JP5107942B2 - 鉄系合金の半凝固スラリーの製造方法及び製造装置 - Google Patents
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Description
金属材料を固液共存状態にする方法としては、半凝固法(レオメタル法)と半溶融法(チクソメタル法)がある。前記半凝固法を用いた成形(加工)法としては、例えばレオキャャスト法があり、また前記半溶融法を用いた成形(加工)法としては、例えばチクソチャスト法がある。
このように金属を半凝固状態或いは半溶融状態で加工することで、一般的には結晶粒の微細化や均質化が図れる利点がある。
半凝固成形法と半溶融成形法とを一般的に比較すると、大量生産を前提とした場合には半凝固成形法がエネルギーのロスが少なく有利である。しかし小規模ロットへの対応を考えた場合には、必要な時に必要な数量だけ処理できる半溶融成形法の方がエネルギー消費が少なくなる場合もあり、場合に応じて半凝固成形法と半溶融成形法とを使い分けるのが好ましいと言える。
半凝固成形法による金属の半凝固スラリーの製造方法としては、冷却中に機械攪拌を加えるようにした半凝固金属の製造法(特許文献1)、傾斜冷却板を用いるレオキャスト鋳造法及びレオキャスト鋳造装置(特許文献2)、電磁攪拌を加える固液共存状態金属スラリの製造装置(特許文献3)等が提供されている。
また上記特許文献2による傾斜冷却板を用いるようにしたものでは、同様に高融点材料の凝固に用いる場合には傾斜冷却板が劣化し易い問題がある。また傾斜冷却板に接触させる溶融金属が凝固付着をおこし易く、よって傾斜冷却板に対して微妙で繊細な温度管理や操業管理を必要とする問題がある。
また上記特許文献3による電磁攪拌加えるようにしたものでは、実質的な攪拌を得るには溶湯の粘性を低く抑える必要があるため、固相率が20%程度以下の低固相率のスラリーしか得られない。従って、そのような低固相率のスラリーでは、例えダイカスト等の方法で成形しても、鋳巣等の欠陥が多くなる問題がある。
本発明の鉄系合金の半凝固スラリーの製造方法は、鉄系合金の溶湯を半凝固スラリー生成容器内に注湯して冷却することで、晶出固相と残留液相とからなる半凝固スラリーを得る鉄系合金の半凝固スラリーの製造方法であって、共晶組成未満の鉄系合金材料を用い、取鍋から溶湯を所定量ずつ中継ぎ緩衝容器に一旦取り受けて、該中継ぎ緩衝容器内で前記取り受けた溶湯を冷却、均質化しながら、底部に設けた流出孔から下方の半凝固スラリー生成容器内へ連続的に落下させて注湯すると共に、前記半凝固スラリー生成容器に注湯された際の溶湯の温度範囲を、その組成における晶出開始温度以上で且つ晶出開始温度よりも50℃高い温度以下となるように制御し、且つ前記半凝固スラリー生成容器内に注湯された溶湯の冷却速度を、毎分20℃以下の冷却速度になるように制御することを第1の特徴としている。
また本発明の鉄系合金の半凝固スラリーの製造方法は、上記第1の特徴に加えて、中継ぎ緩衝容器から半凝固スラリー生成容器内への落下途中の溶湯を風冷するようにしたことを第2の特徴としている。
また本発明の鉄系合金の半凝固スラリーの製造方法は、上記第1又は第2の特徴に加えて、中継ぎ緩衝容器から半凝固スラリー生成容器への溶湯落下のエネルギーを用いて半凝固スラリー生成容器内の溶湯の攪拌を行わせることを第3の特徴としている。
また本発明の鉄系合金の半凝固スラリーの製造方法は、上記第1〜第3の何れかの特徴に加えて、注湯された溶湯の半凝固スラリー生成容器内での冷却速度が毎分20℃以下となるように、半凝固スラリー生成容器を予熱しておくことを第4の特徴としている。
また本発明の鉄系合金の半凝固スラリーの製造方法は、上記第4の特徴に加えて、半凝固スラリー生成容器の予熱は、半凝固スラリー生成容器そのものを高周波誘導加熱することにより行うことを第5の特徴としている。
また本発明の鉄系合金の半凝固スラリーの製造方法は、上記第1〜第5の何れかの特徴に加えて、生成された半凝固スラリーの取り出しは、半凝固スラリー生成容器を高周波誘導加熱することで、半凝固スラリー生成容器を介してそれに接している半凝固スラリー部分を加熱した状態で行うことを第6の特徴としている。
また本発明の鉄系合金の半凝固スラリーの製造装置は、共晶組成未満の鉄系合金材料の溶湯を保持して注湯することができる溶湯注湯手段と、注湯された溶湯を冷却して半凝固状態のスラリーを生成させる半凝固スラリー生成容器とを有し、前記溶湯注湯手段は、溶解炉から溶湯を受け取って運んでくる取鍋と、半凝固スラリー生成容器の上方に配置されて前記取鍋から必要な所定量だけの溶湯を一旦取り受けると共に、更にその取り受けた溶湯を冷却、均質化しながら、底部に設けた流出孔から下方の半凝固スラリー生成容器内へ連続的に落下させて注湯する中継ぎ緩衝容器とからなり、且つ前記溶湯注湯手段には、共晶組成未満の鉄系合金材料の溶湯をその晶出開始温度以上であって且つ晶出開始温度よりも50℃高い温度以下にして半凝固スラリー生成容器に注湯する注湯温度調節手段を備え、前記半凝固スラリー生成容器は受け入れた溶湯を毎分20℃以下の冷却速度で冷却する冷却速度調節手段を備えることを第7の特徴としている。
また本発明の鉄系合金の半凝固スラリーの製造装置は、上記第7の特徴に加えて、注湯温度調節手段は、中継ぎ緩衝容器に取り受けられる溶湯の取鍋出口での溶湯温度を所定温度範囲に調節する第1の温度調節手段と、中継ぎ緩衝容器で冷まされる溶湯の温度低下を調節して中継ぎ緩衝容器出口での溶湯温度を所定温度範囲に調節する第2の温度調節手段とを有することを第8の特徴としている。
また本発明の鉄系合金の半凝固スラリーの製造装置は、上記第8の特徴に加えて、注湯温度調節手段は、中継ぎ緩衝容器を出て半凝固スラリー生成容器に到達する間における溶湯の温度低下を調節する第3の温度調節手段を有することを第9の特徴としている。
また本発明の鉄系合金の半凝固スラリーの製造装置は、上記第7〜第9の何れかの特徴に加えて、冷却速度調節手段は、半凝固スラリー生成容器を予熱する予熱手段を有することを第10の特徴としている。
また本発明の鉄系合金の半凝固スラリーの製造装置は、上記第10の特徴に加えて、半凝固スラリー生成容器の予熱手段は高周波誘導加熱手段であることを第11の特徴としている。
また半凝固スラリー生成容器内での冷却は、たかだか晶出開始温度より50℃高い温度の溶湯からの冷却であるので、冷却に要する時間を短くすることができ、効率よく半凝固スラリーを製造することできる。
取鍋から中継ぎ緩衝容器に流下する溶湯のうち、最初に流下する溶湯は比較的早期に半凝固スラリー生成容器に流下して該半凝固スラリー生成容器内で冷却され、後から流下する溶湯は中継ぎ緩衝容器内に多少とどまってその間に冷却され、半凝固スラリー生成容器に流下する。これにより全ての溶湯が半凝固スラリー生成容器に注湯されたときに温度差が小さくなるようにすることができる。溶湯の温度差を小さくすることで樹枝状晶の晶出が予防され、晶出粒状晶と溶湯とからなる良好な半凝固スラリーを得ることができる。
溶解炉等から取鍋に取得される溶湯量は、半凝固スラリーの所定量に比べてかなり多量であるので、取鍋から直接的に半凝固スラリー生成容器に注湯する場合には、注湯作業がスムーズに行い難く、安定した注湯が難しい。また取鍋内の溶湯の温度自体を晶出開始温度近くまで低下させた状態で、且つ凝固開始することなく保持しなければならないという問題もある。請求項1の発明では、取鍋からの溶湯を一旦中継ぎ緩衝容器に取り受けて中継ぎし、更に半凝固スラリー生成容器に注湯するようにすることで、容量の大きな取鍋から所定量の溶湯を小分けして注湯する注湯作業をスムーズに行うことができる。また取鍋からの溶湯が中継ぎ緩衝容器に一旦取り受けられることで、取り受けられた所定量の溶湯の均質化を行うことができ、半凝固スラリー生成容器へ注湯さる溶湯をより均質化されたものとすることができる。また取鍋からの溶湯は中継ぎ緩衝容器を経る間に冷却がなされるので、取鍋内での溶湯温度を多少高めに保持することが可能となり、その分温度管理が容易となる。
また取鍋から中継ぎ緩衝容器に入った溶湯は、底部の流出孔から流出するまでに多少の時間、容器内に保持されることになるので、その間容器内で冷却されると共に、容器内で混合されて均質化が進む。よってより均質で好ましい温度の溶湯を半凝固スラリー生成容器に注湯することができる。
落下エネルギーを調整してどの程度の撹拌効果を得るようにするかは、予め実験により、溶湯の量や半凝固スラリー生成容器の容量に応じて、落下高さを定めることで行うことができる。
この請求項6の方法では、半凝固スラリー生成容器そのものを高周波誘導加熱で素早く加熱するようにしたので、容器に接する部分の半凝固スラリーだけを速やかに昇温して半凝固スラリーを容器から容易に取り出すことができると共に半凝固スラリーに温度ムラを生じさせることなく、安定した固相率で成形加工に供することができる。なおアルミ合金の半凝固ダイカスト法において、高周波誘導加熱手段を用いたものがあるが、あくまで半凝固スラリーそのものの均熱を図るためのものであり、半凝固スラリーの容器からの取り出しのためのものではない。
請求項7に記載の半凝固スラリーの製造装置によれば、注湯温度調節手段によって半凝固スラリー生成容器への注湯温度が晶出開始温度を晶出開始温度以上であって且つ晶出開始温度よりも50℃高い温度以下に調節されると共に、冷却速度調節手段により半凝固スラリー生成容器内の溶湯は毎分20℃以下の冷却速度で冷却されるので、樹枝状晶を晶出することなく粒状晶を晶出して半凝固スラリーを得ることができる。よって、その後の鋳造やその他の成形加工において、欠陥の少ない、緻密で且つ優れた機械的性質を有する製品を得ることができる。
加えて、注湯温度調節手段により注湯温度を晶出開始温度よりも50℃高い温度以下に調整されるので、溶湯の冷却に要する時間を短くすることができ、効率よく半凝固スラリーを製造することできる。
以上より、溶湯注湯手段として、中間に中継ぎ緩衝容器を介在させることで、取鍋と半凝固スラリー生成容器との距離(落差)が大きい場合でも、中継ぎ緩衝容器が中継することで、半凝固スラリー生成容器への注湯が確実且つ容易に、安定して行える。また溶湯の落下エネルギーを二分することで、半凝固スラリー生成容器内での溶湯落下による過度の攪拌がなされないようにすることができる。
また中間に中継ぎ緩衝容器を介在させることで、取鍋から中継ぎ緩衝容器を介して半凝固スラリー生成容器内へ注湯するまでの温度低下を大きくすることができ、よって取鍋内での溶湯保持温度をその分だけ高くすることができ、取鍋内での凝固が起こらないようにするための温度制御が容易となる。
請求項11に記載の鉄系合金の半凝固スラリー製造装置によれば、上記請求項10に記載の構成による作用効果に加えて、半凝固スラリー生成容器の予熱手段は高周波誘導加熱手段であるので、この高周波誘導加熱手段を用いて、半凝固スラリー生成容器を素早く且つきめ細かく調整することができるので、溶湯の冷却速度を十分確実に所定の冷却速度に調節して、良好な粒状晶からなる半凝固スラリーを得ることができる。更に半凝固スラリーを半凝固スラリー生成容器から取り出す際には、素早く半凝固スラリー生成容器のみを加熱することができるので、半凝固スラリーの容器接触部分のみを加温することで、取り出しを容易にすることができると共に、半凝固スラリーに温度ムラが発生するのを予防して、固相率を安定化させることができる。
11 保温手段
12 測温手段
20 中継ぎ緩衝容器
21 流出孔
22 容器予熱手段
23 測温手段
30 半凝固スラリー生成容器
31 保温容器
32 予熱手段
33 測温手段
40 送風ファン
前記溶湯注湯手段Pは、半凝固スラリー生成容器30に対して、予め定めた所定量の溶湯を、その溶湯の晶出開始温度以上で且つ晶出開始温度よりも50℃高い温度以下という注湯温度条件で、注湯する役割を果たす。前記注湯温度条件は、例えば注湯する溶湯の晶出開始温度(液相線温度)が1300℃である場合に、半凝固スラリー生成容器に入った際の温度が1300℃以上で且つ1350℃以下の温度であるという意味である。
前記取鍋10は溶解炉の位置で溶湯を受け取り、半凝固スラリー生成容器30の上方の位置まで移動する。取鍋10の容量は半凝固スラリー生成容器30で1回に生成する半凝固スラリーの量よりもかなり大きく、従って半凝固スラリー生成容器30に対して複数回注湯し、或いは複数の半凝固スラリー生成容器30に対して注湯することが可能である。
取鍋10には、保温手段11を設けることができる。この保温手段11により溶解炉から受け取った溶湯を適当な温度に保持しながら、注湯作業を行うことができる。
また取鍋10には溶湯の温度を測定する測温手段12を設けることができる。測温手段12は、例えば浸漬温度計を用い、取鍋10内の溶湯温度を測定することができる。温度測定は、例えば取鍋10からの溶湯の出湯に先駆けて行う。測定された溶湯温度が予め定めた所定の温度範囲にあれば、出湯を行う。
前記測温手段12と前記保温手段11とによって、取鍋10から前記中継ぎ緩衝容器20へ流下させる溶湯の温度を適当な温度に調整することができる。
中継ぎ緩衝容器20は、例えば黒鉛ルツボを用いることができる。
中継ぎ緩衝容器20の底部に流出孔21を設けている。流出孔21は、例えば底部の中央部に設けることができる。
流出孔21の径は実験により決定するが、少なくとも取鍋10から中継ぎ緩衝容器20に注がれる溶湯の流量よりも中継ぎ緩衝容器20から半凝固スラリー生成容器30に注がれる溶湯の流量の方が少なくなるように構成する。流出孔21の径は、実際には中継ぎ緩衝容器20の容積、底面積、取鍋10から流下してくる溶湯の流量、1回に注湯する溶湯量を考慮して、取鍋10から流下してきた溶湯が中継ぎ緩衝容器20内で適当に溜まって保持されながら、適当に冷却され、また取鍋10から流下する溶湯によって適当に混合、均質化され、また底部の流出孔21から、整流となって連続的に半凝固スラリー生成容器30に流下されるように、予め実験によって最適な径が定められる。
上記のような流出孔21付きの中継ぎ緩衝容器20を用いることで、該中継ぎ緩衝容器20が漏斗のような役割を果たして、取鍋10からの溶湯を半凝固スラリー生成容器30に確実、容易に且つ荒れることなく円滑に導き入れることができる。また取鍋10から半凝固スラリー生成容器30に至る間における溶湯の温度低下を適当に促進、調節しながら、且つ半凝固スラリー生成容器30へ落下する溶湯の落下エネルギーが過大になるのを防止することができる。
なお前記流出孔21には開閉蓋或いは開閉シャッターのごとき開閉手段を設け、取鍋10からの溶湯の取り受けと流出孔21からの溶湯の流出を一定のタイミングで行うようにする構成としてもよい。これにより中継ぎ緩衝容器20内での溶湯の均質化や温度降下の程度をよりきめ細かく調節することが可能となる。
中継ぎ緩衝容器20には、容器予熱手段22を設けることができる。この容器予熱手段22は、取鍋10から最初に中継ぎ緩衝容器20に流下される溶湯が、急激に温度低下されて凝固を開始してしまうことがないようにするために設けられ、また中継ぎ緩衝容器20から半凝固スラリー生成容器30に流下する溶湯の温度を、晶出開始温度よりも適当に高い一定の温度領域に安定させるために設けられる。
中継ぎ緩衝容器20には、測温手段23を設けることができる。この測温手段23は、例えば熱電対からなる測温手段とし、中継ぎ緩衝容器20の外壁面に接触した配置することで、中継ぎ緩衝容器20の温度を測温する構成とすることができる。これにより容器20の予熱温度を所定の温度に調節する。
この予熱手段32は、本実施形態では高周波誘導加熱手段で構成されている。この高周波誘導加熱手段からなる予熱手段32は、半凝固スラリー生成容器30そのものを加熱する。
33は測温手段である。この側温手段33は、例えば放射測温計を用いて半凝固スラリー生成容器30の温度を測温する構成とすることができる。しかし半凝固スラリー生成容器30内のスラリーの溶湯温度を直接的に測温できるものであってもよく、その方がより正確にスラリーの温度を所定の温度に維持することが可能ではある。
半凝固スラリー生成容器30内のスラリー温度の低下は、その溶湯の組成における液相線と固相線との中間の温度までとし、その中間温度に維持するように半凝固スラリー生成容器30の温度が調節される。
前記注湯温度調節手段TCは、具体的には、取鍋10の保温手段11と測温手段12、中継ぎ緩衝容器20、その流出孔21、容器予熱手段22、送風ファン40、取鍋10と中継ぎ緩衝容器20と半凝固スラリー生成容器30との高さ関係、の各要素の組み合わせからなる。
そして前記注湯温度調節手段TCのうち、前記取鍋10の保温手段11と測温手段12とが、第1の温度調節手段TC1を構成する。この第1の温度調節手段TC1である取鍋10の保温手段11と測温手段12とで、取鍋10に保持される溶湯温度を調節する。
また前記注湯温度調節手段TCのうち、中継ぎ緩衝容器20の材質、形状、厚み、容量、流出孔21の大きさ、位置、容器予熱手段22による予熱とで、第2の温度調節TC2を構成する。この第2の温度調節TC2によって、中継ぎ緩衝容器20を経る溶湯の温度低下量を調節し、流出孔21から流出する溶湯の温度を調節する。
更に前記注湯温度調節TCのうち、前記送風ファン40によって、第3の温度調節手段を構成する。この第3の温度調節手段TC3によって、中継ぎ緩衝容器20から落下する溶湯の温度低下量を調節する。
前記冷却速度調節手段SCは、具体的には、半凝固スラリー生成容器30そのものの材質、形状、厚み、容量、保温容器31、予熱手段32とで構成される。即ち、半凝固スラリー生成容器30の材質、形状、厚み、容量で溶湯の冷却速度の調節がなり、また保温容器31の材質、形状、厚み、容量によっても冷却速度が調節される。特に予熱手段32によって、半凝固スラリー生成容器30をどのくらいの温度に予熱しておくかによって、溶湯の冷却速度をかなり自在に変更調節することができる。よって、この冷却速度調節手段SCによって、半凝固スラリー生成容器30内での溶湯の冷却速度を毎分20℃以下に調節することができる。
なお、半凝固スラリー生成容器30内での溶湯の温度は、固相と液相との割合が予め定めた所定の割合になるように、その溶湯の液相線と固相線との間の所定温度まで低下させて、保持されることになる。
そして半凝固スラリー生成容器30からの半凝固スラリーの取り出しの際には、高周波誘導加熱手段からなる予熱手段32を用いて、半凝固スラリー生成容器30を素早く加熱し、半凝固スラリーの生成容器30との接触部分のみを加温することで、取り出しを容易に行うと共に、半凝固スラリーに温度ムラが発生するのを防止して、所望の固相率での取り出しを確保する。
半凝固スラリーの製造原料は、共晶組成未満の鉄系合金材料として、亜共晶鋳鉄組成の材料を用いる。原料を溶解炉にて溶解し、所定の亜共晶鋳鉄組成となる溶湯を得る。
溶解炉で溶解された溶湯は、適当な量ずつ取鍋10に受け取られ、中継ぎ緩衝容器20の上方位置まで移動される。
取鍋10では、溶湯を所定の温度範囲に保持しながら、予め定めた所定量(1回に生成させる半凝固スラリーの量)ずつを中継ぎ緩衝容器20に流下させる。
前記取鍋10から流下した溶湯は中継ぎ緩衝容器20に一旦入り、更に底部の流出孔21から下方に落下して半凝固スラリー生成容器30に注湯される。半凝固スラリー生成容器30に注湯された溶湯は、そこで冷却され、初晶固相と残留液相とからなる半凝固スラリーが生成される。半凝固スラリーは、その状態のまま半凝固スラリー生成容器30から取り出され、レオキャスト等の成形加工に供される。
この注湯温度の制御は、取鍋10から出湯される溶湯の温度を調節(第1の温度調節手段TC1による調節)し、また中継ぎ緩衝容器20の形状、厚み、容量、流出孔21の径、予熱の有無や温度による温度降下量を調節(第2の温度調節手段TC2による調節)し、また中継ぎ緩衝容器20から落下する溶湯の送風ファン40(第3の温度調節手段TC3による調節)による温度降下量を調節することで行うことができる。
勿論、取鍋20から半凝固スラリー生成容器30に至るまでの溶湯温度降下量は、取鍋10と中継ぎ緩衝容器20と半凝固スラリー生成容器30との高さ関係、より単純に言えば、溶湯が取鍋10から半凝固スラリー生成容器30に落下する間に空気中に曝される時間(落差)を調節することによっても調節することができる。注湯温度調節手段CTには、このような落差の調節も含まれるものとする。
以上のようにして、注湯温度の調節制御は、取鍋10を出た溶湯が半凝固スラリー生成容器30に到達するまでにどれだけの温度降下がなされるか、或いは取鍋10を出た溶湯を半凝固スラリー生成容器30に至るまでに如何ほどの温度降下をなさしめるか、を予め実験により明らかにしておくことで、後は取鍋10から出湯する溶湯温度を所定の温度は範囲に制御するだけで、半凝固スラリー生成容器30への注湯温度を所定の温度(晶出開始温度以上で且つ晶出開始温度よりも50℃高い温度以下)に調節制御することができる。
前記中継ぎ緩衝容器20の半凝固スラリー生成容器30に対する高さ(落差)を調節することで、スムーズで跳ね飛びのない注湯を確保しつつ、且つ溶湯の適当な落下エネルギーによる適当な攪拌効果により、半凝固スラリー生成容器30内での溶湯の均温化を図ることができる。即ち、半凝固スラリー生成容器30に対する中継ぎ緩衝容器20の高さが低い場合は、溶湯落下による攪拌効果が得られないので、半凝固スラリー生成容器30に注湯された溶湯の均質化があまり図れない。そして中継ぎ緩衝容器20の半凝固スラリー生成容器に対する高さを高くするにつれて、前記攪拌効果による均質化が図れるようになる。しかし高くなりすぎると、半凝固スラリー生成容器30への注湯の際に溶湯の跳ね飛びがある等、過剰攪拌状態となる。よって中継ぎ緩衝容器20の好ましい高さは、該中継ぎ緩衝容器20の流出孔21の大きさや、半凝固スラリー生成容器30の形状や容積等を考慮して予め実験により定めることになる。
また中継ぎ緩衝容器20の他の役割は、溶湯を底部の流出孔21から連続的に半凝固スラリー生成容器30に落下させることで、スムーズで安定した注湯を確保することである。
前記半凝固スラリー生成容器30の予熱は、高周波誘導加熱により、電気ヒータを用いる場合に比較して容器30を必要に応じて素早く予熱することができ、温度調節をきめ細かくできるので、確実に冷却速度を制御して、樹枝状晶を晶出させることなく良好な半凝固スラリーを得ることができる。
溶解炉の溶湯は取鍋10で受け取り、注湯に供する。即ち、取鍋10の溶湯の所定量ずつを、予熱した黒鉛ルツボからなる中継ぎ緩衝容器20に流下させ、更に中継ぎ緩衝容器20の底部に設けた流出孔21から流下させて、予め予熱した半凝固スラリー生成容器30に注湯し、半凝固スラリー生成容器30内で溶湯を冷却して半凝固スラリーを生成した。
半凝固スラリーの生成の条件は図4に示す通りである。
試験結果を図5、図6に示す。
取鍋10からの出湯温度が1300℃の場合(試料1)の場合は、溶湯が中継ぎ緩衝容器20内に残留して凝固した。
また取鍋10からの出湯温度が1400℃の場合であっても、中継ぎ緩衝容器20の流出孔21の径が5mmの場合(試料26)は、溶湯が中継ぎ緩衝容器20内に残留して凝固した。
また取鍋10からの出湯温度が1400℃の場合であっても、中継ぎ緩衝容器20の予熱が300℃と低い場合(試料27)は、溶湯が中継ぎ緩衝容器20内に残留して凝固した。
また半凝固スラリー生成容器30への注湯温度が1350℃を超える場合(試料29、31、32、33、34、35、42)は、初晶が図3に示すような樹枝状晶になった。
また半凝固スラリー生成容器30内での冷却速度が20℃/分を超える場合(試料40、49)は、注湯温度が1300℃以上で1350℃以下であっても、初晶が図3に示すような樹枝状晶になった。
一方、半凝固スラリー生成容器30内での冷却速度が20℃/分以下の場合は、初晶が図2に示すような粒状晶になった。
但し、半凝固スラリー生成容器30内での冷却速度が20℃/分以下であっても、半凝固スラリー生成容器30に対する中継ぎ緩衝容器20の高さが100mm未満の場合(実施例は50mmの場合)(試料2〜9、28、30)には、内部は粒状晶であったが、半凝固スラリー生成容器30との接触部付近が樹枝状晶になった。これは、この試験での測温位置(容器30の中央付近)では20℃/分以下の冷却速度であっても、外周部の前記接触部付近では20℃/分を超える冷却速度になっていたためと考えられる。
半凝固スラリー生成容器30内での冷却速度が20℃/分以下で、半凝固スラリー生成容器30に対する中継ぎ緩衝容器20の高さが100mm以上の場合(実施例では100mm、200mmの場合)には、溶湯の落下エネルギーによる攪拌効果が作用して、得られる半凝固スラリーの内部も外周部(容器30との接触部)も成形に適した粒状晶が得られた。
Claims (11)
- 鉄系合金の溶湯を半凝固スラリー生成容器内に注湯して冷却することで、晶出固相と残留液相とからなる半凝固スラリーを得る鉄系合金の半凝固スラリーの製造方法であって、共晶組成未満の鉄系合金材料を用い、取鍋から溶湯を所定量ずつ中継ぎ緩衝容器に一旦取り受けて、該中継ぎ緩衝容器内で前記取り受けた溶湯を冷却、均質化しながら、底部に設けた流出孔から下方の半凝固スラリー生成容器内へ連続的に落下させて注湯すると共に、前記半凝固スラリー生成容器に注湯された際の溶湯の温度範囲を、その組成における晶出開始温度以上で且つ晶出開始温度よりも50℃高い温度以下となるように制御し、且つ前記半凝固スラリー生成容器内に注湯された溶湯の冷却速度を、毎分20℃以下の冷却速度になるように制御することを特徴とする鉄系合金の半凝固スラリーの製造装置。
- 中継ぎ緩衝容器から半凝固スラリー生成容器内への落下途中の溶湯を風冷するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の鉄系合金の半凝固スラリーの製造方法。
- 中継ぎ緩衝容器から半凝固スラリー生成容器への溶湯落下のエネルギーを用いて半凝固スラリー生成容器内の溶湯の攪拌を行わせることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄系合金の半凝固スラリーの製造方法。
- 注湯された溶湯の半凝固スラリー生成容器内での冷却速度が毎分20℃以下となるように、半凝固スラリー生成容器を予熱しておくことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の鉄系合金の半凝固スラリーの製造方法。
- 半凝固スラリー生成容器の予熱は、半凝固スラリー生成容器そのものを高周波誘導加熱することにより行うことを特徴とする請求項4に記載の鉄系合金の半凝固スラリーの製造方法。
- 生成された半凝固スラリーの取り出しは、半凝固スラリー生成容器を高周波誘導加熱することで、半凝固スラリー生成容器を介してそれに接している半凝固スラリー部分を加熱した状態で行うことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の鉄系合金の半凝固スラリーの製造方法。
- 共晶組成未満の鉄系合金材料の溶湯を保持して注湯することができる溶湯注湯手段と、注湯された溶湯を冷却して半凝固状態のスラリーを生成させる半凝固スラリー生成容器とを有し、前記溶湯注湯手段は、溶解炉から溶湯を受け取って運んでくる取鍋と、半凝固スラリー生成容器の上方に配置されて前記取鍋から必要な所定量だけの溶湯を一旦取り受けると共に、更にその取り受けた溶湯を冷却、均質化しながら、底部に設けた流出孔から下方の半凝固スラリー生成容器内へ連続的に落下させて注湯する中継ぎ緩衝容器とからなり、且つ前記溶湯注湯手段には、共晶組成未満の鉄系合金材料の溶湯をその晶出開始温度以上であって且つ晶出開始温度よりも50℃高い温度以下にして半凝固スラリー生成容器に注湯する注湯温度調節手段を備え、前記半凝固スラリー生成容器は受け入れた溶湯を毎分20℃以下の冷却速度で冷却する冷却速度調節手段を備えることを特徴とする鉄系合金の半凝固スラリーの製造装置。
- 注湯温度調節手段は、中継ぎ緩衝容器に取り受けられる溶湯の取鍋出口での溶湯温度を所定温度範囲に調節する第1の温度調節手段と、中継ぎ緩衝容器で冷まされる溶湯の温度低下を調節して中継ぎ緩衝容器出口での溶湯温度を所定温度範囲に調節する第2の温度調節手段とを有することを特徴とする請求項7に記載の鉄系合金の半凝固スラリーの製造装置。
- 注湯温度調節手段は、中継ぎ緩衝容器を出て半凝固スラリー生成容器に到達する間における溶湯の温度低下を調節する第3の温度調節手段を有することを特徴とする請求項8に記載の鉄系合金の半凝固スラリーの製造装置。
- 冷却速度調節手段は、半凝固スラリー生成容器を予熱する予熱手段を有することを特徴とする請求項7〜9の何れかに記載の鉄系合金の半凝固スラリーの製造装置。
- 半凝固スラリー生成容器の予熱手段は高周波誘導加熱手段であることを特徴とする請求項10に記載の鉄系合金の半凝固スラリーの製造装置。
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