JP5104436B2 - 制振パネルおよびそれを用いた骨組構造 - Google Patents

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Description

本発明は、建築物に設置し、地震、風等の外力に対する建築物の応答を低減させる、粘弾性体を用いたブレース構造のエネルギー吸収パネル(制振パネル)に関する。
軽量鉄骨構造では、柱、梁に囲まれた構面内に対角にブレースを配置して構成する耐震パネルにより、地震等の外力作用時に構造物に発生する水平力に抵抗する(例えば、非特許文献1参照)。なお、通常、ブレースは細径で、圧縮力に対しては座屈する引張ブレース構造となっている。
また、特許文献1、2では、制振構造として、摩擦ダンパーを備えてエネルギー吸収機能を有する剛性の高い剛ブレースを配置して成る剛架構と、剛性は低いが弾性範囲の大きい復元機能を有する柔ブレースを配置して成る柔架構とを配置して制振架構としている。
また、特許文献3では、建物にブレースとして設置されるとともに建物の振動エネルギーを吸収するダンパーとしても機能するブレースダンパーであって、両端が建物に対して固定され所定軸力を受けた際に降伏する帯板状の鋼板からなるブレース本体と、ブレース本体の周囲に装着されることによりブレース本体の軸方向変形を許容しつつ面外座屈を防止する拘束部材とを主体として構成し、拘束部材をブレース本体に対して軸方向への相対変位を拘束した状態で装着するとともに、その拘束部材とブレース本体との間に、ブレース本体が軸方向に弾性変形した際に作動するサブダンパーを介装するようにしている。
なお、[発明を実施するための最良の形態]の項において、下記の非特許文献2を引用するので、ここに併せて記載しておく。
特開2006−002511号公報 特開2005−325529号公報 特開2004−019361号公報 NKK技報、No.175(2001.12)、pp.21−25 曽田五月也、中山尚之、「木造住宅用小型オイルダンパの性能安定性の検討」、日本建築学会大会学術講演梗概集(九州)、2007年8月、pp285−286
しかし、非特許文献1のように、軽量鉄骨構造で使用されるブレースは細径であり、繰り返し水平力に対して、座屈により圧縮力を支持できない。ブレースの引張降伏によるエネルギー吸収が可能であるが、その後は残留伸び変形の影響でスリップ形の履歴となり、圧縮軸力に対しても座屈しない形式のブレース部材を用いた制振構造に対してエネルギー吸収能力が劣る。また、圧縮軸力に対しても座屈しない形式のブレース型の制振装置を配置する場合、圧縮座屈を発生させないための機構が必要となる。
また、特許文献1、2では、剛性の高い剛ブレースには力が集中し、柱梁の主架構に負担が大きい。その上、圧縮部材には座屈しないよう配慮が必要であるが、その場合、主架構を補強する必要が有り、座屈しないような配慮と合わせてコストアップとなる。
また、特許文献3は、ブレースの座屈を防止することを目的として、さらに座屈防止をしながら減衰力を発生しようとするものであり、コストアップおよび主体架構に負担が大きく補強を要する。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、主体架構の負担が小さい細長比の大きい斜材(ブレース)を用いながら、その圧縮力による座屈を利用して減衰力を発生させ、制振化を実現することができる制振パネルおよびそれを用いた骨組構造を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
[1]圧縮側が弾性座屈する引張ブレース構造の制振パネルにおいて、少なくとも想定する層間変形角が生じたときのブレースの1次座屈モードを利用して、粘性流体による減衰力を発生させることを特徴とする制振パネル。
[2]少なくとも想定する層間変形角が生じたときのブレースの1次座屈モードの範囲を、少なくともブレース長さの半分以上にわたり、粘性流体で覆うことを特徴とする前記[1]に記載の制振パネル。
[3]粘性流体からの抵抗力を増大せしめるためブレース材の座屈により変位振幅が相対的に大きく出る位置もしくは範囲に、面内座屈方向と平行にならないようにフィン、網などの抵抗要素をつけることを特徴とする前記[2]に記載の制振パネル。
[4]少なくとも想定する層間変形角が生じた時点での圧縮側ブレースの座屈最大振幅となる位置の近傍に、引き方向または押し方向のいずれか一方向のみに減衰力を発生する粘性流体ダンパーを取り付けたことを特徴とする前記[1]に記載の制振パネル。
[5]粘性流体を難燃性、不燃性の粘性流体とすることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載の制振パネル。
[6]圧縮側が弾性座屈する引張ブレースが面内に座屈するように、ブレース端部がピン接合されたことを特徴とする前記[1]〜[5]のいずれかに記載の制振パネル。
[7]前記[1]〜[6]のいずれかに記載の制振パネルを用いたことを特徴とする骨組構造。
本発明においては、主体架構の負担が小さい細長比の大きい斜材(ブレース)を用いながら、その圧縮力による座屈を利用して減衰力を発生させ、制振化を実現することができる。
本発明の制振パネルは、従来の引張ブレース構造ではエネルギー吸収をほとんどしない圧縮側ブレースの座屈(少なくとも想定する層間変形角が生じたときのブレースの1次座屈モード)を利用して、粘性流体による減衰力を発生せしめる構造である。
そして、粘性流体による減衰力を発生せしめる構造の一例として、少なくとも想定する層間変形角が生じたときのブレースの1次座屈モードの範囲を、少なくともブレース長さの半分以上にわたり、粘性流体で覆うようにしている(第1構造)。
また、粘性流体による減衰力を発生せしめる構造の他の例として、少なくとも想定する層間変形角が生じた時点での圧縮側ブレースの座屈最大振幅となる位置(通常は1次座屈モードの腹、ブレースの長さ方向中央部)近傍に、引き方向または押し方向のいずれか一方向のみに減衰力を発生する粘性流体ダンパーを取り付けるようにしている(第2構造)。
なお、ここでは、前者の構造(第1構造)を中心にして説明するが、基本的な考え方は後者の構造(第2構造)も同様である。
まず、圧縮材の座屈応力fcは、日本建築学会の鋼構造基準によれば下式で求められる。
Figure 0005104436
ここに、Λ:限界細長比、σy:鋼材の圧縮降伏応力度、λ:圧縮材の細長比(=座屈長さ/圧縮材の弱軸に関する断面2次半径)、E:ヤング係数、である。
例えば、引張降伏応力度σyを2.1t/cmとし、(2)式に、σy=2.1t/cm、E=2100t/cmを代入して、Λ=120となる。
いま、引張ブレース構造に用いる細径の、すなわち細長比λの大きなブレースは、引張降伏応力度σyの10%の応力で弾性座屈する圧縮材とすれば、(1)式に、fc=0.1σy、Λ=120を代入すれば、λ=200、引張降伏応力度σyの20%の応力で弾性座屈する圧縮材とすれば、λ=141と算定することができる。
本発明では、細径のブレースとして、引張降伏応力度σyが2.1t/cmの鋼材を用いた場合には、細長比λを115以上とする。この場合、引張降伏応力度σyの30%で弾性座屈する。これ以上細長比λが小さいとブレースの圧縮軸力が大きくなり、骨組に過度の負担がかかると共に、弾性座屈により耐荷力が消失するので、耐震設計上好ましくない。細長比λはいくら大きくてもかまわないが、過度に細い場合粘弾性体の中で減衰力を発生することができないので、座屈方向と平行にならないようにフィン、網などの抵抗要素をつけない場合には、細長比λは400を上限とする。
さらに、圧縮側が弾性座屈する細長比λの大きなブレースが面内に座屈するように、ブレース端部がピン接合されれば、ブレースが面外に座屈することなく効率良く減衰力を発生させることが可能であり、さらに粘性流体の入れる容器の幅を小さくでき、量を少なくできる。また、粘性流体をシリコンオイルなどの難燃、不燃材料とすれば火災に対しても安全性を高められる。特に、外壁や集合住宅などの戸境壁に設置する場合に有効である。
さらに、粘性流体からの抵抗力を増大せしめるためブレース材の座屈により変位振幅が相対的に大きく出る位置もしくは範囲に座屈方向と平行にならないようにフィン、網などの抵抗要素をつければ減衰力を増大させることができる。
したがって、本発明を細長比λの大きなブレースを有する骨組み構造(引張ブレース構造)に適用すれば、振動減衰の大きな耐震性の高い構造にすることができる。
以下に、図面に基づいて本発明の具体的な実施形態(第1の実施形態〜第4の実施形態)を述べる。ちなみに、第1の実施形態〜第3の実施形態は第1構造に基づくものであり、第4の実施形態は第2構造に基づくものである。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る制振パネルを示す図である。
この第1の実施形態に係る制振パネルは、柱1、梁2に囲まれた構面内に細長比の大きなブレース3(ブレース3a、3b)を配置し、少なくとも想定する最大層間変形角が生じたときの当該ブレース3の1次座屈モード(図中に破線で示す)範囲を、少なくともブレース3の長さの半分以上にわたり、粘性流体5で覆うようにしている。なお、図1中の4はターンバックルであり、6は粘性流体保持ケースである。ちなみに、ブレース3の1次座屈モードの振幅は建物の想定する最大層間変形から算定することができる。
いま、地震時などに建物に水平力が加わり層間変形が生じると、圧縮側のブレース(ここでは、ブレース3b)が座屈する。また、建物の振動時に逆向きの層間変形が起こる際、そのブレース3bは元の概直線に戻り、逆側のブレース(ここでは、ブレース3a)が座屈する。これらのとき、ブレース3が粘性流体5の中に浸されていれば減衰力を発生させることができる。
すなわち、図2に示すように、圧縮側のブレース3bが座屈し、さらに引っ張られて元に戻るまでに粘性流体5の中を移動し,減衰力を発生できるようになる。この場合、引張ブレース構造の構成を変更することなしに、座屈波形が生じる範囲のみを粘性流体5により覆えば良いので、柱1、梁2などの主架構に負担をかけずに制振性能を付与できる。
なお、粘性流体5をシリコンオイルなどの難燃性、不燃性の粘性流体とすれば、火災に対しても安全性を高められる。特に、外壁や集合住宅などの戸境壁に設置する場合に有効である。
このようにして、本発明の第1の実施形態に係る制振パネルを細長比の大きなブレースを有する骨組み構造(引張ブレース構造)に適用することによって、主体架構に大きな負担を掛けることなく、制振化を実現することができる。
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態に係る制振パネルを示す図である。
上記の第1の実施形態に係る制振パネルにおいて、使用するブレース3がブレース円形断面ブレースのように強軸と弱軸がない場合、ブレース端部に偏芯力が働く場合や、端部ピン構造の回転方向が面内に限定されない場合には、必ずしも面内に座屈しない場合がある。
そこで、この第2の実施形態に係る制振パネルではこの点を改良するようにしたものであり、基本的構成は第1の実施形態に係る制振パネルと同様であるが、面内方向への座屈を確実にするために、図3(a)、(b)に示すように、長方形断面のブレース3sを用い、その長辺方向をブレース面内の軸と直交させる。さらに、端部ガセットプレート11を2枚とし、ブレース3sの端部は回転ベアリング構造ととし、偏芯しないようにしている。すなわち、2枚の端部ガセットプレート11間にピン12を配し、そのピン12に回転ベアリング13を取り付け、回転ベアリング13にブレース3sの端部を接続する。これにより、ブレース3sは面内方向に円滑に回転し、確実に面内方向に座屈するようになる。
なお、ここでは、ブレース3として、長方形断面のブレース3sを用いているが、場合によっては、円形断面のブレースを用いてもよい。
(第3の実施形態)
図4は、本発明の第3の実施形態に係る制振パネルを示す図である。
この第3の実施形態に係る制振パネルの基本的構成は、上記の第1の実施形態に係る制振パネルと同様であるが、図4(a)に示すように、圧縮座屈するブレース3が粘性流体5中を移動する際の移動量の比較的大きな範囲(例えば、ブレース材長の中央部1/3の範囲)に、図4(b)に示すような、粘性流体5からの抵抗力を増大せしめるための抵抗要素として、面内座屈方向(図4(b)に矢印で示す)と平行にならないようにフィン9を取り付けたものである。なお、フィン9以外に、網などを取り付けてもよい。
(第4の実施形態)
図5は、本発明の第4の実施形態に係る制振パネルを示す図である。
この第4の実施形態に係る制振パネルは、柱1(右側の柱1a、左側の柱1b)と梁2(上側の梁2a、下側の梁2b)に囲まれた構面内に細長比の大きなブレース3(ブレース3a、3b)を配置し、少なくとも想定する層間変形角が生じた時点での圧縮側ブレースが1次座屈モード(図中に破線で示す)によって座屈最大振幅となる位置(ここでは、ブレース3の長さ方向中央部)近傍と柱1との間に、引き方向(ピストンロッドが延伸する方向)のみに減衰力を発生する粘性流体ダンパー(引き効き粘性流体ダンパー)20を取り付けている。詳しくは、ブレース3aと右側の柱1aとの間に引き効き粘性流体ダンパー20a、ブレース3bと左側の柱1bとの間に引き効き粘性流体ダンパー20bを取り付けている。
これによって、いずれかの方向に層間変形して圧縮側ブレース(例えば、ブレース3b)が1次座屈モードで変形した後に、逆方向への層間変形により当該圧縮側ブレース(例えば、ブレース3b)が元に戻る力を利用して、当該圧縮側ブレースに取り付けられている引き効き粘性流体ダンパー(例えば、引き効き粘性流体ダンパー20b)によって減衰力を発生せしめるようにしている。
なお、一方向にのみ抵抗力(減衰力)を発生する粘性流体ダンパーについては、前述の非特許文献2に記載されており、ここでの引き効き粘性流体ダンパー20の機構は例えば図6に示すようなものである。
すなわち、引き効き粘性流体ダンパー20は、内部に粘性流体を収納したシリンダ21と、シリンダ21内から延伸・収縮するピストンロッド22と、シリンダ21内でピストンロッド22に連結されたロッドヘッド23を備えているとともに、ロッドヘッド23を貫通する小断面オリフィス24と、同じくロッドヘッド23を貫通する大断面オリフィス25と、大断面オリフィス25のピストンロッド22側に取り付けられた逆止弁26とを備えている。
これによって、図6(a)に示すように、引き効き粘性流体ダンパー20の押し時(ピストンロッド22の収縮時)には、逆止弁26が開放され、大断面オリフィス25が通過可能になるので、大断面オリフィス25と小断面オリフィス24を通過して粘性流体が移動し、抵抗力(減衰力)はほとんど発生しない。一方、図6(b)に示すように、引き効き粘性流体ダンパー20の引き時(ピストンロッド22の延伸時)には、逆止弁26が閉鎖され、大断面オリフィス25が通過不可になるので、小断面オリフィス24のみを通過して粘性流体が移動するようになり、抵抗力(減衰力)が発生する。
なお、引き効き粘性流体ダンパー20の取り付け角度は、ブレース3の変形に対し、ピストンロッド22の延伸・収縮が最も大きくなるように、ブレース3と概ね直交するように設置しているが、ほぼ水平でも良い。
また、引き効き粘性流体ダンパー20による減衰力が発生する場合、引き効き粘性流体ダンパー20の柱側取り付け部(図5では、柱1の中央部)に力がかかるため、補強部材を入れることは有効であり、ここでは、左右の柱1a、1b間に平板の補強部材28を配置して補強している。
さらに、ブレース3端部のピン構造は面外変形が生じないように、無偏芯羽子板29を用いて偏芯のない構造としている。
上記のような構造とすることによって、この実施形態に係る制振パネルは、以下のようにして減衰力を発生する。
例えば、図7に示すように、上部の梁2aが右方向に層間変位(正の層間変位とする)し、ブレース3bが圧縮されて1次座屈モードで変形した際には、ブレース3bに取り付けられている引き効き粘性流体ダンパー20bは、ほとんど抵抗力を伴わずに収縮する。一方、引張側のブレース3aに取り付けられている引き効き粘性流体ダンパー20aは動かない。そして、次の瞬間、上部の梁2aは左方向に層間変位(負の層間変位)を始め、座屈したダンパー3bは真直ぐになるまで戻り、その際に引き効き粘性流体ダンパー20bが抵抗力(減衰力)を伴って延伸する。
なお、これ以上の層間変形が出る場合は、ブレース3に塑性変形を生じる。このため、ブレース3は残留変形を生じ初期状態よりも長くなる。したがって、再び逆方向(正の層間変位)に層間変形を生じたときは座屈波形が若干大きくなる。
ちなみに、この引き効き粘性流体ダンパー20を用いれば、引き効き粘性流体ダンパー20の押し方向に抵抗力を生じないために、ブレース3の1次座屈モードの発生を阻害しない。言い換えるならば、引き効き粘性流体ダンパー20の引き方向にブレース3が座屈しようとすれば抵抗力を生じるために、必ず引き効き粘性流体ダンパー20の押し方向にブレース3が座屈する。
もし、引き方向と押し方向の両方向に抵抗力を生じる両効き粘性流体ダンパーを用いた場合は、ブレース3が座屈しようとした場合、抵抗力を生じるので、1次座屈モードの発生を阻害し、地震時のように変形スピードが大きい場合は、2次座屈モードが発生しやすくなる。2次座屈モードでは、ブレース3の中央部が変形モードの節になるため、ブレース3の中央部に設置された粘性流体ダンパーは延伸・収縮しないので、減衰力を発生しない。したがって、引き方向または押し方向のいずれか一方向で減衰力を発生する片効き粘性流体ダンパーを使用することで、所望の制振効果を得ることができる。
なお、通常は、この実施形態のように、引き方向で減衰力を発生させる方が、押し方向で減衰力を発生させるよりも、壁面外にはらみださずに安定するので望ましい。ただし、壁面外へのはらみ出しを壁材などで拘束できる場合は、押し効き粘性流体ダンパーも使用することができる。2次座屈モードが出現しない範囲内で正の層間変位によって押し効き粘性流体ダンパーが変形する際に、多少の減衰力を発生させることは可能である。また、ブレース3が座屈する際にも、相対的に小さい力であるが、減衰力を発生させることができる。ちなみに、押し効き粘性流体ダンパーは、図6において、大断面オリフィス25のピストンロッド22側に取り付けている逆止弁26を、ピストンロッド22の反対側に取り付けたものである。
ここで、本発明において、減衰力の発生効果を得るために粘性流体を用いたのは、本発明の主眼が圧縮側ブレースの1次の弾性座屈の発生を妨げないことにあるためである。
上述の第1の実施形態〜第3の実施形態のように、1次座屈モード範囲をブレースの長さの半分以上にわたり粘性液体で覆えば、その粘性液体の粘度が過度に大きくならない限り、1次座屈モードの変化を防止できる。また、粘性液体でブレースを覆わなくとも、第4の実施形態のように、片方向のみに減衰力を発生せしめ、1次の座屈モードの発生を妨げないように、その方向の抵抗力を抑える片効き粘性流体ダンパーを備えることでもよい。
ちなみに、減衰力を発生させるためには、粘性流体の他にも鋼材などの弾塑性ダンパーや、高減衰ゴムなどの粘弾性体がある。1次座屈モードを阻害しないよう粘弾性体でブレースを覆うことも可能であるが、剛性をかなり低下させる必要があることや固体でブレースを覆うことの施工性などで液体状のものが有利となる。さらに、図8に示した例は、片効き粘性流体ダンパーに代えて、高減衰ゴム30(30a、30b)を片方向だけに効かすように、高減衰ゴム30(30a、30b)を接合ロッド31(31a、31b)を介してブレース3(3a、3b)と接合させ、想定した層間変形角の状態と同様に座屈した以上のブレース変形で高減衰ゴム30の変形がゼロになるように設置し、ブレース3にターンバックル5を用いてプレテンションをかけて行き、高減衰ゴム30に初期変形を与えておく等の圧縮座屈を阻害しない工夫をしたものである。しかし、この場合、まっすぐの初期状態に戻す必要が有り、施工手間がかかり、ブレース3の引っ張り耐力を減少させる結果になる。これらをいとわなければ高減衰ゴムなどの粘弾性体の使用も可能である。
本発明の第1の実施形態を示す図である。 本発明の第1の実施形態における層間変形状態を示す図である。 本発明の第2の実施形態を示す図である。 本発明の第3の実施形態を示す図である。 本発明の第4の実施形態を示す図である。 本発明の第4の実施形態において用いる粘性流体ダンパーを示す図である。 本発明の第4の実施形態における層間変位状態を示す図である。 粘性流体ダンパーに代えて高減衰ゴムを用いた例を示す図である。
符号の説明
1 柱
1a 右側の柱
1b 左側の柱
2 梁
2a 上側の梁
2b 下側の梁
3 ブレース
3a 引張側のブレース
3b 圧縮側のブレース
3s 長方形断面のブレース
4 ターンバックル
5 粘性流体
6 粘性流体保持ケース
9 フィン
11 端部ガセットプレート
12 ピン
13 回転ベアリング
20 引き効き粘性流体ダンパー
20a ブレース3a側の引き効き粘性流体ダンパー
20b ブレース3b側の引き効き粘性流体ダンパー
21 シリンダ
22 ピストンロッド
23 ロッドヘッド
24 小断面オリフィス
25 大断面オリフィス
26 逆止弁
28 補強部材
29 無偏芯羽子板
30、30a、30b 高減衰ゴム
31、31a、31b 接合ロッド

Claims (7)

  1. 圧縮側が弾性座屈する引張ブレース構造の制振パネルにおいて、少なくとも想定する層間変形角が生じたときのブレースの1次座屈モードを利用して、粘性流体による減衰力を発生させることを特徴とする制振パネル。
  2. 少なくとも想定する層間変形角が生じたときのブレースの1次座屈モードの範囲を、少なくともブレース長さの半分以上にわたり、粘性流体で覆うことを特徴とする請求項1に記載の制振パネル。
  3. 粘性流体からの抵抗力を増大せしめるためブレース材の座屈により変位振幅が相対的に大きく出る位置もしくは範囲に、面内座屈方向と平行にならないようにフィン、網などの抵抗要素をつけることを特徴とする請求項2に記載の制振パネル。
  4. 少なくとも想定する層間変形角が生じた時点での圧縮側ブレースの座屈最大振幅となる位置の近傍に、引き方向または押し方向のいずれか一方向のみに減衰力を発生する粘性流体ダンパーを取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の制振パネル。
  5. 粘性流体を難燃性、不燃性の粘性流体とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の制振パネル。
  6. 圧縮側が弾性座屈する引張ブレースが面内に座屈するように、ブレース端部がピン接合されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の制振パネル。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の制振パネルを用いたことを特徴とする骨組構造。
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