JP5108423B2 - アルカリ電池 - Google Patents

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Description

本発明は、負極端子に誤接続防止用の構造を設けたアルカリ電池に関するものである。
筒形のアルカリ電池を複数個直列に接続して使用する場合、複数個の電池を縦列状態で収容する電池ホルダ(あるいは電池ボックス)がよく使用される。この場合、一部の電池が逆向きに収容されることによる誤接続が生じやすい。そこで、負極端子に誤接続防止用の構造を設けたアルカリ電池が従来提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、ニッケルめっき鋼板を成形してなる負極端子面の周縁部に、紫外線硬化型樹脂あるいはポリエステル樹脂からなる複数の樹脂突起部を接着した構造などがよく知られている。その結果、負極端子同士の誤接続が形状的に防止されるようになっている。
ところで、上記構造のアルカリ電池の場合、ニッケルめっき鋼板に対する密着力が弱いと、電池製造プロセスにおける機械的ストレス等により、負極端子面から樹脂突起部が剥離することがある。特に長期間保管したニッケルめっき鋼板を材料として成形した負極端子を用いたとき、あるいは成形後に長期間保管した負極端子を用いたときなどは、ニッケルめっき鋼板が大気に曝されることで、表層にニッケルの酸化皮膜が形成される。その結果、樹脂突起部との密着性が低下して樹脂突起部がいっそう剥離しやすくなるばかりでなく、接触抵抗の増大にもつながってしまう。
このような事情の下、ニッケルめっき鋼板の表面にFe−Ni(鉄−ニッケル)合金層を形成してなるアニール材で負極端子を作製し、その合金層上に樹脂突起部を接着した構造のアルカリ電池が提案されている(例えば、特許文献2参照)。なお、この合金層は、ニッケルめっき鋼板を約800℃の高温で熱処理(アニール)することにより形成することができる。
特開平09−161762号公報 特開2004−134268号公報
アニール材で負極端子を作製する従来技術によると、負極端子の作製当初はある程度高い密着力及びある程度低い接触抵抗を実現することができる。しかしながら、アニール材におけるFe−Ni合金層はあまり安定的なものではなく酸化しやすい(即ち経時劣化しやすい)ため、保管時間の経過に伴ってやはりニッケル酸化皮膜が形成され、これらの優れた性能を長期間にわたって維持できなくなる。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、長期間保管した場合であっても、負極端子と樹脂突起部との密着性低下、負極端子の接触抵抗増大を回避することができるアルカリ電池を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、有底筒状の正極缶内に正極合剤、セパレータ、ゲル状負極合剤が装填されるとともに、その正極缶の開口が負極端子及び絶縁封口材により封口され、前記正極缶の底部に凸状の正極端子部が形成され、前記負極端子の少なくとも一部分に平坦な負極端子面が形成されているアルカリ電池において、母材の表面にニッケルめっき層が形成され、さらにそのニッケルめっき層の表面に前記ニッケルめっき層よりも厚さの薄いアルミニウム酸化物皮膜が形成された材料を用いて前記負極端子が構成され、前記負極端子面の表面に存在するアルミニウム酸化物皮膜上に複数の樹脂突起部が接着されるとともに、前記アルミニウム酸化物皮膜は、アルミニウム化合物を含有するアルカリ水溶液に浸漬または前記アルカリ水溶液を塗布して化学処理を施すことにより形成されたものであって、その厚さが0.5nm以上1nm以下であることをその要旨とする。
従って、請求項1に記載の発明によると、負極端子におけるニッケルめっき層がアルミニウム酸化物皮膜で保護されていることから、ニッケルめっき層が大気に直接曝されなくなり、長期間保管した場合であってもニッケルの酸化皮膜の形成や増加が阻害される。また、そもそもアルミニウム酸化物皮膜は、非酸化物皮膜に比べて安定的なものであり、それ自身が経時変化しにくいという好ましい性質を有している。さらに、アルミニウム酸化物皮膜はニッケル及び樹脂の両方に対する親和性(具体的には濡れ性)がよく、このことが負極端子と樹脂突起部との密着性向上に寄与している。しかも、このアルミニウム酸化物皮膜はニッケルめっき層よりも薄いため、ニッケルめっき層を被覆したとしても本来のニッケルめっき層の性質が損なわれにくく、このことが負極端子の接触抵抗の低減に寄与している。
以上述べたように請求項1に記載の発明によれば、長期間保管した場合であっても、負極端子と樹脂突起部との密着性低下を回避し、かつ、負極端子の接触抵抗増大を回避することができる。
また、本発明によると、前記アルミニウム酸化物皮膜が化学処理を施すことにより形成されたものであることから、薄くて均一なアルミニウム酸化物皮膜を形成となるため、負極端子の接触抵抗増大をより確実に回避することができる。また、このようなアルミニウム酸化物皮膜は、大掛かりな装置を用いることなく比較的簡単に形成可能なため、コスト性や生産性の低下も伴わない。
さらに、本発明によると、前記アルミニウム酸化物皮膜の厚さが0.5nm以上1nm以下であることから、負極端子の接触抵抗低減を図りつつニッケルめっき層を十分に保護することができる。ちなみに、当該厚さが0.5nm未満であると、アルミニウム酸化物皮膜が薄くなりすぎてしまい、ニッケルめっき層を十分に保護できず、ニッケルの酸化に伴う経時劣化が回避しにくくなる。一方、当該厚さが1nm超であると、ニッケルめっき層を十分に保護できる反面、アルミニウム酸化物皮膜が厚くなりすぎてしまい、負極端子の接触抵抗の低減にとって不利になる。
以上詳述したように、請求項に記載の発明によると、長期間保管した場合であっても、負極端子と樹脂突起部との密着性低下、負極端子の接触抵抗増大を回避することができるアルカリ電池を提供することができる。
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図1〜図3に基づき詳細に説明する。なお、図1は本実施形態のアルカリ電池10を示す斜視図である。図2(a)はアルカリ電池10の概略断面図であり、図2(b)はその要部拡大断面図である。図3(a)〜(d)はアルカリ電池10の負極端子21の製造手順を説明するための要部拡大断面図である。
図1,図2に示されるように、本実施形態の筒型のアルカリ電池10を構成する正極缶11は、正極集電体を兼ねる有底円筒状の電池用金属部品であり、ニッケルめっき鋼板を深絞りプレス加工することで形成される。正極缶11の内部空間には、発電要素(図2に示す正極合剤13、セパレータ14及びゲル状負極合剤15)が装填可能となっている。正極缶11の底部中央には凸状の正極端子部12が形成されている。このような正極缶11の胴部外周面には、絶縁性の付与及び意匠性の向上等のために、図示しない外装ラベルが巻き付けられている。
正極缶11の内部には、中空円筒状に成形された複数個の正極合剤13が縦積みかつ同心状に圧入装填されている。発電要素の一部をなす正極合剤13は、二酸化マンガンあるいはオキシ水酸化ニッケル等の酸化剤を含む環状(または管状)の成形合剤である。これら正極合剤13の内側には、ビニロン繊維やレーヨン繊維を基材とした混抄紙からなる有底円筒状のセパレータ14が挿入されている。セパレータ14及び正極合剤13中には、強いアルカリ性を示す電解液が浸潤されている。セパレータ14の中空部には、亜鉛粉、ゲル化剤、アルカリ電解液などを混合してなるゲル状負極合剤15が充填されている。ゲル化剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸及びその塩類、アルギン酸ソーダ、エーテル化デンプン等が好適である。アルカリ電解液としては、例えば、水酸化カリウム水溶液などが好適である。
正極缶11の開口部内面側には、複数の部品を組み付けてなる封口体が装着されかつカシメ付けられ、その結果として正極缶11が液密的に封口されている。この封口体は、負極端子21と、絶縁封口材としての封口ガスケット24と、負極集電子26とによって構成されている。
封口ガスケット24は、例えばポリプロピレン樹脂などといったポリオレフィン系のような合成樹脂材料からなる射出成形部品である。ポリプロピレン樹脂の代わりにポリアミド樹脂等のようなアミド系樹脂を用いてもよい。この封口ガスケット24は中央部にボス部25を備えており、そのボス部25を貫通するボス孔内には負極集電子26が挿通可能となっている。
負極端子21は、正極缶11とともにアルカリ電池10の外郭を構成する電池用金属部品であって、略円盤状に形成されている。この負極端子21の外側面の中央部には、平坦な負極端子面22が形成されている。
負極集電子26は導電性金属からなる断面円形状の棒材であって、その先端部がゲル状負極合剤15中に挿入配置されるようになっている。一方、負極集電子26の基端部は、ボス部25のボス孔に挿通されるとともに、負極端子21の内面側中央部に対してスポット溶接等により固着されている。
そして、図1,図2に示されるように、負極端子21の外側面、即ち負極端子面22の周縁部には、複数(本実施形態では3つ)の樹脂突起部31が配置されかつ接着固定されている。各樹脂突起部31は、それぞれ正極端子部12の高さよりも低い突起状をなしている。これらの樹脂突起部31により、負極端子21同士の誤接続が形状的に防止されるようになっている。
本実施形態の負極端子21は、正極缶11用の材料とは若干異なる材料を用いて構成され、具体的には、鉄を主体とする母材41の表面及び裏面にニッケルめっき層42が形成され、さらにそのニッケルめっき層42の表面に薄いアルミニウム酸化物皮膜43が形成されたニッケルめっき鋼板M1を用いて構成されている。従って、複数の樹脂突起部31は、ニッケルめっき層42に対して直接接着されているわけではなく、アルミニウム酸化物皮膜43上に接着されている。
次に、負極端子21の製造手順について簡単に述べる。
まず、鉄を主体とする母材41の表面及び裏面にニッケルめっき層42が形成された従来周知のニッケルめっき鋼板M1を用意する(図3(a)参照)。ニッケルめっき層42の厚さは特に限定されないが、例えば0.1μm〜3μm程度に設定され、ここでは1.0μmに設定されている。ニッケルめっき層42の表面粗さRaも特に限定されないが、例えば0.15μm〜0.35μm程度に設定され、ここでは約0.25μmに設定されている。
次に、このニッケルめっき鋼板M1の両面に対し、所定の化学処理を施し、ニッケルめっき層42よりも厚さのかなり薄いアルミニウム酸化物皮膜43を形成する(図3(b)参照)。本実施形態ではアルミニウム酸化物皮膜43の厚さが、ニッケルめっき層42の厚さの100分の1以下に設定されることがよく、具体的には0.5nm以上1nm以下となるように設定されている。なお、このとき用いる化学処理剤としては、例えばアルミニウム化合物を含有するアルカリ水溶液が好適であり、具体的には、ほう酸塩4.5重量%、水酸化ナトリウム3.0重量%、アルミニウム化合物4.5重量%、イオン交換水88.0重量%からなる水溶液を用いている。また、このような組成の化学処理剤を用いた場合、処理剤濃度を1mL/L〜500mL/Lとし、処理温度を20℃〜50℃とし、処理時間を0.1分〜10分とすることがよい。化学処理剤の処理方法としては特に限定されず任意であるが、本実施形態ではニッケルめっき鋼板M1を化学処理剤中に浸漬するという手法(いわゆるディップコート法)を採用している。勿論、このような手法以外にも、例えば、スプレーコート法、カーテンコート法、ロールコート法などといった他の従来周知の手法を採用することも可能である。
次に、図3(b)のニッケルめっき鋼板M1を材料とし、金型によるプレス加工を行うことにより、所定形状の負極端子21を作製する(図3(c)参照)。そして最後に、負極端子21の負極端子面22周縁部における複数箇所に、紫外線硬化型樹脂等を塗布あるいは付着させて硬化させることにより、凸状の樹脂突起部31を形成する(図3(d)参照)。なお、以上の手順を経てアルミニウム酸化物皮膜43上に接着固定された樹脂突起部31は、良好かつ安定的な接着性を有している。例えば、電池ホルダへの出し入れなどによる機械的荷重が繰返し加えられても、剥離することなく誤接続防止機能を確実に維持することができる。
以下、本発明の実施形態をより具体的した実施例を以下に示す。
[実施例1]
(金属製試験片の準備)
実施例1では、複数種類の金属製試験片を準備した。比較例1(従来品)の金属製試験片として、化学処理を施していない通常のニッケルめっき鋼板、つまり鉄を主体とする母材の両面にニッケルめっき層が形成された鋼板をカットしたものを用いた。また、比較例2の金属製試験片(アニール品)として、ニッケルめっき鋼板の表面にFe−Ni合金層が形成された鋼板をカットしたものを用いた。そして、本発明の金属製試験片(化学処理品)として、上記実施形態で示したように、化学処理によって最表層に薄いアルミニウム酸化物皮膜43が形成されたニッケルめっき鋼板M1をカットしたものを用いた。そして、これらを対象として下記の3項目(引張強度、濡れ性、接触抵抗値)についての測定を行った。測定は、初期段階(保管0ヶ月後)のみならず、長期間保存した段階(保管6ヶ月後)にも行うこととした。
(引張強度の測定方法)
各々の金属製試験片に直径約4mmの大きさとなるように紫外線硬化型樹脂を塗布して硬化させた。この樹脂は樹脂突起部31の形成に使用する樹脂材料と同等のものである。そして、引張試験機(オートグラフ)を用いてその樹脂の引張強度を測定した。より具体的には以下のように実施した。まず、M4サイズのワッシャ(JIS規格で内径が4.3mm)を金属製試験片上に載置した後、ワッシャの孔内に紫外線硬化型樹脂を入れて硬化させた。この状態でワッシャに引掛用治具を引っ掛けるようにして取り付け、当該治具をオートグラフにて引っ張り、ワッシャが外れたときの測定値(即ち引張強度)を測定するようにした。
(濡れ性の測定方法)
金属製試験片上に紫外線硬化型樹脂を塗布し、この状態での樹脂の高さ及び半径を測定した。そして、「樹脂の高さ÷半径」の値を算出し、これを樹脂の濡れ性と定義した。なお、この値が大きいということは、樹脂が金属表面に弾かれるため濡れにくく、金属と樹脂との密着性が悪い、ということを示す。
(接触抵抗値の測定方法)
金端子を用いた4端子法により常法に従って表面接触抵抗の測定を行った。具体的には、測定装置として電気接点シミュレータ(株式会社山崎精機研究所社製、商品名「CRS−113−AU」)を用いたときの測定値を採用した。
Figure 0005108423
表1から明らかなように、初期段階における引張強度については、本発明及び比較例2のいずれもが比較例1より好適な値を示したが、本発明が格段に高い値を示した。初期段階における濡れ性については、本発明及び比較例2が同様の結果を示したのに対し、比較的1は明らかにそれらよりも悪い結果を示した。初期段階の接触抵抗値に関しては比較例1が最も低い値を示し、次いで本発明が低い値を示し、比較例2が最も高い値を示した。このことからも分かるように、初期段階において本発明は、従来品である比較例1に比べて若干接触抵抗値が高くなるものの、引張強度及び濡れ性が向上するため、樹脂と金属との密着性に優れたものとなることが実証された。
さらに、6ヶ月経過後における引張強度についても同様に、本発明及び比較例2のいずれもが比較例1より好適な値を示したが、本発明が格段に高い値を示した。しかも、本発明では引張強度の経時劣化が殆ど認められなかったものの、比較例1及び比較例2では明らかに経時劣化が認められた。6ヶ月経過後における濡れ性については、本発明が最も良く、次いで比較例1が良く、比較例2が最も
も悪かった。つまり、比較例2では濡れ性の経時劣化の度合いが大きかったのに対して、本発明では濡れ性の経時劣化の度合いが小さかった。6ヶ月経過後における接触抵抗値については、比較例1及び本発明が同程度の値を示したのに対し、比較例2がかなり大きな値を示した。つまり、比較例2では接触抵抗値の経時劣化の度合いが大きかったのに対して、本発明では接触抵抗値の経時劣化の度合いが小さかった。
[実施例2]
実施例2では、実施例1で用いたのと同じニッケルめっき鋼板M1、即ち化学処理によって最表層に薄いアルミニウム酸化物皮膜43が形成されたニッケルめっき鋼板M1をプレス加工して実際に負極端子21を作製した。そして、この負極端子21の負極端子面22周縁部における3箇所に、紫外線硬化型樹脂を点状に塗布した。その後、負極端子面22に所定時間紫外線を照射して、前記樹脂を光硬化させて凸状の樹脂突起部31(外径1.8mm、高さ0.2mm)を形成した。樹脂突起部31の形成後、さらに封口体を作製し、正極缶11への発電要素の装填後、正極缶11の開口部をその封口体で封口することにより、図1,図2に示すようなアルカリ電池10を500000個製造した。また、これに対する比較のために、化学処理を施していない通常のニッケルめっき鋼板をプレス加工して実際に負極端子21を作製し、これを用いて同様の手法によりアルカリ電池10を500000個製造した。
そして、一連の製造工程を経ることで受ける機械的ストレスにより樹脂突起部31に剥離が生じた場合、その数をカウントするとともに、剥離の発生率を計算した。その結果を表2に示す。
Figure 0005108423
表2に示すように、本発明の負極端子21を用いたアルカリ電池10では樹脂剥離数が0個であったのに対し、比較例1の負極端子21を用いたアルカリ電池10では樹脂剥離数が11個となった。
[結論]
本実施形態のアルカリ電池10によると、負極端子21におけるニッケルめっき層42がアルミニウム酸化物皮膜43で保護されていることから、ニッケルめっき層42が大気に直接曝されなくなり、長期間保管した場合であってもニッケルの酸化皮膜の形成や増加が阻害される。また、そもそもアルミニウム酸化物皮膜43は、非酸化物皮膜に比べて安定的なものであり、それ自身が経時変化しにくいという好ましい性質を有している。さらに、アルミニウム酸化物皮膜43はニッケル及び樹脂の両方に対する親和性(具体的には濡れ性)がよく、このことが負極端子21と樹脂突起部31との密着性向上に寄与している。しかも、このアルミニウム酸化物皮膜43はニッケルめっき層42よりも薄いため、ニッケルめっき層42を被覆したとしても本来のニッケルめっき層42の性質が損なわれにくく、このことが負極端子21の接触抵抗の低減に寄与している。
以上のことから、このアルカリ電池10によれば、長期間保管した場合であっても、負極端子21と樹脂突起部31との密着性低下を回避し、かつ、負極端子21の接触抵抗増大を回避することができる。
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、両面にアルミニウム酸化物皮膜43が形成されてなるニッケルめっき鋼板M1を用いて負極端子21を作製したが、樹脂突起部31が設けられる片面にのみアルミニウム酸化物皮膜43が形成されてなるニッケルめっき鋼板M1を用いて負極端子21を作製してもよい。
・上記実施形態では、ニッケルめっき鋼板M1に化学処理を施してアルミニウム酸化物皮膜43を形成し、次にプレス加工を行って負極端子21を作製した後、樹脂突起部31を形成するという製造手順を採用したが、勿論これに限定されることはない。例えば、化学処理を施してアルミニウム酸化物皮膜43を形成した後、まず樹脂突起部31を形成し、その後でプレス成形を行ってもよい。あるいは、化学処理を施していないニッケルめっき鋼板M1をプレス加工して負極端子21をあらかじめ作製し、その負極端子21に化学処理を施してアルミニウム酸化物皮膜43を形成した後、樹脂突起部31を形成してもよい。
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)母材の表面にニッケルめっき層が形成されたアルカリ電池用ニッケルめっき鋼板を準備する準備工程と、前記ニッケルめっき鋼板に化学処理を施すことにより、前記ニッケルめっき層の表面に前記ニッケルめっき層よりも厚さの薄いアルミニウム酸化物皮膜を形成する化学処理工程と、前記化学処理工程後のニッケルめっき鋼板を金型でプレス成形して所定形状の負極端子とする成形工程と、前記成形工程後の前記負極端子の負極端子面の周縁部に、複数の樹脂突起部を形成する樹脂突起部形成工程とを含むアルカリ電池用負極端子の製造方法。
(2)上記(1)において、前記ニッケルめっき層の厚さが0.1μm以上3μm以下であり、前記アルミニウム酸化物皮膜の厚さが前記ニッケルめっき層の厚さの100分の1以下であること。
(3)上記(1)または(2)において、前記アルミニウム酸化物皮膜の厚さが0.5nm以上1nm以下であること。
(4)上記(1)乃至(3)のいずれか1項において、前記化学処理工程において使用する化学処理剤が、アルミニウム化合物を含有するアルカリ水溶液であること。
(5)上記(1)乃至(4)のいずれか1項において、前記化学処理工程において使用する化学処理剤が、ほう酸塩、水酸化ナトリウム及びアルミニウム化合物を含有するアルカリ水溶液であること。
(6)上記(4)または(5)において、前記化学処理工程では、前記化学処理剤の濃度を1mL/L〜500mL/Lとし、処理温度を20℃〜50℃とし、処理時間を0.1分〜10分とすること。
本発明を具体化した一実施形態のアルカリ電池を示す斜視図。 (a)は実施形態のアルカリ電池の概略断面図、(b)はその要部拡大断面図。 (a)〜(d)は実施形態のアルカリ電池の負極端子の製造手順を説明するための要部拡大断面図。
符号の説明
10…アルカリ電池
11…正極缶
12…正極端子部
13…正極合剤
14…セパレータ
15…ゲル状負極合剤
21…負極端子
22…負極端子面
24…絶縁封口材としての封口ガスケット
31…樹脂突起部
41…母材
42…ニッケルめっき層
43…アルミニウム酸化物皮膜
M1…アルカリ電池用ニッケルめっき鋼板

Claims (1)

  1. 有底筒状の正極缶内に正極合剤、セパレータ、ゲル状負極合剤が装填されるとともに、その正極缶の開口が負極端子及び絶縁封口材により封口され、前記正極缶の底部に凸状の正極端子部が形成され、前記負極端子の少なくとも一部分に平坦な負極端子面が形成されているアルカリ電池において、
    母材の表面にニッケルめっき層が形成され、さらにそのニッケルめっき層の表面に前記ニッケルめっき層よりも厚さの薄いアルミニウム酸化物皮膜が形成された材料を用いて前記負極端子が構成され、前記負極端子面の表面に存在するアルミニウム酸化物皮膜上に複数の樹脂突起部が接着されるとともに、
    前記アルミニウム酸化物皮膜は、アルミニウム化合物を含有するアルカリ水溶液に浸漬または前記アルカリ水溶液を塗布して化学処理を施すことにより形成されたものであって、その厚さが0.5nm以上1nm以下である
    ことを特徴とするアルカリ電池。
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