JP4919486B2 - スギ花粉由来の新規アレルゲン - Google Patents
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Description
(1)スギ花粉由来であって、以下の(a)および(b)の性質を有するスギ花粉アレルゲンタンパク質。
(a)分子量70〜110kDa(SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法)
(b)等電点6.0〜8.0付近(等電点電気泳動法)
(2)セリンプロテアーゼである、前記(1)に記載のスギ花粉アレルゲンタンパク質。
(3)部分アミノ酸配列として-Gly-His-Gly-Thr-His-Thr-Ser-Ser-Thr-Ala-Ala-の配列を有する前記(1)または(2)に記載のスギ花粉アレルゲンタンパク質。
(4)スギ花粉粗抗原から、アフィニティー精製、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、遠心分離、濃縮、透析および電気泳動から選ばれる少なくとも1種の方法によって得られることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のスギ花粉アレルゲンタンパク質。
(5)スギ花粉症患者由来のIgEへの結合能を有する前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のスギ花粉アレルゲンタンパク質。
(6)以下の(a)または(b)のタンパク質または少なくともその一部を有するタンパク質。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を有し、かつアレルゲン性を有するタンパク質。
(7)前記(6)記載のタンパク質をコードする遺伝子。
(8)以下の(a)または(b)のDNAからなる遺伝子。
(a)配列番号2に記載の塩基配列からなるDNA
(b)配列番号2に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアレルゲン性を有するタンパク質をコードするDNA
(9)スギ花粉またはスギ雄花由来である前記(8)に記載の遺伝子。
(10)前記(7)〜(9)に記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
(11)前記(10)の組み換えベクターによって形質転換された形質転換体。
(12)前記(11)記載の形質転換体を培養し、その培養物からアレルゲン性を有するタンパク質を回収することを特徴とする、スギ花粉アレルゲンタンパク質の製造方法。
(13)前記(7)〜(9)のいずれか1項に記載の遺伝子又は前記(10)記載の組換えベクターを用いて、スギ花粉アレルゲンタンパク質を無細胞発現系により発現させることを特徴とする、スギ花粉アレルゲンタンパク質の製造方法。
(14)前記(12)または(13)に記載の製造方法により製造されたスギ花粉アレルゲンタンパク質。
(15)前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載のタンパク質に含まれるペプチドであって、スギ花粉症患者由来のT細胞を刺激および/または抑制する作用を有することを特徴とするペプチド。
(16)前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載のタンパク質に特異的に反応するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体。
(17)前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載のタンパク質を含むことを特徴とする花粉症診断用試薬。
(18)前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載のタンパク質を含むことを特徴とする減感作用の治療薬。
(1)分子量
SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(ポリアクリルアミドゲル濃度5〜20%のグラジエントゲル)により測定した本アレルゲンタンパク質の分子量は70〜110 kDaである(但し、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法では測定条件により10 kDa程度上下することがある)。
(2)等電点
等電点電気泳動法(1次元:ドライストリップpI3〜10、2次元:アクリルアミドゲル濃度9〜18%のグラジエントゲル)により測定した等電点は、6.0〜8.0付近である。
本発明のスギ花粉アレルゲンタンパク質は、セリンプロテアーゼであることが好ましい。CPA9タンパク質の全アミノ酸配列を用いてホモロジー検索をしたところ、CPA9タンパク質の配列が、他の植物由来のスブチリシン様セリンプロテアーゼのアミノ酸配列と相同性を有することが明らかになった。CPA9タンパク質と相同性を有するこれらのセリンプロテアーゼとして、例えば、メロン(Cucumis melo)の果汁に含まれ、メロンアレルギーのアレルゲンタンパク質の1つとして知られているCuc m 1(例えばJ. Cuesta-Herranz, et. al., Clin Exp Allergy. 33, 827-33, 2003参照)が挙げられる。セリンプロテアーゼは、一般的に中性付近でタンパク質を切断し、活性部位にセリン残基のあるプロテアーゼである。活性部位にはセリン(Ser)の他にヒスチジン(His)、アスパラギン酸(Asp)などのアミノ酸残基が共通に存在する。これら3残基は一次構造上では隣接していないが、空間的には水素結合によってSer-His-Aspの順に配列している。CPA9タンパク質はスブチリシン様セリンプロテアーゼと相同性が高いばかりでなく、酵素の活性中心を構成する3つのアミノ酸残基Ser、His、およびAspを保存していた。このことから、CPA9タンパク質がセリンプロテアーゼ活性を有する可能性が示された。
本発明のスギ花粉アレルゲンタンパク質は、部分アミノ酸配列として-Gly-His-Gly-Thr-His-Thr-Ser-Ser-Thr-Ala-Ala-の配列を有することが好ましい。このアミノ酸配列は、配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列の197番目のアミノ酸から207番目のアミノ酸までのアミノ酸配列に相当するものである。
(スギ花粉粗抗原の調製)
日本スギ花粉(広島県豊田郡豊町にて採取)80 gに抽出バッファー(20 mM PBS+3 mM EDTA pH 7.6)を3.0 L加えた後、4℃で4時間攪拌した。その後、遠心分離(7,000 rpm、30分間)によって得た上清に対して、終濃度80%飽和になるよう硫酸アンモニウムを加え、4℃で一晩攪拌した。次に、遠心分離(7,000 rpm、30分間)によって沈殿を採取し、Milli-Q水で一晩透析を行った。その後、遠心分離(10,000 rpm、30分間)をすることで得られた上清の凍結乾燥を行い、スギ花粉粗抗原(CJP)を得た。
スギ花粉粗抗原(CJP)200 mgに4 mlのPBS+ジチオトレイトール(DTT)60 mgを加えて懸濁し、PBSで60%に調製したトリクロロ酢酸2 mlを加えた後、氷上で90分間静置した。その後、遠心分離(3,500 rpm、15分間)を行い、沈殿を回収した。この沈殿に冷アセトン10 mlを加えて懸濁し、洗浄した。さらに、遠心分離(3,500 rpm、20分間)を行った後、スピードバックで沈殿を乾燥させた。その沈殿にLysis Buffer(8 M 尿素、2 Mチオ尿素、2% CHAPS、2% SB3-10、1% DTT、0.8% Ampholine)1 mlを加えて懸濁し、超音波破砕によって完全に溶解させた。その後、遠心分離(18,000 rpm、20分間)を行い、その上清を二次元電気泳動用のサンプルに用いた。
二次元電気泳動後のタンパク質を、ブロッティングキット(Hoefer DALT, Amersham Pharmacia Biotech製)を用いて約6時間、60 Vの条件でメンブレンに転写した。その後、メンブレンをPBST(0.1% Tween20/PBS)で洗浄し、ブロッキング液(5% skim milk、1% BSA/PBST)で一晩振とうした。その後、PBSTで洗浄し、ブロッキング液で10倍希釈したスギ花粉症患者血清中で4時間振とうしながらインキュベートした。洗浄後、ブロッキング液で2,500倍希釈した抗ヒトIgE−ビオチン標識(Biosource製)を加え、2時間振とうしながらインキュベートした。PBSTで洗浄した後、ブロッキング液で2,500倍希釈したストレプトアビジン−HRP標識(ZYMED製)と共に、1時間インキュベートした。その後、PBSTで洗浄した後、ECL Westernblotting detection reagents(Amersham Pharmacia Biotech製)と共に5分間インキュベートを行い、X線フィルムに感光させて陽性スポットを検出した。
(スギ葯トータルRNAの精製)
液体窒素中で粉砕したスギ葯5 gを50 ml容量の遠沈管に入れ、4℃のConcertTM Plant RNA Reagent(Invitrogen製)を25 ml加えて懸濁した。遠沈管を横にした状態で、室温で5分間静置した。これを遠心分離(4℃、2,600 × g、5分間)した。その上清をメッシュサイズ100 μmのセルストレーナー(BDファルコン製)で濾過した。濾過した上清10 mlにつき5 M 塩化ナトリウムを2 ml加えて懸濁した。濾過した上清10 mlにつきクロロホルムを6 ml加えて懸濁した。これを遠心分離(4℃、2,600 × g、30分間)した。上清に、上清の0.9倍量のイソプロパノールを加えて懸濁した。これを室温で10分間静置した。次にこれを遠心分離(4℃、2,600 × g、30分間)した。上清を除き、沈殿したトータルRNAに75% エタノールを10 ml加えて軽く懸濁した。これを遠心分離(4℃、2,600 × g、5分間)した。上清を除き、遠沈管のふたを開けた状態で、室温で15分間静置してトータルRNAを乾燥した。これにRNase free water を300 μl加え、トータルRNAを溶解した。得られたトータルRNA溶液は-80℃で保存した。
スギ葯トータルRNAからmRNAの精製には、OligotexTM-dT30 <Super> mRNA Purification kit(TaKaRa製)を用いた。スギ葯トータルRNA 250 μgを含むトータルRNA溶液150 μlを調製した。これに2 × Binding bufferを150 μl、OligotexTM-dT30 <Super>を15 μl加えて懸濁した。70℃で3分間インキュベートし、室温で10分間静置した。これを遠心分離(室温、15,000 rpm、5分間)した。上清を除き、沈殿したOligotexTM-dT30 <Super>にWash bufferを350 μl加えて懸濁した。これをスピンカラムセットのカップに移し、遠心分離(室温、15,000 rpm、30秒間)した。カップを新しいスピンカラム用遠心チューブに移した。カップ内のOligotexTM-dT30 <Super>にWash bufferを350 μl加えて懸濁した。これを遠心分離(室温、15,000 rpm、30秒間)した。カップを新しいスピンカラム用遠心チューブに移した。(1)カップ内のOligotexTM-dT30 <Super>に70℃のRNase free waterを30 μl加えて懸濁し、遠心分離(室温、15,000 rpm、30秒間)して、mRNA溶液を回収した。(1)の操作をさらに2回行った。一連のmRNA精製操作をさらに5回行い、mRNA溶液を約500 μl以上得た。
スギ葯mRNAからの5'-RACE用および3'-RACE用cDNAの合成には、BD SMARTTM RACE cDNA Amplification Kit(BD Biosciences製)を用いた。5'-RACE用cDNAの合成は、0.5 ml容量のマイクロチューブに、1 μg/μl mRNA溶液を1 μl、5'-CDS primerを1 μl、BD SMART II A oligoを1 μl、RNase free waterを2 μl加えて懸濁した。一方、3'-RACE用cDNAの合成は、0.5 ml容量のマイクロチューブに、1 μg/μl mRNA溶液を1 μl、3'-CDS primer Aを1 μl、RNase free waterを3 μl加えて懸濁した。70℃で2分間インキュベートし、氷上で2分間静置した。各反応液に、5 × First-Strand Bufferを2 μl、20 mM ジチオトレイトールを1 μl、dNTP mixを1 μl、BD PowerScript Reverse Transcriptaseを1 μl加えて懸濁した。42℃で90分間インキュベートした。反応液にTricine-EDTA Bufferを250 μl加えて懸濁した。これを72℃で7分間インキュベートした。得られたcDNA溶液は-30℃で保存した。
質量分析で得られたCPA9の内部アミノ酸配列-Gly-His-Gly-Thr-His-Thr-Ser-Ser-Thr-Ala-Ala-をもとに、5'-RACE用の縮重プライマーを作製し、5'-RACE法を用いてCPA9の5'-側未知遺伝子領域の取得を行った。まず、縮重プライマー 5'-GCI GTI SWI SWI GTR TGI GTN CC-3'とUniversal Primer A Mix(BD SMART TMRACE cDNA Amplification Kit付属プライマー)を用いて、5'-RACE用スギ葯cDNAをテンプレートとした5'-RACEを行った。RACE反応はBD AdvantageTM 2 PCR Kit(BD Biosciences製)を用いた。次に、得られた5'-RACE反応液をテンプレートとして、プライマー 5'-SWI SWI GTR TGI GTI CCR TGN CC-3'とNested Universal Primer A(BD SMARTTMRACE cDNA Amplification Kit付属プライマー)を用いたNested PCRを行った。反応液をアガロース電気泳動し、増幅した約700 bpの5'-側未知遺伝子領域を、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いてゲルから精製した。これをDNA Ligation Kit ver. 2.1(TaKaRa製)を用いてpGEM-T Easy Vector(Promega製)に連結し、Competent high E.coli DH5α(TOYOBO製)を形質転換した。得られた形質転換体から、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN製)を用いてプラスミドを調製した。調製したプラスミドをテンプレートとして、BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems製)を用いてサイクル反応を行った。反応液をエタノール沈殿法で精製し、DNAシークエンサー 3100-Avant(Applied Biosystems製)を用いて、CPA9の5'-側未知遺伝子領域の塩基配列を解析した。
GenBankデータベースを用いたFASTA及びBLAST検索によって、得られたCPA9の遺伝子およびタンパク質の配列について相同性検索を行った。CPA9タンパク質のアミノ酸配列と他の植物由来セリンプロテアーゼとの相同性について調査した結果を、図2に示す。*は一致したアミノ酸残基を示す。CPA9は、Arabidopsis thaliana セリンプロテアーゼ(Accession number NP_569048)とアミノ酸レベルで59.0%、DNAレベルで60.0%、Lycopersicon esculentum セリンプロテアーゼ(Accession number CAA67429)とアミノ酸レベルで55.2%、DNAレベルで57.9%の同一性を示した。以上のようにCPA9が他種のスブチリシン様セリンプロテアーゼと高い相同性を保持していることが確認された。
組換え型CPA9(rCPA9)タンパク質を大腸菌系(pET System発現系)で発現させて、ウェスタンブロットにより発現を確認した。CPA9タンパク質をコードするcDNAを鋳型として、DNA増幅酵素であるKOD-plus-DNA Polymerase(TOYOBO製)を用いたPCRによって増幅し、両末端にBamH Iサイトを有するCPA9遺伝子断片を得た。この増幅物を、BamH I(TaKaRa製)で制限酵素処理し、同様にBamH Iで処理した大腸菌発現用ベクターpET21(a)(Merck製)中に挿入し、CPA9/pET21(a)を得た。挿入したCPA9遺伝子の配列はDNAシークエンサー 3100-Avant(Applied Biosystems製)によって確認した。CPA9/pET21(a)を用いて、BL21(DE3) Competent Cells(Merck製)を形質転換した。タンパク質の発現は、形質転換したBL21(DE3)株を5 mlのLB培地(カルベニシリン:50 μg/ml)に植菌し、37℃、6時間、300 rpmで前培養を行った。その培養液を1 ml分取し、2×YT培地(カルベニシリン:50 μg/ml)を加えて全体量を100 mlにし、37℃、300 rpmで本培養を行った。数時間後、培地のO.D.600が0.4〜0.6になった時点で、1 mMになるようにIPTG(ナカライテスク製)を添加し、37℃、250 rpm、3時間培養し、rCPA9タンパク質を発現させた。rCPA9タンパク質は、C末端にポリヒスチジン(6×ヒスチジン残基)が付加したヒスチジンタグ融合タンパク質として発現させた。その後、培養液を4℃、6,300 g、10分間遠心して大腸菌を回収した。その大腸菌を1 mM PMSF(和光純薬製)、1 μg/ml E-64(和光純薬製)、1 mM DTT(和光純薬製)を含む菌体破砕用緩衝液[PBS(pH7.6)]5 mlに懸濁し、氷冷しながら、超音波破砕を20秒×3回行った。その液を4℃、14,000 g、20分間遠心し、細胞内の可溶性画分と不溶性画分に分けた。
組換え型CPA9(rCPA9)タンパク質を精製し、ウェスタンブロット解析により確認した。実施例4にて洗浄した不溶性画分を、6 M グアニジン塩酸溶液[50 mM Tris-HCl(pH 8.5)、10 mM DTT]を添加し、37℃で1時間還元、可溶化した。その溶液を、0.2 μmのフィルターでろ過を行い、溶液から不溶物を除去した。rCPA9タンパク質のC末端に付加したヒスチジンタグを利用し、HiTrap HPカラム(Amersham Biosciences製)による精製を行った。可溶化したrCPA9タンパク質をHiTrap HPカラムに供してカラムに吸着させた。6 M グアニジン塩酸溶液(50 mM イミダゾール)で非特異的にカラムに吸着したタンパク質を洗浄した。その後、6 M グアニジン塩酸溶液のイミダゾールの濃度を500 mMへスッテプワイズグラジエントし、rCPA9タンパク質をカラムから溶出させた。得られた画分を、SDS-PAGE/ウェスタンブロット解析し、rCPA9タンパク質の溶出画分を確認した(図6レーン5)。
CPA9タンパク質のN末端にグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)を融合した組換え融合タンパク質GST-CPA9(rGST-CPA9)の発現を、大腸菌コールドショック発現系を用いて行った。GST遺伝子断片は、pET42(a)(Merck製)をNde I(TaKaRa製)とBamH I(TaKaRa製)で制限酵素処理した後、アガロースゲル電気泳動に供した後、エチジウムブロミドで染色し、302 nmのUVを照射しながら、GST遺伝子断片のバンドごとゲルを切り出した。そのゲルからQIAquickTM Gel Extraction KIT(QIAGEN製)を用いてGST遺伝子断片を抽出した。同様にNdeIとBamH Iで処理した大腸菌発現用ベクターpCold IV(TaKaRa製)中に、GST遺伝子断片を挿入し、GST/pCold IVを得た。GST/pCold IVをBamH Iで制限酵素処理した後、同様にBamH Iで処理したCPA9遺伝子断片を挿入し、GST-CPA9/pCold IVを得た。挿入したGST-CPA9遺伝子の配列はDNAシークエンサー 3100-Avant(Applied Biosystems製)によって確認した。GST-CPA9/pCold IVを用いて、BL21(DE3) Competent Cells(Merck製)を形質転換した。タンパク質の発現は、形質転換したBL21(DE3)株を10 mlのLB培地(カルベニシリン:50 μg/ml)に植菌し、37℃、300 rpm、6時間で前培養を行った。その培養液を分取し、SB培地(カルベニシリン:50 μg/ml)を加えて全体量を1 Lにし、37℃、250 rpmで本培養を行った。数時間後、培地のO.D.600が0.4〜0.6になった時点で、15℃、30分間静置した。その後、1 mMになるようにIPTG(ナカライテスク製)を添加し、15℃、300 rpm、12時間培養し、rGST-CPA9タンパク質を発現させた。rGST-CPA9タンパク質は、rCPA9タンパク質のN末端にrGSTタンパク質、rGSTタンパク質とrCPA9タンパク質C末端にポリヒスチジン(6×ヒスチジン残基)が付加した融合タンパク質として発現させた。その後、培養液を4℃、6,300 g、10分間遠心して大腸菌を回収した。その大腸菌を1 mM PMSF(和光純薬製)、1 μg/ml E-64(和光純薬製)、1 mM DTT(和光純薬製)を含む菌体破砕用緩衝液[PBS(pH7.6)]5 mlに懸濁し、氷冷しながら、超音波破砕を20秒×3回行った。その液を14,000 g、20分間遠心し、細胞内の可溶性画分と不溶性画分に分けた。
実施例6にて発現させた組換え型GST-CPA9タンパク質(rGST-CPA9タンパク質)を、菌体内可溶性画分から精製し、ウェスタンブロット解析により確認した。rGSTタンパク質とrCPA9タンパク質のC末端に付加したヒスチジンタグを利用し、HiTrap FFカラム(Amersham Biosciences製)による精製を行った。菌体内可溶性画分をHiTrap FFカラムに供してカラムに吸着させ、PBS緩衝液で非特異的にカラムに吸着したタンパク質を洗浄した。その後、PBS緩衝液中のイミダゾールの濃度を10 mM〜500 mMへグラジエントし、rGST-CPA9タンパク質をカラムから溶出させた。得られた画分を、SDS-PAGE/ウェスタンブロット解析し、rGST-CPA9タンパク質の溶出画分を確認した(図8レーン3)。
二次元電気泳動を用いて、スギ花粉粗抗原(CJP)から分離したnCPA9タンパク質について、スギ花粉症患者血清との反応を調べた。実施例1と同様の方法で、CJPの調製および二次元電気泳動を行い、nCPA9タンパク質を分離した。スギ花粉症患者血清40検体それぞれについて、実施例1と同様の方法でウェスタンブロッティングを行い、nCPA9タンパク質との反応を調べた。比較例として、既知の主要アレルゲンCry j 1およびCry j 2との反応も調べた。その結果を表1に示す。
大腸菌を宿主とした実施例4の方法(pET System発現系)で発現し、実施例5の方法で精製したrCPA9タンパク質について、スギ花粉症患者血清との反応を調べた。まず、スギ花粉症患者血清5検体それぞれについて、実施例1と同様の方法でウェスタンブロッティングを行い、rCPA9タンパク質との反応を調べた。比較例として、既知の主要アレルゲンCry j 1、Cry j 2およびBSAとの反応も調べた。その結果を図9に示す。
配列番号2:CPA9タンパク質をコードするcDNAの塩基配列を示す。
配列番号3:CPA9タンパク質の部分アミノ酸配列を示す。
配列番号4:プライマー用の設計されたポリヌクレオチドの塩基配列を示す。
配列番号5:プライマー用の設計されたポリヌクレオチドの塩基配列を示す。
配列番号6:プライマー用の設計されたポリヌクレオチドの塩基配列を示す。
Claims (16)
- スギ花粉由来であって、以下の(a)および(b)の性質を有し、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるスギ花粉アレルゲンタンパク質。
(a)分子量70〜110 kDa(SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法)
(b)等電点6.0〜8.0付近(等電点電気泳動法) - セリンプロテアーゼである、請求項1に記載のスギ花粉アレルゲンタンパク質。
- スギ花粉粗抗原から、アフィニティー精製、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、遠心分離、濃縮、透析および電気泳動から選ばれる少なくとも1種の方法によって得られることを特徴とする請求項1または2に記載のスギ花粉アレルゲンタンパク質。
- スギ花粉症患者由来のIgEへの結合能を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のスギ花粉アレルゲンタンパク質。
- 配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質。
- 請求項1から5のいずれか1項に記載のタンパク質をコードする遺伝子。
- 配列番号2に記載の塩基配列からなるDNAからなる遺伝子。
- スギ花粉またはスギ雄花由来である請求項7に記載の遺伝子。
- 請求項7または8に記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
- 請求項9の組み換えベクターによって形質転換された形質転換体。
- 請求項10記載の形質転換体を培養し、その培養物からアレルゲン性を有するタンパク質を回収することを特徴とする、スギ花粉アレルゲンタンパク質の製造方法。
- 請求項7または8に記載の遺伝子又は請求項9記載の組換えベクターを用いて、スギ花粉アレルゲンタンパク質を無細胞発現系により発現させることを特徴とする、スギ花粉アレルゲンタンパク質の製造方法。
- 請求項11または12に記載の製造方法により製造されたスギ花粉アレルゲンタンパク質。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のタンパク質に特異的に反応するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のタンパク質を含むことを特徴とする花粉症診断用試薬。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のタンパク質を含むことを特徴とする減感作用の治療薬。
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