ところで、近年、電動機の高性能化の要求に伴い、電動機に印加される電圧も高圧化する傾向にある。こうした状況下、電動機において、その巻線間の絶縁膜を介して電荷の移動が生じるいわゆる部分放電が生じやすくなってきている。特に、電動機に印加される相間電圧の極性が反転する際には、部分放電が発生しやすいことがわかっている。
この部分放電を抑制又は回避するための対策としては、絶縁膜を厚くすることで絶縁性を高めることが考えられる。しかし、この場合、電動機の占積率が低下し、ひいては電動機の大型化を招くおそれがある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、部分放電を好適に抑制することのできる電力変換回路の駆動装置及び電力変換システムを提供することにある。
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
請求項1記載の発明は、多相回転電機に接続される電力変換回路について、その電圧制御形のスイッチング素子を駆動する駆動装置において、前記多相回転電機に印加される相間電圧の極性の反転の有無を判断する判断手段と、前記極性が反転すると判断される場合、前記スイッチング素子の操作態様を変更する変更手段とを備え、前記変更手段は、前記極性が反転すると判断される場合、前記スイッチング素子のスイッチング状態の切り替え時間を伸長させる伸長手段を備えることを特徴とする。
上記発明では、判断手段を備えることで、部分放電が特に生じやすいタイミングである印加される相間電圧の極性の反転タイミングを把握することができる。このため、このときにスイッチング素子の操作態様を変更することで、例えばサージノイズを抑制するように導通制御端子への電圧の印加を変更するなどして部分放電を好適に抑制することができる。
ところで、スイッチング状態の切り替え時間が延びるほど、サージノイズは低減される。すなわち、スイッチング素子がオン状態からオフ状態へ切り替わる際には、切り替え時間が延びるほど、スイッチング素子の入出力端子間の電圧の変化が緩和され、同電圧の変化によるサージノイズが抑制される。また、電力変換回路が、スイッチング素子と並列に整流手段を備えるものである場合、スイッチング素子がオフ状態からオン状態へ切り替わる際には、切り替え時間が延びるほど、同スイッチング素子の入出力端子間を流れる電流の変化が緩和され、相間に生じるサージノイズが低減される。
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記判断手段は、前記スイッチング素子の操作信号を取得する手段を備えて且つ、前記多相回転電機の任意の2相についての前記操作信号に基づき、当該2相間の相間電圧の極性の反転の有無を判断するものであることを特徴とする。
上記発明では、操作信号に基づき極性の反転の有無を適切に判断することができる。特に、電力変換回路が高圧システムを構成して且つ操作信号が低圧システムにおいて生成されるものである場合、極性の反転の有無の判断を高圧システムで行うことができ、この場合、同判断の結果を変更手段に出力する際に、高圧システムと低圧システムとを絶縁する手段を用いる必要も生じない。
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記操作信号は、前記多相回転電機に対する指令電圧とキャリアとの大小関係に基づき生成されるものであり、前記判断手段は、前記任意の2相について、そのうちの一方の相のスイッチング素子のオン状態からオフ状態への切り替え及びオフ状態からオン状態への切り替えのいずれかの切り替えに際しての前記他方の相の操作信号の論理値の変化に基づき、前記極性反転の有無を判断することを特徴とする。
指令電圧とキャリアとの大小に基づき操作信号を生成する場合、指令電圧の大小関係に応じて対応するスイッチング素子がオン状態やオフ状態となる期間が決定される。特に、任意の相のスイッチング素子がオン状態(オフ状態)となる期間が別の相のスイッチング素子のオン状態(オフ状態)の期間に包含されるか、この期間を包含するかは、指令電圧の大小関係に応じて一義的に定まる。したがって、一方のスイッチング素子のオフ状態への切り替えやオン状態への切り替えに際して他方の相のスイッチング素子の操作信号の論理値が反転するタイミングは、上記包含関係の逆転が生じるタイミングと一致し得る。換言すれば、極性の反転が生じるタイミングと一致し得る。上記発明では、この点に着目することで、極性の反転の有無を好適に判断することができる。
なお、各相のスイッチング素子の操作態様を変更するに際しての前記判断手段における前記一方の相及び他方の相の関係は、任意の1相のスイッチング素子の操作態様を変更するに際しての前記判断手段における関係を基準として、これを巡回置換することで得られる関係とすることが望ましい。
また、変更手段は、前記極性が反転すると判断される場合、前記一方の相のスイッチング素子の操作状態を変更するものであることが望ましい。
請求項6記載の発明は、請求項4又は5記載の発明において、前記操作信号は、前記多相回転電機に対する指令電圧とキャリアとの大小関係に基づき生成されるものであり、前記判断手段は、前記任意の2相について、そのうちの一方の相のスイッチング素子のオン状態からオフ状態への切り替え及びオフ状態からオン状態への切り替えのいずれかに伴って前記他方の相の操作信号の論理値を記憶する記憶手段と、該記憶手段によって記憶される値の変化に基づき前記極性反転した旨のワンショットパルス信号を生成するパルス生成手段とを備えることを特徴とする。
指令電圧とキャリアとの大小に基づき操作信号を生成する場合、指令電圧の大小関係に応じて対応するスイッチング素子がオン状態やオフ状態となる期間が決定される。特に、任意の相のスイッチング素子がオン状態(オフ状態)となる期間が別の相のスイッチング素子のオン状態(オフ状態)の期間に包含されるか、この期間を包含するかは、指令電圧の大小関係に応じて一義的に定まる。したがって、一方の相のスイッチング素子のオフ状態への切り替えやオン状態への切り替えに際して他方の相のスイッチング素子の操作信号の論理値が反転するタイミングは、上記包含関係の逆転が生じるタイミングと一致し得る。換言すれば、極性の反転が生じるタイミングと一致し得る。上記発明では、この点に着目しつつ、記憶手段とパルス生成手段とを備えることで、極性の反転の有無を好適に判断することができる。
なお、各相のスイッチング素子の操作態様を変更するに際しての前記判断手段における前記一方の相及び他方の相の関係は、任意の1相のスイッチング素子の操作態様を変更するに際しての前記判断手段における関係を基準として、これを巡回置換することで得られる関係とすることが望ましい。
また、変更手段は、前記極性が反転すると判断される場合、前記一方の相のスイッチング素子の操作状態を変更するものであることが望ましい。
請求項7記載の発明は、請求項5又は6記載の発明において、前記多相回転電機に印加される相間電圧の極性が反転した後、該相間電圧がゼロとなり再度前記反転後の極性となるタイミングを判断する反転後判断手段を更に備え、前記変更手段は、再度前記反転後の極性となるタイミングであると判断される場合、前記スイッチング素子の操作態様の変更を継続することを特徴とする。
極性が反転した後であっても、反転のタイミングの近傍においては、多相回転電機の相間の電荷の分布が極性反転時に近似し得ることなどから、部分放電が生じやすい。この点、上記発明では、極性反転後、再度反転後の極性となるタイミングにおけるスイッチング素子の操作態様をも変更することで、サージノイズをいっそう好適に抑制することができ、ひいては部分放電をいっそう好適に抑制することができる。
請求項8記載の発明は、請求項7記載の発明において、前記キャリアは、その立ち上がりにおいて漸増して且つ立ち下がりにおいて漸減するものであり、前記反転後判断手段は、前記他方の相のスイッチング素子についての前記いずれかとは異なる側への切り替えに際しての前記一方の相の操作信号の論理値の変化に基づき、前記判断を行うことを特徴とする。
上記キャリアを用いる場合、極性反転に伴う上記包含関係の逆転現象が生じる際には、一方の相のスイッチング素子のオン状態(オフ状態)の期間が他方の相のスイッチング素子のオン状態(オフ状態)の期間を、その両端が一致しないようにして完全に包含するか、又は一方の相の上記期間が他方の相の上記期間に完全に包含されるかのいずれかとなる。このため、一方の相のスイッチング素子についてのいずれかの状態への切り替えタイミングの次に再度反転後の極性となるタイミングは、他方の相のスイッチング素子についてのいずれかとは異なる側への切り替えタイミングとなる。上記発明では、この点に着目し、反転後の極性に再度移行するタイミングを適切に判断することができる。
請求項9記載の発明は、請求項7又は8記載の発明において、前記キャリアは、その立ち上がりにおいて漸増して且つ立ち下がりにおいて漸減するものであり、前記反転後判断手段は、前記他方の相のスイッチング素子についての前記いずれかとは異なる側への切り替えに伴って前記一方の相の操作信号の論理値を記憶する記憶手段と、該記憶手段によって記憶される値の変化に基づき、再度前記反転後の極性となった旨のワンショットパルス信号を生成するパルス生成手段とを備えることを特徴とする。
上記キャリアを用いる場合、極性反転に伴う上記包含関係の逆転現象が生じる際には、一方の相のスイッチング素子のオン状態(オフ状態)の期間が他方の相のスイッチング素子のオン状態(オフ状態)の期間を、その両端が一致しないようにして完全に包含するか、又は一方の相の上記期間が他方の相の上記期間に完全に包含されるかのいずれかとなる。このため、一方の相のスイッチング素子についてのいずれかの状態への切り替えタイミングの次に再度反転後の極性となるタイミングは、他方の相のスイッチング素子についてのいずれかとは異なる側へと切り替えタイミングとなる。上記発明では、この点に着目し、記憶手段とパルス生成手段とを備えることで、反転後の極性に再度移行するタイミングを適切に判断することができる。
請求項2記載の発明は、多相回転電機に接続される電力変換回路について、その電圧制御形のスイッチング素子を駆動する駆動装置において、前記多相回転電機に印加される相間電圧の極性の反転の有無を判断する判断手段と、前記極性が反転すると判断される場合、前記スイッチング素子の操作態様を変更する変更手段とを備え、前記変更手段は、前記スイッチング素子の導通制御端子に電圧を印加する経路と、該経路の抵抗値を可変設定する手段とを備えて構成されることを特徴とする。
スイッチング素子の導通制御端子に電圧を印加する経路の抵抗値を変更すると、導通制御端子への電荷の充電速度や導通制御端子からの電荷の放電速度が変化する。特に経路の抵抗値を増大させることで、スイッチング状態の切り替え時間を伸長させることができる。
請求項3記載の発明は、多相回転電機に接続される電力変換回路について、その電圧制御形のスイッチング素子を駆動する駆動装置において、前記多相回転電機に印加される相間電圧の極性の反転の有無を判断する判断手段と、前記極性が反転すると判断される場合、前記スイッチング素子の操作態様を変更する変更手段とを備え、前記変更手段は、前記スイッチング素子のスイッチング状態を切り替えるべく、前記スイッチング素子の導通制御端子に印加する電圧を変化させる過程の途中で、前記印加する電圧をその変化方向とは逆側に一時的に変化させる手段を備えることを特徴とする。
上記発明では、導通制御端子に印加する電圧を変化させる過程の途中でその変化方向とは逆側に一時的に印加電圧を変化させる。この処理をスイッチング素子がオフ状態へと切り替わる際に行う場合には、切り替えに際してのスイッチング素子の入出力端子間の電圧の変化を緩和することができる。また、この処理をスイッチング素子がオン状態へと切り替わる際に行う場合には、切り替えに際してのスイッチング素子の入出力端子間を流れる電流の変化を緩和することができる。このため、切り替えに際してのサージノイズを好適に抑制することができる。
請求項10記載の発明は、請求項1〜9のいずれかに記載の電力変換回路の駆動装置と、前記電力変換回路とを備えることを特徴とする電力変換システム。
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる電力変換回路の駆動装置及び電力変換システムを、ハイブリッド車に搭載されるモータジェネレータの電力変換回路の駆動装置及び電力変換システムに適用した第1の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施形態にかかるモータジェネレータの制御システムの全体構成を示す。
図示されるように、3相の電動機兼発電機としてのモータジェネレータ10の3つの相(U相、V相、W相)には、インバータ12が接続されている。このインバータ12は、3相インバータであり、高圧バッテリ14の電圧をモータジェネレータ10の3つの相に適宜印加する。詳しくは、インバータ12は、3つの相のそれぞれと高圧バッテリ14の正極側又は負極側とを導通させるべく、スイッチング素子SW1、SW2とスイッチング素子SW3,SW4とスイッチング素子SW5,SW6との並列接続体を備えて構成されている。そして、スイッチング素子SW1及びスイッチング素子SW2を直列接続する接続点がモータジェネレータ10のU相と接続されている。また、スイッチング素子SW3及びスイッチング素子SW4を直列接続する接続点がモータジェネレータ10のV相と接続されている。更に、スイッチング素子SW5及びスイッチング素子SW6を直列接続する接続点がモータジェネレータ10のW相と接続されている。ちなみに、これらスイッチング素子SW1〜SW6は、本実施形態では、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)によって構成されている。また、インバータ12は、各スイッチング素子SW1〜SW6に逆並列に接続されたフライホイールダイオードD1〜D6を備えている。
上記スイッチング素子SW1、SW2とスイッチング素子SW3,SW4とスイッチング素子SW5,SW6との並列接続体と、高圧バッテリ14との間には、コンデンサ16が並列接続されている。更に、上記スイッチング素子SW1〜SW6の導通制御端子(ゲート)には、ゲートに駆動電圧を印加するドライブ回路DSが接続されている。
上記スイッチング素子SW1〜SW6は、インターフェース18を介して、低圧バッテリ22を電力源とするマイクロコンピュータ(マイコン20)により操作される。ここで、インターフェース18は、フォトカプラ等の絶縁素子を備えて構成されており、マイコン20を備えて構成される低圧システムと、インバータ12等を備えて構成される高圧システムとを絶縁しつつ、これら双方での信号の授受を可能とするものである。また、マイコン20は、モータジェネレータ10を制御対象とし、ユーザによる要求やモータジェネレータ10の状態に応じて、各種制御を行う。すなわち、マイコン20では、指令電圧とキャリアとを用いたPWM制御によって、スイッチング素子SW1〜SW6の操作信号gup,gun,gvp,gvn,gwp,gwnを生成し、これをインターフェース18を通じてドライブ回路DSに出力する。これにより、インバータ12のスイッチング素子SW1〜SW6が操作され、モータジェネレータ10の回転状態等が制御される。
図2に、本実施形態にかかるPWM制御の処理態様を示す。詳しくは、図2(a)に指令電圧の推移を示し、図2(b)にU相の上側アームのスイッチング素子SW1の操作信号gupの推移を示し、図2(c)にU相の下側アームのスイッチング素子SW2の操作信号gunの推移を示す。また、図2(d)にV相の上側アームのスイッチング素子SW3の操作信号gvpの推移を示し、図2(e)にV相の下側アームのスイッチング素子SW4の操作信号gvnの推移を示す。図2(f)にW相の上側アームのスイッチング素子SW5の操作信号gwpの推移を示し、図2(g)にW相の下側アームのスイッチング素子SW6の操作信号gwnの推移を示す。図2(h)に、V相に対するU相の相間電圧の推移を示し、図2(i)にW相に対するV相の相間電圧の推移を示し、図2(j)にU相に対するW相の相間電圧の推移を示す。
図2(a)に示すように、本実施形態では、キャリアとして、立ち上がりに際して漸増して且つ立ち下がりに際して漸減する三角波を用いる。また、指令電圧vuc,vvc,vwcとして正弦波を用いる。そして、上側アームの操作信号gup,gvp,gwpについては、指令電圧vuc,vvc,vwcの方がキャリアよりも大きいときに論理「H」とする。また、下側アームの操作信号gun,gvn,gwnについては、上記上側アームの操作信号gup,gvp,gwpの論理反転信号(より正確には、これを波形整形することでデッドタイムを生成したもの)とする。このようにして操作信号を生成することで、モータジェネレータ10に印加される電圧を、指令電圧vuc,vvc,vwcに好適に追従させることができる。
ところで、モータジェネレータ10内にあっては、任意の2相の巻き線同士の距離が互いに近づく(近接する)箇所が生じる。そして、これら2相に印加される電圧に大きい差が生じる場合には、これら2相間で部分放電が生じるおそれがある。特に任意の2相間に印加される相間電圧の極性が反転する場合には、部分放電が生じやすい。図3に、極性反転時に部分放電が生じやすいことを示す実験結果を示す。
図3(a)及び図3(b)は、絶縁物を介して隣接する2本の電線間に電圧を印加する場合の部分放電の発生の有無を示す。特に図3(a)は、これら2本の電線間に印加される電圧が負の電圧からゼロを介して正の電圧となる場合を示し、図3(b)は、2本の電線間に印加される電圧が正の電圧からゼロを介して正の電圧となる場合を示す。図示されるように、2本の電線間に印加される電圧の極性が反転する場合の方が部分放電が生じやすい。これは、2本の電線にそれぞれ電圧を印加することで、これらの周囲には逆の電荷が生じ、その後極性が反転する際には、反転以前に電線の周囲に生じた電荷と極性反転によって電線内に生じる電荷とによって、隣接する2本の線間の電位差が強められることなどが原因であると考えられる。
部分放電が継続して生じる場合には、モータジェネレータ10の信頼性の低下を招く。ここで、モータジェネレータ10内における絶縁耐圧を高圧バッテリ14の電圧に応じて設定したとしても、部分放電は避けられないおそれがある。これは、スイッチング素子SW1〜SW6のスイッチング状態の切り替えに際してサージノイズが生じることにより、相間電圧が高圧バッテリ14の電圧よりも大きくなり得ることによる。すなわち、スイッチング素子SW1〜SW6のオン状態からオフ状態への切り替わりに際しては、そのコレクタ及びエミッタ間の電圧が急激に立ち上がり、サージノイズが生じる。また、スイッチング素子SW1〜SW6のオフ状態からオン状態への切り替わりに際しては、コレクタ電流が急激に増加することから、該当する相の逆側のアームのダイオードD1〜D6を流れていた電流が急激に減少することに起因してサージノイズが生じる。
このため、部分放電の発生を抑制するためには、相間へのサージノイズの重畳を抑制することが効果的である。ここで、サージノイズを抑制するためには、スイッチング素子SW1〜SW6のスイッチング状態の切り替えに際して、ゲートへの電荷の充電速度やゲートからの電荷の放電速度を低減することが効果的である。これにより、スイッチング素子SW1〜SW6の状態がオン状態からオフ状態へと切り替わる際には、コレクタ及びエミッタ間の電圧の上昇速度が低減され、ひいてはサージノイズが抑制される。また、スイッチング素子SW1〜SW6がオフ状態からオン状態へと切り替わる際には、コレクタ電流の増大速度が低減され、ひいてはサージノイズが抑制される。ただし、充電速度や放電速度を低減することでスイッチング時間を伸長させる場合には、スイッチング損失が増大する。このように、サージノイズの低減処理を施すこととスイッチング損失を低減することとは互いにトレードオフの関係となっている。
そこで本実施形態では、モータジェネレータ10に印加される相間電圧の極性の反転の有無を判断し、極性が反転すると判断されるタイミング近傍に限って充電速度や放電速度を低減する。以下、極性反転の判断手法について詳述する。
図4(a)に、正の領域(振幅中心よりも大きい領域)において、U相の指令電圧vucとV相の指令電圧vvcとがキャリアよりも大きい状態でこれらの大小関係が逆転する際の操作信号gup,gvpとUV相間電圧との推移を示す。図示されるように、U相の指令電圧vucの方がV相の指令電圧vvcよりも高い場合、操作信号gupが論理「H」となる期間は、操作信号gvpが論理「H」となる期間に完全に包含される。これに対し、U相の指令電圧vucの方がV相の指令電圧vvcよりも低い場合、操作信号gupが論理「H」となる期間は、操作信号gvpが論理「H」となる期間を完全に包含する。このため、指令電圧vucの方が大きい状態から指令電圧vvcの方が大きい状態へと変化する際における極性反転が生じるタイミングは、U相の操作信号gupの立ち下がりエッジと一致する。詳しくは、U相の操作信号gupの立ち下がりエッジにおけるV相の操作信号gvpの論理値が反転するタイミングと一致する。これにより、極性反転の有無を適切に判断することができる。
更に、極性反転後、再度反転後の極性となるタイミングは、V相の操作信号gvpの立ち上がりエッジと一致する。詳しくは、V相の操作信号gvpの立ち上がりエッジにおいてU相の操作信号gupの論理値が変化するタイミングと一致する。
このように、指令電圧が正であって且つキャリアよりも大きい場合の極性反転タイミングは、反転後において印加電圧(指令電圧)が小さくなる方の立ち下がりエッジにおいて、大きくなる方の操作信号の論理値の変化するタイミングとなる。また、反転後、再度反転した極性となるタイミングは、大きくなる方の立ち上がりエッジにおいて、小さくなる方の操作信号の論理値の変化するタイミングとなる。
ここで、上側アームのスイッチング素子SW1,SW3,SW5の操作に際しては、指令電圧が正の領域のみ、極性反転の有無を判断すればよい。これは、指令電圧が負の領域においては、上側アームのスイッチング素子SW1、SW3,SW5を介して電流が流れないことによる。これに対し、下側アームの操作信号gun,gvn,gwnにおいては、指令電圧が負の領域のみ、極性反転の有無を判断すればよい。
ただし、下側アームの操作信号gun,gvn,gwnについては、上側アームの操作信号gup,gvp,gwpの論理反転信号となるため、上記において印加電圧の大きい方を小さい方と、また、小さい方を大きい方と読み替える必要がある。すなわち、極性反転タイミングは、反転後において印加電圧(指令電圧)が大きくなる方の立ち下がりエッジにおいて、小さくなる方の操作信号の論理値の変化するタイミングとなる。また、反転後、再度反転した極性となるタイミングは、小さくなる方の立ち上がりエッジにおいて、大きくなる方の操作信号の論理値の変化するタイミングとなる。
以上より、キャリアよりも大きい状態で指令電圧の大小関係が逆転する際に上側アーム及び下側アームの双方についての参照する極性反転タイミングは、反転後において印加電圧(指令電圧)と振幅中心との差の絶対値が小さくなる方の立ち下がりエッジにおいて、同絶対値が大きくなる方の操作信号の論理値の変化するタイミングとなる。また、反転後、再度反転した極性となるタイミングは、上記絶対値が大きくなる方の立ち上がりエッジにおいて、同絶対値が小さくなる方の操作信号の論理値の変化するタイミングとなる。
ただし、図4(b)に示す例からもわかるように、キャリアよりも小さい領域で指令電圧の大小関係が逆転する際には、上記極性反転タイミング、及び反転後再度反転した極性となるタイミングと上記エッジのタイミングとの組み合わせが逆となる。図4(b)では、正の領域(振幅中心よりも大きい領域)において、U相の指令電圧vucとV相の指令電圧vvcとがキャリアよりも小さい状態でこれらの大小関係が逆転する際の操作信号gup,gvpとUV相間電圧との推移を例示した。
なお、PWM制御においては通常、指令電圧vuc,vvc,vwcの更新周期とキャリアの周期とが一致して且つ、更新タイミングがキャリアの山(最大値)又は谷(最小値)とされている。このため、こうした場合には、指令電圧の大小関係の逆転は、キャリアよりも大きい領域か小さい領域かのいずれか一方でのみ生じ、他方では生じない。ちなみに、図4(a)では、キャリアの谷で指令電圧を更新する例を示し、図4(b)は、キャリアの山で指令電圧を更新する例を示した。
図5に、上記手法によって極性反転をしつつスイッチング素子SW1〜SW6のゲートに電圧を印加するドライブ回路DSの内部構成を示す。なお、ドライブ回路DSは、いずれも同一構造であるが、図中、U相上側アームのドライブ回路DSを例示している。また、以下では、スイッチング素子SW1〜SW6を総括してスイッチング素子SWと表記する。
ドライブ回路DSは、電圧レベル変換器30を備えている。電圧レベル変換器30は、入力端子T1から取り込まれる信号の電圧レベルをスイッチング素子SWのゲートに印加するために適切な電圧レベルに変換するものである。電圧レベル変換器30の出力信号は、バッファ32に取り込まれる。バッファ32は、例えばエミッタフォロワを備えて構成されている。バッファ32の出力は、抵抗体34、出力端子T4を介してスイッチング素子SW(例えばスイッチング素子SW1)のゲートに印加される。また、抵抗体34には、スイッチング素子36及び抵抗体38が並列接続されている。これにより、スイッチング素子36がオン状態となる場合には、オフ状態である場合と比較して、バッファ32及びスイッチング素子SWのゲート間の抵抗値が低減される。
フリップフロップ40は、入力端子T1に対応する相の指令電圧と振幅中心との差の絶対値の方が入力端子T2に対応する相の指令電圧と振幅中心との差の絶対値よりも大きい状態から小さい状態へと、これら指令電圧がキャリアよりも大きい状態で移行する際の極性反転タイミングを検出するためのものである。また、フリップフロップ40は、入力端子T1に対応する相の指令電圧と入力端子T2に対応する相の指令電圧とがキャリアよりも小さい状態で、上記移行に際しての極性反転直後に再度反転後の極性となるタイミングを検出するものである。フリップフロップ40は、入力端子T1から取り込まれる信号がインバータ42により論理反転された信号をクロック端子に取り込む。そして、クロック端子を介して取り込んだ信号の立ち上がりエッジに同期して、入力端子T2から入力される信号をD入力端子に取り込む。これにより、Q出力端子から出力される信号が、新たにD入力端子に取り込まれる信号によって更新される。
フリップフロップ40のQ出力端子には、ワンショット回路44が接続されている。このワンショット回路44は、入力される信号、すなわち、フリップフロップ40のQ出力端子から出力される信号の立ち上がりエッジをトリガとして、論理「H」のパルス信号を出力するものである。このパルス信号は、一回のスイッチング時間程度の間に限って論理「H」となるものである。
一方、フリップフロップ46は、入力端子T3に対応する相の指令電圧と振幅中心との差の絶対値の方が入力端子T1に対応する相の指令電圧と振幅中心との差の絶対値よりも大きい状態から小さい状態へと、これら指令電圧がキャリアよりも大きい状態で移行する際の極性反転直後に再度反転後の極性となるタイミングを検出するものである。また、フリップフロップ46は、入力端子T3に対応する相の指令電圧と入力端子T1に対応する相の指令電圧とがキャリアよりも小さい状態で、上記移行に際しての極性反転直後に再度反転後の極性となるタイミングを検出するものである。フリップフロップ46は、入力端子T1に入力される信号をクロック端子に取り込む。そして、クロック端子を介して取り込んだ信号の立ち上がりエッジに同期して、入力端子T3から入力される信号をD入力端子に取り込む。そして、取り込んだ信号の反転信号を反転出力端子から出力する。
フリップフロップ46の反転出力端子には、ワンショット回路48が接続されている。このワンショット回路48は、入力される信号、すなわち、フリップフロップ46の反転出力端子から出力される信号の立ち上がりエッジをトリガとして、論理「H」のパルス信号を出力するものである。このパルス信号は、一回のスイッチング時間程度の間に限って論理「H」となるものである。
上記ワンショット回路44,48の出力は、OR回路49に取り込まれる。OR回路49では、これら出力の論理和信号をスイッチング素子36に出力する。これにより、スイッチング素子36は、ワンショット回路44,48によってパルス信号が出力されている期間のみオフ状態となる。換言すれば、入力端子T1から取り込まれる信号の立ち下がりエッジにおいて入力端子T2から取り込まれる信号が論理反転する際、及び入力端子T1から取り込まれる信号の立ち上がりエッジにおいて入力端子T3から取り込まれる信号が論理反転する際にのみオフ状態となる。これにより、相間電圧の極性が反転する際、及び反転直後再度反転した極性となる際に限って、ゲートへの充電速度及びゲートからの放電速度を低減することができる。ちなみに、先の図2には、UV相間電圧の極性反転の検出態様を示した。
なお、上側アームのV相、W相のドライブ回路DSの入力端子T1〜T3に入力されるU相、V相、W相の操作信号gup,gvp,gwpは、U相のドライブ回路DSにおける入力パターンを基準として、これをV相、W相の順に巡回置換することで得られる。また、下側アームのV相、W相のドライブ回路DSの入力端子T1〜T3に入力されるU相、V相、W相の操作信号gun,gvn,gwnは、U相のドライブ回路DSにおける入力パターンを基準として、これをV相、W相の順に巡回置換することで得られる。
図6に、上記回路による極性反転時のスイッチング素子SW1の操作態様を例示する。詳しくは、図6(a)は、U相操作信号gupの推移を示し、図6(b)は、フリップフロップ40の出力信号の推移を示し、図6(c)は、ワンショット回路44の出力の推移を示し、図6(d)は、スイッチング素子SW1のコレクタ電流の推移を示し、図6(e)は、スイッチング素子SW1のコレクタ及びエミッタ間の電圧の推移を示す。
図示されるように、スイッチング素子SW1の操作信号gupの立ち下がりエッジに同期してフリップフロップ40の出力が論理「H」に反転すると、ワンショット回路44からパルス信号が出力される。これにより、上記スイッチング素子36がオフとされるため、ゲートの放電速度が低下し、コレクタ電流の減少速度と、コレクタ及びエミッタ間の電圧の上昇速度とが緩和される。これにより、コレクタ及びエミッタ間の電圧の上昇に伴うサージノイズが低減される。なお、図6(d)及び図6(e)中、破線は、ゲートの放電速度を低下させない場合の例を示す。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)極性が反転すると判断される場合、スイッチング素子SW1〜SW6の切り替え時間を伸長させた。これにより、極性が反転する際のサージノイズを好適に抑制することができ、ひいては部分放電を好適に抑制することができる。
(2)インターフェース18を介してモータジェネレータ10側(高圧システム側)に出力される操作信号gup,gun,gvp,gvn,gwp,gwnに基づき、相間電圧の極性の反転の有無を判断した。これにより、極性反転が生じると判断される場合に、スイッチング素子36をオフ状態に切り替える指令信号を、マイコン20から出力することなく、高圧システム内で生成することができる。このため、マイコン20を備える低圧システムとインバータ12を備える高圧システムとを絶縁する絶縁手段の数を増加させることなく、スイッチング素子36のスイッチング状態の切り替えを行うことができる。
(3)入力端子T1から取り込まれる信号の立ち下がりエッジに同期して入力端子T2から取り込まれる信号の論理値を記憶するフリップフロップ40と、フリップフロップ40のQ出力端子から出力される信号の立ち上がりエッジに同期してパルス信号を生成するワンショット回路44とを備えた。また、入力端子T1から取り込まれる信号の立ち上がりエッジに同期して入力端子T3から取り込まれる信号を記憶するフリップフロップ46と、フリップフロップ46の反転出力端子から出力される信号の立ち上がりエッジに同期してパルス信号を出力するワンショット回路48とを備えた。これにより、フリップフロップ40、46によって極性の反転の有無や極性反転後再度の反転を好適に判断することができるとともに、パルス信号によってスイッチング素子36をオン状態とする期間を適切に設定することができる。
(4)相間電圧の極性が反転した後、相間電圧がゼロとなり再度反転後の極性となるタイミングを判断し、再度反転後の極性となるタイミングであると判断される場合にも、スイッチング素子SW1〜SW6のスイッチング時間を伸長させた。これにより、サージノイズをいっそう好適に抑制することができ、ひいては部分放電をいっそう好適に抑制することができる。
(5)スイッチング素子SW1〜SW6のゲートに電圧を印加する経路を、抵抗体34,38及びスイッチング素子36を備えて構成することで、同経路の抵抗値を可変設定した。こうした構成によれば、経路の抵抗値を増大させることで、スイッチング状態の切り替え時間を伸長させることができる。
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図7に、本実施形態にかかるドライブ回路DSの回路構成を示す。なお、図7において、先の図5と同一の部材については便宜上同一の符号を付している。
ワンショット回路44aは、フリップフロップ40のQ出力端子から出力される信号の立ち上がりに同期してパルス信号を生成する。ただし、ワンショット回路44aは、入力端子T1から入力される信号の立ち下がりエッジに同期してスイッチング素子SWのゲートの放電が開始された後ミラー期間に移行する際にパルス信号を生成するように、立ち下がりのタイミングに対して遅延を生じさせる機能を有する。ワンショット回路44aの出力するパルス信号は、電圧レベル変換器50に取り込まれる。電圧レベル変換器50は、ワンショット回路44aの出力信号の論理レベルに応じて、上記電圧レベル変換器30による変換レベルと同一の電圧レベルに変換する。電圧レベル変換器50の出力信号を取り込むバッファ52は、上記バッファ32と同一の構成を有する。バッファ52の出力端子は、ダイオード54のアノード側に接続されており、ダイオード54のカソード側は、バッファ32及び抵抗体34間に接続されている。
一方、ワンショット回路48aは、フリップフロップ46の反転出力端子から出力される信号の立ち上がりに同期して、論理「L」となるパルス信号を生成する。このワンショット回路48aは、入力端子T1から入力される信号の立ち上がりエッジに同期してスイッチング素子SWのゲートの充電が開始された後ミラー期間に移行する際にパルス信号を生成するように、立ち上がりのタイミングに対して遅延を生じさせる機能を有する。ワンショット回路48aの出力するパルス信号は、電圧レベル変換器56に取り込まれる。電圧レベル変換器56は、ワンショット回路48aの出力信号の論理レベルに応じて、上記電圧レベル変換器30による変換レベルと同一の電圧レベルに変換する。電圧レベル変換器56の出力は、バッファ58を介してダイオード60のカソード側に接続されており、ダイオード60のアノード側は、バッファ32及び抵抗体34間に接続されている。
図8に、上記回路によるU相の極性反転時近傍の処理を示す。詳しくは、図8(a)にU相の操作信号gupの推移を示し、図8(b)に、フリップフロップ40のQ出力端子の信号の推移を示し、図8(c)に、フリップフロップ46の反転出力端子の信号の推移を示し、図8(d)に、ワンショット回路44a出力するパルス信号の推移を示し、図8(e)に、ワンショット回路48aの出力するパルス信号の推移を示す。また、図8(f)に、スイッチング素子SW1のゲート電圧の推移を示し、図8(g)に、スイッチング素子SW1のコレクタ電流の推移を示し、図8(h)に、スイッチング素子SW1のコレクタ及びエミッタ間の電圧の推移を示す。
図示されるように、操作信号gupの立ち下がりエッジに同期してフリップフロップ40のQ出力端子の出力信号が論理「H」に反転し、バッファ32によってスイッチング素子SW1のゲートに印加される電圧が論理「L」とされ、ゲート電圧が低下していく。そして、立ち下がりタイミングから所定時間経過し、ゲート電圧の変化が一時的に滞るミラー期間に移行した後において、ワンショット回路44aから論理「H」のパルス信号が出力される。これにより、スイッチング素子SW1のゲートの電圧が、バッファ52の出力電圧からダイオード54による電圧降下量を減算した値程度まで上昇する。そして、ワンショット回路44aの出力が再度論理「L」に反転すると、ゲート電圧がパルス信号の出力前の値程度まで低下し、その後ミラー期間の終了によってゲート電圧が論理「L」に対応する値にまで低下する。これにより、図8(h)に実線にて示すように、コレクタ及びエミッタ間の電圧の上昇に伴うサージノイズが、上記パルス信号による一時的なゲート電圧の上昇処理を行わない場合(同図8(h)に破線にて表記)と比較して低減される。
また、操作信号gupの立ち上がりエッジに同期してフリップフロップ46の反転出力端子の出力信号が論理「H」に反転し、バッファ32によってスイッチング素子SW1のゲートに印加される電圧が論理「H」とされ、ゲート電圧が上昇する。そして、立ち上がりタイミングから所定時間経過し、ゲート電圧の変化が一時的に滞るミラー期間に移行した後において、ワンショット回路48aから論理「L」のパルス信号が出力される。これにより、スイッチング素子SW1のゲート電圧が、ダイオード60の電圧降下量程度の値まで低下する。そして、ワンショット回路48aの出力が再度論理「H」に反転すると、ゲート電圧がパルス信号の出力前の値程度まで上昇し、その後ミラー期間の終了によってゲート電圧が論理「H」に対応する値にまで上昇する。これにより、図8(g)に実線にて示すように、コレクタ電流が、上記パルス信号による一時的なゲート電圧の低下処理を行わない場合(同図8(g)に破線にて表記)と比較して低減される。このため、コレクタ電流の急変に起因するサージノイズを好適に低減することができる。
以上詳述した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(2)〜(5)の効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
(6)スイッチング素子SW〜SW6のスイッチング状態を切り替えるべく、ゲートに印加する電圧を変化させる過程の途中で、印加する電圧をその変化方向とは逆側に一時的に変化させた。これにより、切り替えに際してのサージノイズの影響を好適に抑制することができる。
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
上記第1の実施形態では、指令電圧vuc,vvc,vwcの位相の関係が一義的に定まるとの前提の下、ドライブ回路DSを構成した。しかし、車両の後退等によってモータジェネレータ10の回転が逆回転となる場合には、指令電圧vuc,vvc,vwcの位相の関係が変化する。詳しくは、正回転である場合には、先の図2に示したように、正の領域において指令電圧vucが指令電圧vvcよりも大きい状態から小さい状態へと移行し、負の領域において指令電圧vucが指令電圧vvcよりも小さい状態から大きい状態へと移行していたのが、逆回転では、逆となる。すなわち、逆回転である場合には、正の領域において指令電圧vucが指令電圧vvcよりも小さい状態から大きい状態へと移行し、負の領域において指令電圧vucが指令電圧vvcよりも大きい状態から小さい状態へと移行するようになる。
このため、正回転時におけるU相及びV相間の関係が、逆回転時におけるU相及びW相間の関係と等しくなり、正回転時におけるV相及びW相間の関係が、逆回転時におけるV相及びU相間の関係と等しくなり、正回転時のW相及びU相間の関係が、逆回転時におけるW相及びV相間の関係と等しくなる。したがって、逆回転時において相間電圧の極性反転等を判断する際には、ドライブ回路DSのフリップフロップ40,46に入力される信号を変更する必要がある。
図9に、本実施形態にかかるドライブ回路DSの回路構成を示す。なお、図7において、先の図5と同一の部材については便宜上同一の符号を付している。
図示されるように、本実施形態では、入力端子T2及び入力端子T3から取り込まれる信号を、それぞれフリップフロップ40のD入力端子及びフリップフロップ46のD入力端子にいかに割り振るかを切り替える選択部70を備えている。この選択部は、入力端子T5から取り込まれる切り替え信号によって操作される。すなわち、モータジェネレータ10の正回転時においては、入力端子T2から取り込まれる信号をフリップフロップ40のD入力端子に、また、入力端子T3から取り込まれる信号をフリップフロップ46のD入力端子にそれぞれ割り振る。一方、モータジェネレータ10の逆回転時においては、入力端子T2から取り込まれる信号をフリップフロップ46のD入力端子に、また、入力端子T3から取り込まれる信号をフリップフロップ40のD入力端子にそれぞれ割り振る。これにより、モータジェネレータ10の回転方向にかかわらず、相間電圧の極性反転を好適に判断することができる。
なお、上記入力端子T5から取り込まれる切り替え信号は、全てのドライブ回路DS間で共通の信号とする。この信号は、マイコン20から出力されるようにすればよい。
以上詳述した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1)〜(6)の効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
(7)逆回転時において相間電圧の極性反転等を判断する際には、ドライブ回路DSのフリップフロップ40,46に入力される信号を変更した。これにより、モータジェネレータ10の回転方向にかかわらず、相間電圧の極性反転を好適に判断することができる。
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図10に、本実施形態にかかるモータジェネレータの制御システムの全体構成を示す。
本実施形態では、高圧バッテリ14の電圧を昇圧する昇圧回路80を備えている。このため、モータジェネレータ10の相間電圧に印加される電圧は、高圧バッテリ14によって印加される値よりも更に高く、昇圧回路80によって昇圧された値に応じたものとなる。このため、モータジェネレータ10の巻き線間の絶縁についても、昇圧回路80が動作している場合に対応できる程度のものとされている。
ただし、この場合、昇圧回路80を用いない場合には、モータジェネレータ10に部分放電が生じる可能性は低くなる。このため、この場合にまで極性反転時においてスイッチング時間を伸長させたのでは、スイッチング損失の増大を招くのみとなる。そこで本実施形態では、昇圧回路80による昇圧動作がなされていない場合には、極性反転に基づくスイッチング状態の切り替え時間の伸長処理を行わない。
すなわち、マイコン20から昇圧回路80の動作指令が出されると、この指令は、昇圧回路80のみならず、各ドライブ回路DSにも入力される。そして、各ドライブ回路DSでは、この入力信号に基づき昇圧動作中であると判断される場合には(図のフローチャートのステップS10:YES)、極性判断を実行する(ステップS12)ものの、昇圧動作中でないと判断される場合には(ステップS10:NO)、極性判断を行わない(ステップS14)。
以上詳述した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1)〜(6)の効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
(8)昇圧回路80の停止時には極性反転時のスイッチング切り替え時間の伸長処理を禁止することで、部分放電を抑制しつつも、スイッチング損失を極力低減することができる。
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記第3の実施形態における第1の実施形態からの変更点によって、先の第2、第4の実施形態を変更してもよい。
・上記第4の実施形態における第1の実施形態からの変更点によって、先の第2の実施形態を変更してもよい。
・上記第3の実施形態において、逆回転時には、フリップフロップ40のクロック端子に印加する信号を入力端子T1から取り込まれる信号として且つ、フリップフロップ46のクロック端子に印加する信号を入力端子T1から取り込まれる信号の論理反転信号としてもよい。
・極性反転時のみスイッチング時間を伸長させるなら、例えば、キャリアの谷でのみ指令電圧を更新して且つフリップフロップ46等を省いたり、キャリアの山でのみ指令電圧を更新して且つフリップフロップ40等を省いたりしてもよい。
・キャリアとしては、三角波に限らず、例えば鋸波であってもよい。この場合、先の第1の実施形態において、右肩上がりの鋸波(漸増した後ステップ状に初期値に戻る波形)を用いるときには、立ち上がりエッジを用い、また、右肩下がりの鋸波(ステップ状に増大した後漸減する波形)を用いるときには、立ち下がりエッジを用いることで極性反転タイミングを検出することができる。これは、指令電圧の大小関係の逆転直後に指令電圧とキャリアの交差するタイミングのうち、キャリアが漸増又は漸減しつつ交差するタイミングによって生成されるエッジが極性反転タイミングとなることによる。なお、上記鋸波形状のキャリアを用いる場合には、ドライブ回路DSにおいて、フリップフロップ40,46いずれか一つのみを備えることで極性反転タイミングを確実に判断することができる。なおこの場合において、極性反転後再度反転するタイミングにおいても部分放電対策を所望する場合には、ワンショット回路のパルス幅を伸長させればよい。
・上記実施形態では、車載低圧システムを構成するマイコン20から高圧システムに出力される操作信号gup、gun,gvp,gvn,gwp,gwnに基づき、極性の反転の有無を判断したがこれに限らない。例えばマイコン20内において、これら操作信号gup、gun,gvp,gvn,gwp,gwnを生成する際に極性反転の有無を判断してもよい。
・極性が反転すると判断される場合等において、スイッチング素子のスイッチング状態の切り替え時間を伸長させる手段としては、上記各実施形態で例示したものに限らない。例えば、スイッチング素子の導通制御端子に最終的に印加する電圧(例えば図5における電圧レベル変換器30の出力)を可変とするものであってもよい。更に伸長手段に限らず、要は、サージノイズを抑制するようにスイッチング素子の操作態様を変更可能なもの等、部分放電を抑制すべくスイッチング素子の操作態様を変更可能なものであればよい。
・その他、電力変換回路の駆動装置としては、車載ハイブリッド車に搭載されるものに限らず、例えば電気自動車に搭載されるものであってもよい。