JP5107801B2 - ワンウェイクラッチ用外側保持器の製造方法 - Google Patents

ワンウェイクラッチ用外側保持器の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、車両の自動変速機やスタータ等に用いられるワンウェイクラッチの外側保持器の製造方法に関する。
車両の自動変速機等には、駆動側の回転力を一方向にのみ伝達し、反対方向には伝達しないワンウェイクラッチが用いられている。
従来のスプラグ型ワンウェイクラッチは、相対回転する同心の内輪及び外輪と、内輪及び外輪の間に介装されたワンウェイクラッチ機構から成っている。ワンウェイクラッチ機構は、トルク伝達部材である複数のスプラグと、スプラグを係合方向へ付勢するスプリング部材と、スプラグを保持するとともに過度の傾斜を抑制する筒状の内側保持器及び外側保持器と、これら両保持器を所定の間隔に保持してスプラグの作用を確実なものにする一対のエンドベアリングとから構成されている。
外側保持器は、軸方向に対向する2つの環状部と、これらの環状部を軸方向に連結する、周方向に所定間隔に設けられた複数の柱部とから構成されており、隣り合う柱部及び両環状部とによって形成される窓部を周方向に所定間隔で複数有している。また、一方の環状部には、軸方向で他方の環状部とは反対方向になる端部、即ち外側保持器の軸方向で一方側の端部に、径方向で外側に向かって外向きフランジが形成されている。
内側保持器も外側保持器と略同様の構成であるが、軸方向で一方の端部に形成されているフランジが、径方向で内側に向かう内向きフランジとなっている。
このような構成のワンウェイクラッチにおいて、外輪がスプラグに回転力を作用させる駆動輪となってトルクを伝達する場合、外輪に急激な動作が加わった時などでもスプラグに動作を確実に伝達するために外側保持器と外輪内周面との間に適度な引き摺りトルクが働くようにする必要がある。
この引き摺りトルクを得る手段として、外側保持器にTバー或いはiバーと呼ばれる形状部分を形成し、これらを変形して外輪内周面に接触させる手段が知られている。Tバーは、隣り合う2つの窓部をそれぞれ画成する環状部の2部分を切り欠くことにより形成された外向きフランジ側の環状部部分と隣り合う2つの窓部間のコラム部材とによって形成される。このTバーを形成する手段は、隣り合う2つの窓部をそれぞれ形成している外向きフランジ側の環状部に、該環状部を切り離すようにその一部をそれぞれ切り欠いた切欠き部を形成し、該隣り合う窓部間の柱部と両切欠き部間の分割された外向きフランジ側の環状部とでT字形状部分であるTバーを形成する。このように形成されたTバーは所定間隔で複数設けられ、これらのTバーの柱部を径方向で外側へ所定量だけ屈曲させ、組付け状態においてTバーのばね作用によって外側保持器を外輪内周面に保持し、これら複数のTバーの分割された外向きフランジの外径面と外輪内周面とが接触することにより引き摺りトルクを得る構成となっている。また、これらの分割された外向きフランジの外径面は、外輪内周面に形成された係止溝に係合されることにより、外側保持器の位置決めがなされ、組付け後においては軸方向への抜け止め機構として使用されることもあり、この場合別途iバーが形成される。
iバーは、隣り合う窓部間の柱部の一方の環状部寄りの一部を2つの柱部片に切り離すように切り欠いてi字形状部分であるiバーを形成する。このような柱部片を所定間隔で複数設け、切り離された柱部片の一方を径方向で外側に屈曲させ、これら柱部のばね作用によって外側保持器を外輪内周面に保持し、これらの柱部と外輪内周面とが接触することにより引き摺りトルクを得る構成である。
特許文献1においては、上述したTバーを周方向に連結するように形成し、Tバー部分の周方向の剛性を向上させた連結Tバー構造を有する外側保持器が開示されている。
外側保持器にこのようなTバー構造を形成するためには、上述したように、外向きフランジ側の環状部の一部を切り欠く工程が必要となる。従来はこの切り欠く手段として、砥石によって外向きフランジ側の環状部の一部を切り欠く方法を採っていた。
なお、上記背景技術についてはTバーを例に説明をしたが、窓の間隔が一つおきに切欠きのある二連結Tバーであっても、二つおきに切欠きのある三連結Tバーであっても引き摺りトルクを得る作用は同じである。
実開昭63−115637号公報
しかしながら、従来の、砥石によって外向きフランジ側の環状部の一部を切り欠く方法の場合、図5に示すように、外向きフランジ109側の環状部103bをどの方向から切り欠いても、切欠き部にバリ129が生成する。切欠き部にバリ129が生成したままでは、組付け時に外側保持器101が外輪142の内周面の内側に収まらなかったり、また、外側保持器101の内周方向にバリ129があるとバリ129がスプリング部材144と干渉し、ワンウェイクラッチ140が作動不良を生じたりしてしまう。従ってこのような不具合を回避するため、砥石による切欠き工程の後にはバリ129を取る工程が必要であった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、バリの生成を最小限に抑え、バリ取り工程を省くことができるワンウェイクラッチ用外側保持器の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係るワンウェイクラッチ用筒状外側保持器の製造方法は、内周面を有する外径側部材と、該内周面に径方向に対向する外周面を有する内径側部材と、前記外径側部材の前記内周面と前記内径側部材の前記外周面との間に介装され、前記内外周面に係合してトルクを伝達する位置と前記内外周面に非係合になる位置とに傾斜可能に配置された複数のトルク伝達部材と、前記複数のトルク伝達部材を前記内外周面に係合する方向に付勢するスプリング部材と、前記複数のトルク伝達部材を円周方向に所定間隔で保持するとともに傾きを抑制する筒状内側保持器及び筒状外側保持器とから成るワンウェイクラッチに用いられる前記筒状外側保持器の製造方法であって、予め成形された筒状外側保持器ブランクであって、軸方向に対向する一対の第1および第2の環状部と、周方向に所定間隔で配置され前記一対の第1および第2の環状部を軸方向に連結する複数の柱部と、隣り合う前記柱部の周方向に対向する面と前記一対の第1および第2の環状部の軸方向に対向する面とで形成される複数の窓部とを有し、前記第1の環状部には軸方向で前記第2の環状部とは反対側の側端縁にその内周側湾曲部を介して径方向外向きフランジが形成されているブランクをダイス上に位置決めして、前記筒状外側保持器ブランクの前記第1環状部の半径方向内側面と前記内周側湾曲部の表面と前記外向きフランジの半径方向に延びる面とが前記ダイスの支持面に接触するようにするステップと、薄板刃を有するパンチを、前記第2の環状部の半径方向外側から前記窓部を通して、該筒状外側保持器ブランクの半径方向内向きの成分と軸方向成分とを有する方向に前記第2の環状部から前記第1の環状部の方向へスライドさせることにより、前記第1の環状部の一部を貫通してカットするステップと、からなることを特徴とする。
好適には、複数の前記パンチによって、前記第1の環状部の複数箇所を同時に切り欠くことを特徴とする
更に好適には、前記ダイスの前記支持面は、前記第1環状部の前記半径方向内側面と前記内周側湾曲部の前記表面と前記外向きフランジの前記半径方向に延びる面とに沿っていることを特徴とする
本発明によれば、切欠き部にバリが生成されても、バリが生成される位置は外向きフランジの内周側曲部及びその近傍であり、バリが生成される方向は、外向きフランジの内周側曲部及びその近傍から、外向きフランジの外周側曲部とは反対側となる方向で、略軸方向に軸心に向かう方向となる。この方向に生成されるバリはワンウェイクラッチ機構の機能を阻害せず、許容できる方向となる。このため、切欠き工程後のバリ取り工程を省くことができ、工程の削減が図れる。
また、従来の砥石による切欠き工程では、切欠き部を形成する箇所を一箇所づつ切断する方法であったのに対し、本発明によれば、外向きフランジ側の環状部の切欠き部を形成するすべての箇所を一度に加工することができるため、工程時間の短縮を図ることができる。更に、外向きフランジ側の環状部の切欠き加工と同時にiバーの加工もできるので、工程の合理化及びコストダウンを図ることができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係るワンウェイクラッチ用外側保持器の製造方法を用いて製造された外側保持器を備えたワンウェイクラッチの要部を示す軸方向を横切る断面図である。
ワンウェイクラッチ40は、内周面42aを有する外径側部材である外輪42と、内周面42aに径方向に対向する外周面43aを有する内径側部材である内輪43と、外輪42の内周面42aと内輪43の外周面43aとの間に介装され、内外周面42a、43aに係合してトルクを伝達する位置と内外周面42a、43aに非係合になる位置とに選択的に傾斜可能に配置されたスプラグ46と、複数のスプラグ46を内外周面42a、43aに係合する方向に付勢するリボンスプリング44と、複数のスプラグ46を円周方向に所定間隔で保持するとともに傾きを抑制する円筒状の内側保持器2及び外側保持器1とから構成されている。
図2(a)は、上記ワンウェイクラッチ40に用いられているワンウェイクラッチ用外側保持器1の中心から径方向の外方を見た一部を示す図である。
外側保持器1は、軸方向に対向する2つの環状部3a、3bと、これらの環状部3a、3bを連結する、周方向に所定間隔に設けられた複数の柱部51、52…5n(nは整数。以下同じ。)とで構成され、隣り合う柱部5の周方向に対向する面と両環状部3a、3bの軸方向に対抗する面とによって複数の窓部71、72…7nが周方向に形成されている。これら複数の窓部71、72…7nには、トルク伝達部材であるスプラグ46が一対一で対応してはめ込まれ、これらの窓部71、72…7nによってスプラグ46は所定の範囲で傾斜可能に保持される。
外側保持器1を構成する一方の環状部3bには、軸方向で他方の環状部3aとは反対側となる端部、即ち外側保持器1の軸方向で一方側の端部に、径方向で外側に向かって外向きフランジ9が形成されている。
外側保持器1には、外側保持器1とワンウェイクラッチ40の外輪内周面42aとの間に所定の引き摺りトルクを得るため、又は外輪42に組付けた後の抜け止めの手段となる三連結Tバー11が形成されている。環状部3bには隣り合う窓部7、7をそれぞれ画成している切欠き部23が形成されている。これらの窓部7、7間には隣り合う窓部72、73が配置されている。三連結Tバー11は、2つの切欠き部23、23間の環状部3bの部分と、これら2つの切欠き部23間の環状部3bと環状部3aとを連結している柱部51、52、53とで構成されている。外側保持器1には、このような三連結Tバー11が所定間隔で複数形成されている。
なお、本実施形態ではこのように三連結Tバー11を形成しているが、例えば、隣り合う窓部71、72をそれぞれ形成している外向きフランジ側の環状部3bに切欠き部23、23を形成して、両切欠き部23、23間の環状部3b部分と窓部71、72間の柱部51とでTバーを形成しても、三連結Tバーと作用は同じである。
本実施形態においては、環状部3bを切り離すようにその一部を切り欠く切欠き部23を形成する方法として、プレス加工法を用いている。
本実施形態に係る外側保持器製造方法に先立って、外側保持器1に成形されるブランクとして、軸方向に対向する一対の環状部3a、3bと、これら一対の環状部3a、3bを軸方向に連結する周方向に所定間隔で設けられた複数の柱部5とで構成され、一方の環状部3bは、軸方向で他方の環状部3aとは反対側になる端部に径方向に外向きフランジ9となる部分を折り曲げ形成した円筒状の外側保持器ブランク1aを形成する。
図2(b)は外側保持器ブランク1aの一部を示す図である。この外側保持器ブランク1aを用いて、本実施形態に係る製造方法により外側保持器1が成形される。
図3は、外側保持器ブランク1aを用いてワンウェイクラッチ用外側保持器1を成形する本実施形態に係る製造方法を示す概略図である。図3において、本実施形態に用いるダイス15の外側保持器ブランク1aを支持する面の母線形状は、外向きフランジ9の屈曲部17の内周側曲部20に形成される母線形状と同じ形状をしている。外側保持器ブランク1aは、軸方向で外向きフランジ側寄りの内周面から内周側曲部20を経て外向きフランジ9の軸方向の端面にかけての面全体が、ダイス15の支持面と対向して接触するようにダイス15に載置されている。
次に、外側保持器ブランク1aの切欠き部23を形成する箇所に対し、パンチ25で打ち抜く方法について説明する。
パンチ25は正方形或いは長方形をしており、外側保持器ブランク1aを打ち抜くことができる硬度の素材で構成されている。パンチ25の各辺部には、各辺の全長に亘る薄板状の刃25a、25b、25c、25dが形成されている。パンチ25の一辺の寸法は、外向きフランジ9側の環状部3bの内周側で窓部7側の端部と、外向きフランジ9の外径側端面の外向きフランジ9の軸方向の端面側となる端部とを結ぶ距離寸法L1(図3中に破線で示すA−A間の寸法)よりも大きく設定されている。また各薄板状の刃25a、25b、25c、25dの刃丈は、外向きフランジ9の外径側端面の環状部3a側となる端部と、内周側曲部20とを結ぶ距離寸法L2(図3中に二重鎖線で示すB−B間の寸法)よりも大きく設定されている。
パンチ25は、ダイス15に載置された外側保持器ブランク1aの外向きフランジを有さない側の環状部3aの径方向で外方側の位置に配置される。このとき、刃25aが外側保持器ブランク1aの軸心Sを中心とした放射方向に沿う方向で、且つ、刃25aが略軸方向の内側寄り方向で環状部3bと対向するように配置される。
そして、パンチ25を、当該位置から、外向きフランジ9側の環状部3bの径方向で内方側に向かって、略軸方向で内側寄り方向に軸心Sに向かって(図3中の矢印方向)スライドさせる。このようにパンチ25を斜め方向にスライドさせるため、刃25aの外側保持器ブランク1a側の一部は、窓部7の外周側で環状部3a側から該窓部7に入り、窓部7の内周側で環状部3b側に向けて該窓部7を通過して外向きフランジ9側の環状部3bに到達する。刃25aの他の部分は窓部7を通過することなく外向きフランジ9側の環状部3bに到達する。そして更にパンチ25を同方向にスライドさせ、外向きフランジ9側の環状部3bを、外周側曲部21から内周側曲部20にかけて略軸方向で内側寄り方向に、軸心Sに向かって打ち抜いてゆく。パンチ25の一辺の寸法は、上述したように、環状部3bの所定箇所の距離寸法L1よりも大きく設定されており、刃25aの刃丈も環状部3bの所定箇所の距離寸法L2よりも大きく設定されているので、パンチ25は確実に環状部3bを打ち抜くことができる。
このようにして、外向きフランジ9側の環状部3bは周方向に切り離され、切欠き部23が形成される。
パンチ25が外向きフランジ9側の環状部3bを打ち抜くと、環状部3bのパンチ25が突き抜けた出口側には、打ち抜かれた環状部3bの素材によるバリが生成し易い。しかし、本実施形態においては、ダイス15の外側保持器ブランク1aを支持する面の母線形状は、外側保持器ブランク1aに形成された外向きフランジ9の屈曲部17の形状、即ち屈曲部17の内周側曲部20の形状と同じ母線形状に形成されており、外側保持器ブランク1aは、その内周側曲部20がダイス15に形成された同一形状の母線形状の面と対向して接触するようにダイス15に載置されている。従って、パンチ25に打ち抜かれた分の外向きフランジ9側の環状部3bの素材は、該環状部3bを通過するパンチ15の出口部周辺に留まることはなく、バリを生成することなくパンチ25の通過経路から排出される。このためバリの生成を抑えることができ、バリが生成されたとしても最小限に抑えることができる。
また、このように外向きフランジ9側の環状部3bのパンチ25が突き抜けた出口部分にバリが生成されたとしても、その出口部分は外向きフランジ9の内周側曲部20及びその近傍(図3中の楕円で囲んだ部分)であり、バリが生成される方向は、内周側曲部20及びその近傍から、外周側曲部21とは反対側となる方向で、略軸方向に軸心Sに向かう方向となる。
内周側曲部20及びその近傍にバリが生成されても、この部分に上記方向に生成されるバリは、成形後の外側保持器1のワンウェイクラッチへの組付け及び組付け後のワンウェイクラッチの機能に影響を与えるものではない。即ち、図4に示すように、成形後の外側保持器1をワンウェイクラッチ40に組付ける場合に、例えば外側保持器1の外向きフランジ9がバリ29の存在によって外輪42に形成された係止溝31に収まらないというような、バリ29が組付けの妨げとなる事はなく、また組付け後においても、リボンスプリング44やスプラグ46と干渉する位置ではないため、ワンウェイクラッチ40の作動を阻害することはない。
従って、内周側曲部20及びその近傍にバリ29が生成されたとしても、その量は最小限に抑えられ、且つ生成されたバリ29がワンウェイクラッチ40の組付け及び組付け後の機能に影響を与える位置及び方向ではないため、切欠き工程の後にバリ取り作業の必要はなく、工程の削減が可能となる。
外側保持器1に形成される三連結Tバー11は所定の間隔をもって複数箇所に設けられるが、本実施形態においては、外側保持器ブランク1aの三連結Tバー11を形成するそれぞれの箇所について上述したようなプレス加工を一度の作業で行っている。
図6は、外側保持器1の成形に用いられたプレス加工装置の概略図である。
プレス加工装置50のダイス15には、外側保持器ブランク1aが外向きフランジ側環状部3bを下側にして載置されている。プレス加工装置50の天板部51の下面には、下方に向かって延在する支持部52が天板部51と一体的に設けられている。支持部52は、ダイス15に載置された外側保持器ブランク1aの外周面より外方側で、環状部3aの上方近傍まで延在している。支持部52の下方側の端面は、下方に向かうに従い軸心Sとの距離が長くなる方向に傾いた傾斜面となっている。
支持部52の下方には、下方に向かって腕部53が設けられており、腕部53の上方側端面が支持部52の下方側端面に対向して接触している。つまり、腕部53は、支持部52の傾斜した下方側端面に対して垂直となるように設けられている。このため、腕部53は、下方に向かうに従い軸心Sとの距離が短くなる方向に軸心Sに向かって所定の角度で傾いている。腕部53の上方側端面と支持部52の下方側端面とは、腕部53と軸心Sとの距離が短く、或いは長くなる方向に摺動自在に接触している。腕部53は、ダイス15に載置された外側保持器ブランク1aの下方まで延在し、その下方側の先端部は半球状に形成されている。
腕部53の内周側は、ダイス15に載置された外側保持器ブランク1aの外周側と径方向に対向している。腕部53の内周側にはパンチ25が取付けられている。パンチ25は、ダイス15に載置された外側保持器ブランク1aの径方向で外方に位置するように取付けられている。
プレス加工装置50の装置台座部55の上面には、スプリング部材56を介して上下方向に可動する腕部受け部材57が設けられている。腕部受け部材57の上方側端面は、腕部53の先端部に形成された半球状部53aと摺動可能に接触している。プレス加工装置50には、このような腕部53が所定間隔で複数設けられている。
天板部51は上下方向に可動となっており、天板部51が下方に移動すると、天板部51とともに支持部52に設けられた複数の腕部53も同時に下方に移動する。このとき、腕部53は下方に移動すると同時に、上方側端面が支持部52の傾斜した下方側端面に対して摺動する。即ち、腕部53は支持部52によって下方に押圧されることにより、上方側端面が支持部52の下方側端面を軸心Sとの距離が短くなる方向に摺動する。このため、腕部53は軸心Sに対する傾斜角度は変わることなく、下方に移動しつつ軸心Sとの距離が短くなる方向に移動する。また、同時に、腕部53の先端の半球状部53aは腕部受け部材57を下方に押圧し、この押圧力で腕部受け部材57は下方に移動する。このとき、スプリング部材56の弾性と腕部53の設置角度により、腕部53の先端の半球状部53aは軸心Sの方向に腕部受け部材57の上端面を摺動する。つまり、腕部53は下方に移動しつつ、その先端部が軸心S方向に向かって移動する。
このようにして、腕部53は、上方側端面が支持部53の下方側端面に対して軸心Sとの距離が短くなる方向に摺動し、同時に先端部53aが腕部受け部材57に対して軸心Sとの距離が短くなる方向に摺動するため、その傾斜角度を変えることなく軸心Sとの距離を縮める方向で下降する。腕部53がこのように移動するため、腕部53の内周側に設けられたパンチ25は、ダイス15に載置された外側保持器ブランク1aの環状部3aの径方向で外方側の位置から、外向きフランジ側の環状部3bの径方向で内方側に向かって、略軸方向で内側寄り方向に軸心Sに向かって(図6中の矢印方向)スライドする。
こうして、外向きフランジ9側の環状部3bの切欠き部23を形成する複数の箇所に対し、外側保持器ブランク1aの外周側から軸心Sに向かって反放射状に同時にパンチ25が入り、外向きフランジ9側の環状部3bを同時に打ち抜いている。
このように、プレス加工を採用することにより、複数の切欠き部23を同時に打ち抜くことができるので、工程時間の短縮を図ることができる。
また、本発明に係るワンウェイクラッチ用外側保持器製造方法は、プレス加工を採用しているため、iバー(図示なし)の加工と同時に外向きフランジ側の環状部を加工することができる。従って工程の合理化及びコストダウンを図ることが可能となる。
また、パンチが外向きフランジ側の環状部を打ち抜く角度を調節することにより、外向きフランジの内周側曲部及びその近傍に生成されるバリの生成方向を制御することが可能である。バリの生成方向を制御することで、ワンウェイクラッチの寸法、形状により、生成されたバリが最も該ワンウェイクラッチの機能に影響を与えない方向にバリが生成されるようにすることが可能となる。ワンウェイクラッチの機能に影響を与えない方向に外向きフランジ側の環状部を打ち抜く角度としては、径方向に対して45°〜70°程度の角度とすることが望ましい。
なお、本実施の形態で用いたパンチの形状は、上述したように正方形或いは長方形であり、各辺部には薄板状の刃25a、25b、25c、25dが形成されている。パンチ25の形状をこのように正方形或いは長方形とすることにより、例えば刃25aが摩耗したらパンチ25のプレス装置への取り付け方向を替えることにより、刃25bを使用することができる。このように、パンチ25のプレス装置への取り付け方向を替えることにより4方向の全ての刃で加工を行うことができ、パンチのコストダウンにもつながる。
本実施形態に係るワンウェイクラッチ用外側保持器の製造方法を用いて成形された外側保持器を備えたワンウェイクラッチの要部を示す軸方向の断面図である。 (a)は本実施形態係るワンウェイクラッチ用外側保持器製造方法を用いて製造した外側保持器の一部を示す図であり、(b)は本実施形態に係るワンウェイクラッチ用外側保持器製造方法に先立って形成される外側保持器ブランクの一部を示す図である。 本実施形態に係り、外側保持器ブランクを用いてワンウェイクラッチ用外側保持器を成形する製造方法の概略図である。 本実施形態に係るワンウェイクラッチ用外側保持器製造方法により成形された外側保持器において、バリ発生が予測される箇所を示す図である。 従来の加工法により成形された外側保持器において、バリ発生が予測される箇所を示す図である。 本実施形態に係る外側保持器の成形に用いられるプレス加工装置の概略図である。
符号の説明
1、101 外側保持器
1a 外側保持器ブランク
2 内側保持器
3a、103a 環状部
3b、103b 外向きフランジ側環状部
5 柱部
7 窓部
9 外向きフランジ
11 Tバー
15 ダイス
17 屈曲部
19 保持器内周側曲部
21 保持器外周側曲部
23 切欠き部
25 パンチ
25a、25b、25c、25d 刃
29 バリ
31 係止溝
40、140 ワンウェイクラッチ
42、142 外輪
42a 内周面
43 内輪
43a 外周面
44、144 リボンスプリング
46、146 スプラグ
50 プレス加工装置
51 天板部
52 支持部
53 腕部
53a 半球状部
55 装置台座部
56 スプリング部材
57 腕部受け部材

Claims (3)

  1. 内周面を有する外径側部材と、
    該内周面に径方向に対向する外周面を有する内径側部材と、
    前記外径側部材の前記内周面と前記内径側部材の前記外周面との間に介装され、前記内外周面に係合してトルクを伝達する位置と前記内外周面に非係合になる位置とに傾斜可能に配置された複数のトルク伝達部材と、
    前記複数のトルク伝達部材を前記内外周面に係合する方向に付勢するスプリング部材と、
    前記複数のトルク伝達部材を円周方向に所定間隔で保持するとともに傾きを抑制する筒状内側保持器及び筒状外側保持器とから成るワンウェイクラッチに用いられる前記筒状外側保持器の製造方法であって、
    予め成形された筒状外側保持器ブランクであって、軸方向に対向する一対の第1および第2の環状部と、周方向に所定間隔で配置され前記一対の第1および第2の環状部を軸方向に連結する複数の柱部と、隣り合う前記柱部の周方向に対向する面と前記一対の第1および第2の環状部の軸方向に対向する面とで形成される複数の窓部とを有し、前記第1の環状部には軸方向で前記第2の環状部とは反対側の側端縁にその内周側湾曲部を介して径方向外向きフランジが形成されているブランクをダイス上に位置決めして、前記筒状外側保持器ブランクの前記第1環状部の半径方向内側面と前記内周側湾曲部の表面と前記外向きフランジの半径方向に延びる面とが前記ダイスの支持面に接触するようにするステップと、
    薄板刃を有するパンチを、前記第2の環状部の半径方向外側から前記窓部を通して、該筒状外側保持器ブランクの半径方向内向きの成分と軸方向成分とを有する方向に前記第2の環状部から前記第1の環状部の方向へスライドさせることにより、前記第1の環状部の一部を貫通してカットするステップと、
    からなることを特徴とするワンウェイクラッチ用筒状外側保持器の製造方法。
  2. 複数の前記パンチによって、前記第1の環状部の複数箇所を同時に切り欠くことを特徴とする請求項1に記載のワンウェイクラッチ用筒状外側保持器の製造方法。
  3. 前記ダイスの前記支持面は、前記第1環状部の前記半径方向内側面と前記内周側湾曲部の前記表面と前記外向きフランジの前記半径方向に延びる面とに沿っていることを特徴とする請求項1又は2の何れか一項に記載のワンウェイクラッチ用筒状外側保持器の製造方法。
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