JP5109114B2 - 魚類抗体産生の新規検出法 - Google Patents
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Description
(1)魚類において、対象とする抗原に特異的な抗体を検出する方法。
(2)次の1)〜3)の工程を含む、上記(1)に記載の方法。
1)魚類に対象とする抗原を曝露する工程
2)魚類において該抗原に対する特異的な抗体を産生させる工程
3)該抗原に特異的な抗体を検出する工程
(3)該抗原に特異的な抗体を検出する工程が、Ig重鎖抗体を用いることによって検出するものである上記(2)に記載の方法。
(4)該抗原に特異的な抗体がIgMである上記(3)に記載の方法。
(5)該抗原に特異的な抗体を検出する工程が、次の4)及び5)の工程を含むものである上記(4)に記載の方法。
4)対象とする抗原を結合した不溶性担体と該抗原に特異的な抗体(1次抗体)とを反応させる工程
5)該抗原に特異的な抗体(1次抗体)とIg重鎖抗体(2次抗体)とを反応させる工程
(6)さらに、Ig重鎖抗体に特異的な標識抗体(3次抗体)を反応させる工程を含む、上記(5)に記載の方法。
(7)該抗原に特異的な抗体がモノクローナル抗体である上記(6)に記載の方法。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の方法を用い、抗原に特異的な抗体を定量的に検出する方法。
(9)1つ以上の任意の抗原を結合させた不溶性担体、Ig重鎖抗体、Ig重鎖抗体に特異的な標識抗体を含む、抗原に特異的な抗体の検出キット。
(10)1つ以上の任意の抗原を結合させた不溶性担体をアレイ上に並べた、抗原に特異的な抗体の検出器具。
(11)魚類IgMの定常領域に結合するIg重鎖抗体。
(12)魚類IgMの定常領域またはその一部を含むタンパク質を哺乳動物に投与することによるIg重鎖抗体の製造方法。
この検出方法には、例えば、魚類に抗原を曝露し、抗原に特異的な抗体を産生させた後、該抗体を回収し、抗原を結合させたメンブレンや不溶性担体に1次抗体として反応させる、いわゆるウェスタンブロッティング法や、ELISA法等を用いることができる。この場合、この1次抗体に反応し得る「Ig重鎖抗体」を2次抗体として用いることが好ましい。また、さらにこの2次抗体に反応し得る「Ig重鎖抗体に特異的な標識抗体」を3次抗体として用いることが好ましい。
また、本発明の方法は、抗体の産生の有無を調べることにより、物質の抗原性のスクリーニングに利用できることから、この目的に用いる場合等において、本発明の抗原には抗体を産生しない、即ち抗原性を有しない物質も対象として含まれる。
なお、対象とする抗原の曝露には、魚類が存在する水中に投与する方法、魚類に直接投与する方法等のいずれの方法も用いることができる。
この「対象とする抗原に特異的な抗体」は、対象とする抗原を曝露された魚類のいずれの組織からも回収することができるが、特に血液中の血清等として回収することが好ましい。
例えば、魚類の「対象とする抗原に特異的な抗体」が免疫グロブリンのうちのIgMである場合には、IgMのIg重鎖またはその一部に特異的に結合し得る抗体であることが好ましく、特にIg重鎖の定常領域に結合する抗体であることが好ましい。さらにIg重鎖のうち、特に保存された領域に特異的に結合し得る抗体であることが好ましい。例えば本実施例において得たゼブラフィッシュsIg重鎖中のDomainIVに特異的に結合し得る抗体は、ゼブラフィッシュのみならず、少なくとも同じコイ科の魚のIgMが検出できる可能性がある。また、マダイなどの他の魚種においても、上記と同様の原理で特異的抗体を検出できる。
なお、このIg重鎖抗体は、蛍光物質等で標識したものも用いることができ、この標識により、「対象とする抗原に特異的な抗体」の産生の有無や、産生量を定量的に検出することができる。
本実施例では、標識物質として発色基質DAB(3,3'−Diaminobenzidine tetrahydrochloride)を結合した抗ウサギーヤギ抗体(Goat Anti Rabbit Ig's,HRP;BIOSOURCE)を用いたが、その他の標識物質を結合した抗体を用いることができる。また、「Ig重鎖抗体」(2次抗体)の作成においてウサギ以外の動物を用いた場合には、その動物に対して抗原性を有する抗体を用いることもできる。
抗体の作製にあたり、Ig重鎖の定常領域の全体またはその一部のいずれも用いることができるが、高い相同性を有する部位を用いることが特に好ましい。抗体の作製には、PCR、ウェスタンブロッティング等、抗体を作製するに当り必要ないずれの方法も用いることができる。例えば抗原とするタンパク質を得るためのDNAの精製にあたり、QIAGEN Min−Elute(QIAGEN)やWizard SV Gel and PCR Clean−Up System(Promega)等の市販のキット等も用いることができる。
本発明の製造方法は、魚類のみならず、魚類以上のあらゆる動物において利用できる。したがって、本発明の方法を用いることにより、IgG、IgA、IgE等の従来知られているIgM以外のいずれの免疫グロブリンについても、それぞれの免疫グロブリンのIg重鎖に特異的な抗体を製造し得る。
また、本発明の「不溶性担体」とは、抗原または抗体を安定に結合し得る不溶性の担体であればいずれのものも用いることができ、例えばビーズ、メンブレンフィルター、シャーレ等が挙げられる。ビーズは磁性を有するもの、ポリスチレン、ラテックス等の素材を用いることができる。ここで磁性ビーズは磁石を用いて回収することができるため便利である。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらによって制限されない。
1.ゼブラフィッシュIgM重鎖における定常領域の塩基配列のクローニング
1)ゼブラフィッシュIgM重鎖塩基配列の同定
NCBI(National Center for Biotechnology Information)のBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)を用いて、既報の遺伝子配列およびアミノ酸配列が報告されているゼブラフィッシュ由来の2種類のIgM重鎖遺伝子(Danio rerio 1.IgM前駆体(immunoglobulin heavy chain protein)GenBankTM accesion number AAK96442.1、2.分泌型IgM(immunoglobulin M heavy chain secretory form)GenBankTM accesion number AAK69167.1)を検索して比較した。図1はこれらの比較を示した図であり、同一のアミノ酸配列はハイライトで示した。
Igμ重鎖およびsIg重鎖のそれぞれC末端側のアミノ酸配列において、高い相同性が見られた共通ドメイン(DomainIV)が存在することがわかった。そこで、ZFIN(Zebra Fish Information Network)のBLAT Search Genome機能を用いて、ゼブラフィッシュsIg重鎖の遺伝子配列におけるエキソンとイントロンの配置からゼブラフィッシュsIgのDomainIVは1つのエキソン上に存在することを確認した。図3は、ゼブラフィッシュsIg重鎖遺伝子のゲノム上の構成として、上部にエキソンおよびイントロンの配置を簡略的に示し、下部にスプライシングにより選択的に転写されたmRNAを示した図である。またDomainI、DomainII、DomainIII、DomainIVの領域を示した。
本発明者らが単離したゼブラフィッシュゲノムDNAを用いて、ゼブラフィッシュsIg重鎖中のDomainIVに相当する遺伝子配列300bpのクローニングを試みた。すなわち、ゼブラフィッシュゲノムDNAからクローニングされたPCR増幅断片をDNAシーケンスして全塩基配列を決定し、さらにアミノ酸配列に翻訳してsIg重鎖アミノ酸配列(GenBankTM accession number AAK69167.1)との間で比較した。図4はこれらの比較を示した図であり、同一のアミノ酸配列はハイライトで示し、DomainIVを実線の矢印で示した。
その結果、クローニングされた遺伝子断片は目的のDomainIVであることが判明し、DomainIVとの間で100%の相同性が見られた。この塩基配列300bpの領域を以下、zIgM300(Zebrafish IgM重鎖定常領域相当領域300bp)とした。zIgM300の遺伝子配列は配列表配列番号1に示した。
上記1.2)で用いたゼブラフィッシュゲノムDNAをテンプレートとし、KOD−plus−polymerase(TOYOBO)を用いてPCRによる増幅を行った。PCR反応液の組成および反応手順を表1および2に示した。また、反応に用いたプライマー(Primer FおよびPrimer R)の配列を配列表配列番号2および3に示した。
得られた増幅断片を1.5%アガロースTAEゲル中で50V、1時間電気泳動し、目的断片をゲルから切り出してWizard SV Gel and PCR Clean−Up System(Promega)を用いて精製した。
1)zIgM300のタンパク質発現用プラスミドベクターの構築
上記1.3)で増幅、精製を行ったDNA増幅断片6μlとBamHI1μl、XhoI1μl、10×H buffer2μl(TaKaRa)、滅菌miliQ水10μlとを混合し、37℃で2時間インキュベートして制限酵素処理を行い、同様に制限酵素処理したpET28(b)プラスミドベクター(Novagen)とともに、1.5%アガロースTAEゲルで50V、1時間電気泳動を行った。目的のDNA断片をゲルから切り出し、Wizard SV Gel and PCR Clean−Up System(Promega)を用いて精製した。精製した上記DNA増幅断片およびpET28(b)プラスミドベクターの断片を用いて、TaKaRa Ligation Kit(TaKaRa)によるライゲーション反応を行い、大腸菌(Escherichia coli)DH5αに対して形質転換を行った。pET28(b)プラスミドベクターはN末端側にHisタンパク質が組み込まれるようにデザインされた大腸菌発現用のベクターであるため、zIgM300のタンパク質の確認において、Hisタンパク質の発現をポジティブコントロールとして用いることが可能である。
大腸菌をLB/カナマイシン(最終濃度50μg/ml)を含む寒天平板培地に塗抹後、37℃で1晩インキュベートし、得られた形質転換体を用いてコロニーPCRを行った。コロニーPCRは、EX taq polymerase(TaKaRa)を用いてダイレクトPCR法により行った。PCR反応液の組成および反応手順を表3および4に示した。また、配列表配列番号2および3をプライマーとして用いた。コロニーPCRによりインサート配列の確認されたクローンのみを5mlLB/カナマイシン(最終濃度50μg/ml)を含む液体培地に接種して37℃で16時間振とう培養し、その大腸菌培養液からQIAprep spin Miniprepを用いてプラスミド抽出を行った。
上記2、1)で抽出したプラスミドを用いて、PCR増幅されたインサート断片の塩基配列を決定した。シーケンス反応はDTSQ Quick Start kit(Beckman)を用いてジデオキシ法で行った。また、シーケンス反応には既存のT7プライマーを使用した。決定した塩基配列は、NCBIのBLASTを用いてデータベースに照合し、既報遺伝子配列およびアミノ酸配列との相同性検索を行った。
上記2、2)で遺伝子配列を確認したzIgM300の遺伝子配列を含むプラスミドベクター5μlを大腸菌(Escherichia coli)BL21(DE3)に形質転換し、LB/カナマイシン(最終濃度50μg/ml)を含む平板プレートにコンラージ棒を用いて塗抹し、37℃で1晩インキュベートした。得られた大腸菌のコロニーをピックアップし、5ml LB/カナマイシン(最終濃度50μg/ml)液体培地に接種して37℃で12時間振とう培養して、これを前培養液とした。この前培養液の50μlを5mlのLB/カナマイシン(最終濃度50μg/ml)を含む液体培地40本に加え、OD600=0.5になるまで37℃で振とう培養し、その後5ml液体培地に対して1M IPTGを10μlずつ加えて、さらに37℃で9時間振とう培養した。こうして培養した40本全ての大腸菌培養液を6,000rpmで15分間遠心分離した。集菌した大腸菌ペレットを20mlのリン酸バッファー(pH7.4)で懸濁し、TOMY UD−201のソニケイターを使ってOUT PUT4 DUTY60の条件で3分間超音波による菌体破砕を行い、得られた破砕液を粗タンパク質として以後の操作に用いた。
上記2、3)で得られた大腸菌破砕粗タンパク質と、表5に組成を示した2×SDS(ラウリル硫酸ナトリウム)サンプルバッファーとを1対1の割合で懸濁して3分間煮沸後、本サンプルを12.5%SDS−PAGE用アクリルアミドゲルを用いて25mAで2時間電気泳動し、CBB(クーマシーブリリアントブルー)染色によるタンパク質の検出を行った。
上記2、4)で行ったSDS−PAGEの結果、図6のレーンaに示したように、大腸菌タンパク質の中で20kDa付近に過剰に発現しているタンパク質が確認された。目的タンパク質の推定分子量が11kDa(300bp;100aa)であることから、20kDa付近で過剰に発現しているタンパク質が目的のzIgM300タンパク質であるとはこの時点では断定できなかった。したがって、さらに電気泳動したゲルからタンパク質をCELLULOSE NITRATE(ADVANTEC)に転写して抗His tag抗体(Amersham)によるウェスタンブロッティングを行った。
ウェスタンブロッティングは、次の手順で行った。
(1)PAGEゲル、ろ紙6枚、リンスしたCELLULOSE NITRATEをブロッキングbuffer(10×SDS泳動buffer 10ml、メタノール 20ml、dH2O 70ml)に浸し30min室温に置いた。
(2)セミドライブロッターを60min、2〜3mA/cm2(2.5mA/cm2)にセットした。
(3)上記(2)でタンパク質を転写したCELLULOSE NITRATEを0.5%スキムミルク−PBSで30min〜2hour(4℃ o/n)ブロッキングした。
(4)上記(3)のCELLULOSE NITRATEを0.1〜0.05%Tween20−PBSでゆっくり振倒した(5min×2回)。
(5)上記(4)に1次抗体(抗体液/PBS)を加え、60〜90min室温静置した。
(6)上記(5)を0.1〜0.05%Tween20−PBSでゆっくり振倒した(5min×2回)。
(7)上記(6)に2次抗体(HRP抗体液/PBS)を加え、60min室温静置した。
(8)上記(7)を0.1〜0.05%Tween20−PBSでゆっくり振倒した(5min×3回)。
(9)上記(8)を発色基質(5mlPBS,5μlH2O2,5mgDAB)で発色した。
(10)上記(9)の頃合をみてH2Oで反応停止した。
(11)上記(10)を風乾した。
上記2、3)で調整したzIgM300タンパク質発現大腸菌サンプルをソニケイションで破砕し、得られた破砕液を13,000rpmで15分間遠心分離し、zIgM300タンパク質の発現している上澄み液を可溶性画分および不溶性のペレットに分画した。なお、ペレットを10mlリン酸バッファー(pH7.0)で再び懸濁したものを不溶性画分とした。リン酸バッファーの組成は表6に示した。
上記2、6)で得られた大腸菌体破砕液の不溶性画分であるペレットを10mlのBバッファーで懸濁し、室温で2時間振とうし、zIgM300タンパク質溶出溶液を作成した。Bバッファーの組成は表7に示した。その後、13,000rpmで15分間遠心分離し、遠心した溶液の上澄み液のみを回収し、12.5%SDS−PAGE用アクリルアミドゲルで25mA、2時間電気泳動した後、CBB染色を行った。その結果、図7のレーンdに見られるように20kDa付近に見られる不溶性であったzIgM300タンパク質の可溶化が認められた。
上記2、7)のzIgM300タンパク質溶出溶液10mlにNi−NTA(QIAGEN)溶液を100μl加えて4℃で3時間振とうした。次に、シリンジの滴定を利用し、His tagを合成付加してある目的の発現タンパク質のみを回収した。Ni−NTAを用いたHis tagを付加した目的タンパク質の精製プロトコルを図8に示した。
上記2、7)で溶出したサンプルを12.5%SDS−PAGE用アクリルアミドゲルで25mA、2時間電気泳動してCBB染色を行った。レーンaにはzIgM300タンパク質発現大腸菌液、レーンbにはサンプル添加後の素通り画分、レーンcにはリン酸緩衝液(pH7.4)による洗浄画分、レーンdには20mMから100mMイミダゾール・リン酸緩衝液(pH7.4)による洗浄画分、レーンeには500mMイミダゾール・リン酸緩衝液(pH7.4)画分をスポットした。その結果、図9のレーンeには矢印で示した目的タンパク質のバンドが見られることから、500mMイミダゾール・リン酸バッファーで溶出した画分中に、精製したzIgM300タンパク質があることが確認された。
1)zIgM300タンパク質溶液中のイミダゾール除去
上記2、3)から2、6)の作業を6回繰り返した後、回収されたzIgM300タンパク質溶出溶液を、両端をたこ紐で縛った透析チューブ内にいれ、2Lの透析用バッファー(リン酸バッファー、pH7.4)に対して4℃で1晩透析した。透析した透析用バッファーを捨て、再び2Lの同バッファー中で透析を行った。この操作を2回行った。さらに、5kDa限外ろ過フィルターAmicon Ultra(MILLIPORE)を用いて3000rpmで2時間遠心濃縮を行った。
上記3、1)で得られた透析後の溶液中に含まれるタンパク質量をBradford法にて測定した。また、測定にはBio−Rad Protein Assay(Bio−Rad)を用いた。
上記3、2)で濃縮したIgM重鎖タンパク質溶液(1.14mg/ml)を用いて、ウサギに対する抗zIgM300タンパク質抗体(以下、Ig重鎖抗体とする)を作製した。
即ち、抗原となるタンパク質溶液(1.14mg/ml)の400μlに対して、等量のアジュバンドを混合してウサギの耳静脈に注射した。追加免疫として、2週間後に300μlのタンパク質のみを再度ウサギ耳静脈に注射した。さらに、追加免疫として、2週間後に300μlのタンパク質のみを再度ウサギ耳静脈に注射した。最終的に、ウサギの全血液を採血し、軽く攪拌後、室温に放置して血小板成分を凝固させた。その後、3,500rpmで5分間室温にて遠心分離して、血清成分のみを採取した。
上記2、4)で使用したサンプルを2×SDSサンプルバッファーと1対1の割合で懸濁して3分間煮沸後、本サンプルを12.5%SDS−PAGE用アクリルアミドゲルを用いて25mAで2時間電気泳動し、CBB染色によるタンパク質の検出を行った。図10のレーンaに示したように、大腸菌タンパク質の中で20kDa付近に過剰に発現しているタンパク質が確認された。
また、上記3、3)で作製したIg重鎖抗体を用いて、zIgM300タンパク質発現大腸菌液に対するウェスタンブロッティングを行った。ウェスタンブロッティングは上記2.5)と同様の手順によって行った。その結果、抗His tag抗体(Amersham)を用いて同タンパク質溶液を検出した結果と同様に、図10のレーンbに示したように、20kDa付近に抗原抗体反応を示すzIgM300タンパク質が検出された。
1.ゼブラフィッシュ生体内で産生されるIgMの精製
1)ゼブラフィッシュ血液中からの血清サンプルの回収
ゼブラフィッシュは水温27.5℃、明期14時間、暗期10時間で飼育したものを使用した。50尾の成魚ゼブラフィッシュ尾部を切断し、大動脈から流れ出る血液を回収した。これを5mlの20mMリン酸バッファー(pH7.0)に懸濁し、TOMY UD−201のソニケイターを使ってOUT PUT4 DUTY60の条件で10秒超音波による血液の破砕を行った後、4℃で7000rpmの10分間遠心分離をして上澄み液を回収した。
上記1、1)で回収したゼブラフィッシュ血清サンプルをHi Trap ProteinA HP Columns(Amersham biosciences)を用いて、ゼブラフィッシュIgMのみを回収をした。カラムから回収したゼブラフィッシュIgM溶出液をpHごとに5kDa限外ろ過フィルターAmicon Ultraを用いて3000rpmで2時間遠心濃縮した。図11にゼブラフィッシュ血清からのIgMの精製プロトコルを示した。
上記1、2)で精製、濃縮したゼブラフィッシュIgM溶出液のタンパク質量をBradford法にて測定した。測定にはBio−Rad Protein Assay(Bio−Rad)を用いた。その結果、pH2.5区では0.23μg/ml、pH3.5区では0.62μg/ml、pH4.5区では0μg/mlであった。また、IgM溶出液を12.5%SDS−PAGEで解析したところ、図12のレーンaの矢印で示したように、およそ85kDa付近にIgM重鎖のバンドが検出され、20kDa付近にIgM軽鎖のバンドがそれぞれ検出された。
また、実施例1で作製したIg重鎖抗体を用いて、ゼブラフィッシュIgMタンパク質がどのように検出されるかについて、ウェスタンブロッティングによる解析を行った。その結果、図13のレーンbに示したように、ゼブラフィッシュIgM重鎖にのみ抗原抗体反応が検出され、IgM軽鎖には反応が見られなかった(図13のレーンaにはSDS−PAGEの結果を示した)。以上の結果から、作製したIg重鎖抗体はゼブラフィッシュIgM重鎖に特異的なIg重鎖抗体であることが判明した。
10尾の成魚ゼブラフィッシュを解剖し、脳、心臓、肝臓、腎臓脾臓、腸、筋肉、精巣、および卵巣を5尾ずつから摘出し、臓器の重量を測定して1mgに対して30μlのリン酸バッファー(pH7.4)を加えて、針(18G×11/2"、テルモ)とシリンジ(テルモ)を用いて固体物が目で見て確認できなくなるまでホモジナイズして各臓器からのタンパク質を抽出した。これらのサンプルを12.5%SDS−PAGEを行った後、アクリルアミドゲルを用いて20mAで2時間電気泳動し、実施例1で作製したIg重鎖抗体を用いてウェスタンブロッティングを行った。ウェスタンブロッティングは上記実施例1、2.5)と同様の手順によって行った。その結果、ゼブラフィッシュ臓器別タンパク質サンプルにおいて、図14に示したように腸においてのみ抗原抗体反応が検出された。
ポジティブコントロールとして用いるために、抗380Rタンパク質ウサギ血清抗体を作製した。
1.イリドウィルス感染防御抗原タンパク質380R部位の遺伝子配列クローニング
1)マダイイリドウィルスワクチンからのゲノムDNA抽出
マダイイリドウィルスワクチン(財団法人 阪大微生物病研究会)10ml、0.5M EDTA 20μl、1M Tris−HCl(pH7.4)100μl、10%SDS 2ml、10mg/ml ProteinaseK 120μlを混合し、58℃で30分間インキュベートして等量のフェノールを加え、4℃で2晩緩やかに混合した。その後、3000rpmで30分間遠心して上澄みを回収後、得られた上澄み溶液に0.5M酢酸ナトリウム200μl、99.5%エタノール25mlを加えて混合し、室温で10分インキュベートした。その後、12,000rpmで10分間遠心してエタノールを除去し、ペレットを70%エタノール10mlで洗浄後、12,000rpmで2分間遠心分離した。この操作を2度行った後、エタノール溶液を除去してペレットを乾燥させた。乾いたペレットにTEバッファー1mlを加え、4℃で3日間緩やかに振とう・混合した。
上記1.1)で抽出したイリドウィルスゲノムDNAをテンプレートとし、KOD−plus−polymerase(TOYOBO)を用いてPCRによる増幅を行った。表1と同様のPCR反応液を調製し、反応手順を表8に示した。また、反応に用いたプライマーの配列を図15に示し、配列表配列番号4および5に示した。
得られた増幅断片を1.5%アガロースTAEゲル中で50V、1時間電気泳動し、目的断片をゲルから切り出してQIAGEN Min−Elute(QIAGEN)を用いて精製した。
上記1、2)で増幅・精製を行った380R遺伝子配列をZero Blunt TOPO PCR Cloning Kit(Invitrogen)を用いてライゲーション反応を行い、大腸菌(Escherichia coli) DH5αに対して形質転換を行った。大腸菌を20mg/ml X−gel 40μl、100mM IPTG 50μlを塗抹したLB/カナマイシン(最終濃度50μg/ml)の20ml平板培地で培養した。37℃で1晩インキュベートした後、ブルーホワイトセレクションにより白いコロニーを形成した大腸菌をピックアップし、5mlのLB/カナマイシン(最終濃度50μg/ml)を含む液体培地で37℃16時間振とう培養し、その大腸菌培養液からQIAprep spin Miniprep(QIAGEN)を用いてプラスミド抽出を行った。
上記1、3)で抽出したプラスミドベクターを用いて、PCR増幅されたインサート断片の塩基配列を決定した。シーケンス反応はDTSQ Quick Start kit(Beckman)を用いてジデオキシ法で行った。また、シーケンス反応には既存のT7プライマーと合成した配列番号6および7に記載の380Rシーケンス用プライマーを使用した。決定した塩基配列は、NCBIのBLASTを用いてデータベースに照合し、既報遺伝子配列およびアミノ酸配列との相同性検索を行った。380R遺伝子の塩基配列は配列表配列番号8に示した。
1)380Rのタンパク質発現用プラスミドベクターの構築
上記1、4)で遺伝子配列を確認したプラスミドベクターに、制限酵素処理(BamHI 1μl、XhoI 1μl、10×H buffer 2μl(TaKaRa)、上記1、4)に示したプラスミドDNA 6μl、滅菌ミリQ水 10μlを混合し、37℃で2時間インキュベートをして制限酵素処理を行い、同様に制限酵素処理を行ったpET28(b)プラスミドベクター(Novagen)とともに1.5%アガロースTAEゲルで50V、1時間電気泳動を行った。目的のDNA断片をゲルから切り出し、Wizard SV Gel and PCR Clean−Up System(Promega)を用いて精製した。精製したDNA増幅断片およびプラスミドベクターの断片を用いてTaKaRa Ligetion Kit(TaKaRa)によるライゲーション反応を行い、大腸菌(Escherichia coli)DH5αに対して形質転換を行った。
大腸菌をLB/カナマイシン(最終濃度50μg/ml)を含む寒天平板培地に塗抹後、37℃で1晩インキュベートし、得られた形質転換体を用いてコロニーPCRを行った。なお、プライマーは配列番号6および7に記載の380Rシーケンス用プライマーを使用した。目的の挿入断片が確認されたクローンのみを5mlLB/カナマイシン(最終濃度(50μg/ml)を含む液体培地に摂取して37℃16時間振とう培養し、その大腸菌培養液からQIAprep spin Mini prepを用いてプラスミド抽出を行った。また、抽出したプラスミドベクターを上記1、4)の方法でDNAシーケンスを行い、挿入断片は塩基配列を決定して配列を確認した。
上記2、1)で構築した380Rタンパク質発現用プラスミドベクター5μlを大腸菌(Escherichia coli)BL21(DE3)に形質転換し、LB/カナマイシン(最終濃度50μg/ml)を含む平板プレートにコンラージ棒を用いて塗抹し、37℃で1晩インキュベートした。得られた大腸菌のシングルコロニーをピックアップし、5mlLB/カナマイシン(最終濃度50μg/ml)液体培地により37℃16時間振とう培養して、これを前培養液とした。この前培養液の200μlを500ml容三角フラスコに調整した200mlのLB/カナマイシン(最終濃度50μg/ml)を含む液体培地に加え、OD600=0.5になるまで37℃で振とう培養後、1M IPTG 100μlを添加して、さらに37℃で9時間振とう培養したこうして培養した大腸菌培養液を6,000rpmで15分遠心分離した。集菌した大腸菌ペレットを20mlのリン酸バッファー(pH7.4)で懸濁し、TOMY UD−201ソニケイター(TOMY)を用いて、OUT PUT4 DUTY60の条件で3分間超音波による菌体破砕を行い、得られた破砕液を粗タンパク質として以後の操作に用いた。
上記2、2)で得られた大腸菌破砕粗タンパク質を2×SDSサンプルバッファーと1対1の割合で懸濁して3分間煮沸後、本サンプルを12.5% SDS−PAGE用アクリルアミドゲルを用いて25mAで2時間電気泳動し、CBB染色によるタンパク質の検出を行った。また、泳動したゲルからタンパク質をCELLULOSE NITRATE(ADVANTEC)に転写して抗His tag抗体(Amersham)を用いたウェスタンブロッティングを行った。ウェスタンブロッティングは上記実施例1、2.5)と同様の手順によって行った。
上記2)、3)で調整した380R発現大腸菌サンプルを13,000rpmで15分間遠心分離し、上澄み液を可溶性画分および不溶性のペレットに分画した。なお、ペレットを10mlリン酸バッファー(pH7.0)で再び懸濁したものを不溶性画分とした。両画分それぞれと10μlの2×SDSサンプルバッファーと1対1の割合で混合して3分間煮沸した後、12.5%SDS−PAGE用アクリルアミドゲルで25mA、2時間電気泳動し、CBB染色を行った。
上記2、4)で得られた不溶性画分であるペレットを20mlの0.1%Tween20リン酸バッファー(pH7.4)で懸濁し、室温で1時間インキュベートして13,000rpmで15分間遠心分離してペレットの洗浄を行った。この操作を2回繰り返した後、洗浄したペレットを8M尿素溶液(8M Urea、1mM DDT 5ml、1mM EDTA)10mlで懸濁した。室温で1時間インキュベートし、13,000rpmで20分間遠心分離して得られたペレットのみをリン酸バッファー(pH7.4)5mlで懸濁後、2×SDSサンプルバッファーと1対1の割合で混合して3分間煮沸し、電気泳動に用いた。
最終的に調製した不溶性画分に含まれる380Rタンパク質を用いて、濃縮ゲルのウェル部分を平坦にした12.5% SDS−PAGE用アクリルアミドゲルで電気泳動を行った。目的の380Rタンパク質の予定分子量の辺りのゲルを切り出し、5mlのSDS−PAGE泳動バッファーとともに、両端をたこ紐で縛ったDialysis Membrane Size20(Wako)内にゲルを投入して、500ml SDS−PAGE泳動バッファーを入れたMupid電気泳動装置に浸し、50Vで2時間電流を流した。SDS−PAGE泳動バッファーの組成は表9に示した。その後、透析チューブ内のSDS−PAGE泳動バッファーを回収して2×SDSサンプルバッファーと1対1の割合で混合し、これを10%SDS−PAGE用アクリルアミドゲルを用いて電気泳動後、上述のように目的タンパク質のみをゲルから切り出して精製し、透析チューブを用いて同様に目的タンパク質をゲルから溶出した。不溶性画分タンパク質の精製の手順は図16に示した。
1)380Rタンパク質溶出溶液からSDSの除去
上記2、6)で得られた380Rタンパク質溶液を、両端をたこ紐で縛った透析チューブにいれ、2Lの透析用バッファー(Tris 3.03g、グリシン 14.41g)対して4℃で1晩透析した。透析した透析用バッファーを捨て、再び2Lの同バッファー中で透析を行った。この操作を2回行った。さらに、10kDa限外ろ過フィルターAmicon Ultra(MILLIPORE)を用いて、2,500rpmで2時間遠心濃縮を行った。
上記3、1)で得られた透析後の溶液中に含まれるタンパク質量をBradford法にて測定した。また、測定にはBio−Rad Protein Assey(Bio−Rad)を用いた。
上記2、6)で濃縮した380Rタンパク質溶液(0.8mg/ml)を用いて、ウサギに対する抗380Rタンパク質抗体を作製した。抗体の作製は上記実施例1、3.3)と同様の手順によって行った。
380Rタンパク質発現大腸菌を12.5%のSDS−PAGE用アクリルアミドゲルで20mA2時間泳動し、泳動したゲルからタンパク質をCELLULOSE NITRATE(ADVANTEC)に転写して上記2、3)で作製した抗380Rタンパク質ウサギ血清抗体を用いてウェスタンブロッティングを行い、抗380Rタンパク質ウサギ血清抗体の有用性を確認した。ウェスタンブロッティングは上記実施例1、2.5)と同様の手順によって行った。
1.試料の調製
(1)抗原(トランスジェニック酵母)の作製
1)酵母の作製と培養
曝露試験には京都大学農学研究科応用生命科学専攻生体高分子化学研究室の植田充美教授に作製いただいた380R表層発現酵母と380R内部発現酵母、未発現酵母を使用した(参考文献参照)。すなわち、酵母は前培養として5mlSD+W0.5%カザミノ酸培地にシングルコロニーの酵母を植菌し、24時間30℃で振倒培養した。次に本培養として500ml容の坂口フラスコに150mlのSD+W0.5%カザミノ酸培地を調製し、その中に前培養液1mlを加えて30℃で30時間振倒培養を行った後、6,000rpm20分間遠心して得られた酵母のペレット重量を測定した。
参考文献: A.Kondo.M.Ueda.Yeast cell−surface display−applications of molecular display.Appl.Microbiol. Biotechnol.(2004) 64:28−40.
380R表層発現酵母と380R未発現酵母は抗His tag抗体(Amersham)と、本研究室で作製した380Rタンパク質ウサギ血清抗体を用いて、380R内部発現酵母は本研究室で作製した380Rタンパク質ウサギ血清抗体を用いて蛍光抗体染色法を行い、380Rタンパク質の発現の有無を確認した。380Rタンパク質ウサギ血清抗体は実施例3で製造したものを用いた。図17に蛍光抗体染色法の手順を示した。
380R内部発現酵母と380R未発現酵母は、酵母培養液3mlをそれぞれ10.000rpm3分間の遠心分離で集菌し、500μlリン酸バッファー(pH7.4)で懸濁した後、TOMY UD−201のソニケイターを使い、OUT PUT4 DUTY60で15秒間超音波による酵母細胞の破砕を行った。破砕した酵母液20μlを2×SDSサンプルバッファーと1対1の割合で懸濁して3分間煮沸後、それぞれのサンプルを12.5%SDS−PAGE用ゲルを用いて20mA90分間電気泳動し、泳動したゲルからタンパク質をCELLULOSE NITRATE(ADVANTEC)に転写して380Rタンパク質ウサギ血清抗体によるウェスタンブロッティングを行い、380Rタンパク質の発現の有無を確認した。ウェスタンブロッティングは上記実施例1、2.5)と同様の手順によって行った。
蛍光抗体染色において暗視野をFITC系フィルターで観察した結果を図18に示した。図18のaに380R表層発現酵母の顕微鏡写真を示し、bに380R未発現酵母の、抗His tag抗体(Amersham)を用いて蛍光抗体染色をおこなった後の顕微鏡写真を示した。その結果蛍光抗体染色をおこなった酵母の中、380R表層発現酵母には表層にHis tagタンパク質の発現が見られたが、380R未発現酵母ではHis tagタンパク質の発現は見られなかった。
ゼブラフィッシュは水温27.5℃、明期14時間、暗期10時間で飼育したものを使用した。
1試験区に50尾で6試験区、300尾のゼブラフィッシュを供した。幅60cm、奥行き30cm、高さ30cmの水槽に20Lの環境水をはり、その水槽を6個作成し、1水槽50尾で飼育した。
Ig重鎖抗体(2次抗体)は、上記実施例1で製造したものを用いた。また、Ig重鎖抗体に特異的な標識抗体(3次抗体)はGoat Anti Rabbit Ig's,HRP(BIOSOURCE)を用いた。また、ポジティブコントロールとして抗His tag抗体(Amersham)を用いた。この抗His tag抗体にはHRPが付いているので、DABによる直接検出が可能であった。
1)曝露試験
上記1、1)で作製した3種類の酵母(380R表層発現酵母、380R内部発現酵母、380R未発現酵母)を抗原として、それぞれ500μg/mlの濃度で環境水に懸濁したものを10L作製し、そこに上記1、2)で調製したゼブラフィッシュを100尾ごと30分浸漬した後、50尾ごとを2つに無作為に振り分けて飼育した。1回目の曝露試験をおこなった後、15日後に2度目の曝露試験をおこなった。曝露試験の工程は図21に示した。
2度目の曝露試験の5日後、10日後に380R表層発現酵母、380R内部発現酵母および380R未発現酵母の3種類の抗原における3試験区で、それぞれ50尾ごとに血液のサンプリングをおこなった。
サンプリングはゼブラフィッシュの尾部を切断し、大動脈から流れ出る血液を1.5mlチューブに入れておいた500μlの結合バッファー(20mM NaH2PO4と20mM Na2HPO4を混合してpH7.0に調整)内に流入した。1つのチューブに5尾ずつ血液を回収し、これを試験区ごとに統一することにより、1試験区5mlのゼブラフィッシュ血液溶出バッファーを得た。
Hi Trap Protein A HP Columns(QIAGEN)を用いて、回収したゼブラフィッシュ血液溶液から380Rに特異的な抗体(2次抗体、以下、ゼブラフィッシュIgとする)の精製をおこなった。ProteinA(HP)カラムを用いたゼブラフィッシュ血液中からのIgの精製プロトコルを図22に示した。精製ゼブラフィッシュIg溶出液を5kDa限外ろ過フィルターAmicon Ultra(MILLIPORE)を用いて1ml〜1.5mlにまで濃縮し、15mlのリン酸バッファー(pH7.4)で懸濁した。再び5kDa限外ろ過フィルターAmicon Ultraを用いて1ml〜1.5mlにまで濃縮し、その後、タンパク質量をBio−Rad Protein Assey(Bio−Rad)を用いてBrad ford法にて測定した。
(1)プルダウンアッセイによる380Rに特異的な抗体の検出
1)特異的抗体の吸着
大腸菌により作製し、His tagを合成して精製した380Rタンパク質を3μl(780mg/ml)とリン酸バッファー(pH7.4)500μl、Ni−NTA(QIAGEN)15μlを、各試験区ごとの1.5mlチューブに加え、4℃で2時間振倒混合をおこなった。その後ゼブラフィッシュIg精製液(380R表層発現酵母曝露試験区0.36mg/ml、380R内部発現酵母曝露試験区0.32mg/ml、380R未発現酵母曝露試験区0.27mg/ml)をそれぞれ100μlずつ加えて4℃で12時間振倒混合をおこなった。
上記3、(1)、1)で吸着させたサンプルを4℃で3,000rpm10分間遠心分離し、ペレット状になったビーズ(以下、ビーズペレットとする)を吸わずに上澄みを除去し、そこにリン酸バッファー(pH7.4)を1000μl加えてビーズペレットを懸濁し、4℃、4,000rpm、10分間遠心分離した。次に再び出来たビーズペレットを20mMイミダゾール・リン酸バッファー(pH7.4)300μlを加えて懸濁し、4℃、4000rpm、10min遠心分離し、ビーズペレットを吸わずに上澄みを除去した。最後に出来上がったビーズペレットを500mMイミダゾール・リン酸バッファー(pH7.4)30μlで懸濁し、4℃、4000rpm、10min遠心分離して上澄みを回収し、これを380R−ゼブラフィッシュIg結合プルダウン精製液とした。イミダゾール・リン酸バッファー(pH7.4)の組成は表10に示した。
380R−ゼブラフィッシュIg結合プルダウン精製液をCELLULOSE NITRATEにスポットし、抗His tag抗体(Amersham)を用いてのウェスタンブロッティング、本研究室で作製したIg重鎖抗体用いてのウェスタンブロッティングをおこなった。ウェスタンブロッティングは上記実施例1、2.5)と同様の手順によって行った。ここでは、抗原である380Rタンパク質に1次抗体となるゼブラフィッシュ血清中の特異的抗体が結合した状態のタンパク質複合体をNi−NTAカラムで単離して溶出させた精製液をCELLULOSE NITRATEにスポットし、それを抗His tag抗体を用いて検出した。
1)380R特異的ゼブラフィッシュIgの精製
上記1.(3)に記載の本研究室で作製したIg重鎖抗体を用いてゼブラフィッシュ血液溶出バッファーでウェスタンブロッティングをおこなった結果、血液中ではタンパク質の共存物が多く、ゼブラフィッシュIgを検出することが出来なかった。そのためHi Trap Protein A HP Columnsを用いてゼブラフィッシュIgを精製した後、精製したゼブラフィッシュIgを12.5%SDS−PAGE用アクリルアミドゲルで20mA90分間電気泳動し、ゲルをCBB染色した。図23のa.に示したように、レーンSではゼブラフィッシュIgの重鎖と軽鎖が確認された。図23のレーンSはゼブラフィッシュIg精製溶液、レーンPはゼブラフィッシュIg重鎖抗体を作製する時に用いた大腸菌由来によるゼブラフィッシュIg重鎖の一部分をスポットしたことを示している。
さらに電気泳動したゲルからCELLULOSE NITRATEにタンパク質を転写し、ウェスタンブロッティングを行ったところ、図23のb.の矢印で示したように、レーンSではゼブラフィッシュIg重鎖抗体によりゼブラフィッシュIgの重鎖が検出された。濃縮をおこなった結果、タンパク質濃度は380R表層発現酵母曝露試験区0.36mg/ml、380R内部発現酵母曝露試験区0.32mg/ml、380R未発現酵母曝露試験区0.27mg/mlであった。これにより、ゼブラフィッシュ血液中に存在するゼブラフィッシュIgの検出が可能であることを証明した。なお、ウェスタンブロッティングは上記実施例1、2.5)と同様の手順によって行った。
380R−ゼブラフィッシュIg結合プルダウン精製液について、抗His tag抗体(Amersham)を用いたウェスタンブロッティングと、本研究室で作製したIg重鎖抗体用いたウェスタンブロッティングをおこなった。ウェスタンブロッティングは上記実施例1、2.5)と同様の手順によって行った。その結果、図24のa.に示したように、3試験区ともHis tag融合380Rタンパク質を検出することが出来たが、b.に示したように、ゼブラフィッシュIgは380R表層発現酵母曝露区、380R内部発現酵母曝露区では検出できたものの、380R未発現酵母曝露区では検出されなかった。
これにより、両380R発現酵母区ではゼブラフィッシュ血液中で380Rに特異的に結合する抗体(ゼブラフィッシュIg)が産生されていることが認められた。
1)マダイ血液中からの血清サンプルの回収
マダイは和歌山県田辺湾内の網生簀で飼育した7歳魚(平均体重約5.5kg)を使用した。10尾の成魚マダイの尾静脈あるいは尾動脈から18Gの針を付けた50mlのディスポシリンジを用いて血液を採取した。これを5mlの20mMリン酸バッファー(pH7.0)に懸濁し、TOMY UD−201のソニケイターを使ってOUT PUT4 DUTY60の条件で10秒超音波による血液の破砕を行った後、4℃で7000rpmの10分間遠心分離をして上澄み液を回収した。
上記1、1)で回収したマダイ血清サンプルをHi Trap ProteinA HP Columns(Amersham biosciences)を用いて、マダイIgMのみを回収した。カラムから回収したマダイIgM溶出液をpHごとに5kDa限外ろ過フィルターAmicon Ultraを用いて3000rpmで2時間遠心濃縮した。
上記1、2)で精製、濃縮したマダイIgM溶出液のタンパク質量をBradford法にて測定した。測定にはBio−Rad Protein Assay(Bio−Rad)を用いた。その結果、pH2.5〜3.5区では0.025μg/ml、pH4.5〜5.5区では0.003μg/mlであった。また、IgM溶出液を12.5%SDS−PAGEで解析したところ、図25のa.に示すように、およそ85kDa付近にIgM重鎖のバンドが検出され、20〜25kDa付近にIgM軽鎖のバンドがそれぞれ検出された。電気泳動後のゲルからIgM重鎖のバンドのみを切り出し、実施例3、2.6)と同様の手法でマダイIgM重鎖タンパク質をゲルから溶出した。
上記1.3)で得られたマダイIgM重鎖タンパク質溶液を、両端をたこ紐で縛った透析チューブにいれ、2Lの透析用バッファー(Tris 3.03g、グリシン 14.41g)対して4℃で1晩透析した。透析した透析用バッファーを捨て、再び2Lの同バッファー中で透析を行った。この操作を2回行った。さらに、10kDa限外ろ過フィルターAmicon Ultra(MILLIPORE)を用いて、2,500rpmで2時間遠心濃縮を行った。
上記1.4)で得られた透析後の溶液中に含まれるタンパク質量をBradford法にて測定した。測定にはBio−Rad Protein Assey(Bio−Rad)を用いた。また、精製したIg重鎖を12.5%SDS−PAGEで解析したところ、図25のb.に示すように、およそ85kDa付近にIg重鎖のバンドが検出された。
上記1.5)で濃縮したマダイIgM重鎖タンパク質溶液(1mg/ml)を用いて、ウサギに対する抗マダイIg重鎖タンパク質抗体を作製した。
即ち、抗原となるタンパク質溶液(1mg/ml)の400μlに対して、等量のアジュバンドを混合してウサギの耳静脈に注射した。追加免疫として、2週間後に200μlのタンパク質のみを再度ウサギ耳静脈に注射した。さらに、追加免疫として、2週間後に200μlのタンパク質のみを再度ウサギ耳静脈に注射した。最終的に、ウサギの全血液を採血し、軽く攪拌後、室温に放置して血小板成分を凝固させた。その後、3,500rpmで5分間室温にて遠心分離して、血清成分のみを採取した。
マダイ血清、ゼブラフィッシュ初期胚、ゼブラフィッシュ血清を12.5%のSDS−PAGE用アクリルアミドゲルで20mA2時間泳動し、泳動したゲルからタンパク質をCELLULOSE NITRATE(ADVANTEC)に転写して上記2、3)で作製した抗マダイIg重鎖タンパク質ウサギ血清抗体を用いてウェスタンブロッティングを行い、抗マダイIg重鎖タンパク質ウサギ血清抗体の有用性を確認した。ウェスタンブロッティングは上記実施例1、2.5)と同様の手順によって行った。その結果、図26に示すように、マダイIgM重鎖にのみ抗原抗体反応が検出され、ゼブラフィッシュ初期胚、ゼブラフィッシュ血清には反応が見られなかった。以上の結果から、作製したIg重鎖抗体はマダイIgM重鎖に特異的なIg重鎖抗体であることが判明した。
1.試料の調製
(1)抗原(トランスジェニック酵母)
上記実施例4、1.(1)で作製した380R内部発現酵母と未発現酵母を抗原として使用した。
マダイは54日齢の稚魚を使用した。
1試験区に15尾で3試験区、45尾のマダイを供した。幅60cm、奥行き30cm、高さ30cmの水槽に20Lの環境水をはり、その水槽を3個作成した。
Ig重鎖抗体(2次抗体)は、上記実施例5で作製したものを用いた。また、Ig重鎖抗体に特異的な標識抗体(3次抗体)はGoat Anti Rabbit Ig’s,HRP(BIOSOURCE)を用いた。
1)曝露試験
上記1.(1)の2種類の酵母(380R内部発現酵母、380R未発現酵母)を抗原として、それぞれ市販の配合飼料(日清丸紅飼料社製アルテックK−4)の5%の容量の水に酵母を湿重で0.5%(乾重で0.1%)添加し,給餌まで−20℃で凍結保存した。未処理対照として,酵母を添加しない飼料区も設定した。給餌は1日3回,午前8時,午後1時および午後5時に行い,いずれの時間にも飽食量を与えた。給餌は10日間行った。
曝露試験の14日後に各区より10尾ずつの血液のサンプリングをおこなった。
サンプリングはマダイの尾静脈あるいは尾動脈から24Gの針を付けた1mlのディスポシリンジを用いて血液を採取した。
Hi Trap Protein A HP Columns(QIAGEN)を用いて、回収したマダイ血液溶液から380Rに特異的な抗体(2次抗体、以下、マダイIgとする)の精製をおこなった。図22に示したProteinA(HP)カラムを用いたマダイ血液中からのIgの精製プロトコルを用いた。精製の結果を図27に示した。
この精製マダイIg溶出液を5kDa限外ろ過フィルターAmicon Ultra(MILLIPORE)を用いて1ml〜1.5mlにまで濃縮し、15mlのリン酸バッファー(pH7.4)で懸濁した。再び5kDa限外ろ過フィルターAmicon Ultraを用いて1ml〜1.5mlにまで濃縮し、その後、タンパク質量をBio−Rad Protein Assey(Bio−Rad)を用いてBrad ford法にて測定した。
(1)プルダウンアッセイによる380Rに特異的な抗体の検出
1)特異的抗体の吸着
大腸菌により作製し、His tagを合成して精製した380Rタンパク質を3μl(780mg/ml)とリン酸バッファー(pH7.4)500μl、Ni−NTA(QIAGEN)15μlを、各試験区の1.5mlチューブに加え、4℃で2時間振倒混合をおこなった。その後マダイIg精製液(380R内部発現酵母曝露試験区0.038μg/ml、380R未発現酵母曝露試験区0.045μg/ml)をそれぞれ100μlずつ加えて4℃で1晩振倒混合をおこなった。
上記3.(1)、1)で吸着させたサンプルを4℃で3,000rpm10分間遠心分離し、ペレット状になったビーズ(以下、ビーズペレットとする)を吸わずに上澄みを除去し、そこにリン酸バッファー(pH7.4)を1000μl加えてビーズペレットを懸濁し、4℃、4,000rpm、10分間遠心分離した。次に再びできたビーズペレットを20mMイミダゾール・リン酸バッファー(pH7.4)500μlを加えてゆっくり混合、洗浄し、4℃、4000rpm、10min遠心分離し、ビーズペレットを吸わずに上澄みを除去した。最後に出来上がったビーズペレットを500mMイミダゾール・リン酸バッファー(pH7.4)30μlで懸濁し、4℃、4000rpm、10min遠心分離して上澄みを回収し、これを380R−マダイIg結合プルダウン精製液とした。イミダゾール・リン酸バッファー(pH7.4)は表10の組成のものを用いた。
380R−マダイIg結合プルダウン精製液をCELLULOSE NITRATEにスポットし、抗マダイIg重鎖抗体用いてウェスタンブロッティングをおこない、各サンプルにおける380R特異的抗体の発現量を調べた。
サンプルとして380R内部発現酵母曝露区および380R未発現酵母曝露区において、マダイ血清中から精製したマダイIgM(以下、マダイIgとする)、このうち抗原である380Rタンパク質に結合するマダイIgM(以下、吸着とする)と、結合しないマダイIgMを遠心分離によってわけて、それぞれ吸着、非吸着として用いた。
ウェスタンブロッティングは次の手順で行った。
(1)ろ紙1枚、リンスしたCELLULOSE NITRATEをブロッキングbuffer(10×SDS泳動buffer 10ml、メタノール 20ml、dH2O 70ml)に浸し30min室温に置いた。
(2)ラップの上に、乾いたろ紙、ブロッキングbufferに浸したろ紙、CELLULOSE NITRATEの順にのせ、各サンプルを1サンプル2.5μlずつアプライした後、5min室温に置いた。
(3)上記(2)でサンプルをアプライしたCELLULOSE NITRATEを0.5%スキムミルク−PBSで30min〜2hour(4℃ o/n)ブロッキングした。
(4)上記(3)のCELLULOSE NITRATEを0.1%Tween20−PBSでゆっくり振倒した(5min×2回)。
(5)上記(4)に1次抗体(抗体液/PBS)を加え、90min室温静置した。
(6)上記(5)を0.1%Tween20−PBSでゆっくり振倒した(5min×2回)。
(7)上記(6)に2次抗体(HRP抗体液/PBS)を加え、60min室温静置した。
(8)上記(7)を0.1%Tween20−PBSでゆっくり振倒した(5min×3回)。
(9)上記(8)を発色基質(5mlPBS,5μlH2O2,5mgDAB)で発色した。
(10)上記(9)の頃合をみてH2Oで反応停止した。
(11)上記(10)を風乾した。
な抗原タンパク質に対する抗体産生をチェックすることができ、免疫付括する機能性ペプ
チドのスクリーニングにも利用できる。また、免疫グロブリンIgMの抑制や付括に関す
る医薬品のスクリーニングにも利用できる。
Claims (13)
- 魚類IgMの定常領域に結合するIg重鎖抗体であって、該定常領域が魚類IgM重鎖のIGドメインにおけるDomainIVであるIg重鎖抗体。
- 魚類IgMの定常領域が配列表配列番号1に記載の塩基配列でコードされる領域である請求項1に記載のIg重鎖抗体。
- 魚類がゼブラフィッシュである請求項1または2に記載のIg重鎖抗体。
- 魚類IgMの定常領域として、魚類IgM重鎖のIGドメインにおけるDomainIVまたはその一部を含むタンパク質を哺乳動物に投与することによる請求項1〜3のいずれかに記載のIg重鎖抗体の製造方法。
- 1つ以上の抗原を結合させた不溶性担体、請求項1〜3のいずれかに記載のIg重鎖抗体、Ig重鎖抗体に特異的な標識抗体を含む、抗原に特異的な抗体の検出キット。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のIg重鎖抗体を用いて魚類において、対象とする抗原に特異的な抗体を検出する方法。
- 次の1)〜3)の工程を含む、請求項6に記載の方法。
1)魚類に対象とする抗原を曝露する工程
2)魚類において該抗原に対する特異的な抗体を産生させる工程
3)該抗原に特異的な抗体を請求項1〜3のいずれかに記載のIg重鎖抗体を用いて検出する工程 - 抗原の曝露が、抗原を魚類が存在する水中に投与することによる請求項7に記載の方法。
- 該抗原に特異的な抗体がIgMである請求項7または8に記載の方法。
- 該抗原に特異的な抗体を検出する工程が、次の4)及び5)の工程を含むものである請求項7〜9のいずれかに記載の方法。
4)対象とする抗原を結合した不溶性担体と該抗原に特異的な抗体(1次抗体)とを反応させる工程
5)該抗原に特異的な抗体(1次抗体)と請求項1〜3のいずれかに記載のIg重鎖抗体(2次抗体)とを反応させる工程 - さらに、請求項1〜3のいずれかに記載のIg重鎖抗体に特異的な標識抗体(3次抗体)を反応させる工程を含む、請求項10に記載の方法。
- 請求項6〜11のいずれかに記載の方法を用い、抗原に特異的な抗体を定量的に検出する方法。
- 請求項6〜12のいずれかに記載の方法に用いる、1つ以上の抗原を結合させた不溶性担体をアレイ上に並べた、抗原に特異的な抗体の検出器具。
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