JP5109386B2 - 二次電池の劣化状態診断装置 - Google Patents

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Description

本発明は、エンジン始動用電動機にてエンジンが始動される移動体に搭載されて前記エンジン始動用電動機に電力を供給する二次電池の出力電圧を検出する電圧検出手段と、
その電圧検出手段の検出情報に基づいて、前記二次電池の劣化状態を診断する診断処理部とが備えられた二次電池の劣化状態診断装置に関する。
かかる二次電池の劣化状態診断装置は、例えば自動車等の移動体に搭載する鉛蓄電池等の二次電池の劣化状態の診断を、二次電池の出力電圧の検出情報に基づいて行う装置である。
二次電池の出力電圧の時間変化をモニタして二次電池の劣化状態を評価する手法としては、従来、例えば下記特許文献1に記載されているような手法がある。
下記特許文献1では、スタータモータを始動する前の開回路電圧(OCV)と、スタータモータを始動した瞬間の電圧下降の極小値との差に基づいて、二次電池(鉛電池)の劣化状態を推定する技術が記載されている。
下記特許文献1では、このような評価手法を用いることで、二次電池を搭載する車両に依存した情報を除外して、二次電池の劣化状態を示す情報だけを抽出しようとしている。
特開2005−292035号公報
しかしながら、上記従来構成では、純粋に二次電池の劣化状態の評価を行うことができるものの、その二次電池が、移動体に搭載された状態でどの程度の実用的な能力を保持しているかを知りたいときは、更にそのような情報に変換するための処理が必要になり、処理負担の増大やそれに伴う検出精度の低下を招いてしまうことになる。
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、移動体に搭載した状態の二次電池の劣化状態を、その二次電池の実用的な能力の観点から的確に評価できるようにする点にある。
本出願の第1の発明は、エンジン始動用電動機にてエンジンが始動される移動体に搭載されて前記エンジン始動用電動機に電力を供給する二次電池の出力電圧を検出する電圧検出手段と、その電圧検出手段の検出情報に基づいて、前記二次電池の劣化状態を診断する診断処理部とが備えられた二次電池の劣化状態診断装置であって、前記診断処理部は、前記電圧検出手段にて検出する電圧の時間変化における、前記エンジン始動用電動機への通電開始後に最初に電圧が極大となる時点よりも後のエンジン始動動作中の最低電圧を検出する最低電圧検出動作を、前記二次電池を前記移動体に搭載して前記二次電池の利用を開始した当初に実行して、その最低電圧検出動作により検出した前記最低電圧である初期最低電圧値を記憶手段に記憶保持すると共に、前記初期最低電圧値を前記記憶手段に記憶保持した後において前記最低電圧検出動作を実行して検出した前記最低電圧の前記初期最低電圧値からの低下度合いによって前記二次電池の劣化状態を診断するように構成されている。
すなわち、エンジン始動動作中における二次電池の出力電圧の時間変化から二次電池の劣化状態を診断するのであるが、出力電圧の時間変化で着目するのは、エンジン始動動作中の最低電圧である。
但し、エンジンの始動動作を開始してエンジン始動用電動機(スタータ)に通電を開始した直後に流れる突入電流による電圧の下降は、エンジン始動用電動機の回転負荷によって生じたものとは言えないので無視をする。
エンジン始動動作中における二次電池の出力電圧は、図6(a)に模式的に示すような時間変化を示す。
時点Aでエンジンの始動動作を開始すると電圧が急激に下降し、その後は電圧が脈動する。
この脈動は、レシプロエンジンの例で説明すると、シリンダ内のピストン運動による圧縮抵抗の変動等に関係して、エンジン始動用電動機にかかる機械的負荷が変動することに起因している。
図6(a)において、最初の極小点である位置Bよりも後の、電圧が脈動している期間内で、電圧値が最低となるのは、位置Cの極小点である。
つまり、位置Cにおいて始動用電動機に最大の負荷がかかっており、その位置Cの電圧は、エンジン始動動作時の最大負荷がかかったときに、どれだけの出力電圧を維持出来ているか、換言すると、エンジン始動動作時の最大負荷がかかったときの電力供給能力はどの程度であるかを示している。
ちなみに、図6(a)の2番目の極小点(位置C)が最低電圧となる電圧変化は最も典型的なものであるが、例えば、図6(b)に示すように、3番目以降の極小点で最低電圧となる場合もあり得る。
従って、エンジン始動動作中の最低電圧の検出については、エンジン始動用電動機への通電開始後に最初に電圧が極大となる時点よりも後のエンジン始動動作中の最低電圧を検出するものとする。
上記の最低電圧検出動作でエンジン始動操作時における二次電池の電力供給能力を検出して、エンジン始動操作時における二次電池の電力供給能力の減少の度合いを二次電池の劣化状態として把握する。
このような劣化状態の把握のための基本情報として、上記最低電圧検出動作を二次電池を移動体に搭載して二次電池の利用を開始した当初に実行して、その最低電圧検出動作により検出した最低電圧を初期最低電圧値としてそのまま記憶手段に記憶保持しておくか、あるいは、初期最低電圧値と一定の関係を有する評価用値を生成して記憶手段に記憶しておく。
そして、それ以降の二次電池の劣化状態の診断においては、診断の都度に前記最低電圧検出動作を実行し、それによって得られた前記最低電圧の前記初期最低電圧値からの低下度合いによって二次電池の劣化状態を診断する。
すなわち、二次電池の利用開始当初に検出した前記最低電圧である初期最低電圧値をフルスケールとして、移動体に搭載して移動体の負荷を考慮した状態での、劣化による二次電池の電力供給能力の低下を評価するのである。
又、本出願の第2の発明は、上記第1の発明の構成に加えて、前記診断処理部は、前記最低電圧検出動作として、前記電圧検出手段にて検出する電圧の時間変化における、前記エンジン始動用電動機への通電開始後に最初に電圧が極大となる時点から、前記エンジン始動用電動機への通電開始前の電圧に回復する時点までの期間での最低電圧を検出するように構成されている。
すなわち、前記最低電圧検出動作おいて、エンジン始動動作中の最低電圧を検出するための電圧監視の対象期間としては、エンジン始動動作中の二次電池の出力電圧の変化は、図6(a)に示すような変化パターンが典型的であることから、エンジン始動動作開始後の2番目の極小点の電圧を最低電圧として検出することも可能であるが、電圧監視の対象期間の終端を、エンジンがかかってエンジン始動用電動機への通電開始前の電圧に回復する時点とすることで、多くはないが発生する可能性のある図6(b)のような変化パターンを示す場合にも的確に最低電圧を検出できる。
又、本出願の第3の発明は、上記第1又は第2の発明の構成に加えて、前記診断処理部は、前記電圧検出手段にて検出する電圧の時間変化において、設定時間内の電圧の低下量が通電開始判断用の設定値以上となる電圧低下を検出するに伴って、前記エンジン始動用電動機への通電が開始されたものと判断するように構成され、且つ、前記通電開始判断用の設定値を、前記二次電池の劣化状態の診断結果に応じて設定変更するように構成されている。
前記診断処理部が、エンジン始動動作の開始時点であるエンジン始動用電動機への通電開始時点を認識するには、例えば通電開始を指示するスイッチ操作を検知することで認識することも可能であるが、前記電圧検出手段にて検出する二次電池の出力電圧の変化から検出できれば、検出のための配線等が不要となって構成の簡素化を図れる。
二次電池の出力電圧の変化からエンジン始動用電動機への通電開始を検出する具体的な手法としては、図6に示す電圧変化からも明らかなように、エンジン始動動作開始直後の急激な電圧低下を検出すれば良い。
但し、このような検出手法をとる場合、設定時間内にどれだけ電圧が低下したときに、エンジン始動用電動機への通電開始とみなすかが問題となる。
つまり、エンジン始動用電動機へ通電を開始してから最初の極小点までの電圧の低下量が一定であれば良いのであるが、この電圧の低下量は二次電池の劣化の進行度合いによって変化し、劣化が進む程、電圧の低下量が大きくなる。
単純に、このような電圧の低下量の変化だけを考慮すると、二次電池の劣化が進行していない状態での電圧の低下量で的確に検出できるように小さな電圧の低下量で始動動作開始と判断する判断基準を設定すれば良いことになる。
ところが、二次電池の劣化が進行すると、エンジン始動用電動機以外の比較的消費電流が小さい他の電気機器を動作させた場合でも、その電気負荷による電圧低下がある程度大きくなってしまうため、上記のように小さめの電圧の低下量でエンジン始動動作の開始と判断したのでは、他の電気機器を使用したときに、エンジンの始動動作の開始と誤検出してしまう可能性がある。
そこで、設定時間内の電圧の低下量が通電開始判断用の設定低下量以上となる電圧低下を検出するに伴って、エンジン始動用電動機への通電が開始されたものと判断するものとして、前記通電開始判断用の設定低下量を、できるだけ最新の二次電池の劣化状態の診断結果に応じて設定変更する。
もちろん、二次電池の劣化が進行するほど、前記通電開始判断用の設定値が大となるように設定変更される。
又、本出願の第4の発明は、上記第1〜第3の発明のいずれかの構成に加えて、前記診断処理部は、前記電圧検出手段にて検出する電圧が、充電不足検出用の設定閾値電圧より低いときに、前記二次電池が充電不足であると判断するように構成され、且つ、前記充電不足検出用の設定閾値電圧を、前記二次電池の劣化状態の診断結果に応じて設定変更するように構成されている。
すなわち、二次電池の出力電圧を検出して二次電池が充電不足か否かを判断するのであるが、充電不足か否かの判別を、二次電池の劣化状態をも考慮して行う。
図2(a)は、横軸に二次電池の充電状態(充電レベル)をとり、縦軸に始動特性(エンジン始動時の電力供給能力)をとって、両者の関係を示す特性が二次電池の劣化によってどのように変化するかを示している。
図2(a)からわかるように、二次電池の劣化が進行(図2(a)において破線の矢印Dの方向)する程、充電状態の低下に対して、電力供給能力がより早く低下する。
逆に見ると、二次電池の劣化がある程度進行していても、充電状態が十分高ければ電力供給能力もある程度高いということにもなる。
このような関係を二次電池が充電不足か否かの判別に反映して、充電不足検出用の設定閾値電圧を、できるだけ最新の二次電池の劣化状態の診断結果に応じて設定変更するのである。
もちろん、二次電池の劣化が進行する程、前記充電不足検出用の設定閾値電圧が高くなるように設定する。
又、本出願の第5の発明は、上記第1〜第4の発明のいずれかの構成に加えて、前記移動体のエンジン停止を検出する走行終了検出手段と、前記走行終了検出手段が前記移動体のエンジン停止を検出するに伴って、前記診断処理部による前記二次電池の劣化状態の診断結果を報知する報知手段とが備えられている。
すなわち、二次電池の劣化状態の診断を行う診断処理部と移動体の制御装置とが通信可能に接続されているような構成であれば、診断処理部の診断結果を移動体側に送信して、移動体側で表示等させるような構成も考えられるが、この種の装置は、移動体の制御装置とは別個独立に二次電池に取付けられ、しかも、例えばエンジンルームの中等の移動体の使用者がアクセスし難い場所に設置される場合が多い。
このような場合に、移動体の走行中に、二次電池に取付けられた診断装置が診断結果を報知しても、移動体の使用者がそれを全く確認できないというような状況となってしまう。
そこで、移動体の走行を停止させてエンジンの停止を検出してから、二次電池の劣化状態の診断結果を報知する。
上記第1の発明によれば、二次電池の利用開始当初に検出した前記最低電圧である初期最低電圧値をフルスケールとして、移動体に搭載して移動体の負荷を考慮した状態での、劣化による二次電池の電力供給能力の低下を評価することで、移動体に搭載した状態の二次電池の劣化状態を、その二次電池の実用的な能力の観点から的確に評価できるものとなった。
又、上記第2の発明によれば、エンジン始動動作時に二次電池の出力電圧が多様な変化パターンで変化する場合でも、エンジン始動動作時の最低電圧を的確に検出して、精度良く劣化状態の診断を行える。
又、上記第3の発明によれば、二次電池の出力電圧の検出情報からエンジン始動動作の開始を検知する場合に、二次電池の劣化状態をも考慮に入れた状態で検知するので、エンジンの始動動作の開始を的確に検知できる。
又、上記第4の発明によれば、二次電池の劣化状態も考慮して充電不足か否かを判別するので、より実用的な充電状態の評価が行えるものとなった。
又、上記第5の発明によれば、エンジンが停止してから、二次電池の劣化状態の診断結果を報知することで、移動体の使用者に的確の報知できるものとなった。
以下、本発明の二次電池の劣化状態診断装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本実施の形態では、二次電池RBとして、移動体の1例である自動車に搭載される鉛蓄電池4を例示して説明する。
鉛蓄電池4は、自動車のエンジンを始動させるためのエンジン始動用電動機(スタータモータ)へも電力を供給し、鉛蓄電池4にとって大きな負荷となるエンジン始動用電動機を確実に駆動できる電力を供給できるか否かが重要となる。
本実施の形態の二次電池の劣化状態診断装置は、図1のブロック図に示すように、温度センサ1と、液面センサ2と、タクトスイッチ3と、鉛蓄電池4の劣化状態を診断するマイクロプロセッサ5と、緑色,橙色及び赤色の3色の発光ダイオード6a,6b,6cと、ブザー7と、ブザー7を制御駆動するブザー制御回路8とが備えられ、液面センサ2を除く各部品がユニット化されて鉛蓄電池4に取付けられている。
発光ダイオード6a,6b,6c及びブザー7は、鉛蓄電池4の劣化状態の診断結果を報知する報知手段ALとして機能する。
マイクロプロセッサ5は、後述する処理プログラムや各種のデータを記憶保持する不揮発性メモリ5a及び図示を省略するA/Dコンバータ等を備えた、いわゆるワンチップマイコンとして構成されている。
マイクロプロセッサ5を動作させるための電圧は、鉛蓄電池4から供給されている。
図1のマイクロプロセッサ5内において、破線の枠で囲んでいる「エンジン始動対応」,「充電不足診断」,「液面診断」,「モード切換え」,「走行終了検出」及び「状態診断」の夫々は、マイクロプロセッサ5によって実行される図7のフローチャートにおける、各処理ステップに対応しており、ソフトウェアにて実行される機能をブロック図で示したものである。
マイクロプロセッサ5は、タクトスイッチ3から処理の開始を指示入力されるに伴って、図7に示す処理を開始する。
図7の処理の開始に伴って、所定の初期設定を行った後(ステップ#1)、劣化状態の診断のための動作に移行する。
図7では、便宜上、単にステップ#2〜ステップ#8の処理を繰り返すように記載しているが、実際には、ステップ#2〜ステップ#8の一連の処理を1セットとして、各セットを高速に一定周期(本実施の形態では、「10mSec」として説明する)で繰り返し実行している。
以下、ステップ#2〜ステップ#8の各ステップの処理を順次に説明していく。
〔データ取込み〕
先ず、マイクロプロセッサ5に備えられているA/Dコンバータにて鉛蓄電池4の出力電圧(端子電圧)を読み込むと共に、温度センサ1及び液面センサ2の検出情報も取込む(ステップ#2)。従って、鉛蓄電池4の出力電圧は、一定周期でマイクロプロセッサ5に取込まれることになる。
従って、マイクロプロセッサ5が、鉛蓄電池4の出力電圧を検出する電圧検出手段VSとしての機能と、鉛蓄電池4の劣化状態を診断する診断処理部VCとしての機能を併せ持っている。
〔液面診断〕
次ぎに、ステップ#3の「液面診断」で、鉛蓄電池4のバッテリー液の状況について評価する。
このステップ#3の「液面診断」の具体的な処理内容は、図8のフローチャートの「液面診断処理」として示すサブルーチンの処理である。
「液面診断」のために液面センサ2から検出情報がマイクロプロセッサ5に入力されているが、液面センサ2の構成としては、例えば、バッテリー液の液量が十分であればバッテリー液に浸っており、バッテリー液の液量が不足すればバッテリー液に浸らなくなるような電極棒を鉛蓄電池4の一つのセルに挿入し、該電極棒と一方の出力端子(負極端子)との間の電圧が、バッテリー液の液量が十分であれば「H」レベルに、バッテリー液の液量が不足すれば「L」レベルになるようなものが良い。
図8の「液面診断処理」では、バッテリー液が十分か否かの判断を安定させるために、「診断更新カウンタ」と称するカウンタを備えて、液面センサ2の検出電圧が「H」から「L」あるいはその逆に「L」から「H」に変化しても、その状態変化に伴って10mSecに1回カウントアップする「診断変更カウンタ」のカウント値が設定数(本実施の形態では、30秒分)に到達しないと、「液面フラグ」(図8では、「液面F」と表記している)の値を更新しない。
この「液面フラグ」は、バッテリー液が十分であるかあるいは不足しているかの状態を記憶保持させるフラグで、バッテリー液が適正量残存していることを示す「十分」というデータと、バッテリー液が不足していることを示す「低下」というデータとの何れかが記憶保持される。この「液面フラグ」の記憶データは、後述のステップ#6の処理でも利用される。
例えば、「液面フラグ」の値が「十分」となっている状態(ステップ#21)で、液面センサ2の検出電圧が「L」となったときは(ステップ#22)、ステップ#23を3000回通過して(ステップ#24)初めて「液面フラグ」の値が「低下」に書き換えられる。
逆に、「液面フラグ」の値が「低下」となっている状態(ステップ#21)で、液面センサ2の検出電圧が「H」となったときは(ステップ#27)、ステップ#28を3000回通過して(ステップ#29)初めて「液面フラグ」の値が「十分」に書き換えられる。
〔充電不足診断〕
次ぎに、ステップ#4の「充電不足診断」で、鉛蓄電池4の充電状態について評価する。
このステップ#4の「充電不足診断」の具体的な処理内容は、図9のフローチャートの「充電不足診断処理」として示すサブルーチンの処理である。
図9の処理では、先ず、取込んだ鉛蓄電池4の出力電圧をフィルタ処理して平滑化し、評価対象の電圧として「vf」を求める(ステップ#41)。
次ぎに、充電不足か否かを判断するための閾値(充電不足検出用の設定閾値電圧)を設定する(ステップ#42)。
この閾値は、最新の鉛蓄電池4の劣化状態の診断結果に応じて設定する。
具体的には、本実施の形態では、鉛蓄電池4の劣化状態を3段階に区分しており、その区分の境界は、図2(a)において、曲線Eの劣化のない新品の状態と、曲線Gの実用に供するのが好ましくない程度まで劣化が進行した状態と、曲線Eと曲線Gとの間に設定しているある程度劣化が進行した状態である。
曲線Eと曲線Fとの間の劣化の少ない段階、曲線Fと曲線Gとの間の劣化がかなり進行した段階、曲線Gよりもさらに劣化が進行した段階の3段階に区分されることになる。
本発明では、鉛蓄電池4の劣化状態をエンジンの始動特性で評価しており、詳しくは後述する図13の「始動特性診断処理」のフローチャートにおいて、「始動フラグ」(図13では、「始動F」と表記)と称するフラグの値が、劣化状態の診断結果を示している。
すなわち、「始動フラグ」の値が「Hi」(High)が曲線Eと曲線Fとの間の劣化の少ない段階、「始動フラグ」の値が「Mid」(Middle)が曲線Fと曲線Gとの間の劣化がかなり進行した段階、「始動フラグ」の値が「Lo」(Low)が曲線Gよりもさらに劣化が進行した段階となる。
このように段階分けする状態で、図2(a)において「J」で示すレベルの始動特性(換言すると、電力の供給能力)を確保するために、各劣化段階においてどれだけの充電状態を確保する必要があるのか、という関係を示したのが図2(b)である。
従って、この時点の「始動フラグ」の値が「Hi」であれば、図2(b)の位置Pの充電状態に相当する電圧を上記閾値に設定し、「始動フラグ」の値が「Mid」であれば、図2(b)の位置Qの充電状態に相当する電圧を上記閾値に設定し、「始動フラグ」の値が「Lo」であれば、図2(b)の位置Rの充電状態に相当する電圧を上記閾値に設定する。これを、充電状態と始動特性との関係として示すと、図3に示す関係となる。
充電不足検出用の設定閾値電圧を以上のようにして設定すると(ステップ#42)、上記「vf」とその充電不足検出用の閾値とを比較する(ステップ#43)。
この比較の際、「vf」は鉛蓄電池4の温度に依存するものであるから、一定の条件で充電不足か否かを評価するために、温度センサ1の検出情報に応じて「vf」を補正する。
具体的には、例えば、劣化状態が十分近いものについて、鉛蓄電池4の内部抵抗と温度センサ1の検出情報との関係を示すデータを収集しておき、基準温度と実際の温度との偏差に対応する内部抵抗の差から「vf」を補正する。この鉛蓄電池4の内部抵抗のかわりに、後述の「vf」と「vc3」との電圧差のデータを用いても良い。
ここでも、「vf」が充電不足検出用の設定閾値電圧よりも低くなったからといって直ちに充電不足と判断するのではなく、「vf」が充電不足検出用の設定閾値電圧よりも低くなったときに、10mSecに1回カウントアップする(ステップ#45)「充電判定カウンタ」と称するカウンタを備えて、そのカウンタのカウント値が30秒分に到達して(ステップ#44)初めて、充電不足か否かの値を保持するフラグである「充電フラグ」(図9では、「充電F」と表記している)の値を「不足」に更新する(ステップ#47)。
尚、「充電フラグ」は、充電不足を意味する「不足」と、充電不足ではないことを意味する「十分」とのいずれかの値を記憶保持する。
これに対して、「充電フラグ」の値が「不足」となっている状態から、充電によって「vf」が充電不足検出用の設定閾値電圧を上回ったときは(ステップ#43)、直ちに「充電フラグ」の値を「十分」とはせずに、「vf」を充電不足検出用の設定閾値電圧に更に0.6Vを加えた値と比較して(ステップ#49)、「vf」がその値を上回ったときに「充電フラグ」の値を「十分」に更新する(ステップ#50)。
これは、チャタリング防止のためにヒステリシス特性を持たせたものである。
〔エンジン始動対応〕
次ぎに、ステップ#5の「エンジン始動対応」で、エンジンの始動特性すなわち鉛蓄電池4の劣化状態について評価する。
このステップ#5の「エンジン始動対応」の具体的な処理内容は、図10及び図11のフローチャートの「エンジン始動対応処理」として示すサブルーチン、並びに、それに付随する図12の「初期始動特性学習処理」及び図13乃至図15の「始動特性診断処理」のサブルーチンである。
使用者がエンジンの始動操作を行ったときの、マイクロプロセッサ5に入力される鉛蓄電池4の出力電圧は、図4に例示するような時間変化を示す。この図4は、図6の電圧波形を精密に示したものである。
図6について説明したのと同様に、時点Aでエンジンの始動動作を開始すると、エンジン始動用電動機(スタータモータ)(図示省略)に通電が開始されて、前記出力電圧が急激に下降し、その後は該電圧が脈動する。更にその後、エンジンがエンジン始動用電動機に依らずに回転する状態(エンジンがかかった状態:図4に時点T付近)になると、電圧が大きく上昇して行く。
「エンジン始動対応処理」では、図4の時点A以降の大きな電圧低下によってエンジン始動動作の開始を認識し、その後の電圧変化の追跡状況を、「始動認識フラグ」(図10等では、「始動認識F」と表記)と称するフラグによって管理する。
この「始動認識フラグ」は、電圧変化の追跡を行っていない状態を示す「0」、大きな電圧低下を検出して電圧変化の追跡を開始したことを示す「1」、図4の位置Bの最初の極小点を認識した状態であることを示す「2」、図4の位置Sの最初の極大点を認識した状態であることを示す「3」、図4の位置Cの2番目の極小点を認識した状態であることを示す「4」のうちの何れかの値を記憶保持し、電圧変化の追跡の進行に応じて、「0」,「1」,「2」,「3」,「4」と順に変化して行く。
以下、図10等に沿って説明する。
先ず、「始動認識フラグ」の値が「0」のときには(ステップ#61)、検出電圧が13.2V以下でエンジンがかかっていない状態であり且つ「充電フラグ」の値が「不足」となっていないときに(ステップ#62)、前回の検出電圧との差(ΔV)、すなわち、設定時間(10mSec)内の電圧の低下量が、通電開始判断用の設定値以上となる電圧低下を検出すると(ステップ#63)、エンジン始動用電動機への通電が開始されたものと判断し、「始動時間カウンタ」のカウント開始を指示する(ステップ#64)と共に、「始動認識フラグ」の値を「1」に更新する(ステップ#65)。
上記の通電開始判断用の設定値は、固定的に設定されているのではなく、鉛蓄電池4の劣化状態の最新の診断結果を「Hi」,「Mid」,「Lo」の3値で保持している「始動フラグ」の値によって切り換えており、「Hi」から「Lo」へと劣化が進行するにつれて、大きい値になるように設定している。
又、上記の「始動時間カウンタ」は、エンジン始動用電動機への通電が開始されてからの経過時間を計時するためのカウンタで、カウント開始後、10mSec経過毎にカウントアップする。
尚、鉛蓄電池4の出力電圧をA/Dコンバータを介して検出する図4の検出電圧において、時点Aから最初の極小点の位置Bへ低下するまでの間に、複数回この「エンジン始動対応処理」を通過する。
このような処理でエンジン始動用電動機への通電開始の認識が終了したときは、この「エンジン始動対応処理」から、次の「バッテリ状態診断」へ移行する。
「始動認識フラグ」の値が「1」となっている状態で、「エンジン始動対応処理」に入ると(ステップ#66)、最初の極小点(位置B)の電圧値(vc1)を検出する(ステップ#67)。
この極小値の検出のために、連続する複数個の検出電圧値を記憶しており、それらの検出電圧値の増減から極小値の電圧を取得する。
この処理で極小値「vc1」が見つかったときは(ステップ#68)、「始動認識フラグ」の値を「2」に更新する(ステップ#69)。
「始動認識フラグ」の値が「2」となっている状態で、「エンジン始動対応処理」に入ると(ステップ#70)、最初の極大点(位置S)の電圧値(vc2)を検出する(ステップ#71)。この極大値の検出も、「vc1」の検出と同様に、連続する複数個の検出電圧値を記憶しておき、それらの検出電圧値の増減から極小値の電圧を取得する。
この処理で極大値「vc2」が見つかったときは(ステップ#72)、「始動認識フラグ」の値を「3」に更新する(ステップ#73)。
「始動認識フラグ」の値が「3」となっている状態で、「エンジン始動対応処理」に入ると(ステップ#74)、エンジン始動用電動機への通電開始後に最初に電圧が極大となる時点(位置S)よりも後のエンジン始動動作中の最低電圧(vc3)を収集する(ステップ#75)。
この最低電圧(vc3)は、通常、2番目の極小点(位置C)に現れるため、ここでは、この2番目の極小点(位置C)の電圧を検出する。この極小値の検出も、「vc1」の検出等と同様に行う。
この処理で「vc3」が見つかったときは(ステップ#76)、「始動認識フラグ」の値を「4」に更新する(ステップ#77)。
「始動認識フラグ」の値が「4」となっている状態で、「エンジン始動対応処理」に入ると(ステップ#74)、検出電圧がエンジン始動用電動機を始動する前の開回路電圧(OCV:図4参照)よりも小さい間は(図11のステップ#78)、ステップ#64で積算カウントを開始した「始動時間カウンタ」のカウント値が所定時間の経過に相当するカウント値となるまで「vc3」の収集を行う(ステップ#83)。ここでの「vc3」の収集は、ステップ#75で検出した「vc3」との比較で、単純に最も小さい電圧値を探して行く。
尚、上記の所定時間を定めたのは、鉛蓄電池4が劣化していて、エンジンの始動ができず、通電開始前の電圧に戻らない場合にも「vc3」の収集ができるようにするためで、ここでは5秒にしている。
「始動認識フラグ」の値が「4」で且つ検出電圧が開回路電圧(OCV)以上にまで上昇しているか、あるいは、「始動時間カウンタ」のカウント値(計時時間)が5秒を超えると(ステップ#78)、「始動認識フラグ」と「始動時間カウンタ」の値を「0」に戻す(ステップ#79)。
これによって、エンジンの始動特性診断を行うための最低電圧「vc3」の収集が完了したことになる。尚、収集した最低電圧「vc3」は、図9のステップ#43で説明したものと同様の温度補正をかける。
以上の処理によって、エンジン始動用電動機への通電開始後に最初に電圧が極大となる時点(位置S)よりも後のエンジン始動動作中の最低電圧を検出する最低電圧検出動作を実行しているのであるが、より具体的には、この最低電圧検出動作として、電圧検出手段VSにて検出する電圧の時間変化における、エンジン始動用電動機への通電開始後に最初に電圧が極大となる時点から、エンジン始動用電動機への通電開始前の電圧(OCV)に回復する時点までの期間での最低電圧を検出することになっている。
最低電圧「vc3」の収集が完了すると、劣化状態の診断のための初期始動特性の学習を終えているか否かを確認する(ステップ#80)。
本実施形態では、初期始動特性の学習は、初期始動特性学習に適した上記最低電圧「vc3」のデータを複数個(具体的には、2個)使用して行うため、そのデータ数をカウントするカウンタである後述の「データ数カウンタ」の値が「2」となっているか否かで、初期始動特性の学習が完了しているか否かを確認できる。
初期始動特性の学習が完了していないときは、ステップ#81の「初期始動特性学習」を実行する。
ステップ#81の「初期始動特性学習」の具体的な処理は、図12の「初期始動特性学習処理」に示すサブルーチンである。
図12の処理では、先ず、始動前電圧「Vp」(OCVに相当)が、12.6V<Vp<13.2Vの条件を満たして、初期始動特性の学習に適した充電レベルにあるか否かを確認し(ステップ#91)、条件を満たしていると「データ数カウンタ」を1だけカウントアップして(ステップ#92)、上記のようにして収集した最低電圧「vc3」を記憶保存する(ステップ#93)。
この後、「データ数カウンタ」の値が「2」で、最低電圧「vc3」のデータを2個取得しているときは(ステップ#94)、始動特性の学習を行う(ステップ#95)。
2個の最低電圧「vc3」のデータは、鉛蓄電池4を自動車に搭載して鉛蓄電池4の利用を開始した当初に実行される前記最低電圧検出動作によって得られる。
学習に使用する最低電圧「vc3」は、2個の最低電圧「vc3」のデータの平均値であり、以下、この学習に使用する最低電圧「vc3」を初期最低電圧値と称する。
この学習処理の内容を、図5に基づいて、具体的に説明する。
図5は、上記の最低電圧検出動作で検出する最低電圧「vc3」が鉛蓄電池4の使用年数によってどのように変化するかを示している。図5では、上記初期最低電圧値(使用年数が0のときの「vc3」)が10.5Vであった場合を例示して示している。
図5の縦軸で「vcl」として示している電圧は、エンジンを始動させるために最低限必要な最低電圧「vc3」であり、本実施の形態では6.5Vとしている。この電圧は、自動車の車種等によって多少異なるものの、ほぼ同一の値であると見なすことができる。
更に、上記初期最低電圧値と「vcl」との間に電圧「vcm」を設定する。
この「vcm」は、上記初期最低電圧値と「vcl」との間を設定比率で分けた値とする。本実施の形態では、上記初期最低電圧値と「vcl」との間を3:1に分ける電圧を「vcm」としている。この分割比率は、使用者の利用形態等の各種の事情を考慮して設定される。
初期始動特性の学習は、実質的に、上記初期最低電圧値と、その初期最低電圧値と所定の関係を有する評価用値である「vcm」とを記憶手段MMである不揮発性メモリ5aに記憶保持することである。尚、「vcl」の値は、固定値「6.5V」が予め不揮発性メモリ5aに記憶保持されている。
図11のステップ#80において、学習が完了していると判断したときは、その学習の結果を利用して、「始動特性診断」、すなわち、鉛蓄電池4の劣化状態の診断を行う(ステップ#82)。
ステップ#82の「始動特性診断」の具体的な処理は、図13乃至図15に「始動特性診断処理」として示すサブルーチンの処理である。
本実施の形態では、上述のように始動特性の診断を「Hi(High)」,「Mid(Middle)」,「Lo(Low)」の3段階に評価しており、上記最低電圧検出動作によって検出した最低電圧「vc3」が、「vcl」より小さいときが「Lo」であり、「vcm」と「vcl」との間にあるときが「Mid」であり、「vcm」以上のときが「Hi」である。
従って、鉛蓄電池4の劣化状態の診断は、上記最低電圧検出動作を実行して検出した最低電圧の上記初期最低電圧値からの低下度合いとして診断している。
但し、図13乃至図15に「始動特性診断処理」では、上記最低電圧検出動作によって検出した最低電圧「vc3」によって直ちに「Hi」,「Mid」,「Lo」の3段階のいずれかに分類するのではなく、上記最低電圧検出動作によって検出した最低電圧「vc3」が、いずれかの段階から他の段階に変化するデータであるときは、原則としてそのような検出電圧が2回連続しないと診断結果を変化させないようにして、診断結果の無用な変化を抑制している。
このために、「Hi」,「Mid」,「Lo」の3値のいずれかの値(診断結果)を保持するフラグとして「始動フラグ」(図13等では、「始動F」と表記)を備えて、各時点での劣化状態の診断結果のデータを保持すると共に、劣化状態の改善側への変化をカウントする(ステップ#110,#121)「Uカウンタ」及び劣化状態の劣化側への変化をカウントする(ステップ#103,#115)「Dカウンタ」を備えて、これらのカウンタの値が「2」となったとき(ステップ#104,#111,#116,#122)に診断結果の変化を許容している。
更に、図13乃至図15に「始動特性診断処理」では、「始動フラグ」の「Hi」から「Lo」への一足飛び変化、あるいは、その逆の一足飛びの変化は発生させず、必ず一旦「Mid」を経るようにしている。
〔バッテリ状態診断〕
次ぎに、ステップ#6の「バッテリ状態診断」で、バッテリの状態の総合評価を実行する。
このステップ#6の「バッテリ状態診断」の具体的な処理内容は、図16のフローチャートの「バッテリ状態診断処理」として示すサブルーチンの処理である。
図16の「バッテリ状態診断処理」では、図7のステップ#3の「液面診断」で得られている診断結果である「液面フラグ」と、ステップ#4の「充電不足診断」で得られている診断結果である「充電フラグ」と、ステップ#5の「エンジン始動対応」(より詳細には、図11のステップ#82の「始動特性診断」)で得られている診断結果である「始動フラグ」とによって、バッテリの状態を総合的に判断する。
上記の3つの診断結果のうち、最も診断結果が優先されるのは「液面診断」の診断結果であり、その次に「充電不足診断」、更にその次に「エンジン始動対応」という優先順位となる。
すなわち、図16のステップ#131において「液面フラグ」の値が「不足」となっているときは、ブザー7のブザー音の断続パターンを長音の断続パターンに設定し(ステップ#132)、赤色発光ダイオード6cを点灯させる(ステップ#133)。
このブザー音の設定及び赤色発光ダイオード6cの点灯は、鉛蓄電池4の交換を推奨する旨の設定状態である。
尚、このときのブザー音の設定については、単に、ブザー制御回路8に対してブザー音の断続パターンを指定するだけであり、直ちにブザーが鳴る訳ではない。後述のステップ#135の設定についても同様である。
「液面フラグ」の値が「十分」のときは(ステップ#131)、更に「充電フラグ」の値が「不足」か否かを判断して(ステップ#134)、「不足」であるときは、ブザー7のブザー音の断続パターンを短音の断続パターンに設定し(ステップ#135)、橙色発光ダイオード6bを点灯させる(ステップ#136)。
このブザー音の設定及び橙色発光ダイオード6bの点灯は、鉛蓄電池4の点検を推奨する旨の設定状態である。
ステップ#134において、「充電フラグ」の値が「十分」であるときは、「始動フラグ」の値についての判断に移行する。
「始動フラグ」の値が「Hi」のときは、ブザー7を鳴らせないように設定し(ステップ#139)、緑色発光ダイオード6aを点灯させる(ステップ#140)。
「始動フラグ」の値が「Mid」のときは、ブザー7のブザー音の断続パターンを短音の断続パターンに設定し(ステップ#135)、橙色発光ダイオード6bを点灯させる(ステップ#136)。
「始動フラグ」の値が「Lo」のときは、ブザー7のブザー音の断続パターンを長音の断続パターンに設定し(ステップ#132)、赤色発光ダイオード6cを点灯させる(ステップ#133)。
尚、以上の診断処理を経て点灯する各発光ダイオード6a,6b,6cは診断処理が終了した後も点灯させておくが、点灯に代えて点滅させるようにしても良く、ブザー音の設定も長短の切替に代えて高低や音色の切替にしても良い。
〔走行終了検出〕
次ぎに、ステップ#7の「走行終了検出」で、使用者が自動車の走行を停止させてエンジンの停止操作をしたことを検出し、その検出に伴う処理を実行する。
このステップ#7の「走行終了検出」の具体的な処理内容は、図17のフローチャートの「走行終了検出処理」として示すサブルーチンの処理である。
先ず、検出電圧が13.2V以上の値から13.2V以下の値に変化したことを検出した後(ステップ#141)、前回の検出電圧と今回の検出電圧との差が40mV以下になるのを待つ。この「40mV」は、オールタネータによる充電が停止し、電圧が安定した状態になったことを検出できるように設定した値である。
この際も、10mSecに1回カウントアップする「終了検出カウンタ」を備えて、前回の検出電圧と今回の検出電圧との差が40mV以下になる状態が30秒間継続したときに(ステップ#144)、自動車のエンジン停止を検出したものとして、ブザー制御回路8に対して、ブザー音を鳴らせるように指示する(ステップ#145)。
これによって、ブザー制御回路8は、図16のステップ#132,#135,#139で設定したパターンでブザー7を鳴らせ、鉛蓄電池4の劣化状態の診断結果を報知させる。
従って、使用者は、鉛蓄電池4の状態が点検あるいは交換が望まれる状況であるときは、エンジンを切ってしばらくすると、ブザー7の音によってそれを知ることができる。
以上から、マイクロプロセッサ5は、自動車の走行を停止させてエンジンの停止を検出する走行終了検出手段SSとしても機能する。
〔モード切換え〕
次に、ステップ#8の「モード切換え」を実行する。
本実施の形態の二次電池の劣化状態診断装置は、マイクロプロセッサ5を主体とするユニットを鉛蓄電池4に取り付けて鉛蓄電池4から給電を受けるように配線すると、先ず、マイクロプロセッサ5は消費電力を低減するスリープ状態に入る。
このスリープ状態からタクトスイッチ3を操作すると図7の処理が開始される。
図7の処理を実行中に、タクトスイッチ3によって所定の停止操作が入力操作されたことをステップ#8で検出すると、上記スリープ状態に戻る。スリープ状態へ移行させるためのタクトスイッチ3による所定の停止操作は、図7の処理を開始させるためのタクトスイッチ3の操作とは、操作方法を異ならせている。
尚、図7の処理を実行中に、鉛蓄電池4が放電して出力電圧が低下してマイクロプロセッサ5が完全停止した後、鉛蓄電池4の電圧が回復したときは、図7の処理を再開する。
このような場合でも、初期始動特性の学習が完了していることを示す情報(データ数カウンタ)及び初期始動特性の学習の結果は不揮発性メモリ5aに記憶保存されているので、初期学習が再度実行されてしまうことはない。
〔別実施形態〕
以下、本発明の別実施形態を列記する。
(1)上記実施の形態では、タクトスイッチ3を備えて、タクトスイッチ3の操作によってスリープ状態から図7の処理を実行する状態に切り換え、又、タクトスイッチ3の操作によって図7の処理を実行している状態からスリープ状態に戻す場合を例示して説明しているが、タクトスイッチ3を備えずに、劣化状態診断装置のユニットを鉛蓄電池4に取り付けて配線を完了した時点から図7の処理が開始されるようにしても良い。
(2)上記実施の形態では、図12の「初期始動特性学習処理」において、初期最低電圧値から評価用値である「vcm」を求めて、その評価用値を記憶手段MMである不揮発性メモリ5aに記憶保存しているが、前記初期最低電圧値のみを不揮発性メモリ5aに記憶保持して、「vcm」は診断の都度求めるようにしても良い。
(3)上記実施の形態では、走行終了検出手段SSは、電圧検出手段VSの検出電圧に基づいて自動車のエンジン停止を検出しているが、エンジンの停止を指示するキー操作の信号を受け取って検出するように構成しても良い。
(4)上記実施の形態では、二次電池RBとして鉛蓄電池4を例示しているが、リチウムイオン電池等の他の二次電池についても本発明を適用できる。
本発明の実施の形態にかかるブロック構成図 本発明の実施の形態にかかる充電不足を検出するための閾値の設定を説明する図 本発明の実施の形態にかかる充電不足を検出するための閾値の設定を説明する図 エンジン始動時における二次電池の電圧変化を示す図 本発明の実施の形態にかかる劣化による最低電圧の変化を示す図 エンジン始動時における二次電池の電圧変化を示す模式図 本発明の実施の形態にかかるフローチャート 本発明の実施の形態にかかるフローチャート 本発明の実施の形態にかかるフローチャート 本発明の実施の形態にかかるフローチャート 本発明の実施の形態にかかるフローチャート 本発明の実施の形態にかかるフローチャート 本発明の実施の形態にかかるフローチャート 本発明の実施の形態にかかるフローチャート 本発明の実施の形態にかかるフローチャート 本発明の実施の形態にかかるフローチャート 本発明の実施の形態にかかるフローチャート
符号の説明
AL 報知手段
MM 記憶手段
RB 二次電池
SS 走行終了検出手段
VC 診断処理部
VS 電圧検出手段

Claims (5)

  1. エンジン始動用電動機にてエンジンが始動される移動体に搭載されて前記エンジン始動用電動機に電力を供給する二次電池の出力電圧を検出する電圧検出手段と、
    その電圧検出手段の検出情報に基づいて、前記二次電池の劣化状態を診断する診断処理部とが備えられた二次電池の劣化状態診断装置であって、
    前記診断処理部は、
    前記電圧検出手段にて検出する電圧の時間変化における、前記エンジン始動用電動機への通電開始後に最初に電圧が極大となる時点よりも後のエンジン始動動作中の最低電圧を検出する最低電圧検出動作を、前記二次電池を前記移動体に搭載して前記二次電池の利用を開始した当初に実行して、その最低電圧検出動作により検出した前記最低電圧である初期最低電圧値を記憶手段に記憶保持すると共に、
    前記初期最低電圧値を前記記憶手段に記憶保持した後において前記最低電圧検出動作を実行して検出した前記最低電圧の前記初期最低電圧値からの低下度合いによって前記二次電池の劣化状態を診断するように構成されている二次電池の劣化状態診断装置。
  2. 前記診断処理部は、前記最低電圧検出動作として、前記電圧検出手段にて検出する電圧の時間変化における、前記エンジン始動用電動機への通電開始後に最初に電圧が極大となる時点から、前記エンジン始動用電動機への通電開始前の電圧に回復する時点までの期間での最低電圧を検出するように構成されている請求項1記載の二次電池の劣化状態診断装置。
  3. 前記診断処理部は、前記電圧検出手段にて検出する電圧の時間変化において、設定時間内の電圧の低下量が通電開始判断用の設定値以上となる電圧低下を検出するに伴って、前記エンジン始動用電動機への通電が開始されたものと判断するように構成され、且つ、前記通電開始判断用の設定値を、前記二次電池の劣化状態の診断結果に応じて設定変更するように構成されている請求項1又は2記載の二次電池の劣化状態診断装置。
  4. 前記診断処理部は、前記電圧検出手段にて検出する電圧が、充電不足検出用の設定閾値電圧より低いときに、前記二次電池が充電不足であると判断するように構成され、且つ、前記充電不足検出用の設定閾値電圧を、前記二次電池の劣化状態の診断結果に応じて設定変更するように構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の二次電池の劣化状態診断装置。
  5. 前記移動体のエンジン停止を検出する走行終了検出手段と、
    前記走行終了検出手段が前記移動体のエンジン停止を検出するに伴って、前記診断処理部による前記二次電池の劣化状態の診断結果を報知する報知手段とが備えられている請求項1〜4のいずれか1項に記載の二次電池の劣化状態診断装置。
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