの利益をユーザXに供与することが好ましい。例えば、薄謝を進呈してもよい。
ユーザXは、整備履歴ライセンス30を持って販売店や買取店に臨み、車両を売却や下取り等によって譲渡する(S45)。この車両譲渡の際に、カルテサーバ10が発行した整備履歴ライセンス30が付いている場合には、車両の整備状況を容易かつ正確に確認できるので、認証により高額査定を得られるようにすることが好ましい。
また、販売店Aでは、販売店端末14から整備履歴ライセンス30に記録された専用ID22を用いてカルテサーバ10にアクセスし、データを確認する(S46)。これにより、直近の車両データの記録内容と現車状態の比較を、容易かつ正確に行うことができるようになる。そして、確認の結果、カルテサーバ10に記録が無い場合、又は、重要項目の記録改ざん歴があれば、減額査定の根拠とすることができる。一方、逆に、高レベルのデータであればプラス査定の根拠とすることができる。なお、整備履歴ライセンス30に記録された専用ID22を用いてカルテサーバ10にアクセスした場合には、閲覧可能なデータが中古車売買に必要な所定のデータのみに限定されることが好ましい。
さらに、販売店Aでは、販売店Aに事前に与えられた販売店専用IDを用いてカルテサーバ10にアクセスし、データベースの外部整備情報欄141に対して整備履歴等の情報を記録する(S46)。例えば、販売店やその外注先等において、自家整備・修理の記録、整備前後の画像のアップロード、美装・加修の記録、入庫・出庫の記録などを外部整備情報欄141に書き込む。
それから、販売店Aは、店頭小売で車両を他のユーザYに売却する(S47)。このとき、販売店Aは、整備履歴ライセンスを付加して車両を売却することが好ましい。ユーザYは、整備履歴ライセンスに記録されたIDを利用することにより、購買の際、以前の記録の一部を閲覧することができる。こうして、ユーザYは自分が購入した車両の整備履歴の詳細を容易かつ正確に知ることができる。
一方、販売店Aが、オートオークション会場Dに車両を出品すると(S48)、オートオークション会場では、オートオークション会場端末18から専用ID26を用いてカルテサーバ10にアクセスし、データベースのオートオークション会場による記録項目欄160に対して流通等の情報を記録する(S49)。例えば、オートオークション会場において、出品査定時の査定結果、過去の登録履歴、オークション出品履歴、評価点情報などをオートオークション会場記録項目欄160に書き込む。また、オートオークション会場Dでは、カルテサーバ10に記録されたデータを適宜読み出すことによって、従来の査定基準と比べて品質の底上げと明確な判定区分が可能となり、バイヤーの購買意欲を高めることができる。
なお、オートオークション会場Dの主催者は、必要に応じて、出品された車両を整備工場等で加修する(S50)。整備工場等では、ステップS43と同様に、加修した内容を、カルテサーバ10に記録する。
その後、オートオークションに出品された車両を販売店Bが落札する(S51)。オートオークション会場Dは、整備履歴ライセンスを付加して車両を引き渡してもよい(図示略)。販売店Bでは、ステップS46と同様に、専用ID22を用いてカルテサーバ10に記録された整備履歴等を確認して、現車状態と比較する。また、新たに整備等を行った場合には、整備等の記録をカルテサーバ10に書き加える(S52)。また、販売店Bでは、必要に応じて、車両を整備工場等で加修する(S53)。整備工場等では、ステップS43と同様に、加修した内容を、カルテサーバ10に記録する。
それから、販売店Bは、店頭小売で車両を他のユーザZに売却する(S54)。このとき、販売店Bは、整備履歴ライセンスを付加して車両を売却してもよい(図示略)。ユーザZは、整備履歴ライセンスに記録されたIDや個人IDを利用することにより、自分が購入した車両の整備履歴の詳細を容易かつ正確に知ることができる。
以上のとおり、本発明によれば、個々の車両の整備履歴を一元管理するカルテサーバ10を備え、一般ユーザと流通の各セクション(販売店、整備工場、オートオークション会場など)とが個別に整備履歴をデータベースに記録することによって、個々の車両のカルテを作成する。また、所定の特権機関が、書き込まれる記録に認証条件を事前に明示しておくとともに、整備工場等が、書き込まれたデータの正当性をチェックして認証を与えることにより、カルテサーバ10に記録されるデータの信頼性及び精度を高めている。これにより、カルテサーバ10に記録されたデータは、中古車流通における品質判断ツールとして利用でき、また、ユーザにとっては転売時に、車両の付加価値を向上させることができる。こうして、中古車流通全体の活性化と信用力向上を図ることができる。
また、本発明では、日常の利用状況や環境を推測できるデータを管理することによって、「どれだけ大切に使ってきたか」という情報を査定に反映させることが可能になる。これらの情報は、流通の次セクションや次ユーザにとってポジティブインフォメーションとなる。例えば、きちんと使われてきた車両や、大切に使われてきた車両は高額取引されるが、そうではない車両、無記録、記録の整合性が低い車両は安価取引されることとなる。このため、本発明によれば、価格決定に正当性が増し、良質な車両の流通量が増え、中古車市場の活性化が期待できる。
さらに、車両を手放す際にユーザにとって不利益となるであろう情報も全て記録することを促すために、車両買換え時に何らかの利益をユーザに提供することが好ましい。例えば、車両を売却する前に、その人のこれまでの使用記録を車両日誌としてアルバム形式に冊子化してユーザに提供したり、車両を購入してから売却するまでのトータルコストなど経済性の分析結果等を提供することが好ましい。そして、事故修復歴などの重篤なネガティブインフォメーションを記録しているユーザには、それを正直に記録することによる不利益を補える程度の利益を提供することが好ましい。また、車両の記録を流通に乗せる際には、プライベート情報を除いた必要な情報だけを事前に機関が指定し、当該必要な情報だけを公衆に閲覧可能とすることが好ましい。
また、本発明では、従来、系列ごとに行われてきた整備記録や車歴の記録の方法や項目を一元化して、車両の管理履歴を統一することができる。さらに、本発明では、情報の閲覧及び記録範囲を利用者毎に限定している。
なお、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、他の様々な形で実施することができる。このため、上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。例えば、上述の各処理ステップは処理内容に矛盾を生じない範囲で任意に順番を変更して又は並列に実行することができる。
<通信記録式車両総合データレコーダ>
ここで、運転者による自動車の操作履歴や自動車の挙動など、一連の自動車の動作記録のデータ(以下「ED(イベントデータ)」という。)、走行軌跡や、ドライブレコーダなどによる映像データや時系列データ(以下「AD(アクションデータ)」という。)、及び修理や日常メンテナンス、車検、洗車、給油やその都度の走行距離データ(以下「MD(メンテナンスデータ)」という。)などの車両管理データの記録する記録装置(データレコーダ)に関して、説明する。
従来、記録装置として、ADを記録するドライブレコーダ(非特許文献3)が知られているが、これは、製品に装備したメディアなどに独立的に記録するものが中心である。
次に、ナビゲーションシステムが持つ一連の情報取得機能、記録機能の目的はあくまでも運転手へのインフォメーションによる渋滞回避などが中心である。また、車両から送信する車両位置や平均速度情報などは、渋滞を防ぐための道路の効率的な交通量調整が主な目的として使用されている(非特許文献4)。
そして、MDにおいては、中古車流通において最重要とされている走行距離データ以外のデータは、いまだ自動記録化や一元管理などはされておらず、現状では、点検整備記録簿という帳票方式の不完全な管理がなされている。一部、販売店系列ごとにデータ管理がなされているケースもあるが、自店系列のみの共有であり、自動車業界全体としての共有はされていない。
(非特許文献2)「国土交通省 J−EDRの技術要件(案)」、[online]、インターネット<URL:ttp://www.mlit.go.jp/pubcom/07/pubcomt89/03.pdf>
(非特許文献3)「株式会社交通事故鑑識研究所 ドライブレコーダ」、[online]、インターネット<URL:http://www.nikkouken.com/>
(非特許文献4)「ホンダ インターナビ フローティングカーシステム」、[online]、インターネット<URL:http://www.premium-club.jp/technology/tech1#2.html>
(非特許文献5)「自動車生活総合研究所 自動車管理履歴データベースの必要性と方策」、[online]、インターネット<URL:http://clgi.net/db.pdf>
自動車の技術において最重要とされるのは安全性であり、それに向かって技術が日々、進歩しているが、その「安全性」は当然のこととして、次に優先されるべきであろう「安心」や「車を持つこと、運転することの楽しみ」がなおざりにされ、それらよりも極めて単純な「便利」、もしくは製造者や国家における管理の「効率」にばかり主眼が置かれている。
自動車技術の発展により死亡事故は着実に減少しているが、事故自体の発生は、いまだ莫大な件数に上っている現状がある。その際には当事者間の過失の割合で争いが多く発生し、時には裁判にまで発展する場合もある。そのために、当事者は多大な精神的苦痛を受け、同時に社会の経済的損失も大きい。これの早期解決を図るためのツールとなるのが走行中のADやEDの記録を義務化し、利用することである。しかしながら、一番、実用化に近いドライブレコーダとして、現在、所管官庁で効果を検証中のものもあるが、その利用方法、管理の方法やデータ規格などの統一にまでは踏み込まれていない。
それに付随して先般、所管官庁が要件を公表したイベントデータレコーダ(J−EDR)(非特許文献2)は、車両の挙動や操作履歴などのイベントデータ(ED)を記録することを目的としたものであっても、前述のドライブレコーダとの関連付けはされておらず、別物の記録装置として扱われている。
そして、ユーザの視点では、車両が製造されてからELV(End of life viecle)となるまでの間に利用される共通のデータとして、所有者、使用者の履歴と車両諸元、車両の構造の変更内容、そして車検時の走行距離のみを記載した自動車検査証に記録されたデータしかない。したがって、ユーザが利用してきた車両において、たとえば、どのような不具合や瑕疵が発生し、どのような対処をしてきたかなどのデータは、点検整備記録簿などといった簡単に遺棄できてしまう帳票に記録されたものしかない。一部、販売店系列において、その情報を記録、共有しているケースもあるが、この場合、自店系列のみの共有であり、業界全体での共有を目的としているものではないため、他店系列に車両が移ってしまうと以前の履歴が把握し難くなってしまう。
また、情報を記録、共有するといっても、その情報自体は、ユーザが日常、車両をどのように利用してきたかまでを第三者が把握できるものではない。ユーザの日常における車両の利用状況に関する情報は、二次流通に乗った車両、いわゆる中古車の品質を計り、判断するための強力な補完ツールとなりうる。しかしながら、現状では、中古車の品質を判断等する手段としては、車両を人の目で確認するしかないため、正確に中古車の品質を判断等するには高度な技術を要する。よって、車両を人の目で判断するため、隠れた瑕疵などの見落としが発生することは、ある程度、不可抗力といわざるを得ないこととされているが、その結果、その瑕疵による不利益を消費者が負う事となり、いまだ中古車市場全体への不信感を払拭できないでいると考える。
自動車管理履歴の一元化(非特許文献5)は、ED、AD、MDを記録、一元管理するものであって、安全、安心、楽しみ、の各目的での利用を推し進め、自動車社会の発展と活性化を促すものであるが、それには、記録の際の負担をできる限り減らすことが必須である。この通信記録式車両総合データレコーダはそれを目的とし、自動車管理履歴の一元化を実現するための基幹ツールとなる。
車両から発生する、記録すべきデータを、通信記録式車両総合データレコーダ(以下「ユニット」と呼ぶ。)によって取得し、格納するユニット内のメディアに記録する。メディアは、たとえば、不揮発性メモリとし、電源の有無、衝撃などによりデータが消失しない構造のものとする。
ユニットは、ADの取得が容易となるよう、ナビゲーションユニットなどと連動させ、共用、共有させることが望ましい。さらに、EDの取得のために、ECUその他イベントを感知するセンサー類を直接、接続できる構造とすることが望ましい。
ユニットは、MDを、通信手段によって自動的にデータを受信して記録する場合だけではなく、ユーザが手動で記録する場合も想定して、手動記録入力パネルを有することが望ましい。ユニットは、例えば、MDのうち給油の際の給油量、油種、金額などの情報を、ガソリンスタンドなどの計量器に配置された送信端末から受信し、その他DIYによる洗車、オイル交換など日常メンテナンスなどに関する情報は、ユニットの手動記録入力パネルから、もしくは別途、データサーバに装備したwebサイトにて、ユーザ専用のアクセス権限をもって、webサイトから記録する。
整備工場や修理工場、カー用品店など、サプライヤー側で行う車検、整備、瑕疵や不具合の修理などに関する情報は、サプライヤー側にそれらの記録内容を送信することができる端末を配置し、車両のユニットに対して通信することによって記録する。もしくは、別途データサーバに装備したwebサイトにて、サプライヤー専用のアクセス権限をもって、webサイトから直接記録する。
ユニット内に蓄積されたデータは、たとえば、定期的に、自動通信方式にてデータサーバに転送する。ユニットは、たとえば、ユニット内に蓄積されたデータをガソリンスタンドの計量器、もしくはその付近などに配置された受信端末に自動送信し、前記受信端末から有線回線、または無線回線などのネットワークを介してデータサーバに自動転送して最終記録をする。
EDとADは事故発生時の事実、原因検証、当事者間の紛争処理や裁判資料として必要な時に閲覧できるのみならず、普段から閲覧できることとすることにより、たとえば、交通事故の未然防止を目的とした教育、自己啓発に利用できる。EDとADを普段から閲覧可能とするためには、記録データを映像などに変換する必要ことが望ましいが、様々な記録メディアを媒体として、家庭のパーソナルコンピュータなどで、必要に応じてED、ADを直接映像化するよりも、ED、ADを一旦、データサーバへ自動転送する、という過程を踏むことにより、事前にデータサーバやwebサイトに付加した、データの分析機能などを、ユーザは負担なく受動的、自動的、効率的に利用できる、という利点を生むことができる。
さらに、事故時などに、他方の当事者、警察、司法などから、資料としてのデータの提出を要求されたときにも、事前にデータサーバやwebサイトに付加した機能などによって容易に作成できる、という利点を生むことができる。もちろん、車両にモニタなどを装備すれば、データサーバに未転送であるユニット内のデータを、事故現場などでも閲覧することができる。
通信記録式車両総合データレコーダにおいて、ユーザは、ほとんどのED、AD、MDを労することなくデータサーバに記録できることにより、負担なく、必要なときにwebサイトを通じて記録情報を確認することができ、さらに、データ収集側は、精度の高いデータを収集できる。
MDを、負担なく正確に収集できることによって、中古車市場における車両の品質判断の大きな分析ツールとなり、車両査定の大幅な効率化と精度向上、中古車全体の品質向上や、販売時などにユーザに対する明確な品質表示、が可能となり、中古車に対する消費者の信頼性が向上し、中古車市場、自動車市場全体の活性化につながる。そしてその利益は、最終的にユーザに直接還元されるものである。
ED、AD、MD、のうち、ユーザの生活に密着したデータ、例えば、経済性や過去の行楽の思い出などを、webサイトを通じて抽出できることにより、安全に、大切に車両を利用するという思い入れの気持ちが熟成される。これは環境保護や中古車の品質向上にもつながり、さらに、ユーザの車に対する意識が向上して車の楽しみ方が増えることとなる。当然、大切に使ってきた、という事実が記録によって証明ができることとなれば再販時の車両取引価格にも反映、還元されるようになり、ユーザにとってもサプライ側にとっても各種データの記録、履歴というものが新たな商品差別化項目や商品指標となり、自動車市場の適正化、活性化につながることになる。
以下、本実施形態における通信記録式車両総合レコーダを図6から図8に基づいて説明する。
図6のAに示す、通信記録式車両総合データレコーダ(以下「ユニット」と呼ぶ。)は、データ記録機能、一定のデータ処理機能、さらに必要に応じてデータ圧縮機能を有した装置である。
このユニットAは、車内に配置しても良いし、配置の効率などを考えて車両に元来装備、もしくは配置位置が規格化されている装置などと共用して配置しても良く、例えば、オーディオ、もしくはナビゲーションシステムなどと共用して配置することができる。
図6のBに示す、送信端末は、ユニットAと接続されており、ユニットA内に格納された記録データを転送する際に通信方式で送信するための装置である。送信端末Bは、記録データを圧縮して送信する際には、ユニットA内ですでに圧縮処理されたものを送信するための機能を有することができる。
図6のFに示す、車両から直接生まれる情報には、EDとADがあり、EDは、たとえば、車両ECUからの情報、車両に装備されているセンサー情報などの情報がある。車両から直接生まれる情報は、直接ユニットAによって取得され、記録される。
ADについても、直接、ユニットAによって取得され、記録される。なお、車両から直接生まれる情報は、例えば、映像情報であればそれを取得する装置、位置情報であればそれを取得する装置、走行軌跡などの情報であればそれを取得する装置などの各種装置を介してユニットAに記録される。
図6のCに示す、受信端末は、車両に施した措置などの情報を外部から受信する装置である。外部から受信した情報は、受信端末Cを通じてユニットAに記録される。外部から受信する情報は、例えば、給油量、修理や点検の記録、不具合などMDの情報である。それら情報は、情報を送信する端末Eを備えた施設であって、例えばガソリンスタンドやカー用品店、整備工場や修理工場などの外部の施設において記録される情報である。
図6のGに示す、車両から間接的に生まれる情報は、前記、外部から車両に施した措置などの情報をはじめ、その他ユーザ自身による洗車や点検整備、ユーザが感知した車両の不具合の情報などが含まれる。
車両から間接的に生まれる情報Gは、送信端末Eを通じて受信端末Cを経由してユニットAに記録することができ、または、送信端末Eを持たないガソリンスタンドやカー用品店、整備工場や修理工場、そしてユーザによって、ユニットAに装備した記録入力パネル、もしくは別途データサーバに準備したwebサイトから記録することも可能である。なお、webサイトから情報を記録する場合、ガソリンスタンド、カー用品店ごとにそれぞれ専用のアクセス権限をもって、記録することが望ましい。
ユニットAに記録された各種情報は、送信端末Bを通じて、車両を利用するにあたり一番訪れる頻度が高い施設、例えばガソリンスタンドなどに配置した受信端末Hに情報を送信する。受信端末HとデータサーバDは有線回線、無線回線などを介して接続されており、自動転送によってデータサーバDに記録する。なお、自動転送に限られず、ユーザによる手動転送することもできる。
なお、図7は、本実施形態の通信記録式車両総合データレコーダの概念図を示す図であって、図8は、この通信記録式車両総合データレコーダ、および、その他方法によって記録すべき記録内容の一例を示す図である。
<車両売却処分における業務効率向上のための基幹システム>
ここで、車両を売却処分する業務において、その業務に関わる全セクションの業務効率を向上させることを特徴とした、共有データサーバおよび専用webページを含む基幹システム、および業務スキーム、それに付随するソフトウェアとハードウェア、に関して、説明する。
既存の中古車流通の形態においては、仕入、販売、という二つの手順を踏むのが一般的である。仕入の手段としては、主に、「買取り」、「買換えの際の下取り」といった手段があり、さらに、「AA代行」という手段もある。一方、販売の手段としては、「消費者に対する小売」、「業者間売買」といった手段があり、いずれの場合も車両は一旦、オートオークション(AA)(非特許文献6)、もしくは入札会(非特許文献7)において、出品、成約を経由したうえで店頭に並ぶパターンが多い。
さらに、中古車流通においては、主に、AAで積み重ねられた各車両ごとの売却結果の価格データが、各車両の卸売価格相場として参照され、クライアントからの車両の買取り、下取りの際の価格算出基準、としてその相場価格が活用されている。そして、この相場価格は、店頭小売価格とも相関関係を持っている。
中古車流通の中核をなす、AA、入札会とも、長年の実績を有しており、コンピュータを利用した入札システムや、会員に対する自動代金決済システムを早期から取り入れるなどして、進化、改良が重ねられ、ほぼ完成、熟成された制度といえる。
一方、業務管理者側、特に小売店舗を併設して営業している販売店等は、一般的に、狭域対象に特化した、小規模な組織や経営形態であることが多く、何らかの特徴を持つシステムやスキーム、広域の企業間ネットワークを有して、広汎な業務を行うことは少ない。しかし、何らかの共通のビジネスモデルや、フランチャイズチェーン方式に基づいた、買取り専門店チェーンや車検、板金修理チェーンなどが数種類存在し、一部の規模の大きい車両関連法人をターゲットとした、一括処分スキーム等を提供している組織(非特許文献8)、などが存在する。
業務管理者側においては、多くが、旧来の帳票による管理、もしくは市販の業務管理ソフトウェア、ワードプロセッサや表計算ソフトウェアなどによる管理をしている程度であって、その多くはごく基本的なものである。
AA会場による、AA会場の会員向けの加修業務の受託は、一部の会場ですでに行われているが(非特許文献9)、会員の利便性の向上というよりはむしろ収益構造の多角化のため、という性格が強い。
個人向けのAA代行は、車両の落札代行は散発的に行われているが、売却代行では、一時、フランチャイズチェーン店方式により組織的に行われたが普及せず、結局、買取り方式へ転換した、という経緯がある。
(非特許文献6)「株式会社ジェイエーエー 中古車オークションとは」、[online]、インターネット<URL:http://www.jaa.co.jp/index.php?blogid=4&catid=33>
(非特許文献7)「システムロケーション株式会社 入札会案内」、[online]、インターネット<URL:http://www.slc.jp/solution/market/tend#into.html>
(非特許文献8)「システムロケーション株式会社 事業内容」、[online]、インターネット<URL:http://www.slc.jp/business/index.html>
(非特許文献9)「株式会社ユーエスエス 株式会社アクオス 商品化工場誕生!広告」
現在の、車両の売却処分方法は、前記のとおり、「買取り」と「下取り」といった手段が主流であり、例えば、「買取り」においては、車両の状態と、その実勢の卸売価格相場を精査し、売却されるであろう金額を予測し、そこから自らの利益を差し引いた金額を、買取り金額として設定される。これは、元来、個人クライアントを対象とした、いわゆる個別案件に対応する方法、として発展、慣習化してきたものである。
そのような個別案件に対応する方法としてそぐわない、大規模な車両販売会社やレンタカー会社、そして、リース会社や信販会社に代表される車両金融関係法人など、大量の車両を管理するクライアントに対して、専用のスキームや協業体を構築、構成し、業務を行っている業務管理者も一部存在するものの、既存の車両の流通形態自体が単純、かつ強固な慣例に基づいて発展してきたものであるため、クライアントの多様化したニーズに応える新しい方策を積極的に探るのではなく、既存の形態に如何に対応させるか、に試行錯誤している業務管理者が多い、と分析する
例えば、大量の車両売却処分業務を業務管理者が受託した場合、業務管理者は車両を精査する業務が行えないにもかかわらず、一台あたりの買取り価格を決定し、もしくは全ロット一括で買取り価格を決定するなど、その過程は大雑把なものにならざるを得ない。そして、この場合、業務管理者は損失リスクを最小限に抑えるために、安値での買取り価格の提示をすることにつながってしまう。これは、本来、クライアント側にとっては損失となるのであるが、車両売却処分業務を円滑に完遂する、という二次的使命は達成できるため、業務効率優先、という名の下に見過ごされているのが現状である。
大量の車両を管理するクライアントに対して、車両の売却処分業務を受託し、完遂するためには、業務管理者単体で行うのは非効率である。そのために、車両を搬送する陸送会社、主な売却先であるAA会場や入札会場、などの各セクションが関わる。しかしながら、各セクション相互間の連絡調整等は、その多くが電話やFAXなどの通信手段によって行われていることが多い。これは、自動車業界全体が、自動化やシステム化の遅れに対して特段、不便を感じない業態であること、旧来の流通形態や慣例を保持した上での系列化や、優先されてきた序列化などに、新しく生じたニーズを当てはめることで最低限の対応ができること、などから、新しいグランドデザインやスタンダードを構築する必要性は低いとされてきたからである。
クライアントが個人ユーザであれば、相互間の連絡調整等は、前記通信手段の方が相手に安心感を与えることができる、など、優れている場合もあるが、ニーズやクライアントが多様化している現在、それだけでは不十分となっていると考える。そのため、車両売却処分業務におけるデータやシステムを自動化し、共有化することが重要となる。
しかしながら、特に、大量の車両を管理するクライアントであれば、各セクションにおける相互間の連絡調整は、クライアントよりも上位に位置する末端ユーザを巻き込むことになり、自動化に対する不信、不安が拭えず、また、個人情報保護の観点からも、この業務におけるデータやシステムの共有化は、一部のクライアントと業務管理者が、厳重なアライアンスの下で行っている、程度に過ぎない。
同時に、クライアントが管理する車両の高額処分、および売却処分に関する業務効率の向上は、末端ユーザの利益、又は、クライアントの業務の根幹にかかわる部分であり、末端ユーザや消費者全体からの信用、最終的には経営、にも大きく影響する。したがって、この分野の業務の進化が常に望まれているといえる。
一方、車両売却処分業務完了後における代金決済の点では、AA会場や入札会において、仮に、業務管理者、もしくはクライアント自らがAA会場や入札会の会員であれば、売却された車両の売却代金から、出品料や成約料など各会場側が得るべき費用が自動控除され、残金が直接入金される効率的な仕組みとなっている。
なお、AA会場、入札会を含む業者間における車両の売買において、売却が成立した車両の名義変更に必要な書類一式(以下「譲渡書類一式」という。)を、各会場に引き渡すことによって決済されるという規則、慣例となっている。これは、落札者は、車両の代金を会場に対して支払わなければ、その後の売却に必要不可欠となる当該車両の譲渡書類一式を受領することができず、一方、出品者は譲渡書類一式を会場へ引き渡さなければ、当該車両の売却代金を受け取ることができない、というものである。
クライアント自ら会員となっているAA会場や入札会場に、現状のまま直接、当該車両を搬入し、売却する場合を除けば、クライアントもしくは業務管理者は、会場からの車両売却代金入金後に、出品に至るまでの業務に関わった他セクションに対して、別途、個別に業務料金等の支払を行わなければならない。例えば、陸送会社などを利用して、車両を有するクライアントの所在地からAA会場や入札会場、もしくはエリアセンター(AC)などへ運び込む場合、そこまでの車両搬送費用が発生することとなるし、車両名義の変更や、一時抹消登録をするならば、その業務を行う行政書士事務所などに対する業務費用が発生する。また、前記の通り、クライアントによる譲渡書類一式の事前準備等に関する業務も同様に、管理している台数が多ければ多いほど、煩雑で非効率なものとなりやすい。
次に、AA会場や入札会へ車両を出品するにあたっては、車両を出品する会員の多くは、車両に必要な修繕や美装(以下「加修」という。)を施すことが一般的である。この加修は、出品したAA会場や入札会での現車の下見の際に、当該車両に対し、多くのバイヤーに良い状態であるという印象を持ってもらい、少しでも高くまで競り合ってもらったり、入札してもらったりするための可能性を追求するために行われる。つまり、AA会場や入札会では、加修を実施するか否かによって、当該車両に対するバイヤーに与える印象が大きく影響し、その結果、成約価格にも大きく影響するのである。
しかし、その高額処分を狙うための加修は、費用対効果、つまり、少しの費用で大きなリターンを追求するための、事前の車両状態の分析と推測が重要である。そのための材料や基準となるのが、AA会場や入札会場において、当該車両ごとに行われる査定、によって決定される、評価点、と呼ばれるものである。評価点の規則、基準は、簡明なものとは言えないものの、会場運営組織ごとに会員に対して公表されている。一般的に、この評価点の良し悪しが、最初にバイヤーが当該車両に対して抱く印象や先入観を補完し、最終的に、成約する金額に差を生じさせる重要な指標として認識されている。ちなみに、この評価点の規則、基準、または表示方法は、各会場間で統一化の動きはあるものの、現時点では実現していない。
仮に、クライアントが、処分対象となる車両を大量に管理している場合、クライアントと業務管理者は、車両を処理、管理する業務のみに忙殺されてしまう。したがって、理想的な高額処分をするための努力は、業務遂行における負担が生じてしまうため、加修の重要性に対する認識が高いとは言い難く、実際、何も手を加えず、また美装すらせずにAA会場や入札会に出品されている車両も多い。しかし、この結果、バイヤーの落札意欲、購買意欲を削ぐこととなり、本来の相場以下の金額評価しか受けることができないのは当然のことであるとともに、クライアントだけではなく業務管理者にとっても損失であると言える。
一方、AA会場は、現在、会場間の熾烈な競争が行われており、その優劣を計る客観的基準が、出品台数などのボリュームと成約率の高低、程度しかない。その結果、会員に対する特筆すべきサービスや、会場の個性、長所を伸ばすことなどがなおざりにされ、出品台数を集めることばかりに主眼が置かれてしまい、スケールメリットと資本力を持つAA会場運営組織が無尽蔵にシェアを奪い合う、という不健全な構造となってしまっている。したがって、AA会場の個性化、会員に対するサービスの向上など、による差別化、健全な競争を形成することが望まれている。
前記のように、AA会場や入札会において、会場による当該車両の査定によって決定される評価点が非常に重要となるのであるが、加修に対する費用対効果、例えば一万円の加修費用で評価点がワンランク上がるのか、そしてそれによって三万円の高額売却が実現するかどうかは、あくまでも予測、推測の域から超えることがない。その結果、しかるべきセクションが、加修のアドバイスなどを積極的に提供することはなく、出品する側の加修に対する考え方にのみ頼っているのが現状である。
そして、車両売却処分の方法という点においては、前記のとおり、「買取り」、「下取り」方式によるものが主流であるが、「AA代行」方式は普及していない。AA代行とは、業務管理者とクライアントとの間で、事前に手数料や業務経費計上などのルールやスキームを相互承認し、実際にAA会場や入札会にて車両を売却した後に、前記費用を控除した残額をクライアントに入金する、という特徴を有する方法であり、車両処分する過程や経費、手数料等を透明化した処分手法である。しかし、業務管理者側にとっては、収益率が下がること、クライアント側にとっては、当該車両の換価金額の確定までに時間がかかること、が欠点とされ、普及していない原因となっている。
そこで、本実施形態における車両売却処分業務システムは、共有データサーバ、および、当該共有データサーバにネットワークを介して接続された、各セクション専用の業務処理におけるデータの書き込み、読み込み、表示、コミュニケーション機能を備えた専用webページを備え、各セクションが、業務を共通のスキーム上で遂行することにより、当該業務を高効率に処理することを特徴とした基幹システムを構築する。この基幹システムにおける各セクション専用webページや共有データサーバに接続する方法は、たとえば、電話回線、専用回線、または無線回線を用いることができる。各セクションの専用webページは、専用のソフトウェアでも良いし、既製のブラウザを利用しても良い。
この各セクション専用webページは、セクションごとに権限ID、パスワードを持って基幹システムにアクセスする機能を備え、各セクションが行う業務の遂行の記録、及び、業務遂行にのみ必要な情報を共有データサーバから抽出し表示する。さらに、各セクション専用webページは、自セクションの業務管理機能、他セクションとのコミュニケーション機能を備える。
この基幹システムは、クライアントが管理する車両データベースの保存形式を問わず、クライアント専用のwebページを通じて、共有データサーバへ容易に、事前にインポート、格納することができる機能、ソフトウェア、ハードウェア、を備える。
クライアントを除く、業務管理者、AA会場、入札会場、陸送会社、AC、行政書士事務所など車両売却処分業務にかかる各セクションは、業務管理者を中心としたアライアンスに基づいて構成される。各セクションに、基幹システムへのアクセス権限を与えて、そのアクセス権限によって各セクションが専用webページを利用することにより、各セクションが業務に必要な部分の格納データを自動抽出でき、同時にそれを閲覧、表示できる内容を、各アクセス権限によって、項目ごとに設定でき、自セクションが業務を遂行するために必要な、他セクションへの確認、操作、指示することができるといった基本機能を備える。
業務における各セクションの相関関係に基づいて、連絡、調整、相談、報告を容易にするためのコミュニケーション機能を、基幹システム内、および専用webページに基本機能として装備する。このコミュニケーション機能は、業務上、コミュニケーションが必要となった際に、専用webページからの通信が可能となるものであって、たとえば、電話やFAX、メールのブラウザを備え、それらの通信の履歴や、他セクションから、もしくは自セクションの業務アラートの表示が自動でされる基本機能を備える。
基幹システムは、各セクションが行った業務で発生する業務料金等を管理する機能を備え、各セクションが、業務完了後にその都度、専用webページを通じて自セクションの業務料金を記録することにより、その金額が自動計算され、自セクションの業務料金総額や原価計算、その他売上請求等を管理することができる。
クライアントの専用webページには、前記管理する車両データのインポート機能以外に、データサーバに格納されるデータの開示範囲の指定および制限機能、業務管理者に対する業務の自動発注、指示機能、スケジュール管理機能、進捗状況確認機能、各セクションからの様々な報告の受信と表示機能、加修アドバイスと加修メニューの表示と選択承認機能、業務経費事前見積と成約、入金予想金額の表示機能、販売結果報告表示機能、その他、これら基幹システムにおける業務スキームに、クライアントとして必要な一切の情報を表示、集計する機能を備える。
業務管理者の専用webページには、基本機能のほかに、クライアントからの業務の自動受注機能、各セクションへの業務発注、指示機能、スケジュール管理機能、進捗状況確認機能、各セクションからの様々な報告の受信と表示機能、加修アドバイスと加修メニューの表示と選択承認設定機能、業務経費事前見積と成約、入金予想金額の計算、表示機能、販売結果報告計算、表示機能、その他、これら基幹システムにおける業務スキームに、業務管理者として必要な一切の情報を表示、集計、計算する機能を備える。
AA会場もしくは入札会場の専用webページには、基本機能のほかに、各セクションが行った業務内容と業務金額を当該車両ごとに集計する機能を備える。そして、業務内容と業務金額を集計する機能は、同時に車両売却代金からの控除指示機能ともなる。控除指示は、たとえば、業務管理者が売却結果を専用webページに入力した後に表示されることができる。その他、これら基幹システムにおける業務スキームに、AA会場もしくは入札会場として必要な一切の情報を表示、集計、計算する機能を備える。
ACの専用webページには、基本機能のほかに、業務管理者からの業務受注機能、スケジュール管理機能、車両状態報告のためのチェックシート機能、画像取得機能、加修アドバイスと加修メニューの作成機能、加修作業の進捗状況報告機能、その他、これら基幹システムにおける業務スキームに、ACとして必要な一切の情報を表示、集計、計算する機能を備える。
陸送会社の専用webページには、基本機能のほかに、業務管理者からの業務受注機能、スケジュール管理機能、その他、これら基幹システムにおける業務スキームに、陸送会社として必要な一切の情報を表示、集計、計算する機能を備える。
行政書士事務所の専用webページには、基本機能のほかに、業務管理者からの業務受注機能、クライアントからの譲渡書類についての報告受信、表示機能、スケジュール管理機能、その他、これら基幹システムにおける業務スキームに、行政書士事務所として必要な一切の情報を表示、集計、計算する機能を備える。
業務管理者は、基幹システムに必要なこれら各セクションとアライアンスネットワークを構成し、個別の業務料金や手数料は、業務管理者が各セクションと話合いの上、事前に規格化しておき、業務スキームとしてクライアントにサービスを提供する。なお、このスキームは業務遂行中でも全セクション同意の下で変更できるものであることが重要である。
クライアントは、この基幹システムを利用するために、業務管理者との間で業務スキームにおける業務料金をはじめとする、車両売却業務の委託内容の詳細を決定し、両者の承諾の下、業務管理者より基幹システムに対する権限ID、およびパスワード、専用webページの提供を受け、自らの管理車両データを全て、もしくは必要な分のみ、専用webページを通じて共有データベースへインポート(インプット)する。
AA代行方式の車両売却処分の場合は、個別の車両について、AA会場から支払われるべき、車両売却代金と消費税、返還されるべきリサイクル預託金、自動車税の月割返金分の総額から、売却までに要した業務費用、および、業務管理者が得るべき手数料を控除した残額を、AA会場から、クライアントが当該AA会場の会員であれば直接クライアントに支払い、会員でなければ、会員である業務管理者を経由してクライアントに支払う。なお、この場合の業務管理者が得るべき手数料は、事前に、クライアントと業務管理者間で取り決めた一定の金額でも良いし、AA会場から支払われるべき総額から業務費用を控除した金額に、事前に両者で取り決めた利率を乗じた金額などでも良い。また、AA代行方式において、業務管理者は必ず車両売却前に、AA会場での成約予想金額に基づく最低入金保証金額をクライアントに提示し、同意を得る過程を踏み、この最低入金保証金額の範囲内で売却前に手付入金する事も可能とする。
業務管理者は、クライアントとの間で決定した事項に基づき、専用webページを通じて各セクションへ業務前指示を発信する。この業務前指示には業務内容、扱い台数、地域範囲、スケジューリング等、各セクションの事前準備に必要な情報を含む。各セクションはこの業務前指示に基づき、事前の概算業務見積を記録する。この記録を業務受諾報告としても良い。
業務管理者と各セクション、および各セクション同士の業務に関する打ち合わせ等は、基本的に専用webページを通じて行い、自動記録されることが望ましい。必要があれば基幹システム外の電話やFAXなども利用するが、その記録も専用webページを通じてユーザによる手入力によって記録する。全ての打ち合わせ等の記録のうち、公開可能なもののみ、全セクションが共有し、各専用webページにて閲覧できることが望ましい。
なお、クライアントに対して業務上必要な要求は、全て業務管理者を通じて行うものとするが、陸送会社による車両引取りスケジュール等の打ち合わせ、行政書士事務所による譲渡書類一式に関する打ち合わせ等、直接クライアントとコンタクトした方が、より精度が高い業務を実施できる種類のものは、この限りではない。
各セクションの業務に要した料金は、業務が完了する都度、専用webページを通じて記録し、この記録によって自動的に業務完了報告とすることができる。
陸送会社による車両の引取りには、車両所在の確認、車両引取日時、時間指定の厳格性のレベルや注意事項、先方からの徴求書類等の確認が必要となる。これは専用webページで確認可能であるが、最終的に先方への電話による最終確認を要する。引取りが完了すると、その車両はACへ搬入される。ここで陸送会社の業務が一旦完了する。なお、この車両搬送業務は、陸送会社によるものに限られず、たとえば、ACによっても行うことができる。
ACでは、車両状態を確認し、全体画像、瑕疵部分の画像を取得し、AA会場における評価点の予想とともに、加修アドバイスおよび加修メニュー、および加修スケジュールを専用webページを通じて作成し、記録する。加修アドバイス及び加修メニューの作成においては、出品を予定しているAA会場および入札会場の査定担当者から、出品前査定を行ってもらうことによって評価点の事前算出、さらに加修に対する助言等を受けることができることが望ましく、その結果、加修の費用対効果算出の精度が飛躍的に向上する。
加修アドバイス及び加修メニューの内容は、業務管理者とクライアントの専用webページに自動的に表示される。なお、業務管理者は、費用対効果を考慮して重ねて加修アドバイスを送ることもできる。AA代行方式の場合は、クライアントに対して、車両売却処分における入金予想金額見積書を発行し、必要があれば打ち合わせをし、承認を得る。その後、加修メニューをクライアントが選択、承認すると、ACは加修作業に着手する。
加修が完了した時点で、ACは専用webページに加修項目と業務料金を記録する。このACによる記録が各セクションへの完了報告となり、AA会場もしくは入札会場への出品陸送手配が陸送会社に対して自動的に行われる。また、前記ACによる記録は、同時に、AA会場もしくは入札会場への出品連絡ともなる。出品に必要な出品票はACによって記載する。なお、会場への出品する車両の搬送は、陸送会社によるものに限られず、AC自身が行っても良い。
AA会場もしくは入札会での、売却処分が完了すると、業務管理者は、専用webページを通じて、その結果を記録する。その結果、自動計算された売却代金入金予定金額と、控除される各セクションの業務料金総額等の明細も表示され、同内容のものがクライアントの専用webページにも表示される。なお、業務管理者およびクライアントの両者に対して、自動で帳票出力ができる機能を備えていることが望ましい。
必要な譲渡書類一式は、AA会場もしくは入札会場に、あらかじめ開催前日までに送付しても良いし、各会場の譲渡書類一式の受領規定期間内に送付しても良い。その譲渡書類一式の管理は、クライアント自身が行っても良いし、業務管理者が行っても良いし、名義変更等が必要であれば行政書士事務所やACが行っても良い。
AA会場もしくは入札会場は、売却処分が完了した当該車両の譲渡書類一式を確認次第、専用webページに表示された控除指示に従い、売却代金から控除した残金を、クライアントが会場の会員であれば直接クライアントへ入金する。クライアントが会場の会員でなければ、会場は一旦、前記残金を、業務管理者へ入金し、業務管理者がクライアントへ支払う。なお、クライアントと業務管理者との間の取り決めで、例えば、出品会場や地域が複数にわたる場合や、複数の車両の売却処分に一定の期間を要する場合などは、一旦、業務管理者が売却代金を取りまとめした後に、クライアントに入金することもできる。また、各セクションの業務料金等においても、同様に、各会場で控除された業務料金を、一旦、業務管理者が一括して取りまとめ、各セクションに対して支払うこともできる。
各セクションに対する業務料金等の支払は、当該車両の売却する都度でも良いし、週締めや月締めする都度でも良く、また、業務スキームの作成やアライアンスの際に個別に決定してもよい。
車両売却処分業務において、この基幹システムおよび共有データサーバを全セクションが利用することによって、これまで各セクションが個別に行っていた業務管理を一元化することができ、広範にわたる業務効率の向上が図れる。
また、クライアントが、事前に共有データサーバに管理車両データを格納しておくことで、一定のスキームに基づき業務を行う各セクションが、業務遂行に必要な最低限の情報を専用webページを通じて容易に抽出でき、また、業務管理者およびクライアントが、業務の完了報告、次セクションへの引継ぎ、他セクションの遂行状況、および、都度確認するべき業務の進行状況の把握をリアルタイムにできるため、全セクションでの業務管理の効率、および各セクション間の受発注、連絡、相談、報告などのコミュニケーション業務の効率を大幅に向上できる。
このデータサーバを核に、各セクション専用のwebページを相互にリンクさせることにより、前記各セクション間の受発注、連絡、相談、報告だけではなく、自セクションが行った業務売上、請求などの、精算集計業務の効率も、大幅に向上できる。
次に、代金や料金の決済業務を、決済システムを備えているAA会場、もしくは入札会場が中心となって担うこと、および車両売却処分完了後に都度の決済を可能とすることによって、クライアントの車両売却代金、各セクションにおける業務料金の決済において、セクション間の与信、代金回収業務が大幅に軽減される。
そして、AA会場や入札会場への出品前の加修を促すことで、品質管理の方策と主導権を、AA会場もしくは入札会場が担うという業務スキームを拡充し、その流れを常習化することによって、中古車流通全体における新たなグランドデザインとなり、会場間の差別化と健全な競争の形成、出品車両の品質のボトムアップを図ることができる。そして、その結果、落札者による次ユーザへの売却時における再加修の負担や、売却までの滞留時間を削減することができるとともに、自動車販売全体の活性化と高効率化、そして消費者からの信頼性の向上にもつながる。
AA代行方式は上述したような欠点があるが、本実施形態では、その欠点を克服することで、クライアントをはじめ、消費者における車両売却処分方法の選択肢が増やすことができることはもとより、その利益の還元も明確に行うことができる。
以下、本実施形態における車両売却処分における業務効率向上のための基幹システムを図9から図12に基づいて説明する。
図9の上図に示す基幹システム構成図におけるXは、売却処分の対象となる車両データを格納するデータサーバであり、また、各セクションが行う業務の記録を格納するデータサーバでもある。
車両データ、および各セクションが行う業務の記録は、各セクションに与えられた専用webページを通じてデータサーバXに記録され、共有される。各セクションによるデータサーバからのデータの抽出は、業務管理者、クライアントが事前に抽出、表示の制限項目を設定したフィルタYを通過し、各セクションが閲覧できる内容を、業務上必要な部分のみに限定して抽出することができる。
各セクションの専用webページ間に表示、通信される内容も、各セクションにおいて制限項目を自由に設定することができる。例えば、あるセクションの売上や利益などは他のセクションに知らせる必要がない情報である場合、売上または利益などに関する項目は他のセクションでは表示することを制限することができる。
図9の下図に示すネットワーク構成図は、一つの基幹システムと業務管理者を中心となって、広域にわたる各AA会場またはACに関する業務をコントロールする、という概念を示している。
各地の主要地域にあるAA会場もしくは入札会場近傍にACを配置し、全国対応ができる陸送会社、および行政書士事務所に関するネットワークを、一つの協業体として構成することによって、複数の、かつ多様なクライアントからの業務を受託可能とすることができる。
図10に示すのは、基幹システムと各セクションの相関図である。図10に示すように、基幹システムは、データサーバXを中心とし、クライアントA、業務受託者B、陸送会社C、エリアセンタD、AA会場・入札会場E、および行政書士事務所Fを基本的なセクションとして含む。
クライアントAは、業務管理者Bに業務を発注し、管理車両データをデータサーバXにインポートする。各セクションへの指示は業務管理者Bが専用webページHを通じて行い、各セクションは業務スキームに則り業務を遂行する。各セクションはそれぞれの専用webページI、J、K、Lを通じて、業務料金の事前見積、完了報告、連絡調整、相談等を行い、完了報告と共に業務料金を記録する。
専用webページは、それぞれセクションの業務に応じた専用の機能を備えたものであるが、共通の機能として、受発注、相互間のコミュニケーション機能、制限データの閲覧機能、業務料金の集計機能を備える。
AA会場・入札会場Eの専用webページLには、各セクションが行った業務料金控除指示機能があり、当該車両の売却処分完了後、その表示された控除指示に基づき、車両売却代金より控除した金額を、クライアントが会員であれば直接、会員でなければ会員である業務管理者に、自会場の決済システムを通じて入金する。
AA会場・入札会場Eが控除した業務料金は、各セクションからの請求に基づいて決裁する。決裁ルールは事前に取り決め、上述したように、週締めでも良いし月締めでも良い。
クライアントの専用webページGには、前記クライアントの業務として必要となる機能、およびそれに必要なソフトウェア、ハードウェアを備える。
業務受託者(業務管理者)の専用webページHには、前記業務管理者の業務として必要となる機能、およびそれに必要なソフトウェア、ハードウェアを備える。
エリアセンタ(AC)の専用webページIには、前記ACの業務として必要となる機能、およびそれに必要なソフトウェア、ハードウェアを備える。
車両搬送受託者(陸送会社)の専用webページJには、前記陸送会社の業務として必要となる機能、およびそれに必要なソフトウェア、ハードウェアを備える。
行政書士事務所の専用webページKには、前記行政書士事務所の業務として必要となる機能、およびそれに必要なソフトウェア、ハードウェアを備える。
図11に示す業務スキームの構成図1は、車両売却処分における業務効率向上のための基幹システムにおける業務スキームにおける各セクション間のフロー、およびロードマップの例を示している。各項目の番号は、業務順序を示している。
図12に示す業務スキームの構成図2は、AA代行システムにおける各セクション間のフロー、およびロードマップの例を示している。各項目の番号は、業務順序を示している。
<第2の実施形態>
第2の実施形態の自動車管理履歴認証システムは、第1の実施形態の自動車管理履歴認証システムに、上述の通信記録式車両総合データレコーダ(データレコーダ)を適用したシステムである。
すなわち、第1の実施形態の自動車管理履歴認証システムでは、データベース(第1の実施形態のデータベース)への記録の書き込みは、車両の所有者又は使用者であるユーザによるもの、または販売店・整備工場・オートオークション会場等の流通セクションによるものであったが、第2の実施形態の自動車管理履歴認証システムでは、前記データベースへの書き込みを、個々の車両ごとに取り付けられるデータレコーダによって書き込むことができることとしたことに特徴を有する。
第2の実施形態の自動車管理認証システムは、図7に示すように、ユーザが日々車両を利用することによって生じたイベントデータ(ED)、アクションデータ(AD)、およびメンテナンスデータ(MD)をデータレコーダAが備える記録手段に記録し、次いで、前記記録した各データをデータレコーダAが備える送信手段Bによって外部に向けて送信し、最終的に前記データベースに記録を書き込むものである。前記データベースへの記録の書き込みとしてメンテナンスデータを例にとれば、図3に示す第二継続管理履歴140の各項目が、記録が書き込まれる度に自動的に更新される。なお、自動車管理履歴認証システム自体の構成、およびデータレコーダ自体の構成および機能は、上述したものと同様であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
このような第2の実施形態の自動車管理認証システムによれば、車両の所有者又は使用者であるユーザ、または販売店・整備工場・オートオークション会場等の流通セクションによる入力に要する時間、手間を省くことができるとともに、前記データベースへの記録を自動的に行うことによって、データベースに記録された車両の管理履歴に対する信頼性を大幅に向上することができる。
<第3の実施形態>
第3の実施形態は、第1の実施形態の自動車管理履歴認証システムと、上述した車両売却処分における業務効率向上のための基幹システム(以下、「車両売却業務システム」と称する)とを組み合わせた複合システムである。
第3の実施形態の複合システムは、第1の実施形態の自動車管理履歴認証システムによってデータベース(第1の実施形態のデータベース)に記録された個々の車両毎の管理履歴情報を、前記車両売却業務システムにおいて説明したAA代行業務スキームの中で利用するものである。すなわち、従来のAA代行方式は、上述したように、業務管理者とクライアントとの間で、事前に手数料や業務経費計上などのルールやスキームを相互承認し、実際にAA会場や入札会にて車両を売却した後に、前記費用を控除した残額をクライアントに入金する。そして、従来のAA代行方式は、業務管理者は車両を精査する業務が行えないにもかかわらず、一台あたりの買取り価格を決定し、もしくは全ロット一括で買取り価格を決定するなど、その過程は大雑把なものにならざるを得なく、かつ、業務管理者は損失リスクを最小限に抑えるために、クライアントに対して見積もり段階における最低入金保証金額を必要以上に安価で提示してしまうといった問題点を有していた。そこで、本実施形態の複合システムは、前記問題点をさらに解決することを目的としている。
以下、本実施形態の複合システムについて、詳細に説明する。
本実施形態の複合システムは、前記自動車管理履歴認証システムと、前記車両売却業務処理システムとを含む。
本実施形態の複合システムにおける自動車管理履歴認証システムは、第1の実施形態で述べたように、個々の車両毎の管理履歴を記録したデータベースを備えるカルテサーバと、前記カルテサーバにネットワークを介して接続され、前記データベースに対してデータの読み取り及び書き込みが可能な一以上の端末と、を備え、前記データベースは、個々の車両毎に車両の管理履歴を記録するための記録項目欄を備え、当該記録項目欄は、車両の所有者又は使用者が管理履歴データを書込み可能なユーザ記録項目欄と、オートオークション会場を含む所定の機関が管理履歴データを書込み可能な機関記録項目欄と、を備えるシステムであって、その構成および機能は第1の実施形態のシステムと同様であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
また、本実施形態の複合システムにおける車両売却業務処理システムは、上述の<車両売却処分における業務効率向上のための基幹システム>で述べたように、個々の車両毎の車両売却に伴う業務処理の内容及び業務処理に要した費用を記録する業務処理データベースを備える共有データサーバと、前記共有データサーバにネットワークを介して接続され、前記共有データベースに対してデータの読み取り及び書き込みが可能な車両売却処分業務を委託する業務委託者、車両売却処分業務を受託する業務受託者、車両売却する業務を運営する業務運営者、及び車両売却するまでの業務に関与する業務関与者の各業務処理を行う各端末と、を備えるシステムであって、その構成および機能は、上述したものと同様であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
本実施形態の複合システムは、前記業務委託者の端末、前記業務受託者の端末、前記業務運営者の端末、および前記業務関与者の端末の少なくともいずれか1つは、前記データベース(自動車管理履歴システムに係るデータベース)のデータ、および前記業務処理データベース(車両売却業務システムに係るデータベース)のデータを個々の車両毎に関連付けて表示させる。ここで、端末に関連付けて表示させるとは、たとえば、各セクションの専用webページにそれぞれのシステムで記録されたデータを同時にユーザに提供するように表示させることである。なお、各セクションにおいて1つの専用webページに両方のデータを同時に表示させる場合に限らず、たとえば、データごとの専用webページを1つの端末に同時に表示させてもよい。
以下、本実施形態の複合システムにおける、前記データベースのデータおよび前記業務処理データベースのデータを個々の車両毎に関連付けて表示させる例及びその効果について説明する。
業務運営者(AA会場など)の端末において、AA会場・入札会場Eの専用webページLに、たとえば、自動車管理履歴システムで記録された「個々の車両毎の管理履歴」と、車両売却業務システムで記録された「各セクションが行った業務料金」とを関連付けて表示させることで、業務運営者は、車両の状態と出品に至るまで要した費用との両方を考慮して、適切な車両売却金額を決めることができる。
業務委託者(クライアント)の端末において、クライアントの専用webページGに、たとえば、自動車管理履歴システムで記録された「個々の車両毎の管理履歴」と、車両売却業務システムで記録された「見積もり段階での最低入金保証金額」とを関連付けて表示させることで、クライアントは、車両売却前に、売却対象の車両の成約予想金額に基づいた最低入金保証金額が妥当であるか否かを把握することができる。また、自動車管理履歴システムで記録された「個々の車両毎の管理履歴」と、車両売却業務システムで記録された「消費者が実際に中古者を購入した金額から各業務処理に要した費用を控除した車両代金残額」とを関連付けて表示させることで、業務委託者は、自身が管理する車両が適切な値段で売却することができたか否かを把握することができる。
業務受託者(業務管理者)の端末において、業務受託者の専用webページHに、たとえば、自動車管理履歴システムで記録された「個々の車両毎の管理履歴」と、車両売却業務システムで記録された「各セクションへの業務発注、指示機能」および「加修アドバイスと加修メニューの表示と選択承認設定機能」とを関連付けて表示させることで、業務受託者は、車両の管理履歴をもとに、加修の要否の判断、そして各セクションへの個々の車両に応じた適切な業務発注、指示することができる。また、自動車管理履歴システムで記録された「個々の車両毎の管理履歴」と、車両売却業務システムで記録された「各セクションが要する費用」とを関連付けて表示させることで、業務受託者は、車両売却前に、見積もり段階での車両ごとに適切な最低入金保証金額を設定することができ、クライアントに対して「見積もり段階での最低入金保証金額」を提示し、同意を求めることもできる。
業務関与者(陸送会社)の端末において、業務関与者(陸送会社)の専用webページJに、たとえば、自動車管理履歴システムで記録された「個々の車両ごとの管理履歴」と、車両売却業務システムで記録された「業務管理者からの業務受注機能」とを関連付けて表示させることで、業務関与者(陸送会社)は、車両の所有者住所および使用者住所を容易に把握することができ、迅速かつ効率的に車両を搬送することができる。
業務関与者(行政書士事務所)の端末において、業務関与者(行政書士事務所)の専用webページKに、たとえば、自動車管理履歴システムで記録された「個々の車両ごとの管理履歴」と、車両売却業務システムで記録された「業務管理者からの業務受注機能」とを関連付けて表示させることで、業務関与者(行政書士事務所)は、個々の車両ごとのファイナンス情報、契約情報を容易に把握することができ、効率的な業務を遂行することができる。
以上のとおり、本複合システムによれば、第1の実施形態の自動車管理履歴認証システムによってデータベースに記録された個々の車両毎の管理履歴情報を、前記車両売却業務システムにおいて説明したAA代行業務スキームの中で利用することで、各セクションにおける業務を、より一層、円滑にかつ適正に遂行することができる。
なお、上記実施形態の複合システムにおいて、個々の車両ごとの管理履歴は、各セクションごとに与えられたアクセス権限をもって、各セクションで必要な情報のみを制限して表示させることが望ましいが、この場合に限られず、管理履歴に記録されたデータ全てを各セクションで表示させることもできる。
また、上記実施形態の複合システムにおいて、自動車管理履歴認証システムの個々の車両毎の管理履歴を記録したデータベースを備えるカルテサーバと、車両売却業務処理システムの個々の車両毎の車両売却に伴う業務処理の内容及び業務処理に要した費用を記録する業務処理データベースを備える共有データサーバとは、別々のサーバとして設ける場合に限られず、同一のサーバであってもよい。
さらに、上記実施形態の複合システムにおいて、自動車管理履歴認証システムのデータベースにデータを記録する手段は、第2の実施形態で述べたように、上述したデータレコーダを用いることができることはもちろんである。
なお、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、他の様々な形で実施することができる。