JP4730764B2 - スギ花粉由来の新規アレルゲン - Google Patents
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Description
このように、Cry j 1とCry j 2以外の多くのスギ花粉アレルゲンの存在とその重要性が示唆されているにもかかわらず、その分子種の同定ならびに免疫学的特性の評価がなされているものは少ない。
(1)スギ花粉中に含まれるタンパク質で、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により測定すると分子量が50,000〜66,000ダルトンを示し、等電点電気泳動法により測定すると等電点が5〜6付近に示すことを特徴とする、スギ花粉アレルゲン。
(2)部分アミノ酸配列として
Ser-X-Gly-X-X-Ala-Ala-Ser-Glu (XはIleまたはLeuを示す)の配列を有する前記(1)のスギ花粉アレルゲン。
(3)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する前記(1)または(2)のスギ花粉アレルゲン。
(4)スギ花粉粗抗原から、アフィニティー精製、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、遠心分離、濃縮、透析など方法によって得られたことを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかのスギ花粉アレルゲン。
(5)配列番号2に記載のアミノ酸配列または少なくともその一部のアミノ酸配列を含むスギ花粉アレルゲンタンパク質。
(7)配列番号2に記載のスギ花粉アレルゲンタンパク質のアミノ酸配列または少なくともその一部のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する核酸分子。
(8)スギ花粉アレルゲンをコードする配列番号1に記載の塩基配列または少なくともその一部の塩基配列を有する核酸分子。
(9)スギ花粉またはスギ雄花に由来する単離された前記(6)〜(8)に記載の核酸分子。
(11)無細胞発現系によって調製された前記(1)〜(5)のいずれかに記載のタンパク質または少なくともその一部のアミノ酸配列を含むタンパク質。
(12)化学的な合成によって調製された前記(1)〜(5)のいずれかに記載のタンパク質または少なくともその一部のアミノ酸配列を含むタンパク質。
(13)スギ花粉症患者血清中のIgEと反応する前記(5)または(10)〜(12)のタンパク質。
(15)前記(1)〜(5)、(10)〜(12)のいずれかのスギ花粉タンパク質またはその少なくとも1つのタンパク質断片に特異的に反応するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体。
(16)前記(1)〜(4)、(10)〜(12)のスギ花粉アレルゲンを用いた花粉症患者用の診断薬。
(15)前記(1)〜(4)、(10)〜(12)に記載のスギ花粉タンパク質を用いた減感作用の治療薬。
スギ花粉アレルギーにおいては、Cry j 1とCry j 2の主要抗原が同定され詳細に研究されているが、その他のアレルゲンに関しては、未だ充分なされていない。そこで、本発明者らは、スギ花粉中に含まれるアレルゲンの網羅的解析を目指して、スギ花粉粗抗原を二次元電気泳動により展開した後、イムノブロッティング法によってスギ花粉症患者血清IgEと特異的に反応するスポットを検索した。その結果、塩基性域のCry j 1およびCry j 2以外に、IgEと反応するアレルゲンが酸性域にも存在することを見出した。その後、得られた陽性スポットのアミノ酸シークエンスをMALDI-TOF MSを用いて行い、陽性スポットCPA39の部分アミノ酸配列を決定した。得られたアミノ酸配列を用いてホモロジー検索をしたところ、既知の他の植物由来の配列の中に有意な相同性を示すものは存在せず、本タンパク質の分子種を類推することはできなかった。次に、得られたアミノ酸配列を用いてCryptomeria japonica(日本スギ)のESTデータベースを検索したところ、一致する翻訳配列を有するEST(Accession number BP176098)を見出した。
ここでいうCPA39の免疫学的性質とは、CPA39のヒトに対する免疫学的性質だけでなく、例えば、イヌ、ネコ、サル、ラット、マウス、ウサギ等、他の動物に対する免疫学的性質も含まれる。
本発明のCPA39をコードする核酸または少なくともその1つの断片をコードする核酸は、当業者ならば、本発明によって開示されたCPA39のアミノ酸配列およびそれをコードする核酸配列の情報を利用し、公知の技術を用いて天然由来の試料やライブラリから容易に調製することができる。また当業者に公知の化学的な核酸合成技術を用いて調製することも可能である。
本発明の単離された天然型CPA39タンパク質および少なくともその一部を含むタンパク質断片は、スギ由来の試料から、好ましくはスギ花粉あるいはスギ花粉抽出物から、アフィニティー精製、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、遠心分離、濃縮、透析などの当業者に公知の技術を利用して得ることができる。
本発明のCPA39および少なくともその一部のアミノ酸配列を含むタンパク質は、公知の種々のタンパク質発現系のいずれかを用いて合成することができる。そのような方法には、例えば大腸菌発現系、乳酸菌発現系、酵母発現系、麹菌発現系、昆虫細胞発現系、動物細胞発現系、無細胞発現系などがある。当業者ならば、これらの発現系のそれぞれの長所および欠点等を理解しているので、当業者は目的に応じて適切な発現系を選択することが可能である。例えば、大腸菌などの原核細胞を使う発現系は、糖鎖付加などの適切な修飾が行われないために、組換えCPA39の発現には酵母などの真核細胞を使用する方がよい場合がある。
このように、本発明のスギから単離した天然型CPA39でも、本発明の組換え技術によって調製したCPA39でも、スギ花粉症患者血清との反応が観測され、これらどちらのCPA39にもアレルゲン性があることが発明者らによって初めて示された。当業者は、目的によって本発明のCPA39を取得するための方法を適宜選択することができる。
また、本発明によってCPA39タンパク質の全アミノ酸配列が明らかにされたため、CPA39タンパク質のT細胞エピトープ部位の同定が可能になった。そのため、それらのT細胞エピトープペプチドは、スギ花粉症の免疫療法において用途がある。本発明のCPA39のアミノ酸配列の少なくとも一部を含むタンパク質には、このようなCPA39のT細胞エピトープペプチドを含むタンパク質も含まれる。
アレルギーの治療法の1つとして減感作療法があるが、アナフィラキシーなどの副作用も考えられることから、最近の治療においては、患者にアレルゲン全体を投与するのではなく、T細胞が特異的に認識するアレルゲンの最小領域、つまり、T細胞エピトープのみからなるペプチドを投与する、ペプチドワクチンが注目されている。
本発明で得られたCPA39タンパク質のT細胞エピトープペプチドは、それ単独、あるいは、Cry j 1、Cry j 2およびその他のスギ花粉アレルゲンのT細胞エピトープペプチドと混在、もしくは結合させることによって、花粉症の免疫療法に用いることができる。
さらに、本発明は、CPA39タンパク質、またはそのタンパク質断片に特異的に反応するモノクローナル抗体、およびポリクローナル抗体を提供することが可能である。タンパク質、またはそのタンパク質断片に特異的に反応するモノクローナル抗体、およびポリクローナル抗体を作製する方法は、当業者には公知である。
<実施例1> スギ花粉粗抗原のプロテオーム解析
スギ花粉粗抗原の調製
日本スギ花粉(広島県豊田郡豊町にて採取)80 gに抽出バッファー(20 mM PBS+3mM EDTA pH 7.6)を3.0 L加えた後、4℃で4時間攪拌した。その後、遠心分離(7,000 rpm, 30分間)によって得た上清に対して、終濃度80%飽和になるよう硫酸アンモニウムを加え、4℃で一晩攪拌した。次に、遠心分離(7,000 rpm, 30分間)によって沈殿を採取し、ミリQ水で一晩透析を行った。その後、遠心分離(10,000 rpm, 30分間)をすることで得られた上清の凍結乾燥を行い、スギ花粉粗抗原(CJP)を得た。
スギ花粉粗抗原(CJP)200 mgに4 mlのPBS+ジチオトレイトール(DTT) 60 mgを加えて懸濁し、PBSで60%に調製したトリクロロ酢酸2 mlを加えた後、氷上で90分間静置した。その後、遠心分離(3,500 rpm, 15分間)を行い、沈殿を回収した。この沈殿に冷アセトン10 mlを加えて懸濁し、洗浄した。さらに、遠心分離(3,500 rpm, 20分間)を行った後、スピードバックで沈殿を乾燥させた。その沈殿にLysis Buffer(8 M 尿素、2Mチオ尿素、2% CHAPS, 2% SB3-10, 1% DTT, 0.8% Ampholine)1 mlを加えて懸濁し、超音波破砕によって完全に溶解させた。その後、遠心分離(18,000 rpm, 20分間)を行い、その上清を二次元電気泳動用のサンプルに用いた。
ウェスタンブロッティング
スギ葯トータルRNAの精製
液体窒素中で粉砕したスギ葯5 gを50 ml容量の遠沈管に入れ、4℃のConcertTM Plant RNA Reagent(Invitrogen)を25 ml加えて懸濁した。遠沈管を横にした状態で、室温で5分間静置した。これを遠心分離(2,600×g、5分間、4℃)した。その上清をメッシュサイズ100 μmのセルストレーナー(BDファルコン)で濾過した。濾過した上清10 mlにつき5M 塩化ナトリウムを2 ml加えて懸濁した。濾過した上清10 mlにつきクロロホルムを6 ml加えて懸濁した。これを遠心分離(2,600×g、30分間、4℃)した。上清に、上清の0.9倍量のイソプロパノールを加えて懸濁した。これを室温で10分間静置した。次にこれを遠心分離(2,600×g、30分間、4℃)した。上清を除き、沈殿したトータルRNAに75% エタノールを10 ml加えて軽く懸濁した。これを遠心分離(2,600×g、5分間、4℃)した。上清を除き、遠沈管のふたを開けた状態で、室温で15分間静置してトータルRNAを乾燥した。これにRNase free water を300 μl加え、トータルRNAを溶解した。得られたトータルRNA溶液は-80℃で保存した。
スギ葯トータルRNAからmRNAの精製には、OligotexTM-dT30 <Super> mRNA Purification kit(TaKaRa)を用いた。スギ葯トータルRNA 250 μgを含むトータルRNA溶液150 μlを調製した。これに2×Binding bufferを150 μl、OligotexTM-dT30 <Super>を15 μl加えて懸濁した。70℃で3分間インキュベートし、室温で10分間静置した。これを遠心分離(15,000 rpm、5分間、室温)した。上清を除き、沈殿したOligotexTM-dT30 <Super>にWash bufferを350 μl加えて懸濁した。これをスピンカラムセットのカップに移し、遠心分離(15,000 rpm、30秒間、室温)した。カップを新しいスピンカラム用遠心チューブに移した。カップ内のOligotexTM-dT30 <Super>にWash bufferを350 μl加えて懸濁した。これを遠心分離(15,000 rpm、30秒間、室温)した。カップを新しいスピンカラム用遠心チューブに移した。(1)カップ内のOligotexTM-dT30 <Super>に70℃のRNase free waterを30 μl加えて懸濁し、遠心分離(15,000 rpm、30秒間、室温)して、mRNA溶液を回収した。(1)の操作をさらに2回行った。一連のmRNA精製操作をさらに5回行い、mRNA溶液を約500 μl以上得た。
スギ葯mRNAから5'-RACE用および3'-RACE用cDNAの合成には、BD SMARTTM RACE cDNA Amplification Kit(BD Biosciences)を用いた。5'-RACE用cDNAの合成は、0.5 ml容量のマイクロチューブに、1 μg/μl mRNA溶液を1 μl、5'-CDS primerを1 μl、BD SMART II A oligoを1 μl、RNase free waterを2 μl加えて懸濁した。一方、3'-RACE用cDNAの合成は、0.5 ml容量のマイクロチューブに、1 μg/μl mRNA溶液を1 μl、3'-CDS primer Aを1 μl、RNase free waterを3 μl加えて懸濁した。70℃で2分間インキュベートし、氷上で2分間静置した。各反応液に、5×First-Strand Bufferを2 μl、20 mM ジチオトレイトールを1 μl、dNTP mixを1 μl、BD PowerScript Reverse Transcriptaseを1 μl加えて懸濁した。42℃で90分間インキュベートした。反応液にTricine-EDTA Bufferを250 μl加えて懸濁した。これを72℃で7分間インキュベートした。得られたcDNA溶液は-30℃で保存した。
質量分析で得られたCPA39のアミノ酸配列 Ser-Leu-Gly-Ile-Leu-Ala-Ala-Ser-Glu を検索子として、GenBankのESTデータベースを検索したところ、一致する翻訳配列を有するCryptomeria japonica(日本スギ)のEST(Accession number BP176098)を見出した。このことからBP176098はCPA39の遺伝子断片であることが考えられた。CPA39遺伝子の未知領域を取得するために、BP176098の塩基配列をもとに、5'-RACE用プライマー 5'-GTT CTT CAC CCA TTC CTG AGC TAC ACC C-3'、および3'-RACE用プライマー 5'-CCT TAC CCC TAC TTT GGT TTC ACT GCC-3' を作製した。作製したそれぞれのプライマーとUniversal Primer A Mix(BD SMARTTM RACE cDNA Amplification Kit付属プライマー)を用いて、スギ葯cDNAをテンプレートとした5'-RACEおよび3'-RACEを行った。このRACE反応はBD AdvantageTM 2 PCR Kit(BD Biosciences)を用いた。5'-RACE産物および3'-RACE産物を、QIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN)を用いて精製し、DNA Ligation Kit ver. 2.1(TaKaRa)を用いてpGEM-T Easy Vector(Promega)に連結した後、Competent high E.coli DH5α(TOYOBO)に形質転換した。得られた形質転換体から、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドを調製した。調製したプラスミドをテンプレートとして、BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems)を用いてサイクル反応を行った。反応液をエタノール沈殿で精製し、DNAシークエンサー(3100-Avant、Applied Biosystems)を用いて、5'-RACE産物および3'-RACE産物の塩基配列を解析した。CPA39の全長遺伝子を取得するために、得られた塩基配列をもとに、プライマー 5'-ATA AGA AGC TGC CCA TAT GCT CAT ATT GTA AAC GGT C-3' および 5'-AAG ATG AGG CAT TCA GTC ATT TTC AAG AG-3' を作製した。これらのプライマーを用いて、5'-RACE用スギ葯cDNAをテンプレートとしたPCRを行い、CPA39の全長遺伝子を増幅した。このPCR反応はKOD-Plus-DNA Polymerase(TOYOBO)を用いた。得られたCPA39の全長遺伝子を精製し、pUC118 DNA HincII/BAP(TaKaRa)に連結した後、E.coli DH5αに形質転換した。形質転換体からプラスミドを調製し、CPA39の全長遺伝子の塩基配列を解析した。その結果、CPA39の全長cDNAの塩基配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)が得られた。CPA39の全長cDNAは1974 bpの塩基からなり、そのORFは471アミノ酸をコードしていた。
GenBankデータベースを用いたFASTA及びBLAST検索によって、得られたCPA39の遺伝子およびタンパク質の配列について相同性検索を行った。CPA39のアミノ酸配列と他の植物由来β-1,3-グルカナーゼとの相同性について調査した結果を、図3に示す。*は一致したアミノ酸残基を示す。CPA39は、Pisum sativum β-1,3-グルカナーゼ(Buchner, P. et al., Plant Mol. Biol., 49, 171-186, 2002)とアミノ酸レベルで50.0%、DNAレベルで55.2%、Arabidopsis thaliana β-1,3-グルカナーゼ(Accession number AAM66982)とアミノ酸レベルで48.8%、DNAレベルで45.6%の同一性を示した。以上のようにCPA39が他種のβ-1,3-グルカナーゼと高い相同性を保持していることが確認された。
これまでにアレルゲンとして報告されているβ-1,3-グルカナーゼとCPA39のアミノ酸配列のホモロジーを図4に示す。*は一致したアミノ酸残基を示す。オリーブ(Olea europaea)の花粉の主要アレルゲンとして報告されているOle e 9と48.4%、ラテックス(Hevea brasiliensis)アレルゲンのHev b 2と36.0%のアミノ酸の同一性を示し、CPA39がこれらのアレルゲンとの交差反応性を有する可能性が示された。
組換え型CPA39タンパク質(rCPA39)をバキュロウイルス−昆虫細胞系で発現させた。CPA39をコードするcDNAを鋳型として、DNA増幅酵素であるKOD-plus-を用いたPCRによって増幅し、両末端にBamH IおよびEcoR Iサイトを有するCPA39遺伝子断片を得た。この増幅物を、BamH IとEcoR Iで制限酵素処理し、同様にBamH IとEcoR Iで処理した昆虫細胞発現用ベクターpVL1393中にインサートし、CPA39/pVL1393を得た。インサートしたCPA39遺伝子の配列はDNAシーケンサーによって確認した。CPA39/pVL1393を、バキュロウイルスDNA(SapphireTM DNA(Orbigen))とともに昆虫培養細胞Sf9へコトランスフェクションし、CPA39遺伝子を有する組換えバキュロウイルスを調製した。本組換えバキュロウイルスのゲノムDNAを鋳型として、CPA39遺伝子特異的PCRを行うことによって、ウイルスゲノム中にCPA39遺伝子が組み込まれたことを確認した。次にこの組換えバキュロウイルスを、昆虫培養細胞Sf9に接種した後、27℃で、4 日間培養し、rCPA39タンパク質を発現させた。rCPA39タンパク質は、C末端にポリヒスチジン(6×ヒスチジン残基)が付加したヒスチジンタグ融合タンパク質として発現させた。培養液を3,000 rpm、4℃で、10 分間遠心分離した後、上清を回収した。この上清を分取して、SDS-PAGEにかけた後、CBB染色とウエスタンブロット解析を行い、rCPA39の発現を確認した(図5と図6)。ウエスタンブロットは、一次抗体としてPenta-His Antibody(QIAGEN)抗体、二次抗体としてHRP標識されたAnti-mouse IgG抗体を使用し、ECL Plus Western Blotting Detection System (Amersham Biosciences)で発光させrCPA39を検出した。
実施例4にて発現させたrCPA39タンパク質を、昆虫細胞の培養上清から精製した。培養上清をHiTrap Chelating HP Columns (Amersham Biosciences)に供してカラムに吸着させ、PBS緩衝液で洗浄した。その後、PBS緩衝液中のイミダゾールの濃度を20 mM〜500 mMへグラジエントし、rCPA39をカラムから溶出させた。その後、攪拌型ウルトラホルダー(ADVANTEC)を用いて、カラムから溶出した液の濃縮と脱塩を行った。濃縮した液を、陽イオン交換カラムHiTrap Q FF (Amersham Biosciences)に供して、NaClの濃度を10 mM〜1 Mへグラジエントし、rCPA39をカラムから溶出させた。その後、攪拌型ウルトラホルダーを用いて、カラムから溶出した液の濃縮と脱塩を行った。
スギ花粉粗抗原から分離したCPA39について、スギ花粉症患者血清との反応を調べた。実施例1と同様の方法で、スギ花粉粗抗原の調製および二次元電気泳動を行い、CPA39を分離した。スギ花粉症患者血清40検体それぞれについて、実施例1と同様の方法でウェスタンブロッティングを行い、CPA39との反応を調べた。比較例として、既知の主要アレルゲンCry j 1およびCry j 2との反応も調べた。その結果を表1に示した。CPA39はスギ花粉症患者血清40検体中19検体(47.5%)で陽性反応を示した。また、CPA39の反応状況は、Cry j 1およびCry j 2の反応状況とは異なっていた。このことから、CPA39はスギ花粉症患者血清と高頻度で反応し、かつ、Cry j 1およびCry j 2とは免疫学的性質の異なる新規な花粉アレルゲンであることが示された。
実施例4および実施例5によって発現および精製されたrCPA39タンパク質のスギ花粉症患者血清由来のIgEに対する結合能をELISA法により測定した。まず、マイクロタイタープレートのウェルに100 mM Sodium bicarbonate buffer(pH 9.6)で希釈した抗原溶液(10 μg/ml)を50 μlアプライした。また、human IgE standardをまず200 ng/mlになるように希釈し、倍希釈系列をそれぞれのウェルに50 μlずつ加え、室温で2時間静置した。PBSTにて洗浄した後、blocking buffer[PBS(pH 7.4), 0.5% Tween20, 3% skim milk, 1% BSA]を200 μlアプライし、4℃で一晩静置した。PBSTで洗浄後、blocking bufferで10倍希釈したスギアレルギー患者及び健常者血清を50 μlをアプライし、4℃で4時間静置した。PBSTで洗浄後、blocking bufferで1,000倍に希釈したanti-human IgE EPSILON CHAIN BIOTIN CONJUGATE (Biosource International,Inc.) 50 μlをアプライし、室温で2時間静置した。PBSTで洗浄後、blocking bufferで1,000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ標識Streptavidinを50 μlアプライし、室温で1時間静置した。充分洗浄した後、50 μlのAttoPhosTMを加えCytoFluorTMII(PerSeptive Biosyatems)にて蛍光強度を測定した。
スギ花粉症患者血清28検体(RAST Score≧2)および健常者血清3検体(皮内反応(−))を用いて、rCPA39特異的IgE抗体価を分析した結果を、図7に示す。基準として健常者3人の平均値に標準偏差の3倍を足した値を破線で示した。破線の値以上のIgE値を示した検体を危険率5%以下で当rCPA39に対して陽性であると評価した。その結果、28検体中17検体(P1, 9, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 19, 20, 21, 22, 23, 25, 26, 27 ,28)の患者血清(60.7%)が、rCPA39に対してIgE反応陽性であった。
Claims (10)
- スギ花粉中に含まれるタンパク質で、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により測定すると分子量が50,000〜66,000ダルトンを示し、等電点電気泳動法により測定すると等電点が5〜6付近に示し、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなることを特徴とする、スギ花粉アレルゲンタンパク質。
- スギ花粉粗抗原から、アフィニティー精製、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、遠心分離、濃縮および透析からなる群から選ばれる方法によって得られたことを特徴とする請求項1に記載のスギ花粉アレルゲンタンパク質。
- 配列番号2に記載のスギ花粉アレルゲンタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む核酸分子。
- スギ花粉アレルゲンタンパク質をコードする配列番号1に記載の塩基配列を含む核酸分子。
- スギ花粉またはスギ雄花に由来する単離された請求項3または4に記載の核酸分子。
- 請求項3または4に記載の核酸分子で形質転換された宿主細胞において産生された請求項1または2に記載のスギ花粉アレルゲンタンパク質。
- 化学的な合成によって調製された請求項1または2に記載のスギ花粉アレルゲンタンパク質。
- スギ花粉症患者血清中のIgEと反応する請求項1、6および7のいずれか1項に記載のスギ花粉アレルゲンタンパク質。
- 請求項1、2、6および7のいずれか1項に記載のスギ花粉アレルゲンタンパク質またはその少なくとも1つのタンパク質断片に特異的に反応するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体。
- 請求項1、2、6および7のいずれか1項に記載のスギ花粉アレルゲンタンパク質を用いた花粉症患者用の診断薬。
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