JP5105768B2 - 多孔質前駆体製造装置 - Google Patents

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本発明は、多孔質構造体を製造する装置に関し、より詳しくは微細な連通孔を多数有する多孔質構造体を形成するための前駆体を製造する前駆体製造装置に関する。
微細な連通孔を多数有する多孔質構造体(多孔質成形体ともいう)を製造する技術として、例えば特許文献1の技術が知られている。特許文献1の技術は、ハニカム構造のダイス(金型)を通してセラミックススラリーを押出し出すことによりセラミックハニカム成形品を形成する方法に関し、詳しくは下方向に押出されるセラミック成形体に対し、押出された成形体の外形部をガイドして真っ直ぐになるようにし、かつ成形体下端面を定荷重で支持して成形体下部の横ずれを抑制し、成形体の曲げやねじりを防止しつつ成形体を所定長さに切断する方法により、ハニカム構造のセラミック成形体を形成するセラミックの押出し成形方法に関する。
この技術によると、次の効果が得られるとされる。
(1) 押出し直後に、成形体の外形部をガイドするので、曲がりやねじりの発生を抑制することができる。
(2) 成形体下部と治具上面とを一定力で当接させているので、安定した摩擦力が得られ、一層曲がりやねじりの発生を抑制することができる。
(3) 押出し中の成形体を支持するエレベータを2式設け交互に用いることにより、切断後に押出されている新たな成形体を素早く支持することができ、押出速度の早い成形体にも対応でき、生産性が極めて高い。
特開2001−47419号公報(要約、段落0003、0020)
しかし、この技術は、ハニカム構造のダイスからセラミックススラリーを押し出して成形する方式であるので、ハニカム開孔径(蜂の巣状の空洞径)やハニカム壁の厚さ(ハニカム壁厚)を十分に小さくすることができず、精々ミリメーターオーダーで規制できるに過ぎない。
また、この技術によりハニカム開孔径を小さくしようとして、ダイスの孔径を小さくすると、高い押し出し圧力が必要となるので装置が大型化する。
更に、押し出された成形体は、押し出し直後に押し出し方向に直交する方向に圧縮戻り膨張するので、直交方向に構造的歪みが生じるという問題がある。
ところで、微細な連通孔を多数有するハニカム構造体などの多孔質構造体は、空気清浄機用フィルムや脱臭フィルター、水質清浄器用フィルターとして使用できるばかりでなく、再生医療用基材、クロマトグラフィー担体、微生物担持基材、吸湿材、センサーデバイス基材、プロテインチップ基材、熱伝導性制御材料等としての利用が可能であるが、多孔質構造体をこのような広範囲な分野で好適に利用できるようにするためには、開孔径や壁厚をマイクロメーターないしナノメーターレベルとする必要がある。
例えば空気清浄フィルターへの利用に際しては、ハニカム開孔径を小さくし壁厚を薄くすると、単位体積当たり又は単位重量当りのハニカム開孔の表面積が大きくなる。よって、空隙率が大きくなるので、空気を通したときの圧力損失を小さくすることができる。
また、ハニカム構造体からなるフィルターに酸化チタンなどの光触媒を担持させる場合においては、ハニカム開孔径を小さくしかつ壁厚を薄くすると、単位重量当たり若しくは単位体積あたりの光触媒担持量を多くできる。光触媒効果は光触媒粒子の最表面での反応であるので、その分、光触媒効果を高めることができる。
このように、ハニカム開孔径やハニカム壁厚の大小は、機能性フィルターの性能を左右する重要要因となる。然るに、上記特許文献1の技術にかかるダイスを用いた押し出し成形法では、ダイスの孔径を小さくすると、相対的に押出成形物の曲がりや捩れの程度が大きくなり、この応力に起因してハニカム構造が破壊されるなどの問題が生じる。また、押し出し成形法ではマイクロメーターないしナノメーターレベルの開孔径や壁厚を実現することはできない。すなわち、上記特許文献1の技術では、多様な用途で好適に使用できる多孔質構造体を製造することは困難である。
本発明の課題は、上述の問題点を解消することにある。本発明の目的は、押し出し成形法を用いることなく、ハニカム構造などの多孔質構造体となすことのできる前駆体(以下、多孔質前駆体という)を自己成形的に簡便に形成することができる多孔質前駆体製造装置を提供することである。
また、本発明の他の目的は、ナノメートルないしマイクロメートルレベルで開孔径や壁厚み規定し得、かつ応力歪のない多孔質構造体となすことのできる多孔質前駆体を効率よく製造する多孔質前駆体製造装置を提供することである。
ここで、本明細書でいう多孔質前駆体とは、乾燥または乾燥・焼成することにより多孔質構造体と成すことができるものをいい、多孔質構造体とは、一方端面から他方端面に連通する孔(開孔又は細孔という)が多数存在する構造体をいう。上記連通する孔は、一本の連続する孔の他、複数の細孔が互いに連通することにより、結果として一方端面から他方端面に孔が連通する状態になったものでもよい。また、その形状は、直線でも蛇行したものでもよい。
上記「多数」とは、「複数」を含む概念である。また、多孔質構造体には、いわゆるハニカム構造や繊維状多孔質構造、メンブレンフィルタが含まれる。ハニカム構造は、その断面形状が円、楕円、多角形など何れであってもよい。
上記課題を解決する多孔質前駆体製造装置の基本構成は次の通りである。
(1)少なくとも水を含む多孔質構造体原料を収容する原料ホルダーと、上部に前記原料ホルダーを出し入れできる挿入口を有し、内部に冷媒を備えた冷媒槽と、前記冷媒槽内の上下に変動する冷媒液面の位置を連続的に測定することのできる液面位置センサーと、前記液面位置センサーによって測定された冷媒液面位置との関係における前記原料ホルダーの相対的上下動速度を制御しつつ前記原料ホルダーを前記冷媒に進入させる原料ホルダー位置制御手段と、を備える多孔質前駆体製造装置。
この構成によると、押出し成形法を用いることなくして、ハニカム構造や繊維状多孔質構造などを有する多孔質構造体の前駆体を自己成形的に簡便に製造することができる製造装置を実現することができる。この装置で製造した多孔質前駆体は、乾燥処理又は乾燥と焼成処理とを行なうことにより容易に多孔質構造体に変化する。この原理等を説明する。
上記構成では、押出し成形法や加圧成形法ではなく、多孔質構造体原料中に含まれる水を凍らせて氷結路を形成し、これをテンプレートとして構造体中に細孔(連続する空隙路)を形成する形成方法を採用する。この形成方法においては、氷結路は細孔のテンプレートとなるものであるので、氷結路は多孔質構造体原料中の一方面から他方面に連なったものを意味し、本発明では、このような氷結路の形成されたものを多孔質前駆体と称する。
ここで、氷結路を細孔形成用のテンプレートとして利用する多孔質構造体形成方法においては、氷結路の大きさ、形状、分布密度などが多孔質構造体の内部構造を規定する要素となる。言い換えると、多孔質構造体の開孔径(細孔直径)、開孔の壁厚(細孔相互間の距離)、細孔の分布密度、開孔率(100×開孔面積の総和/全断面積)などは、氷結路の大きさ、形状、分布密度などによって規制される。したがって、氷結路の大きさや形状等を制御することにより、多孔質構造体の開孔径や壁厚などを制御できる。そして、氷結路を構成する氷結晶の大きさや発達方向などはナノメートルないしマイクロメートルレベルで制御できる。よって、上記構成によると、ナノメートルないしマイクロメートルレベルで内部構造を規定し得た多孔質構造体の前駆体を、押出し成形法や加圧成形法を用いることなく、形成することができる。
すなわち、上記構成によると、テンプレートとしての氷結路の形状、大きさ、分布密度などをナノメートルないしマイクロメートルレベルで制御し得た多孔質前駆体を自己成形的に簡便に製造することができる。この多孔質前駆体を乾燥又は乾燥・焼成することにより、ナノメートルないしマイクロメートルレベルで開孔径、開孔の壁厚、分布密度、開孔率などを任意に規定し得た多孔質構造体を製造することができる。
上記構成について更に説明する。上記液面位置センサーは、冷媒液面位置を常に監視しており、この液面位置との関係において原料ホルダー位置制御手段が原料ホルダーの上下動を制御する。詳しくは、原料ホルダー位置制御手段が原料ホルダーの冷媒液への浸漬深さ、浸漬速度などを制御する。これにより、原料ホルダー内の冷却状態をキメ細かく制御できる。よって、多孔質前駆体原料中に形成される氷柱の形や直径、氷柱の形成密度などを任意に規定し得た氷結路構造を有する多孔質前駆体を得ることができる。
多孔質前駆体中に形成された氷結路は、乾燥または乾燥・焼成処理により多孔質前駆体から抜け出るので、多孔質前駆体中に形成された氷結路は、細孔(空隙路)を形成するテンプレートとして機能する。よって、多孔質前駆体を乾燥または乾燥・焼成処理することにより、所望の内部構造を有する多孔質構造体を形成することができる。
上記構成における挿入口は、原料ホルダーを冷媒にまで挿入できるものであればよく、例えば開閉手段を備えた挿入口でもよく、単なる開口でもよい。
上記構成における「冷媒液面位置との関係における前記原料ホルダーの相対的上下動速度」は、原料ホルダーの絶対的速度ではなく、上下に変動する冷媒液面位置を基準にした相対的な速度を意味している。例えば、原料ホルダーを冷媒中に進入させると、冷媒液面位置が上昇する。したがって、原料ホルダーの相対的速度は、下降速度の絶対値と液面の上昇速度の絶対値とを加えたものとなる。
上記「上下動速度を制御」は、原料ホルダーの上下動を停止させることや相対的上下動速度をゼロとし冷媒液面と原料ホルダー底面の距離を一定に保つことをも含む概念である。
冷媒液面位置と原料ホルダーの位置関係について説明する。冷媒の蒸発や膨張収縮を無視した場合においては、原料ホルダーの底が冷媒液面より下方に進入すると、その浸漬体積に対応して冷媒液面の位置が上昇する。また、冷媒液に浸かっていた原料ホルダーが上昇すると、浸漬体積の減少に対応して冷媒液面の位置が下降する。そして、原料ホルダーの底が冷媒液面を脱した段階以降、または原料ホルダーの上下動が停止した状態においては、冷媒液面位置の変動が停止する。
他方、原料ホルダーの上下動がない場合であっても、冷媒液の蒸発や冷媒槽の膨張収縮によって液面位置が変動する
上記液面位置センサーは、原料ホルダーの上下動、冷媒液の蒸発、更には冷媒槽の膨張収縮など含めた液面位置の変動を検知し、冷媒液面位置との関係における相対位置、相対速度を検知するように構成されており、冷媒液面位置との関係において原料ホルダー位置制御手段が、原料ホルダーの上下動速度を制御する。よって、上記構成によると、多孔質前駆体原料中の氷の成長条件を微妙に変化させることができ、その結果として氷の大きさや形状を任意に規定することが可能になる。なお、冷媒液面や原料ホルダーの絶対的位置は、例えば装置本体上の上下動しない点を基準として検知できるようにすればよい。
(2)上記基本構成にかかる多孔質前駆体製造装置においては、前記原料ホルダーを支持する原料ホルダー保持具と、前記冷媒槽を載置するステージと、を備えるものとし、前記原料ホルダー位置制御手段が、前記原料ホルダー保持具又は/及び前記ステージを上下に駆動させることにより、前記液面位置センサーによって測定された冷媒液面位置との関係における前記原料ホルダーの相対的位置を上下させ、前記原料ホルダーの少なくとも底面を前記冷媒液面に漬け、かつこの位置関係を維持する手段である、とすることができる。
開孔率の大きい良質の多孔質構造を形成させるためには、多数の微細な氷結晶を徐々に発達させるのがよい。このための方法の1つとして、原料ホルダーの底のみを冷媒接触させて下方から上方に向かって氷結晶を徐々に成長させる方法があるが、気化熱を奪うことによって冷却する冷媒は蒸発速度が大きく、比較的短時間の間に冷媒液面が低下する。よって、原料ホルダーの底を冷媒液面に接触させたとしても、そのままでは次第に冷媒液面が低下するため底面と冷媒液面とが離れてしまう。
そこで、上記構成では、原料ホルダーの底を冷媒液面に接触させた状態や、または一定の深さまで浸漬した状態を維持できるように、冷媒液面位置と原料ホルダーの位置関係を常に監視し、原料ホルダーの位置を徐々に変動させる。具体的には、原料ホルダー位置制御手段が、液面位置センサーによって測定された冷媒液面位置との関係において、原料ホルダー保持具又は/及び上記ステージを上下に駆動させ、原料ホルダーの液面との関係における相対的位置を上下させることにより、原料ホルダーの底面を冷媒液面に漬け、冷媒液面と原料ホルダーとの関係を常に一定に保つ。この構成によると、細孔形成に好都合なテンプレートとしての微小氷結路を形成することができる。
(3)また、上記基本構成にかかる多孔質前駆体製造装置においては、前記原料ホルダーを支持する原料ホルダー保持具と、前記冷媒槽を載置するステージと、を備えものとし、原料ホルダー位置制御手段が、前記液面位置センサーによって測定された冷媒液面位置との関係における前記原料ホルダーの相対的上昇速度を制御しつつ、前記ステージを上方に駆動させるステージ駆動機構からなる、ものとすることができる。
この構成では、冷媒液面に接するまでステージを速やかに上昇させ、冷媒液面に接触後は予め定められた速度で上昇させることができるので、例えば予め定められた速度を、原料ホルダーの冷媒温度における水の凍結速度と同じ速度とするなどにより、効率よく良質の多孔質前駆体を製造することができる。
(4)また、上記基本構成にかかる多孔質前駆体製造装置においては、前記原料ホルダーを支持する原料ホルダー保持具と、前記冷媒槽を載置するステージと、を備えものとし、原料ホルダー位置制御手段が、前記液面位置センサーによって測定された冷媒液面位置との関係における相対的下降速度を制御しつつ、前記原料ホルダー保持具を下方に駆動させる原料ホルダー保持具駆動機構からなる、ものとすることができる。
この構成では、原料ホルダー保持具を介して、原料ホルダーを上下に移動させることにより、原料ホルダーの冷媒への浸漬状態を制御する。この構成においても、冷媒液面に接するまで原料ホルダーを速やかに下降させ、冷媒液面に接触後は予め定められた速度で下降させる等により、効率よく良質の多孔質前駆体を製造することができる。
(5)また、上記各構成にかかる多孔質前駆体製造装置において、上記多孔質前駆体製造装置は、更に、冷媒槽内の温度を測定する温度測定器と、上記冷媒槽の外部から当該冷却容器を加熱冷却できる加熱冷却手段と、備える構成とすることができる。
この構成であると、加熱冷却手段により冷媒槽中の冷媒を過冷却し、しかる後に、温度測定器を介して冷媒槽の冷媒温度を監視しつつ、冷媒槽を加熱して任意の温度に調節することができる。例えば、冷媒槽の冷媒をエタノールとし、加熱冷却手段における冷却を液体窒素とすることにより、−114.5℃〜0℃の範囲の冷媒温度を実現することができ、これにより氷の成長速度を一層きめ細かく制御できる。
(6)また、上記各構成にかかる多孔質前駆体製造装置において、上記多孔質前駆体製造装置は、更に多孔質前駆体製造装置本体の振動を抑制する除振機構を備えた構成とすることができる。
この構成では、除振機構が原料ホルダーや冷媒槽の振動を抑えるので、氷を成長させるに際し一層精密な制御が可能になる。
(7)また、上記各構成にかかる多孔質前駆体製造装置において、上記多孔質前駆体製造装置は、更に上記冷媒槽と上記ステージとの間の熱伝導を遮断する断熱部材を備えた構成とすることができる。
断熱部材を有する構成であると、ステージへの伝熱が遮断されるので冷媒の無用な温度上昇を抑制することができるとともに、ステージが冷却されて駆動障害を生じたり、結露により装置が劣化することを防止することができる。
(8)また、上記各構成にかかる多孔質前駆体製造装置において、上記原料ホルダーは、底部の熱伝導度と側部の熱伝導度とが異なるものとすることができる。
原料ホルダーの底部の熱伝導度と側部の熱伝導度とを違えて両者における冷却効率を変えることにより、一層きめ細かに氷の成長方向や成長速度を制御することができる。
本発明によれば、細孔テンプレートとなる氷結路をマイクロメートルないしナノメートルレベルで自己成形的に作り込んだ多孔質前駆体を簡便に製造することのできる多孔質前駆体製造装置を実現することができる。本発明多孔質前駆体製造装置で製造した多孔質前駆体は、これを乾燥又は乾燥・焼成することにより、細孔径、細孔壁厚などがマイクロメートル以下に規制され、開孔率、細孔密度などが任意に規定されてなるマイクロハニカム構造体やマイクロファイバー構造体などの多孔質構造体となすことができる。
また、このようにして得た多孔質構造体は、高圧で押し出し成形したものでないので応力歪みを有しない。それゆえ形状保持性、耐久性に優れる。
また、本発明によれば、外部振動に影響されることなく、良質な多孔質前駆体を製造することができる。
また、本発明によれば、冷媒に起因する装置性能の低下を防止し得た多孔質前駆体製造装置を実現することができる。
このような本発明多孔質前駆体製造装置で製造した多孔質前駆体は、有害化学物質を除去するための有害物質除去フィルター、再生医療分野で使用する組織再生用基材、微生物を担持するための基材、吸湿材料、クロマトグラフィー用担体、センサーデバイス基材、真空断熱材、電池やキャパシタ電極用基材、などの前駆体材料として利用できる。
この発明を実施する最良の形態の一つは、ゾル状原料の凍結濃縮によるゲル化を利用した装置である。この装置は、セラミックスと水を含む多孔質前駆体原料中の水を凍結させ、凍結した氷を発達させて氷結路を形成するとともに、ゾル状原料の凍結濃縮により氷結路の周囲をゲル化させるものである。この装置により形成した前駆体には、細孔を作製するテンプレートとしての氷結路が作り込まれているので、氷結路を乾燥により除去することにより、最終目的物としての多孔質構造体を効率よく生産することができる。多孔質構造体が得られる原理について更に説明する。
<製造原理>
ゾル状原料の凍結濃縮によるゲル化を利用した多孔質前駆体の製造方法は、原料のゾルに含まれる水を凍結させて氷結路を形成させる共に、氷結路相互の間に原料物質のゲルを析出させる技術である。このようにして形成されたものを多孔質前駆体という。
多孔質前駆体中の氷結路は、最終目的物たる多孔質構造体の開孔(細孔または空隙路という)を形成するためのテンプレートとなる。氷結路の大きさ、形状、分布密度などは、氷結晶の成長条件を規定することにより制御することができ、最終目的物たる多孔質構造体の開孔径(空隙路直径)、開孔の壁厚、分布密度、開孔率などは氷結路の上記性状により規定される。このことをケイ酸ナトリウム溶液(水ガラス)を原料としたハニカム構造体の例で説明する。
ケイ酸ナトリウムを水に溶かし、この溶液のpH調整することにより、シリカゾル中の不純物であるNaイオンを除去する(前処理)。このシリカゾル溶液を原料ホルダー(反応用容器)に入れ、原料ホルダーの方向を一定にし、冷媒の入った冷媒槽に進入させる。この際、進入速度や冷媒の温度を制御することにより、シリカゾル溶液中の水分の凍結状態を制御し、一定方向に伸びた複数の氷結晶を生成させるとともに、氷結晶の周囲にシリカゲルを析出させ凝縮させる。
これにより、テンプレートとなると氷結路と、構造母体となるシリカゲルとを有するセラミックス多孔質前駆体が形成される。
この多孔質前駆体の形状は、上記前処理後から凍結を開始するまでの時間(エージング時間という)によっても変化し、エージング時間が長くなるにつれてゲル化が進行し、凍結処理後の担体(シリカゲル)の形状が、薄膜形状、きし麺形状、ハニカム形状、ポリゴナル繊維状へと変化する。
また、凍結速度、凍結温度によって、氷結路径、蛇行の有無、氷結路の形状、分布密度などが変化する。
このようにして作製された多孔質前駆体を乾燥すると、氷結路をテンプレートとする細孔(空隙路)と、シリカゲルゲルからなる構造母体が自己成形的に形成される。したがって、シリカゾル中の水分の凍結条件を制御して、例えば六角柱形状開孔に対応するテンプレートとしての氷結路を形成させることにより、六角柱形状のハニカム開孔を有するハニカム構造体を製造することができる。
なお、ハニカム構造体とは、いわゆる「蜂の巣状の構造」を有する成形物であり、ハニカム構造体の内部の開孔形状が六角柱状であれば、通常、両端面(上面と底面)の開口は六角形である。ハニカム構造体の主たる開孔は、フィルター用途などでの利用上、上面と底面に連通する孔である必要がある。ただし、隣り合う孔同士が連なり、その結果として上面から底面に連通する孔となっているものでもよい。その形状は制限されないので、円状、角状、楕円状等どのような形でも良いし、ハニカム構造体の大きさ、形状に特段の制限はないが、通常、厚さは0.1〜300mmであり、その形状が円柱形である場合、上面及び底面の直径は1〜100cm程度である。
また、セラミックスからなる多孔質構造体においては、孔の壁面(ハニカム開孔壁面)に2nm以下のミクロ孔(通常、連通していない)が多数に形成されている。
他方、ポリゴナル繊維状構造体の場合においては、通常、繊維の太さが10μm〜100μmであり、繊維の長さが30μm〜1000μm程度であるポリゴナル状の繊維で構成されている。このもののBET比表面積は100m2/g程度である。
<装置の要件>
多孔質前駆体を再現性良く製造するためには、氷の成長を厳密に制御することが必要となる。氷結晶の成長は、原則的には、温度と過飽和比(溶液の平衡濃度に対する実際の濃度比)によって決定される。
そこで、先ず、氷結晶の成長と温度との関係について説明する。氷結晶の基本的外形は、二つの斜面からなる底面とそれに垂直な六つのプリズム面で囲まれた多面体であるが、0〜−4℃の温度で氷結晶を成長させれば、底面が大きく発達した六角板状結晶となり、−4℃〜−10℃の温度で氷結晶を成長させれば、プリズム面が発達した六角柱状結晶となる。更に−10℃〜−22℃で氷結晶を成長させると、再び六角板状結晶となり、それ以下の温度では六角柱状結晶となる。よって、例えば六角柱状結晶を得たい場合、氷結晶の成長温度を−4℃〜−10℃、または−22℃以下の温度に制御する必要がある。
次に、氷結晶の成長と過飽和度との関係について説明する。低過飽和度の環境においては、多面体構造を安定的に維持しつつ成長するが、過飽和度が増大するに従って結晶の稜や角が優先的に成長し、骸晶、針状結晶、樹枝状結晶などの結晶形状が形成される(Kobayashi,T.,1961:Phil. Mag.,6,1363−1370等)。よって、例えば円やかな氷柱結晶を得たい場合は低過飽和環境とする必要がある。
以上から明らかなように、凍結温度と過飽和比を制御することにより、氷結晶および成長の結果としての氷結路の形状を制御することができるが、氷結晶の成長を制御する温度制御の方法としては、以下の2つの方法が考えられる。
その第1は、一定量の熱伝導で徐々に凍結する方法である。具体的には、原料ホルダー底面のみを冷媒液面と接触させた状態、又は一定程度浸漬した状態とし、原料ホルダーの底面から上方に向かって徐々に冷却する方法である。この方法の実施に際しては、冷媒液面からの冷媒の蒸発により比較的短時間の間に冷媒液面が低下するため、冷媒液面位置と原料ホルダーの位置関係を常に監視し、原料ホルダーの位置を徐々に変動させて、原料ホルダーの底を冷媒液面に接触させた状態を維持し、または一定の深さまで冷媒液中に浸漬した状態を維持させる手段が必要である。
その第2は、一定の成長速度で氷結するように冷却する方法である。具体的には、氷の成長速度に対応させて、原料ホルダーを冷媒中へ進入させる方法である。氷の結晶成長の主たる決定要素は、温度であり、−10〜−22℃では、プリズム面である{10インバース10}の成長が支配的であり、−15℃付近における結晶成長速度は30μm/秒程度である。−40℃以下では、二つの底面である{0001}の成長が支配的であり、−35℃付近における結晶成長速度は12μm/秒程度である。
よって、温度と氷結晶の成長速度の関係において、原料ホルダーの進入速度をそれぞれの温度に対応する結晶成長速度と概ね同じとするか、またはこれよりも若干遅くすることにより、効率よく、良質の氷結晶路を形成することができることになる。この第2の方法を実行するためには、原料ホルダー底部を冷媒液面に接するまで移動させた後、原料ホルダーを冷媒中に進入させる速度を、冷媒液面との関係において制御する制御手段が必要となる。以上から、上記製造原理を実行するための多孔質前駆体製造装置は、少なくとも水を含む多孔質前駆体原料を収容する原料ホルダーと、上部に前記原料ホルダーを出し入れできる挿入口を有し、内部に冷媒を備えた冷媒槽と、冷媒槽内の上下に変動する冷媒液面の位置を連続的に測定することのできる液面位置センサーと、液面位置センサーによって測定された冷媒液面位置との関係における原料ホルダーの相対的上下動速度を制御しつつ原料ホルダーを冷媒に進入させる原料ホルダー位置制御手段と、を備える必要がある。
上記製造原理を実行するための多孔質前駆体製造装置の主要な構成要素について更に説明する。
<原料ホルダー位置制御手段>
上記製造原理を実行するための原料ホルダー位置制御手段は、液面位置センサーで液面の位置を監視し、液面位置センサーが読み取った冷媒液面の位置(数値化した情報)に基づいて、原料ホルダーの相対的位置を把握し、かつ相対的上下動速度を制御して原料ホルダーを冷媒に進入させる。原料ホルダーの相対的な上下動は冷媒槽が載置されたステージを上下させることにより実現させ、または原料ホルダーを支持する原料ホルダー保持具を介して原料ホルダー自体を上下動させることによって実現させる。
冷媒液面位置との関係における原料ホルダーの相対的位置の制御は、原料ホルダーの進入による冷媒液面上昇に比べ、冷媒の蒸発による冷媒液面変動がはるかに小さく、かつ冷媒槽の内形および原料ホルダーの外形が柱状である場合は、冷媒液面に対する原料ホルダーの移動速度を制御する。
すなわち、原料ホルダーの底面積をS1その移動速度をv1、冷媒槽の内形の底面積をS2冷媒液面の移動速度をv2、さらに冷媒液面に対する原料ホルダーの移動速度をv3とすると、原料ホルダーの進入部分と、冷媒液面の上昇による見かけ上の体積増が等しいことから、



一方、冷媒液面に対する原料ホルダーの移動速度(相対速度)v3は、



数1,数2より所定の相対速度v3を得るための原料ホルダーの移動速度v1を計算すると、




となる。
よって数3式で計算できる速度v1で原料ホルダーを移動すれば、冷媒液面に対する原料ホルダーの速度をv3に保つ制御をすることができる。
一方、原料ホルダー挿入による液面変動に比べて冷媒の蒸発による液面変動が十分に小さくない場合には、この方法では冷媒液面に対する原料ホルダーの速度を正確には制御することができない。そこで、この場合は、例えば、冷媒液面位置と原料ホルダー底面の間の距離(相対的位置)を経過時間に応じて予め設定しておき、一定時間ごと(例えば1秒ごと)に冷媒液面を測定し、その時間における予め設定された距離となる位置に原料ホルダー底面を移動させる。このようにすることによって、冷媒液面に対する原料ホルダーの平均相対速度を一定にすることができる。
<原料ホルダー>
原料ホルダーは、多孔質前駆体原料を入れる容器であり、多孔質前駆体原料を冷媒槽に漬けるための容器である。よって、多孔質前駆体原料や冷媒に対する化学的・機械的な安定性と耐低温性に優れた材質のものが好ましい。このような材質としては、ポリプロピレンやテフロン(登録商標)などの樹脂、鉄・銅・SUS・アルミニウムなどの金属、石英やガラス製、セラミックス材料などが挙げられる。
更に、原料ホルダーを冷媒液面に接触させた当初においては、原料ホルダー底面と冷媒の間の極端な温度差のために、原料ホルダー底部の凍結界面が熱的に不安定となる。このため氷結晶が好適に成長しない場合がある。このような状況を回避するには、原料ホルダー底部に熱伝導率の高い、例えば金属製部材をあてがうのがよい。このようにすると、原料ホルダー底面が迅速かつ円滑に熱平衡状態に到達するので、結晶成長が好適に進行する。
他方、上記とは逆に、原料ホルダー底部に熱伝導率の低いテフロン(登録商標)、ポリプロピレン、ポリエチレン等からなる肉厚の部材をあてがうこともできる。このようにすることが結晶成長にとって都合がよい場合もある。
更に、多孔質前駆体は原料ホルダー内に形成されるので、多孔質前駆体の外形は原料ホルダーの形状によって規定され、最終目的物(多孔質構造体)の外形は多孔質前駆体の外形よって規定される。よって、原料ホルダーの内部形状を所望する最終目的物の形状に合致させるのが好ましい。例えば多孔質前駆体の外形を柱状とする場合には、原料ホルダーの内部形状を柱状(テンプレートが柱状形状)とするのが好ましい。
<冷媒槽>
冷媒槽は、媒体を収容する容器であり、原料ホルダーの進入・離脱を可能とするために、その上部に挿入口を有する必要がある。挿入口は単なる開口でもよいが、冷媒槽内への外気の流入をできるだけ小さくし、冷媒槽内部での温度勾配を少なくするために、好ましくは原料ホルダーが出入りできる最低限の大きさとする。
図2(a)〜(c)は、冷媒槽の挿入口を原料ホルダー1の大きさに応じて変える形態を示す。図2に基づいて冷媒槽の態様を具体的に説明する。
図2(a)は標準的な原料ホルダー1を使用する場合の例であり、図(b)は太目の原料ホルダー1を使用する場合の例、図(c)は細目の原料ホルダー1を使用する場合の例である。このような使用態様は、予め挿入口の大きさが異なる複数の冷媒槽を用意することによって実現できる。また、形状や大きさの異なる原料ホルダー1のそれぞれに対応させた挿入口を有する蓋(冷媒槽蓋2a)を予め用意し、原料ホルダーの種類に応じて冷媒槽の上部開口に嵌合する蓋を取り替えることによっても実現することができる。
なお、上記したように、冷媒槽2bの上部は必ずしも蓋2aを必要とせず、単なる開口であってもよいが、図2(a)〜(c)に示すような形態とすると、冷媒の蒸発を抑制できると共に、冷媒槽内への外気の流入を抑制できるので、冷媒槽内の温度勾配が少なくなる、冷媒を無駄にしない等の効果が得られる。ただし、挿入口を開閉シャッター方式などにしてもよい。
更に、図3に基づいて、冷媒槽に外付けとしての加熱冷却手段を付加した構成について説明する。冷媒槽2は原料ホルダー内の前駆体原料中の水分を凍結させるとともに、凍結速度を制御する役割も担っている。しかし、冷媒自体で任意の温度とすることは困難である。よって、任意の温度に設定できるようにするために、冷媒槽を外部より加熱冷却する加熱冷却手段を付加するのが好ましい。図3に加熱冷却手段の一例としての冷却装置101を示す。
図3において、冷媒槽2は、冷媒槽2を冷却する外付け冷却槽20内に置かれている。冷媒槽2はその内部に冷媒槽2内の温度を測定する温度測定器10を有し、冷媒槽2の外周に外部から冷媒槽内を加熱する加熱器11が設けられている。温度測定器10としては例えば熱電対が使用され、加熱器11としては例えばシースヒーターを巻きつける。
冷媒槽2内には例えばエタノール、メタノール等の冷媒(不凍液として機能する液体)が入れられており、外付け冷却槽20内には、冷媒槽2内の冷媒よりも低温を実現できる冷媒、例えば液体窒素、二酸化炭素等が入れられている。この態様において、外付け冷却槽20により冷媒槽2内を冷却した後、温度測定器10で温度を監視しつつシースヒーターで冷媒槽2の温度を所望の温度にまで暖める。これにより冷媒槽2内の温度を任意温度に設定することができる。
このように、加熱冷却手段により冷媒槽中の冷媒を過冷却し、しかる後に、温度測定器により冷媒槽内の冷媒温度を監視しつつ、冷媒槽を加熱して任意の温度に調節する方式を採用すると、例えば冷媒槽の冷媒をエタノールとし、加熱冷却手段における冷却を液体窒素とすることにより、−114.5℃〜0℃の範囲の冷媒温度を実現することができる。これにより氷の成長速度、成長状態を一層きめ細かに制御することができるようになる。この場合、好ましくはコンピューターを利用することにより温度制御を自動的に行わせるのがよい。なお、加熱冷却手段は、図3の形態に限定されるものではない。例えば、冷媒槽2の外周に中空パイプを巻きつけ、このパイプに温度制御された液体を流す方式であってもよい。また、冷媒槽は、無用な伝熱や冷媒の蒸発を防止するために、真空デュアー等とするのが好ましい。
<冷媒>
冷媒は、原料ホルダーを介して、その内部に収容された多孔質前駆体原料中の水分を凍結させるためのものである。冷媒は、熱交換効率の面および原料ホルダーの円滑な出し入れの面から、液体であることが必要であり、また多孔質前駆体原料中の水分を凍結させる温度では自らが凍結しないもの(不凍液冷媒という)であることが必要である。そして、好ましくは自らで被冷却物を0℃未満に冷却することができるものがよく、このような冷媒としては、例えば液体2酸化炭素、液体窒素、液体ヘリウム、液体酸素などが挙げられる。また、不凍液冷媒として使用できるものとしては、メタノール、エタノール、グリコール、など炭化水素系が挙げられる。なお、例えば冷媒として液体窒素を用いることにより、冷媒槽温度を−180℃〜−197℃とでき、不凍液冷媒としてエタノールを使用した場合においては、これを外部より液体窒素で冷却することにより冷媒槽温度を−30℃〜−40℃とできる。
以上述べてきた本発明態様を実施の形態1〜7に基づいて更に具体的に説明する。
<実施の形態1>
図1は実施の形態1に係る多孔質前駆体製造装置の一例である。この多孔質前駆体製造装置100は、少なくとも水を含む多孔質前駆体原料を収容する原料ホルダー1と、上部に原料ホルダー1を出し入れできる挿入口を有し、内部に冷媒を備えた冷媒槽2と、冷媒槽2内の上下に変動する冷媒液面の位置を連続的に測定することのできる液面位置センサー5と、液面位置センサー5によって測定された冷媒液面位置との関係における前記原料ホルダーの相対的上下動速度を制御しつつ前記原料ホルダー1を前記冷媒に進入させる原料ホルダー位置制御手段とを備えている。原料ホルダー位置制御手段は、液面センサーコントロール6とパーソナルコンピュータ7とモータードライブコントローラー8とモーター9とステージ3を含む。
この多孔質前駆体製造装置100においては、原料ホルダー1は原料ホルダー保持具4によって支持され一定の位置に固定されており、冷媒槽2はステージ3に載置されている。ステージ3は、モーター9により上下動できるようになっている。上記原料ホルダー1は、通常、挿入口の垂直上方に配置され、冷媒槽2は、ステージ3上に載置されている。
この装置において、液面位置センサー5は、冷媒槽内の冷媒液面を計測する。液面位置センサーコントロール6は、冷媒液面位置センサー5が計測した液面位置情報を受け取り、これをパーソナルコンピュータ7に伝える。パーソナルコンピュータ7は、予め格納されているソフトプログラムに基づいて、モータードライブコントローラー8に必要分の信号を送ることで、モーター9を駆動させ、その結果ステージ3を上下動させると共に、これと同時並行的に上記冷媒液面位置センサー5・液面位置センサーコントロール6からのフィードバック情報を受け取とり、ステージ3の上下動を制御する。この制御は、主に、冷媒液面に対する原料ホルダー底面の位置(相互間の距離)を予め規定された関係に設定し保持すること、および予め設定された速度(冷媒液面位置との関係における相対速度)で原料ホルダーを冷媒液へ進入または離脱させるようにステージ3を上下動させることである。ただし、これ以外の要素を制御してもよいことは勿論である。
上記原料ホルダー1の材質は、ポリプロピレン製であり、冷媒槽2はアクリル樹脂製であり、ステージ3はアルミニウム製である。但し、これらの材質に限定されるものではない。
また、上記原料ホルダー1は、冷媒槽2の上部に設けられた挿入口の垂直上方に配置され、冷媒槽2はステージ3上に載置されている。上記液面位置センサーコントロール6としては、例えばOXFORD Instruments社製Nitorogen Probe H2-201を使用し、上記ステージ3としては、例えばNewport社製ILSシリーズ直進ステージを使用することができる。
〔製造例〕
次に、実施の形態1の装置を用いて多孔質前駆体および多孔質構造体を製造する方法について、ケイ酸ナトリウムの例で説明する。
〔ハニカム構造の場合〕
先ず多孔質前駆体原料であるシリカゾル溶液を用意する。具体的には、ケイ酸ナトリウム(Wako Chemical,Inc.,research grade)を脱イオン蒸留水に分散させ、SiO2濃度1.0〜2.0M[mol/L]のシリカゾル溶液を25mL作製する。次にこの溶液に29mLのイオン交換樹脂を攪拌しながら加える。イオン交換樹脂としては、好ましくはH+強酸性イオン交換樹脂(例えばOrgano社製Amberlite IR120BHAG)を用いる。
イオン交換樹脂を混合したシリカゾル溶液を、pHが2〜3程度になるまで攪拌する。これにより、イオン交換樹脂によってNaイオンなどの不純物がシリカゾル溶液から除去される。このようにしてシリカゾル溶液から不純物であるNaイオンを除去する工程を、前処理工程と称することとする。
シリカゾル溶液からイオン交換樹脂を取り除き、このシリカゾル溶液をチューブ状の容器に注ぎ込み、この容器を30℃の恒温槽中に30分〜3時間程度保持してエージングを行なう。この容器の直径は10〜50mm程度であり、この例ではこの容器が原料ホルダー1を兼ねる。
上記エージングが終了後、多孔質前駆体製造装置100の原料ホルダー保持具4に原料ホルダー1を固定し、装置を駆動させて、原料ホルダー1を冷媒槽2内に進入させる。より詳しくは、モーター9を駆動させステージ3を上昇させることにより、原料ホルダー1の底部が冷媒液面に接するまで、原料ホルダー1を相対的に下降させる(図1参照)。
この後、原料ホルダー1を0.1〜10cm/h程度の進入速度で冷媒中に挿入する。この進入速度は、好ましくは多孔質前駆体原料中の水の凍結速度に合致させる。これにより、シリカゲル中の水が凍結し、氷結路が形成される。なお、このようにして氷結晶からなる氷結路が形成されたシリカゲル固形物を多孔質前駆体と称する。
凍結した多孔質前駆体を原料ホルダー1から取り出し、恒温槽(例えば50℃)に入れて解凍した後、下記するt‐ブタノールを用いた凍結乾燥法を用いてマイクロハニカム形状を有する多孔質構造体(ハニカム構造体)を作製する。このようにして作製したハニカム構造体は、概ねハニカム開孔径の平均値が50〜200μm、ハニカム壁厚の平均値が0.1〜10μm、ハニカム開孔長の平均値が0.1〜20mmとなる。
〔繊維状多孔質構造の場合〕
繊維状の多孔質構造体を製造する場合は、多孔質前駆体原料の前処理工程終了後に十分なエージング時間をとってゲル化を進行させ、しかる後に凍結を開始する。そして凍結は、原料ホルダーの底部が冷媒液面に接触した状態ないし冷媒液面よりも若干下側の位置に保持した状態で行うのがよい。この場合、冷媒の蒸発により液面が変動する。よって、例えば1秒間ごとに冷媒液面と原料ホルダーの底部との位置関係を、パーソナルコンピュータ7に判定させ、原料ホルダーの底部が冷媒液面に接触した状態を維持させるように原料ホルダー位置制御手段を制御させる。
このようにすることにより、太さ10μm〜100μm、長さ30μm〜1000μmの繊維状セラミック多孔質構造体が製造される。なお、十分なエージング時間とは、3時間〜72時間をいう。
なお、上記では原料ホルダーの底部が冷媒液面に接触した状態ない冷媒液面よりも若干下側の位置に保持した状態で冷却を行うが、これは次の理由による。すなわち、原料ホルダーを冷媒中に徐々に進入させる冷却方法においては、原料ホルダーの側面が冷却されるため、側面からデンドライト状(樹枝状)の結晶が成長することがあり、この結晶は底面から垂直に成長しようとする氷の成長を妨げる。このため垂直方向に延びた良好な氷結路を有する前駆体を形成できない。これに対して、原料ホルダーの底部のみを冷媒液面と接触させる冷却方法であると、側面からの結晶成長が生じないので、垂直方向に延びた良好な氷結路を形成し易い。
上記では多孔質前駆体の主原料としてケイ酸ナトリウムを用いたが、本発明装置で使用できる主原料はケイ酸ナトリウムに限定されない。例えばアルミナ水和物ゾル、ケイ酸ナトリウムとアルミナ水和物の混合ゾル、ポリビニルハイドロゲル、炭素粉末、フェノール系樹脂などが使用できる。炭素粉末、金属微粒子、酸化チタンやゼオライト等のセラミックス粒子を使用する場合には、シリカの重量比に対して、0.1〜50w%の量を混合する。
上記装置を用いて製造した多孔質前駆体は、乾燥または乾燥・焼成することによって、所望の内部構造を作り込んだ多孔質構造体を得ることができる。以下に多孔質前駆体の乾燥方法について説明する。
〔乾燥方法〕
乾燥方法としては、凍結乾燥法、マイクロ波乾燥法、過熱水蒸気法が挙げられる。
(1)凍結乾燥法
多孔質前駆体製造装置によって製造した多孔質前駆体を例えば50℃の恒温槽に入れて解凍し、氷結路を形成していた氷を消失させた後、例えばその5倍以上の体積のt−ブタノールに浸漬洗浄して、前駆体に残留する水分をt−ブタノールで置換する。その後、溶媒置換した多孔質前駆体を−10〜−30℃で凍結乾燥する方法である。この方法においては、好ましくは1〜3日間かけ、3回以上新鮮なt‐ブタノールに取替えて置換洗浄を繰り返す。
なお、t−ブタノールは、液−固転移時の密度変化が小さい(Dr=−3.4×10-4g/cm3 at 299K)ため凝固時に多孔質構造体を破壊する可能性が小さいことに加え、水に比して蒸気圧が大きく(0℃におけるt−ブタノールの蒸気圧はp0=821Pa、水はp0=61Pa)乾燥速度が大きいため凍結乾燥に適している。上記した実施の形態1にかかる多孔質前駆体はこの凍結乾燥法を用いて多孔質構造体となした。
(2)マイクロ波乾燥法
マイクロ波乾燥法は、マイクロ波を照射することによって生じるイオン電流と分子の双極子回転による内部発熱を利用する乾燥方法である。水はマイクロ波によって効率よく加熱される。よって、多孔質前駆体中に残存する微量の水分の乾燥にこの方法は有効である。ただし、乾燥中に破砕が生ずる温度より多孔質前駆体の内部温度を低く保つため、マイクロ波の出力を調整し、またマイクロ波を間欠照射するなどするのが好ましい。
(3)過熱水蒸気法
過熱水蒸気法は、飽和蒸気に圧力を加えることなく加熱することにより得られる100℃以上の水蒸気を用いて乾燥させる方法である。この方法では、解凍した多孔質前駆体を例えば150〜300℃の過熱水蒸気雰囲気中に置き、乾燥する。この方法においては、水の蒸発時に発生する膨張収縮力により構造体に亀裂が生ずることがある。このような原因による亀裂を回避するためには、構造体の厚みを1〜10mm程度とするのが好ましい。
なお、解凍工程、乾燥工程を連続して行っても良い。例えば電気炉内を、窒素雰囲気、窒素以外の希ガス雰囲気、還元雰囲気、酸化雰囲気、真空雰囲気、過熱水蒸気雰囲気の何れかに設定し、当該電気炉内に、多孔質前駆体を入れ、200〜1000℃にて1〜3時間保持し一次焼成を行なう。これにより、解凍・乾燥・焼結を同時に行うことができる。この場合、電気炉内の雰囲気としては窒素雰囲気が好ましい。
<実施の形態2>
実施の形態2は、ステージ3を動かすことなく、原料ホルダーを移動させる点において上記実施の形態1と相違する。その他の点については実施の形態1と同様である。
図4に、実施の形態2に係る多孔質前駆体製造装置200を示す。この装置では、原料ホルダー保持具4がモーター9により駆動できるようになっている。原料ホルダー位置制御手段は、液面位置センサー5によって測定された冷媒液面位置との関係において上下動速度を制御しつつ原料ホルダー保持具4を上下に駆動する。これにより、原料ホルダー1の少なくとも底面を冷媒液面に漬け、かつこの位置関係を維持することができる。また、液面位置センサー5によって測定された冷媒液面位置との関係において上下速度を制御しつつ原料ホルダー保持具4を上下に駆動させることができる。
なお、図4及び今後説明する図面においては、図1と同一部分には同一の参照符号を付しその説明を繰り返さない。
この実施の形態2にかかる装置200の利点としては、次の点が挙げられる。冷媒としてエタノール等を用い、これを外部より冷却する方式を採用した場合、ステージ3への荷重は10〜30kg重となる。よって、実施の形態1のようにステージを駆動する方式であると、大トルクを出力できる大型のモーター9を必要とする。その分、装置が大きくなる。これに対し、実施の形態2の装置は、ステージ3に比較し軽い原料ホルダー1を駆動する方式であるので、装置のコンパクト化を図り易い。
<実施の形態3>
実施の形態3は、装置外部からの振動の影響を抑制するため除振機構12を備え、その他の点については実施の形態1と同様である。
多孔質前駆体製造装置は、冷媒液面に対する原料ホルダーの相対的位置を精密に制御する必要があり、その誤差許容範囲は0.1mm程度である。位置制御の精度がこれ以下であると、氷結晶の成長条件に差が生じ、製造される多孔質前駆体の品質歩留まりが低下する。然るに、装置が設定される通常の場所には、車の通行により生じた振動や人の歩行等に起因する外部振動が存在するため、0.1mm内の精度での位置制御は容易でない。
実施の形態3にかかる多孔質前駆体製造装置は、除振機構12を備える。図5に除振機構12が組み込まれた装置の一例を示す。この例では、装置本体を除振機構12の上に載置した構造となっており、除振機構12が人の歩行や車の通行により生じた外部振動を吸収する。よって、外部振動に起因する原料ホルダー1の振動や冷媒液面の動揺が抑制される結果、冷媒液面との関係における原料ホルダーの相対的位置を精密に制御できる。さらにこの結果として、良好な多孔質前駆体を歩留まりよく製造することができることになる。
上記除振機構12としては、例えばエアサスペンション式の除振台、オイル式の除振台、ばね式のなど除振台が例示でき、このうちエアサスペンション式のものが日常のメンテナンスにおいて簡便であるため、特に好ましい。
<実施の形態4>
実施の形態4は、冷媒槽2とステージ3との間の熱伝導を遮断する断熱部材13を備え、そのたの点については実施の形態1と同様である。
図6に装置構成の一例を示す。図6に示すように、冷媒槽2とステージ3との間に、断熱部材13が設けられている。この断熱部材13は、冷媒槽2への伝熱を抑制し冷却能力の低下を防止すると共に、ステージ3が冷却されることによって発生する結露や凍結を防止する。上記結露や凍結はステージ3の駆動障害の原因となるが、実施の形態4の構成であると、このようなことがないので、装置の信頼性が高まる。
断熱部材13としては、例えばポリウレタン、雲母板、真空層、テフロン(登録商標)板、ガラス板、石英板などからなる断熱材を用いることができる。
<実施の形態5>
実施の形態5は、底部の熱伝導度と側部の熱伝導度とが異なる原料ホルダーを用いる点において上記実施の形態1と相違し、その他の点については実施の形態1と同様である。図7に、底部を高熱伝導度とし、側部を底部に比較し熱伝導度の低い低熱伝導度とした原料ホルダー構造を一例として示す。
図7において、原料ホルダー1は、側部15が二重構造となっており、外側壁と内側壁との間に空隙16が設けられている。また、原料ホルダー底部14には、熱伝導度が大きい金属などからなる高熱伝導層が配されている。空隙16は、断熱層(低熱伝導度層)として機能させる層であり、空気層としてもよく、また空気を脱気した真空層としてもよい。更に、ガラス繊維などの断熱材を収容した層としてもよい。なお、例えば空隙16に熱伝導度の高いオイルを入れて側部を高い熱伝導度とし、底部を低い熱伝導度とした構造(底部を樹脂などで構成)とすることもできることは勿論である。
底部の熱伝導度と側部の熱伝導度とを異ならせる作用効果について説明する。例えば、図7において原料ホルダーの底部14の熱伝導度が高く、側部15が底部14よりも低い熱伝導度である場合、このような原料ホルダーを冷媒中に進入させたとき、底部14からの熱伝導が優位であるため、底部14からの氷結晶の成長に比べ側部15からの氷結晶の成長が圧倒的に少なくなる。よって、底面から上方に発達する氷結晶の成長が、原料ホルダー側面から発達するデンドライト状の結晶によって邪魔されないので、良質の維状多孔質前駆体を得ることができる。
この場合、冷媒温度を、氷が最密充填構造をとって2つの底辺の結晶面を優先的に成長できる温度条件である−35℃付近とし、氷結晶の長軸方向への成長速度(およそ12μm/秒 程度)に合致して結晶成長するように、装置の条件を整えることにより上下長が10mmを超える繊維状多孔質前駆体を得ることができる。
上記の各実施の形態で示した多孔質前駆体製造装置を用いて、実際にハニカム構造体を製造した例を実施例1〜5として以下に説明する。
(実施例1)
実施例1は、実施の形態3にかかる装置(図5参照)を用いてハニカム構造体を製造した例である。なお、実施の形態3にかかる装置は、ステージ3を駆動させることによって冷媒液面との関係における原料ホルダー位置を変化させる点、及び除振機構12を備える点に特徴を有するものであり、実施の形態1の装置とは、除振機構12を備える点においてのみ異なる。
原料調整:
54%ケイ酸ナトリウム溶液を脱イオンした蒸留水で希釈し、SiO2濃度1.9mol/Lのケイ酸ナトリウム水溶液25mLを得た。この水溶液にH+型強酸性イオン交換樹脂29mL(例えばOrgano社製Amberlite IR120BHAG)をスターラーで攪拌しながら加え、水溶液のpHが2.5付近になったところで攪拌を止め、イオン交換樹脂を取り除いた。このようにして多孔質前駆体原料であるシリカゾルを作製した。
エージング:
底から1cm程度ガラスビーズを詰めた内径1.3cmのポリプロピレン製チューブからなる原料ホルダー1に上記シリカゾルを入れ、30℃の恒温層内で2時間静置してゲル化させた。ゲル化した後、更に2時間静置した。
凍結処理:
上記原料ホルダー1を図5に示した多孔質前駆体製造装置300の原料ホルダー保持具4にセットした。次に原料ホルダー1の冷媒液面に対する相対的挿入速度が2cm/hとなるようステージの上下動速度を設定し、原料ホルダー1を冷媒中に進入させた後、離脱させてハニカム構造前駆体(多孔質前駆体)を形成した。その後、原料ホルダー1を装置から取り外した。
ここで、冷媒としてはエタノールを用いた。また、冷媒槽2を外付け冷却槽装置で冷却することによりエタノール温度を−30℃とした。液面位置センサーの測定精度は0.1mmであった。
焼成:
この前駆体を5mmの厚さに切断した後、電気炉に収容し、炉内をN2ガスでパージし、10℃/minの昇温速度で800℃まで昇温し、800℃で120分間焼成した。
検査:
こうして製造したハニカム構造体を、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察した。その結果、平均ハニカム開孔径147μm、平均ハニカム壁厚0.48μmのハニカム構造を有することが確認された。
(実施例2)
実施例2は、実施の形態2にかかる原料ホルダー保持具を駆動させる方式の装置に、図5に示した除振機構12を組み込んだ多孔質前駆体製造装置を用いた場合における製造例である。この装置を用い、実施例1のようにステージを上下動させるのではなく、図4に示すように、駆動モータ9により、原料ホルダー保持具4を上下動させることにより、原料ホルダー1の冷媒液面に対する相対的進入速度を2cm/hに制御してハニカム構造前駆体(多孔質前駆体)を形成した。その他の製造条件及び製造方法はすべて実施例1と同じであった。
この実施例2にかかるハニカム構造体の平均ハニカム開孔径は149μmであり、平均ハニカム壁厚は0.52μmであった。
(実施例3)
実施例3は、ステージ3を上下動させる実施の形態1にかかる装置に、図3に示す冷却装置101と、図5に示した除振機構12を組み込んだ多孔質前駆体製造装置を用いてハニカム構造前駆体およびハニカム構造体を製造した例である。
実施例3で使用した装置において、冷却装置101の外付け冷却槽20内には、液体窒素が収容され、冷媒槽2内には、エタノールが収容されている。また、冷媒槽2に取り付けられた温度測定器10は、温度測定用熱電対からなり、冷媒槽2の外周には、加熱器11として150Wのシースヒーターが取り付けられている。
装置の操作方法としては、原料ホルダー1を冷媒槽2内に進入させる前に、冷媒槽2内のエタノールを液体窒素で冷却し、その後、熱電対により冷媒温度を測定しつつ、シースヒーターで冷媒(エタノール)を加熱して冷媒温度が−80℃一定となるよう調整した。この段階で、冷媒液面との関係における原料ホルダーの相対的進入速度を2cm/hとして、原料ホルダー1を冷媒槽2内に進入させた。その他の条件は実施例1と同様にした。
これにより、平均ハニカム開孔径102μm、平均ハニカム壁厚0.78μmの実施例3にかかるハニカム構造体を得た。
(実施例4)
実施例4は、実施の形態1にかかる製造装置を用いてハニカム構造体を製造した例である。この実施例は、除振機構を備えていない点において、上記実施例1と異なる。その他の点については実施例1と同様である。
実施例4で製造したハニカム構造体(多孔質構造体)は、平均ハニカム開孔径125μm、平均ハニカム壁厚0.53μmであったが、走査型電子顕微鏡での観察により、ハニカム開孔の崩壊が確認され、ハニカム開孔数は実施例1の90%程度であった。
(実施例5)
実施例5は、底部の熱伝導度と側部の熱伝導度とが異なる原料ホルダーを用いたこと、及び装置本体の下部に除振機構12を付加したこと以外は上記実施の形態1と同様とした多孔質前駆体製造装置を用い、ハニカム前駆体およびハニカム構造体を作製した。なお、実施例5と実施例1とは、実施例5では、底部の熱伝導度と側部の熱伝導度とが異なる原料ホルダーを用いた点においてのみ異なる。
実施例5で使用した底部の熱伝導度と側部の熱伝導度とが異なる原料ホルダーとしては、ポリプロピレンの一体成形型チューブの底部に熱伝導度の大きいアルミニウムのスクリューキャップを取り付け構造のものを用いた。このものの側面は、アルミニウムよりも熱伝導度が小さい一重構造のポリプロピレン壁であるので、このものは図7で示した空隙16を有しない。
実施例5で製造したハニカム構造体は、平均ハニカム開孔径220μm、平均ハニカム壁厚0.42μmであった。
[各製造装置の評価]
製造結果物であるハニカム構造体の性状を比較する方法により、各実施例にかかる製造装置を評価する。実施例1と実施例2との比較から、ハニカム構造体の平均ハニカム開孔径、平均ハニカム壁厚は概ね同様であり、両者間に大きな差がないことが判る。つまり、ステージの上下動により冷媒液面を移動させる場合であっても、原料ホルダーを移動させる場合であっても、多孔質前駆体の形成に差が生じない。このことから、冷媒液面位置との関係において原料ホルダーの上下動を制御すればよいことが判る。したがって、ステージ移動型の装置にするか、原料ホルダー移動型の装置にするかは、装置サイズやランニングコスト等を考慮して適当に選択すればよい。
実施例1〜2と実施例3とは、実施例1および2の冷媒温度が-30℃であるのに対し、実施例3では外付け冷却槽により冷媒温度を-80℃に調整した点において相違する。製造結果物での比較において、前者は開孔径147〜149μm、壁厚0.48〜0.52μmであり、後者は開孔径102μm、壁厚0.78μmであり、これらの間には有意な差が認められる。
この結果から、冷媒温度を変えることにより、ハニカム構造の形状を変化させることができること、及び冷媒温度を変える手段として外付け冷却槽が有効に機能することが裏付けられた。
また、実施例1〜2と実施例5との比較において、前者は開孔径147〜149μm、壁厚0.48〜0.52μmであり、後者は開孔径200μm、壁厚0.42μmであり、これらの間には有意な差が認められる。このことから、他の製造条件が同じであっても、原料ホルダーの熱伝導度を部位によって異ならせることにより、ハニカム構造の形状を異ならせることができることが明らかになった。なお、実施例1〜2については、原料ホルダー全体の熱伝導度が同一であり、実施例5は底部の熱伝導度が側部の熱伝導度より大きい原料ホルダーが使用されている。
また、実施例1と実施例4との比較から、除振機構を備えるか否かによっても、ハニカム構造に違いが生じ、除振機構を備えない場合には、ハニカム開孔構造の崩壊が生じることが裏付けられた。
なお、以上に示した実施例は例示であって制限的なものではない。
本発明多孔質前駆体製造装置によると、ハニカム構造や繊維状多孔質構造のテンプレートとなる氷結路をマイクロメートルないしはナノメートルレベルで簡便に作り込むことができ、このような氷結路が形成されてなる多孔質前駆体は、有害物質除去フィルター、組織再生用基材、微生物担持用基材、吸湿材料、クロマトグラフィー用担体、センサーデバイス基材、真空断熱材、電池やキャパシタ電極用基材、などの前駆体材料として利用できる。よって、その産業上の利用可能性は大きい。
実施の形態1にかかる多孔質前駆体製造装置の概略を示した図である。 冷媒槽挿入口と原料ホルダーとの関係を示す図であり、(a)は標準的な原料ホルダーを使用する場合、(b)は太目の原料ホルダーを使用する場合、(c)は細目の原料ホルダーを使用する場合である。 冷媒槽を加熱冷却する加熱冷却手段の一例を示す概念図である。 実施の形態2にかかる多孔質前駆体製造装置の概略を示した図である。 実施の形態3にかかる除振機構を付加した多孔質前駆体製造装置の概略を示した図である。 実施の形態4にかかる冷媒槽とステージの間に断熱部材を有した多孔質前駆体製造装置の概略を示した図である。 実施の形態5に係る底部の熱伝導度と側部の熱伝導度とが異なる原料ホルダーの一例を示した図である。
符号の説明
1 原料ホルダー
2 冷媒槽
2a 冷媒槽蓋
2b 冷媒槽本体
3 ステージ
4 原料ホルダー保持具
5 液面位置センサー
6 液面位置センサーコントロール
7 パーソナルコンピュータ
8 モータードライブコントローラー
9 モーター
10 温度測定器
11 加熱器
12 除振機構
13 断熱部材
14 原料ホルダー底部
15 原料ホルダー側部
16 空隙
20 外付け冷却槽
100 実施の形態1の多孔質前駆体製造装置
101 加熱冷却装置
200 実施の形態2にかる多孔質前駆体製造装置
300 実施の形態3にかる多孔質前駆体製造装置
400 実施の形態4にかる多孔質前駆体製造装置

Claims (8)

  1. 少なくとも水を含む多孔質前駆体原料を収容する原料ホルダーと、
    上部に前記原料ホルダーを出し入れできる挿入口を有し、内部に不凍液冷媒を備えた冷媒槽と、
    前記冷媒槽内の上下に変動する不凍液冷媒液面の位置を連続的に測定することのできる液面位置センサーと、
    前記液面位置センサーによって測定された変動する不凍液冷媒液面の位置を基準とする前記原料ホルダーの底面が前記不凍液冷媒に接触した後における前記原料ホルダーの相対的上下動速度と、前記変動する不凍液冷媒液面の位置を基準とする前記原料ホルダー底面の浸漬深さと、を制御する原料ホルダー位置制御手段と、
    を備える多孔質前駆体製造装置。
  2. 請求項1に記載の多孔質前駆体製造装置において、
    前記多孔質前駆体製造装置は、前記原料ホルダーを支持する原料ホルダー保持具と、前記冷媒槽を載置するステージと、を備え、
    前記原料ホルダー位置制御手段が、前記液面位置センサーによって測定された不凍液冷媒液面位置との関係において前記原料ホルダーの相対的位置を上下させ、前記原料ホルダーの底面以上を前記不凍液冷媒液内に浸漬させ、かつ前記不凍液冷媒液面位置との関係におけるこの浸漬深さが保持されるように、前記原料ホルダー保持具又は/及び前記ステージを上下に駆動させる手段である、
    ことを特徴とする多孔質前駆体製造装置。
  3. 請求項1に記載の多孔質前駆体製造装置において、
    前記多孔質前駆体製造装置は、前記原料ホルダーを支持する原料ホルダー保持具と、前記冷媒槽を載置するステージと、を備え、
    原料ホルダー位置制御手段が、前記液面位置センサーによって測定された不凍液冷媒液面位置との関係における前記原料ホルダーの相対的上昇速度を制御しつつ、前記ステージを上方に駆動させるステージ駆動機構からなる、
    ことを特徴とする多孔質前駆体製造装置。
  4. 請求項1に記載の多孔質前駆体製造装置において、
    前記多孔質前駆体製造装置は、前記原料ホルダーを支持する原料ホルダー保持具と、前記冷媒槽を載置するステージと、を備え、
    原料ホルダー位置制御手段が、前記液面位置センサーによって測定された不凍液冷媒液面位置との関係における相対的下降速度を制御しつつ、前記原料ホルダー保持具を下方に駆動させる原料ホルダー保持具駆動機構からなる、
    ことを特徴とする多孔質前駆体製造装置。
  5. 請求項1ないし4の何れかに記載の多孔質前駆体製造装置において、
    前記多孔質前駆体製造装置は、更に
    冷媒槽内の温度を測定する温度測定器と、
    前記冷媒槽の外部から当該冷媒槽を加熱冷却できる加熱冷却手段と、
    備えることを特徴とする多孔質前駆体製造装置。
  6. 請求項1ないし5の何れかに記載の多孔質前駆体製造装置において、
    前記多孔質前駆体製造装置は、更に
    多孔質前駆体製造装置本体の振動を抑制する除振機構を備える、
    ことを特徴とする多孔質前駆体製造装置。
  7. 請求項1ないし6の何れかに記載の多孔質前駆体製造装置において、
    前記多孔質前駆体製造装置は、更に
    前記冷媒槽と前記ステージとの間の熱伝導を遮断する断熱部材を備える、
    ことを特徴とする多孔質前駆体製造装置。
  8. 請求項1ないし6の何れかに記載の多孔質前駆体製造装置において、
    前記原料ホルダーの底部の熱伝導度と側部の熱伝導度とが異なる、
    ことを特徴とする多孔質前駆体製造装置。
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